層間変位計測装置
【課題】低コストで簡単に装備できると共に、高精度に層間変位を計測することの可能な層間変位計測装置を提供する。
【解決手段】この層間変位計測装置は、上層床1の近傍と下層床2の近傍に両端12が固定され、ばね11により層間にブレース状に張設されたインバー鋼線10と、該ばね11の伸縮量を検出する歪み計20と、インバー鋼線10の長さ方向の変位を許容すると共にインバー鋼線10の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止め15と、を具備する。振れ止め15は、インバー鋼線10の長さ方向に所定の間隔をあけて配置してある。
【解決手段】この層間変位計測装置は、上層床1の近傍と下層床2の近傍に両端12が固定され、ばね11により層間にブレース状に張設されたインバー鋼線10と、該ばね11の伸縮量を検出する歪み計20と、インバー鋼線10の長さ方向の変位を許容すると共にインバー鋼線10の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止め15と、を具備する。振れ止め15は、インバー鋼線10の長さ方向に所定の間隔をあけて配置してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等による構造物の層間変位を鋼線の歪みを用いて計測する層間変位計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物等の構造物の層間変位計測装置として、図10に示すように、上層床(天井)1と下層床2に計測用の治具3、4を取り付け、計測用の治具3、4の相対変位を変位計101で計測するようにしたものや、図11に示すように、光ファイバセンサ102を上層床1と下層床2の間の壁5に取り付けて計測するようにしたものが知られている。前者のものは、例えば特許文献1にその一例が示されている。
【特許文献1】特開平5−99648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、図10に示すような計測用の治具3、4と変位計を用いるものは、上下層床1、2の局所的な回転や計測用の治具3、4自体の振動などによって誤差が大きくなり、高精度の計測ができないという問題がある。また、図11に示すような光ファイバセンサ102を用いるものは、装置が高額になる上、光ファイバの壁面5への取り付けが面倒である等の問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情を考慮し、低コストで簡単に装備できると共に、高精度に層間変位を計測することの可能な層間変位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の層間変位計測装置は、上層床の近傍と下層床の近傍に両端が固定され、かつ、ばねによる引張力により層間にブレース状に張設された鋼線と、層間変形に伴う前記ばねの伸縮量を検出する歪み計と、前記鋼線の長さ方向の変位を許容すると共に鋼線の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止めと、を具備することを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の層間変位計測装置において、前記振れ止めを、前記鋼線の長さ方向に所定の間隔をあけて配置したことを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の層間変位計測装置において、前記鋼線として、熱膨張の小さいインバー鋼線を使用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、次のように層間変位を計測することができる。即ち、地震による層間変位(主に水平方向のずれ)が上層床と下層床の間に生じると、上層床の近傍と下層床の近傍に両端を固定してブレース状に張設されている鋼線を介して層間変位がばねに伝達されてばねが伸縮し、この伸び縮みを歪み計で測定することにより、層間変位を計測することができる。
この場合、両端が固定された鋼線は、地震時の振動により弦として挙動し、自重があることにより共振する。共振すると、鋼線に振れによる伸びが生じてばねの歪み計測する際の誤差となるので、振れ止めはその誤差を最小に抑える機能を果たす。従って、振れ止めがあることにより、小さな誤差で精確に層間変位を測定することができる。
【0009】
また、この計測装置は、鋼線とばねと振れ止めと歪み計だけで構成されているので、光ファイバ式の層間変位計測装置に比べて安価である上、簡単に装備でき、しかも、床や天井の回転による影響も受けずに、精度の良い計測が可能である。
【0010】
請求項2の発明によれば、振れ止めの設置間隔の適切な設定により、最小限の振れ止めを設けるだけで、様々な構造物の固有周期に対応した高精度の層間変位計測が可能となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、張設する鋼線として、熱膨張係数がステンレス鋼線の約1/10のインバー鋼線を使用しているので、温度変化の影響を受けずに高精度の層間変位計測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の層間変位計測装置の概要を示している。この層間変位計測装置は、上層床1の近傍と下層床2の近傍に両端12が固定され、かつばね11により所定の引張力を持って層間にブレース状に張設された鋼線10と、ばね11の伸縮量を検出する歪み計20と、鋼線10の長さ方向の変位を許容すると共に鋼線10の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止め15と、を具備するものである。
【0013】
振れ止め15は、鋼線10の長さ方向に所定の間隔(後述)をあけて配置されており、鋼線10としては、熱膨張係数がステンレス鋼線の約1/10と小さいインバー鋼線が使用されている。
【0014】
この層間変位計測装置によれば、次のように上層床1と下層床2の間の層間変位を計測することができる。
即ち、地震による層間変位(主に水平方向のずれ)が上層床1と下層床2の間に生じると、上層床1の近傍と下層床2の近傍に両端12が固定されている鋼線10を介して層間変位がばね11に伝達されてばね11が伸び、この伸び縮みを歪み計20が測定することにより、層間変位を計測することができる。
【0015】
この場合、両端が固定された鋼線10は、地震時の振動により弦として挙動し、自重があることにより共振しやすい状態となる。共振すると、鋼線10に振れによる伸びが生じることになり、それがばね11の歪み計測する際の誤差となる。鋼線10の長手方向に沿って間隔的に配置した振れ止め20は、その誤差を最小に抑える機能を果たす。従って、振れ止め20を適切な間隔(後述)に配置することによって、様々な固有周期を持った構造物の層間変位を、小さな誤差で精確に測定することができるようになる。また、特に鋼線10としてインバー鋼線を使用しているので、温度変化の影響を受けずに高精度の層間変位計測を行うことができる。
【0016】
また、この層間変位計測装置は、鋼線10とばね11と振れ止め15と歪み計20だけで構成されているので、従来の光ファイバ式の層間変位計測装置に比べて安価である上、簡単に装備でき、しかも、床や天井の回転による影響も受けずに、精度の良い計測が可能である。
【0017】
次に地震時の鋼線10の共振による計測誤差と、誤差防止に有効な振れ止め15の配置間隔について検討してみる。表1に、鋼線10として使用するインバー鋼の機械的性質をステンレス鋼と比較して示す。また、歪み計20としては、表2に示すリング型変位計を使用する。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
まず、地震に伴う共振による振れの大きさについて解析してみる。
振れ止めがない場合の構成は、図2に示すようになる。この構成は、図3に示すような両端固定の梁モデルと見なすことができる。重量はインバー鋼線の自重のみであり、梁に均等分布している。
【0021】
この梁モデルの弦(インバー鋼線)の固有振動数f1は次式から算定することができる。
f1=1/(2L)√(T/ρ)
ただし、L :弦の長さ(cm)
T :弦の張力(dyn)
ρ :弦の線密度(kg/cm)
【0022】
ここでは、直径D=0.8mmのインバー鋼線を使用し、そのインバー鋼線に、使用するリング型変位計の必要張力(31N)の2倍の62Nの張力を加えるものとする。そうすると、弦(インバー鋼線)の長さに応じて、表3のような1次固有振動数の解析結果が得られる。
【0023】
【表3】
【0024】
一方、入力地震動について解析してみる。
ここでは、ある建物のモデルから得られた応答加速度を入力地震動として採用する。検討に用いる時刻歴加速度波形および加速度応答スペクトルを図4(a)、(b)に示す。この波形によれば、固有周期0.2秒(固有振動数5Hz)あたりで応答が大きくなることから、それを考慮して、インバー鋼線の拘束長さ(振れ止めの配置間隔)を決定する必要があることが分かる。
【0025】
地震応答解析で得た結果のうち、弦の長さに応じた最大応答変位分布および最大応答加速度を図5〜図8に示す。62Nの張力をインバー鋼線に加えたときには、図5に示すように、5mのインバー鋼線の場合、中央部で182mmの変位(振れ)がある。また、図8に示すように、0.5mのインバー鋼線の場合、中央部で1.28mmの変位(振れ)がある。従って、支点間の距離を小さくすれば、中央部の変位(振れ)をかなり小さくすることができることが分かる。この変位分布曲線を単純な円弧と仮定して、インバー鋼線の伸び量(計測誤差)を算出してみると、表4に示す結果となる。
【0026】
【表4】
【0027】
この結果から、10mm程度の歪み計測に対して無視できる誤差を有する弦の長さは、最大で700mmであると評価することができる。
【0028】
つまり、700mmの弦の長さの場合、5mに換算したときの弦の振れによる伸びの長さが0.513mmと小さく、無視できるが、1000mmの弦の長さの場合、5mに換算したときの弦の振れによる伸びの長さが7.741mmと大きくなり、無視できなくなる。
【0029】
従って、図9に示すように、5mのインバー鋼線の場合、最大でも700mm間隔で振れ止め15を配置することによって、振れの影響を受けずに、精度よく層間変位を計測できることになる。このときの支点間の弦の固有周期は、地震による建物の固有周期から外れているので、共振しにくい条件となる。
【0030】
このように、振れ止めの設置間隔の適切な設定により、最小限の振れ止め15を設けるだけで、様々な構造物の固有周期に対応した高精度の層間変位計測が可能となり、コスト上昇を抑えつつ最大の効果(高精度の計測ができる効果)を生むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の側面図である。
【図2】振れ止めがない場合の同様の側面図である。
【図3】鋼線の振動解析のための梁モデルを示す図である。
【図4】入力地震動のモデルを示す図で、(a)は時刻歴加速度波形、(b)は加速度応答スペクトルをそれぞれ示す図である。
【図5】弦の長さが5.0mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図6】弦の長さが1.0mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図7】弦の長さが0.7mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図8】弦の長さが0.5mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図9】弦の長さが5mのときの振れ止めの配置間隔を示す図である。
【図10】従来の層間変位計測装置の例を示す側面図である。
【図11】従来の層間変位計測装置の別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 上層床
2 下層床
10 鋼線(インバー鋼線)
11 ばね
12 両端
15 振れ止め
20 歪み計
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等による構造物の層間変位を鋼線の歪みを用いて計測する層間変位計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物等の構造物の層間変位計測装置として、図10に示すように、上層床(天井)1と下層床2に計測用の治具3、4を取り付け、計測用の治具3、4の相対変位を変位計101で計測するようにしたものや、図11に示すように、光ファイバセンサ102を上層床1と下層床2の間の壁5に取り付けて計測するようにしたものが知られている。前者のものは、例えば特許文献1にその一例が示されている。
【特許文献1】特開平5−99648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、図10に示すような計測用の治具3、4と変位計を用いるものは、上下層床1、2の局所的な回転や計測用の治具3、4自体の振動などによって誤差が大きくなり、高精度の計測ができないという問題がある。また、図11に示すような光ファイバセンサ102を用いるものは、装置が高額になる上、光ファイバの壁面5への取り付けが面倒である等の問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情を考慮し、低コストで簡単に装備できると共に、高精度に層間変位を計測することの可能な層間変位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の層間変位計測装置は、上層床の近傍と下層床の近傍に両端が固定され、かつ、ばねによる引張力により層間にブレース状に張設された鋼線と、層間変形に伴う前記ばねの伸縮量を検出する歪み計と、前記鋼線の長さ方向の変位を許容すると共に鋼線の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止めと、を具備することを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の層間変位計測装置において、前記振れ止めを、前記鋼線の長さ方向に所定の間隔をあけて配置したことを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の層間変位計測装置において、前記鋼線として、熱膨張の小さいインバー鋼線を使用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、次のように層間変位を計測することができる。即ち、地震による層間変位(主に水平方向のずれ)が上層床と下層床の間に生じると、上層床の近傍と下層床の近傍に両端を固定してブレース状に張設されている鋼線を介して層間変位がばねに伝達されてばねが伸縮し、この伸び縮みを歪み計で測定することにより、層間変位を計測することができる。
この場合、両端が固定された鋼線は、地震時の振動により弦として挙動し、自重があることにより共振する。共振すると、鋼線に振れによる伸びが生じてばねの歪み計測する際の誤差となるので、振れ止めはその誤差を最小に抑える機能を果たす。従って、振れ止めがあることにより、小さな誤差で精確に層間変位を測定することができる。
【0009】
また、この計測装置は、鋼線とばねと振れ止めと歪み計だけで構成されているので、光ファイバ式の層間変位計測装置に比べて安価である上、簡単に装備でき、しかも、床や天井の回転による影響も受けずに、精度の良い計測が可能である。
【0010】
請求項2の発明によれば、振れ止めの設置間隔の適切な設定により、最小限の振れ止めを設けるだけで、様々な構造物の固有周期に対応した高精度の層間変位計測が可能となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、張設する鋼線として、熱膨張係数がステンレス鋼線の約1/10のインバー鋼線を使用しているので、温度変化の影響を受けずに高精度の層間変位計測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の層間変位計測装置の概要を示している。この層間変位計測装置は、上層床1の近傍と下層床2の近傍に両端12が固定され、かつばね11により所定の引張力を持って層間にブレース状に張設された鋼線10と、ばね11の伸縮量を検出する歪み計20と、鋼線10の長さ方向の変位を許容すると共に鋼線10の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止め15と、を具備するものである。
【0013】
振れ止め15は、鋼線10の長さ方向に所定の間隔(後述)をあけて配置されており、鋼線10としては、熱膨張係数がステンレス鋼線の約1/10と小さいインバー鋼線が使用されている。
【0014】
この層間変位計測装置によれば、次のように上層床1と下層床2の間の層間変位を計測することができる。
即ち、地震による層間変位(主に水平方向のずれ)が上層床1と下層床2の間に生じると、上層床1の近傍と下層床2の近傍に両端12が固定されている鋼線10を介して層間変位がばね11に伝達されてばね11が伸び、この伸び縮みを歪み計20が測定することにより、層間変位を計測することができる。
【0015】
この場合、両端が固定された鋼線10は、地震時の振動により弦として挙動し、自重があることにより共振しやすい状態となる。共振すると、鋼線10に振れによる伸びが生じることになり、それがばね11の歪み計測する際の誤差となる。鋼線10の長手方向に沿って間隔的に配置した振れ止め20は、その誤差を最小に抑える機能を果たす。従って、振れ止め20を適切な間隔(後述)に配置することによって、様々な固有周期を持った構造物の層間変位を、小さな誤差で精確に測定することができるようになる。また、特に鋼線10としてインバー鋼線を使用しているので、温度変化の影響を受けずに高精度の層間変位計測を行うことができる。
【0016】
また、この層間変位計測装置は、鋼線10とばね11と振れ止め15と歪み計20だけで構成されているので、従来の光ファイバ式の層間変位計測装置に比べて安価である上、簡単に装備でき、しかも、床や天井の回転による影響も受けずに、精度の良い計測が可能である。
【0017】
次に地震時の鋼線10の共振による計測誤差と、誤差防止に有効な振れ止め15の配置間隔について検討してみる。表1に、鋼線10として使用するインバー鋼の機械的性質をステンレス鋼と比較して示す。また、歪み計20としては、表2に示すリング型変位計を使用する。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
まず、地震に伴う共振による振れの大きさについて解析してみる。
振れ止めがない場合の構成は、図2に示すようになる。この構成は、図3に示すような両端固定の梁モデルと見なすことができる。重量はインバー鋼線の自重のみであり、梁に均等分布している。
【0021】
この梁モデルの弦(インバー鋼線)の固有振動数f1は次式から算定することができる。
f1=1/(2L)√(T/ρ)
ただし、L :弦の長さ(cm)
T :弦の張力(dyn)
ρ :弦の線密度(kg/cm)
【0022】
ここでは、直径D=0.8mmのインバー鋼線を使用し、そのインバー鋼線に、使用するリング型変位計の必要張力(31N)の2倍の62Nの張力を加えるものとする。そうすると、弦(インバー鋼線)の長さに応じて、表3のような1次固有振動数の解析結果が得られる。
【0023】
【表3】
【0024】
一方、入力地震動について解析してみる。
ここでは、ある建物のモデルから得られた応答加速度を入力地震動として採用する。検討に用いる時刻歴加速度波形および加速度応答スペクトルを図4(a)、(b)に示す。この波形によれば、固有周期0.2秒(固有振動数5Hz)あたりで応答が大きくなることから、それを考慮して、インバー鋼線の拘束長さ(振れ止めの配置間隔)を決定する必要があることが分かる。
【0025】
地震応答解析で得た結果のうち、弦の長さに応じた最大応答変位分布および最大応答加速度を図5〜図8に示す。62Nの張力をインバー鋼線に加えたときには、図5に示すように、5mのインバー鋼線の場合、中央部で182mmの変位(振れ)がある。また、図8に示すように、0.5mのインバー鋼線の場合、中央部で1.28mmの変位(振れ)がある。従って、支点間の距離を小さくすれば、中央部の変位(振れ)をかなり小さくすることができることが分かる。この変位分布曲線を単純な円弧と仮定して、インバー鋼線の伸び量(計測誤差)を算出してみると、表4に示す結果となる。
【0026】
【表4】
【0027】
この結果から、10mm程度の歪み計測に対して無視できる誤差を有する弦の長さは、最大で700mmであると評価することができる。
【0028】
つまり、700mmの弦の長さの場合、5mに換算したときの弦の振れによる伸びの長さが0.513mmと小さく、無視できるが、1000mmの弦の長さの場合、5mに換算したときの弦の振れによる伸びの長さが7.741mmと大きくなり、無視できなくなる。
【0029】
従って、図9に示すように、5mのインバー鋼線の場合、最大でも700mm間隔で振れ止め15を配置することによって、振れの影響を受けずに、精度よく層間変位を計測できることになる。このときの支点間の弦の固有周期は、地震による建物の固有周期から外れているので、共振しにくい条件となる。
【0030】
このように、振れ止めの設置間隔の適切な設定により、最小限の振れ止め15を設けるだけで、様々な構造物の固有周期に対応した高精度の層間変位計測が可能となり、コスト上昇を抑えつつ最大の効果(高精度の計測ができる効果)を生むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の側面図である。
【図2】振れ止めがない場合の同様の側面図である。
【図3】鋼線の振動解析のための梁モデルを示す図である。
【図4】入力地震動のモデルを示す図で、(a)は時刻歴加速度波形、(b)は加速度応答スペクトルをそれぞれ示す図である。
【図5】弦の長さが5.0mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図6】弦の長さが1.0mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図7】弦の長さが0.7mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図8】弦の長さが0.5mのときの地震応答解析の結果を示す図で、(a)は最大応答変位分布、(b)は最大応答加速度を示す図である。
【図9】弦の長さが5mのときの振れ止めの配置間隔を示す図である。
【図10】従来の層間変位計測装置の例を示す側面図である。
【図11】従来の層間変位計測装置の別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 上層床
2 下層床
10 鋼線(インバー鋼線)
11 ばね
12 両端
15 振れ止め
20 歪み計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層床の近傍と下層床の近傍に両端が固定され、かつ、ばねによる引張力により層間にブレース状に張設された鋼線と、
層間変形に伴う前記ばねの伸縮量を検出する歪み計と、
前記鋼線の長さ方向の変位を許容すると共に鋼線の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止めと、
を具備することを特徴とする層間変位計測装置。
【請求項2】
前記振れ止めを、前記鋼線の長さ方向に所定の間隔をあけて配置したことを特徴とする請求項1に記載の層間変位計測装置。
【請求項3】
前記鋼線として、熱膨張の小さいインバー鋼線を使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の層間変位計測装置。
【請求項1】
上層床の近傍と下層床の近傍に両端が固定され、かつ、ばねによる引張力により層間にブレース状に張設された鋼線と、
層間変形に伴う前記ばねの伸縮量を検出する歪み計と、
前記鋼線の長さ方向の変位を許容すると共に鋼線の長さ方向と交差する方向の振れを規制する振れ止めと、
を具備することを特徴とする層間変位計測装置。
【請求項2】
前記振れ止めを、前記鋼線の長さ方向に所定の間隔をあけて配置したことを特徴とする請求項1に記載の層間変位計測装置。
【請求項3】
前記鋼線として、熱膨張の小さいインバー鋼線を使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の層間変位計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−25761(P2010−25761A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187761(P2008−187761)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(593168983)株式会社東北開発コンサルタント (1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(593168983)株式会社東北開発コンサルタント (1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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