説明

崩壊剤

【課題】 口腔内崩壊錠のすばやい崩壊を実現するために、吸水速度の速い崩壊剤が求められている。崩壊剤への水の浸透速度を速めることで、短時間に多量の水を吸収し膨潤することのできる崩壊剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 疎水性粉体(B)と水で予め膨潤させた水膨潤性高分子(A)を混合した後に乾燥させて粒子化することにより疎水性粉体(B)を水膨潤性高分子(A)の内部に含有することを特徴とする崩壊剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は崩壊剤に関する。より詳細には、水をすばやく吸収することで優れた崩壊性を発揮する崩壊剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品分野などにおいて、固形製剤が口腔内、胃、腸などの体内ですばやく崩壊し、有効成分を放出させるための添加剤として崩壊剤と呼ばれる諸種の物質が使用されている。崩壊剤は水分を吸って膨張し錠剤を崩壊させ、有効成分の放出を容易にする機能を有する。
現在、崩壊剤としては、デンプン誘導体、セルロース誘導体などの天然由来高分子、架橋ポリビニルピロリドンなどの合成高分子が主に用いられている。
【0003】
優れた崩壊性能を発現させるためには崩壊剤がすばやく液体を吸収し、適度に膨潤する必要がある。固形製剤の崩壊速度を高めるためには、崩壊剤の添加量を増加させることで実現可能であるが、そのために固形製剤が大きくなり、経口投与が困難になる、固形製剤の硬度が低下してしまうなどの問題が発生する。
崩壊剤の改良により崩壊速度を向上させる手段としては、セルロース誘導体を界面活性剤などで表面処理した崩壊剤(特許文献1)や、セルロース誘導体に糖などの水溶性物を含浸させる方法(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000―351737号公報
【特許文献2】特開2002―104956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、嚥下機能の低い高齢者や小児、水分摂取制限のある患者などにとって服用しやすい剤形を開発することにより、服用者のさらなるクオリティ・オブ・ライフの向上と服薬コンプライアンスの改善のためには、現行の口腔内崩壊錠では崩壊速度が十分であるとは言えず、より崩壊時間の短い口腔内崩壊錠のニーズがある。
そこで、水膨潤性高分子内部に特定の物質を含有させることで水膨潤性高分子内部への水の浸透速度を速め、短時間で多量の水を吸収し膨潤する崩壊剤を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、疎水性粉体(B)と水で予め膨潤させた水膨潤性高分子(A)を混合した後に乾燥させて粒子化することにより、疎水性粉体(B)を水膨潤性高分子(A)の内部に含有し、該水膨潤性高分子(A)の水膨潤率が200〜1000%であることを特徴とする崩壊剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の崩壊剤は口腔内崩壊錠に適用した場合に、速い吸水速度を有するため、優れた崩壊性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、水で予め膨潤させた水膨潤性高分子(A)に疎水性粉体(B)を混合した後に、乾燥させて粒子化させることにより疎水性粉体(B)が水膨潤性高分子(A)の内部に存在させた組成物である。
疎水性粉体(B)が水膨潤性高分子(A)の内部に存在することにより本組成物の吸水速度が高まるため、本組成物を崩壊剤として使用した場合に優れた崩壊性能を発揮する。
すなわち、本発明の崩壊剤は、疎水性粉体(B)が水膨潤性高分子(A)の内部に存在するため、水膨潤性高分子(A)単独の場合、あるいは疎水性粉体(B)が水膨潤性高分子(A)の表面に存在する場合に比べて、短時間で水を吸収し膨潤することが可能である。
【0009】
本発明の水膨潤性高分子(A)は、下記数式(1)で定義される水膨潤率が200〜1000%、好ましくは200〜800である。200未満では水を吸った時の体積増加が少なすぎ崩壊性が不十分となり、1000を超えると膨潤に必要な水が多くなりすぎ好ましくない。
【0010】
水膨潤率(%)=[W−W]/W×100 (1)
【0011】
但し、Wは水を30分間吸収させた後の水膨潤性高分子または崩壊剤の重量(g)であり、Wは水吸収前の乾燥した水膨潤性高分子または崩壊剤の重量(g)である。
【0012】
また、下記数式(2)で定義された5秒後の水膨潤率を初期水膨潤率とする。
【0013】
初期水膨潤率(%)=[W−W]/W×100 (2)
【0014】
但し、Wは水を5秒間吸収させた後の水膨潤性高分子または崩壊剤の重量(g)であり、Wは水吸収前の乾燥した水膨潤性高分子または崩壊剤の重量(g)である。
この初期水膨潤率は短い時間での水の吸収し易さの指標であり、崩壊剤の崩壊速度に影響する。
さらに初期水膨潤率/水膨潤率は水の吸収速度の指標であり、通常0.8〜1.0、好ましくは0.9〜1.0である。
【0015】
水膨潤性高分子(A)または崩壊剤の水膨潤率、初期水膨潤率は以下の方法によって測定し、数式に従って計算する。
<水膨潤率測定法>
(1)試験試料約2gをパルプ紙(日本製紙クレシア社製キムワイプS−200;12.0cm×21.5cm)の上に乗せ、こぼれないように折りたたんで、ステープルで留める。
(2)20℃のイオン交換水に30分間浸漬させた後、取り出す。
(3)取り出した試料を金網(目開き1〜10mm)上に置いて30秒間水を切った後、重量wを測定する。1種類の試料につき同様の測定を3回行い、平均値を求める。
(4)試験試料を入れないパルプ紙のみでも操作(1)から(3)の操作を同様に行い、操作(1)後のパルプ紙とステープラーの合計の重量をpとし操作(3)後のパルプ紙とステープラーの合計の重量をpとする。
(5)求められたwからパルプ紙とステープラーの重量増加分(p−p)を引いたものをWとする。
(6)初期水膨潤率の場合は、浸漬時間を5秒間とし、同様にして重量Wを測定する。
【0016】
本発明における水膨潤性高分子(A)の重量平均分子量は、通常10,000〜1000,000であるものを指す。
水膨潤性高分子(A)の重量平均分子量の測定条件は、水膨潤性高分子(A)を溶解させることのできる適切な溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、適切な物質を標準物質として求められるが、溶媒の種類と標準物質は特に限定はされない。
【0017】
たとえば水膨潤性高分子(A)がクロスカルメロースナトリウムの場合、重量平均分子量は以下の条件で測定される。
(重量平均分子量測定条件例)
GPC装置:東ソー社製 HLC−8120GPC
検量線物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製 TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE)
カラム:東ソー社製 TSK gel G5000pwXL、TSK gel G3000pwXL
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:水/メタノール(体積比70/30)
流速:1.0ml/分
試料濃度:0.25%
注入量:200μl
【0018】
水膨潤性高分子(A)の種類としては特に限定はなく、セルロース誘導体、デンプン誘導体などの天然系高分子とその誘導体、ポリビニルピロリドン架橋物、ポリ(メタ)アクリル酸架橋物などの合成系高分子等が使用できる。
【0019】
水膨潤性高分子(A)として使用される天然系高分子の例としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース;ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、部分アルファー化デンプン、アクリル酸デンプン;ゼラチン、加水分解ゼラチン、コハク化ゼラチン、大豆レシチン、デキストラン、プルランなどが挙げられる。
【0020】
水膨潤性高分子(A)として使用される合成系高分子の例としては、ポビドン、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
水膨潤性高分子(A)のうち膨潤度の観点から好ましいものは、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン、クロスポビドンである。
水膨潤性高分子(A)は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
医薬用の錠剤用の崩壊剤の原料として用いる水膨潤性高分子(A)としては、各国の薬局方及び医薬品添加物規格等に収載されているもの、または食品衛生法で規定された食品添加物から選択することが好ましい。
【0023】
本発明の崩壊剤のもう1つの必須成分である疎水性粉体(B)は、疎水性の粉体であれば特にその化学組成は限定されないが、20℃における水への溶解度が1000mg/100mL以下、好ましくは900mg/100mL以下の粉体である。
疎水性でないと崩壊剤への水の浸透速度が向上しない。
【0024】
本発明の崩壊剤で使用できる好適な疎水性粉体(B)の具体例としては、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸またはその塩、長鎖脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0025】
疎水性粉体(B)のうち、体内での安全性の観点から好ましいのは炭素数8〜30の脂肪酸、およびその金属塩である。
【0026】
炭素数8〜30の脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ダイマー酸及びベヘニン酸等が挙げられる。
その金属塩としては亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムとの塩{たとえば、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等}が挙げられる。
【0027】
疎水性粉体(B)として使用される脂肪酸およびその金属塩のうち、疎水性の観点から、好ましくはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムであり、さらに好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
【0028】
疎水性粉体(B)は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
疎水性粉体(B)の重量平均粒子径は、1〜100μmが好ましく、さらに好ましくは2〜50μm、特に好ましくは3〜20μmである。この範囲であると、崩壊剤中の疎水性粉体(B)の分散性が良好となる。
【0030】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。
すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0031】
水膨潤性高分子(A)と疎水性粉体(B)は単に配合するだけでは性能を発揮せず、疎水性粉体(B)が水膨潤性高分子(A)の内部に存在するように混合されていなければならない。
しかし、その混合方法としては、疎水性粉体(B)が水膨潤性高分子(A)の内部に存在するように混合されればその手段に特に制限がない。なお、混合は、練り込むように均一混合することが好ましい。
【0032】
疎水性粉体(B)が脂肪酸塩の場合、水酸化マグネシウムなどの金属の水酸化物と脂肪酸を混合して入れてもよいし、個別に入れてもよい。
【0033】
疎水性粉体(B)は、水で予め膨潤させた水膨潤性高分子(A)の含水ゲルに混合する。
疎水性粉体(B)を含有する水膨潤性高分子(A)の含水ゲルは、必要に応じて細断することができる。
【0034】
水で予め膨潤させた水膨潤性高分子(A)の乾燥中に疎水性粉体(B)を混合する場合、混合装置としては、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機等の通常の装置が使用できる。
【0035】
水膨潤性高分子(A)に対する疎水性粉体(B)の含有量は通常0.1〜520重量%、好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。0.1重量%未満では吸収速度向上の効果が低く、20重量%を超えると水膨潤性高分子(A)表面に存在する疎水性粉体(B)が多くなり水の吸収を阻害する。
【0036】
本発明の崩壊剤中には、水膨潤性高分子(A)、疎水性粉体(B)の他に、本発明以外の崩壊剤や、基剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、増粘剤、安定剤、保存剤、コーティング剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、着香剤、着色剤など適切な添加剤を含有しても差しつかえない。
【0037】
崩壊剤の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、固形製剤化時の成形性の観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0038】
本発明の崩壊剤は、医薬用、食品用、農薬用、肥料用などに使用でき、それぞれ医薬用固形製剤、食品用固形組成物、農薬用固形組成物、肥料用固形組成物となる。
特に、医薬用固形製剤として、非常に有用である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0040】
実施例1
クロスカルメロースナトリウム(A−1)(旭化成ケミカルズ社製キッコレートND−2HS)100部とイオン交換水100部をビーカーに入れて、混合攪拌し含水ゲルを得た。
次にこの含水ゲル100部をミンチ機(ROYAL社製12VR−400K)で裁断しながら、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部を添加して混合し、細断ゲルを得た。さらに細断ゲルを通気型バンド乾燥機(150℃、風速2m/秒)で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕し崩壊剤粉体(X−1)を得た。
【0041】
実施例2
実施例1において、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部をステアリン酸カルシウム(B−2)2.5部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の崩壊剤粉体(X−2)を得た。
【0042】
実施例3
実施例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(A−2)(信越化学工業社製;L−HPC LH−22)100部とし、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部をステアリン酸(B−3)(花王社製日本薬局方精製ステアリン酸750V)1.0部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の崩壊剤粉体(X−3)を得た。
【0043】
実施例4
実施例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(A−2)100部とし、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部をステアリン酸マグネシウム(B−1)0.25部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の崩壊剤粉体(X−4)を得た。
【0044】
実施例5
実施例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部をクロスポビドン(A−3)(BASF社製コリドンCL)100部とし、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部をステアリン酸カルシウム(B−2)0.5部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の崩壊剤粉体(X−5)を得た。
【0045】
実施例6
実施例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部をクロスポビドン(A−3)100部とし、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部をステアリン酸マグネシウム(B−1)2.5部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の崩壊剤粉体(X−6)を得た。
【0046】
比較例1 <疎水性粉体を添加しない崩壊剤粉体の製造方法>
クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部、及びイオン交換水100部を攪拌、混合し含水ゲルを得た。次にこの含水ゲル100部をミンチ機で裁断し細断ゲルを得た。さらに細断ゲルを通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサーにて粉砕し崩壊剤粉体(X’−1)を得た。
【0047】
比較例2
比較例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(A−2)100部とした以外は、比較例1と同様な操作を行い、崩壊剤粉体(X’−2)を得た。
【0048】
比較例3
比較例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部をクロスポビドン(A−3)100部とした以外は、比較例1と同様な操作を行い、崩壊剤粉体(X’−3)を得た。
【0049】
比較例4 <Bを単純に混合するだけの製造方法>
クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部にステアリン酸カルシウム(B−2)2.5部を添加して混合し崩壊剤粉体(X’−4)を得た。
【0050】
比較例5
比較例4において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(A−2)100部とし、ステアリン酸カルシウム(B−2)2.5部をステアリン酸マグネシウム(B−1)5.0部とした以外は、比較例4と同様な操作を行い、崩壊剤粉体(X’−5)を得た。
【0051】
比較例6
比較例4において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部をクロスポビドン(A−3)100部とし、ステアリン酸カルシウム(B−2)2.5部をステアリン酸マグネシウム(B−1)0.5部とした以外は、比較例4と同様な操作を行い、崩壊剤粉体(X’−6)を得た。
【0052】
比較例7
実施例1において、クロスカルメロースナトリウム(A−1)100部をクロスポビドン(A−3)100部とし、ステアリン酸マグネシウム(B−1)0.05部をマンニトール(B’−1)(東和化成工業社製マンニットP)2.5部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、崩壊剤粉体(X’−7)を得た。
【0053】
実施例1〜6で作成した本発明の崩壊剤粉体(X−1)〜(X−6)、および比較例1〜7で作成した比較のための崩壊剤粉体(X’−1)〜(X’−7)について、前述の水膨潤率の測定法により、初期水膨潤率、水膨潤率を測定し、その結果を表1に示す。
なお、初期水膨潤率/水膨潤率の値を吸収速度の指標とした。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明の実施例1〜6の崩壊剤は、水膨潤率と初期水膨潤率の値の差が小さく、非常に高い吸収速度を示した。
一方、疎水性粉体(B)を配合していない崩壊剤である比較例1〜3は、初期水膨潤率と水膨潤率の差が大きく吸水速度が低い。
また、疎水性粉体を単純に混合しただけの比較例4〜6は疎水性粉体が水膨潤性高分子の内部に存在しないため水膨潤率と初期水膨潤率の差が大きく吸水速度が低い。
比較例7は練り込んだ粉体の水への溶解度が高いため初期水膨潤率及び水膨潤率の値が共に低く、かつ初期水膨潤率と水膨潤率の差が大きいため、吸水速度が低い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の崩壊剤は、吸水速度が優れているため、口腔内崩壊錠用の崩壊剤としても有用である。また、本発明の崩壊剤を用いた固形製剤は、食品用途、農薬用途、肥料用途等の種々の用途に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性粉体(B)と水で予め膨潤させた水膨潤性高分子(A)を混合した後に乾燥させて粒子化することにより、疎水性粉体(B)を水膨潤性高分子(A)の内部に含有し、該水膨潤性高分子(A)の水膨潤率が200〜1000%であることを特徴とする崩壊剤。
【請求項2】
該水膨潤性高分子(A)に対して該疎水性粉体(B)を0.1〜20重量%含有する請求項1記載の崩壊剤。
【請求項3】
該疎水性粉体(B)の20℃における水への溶解度が1000mg/100mL以下である請求項1または2記載の崩壊剤。
【請求項4】
該疎水性粉体(B)が炭素数8〜30の脂肪酸またはその金属塩である請求項1〜3いずれかに記載の崩壊剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の崩壊剤を含有する口腔内崩壊性組成物。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の崩壊剤を含有する医薬用固形製剤。
【請求項7】
請求項1〜4いずれかに記載の崩壊剤を含有する食品用固形組成物。
【請求項8】
請求項1〜4いずれかに記載の崩壊剤を含有する農薬用または肥料用固形組成物。

【公開番号】特開2012−214417(P2012−214417A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81129(P2011−81129)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】