説明

展示ケース

【課題】停電時や電動駆動手段の故障時に扉体の前後方向の移動を容易に行うことができる展示ケースを提供すること。
【解決手段】少なくとも1枚の扉体6を略面一状態から前方に移動させた状態で、扉体6を左右方向に移動させることにより開口部5を開放させる展示ケース1であって、
電動駆動手段13は、扉体6に設けられた摺動プレート24を、電動モータ33の回転駆動により回転する左右方向に延びるネジ軸25を介して前後方向に移動させるようになっており、ネジ軸25を手動操作により回転させる手動駆動手段34が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、博物館や美術館等に設置される作り付けの展示ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、博物館や美術館等の設置される作り付けの展示ケースでは、ガラス板の扉によりケース本体の開口部を閉塞するようになっており、この開口部を開放する際には、電動駆動手段により扉を前方に移動させた後に、手作業により扉を左右方向に移動させてケース本体の開口部を開放させるようになっている。そして、このような展示ケースでは、扉を前方に移動させる際に、電動駆動手段が有する電動モータによりねじ軸を回転させるようにしており、このねじ軸に螺合された移動ブロックが移動されることにより、摺動プレートが前方に移動して扉が前方に移動されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−321972号公報(第4頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の展示ケースにあっては、停電時や電動駆動手段(電動モータ)の故障時には、電動駆動手段により扉を前方に移動できなくなってしまうため、停電時や電動駆動手段の故障時に扉を開放させる際には、扉と電動駆動手段との機械的な接続を断ち、手作業により扉を前方に移動させなければならず、扉の開放作業に手間がかかってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、停電時や電動駆動手段の故障時に扉体の前後方向の移動を容易に行うことができる展示ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の展示ケースは、
透明板を有して展示スペースの前方の開口部を左右方向に略面一状態で閉塞する複数枚の扉体と、少なくとも1枚の扉体を前後方向に移動可能に支持する前後移動支持手段と、該扉体を前後方向に移動させる電動駆動手段と、該扉体を左右方向に移動可能に支持する左右移動支持手段と、を備え、前記少なくとも1枚の扉体を前記略面一状態から前方に移動させた状態で、該扉体を左右方向に移動させることにより前記開口部を開放させる展示ケースであって、
前記電動駆動手段は、前記扉体に設けられた摺動プレートを、電動モータの回転駆動により回転する左右方向に延びるネジ軸を介して前後方向に移動させるようになっており、該ネジ軸を手動操作により回転させる手動駆動手段が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が手動駆動手段を用いてネジ軸を手動操作により回転させて、摺動プレートを前後方向に移動させ、扉体を前後方向に移動させることができ、停電時や電動駆動手段が有する電動モータの故障時に扉体の前後方向の移動を容易に行うことができる。
【0007】
本発明の展示ケースは、
前記ネジ軸の一方の端部に前記電動モータを接続するとともに、該ネジ軸の他方の端部に前記手動駆動手段を接続することを特徴としている。
この特徴によれば、電動モータ及び手動駆動手段がネジ軸の左右両端部にそれぞれ配置されるようになり、電動モータとネジ軸と手動駆動手段の配置状態を、複数の扉体の配置に合わせて左右方向に延びる配置状態にでき、電動モータとネジ軸と手動駆動手段の配置スペースを容易に確保できる。
【0008】
本発明の展示ケースは、
前記電動モータと前記ネジ軸と前記手動駆動手段とは、正面視及び平面視で略同一線上に配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、前後幅及び上下幅の寸法を小さくした状態で電動モータとネジ軸と手動駆動手段とを配置して、省スペース化を図ることができ、展示スペースや開口部を大きく形成することができる。
【0009】
本発明の展示ケースは、
前記手動駆動手段の操作部を前方側に配置し、該操作部が回転ハンドルまたは電動ドライバに接続できる接続手段を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、平常時には、手動駆動手段を駆動させるための回転ハンドルまたは電動ドライバを別途保管しておくことができ、展示ケースの前方側の見栄えを向上させつつ、停電時や電動駆動手段が有する電動モータの故障時には、接続手段となっている前方側にある操作部に回転ハンドルまたは電動ドライバを容易に接続できるようになっており、回転ハンドルまたは電動ドライバの駆動力によって手動駆動手段を駆動させることができ、手動駆動手段による扉体の前後移動操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例における展示ケースを示す正面図である。
【図2】展示ケースの上部及び下部の扉駆動装置を示す縦断正面図である。
【図3】上部の扉駆動装置を示す平面図である。
【図4】後方位置にある扉体及び扉駆動装置の状態を示す縦断側面図である。
【図5】前方位置にある扉体及び扉駆動装置の状態を示す縦断側面図である。
【図6】回転ハンドルによる手動駆動ボックスの駆動動作を示す側面図である。
【図7】電動ドライバによる手動駆動ボックスの駆動動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る展示ケースを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
実施例に係る展示ケースにつき、図1から図5を参照して説明する。以下、図1及び図2の紙面手前側を展示ケースの正面側(前方側)とし、図3の紙面下側を展示ケースの正面側(前方側)とし、図4及び図5の紙面左側を正面側(前方側)として説明する。
【0013】
図1の符号1は、主に美術館や博物館等に設置される作り付けの展示ケースである。この展示ケース1は、その内部に大型の展示品2を展示できるようになっており、その後面側が室内の壁面に当接するように設置され、この展示ケース1内の展示スペース3に配置された展示品2を、鑑賞者4が展示ケース1の前方から鑑賞できるようになっている。
【0014】
図1に示すように、展示ケース1は、前方が開口する略箱型形状に形成されている。この展示ケース1は、前方の開口部5を閉塞する3枚の扉体6が左右方向に並設されている。各扉体6は、本発明における透明板としての透明なガラスパネル7と、ガラスパネル7の上下の後面に接着されたガイドレール8と、ガイドレール8を前後移動可能に支持する前後動フレーム9と、を有している。
【0015】
また、扉体6が閉塞しているときには、複数の扉体6が略面一状態に配置されるようになっている。また、各扉体6は、扉体6同士の隙間を塞ぐパッキン10を有しており、扉体6が閉塞しているときには、展示ケース1内部が密閉された状態となっている。
【0016】
尚、後述するように、扉体6が略面一状態から前方に移動されて、前方位置に配置されているときには、左の扉体6は右方に、右の扉体6は左方に、中央の扉体6は左右両方向に使用者の手動作業により移動させることができる。
【0017】
図4に示すように、展示ケース1の開口部5の上部には、左右方向に延設された上部フレーム11が設けられるとともに、開口部5の下部には、左右方向に延設された下部フレーム12が設けられている。特に図示はしないが、上部フレーム11と下部フレーム12とを連結する左右位置に配置された左右フレーム(図示略)が設けられており、これらの開口部5の周囲に配置されるフレーム11,12によって支持枠が構成されている。
【0018】
図2に示すように、上部フレーム11と下部フレーム12のそれぞれには、扉体6を前後方向に移動させるための本発明における電動駆動手段としての扉駆動装置13が取り付けられている。また、扉体6の上下には、幕板14が手前方向に開放可能に取り付けられており、扉駆動装置13が外側から見えないようになっている(図4参照)。
【0019】
扉体6の上下のガイドレール8及び上下の扉駆動装置13は、その構成を上下反転させた上下対称の略同一構成となっているので、上部側のガイドレール8及び扉駆動装置13について説明し、下部側のガイドレール8及び扉駆動装置13の説明を省略する。
【0020】
先ず、図4に示すように、扉体6の上部側のガイドレール8は、側面視で略E字形状をなしており、後方側に開口された上下2つのガイド溝部15,16が形成されている。尚、上下2つのガイド溝部15,16のうち、下方のガイド溝部16はあり溝となっている。ガイドレール8の後方には、本発明における支持フレームとしての前後動フレーム9が設けられている。尚、この前後動フレーム9の後方には照明器具(図示略)等が配置される。
【0021】
図2に示すように、前後動フレーム9の前面には、複数の配置箇所に回転軸が前後方向を向くローラ17(カムフォロア)が枢着されている。このローラ17によってガイドレール8が左右方向に移動可能に支持されるとともに、ローラ17がガイドレール8のガイド溝部16内で転動することにより扉体6が左右方向に移動可能になっている。尚、前後動フレーム9と、この前後動フレーム9の前面のローラ17と、ローラ17により支持されるガイドレール8とにより本発明の左右移動支持手段が構成される。
【0022】
ローラ17は、1つの前後動フレーム9における略所定間隔毎に設けられた4つの配置箇所に配置されている。尚、中央の前後動フレーム9の両端の配置箇所と、右の前後動フレーム9の左端の配置箇所と、左の前後動フレーム9の右端の配置箇所には、それぞれ3個のローラ17が連設された3連ローラ18設けられている。
【0023】
つまり前後動フレーム9における扉体6を開放させる際に、その扉体6が移動する開放方向(移動方向)の端部の配置箇所に3連ローラ18が設けられている。この3連ローラ18により扉体6が開放された際にガイドレール8及び各ローラ17に掛かる力が分散されるようになっている。尚、3連ローラ18は上下に配置された前後動フレーム9のうち、上方側の前後動フレーム9のみに設けられている。
【0024】
前後動フレーム9には、ローラ17が配置された位置よりも若干上方側にストッパー19が取り付けられている。このストッパー19は、ガイドレール8における上のガイド溝部15に遊嵌されており、このガイド溝部15の内部には、扉体6が開放される際にストッパー19に当たる突出部20が形成されている。このストッパー19の取り付け位置により扉体6の開口率が規定される。尚、本実施例では、扉体6の開口率が50%以上となっている。
【0025】
図2に示すように、前後動フレーム9の上面には、正面視で略L字形状をなす複数のローラ固定部材21が取り付けられている。尚、前後動フレーム9の左端には、一対のローラ固定部材21が対向するように配置されている。ローラ固定部材21には、回転軸が左右方向を向くローラ22(カムフォロア)が枢着されている。
【0026】
上部フレーム11には、ローラ22を前後方向に摺動可能に支持する固定レール23が固着されている。ローラ22とともに、ローラ固定部材21及び前後動フレーム9は、前後方向に自在に移動可能となっている。尚、固定レール23に前後移動可能に支持されるローラ22と、このローラ22を固定するローラ固定部材21と、前後動フレーム9とにより本発明における前後移動支持手段を構成している。
【0027】
図2に示すように、前後動フレーム9の上面には、左右に2枚の摺動プレート24が固定されている。左右の摺動プレート24の上方には、ネジ軸25がそれぞれ1本ずつ左右方向に延設されており、このネジ軸25は、その両端に取り付けられた2つのネジ軸支持部材26を介して上部フレーム11に固定されている。
【0028】
また、それぞれのネジ軸25には、2つのネジ軸支持部材26の間を移動する移動部材27が取り付けられている。尚、移動部材27の内側には、ネジ軸25と螺合するネジ溝が形成されており、ネジ軸25の回転とともに移動部材27が左右方向に移動されるようになっている。移動部材27には、その下方にピン28が取り付けられており、このピン28の先端部は、摺動プレート24に設けられた摺動溝29に係合されている。
【0029】
図3に示すように、摺動プレート24の摺動溝29は、平面視において後方から前方に向かって斜め方向に延びるように穿設されている。尚、左右の摺動プレート24の摺動溝29は、それぞれ左右対称に形成されている。
【0030】
また、ネジ軸25の後方には、ネジ軸25と平行してシャフト30が延設されており、このシャフト30には、移動部材27と接続され、かつ移動部材27を案内するリニアブッシュ32が取り付けられている。
【0031】
左右の摺動プレート24にそれぞれ対応したネジ軸25のネジ溝は、互いに逆向きに螺設されている。左右のネジ軸25は、シャフト31を介して連結している。更に、右側のネジ軸25の右端部には、ネジ軸25を駆動回転させる電動モータ33が連結されており、左側のネジ軸25の左端部には、ネジ軸25を手動で回転させることができる手動駆動ボックス34(手動駆動手段)が連結されている。尚、電動モータ33は、本発明における制御手段としての制御装置(図示略)によって制御される。
【0032】
図2及び図3に示すように、上部フレーム11には、扉体6の前後位置を検出するためのリミットスイッチ35が設けられている。このリミットスイッチ35は、左右2つで1組のスイッチとなっており、右側のネジ軸25の近傍に配置され、制御装置(図示略)に接続されている。
【0033】
この左右に配置されたリミットスイッチ35のうち、どちらかのリミットスイッチ35が移動部材27を検出するようになっており、一方のリミットスイッチ35が移動部材27を検出した場合には、扉体6が後方位置にあることを示し、他方のリミットスイッチ35が移動部材27を検出した場合には、扉体6が前方位置にあることを示している。制御装置(図示略)は、リミットスイッチ35による移動部材27の検出に基づいて、扉体6の前後位置を把握し、電動モータ33の駆動を制御している。
【0034】
展示ケース1の側部には、扉駆動装置13の電動モータ33を制御する制御装置(図示略)を有する扉駆動装置制御ボックス36が取り付けられている。使用者は、扉駆動装置制御ボックス36に設けられた各扉体6に対応した開ボタン及び閉ボタン(図示略)を操作することによって各扉体6の前後移動を行うことができるようになっている。
【0035】
尚、開ボタンと閉ボタンは電動モータ33を駆動させるボタンであり、開ボタンが押されたときにネジ軸25が正回転され、閉ボタンが押されたときにネジ軸25が逆回転されるようになっている。
【0036】
以下、中央の扉体6の開閉動作について説明する。左右の扉体6の開閉については、中央の扉体6の開閉動作と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0037】
先ず、図4及び図5に示すように、扉体6が開放される際には、扉体6を電動モータ33により前方に所定距離移動した後に、手動作業により左右方向に移動させることにより扉体6は開放される。尚、ここで所定距離とは、扉体6の厚みを超える程度の距離である。また、扉体6が後方に移動された位置を後方位置とし、扉体6が前方に移動された位置を前方位置とし、扉体6が後方位置にあり閉塞しているときと、その中心を同じくする扉体6の配置位置を閉塞可能位置として説明する。
【0038】
扉体6が後方位置にあるときには、右側のネジ軸25に設けられた移動部材27が右端位置に配置され、左側のネジ軸25に設けられた移動部材27が左端位置に配置されている(図2、図3参照)。また、前後動フレーム9の上方に設けられたローラ22は、固定レール23の後方位置に配置している(図4参照)。
【0039】
使用者が扉駆動装置制御ボックス36内の開ボタンを押すと、上下の電動モータ33が駆動してネジ軸25が回転する。左右のネジ軸25は、それぞれ逆向きのネジ溝が形成されているため、ネジ軸25は同じ方向に回転するが、左右のネジ軸25の回転とともに、右の移動部材27は左方に移動し、左の移動部材27は右方に移動する。
【0040】
図3に示すように、移動部材27とリニアブッシュ32とが接続されているため、移動部材27とともにリニアブッシュ32も同方向に移動する。尚、移動部材27にリニアブッシュ32が接続されていることにより、ネジ軸25の回転とともに移動部材27が回転してしまうのを防止することができる。
【0041】
移動部材27に取り付けられているピン28は、摺動プレート24の摺動溝29に嵌合しており、移動部材27及びピン28の移動とともに、摺動プレート24が前方に移動する。摺動プレート24は、扉体6に接着されたガイドレール8の上面に固定されているため、摺動プレート24が前方に移動することにより前後動フレーム9が前方位置まで移動される(図5参照)。
【0042】
また、前後動フレーム9が前方に移動されるに伴い、扉体6が前方位置に移動される。尚、前後動フレーム9が移動される際には、ローラ22は、固定レール23の後方から前方に移動して、前方に移動される扉体6が支持される。
【0043】
ネジ軸25の回転駆動により移動部材27が移動されて、左側のリミットスイッチ35が移動部材27を感知すると、制御装置(図示略)は、扉体6が前方位置まで移動したと判断し、電動モータ33を停止させる。このとき扉体6は、前方位置に配置され、前後移動した扉体6の後面は、隣接する左右の扉体6の前面よりも前方に配置されており、扉体6を左右に移動できる状態になる。
【0044】
そして、扉体6の左右方向の移動は手動作業により行われる。例えば、前方位置にある中央の扉体6が左方向に開放されると、扉体6の移動とともに、前後動フレーム9に取り付けられたローラ17がガイドレール8のガイド溝部16内で転動される。
【0045】
更に、扉体6が移動されると、ガイドレール8の後方に取り付けられた突出部20が、前後動フレーム9の前部に取り付けられたストッパー19に当接したところで扉体6の移動が規制される。そして、扉体6が開放された状態で、展示スペース3に対して展示品2の出し入れを行うことができる。
【0046】
尚、本実施例では、扉体6は、50%以上の開口率で開放された位置で、ガイドレール8の突出部20が前後動フレーム9のストッパー19に当接される。尚、左右の扉体6は左右のいずれか一方向にのみ開放される。そのため左右の扉体6のストッパー19及び突出部20は上部にのみ取り付けられている。
【0047】
また、中央の扉体6は左右両方向に開放されるため、左開放時に当接するストッパー19と突出部20は下部に、右開放時に当接するストッパー19と突出部20は上部に取り付けられ、使い分けされるように設置されている。
【0048】
次に、中央の扉体6が後方位置に移動される動きについて説明する。中央の扉体6が左方向に開放された場合は、使用者が右方向に手動で移動して閉塞可能位置に戻し、使用者が扉駆動装置制御ボックス36の閉ボタン(図示略)を押す。すると、上下の電動モータ33が駆動して、開ボタンを押したときと逆向きにネジ軸25が回転する。左右のネジ軸25の回転とともに、右のネジ軸25に取り付けられた移動部材27は右方に移動し、左のネジ軸25に取り付けられた移動部材27は左方に移動する。
【0049】
移動部材27とともにリニアブッシュ32も同方向に移動し、移動部材27とピン28が移動するとともに、ピン28に摺動溝29が係合された摺動プレート24が後方に移動される。摺動プレート24が後方に移動されることにより、前後動フレーム9が後方に移動される(図4参照)。
【0050】
また、前後動フレーム9が後方に移動されに伴い、扉体6が後方位置に移動される。
尚、前後動フレーム9が移動される際には、ローラ22は、固定レール23の前方から後方に移動して、後方に移動される扉体6が支持される。
【0051】
ネジ軸25の回転駆動により移動部材27が移動されて、右側のリミットスイッチ35が移動部材27を感知すると、制御装置(図示略)は、扉体6が後方位置まで移動したと判断し、電動モータ33を停止させる。
【0052】
次に、前述した手動駆動ボックス34について詳述する。図2に示すように、手動駆動ボックス34は、ネジ軸25に接続されており、かつ手動駆動ボックス34の前方には、本発明における操作部としての操作軸43が設けられ、操作軸43とネジ軸25とが手動駆動ボックス34内部の傘歯車(図示略)により接続される。この操作軸43には、本発明における六角形の挿込口44(接続手段)が設けられており、操作軸43を回転ハンドル48または電動ドライバ45にて操作可能となっている。
【0053】
図2及び図3に示すように、電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34とは、正面視及び平面視で略同一線上に配置されている(図2、図3参照)。そのため、前後幅及び上下幅の寸法を小さくした状態で電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34とを配置して、省スペース化を図ることができ、展示スペース3や開口部を大きく形成することができる。尚、電動モータ33と左側のネジ軸25は、カップリング46を介して切り離し可能に連結されている。
【0054】
次に、手動駆動ボックス34を用いて扉体6を前後移動させる際の動作について説明する。本実施例における展示ケース1は、前述した電動モータ33を用いた扉体6の前後移動作業は、故障時や停電時には使用できないが、そのような非常時においても手動駆動ボックス34を用いて手動で扉体6を前後方向に移動できるようになっている。
【0055】
先ず、扉体6を前方位置に移動する場合には、上下の幕板14を手前方向に開放し、図6に示すように、手動駆動ボックス34の前方の操作軸43に設けられた挿込口44に回転ハンドル48の接続部49を挿し込み、手動で回転させると、手動駆動ボックス34を介して回転ハンドル48の回転力がネジ軸25に伝えられ、ネジ軸25が回転される。
【0056】
そして、前述した電動モータ33を用いた場合と同様に、ネジ軸25が回転されて移動部材27が移動されることにより、移動部材27に取り付けられているピン28が係合している摺動プレート24が前方に移動し、扉体6が前方に移動される。更に、ピン28が摺動プレート24の摺動溝29を移動して、摺動溝29の端部にピン28が配置されたところでそれ以上ネジ軸25は回転できなくなり、扉体6が前方位置で停止される。続いて、使用者は、前方位置に移動した扉体6を手動作業にて左右方向に移動して開放することができる。
【0057】
次に、扉体6を後方位置に移動する場合には、使用者が手動で扉体6を開放時と反対方向に扉体6を移動させて、扉体6を閉塞可能位置に戻す。そして、手動駆動ボックス34の操作軸43に設けられた挿込口44に回転ハンドル48の接続部49を挿し込み、開放作業時と逆方向に回転させることにより、ネジ軸25が逆方向に回転し、摺動プレート24が後方に移動されるとともに、扉体6が後方に移動される。
【0058】
また、回転ハンドル48の代わりに、電動ドライバ45を用いて扉体6を前後移動させることもできる。先ず、扉体6を前方位置に移動する場合には、上下の幕板14を手前方向に開放し、図7に示すように、手動駆動ボックス34の前方の操作軸43に設けられた挿込口44に電動ドライバ45の接続部47を挿し込み、電動ドライバ45の電源を入れて接続部47を回転させると、手動駆動ボックス34を介して電動ドライバ45の回転力がネジ軸25に伝えられ、ネジ軸25が回転される。
【0059】
そして、前述した電動モータ33を用いた場合と同様に、ネジ軸25が回転されて移動部材27が移動されることにより、移動部材27に取り付けられているピン28が係合している摺動プレート24が前方に移動し、扉体6が前方に移動される。更に、ピン28が摺動プレート24の摺動溝29を移動して、摺動溝29の端部にピン28が配置されたところでそれ以上ネジ軸25は回転できなくなり、扉体6が前方位置で停止される。続いて、使用者は、前方位置に移動した扉体6を手動作業にて左右方向に移動して開放することができる。
【0060】
次に、扉体6を後方位置に移動する場合には、使用者が手動で扉体6を開放時と反対方向に扉体6を移動させて、扉体6を閉塞可能位置に戻す。そして、手動駆動ボックス34の操作軸43に設けられた挿込口44に挿し込んだ電動ドライバ45の接続部47の回転方向を切り替え、開放作業時と逆方向に接続部47を回転させることにより、ネジ軸25が逆方向に回転し、摺動プレート24が後方に移動されるとともに、扉体6が後方に移動される。
【0061】
また、手動駆動ボックス34の操作軸43が前方に設けられていることにより、後面側が壁面に当接して設置されている展示ケース1において、使用者は安全で楽な姿勢で作業を行うことができる。
【0062】
以上、本実施例における展示ケース1は、扉駆動装置13は、扉体6に設けられた摺動プレート24を、電動モータ33の回転駆動により回転する左右方向に延びるネジ軸を介して前後方向に移動させるようになっており、ネジ軸25を手動操作により回転させる手動駆動ボックス34が設けられることで、使用者が手動駆動ボックス34を用いてネジ軸25を手動操作により回転させて、摺動プレート24を前後方向に移動させ、扉体6を前後方向に移動させることができ、停電時や扉駆動装置13が有する電動モータ33の故障時に扉体6の前後方向の移動を容易に行うことができる。
【0063】
また、ネジ軸25の一方の端部に電動モータ33を接続するとともに、ネジ軸25の他方の端部に手動駆動ボックス34を接続することで、電動モータ33及び手動駆動ボックス34がネジ軸25の左右両端部にそれぞれ配置されるようになり、電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34の配置状態を、複数の扉体6の配置に合わせて左右方向に延びる配置状態にでき、電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34の配置スペースを容易に確保できる。
【0064】
また、電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34とは、正面視及び平面視で略同一線上に配置されることで、前後幅及び上下幅の寸法を小さくした状態で電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34とを配置して、省スペース化を図ることができ、展示スペース3や開口部5を大きく形成することができる。
【0065】
また、手動駆動ボックス34の操作軸43を前方側に配置し、操作軸43が回転ハンドル48または電動ドライバ45に接続できる挿込口44を有していることで、平常時には、手動駆動ボックス34を駆動させるための回転ハンドル48または電動ドライバ45を別途保管しておくことができ、展示ケース1の前方側の見栄えを向上させつつ、停電時や電動モータ33の故障時には、操作軸43の挿込口44に回転ハンドル48または電動ドライバ45を容易に接続できるようになっており、回転ハンドル48または電動ドライバ45の駆動力によって手動駆動ボックス34を駆動させることができ、手動駆動ボックス34による扉体6の前後移動操作を容易に行うことができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施例では、3枚の扉体6を左右方向に並設して展示ケース1の開口部5を閉塞しているが、1枚または4枚以上の枚数の扉体6を左右方向に並設して開口部5を閉塞するようにしてもよい。更に、扉体6を4枚以上で構成した場合には、その中央の2枚の扉体6をそれぞれ逆方向に開放させることで、より大きな開口とすることができる。
【0068】
また、前記実施例では、電動モータ33とネジ軸25と手動駆動ボックス34とは、正面視及び平面視で略同一線上に配置されているが、電動モータ33及び手動駆動ボックス34のネジ軸25に対する配置位置は、これに限ることなく、電動モータ33及び手動駆動ボックス34の配置位置がネジ軸25に対して上下方向や前後方向にずれていてもよい。
【0069】
また、右側のネジ軸25の右端部には、ネジ軸25を駆動回転させる電動モータ33が連結されており、左側のネジ軸25の左端部には、ネジ軸25を手動で回転させることができる手動駆動ボックス34が連結されているが、電動モータ33と手動駆動ボックス34とを同一のネジ軸25に連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 展示ケース
3 展示スペース
5 開口部
6 扉体
7 ガラスパネル(透明板)
13 扉駆動装置(電動駆動手段)
24 摺動プレート
25 ネジ軸
33 電動モータ
34 手動駆動ボックス(手動駆動手段)
43 操作軸(操作部)
44 挿込口(接続手段)
45 電動ドライバ
48 回転ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板を有して展示スペースの前方の開口部を左右方向に略面一状態で閉塞する複数枚の扉体と、少なくとも1枚の扉体を前後方向に移動可能に支持する前後移動支持手段と、該扉体を前後方向に移動させる電動駆動手段と、該扉体を左右方向に移動可能に支持する左右移動支持手段と、を備え、前記少なくとも1枚の扉体を前記略面一状態から前方に移動させた状態で、該扉体を左右方向に移動させることにより前記開口部を開放させる展示ケースであって、
前記電動駆動手段は、前記扉体に設けられた摺動プレートを、電動モータの回転駆動により回転する左右方向に延びるネジ軸を介して前後方向に移動させるようになっており、該ネジ軸を手動操作により回転させる手動駆動手段が設けられることを特徴とする展示ケース。
【請求項2】
前記ネジ軸の一方の端部に前記電動モータを接続するとともに、該ネジ軸の他方の端部に前記手動駆動手段を接続することを特徴とする請求項1に記載の展示ケース。
【請求項3】
前記電動モータと前記ネジ軸と前記手動駆動手段とは、正面視及び平面視で略同一線上に配置されることを特徴とする請求項2に記載の展示ケース。
【請求項4】
前記手動駆動手段の操作部を前方側に配置し、該操作部が回転ハンドルまたは電動ドライバに接続できる接続手段を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の展示ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−62260(P2011−62260A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213761(P2009−213761)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】