説明

岩盤の円柱試験体作製装置

【課題】円柱試験体を掘削するコアバレルの回転軸のぶれを防止すると共に、コアバレルの内周面とコアバレル内の円柱試験体との接触並びに掘削中のコアバレル内の円柱試験体の欠片の剥落による円柱試験体の損傷を防止する。
【解決手段】円筒状のケーシング21と、ケーシング21の下端21bから突出すると共に下端21bに回転自在に支持される掘削手段24と、掘削手段24を回転させる第一の駆動手段22と、ケーシング21の周方向に互いに離して配置されケーシング21を狭持すると共にケーシング21の外周面と接触してケーシング21を回転可能に支持する車輪33と、車輪33を回転させる第二の駆動手段35とを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤の円柱試験体作製装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、岩盤の強度等を計測するための円柱形の試験体を岩盤から掘削して作製する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の円柱形の試験体を岩盤から掘削して作製する装置としては、例えば浅層掘削用ロータリー式ボーリング装置がある(特許文献1)。
【0003】
このボーリング装置100は、図8に示すように、水平架台101と、水平架台101から垂直に立ち上がる門形状の昇降用フレーム102と、昇降用フレーム102に沿って昇降する昇降台103と、昇降台103の昇降駆動手段として水平架台101上に固定される電気モータ104と、昇降台103に回転自在に支持されるボーリングロッド105と、ボーリングロッド105の先端に固定されると共に掘削用ビットを設けたり薄く加工した先端周縁を有するサンプラー(コアバレルとも言う)107と、ボーリングロッド105の回転駆動手段として昇降台103上に固定される電気モータ108とを有する。そして、電気モータ108を回転させてボーリングロッド105を介してコアバレル107を回転させると共に電気モータ104により昇降台103を矢印109の方向に下降させて送りを与えつつボーリングを進める。即ち、コアバレル107は、中心に配置されたボーリングロッド105によってのみ支持されると共に回転駆動力が与えられ、昇降台103の働きによって降下させられて先端周縁の掘削用ビットで掘削を行うものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−220987号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のボーリング装置100では、コアバレル107を支持すると共に回転駆動を伝達するボーリングロッド105を支持する機構は地上に設置されるボーリング装置100に設けられた昇降台103のみである。したがって、掘削を進めてボーリングロッド105の支持機構である昇降台103とコアバレル107が離れた場合には特にコアバレル107の回転軸がぶれ易く、試験体の表面に凹凸が生じたり形状が歪んでしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献1のボーリング装置100は、掘削用ビットを設けたり薄く加工したコアバレル107自体の先端周縁で地盤を掘削するものであるため、コアバレル107の内周面とコアバレル107内の円柱形の試験体(以下、円柱試験体と表記する)の側面との隙間が非常に小さい。したがって、掘削中に高速回転しているコアバレル107の回転軸がわずかにぶれただけでコアバレル107の内周面とコアバレル107内の円柱試験体の側面とが接触して円柱試験体を傷付けてしまうという問題がある。更に、掘削中に円柱試験体から剥落した岩盤の欠片が円柱試験体側面とコアバレル107内周面との間に入り、円柱試験体側面に噛み込んだりコアバレル107の回転により円柱試験体側面を転がったりすることによって円柱試験体を傷付けてしまうという問題がある。
【0007】
更に、特許文献1のボーリング装置100では、地盤の掘削手段であるコアバレル107をボーリングロッド105を介して回転させるモータが一つのみであり、作製する円柱試験体が大型の場合には、コアバレル107の回転動力として大出力の回転駆動手段が必要になると共に回転駆動手段が大型になって円柱試験体の掘削装置が大型化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、円柱試験体を掘削するコアバレルの回転軸のぶれを防止する岩盤の円柱試験体作製装置を提供することを目的とする。また、コアバレルの内周面とコアバレル内の円柱試験体との接触並びに掘削中のコアバレル内の円柱試験体の欠片の剥落による円柱試験体の損傷を防止する岩盤の円柱試験体作製装置を提供することを目的とする。更に、大出力且つ大型の回転駆動手段を必要としない岩盤の円柱試験体作製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の岩盤の円柱試験体作製装置は、円筒状のケーシングと、ケーシングの下端から突出すると共に下端に回転自在に支持される一つ若しくは二つ以上の掘削手段と、掘削手段を回転させる第一の駆動手段と、ケーシングの周方向に互いに離して配置されケーシングを狭持すると共にケーシングの外周面と接触してケーシングを回転可能に支持する三つ以上の車輪と、車輪のうちの少なくとも一つを回転させる第二の駆動手段とを有するようにしている。
【0010】
また、請求項2記載の岩盤の円柱試験体作製装置は、円筒状のケーシングと、ケーシングの下端から突出すると共に下端に回転自在に支持される一つ若しくは二つ以上の掘削手段と、掘削手段を回転させる第一の駆動手段と、ケーシングの外周面と接触してケーシングを回転可能に支持する周壁と、周壁との間でケーシングを狭持してケーシングを回転可能に支持する少なくとも一つの車輪と、車輪を回転させる第二の駆動手段とを有するようにしている。
【0011】
したがって、この岩盤の円柱試験体作製装置によると、ケーシングの先端周縁に配置された掘削手段を自転させると共に、掘削手段を支持するケーシングの外周を支持しながらケーシングを回転させて掘削手段を公転させることにより送りが与えられて円柱試験体の掘削が行われる。即ち、岩盤を掘削するためのケーシング自体の外周面を支持しながら回転させることにより掘削が行われる。
【0012】
また、掘削手段を自転させると共にケーシングに送りを与えて掘削手段を公転させることにより環状の掘削溝を形成し、その掘削溝内にケーシングを進入させて掘削が行われる。また、ケーシングを高速回転させてケーシング自体の先端周縁によって掘削を行うものではないので、ケーシングをゆっくりと回転させて掘削が行われる。
【0013】
更に、掘削手段を自転させる駆動手段とケーシングに回転を与えて掘削手段を公転させる駆動手段とを別個に設けることにより、岩盤の掘削に必要とされる駆動力が分散される。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の岩盤の円柱試験体作製装置において、車輪を傾斜させる第三の駆動手段を有するようにしている。この場合には、車輪の傾斜によりケーシングには回転と同時に昇降の推力が付与されるので、ケーシングを降下あるいは上昇させることができる。しかも、車輪の傾斜角度を変えることによりケーシングに与えられる推力が変わるので、ケーシングの昇降速度の調整を可能とし、ケーシングの昇降を制御しながら掘削が行える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の岩盤の円柱試験体作製装置によれば、掘削手段を支持するケーシングの外周を支持しながらケーシングを回転させて掘削手段を公転させることにより円柱試験体の掘削が行われるので、ケーシングの回転軸のぶれを抑えた円柱試験体の掘削が可能であり、表面の凹凸や形状の歪みがない円柱試験体を作製することができる。
【0016】
また、ケーシングのぶれが抑制されると共に、環状の掘削溝を形成することにより円柱試験体とケーシングとの間に十分な隙間が確保されるので、円柱試験体とケーシングの内周面とが接触して試験体を傷付けることがなく、傷のない良好な試験体を作製することができる。また、掘削手段が自転により岩盤を掘削し、ケーシングは掘削手段に送りを与えるだけなので高速回転させる必要がなく、更に環状の掘削溝を形成することにより円柱試験体とケーシングとの間に十分な隙間が確保される。したがって、試験体の一部が剥落しても剥落した欠片はケーシングの回転に巻き込まれることなくそのまま下に落ち、円柱試験体とケーシングとの間に噛み込まれて円柱試験体を傷付ける虞がなく、傷のない良好な試験体を作製することができる。
【0017】
更に、掘削手段を自転させる駆動手段とケーシングに送りを与えて掘削手段を公転させる駆動手段とを別個に設けることにより岩盤の掘削に必要とされる駆動力を分散させているので、大出力且つ大型の駆動手段を必要としないと共に駆動手段が大きくなって作製装置が大型化することがない。
【0018】
更に、車輪の傾斜によりケーシングに回転と同時に昇降の推力が付与されるので、ケーシングを上げ下げさせる大掛かりな昇降台とその動力源が不要となり、装置がその分コンパクトになる。また、ケーシングに与える推力を変えてケーシングの昇降を制御しながら掘削が行われるので、岩盤の硬さに合わせて掘削速度を調整して効率的な掘削を行うことができる。また、岩盤が硬くケーシングの自重だけでは掘削を進めることができない場合でも、自重に加えて更にケーシングに降下方向の推力を与えることによって硬い岩盤の掘削を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1から図7に、本発明の岩盤の円柱試験体作製装置の実施形態の一例を示す。
【0021】
この円柱試験体作製装置1は、円筒状のケーシング21と、ケーシング21の下端21bから突出すると共に下端21bに回転自在に支持される掘削手段24と、掘削手段24を回転させる第一の駆動手段22と、ケーシング21の周方向に互いに離して配置されケーシングを狭持すると共にケーシング21の外周面と接触してケーシング21を回転可能に支持する車輪33と、車輪33を回転させる第二の駆動手段35とから構成されている。
【0022】
ケーシング21の大きさは作製する円柱試験体42の直径及び高さに合わせて設定される。具体的には、円柱試験体42の直径は掘削手段24の内側の軌跡の直径によって一義的に定められると共にロッド23はその内側の軌跡よりも外側にあることが必要とされ、これら円柱試験体42とロッド23とを内側に収容可能な直径及び高さにケーシング21の大きさが定められる。なお、円柱試験体42の大きさは、円柱試験体として必要とされる大きさであればどのような大きさであっても構わない。また、ケーシング21は一定の剛性を有する材料により形成され、具体的には例えば、鋼材により形成される。
【0023】
第一の駆動手段22はケーシング21の上端部21aに据え付けられた例えばモータである。第一の駆動手段22は各掘削手段24毎に装備されており独立制御される。
【0024】
本実施形態では、第一の駆動手段22の回転駆動を掘削手段24に伝達するためにロッド23を設けるようにしている。ロッド23はケーシング21の軸心と平行で且つケーシング21の内側に同心円上に配置され、一方の端部が第一の駆動手段22に連結されると共に、他方の端部に取り付けた掘削手段24がケーシング21の下端部21bから突出するようにケーシング21を貫通している。
【0025】
本実施形態では、掘削手段24の冷却及び掘削手段24と岩盤40との間の摩擦力の低減のためにロッド23の軸心部分に掘削面に水を供給するための水路23aを設けている。この水路23aは掘削手段24も貫通し、これにより掘削溝41の底にあたる掘削面に水が供給される。なお、ケーシング21の上端部21a側から回転するロッド23の内部の水路23aに水を供給するため、上端部21aにウォータースイベル25を設けて水路23a内に注水するようにしている。
【0026】
ロッド23はケーシング21の上端部21aに固定されたウォータースイベル25によって回転自在に支持されると共に、下端部21bに固定されたベアリング27によって回転自在に支持される。なお、第一の駆動手段22の駆動力のロッド23への伝達方法は特に限定されるものではなく、本実施形態のように第一の駆動手段22のモータシャフトとロッド23とを直接結合するようにしても良いし、又はギアやベルトを介して伝達するようにしても良い。また、ギアやベルトを介して駆動力を伝達する場合には、各ロッド23を単一の駆動手段で回転させるようにしても良い。
【0027】
掘削手段24はロッド23の先端に締め付けボルトで着脱自在に取り付けられている。掘削手段24としては例えば一般的な掘削用ビットを使用することができる。本実施形態では、具体的には、ダイヤモンドの粉末をマトリックスの粉末金属に混合して焼結法又は鋳造法で製造したダイヤビットを用いている。
【0028】
また、ケーシング21の下端部21bには、掘削完了後に試験体42を取り出すための楔状の切断用爪26を必要に応じて備える(図5、図6)。この切断用爪26は、岩盤40の掘削中は試験体42に接触しない位置にあり、掘削終了後に例えば油圧によってケーシング21の内側に突出することにより試験体42の底部を切断する。
【0029】
本実施形態では、六基の掘削ユニットを備えている。掘削ユニットは、第一の駆動手段22、ロッド23及び掘削手段24で構成される。なお、一つの円柱試験体作製装置1に複数の掘削ユニットを設ける場合には、ケーシング21の軸心を中心とする円周上に等間隔に掘削ユニットを配置し、ケーシング21が回転した場合にケーシング21に偏った力がかからないようにすることが望ましい。本実施形態では、ケーシング21の上端部21aに等間隔に掘削ユニットを配置している。
【0030】
車輪33はケーシング21を支持するのに十分な剛性並びにケーシング21の外周面と接してケーシング21を回転させるのに十分な摩擦力を少なくとも備えるものであれば良い。本実施形態では、車輪33としてゴム車輪が用いられている。
【0031】
また、本実施形態では、ケーシング21の昇降を制御しながら岩盤40の掘削を効率的に行うようにするため、ゴム車輪33を傾斜させて回転と同時にケーシング21に昇降の推力を与える第三の駆動手段36を有するようにしている。
【0032】
ゴム車輪33は、ディスク状の支持基台32cの上に起立するブラケット32dに車軸37を介して回転自在にそれぞれ支持されている。一組のゴム車輪33は、傾斜していない状態ではケーシング21の軸心と平行な軸上に上下に配置され、ユニバーサルジョイント34でそれぞれの車軸37が連結されると共に、上側のゴム車輪33の車軸37に第二の駆動手段35が直結されている。したがって、第二の駆動手段35の駆動によって上のゴム車輪33と下のゴム車輪33とが同じ方向に同期回転する。
【0033】
ディスク状支持基台32cは大径部と小径部とからなる段付きディスクで形成され、小径部を支持板32bの円形の支持穴に挿入された状態で押さえ板32eをビス止めすることによって支持板32bに対して回転自在に支持されている。
【0034】
各ディスク状支持基台32cの大径部には、周縁にギアが形成されており、上下のディスク状支持基台32cの間に配置されている駆動ピニオン38とそれぞれ噛合するように設けられている。駆動ピニオン38は、支持板32bに据え付けられた第三の駆動手段36のモータシャフトに固定されている。なお、上と下のディスク状支持基台32cは大きさが等しく且つギアが同一の形状をしており、駆動ピニオン38とのギア比が同じになっている。したがって、第三の駆動手段36を駆動させて駆動ピニオン38を回転させると、上のディスク状支持基台32cと下のディスク状支持基台32cとが同じ向きに同じ角度だけ回転し、各ディスク状支持基台32cに搭載されているゴム車輪33を傾斜させようとする。即ち、同じ傾斜角で同じ方向に傾斜しようとする(図7)。このとき、上下のゴム車輪33の車軸37は等速ユニバーサルジョイント34を介して連結されているので、両車軸37に傾きを与えながら第二の駆動手段35の回転駆動を伝達することができる。なお、第三の駆動手段36は、例えばモータ又は流体圧揺動モータである。
【0035】
本実施形態では、ゴム車輪33と傾斜機構とを含む支柱32は架台31に支持されて地盤・岩盤上に据え付けられる。架台31は、支柱32を固定する枠体31a、アーム31c及び脚部31dから構成される。なお、枠体31aの中央部にはケーシング21が昇降するための貫通孔31bが設けられている。
【0036】
支柱32は、ケーシング21の周方向に配置され、貫通孔31b内にケーシング21を起立させた場合に、ブラケット32dを介して支柱32の支持基台32cに支持される車軸37に固定された車輪33がケーシング21の外周面と接する位置で枠体31aに固定される。この構成により、車輪33がケーシング21の周方向に配置され、ケーシング21の外周面と接触してケーシング21を回転可能に支持することができる。なお、ケーシング21を支持するために周方向に少なくとも三組の車輪33が必要である。また、支持力の偏りをなくしてケーシング21を安定的に支持するために車輪33は周方向に等間隔に配置することが望ましいが、ケーシング21を支持可能であれば不等間隔であっても構わない。本実施形態では、ケーシング21の支持の安定性を高めるために四組の車輪33をケーシング21の周方向に等間隔に配置している。
【0037】
第二の駆動手段35は支柱32の上板32aに固定され、例えばモータである。なお、第二の駆動手段35の駆動力の車軸37への伝達方法は特に限定されるものではなく、本実施形態のように第二の駆動手段35のモータシャフトと車軸37とを直接結合するようにしても良いし、又はギアやベルトを介して伝達するようにしても良い。
【0038】
枠体31aは、本実施形態では、長い辺と短い辺の二種類の辺が交互に繋がって構成される八角形に形成されている。そして、アーム31cが枠体31aの四つの短い辺のそれぞれから放射状に張り出して四本設けられる。更に、脚部31dが四本のアーム31cのそれぞれの先端に備えられ、掘削しようとする地点から十分に離れて枠体31aを岩盤40の地表面40aに固定して支持する。脚部31dは、枠体31aを水平に保つために高さ調整が可能であることが望ましい。具体的には例えば、本実施形態のように高さ調整可能なねじ付き脚部31dを用いたり、ジャッキを用いることが考えられる。
【0039】
本実施形態では、四基の回転昇降ユニットを枠体31aの短い辺の位置に設けている。回転昇降ユニットは、支柱32、ゴム車輪33(本実施形態では二つ)、車軸37、等速ユニバーサルジョイント34、第二の駆動手段35及び第三の駆動手段36で構成される。
【0040】
上述した円柱試験体作製装置1の動作を以下に説明する。
【0041】
まず、円柱試験体42を作製する位置の地表面40aに枠体31aを設置し、四本のアーム31cを展開してねじ付き脚部31dを調整して枠体31aが水平になるように固定する。そして、ケーシング21の下端部21bから突出した掘削手段24が地表面40aから例えば数cm程度離れた位置となるようにケーシング21の位置を調整しておく。
【0042】
第一の駆動手段22を始動すると、回転駆動がロッド23を介して掘削手段24に伝わり、ケーシング21の下端部21bから突出した掘削手段24が回転する。
【0043】
また、第二の駆動手段35を始動すると、回転駆動が車軸37並びに等速ユニバーサルジョイント34を介してゴム車輪33に伝わり、ケーシング21の外周を支持しているゴム車輪33の回転によりケーシング21が回転する。
【0044】
これにより、掘削手段24が自転しながら公転して掘削を行い、更に、ケーシング21及び六基の掘削ユニットの自重によってケーシング21に下降方向の力が働く。したがって、岩盤40の固さによっては上記の動作によってケーシング21が降下して掘削を進めることができる。なお、この場合には、ディスク状支持基台32cを回転自在にしておくか又はケーシング21が降下する向きに始めから傾けておく。
【0045】
岩盤40が硬くケーシング21等の自重だけでは掘削ができない場合や時間がかかって効率的でない場合には、更に車輪33に傾きを与えてケーシング21にかかる推力を増大させるため、第三の駆動手段36を駆動させて駆動ピニオン38を回転させる。駆動ピニオン38を回転させると、上のディスク状支持基台32cと下のディスク状支持基台32cとが同じ向きに同じ角度だけ回転して各ディスク状支持基台32cに搭載されているゴム車輪33が傾斜する。それにより、ゴム車輪33の回転駆動によって回転しているケーシング21にケーシング21の軸心方向に下降させる力がかかってケーシング21が降下する。なお、ゴム車輪33がケーシング21に接しながら回転することにより生じるケーシング21とゴム車輪33との接点における力の向きが下向きになる方向にゴム車輪33を傾斜させた場合にケーシング21は降下する。
【0046】
上記により、掘削手段24が自転しながら公転すると共に降下する。これにより、掘削手段24の自転により岩盤40に穴をあけ、更に掘削手段24の公転により穴が円周方向に移動して溝となり、溝が繋がると環状の掘削溝41を形成する。更に、環状の掘削溝41の中にケーシング21が進入しながら岩盤40の掘削を進める。そして、円柱試験体42の高さが所定の高さ(地表面40aを基準にすると所定の深さ)になるまで掘削することにより、底部が岩盤40と繋がった状態の円柱試験体42が作製される。
【0047】
上記により作製された円柱試験体42は底部が岩盤40と繋がった状態のまま現地試験を行う試料として用いても良いし、又は切断用爪26により底部を切断した後に取り出して試験用試料として用いても良い。
【0048】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、掘削ユニットを六基設けるようにしているが、これには限られず、掘削ユニットは少なくとも一つあれば足り、掘削の効率を考慮すると好ましくは二つ以上、より好ましくは三つ以上である。なお、少なくとも一つの掘削ユニットがあれば、掘削手段24が公転することにより環状の掘削溝41を形成して円柱試験体42の掘削を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、回転昇降ユニットを四つ設けるようにしているが、これに限られず、ケーシング21の軸心を固定して支持するために回転昇降ユニットを少なくとも三つ設けるようにすれば良い。なお、回転昇降ユニットの数が多いほどケーシング21をより安定的に支持すると共に回転並びに昇降させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、ケーシング21の回転のために全てのゴム車輪33を第二の駆動手段35により駆動させるようにしているが、これには限られず、少なくとも一つのゴム車輪33を第二の駆動手段35により駆動させるようにすれば良い。この場合にも、回転昇降ユニットから第二の駆動手段35を除いたもので支持昇降ユニットを構成し、例えば少なくとも二つの支持昇降ユニットと一つの回転昇降ユニットとを設けたり、又は少なくとも一つの支持昇降ユニットと二つの回転昇降ユニットとを設けたりすることにより、ケーシング21を安定的に支持すると共に回転並びに昇降を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、ケーシング21の昇降のために全てのゴム車輪33を第三の駆動手段36により傾斜させるようにしているが、これには限られず、第三の駆動手段36を一つも設けずにディスク状支持基台32cを回転自在にしたりケーシング21が降下する向きに始めから傾けて配置しておくようにしても良いし、又は少なくとも一つのゴム車輪33を第三の駆動手段36により傾斜させるようにすれば良い。この場合にも、回転昇降ユニットから第三の駆動手段36を除いたもので回転ユニットを構成し、例えば少なくとも二つの回転ユニットと一つの回転昇降ユニットとを設けたり、又は少なくとも一つの回転ユニットと二つの回転昇降ユニットとを設けたりすることにより、ケーシング21を安定的に支持すると共に回転並びに昇降を行うことができる。更に、回転昇降ユニットから第二の駆動手段35及び第三の駆動手段36を除いたもので支持ユニットを構成し、例えば少なくとも二つの支持ユニットと一つの回転昇降ユニットとを設けたり、又は少なくとも一つの支持ユニットと二つの回転昇降ユニットとを設けたりするようにしても良い。
【0052】
また、本実施形態では、ケーシング21の外周面と接触してケーシング21を回転可能に支持する支持手段としてゴム車輪33を用いるようにしているが、これに限られず、ケーシング21の外周面を摺動可能に支持する周壁を設けるようにしても良い。この場合には、周壁と少なくとも一つの車輪33とでケーシングを狭持するように周壁及び車輪33を配置する。具体的には例えば、少なくとも二つの周壁と一つの回転昇降ユニット若しくは回転ユニットをケーシング21の周方向に設けるようにしても良いし、又はケーシング21の外周面を周方向に例えば半分若しくは四分の三程度摺動可能に支持する一つの周壁を設けると共に周壁が途切れてケーシング21の外周面が露出している位置に回転昇降ユニット若しくは回転ユニットを設けるようにしても良い。この場合にも、ケーシング21を安定的に支持すると共に回転・昇降を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、一つの回転昇降ユニットに、傾斜していない状態ではケーシング21の軸心と平行な軸上に上下にゴム車輪33を二つ設けるようにしているが、これには限られず、車輪を一つ設けるようにしても良いし、又は三つ以上設けるようにしても良い。少なくとも一つの車輪があればケーシング21を安定的に支持すると共に回転並びに昇降を行うことができる。また、車輪33としてゴム車輪を用いているが、これには限られず、鋼車輪でも良い。更に、ケーシング21に回転力を与える車輪以外の車輪、即ち単にケーシングを支持するだけのゴム車輪33の代わりに球体を用いてベアリング構造でケーシング21を支持するようにしても良い。
【0054】
また、本実施形態では、第一の駆動手段22の回転駆動を掘削手段24に伝達するためにロッド23を設けるようにしているが、これには限られず、例えば、第一の駆動手段22として十分な出力が可能で且つ掘削手段24と同程度の直径の駆動手段を用いる場合には、ケーシング21の下端部21bの内側即ち本実施形態ではロッド23を収容している場所に駆動手段を収容し、その駆動手段のモータシャフトと掘削手段24を直接連結するようにしても良い。
【0055】
更に、本実施形態では、第一の駆動手段22により掘削手段24を自転させるようにしているが、これには限られず、掘削手段24を固定するようにしても良い。この場合にも、ケーシング21に送りを与えて掘削手段24を公転させることにより岩盤40の掘削を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の岩盤の円柱試験体作製装置の実施形態の一例を示す縦断面図で、掘削開始前の状態を示す。
【図2】本発明の岩盤の円柱試験体作製装置の実施形態の一例を示す横断面図である。
【図3】実施形態の円柱試験体作製装置のケーシングの上端部分を拡大した図である。
【図4】実施形態の円柱試験体作製装置のケーシングの下端部分を拡大した図である。
【図5】切断用爪を備えるようにした場合のケーシングの下端部分を拡大した図である。
【図6】切断用爪を備えるようにした場合の掘削手段及び切断用爪の配置を説明するケーシングの横断面図である。
【図7】本実施形態の支柱をケーシング側から見た図である。(A)は掘削開始前の状態を示す図である。(B)は車輪が傾斜した状態を示す図である。
【図8】従来のボーリング装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 円柱試験体作製装置
21 ケーシング
21b ケーシングの下端
22 第一の駆動手段
24 掘削手段
33 車輪
35 第二の駆動手段
36 第三の駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端から突出すると共に前記下端に回転自在に支持される一つ若しくは二つ以上の掘削手段と、前記掘削手段を回転させる第一の駆動手段と、前記ケーシングの周方向に互いに離して配置され前記ケーシングを狭持すると共に前記ケーシングの外周面と接触して前記ケーシングを回転可能に支持する三つ以上の車輪と、前記車輪のうちの少なくとも一つを回転させる第二の駆動手段とを有することを特徴とする岩盤の円柱試験体作製装置。
【請求項2】
円筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端から突出すると共に前記下端に回転自在に支持される一つ若しくは二つ以上の掘削手段と、前記掘削手段を回転させる第一の駆動手段と、前記ケーシングの外周面と接触して前記ケーシングを回転可能に支持する周壁と、前記周壁との間で前記ケーシングを狭持して前記ケーシングを回転可能に支持する少なくとも一つの車輪と、前記車輪を回転させる第二の駆動手段とを有することを特徴とする岩盤の円柱試験体作製装置。
【請求項3】
前記車輪を傾斜させる第三の駆動手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の岩盤の円柱試験体作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−146476(P2007−146476A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342029(P2005−342029)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】