説明

工作機械における加工制御方法及び加工情報作成方法

【課題】シボ加工等の複雑な表面加工を、加工精度や加工効率を低下させることなく実施可能とする。
【解決手段】ワークに対し3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられてZ軸方向へ移動可能な付加主軸とを有した工作機械において、主軸頭を、ワークの加工面Sに対して付加主軸の移動方向でその移動量以内に収まるように平滑化された平滑化曲面Rに沿って相対移動させながら、付加主軸を、加工面Sと平滑化曲面Rとの差分だけ移動させて工具Tによる加工面Sの加工を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械によってワークに複雑な表面加工を行わせるための加工制御方法と、その加工制御方法を実施するために工作機械に与える加工情報を作成するための加工情報作成方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークの表面にシボ加工等の複雑な凹凸形状を付与する加工を行う場合、例えば特許文献1に示すようなNC制御装置を用いた加工制御方法が考えられる。これは、表面装飾前の形状データが入力される第1入力部と、テクスチャデータが入力される第2入力部と、形状データとテクスチャデータとに基づいて、工作機械におけるワークの送り量を規定する送り量指令とワークの彫り込み量を規定する彫り込み量指令とを生成するデータ融合部と、送り量指令と彫り込み量指令とを工作機械に出力する出力部とを備えるもので、工作機械では、ワークが送り量指令に基づいて例えばX−Y方向に送られる一方、工具が彫り込み量指令に基づいてZ方向に送られて、形状データによる形状加工とテクスチャデータによる表面装飾加工とが組み合わさった一体的加工が行われることになる。
【0003】
しかし、主軸頭に取り付けられた主軸に工具を取り付けて加工する場合、移動体の質量が大きく、形状急変部ではサーボ遅れによる誤差が生じて形状精度が低下するおそれがある。よって、形状急変部では送り速度を下げて加工を行う必要があり、加工効率の低下に繋がる。
そこで、特許文献2では、製品形状を加工するための工具経路の作成において、凸型形状の立ち上がり部分等の折れ部では、工具経路を、当該折れ部に円弧をかけた滑らかなものとして工具の送り速度の減速を小さくする対策が提供されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−252880号公報
【特許文献2】特開2000−259218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の経路作成方法では、折れ部に削り残し部が発生し、後で仕上げ加工が必要となって結局加工効率が低下することになる。また、質量の大きい主軸を制御して加工する点は変わらないため、形状急変部での送り速度の減速は依然として必要であり、加工効率の向上には限界がある。
【0006】
そこで、本発明は、シボ加工等の複雑な表面加工を、加工精度や加工効率を低下させることなく行うことができる加工制御方法と、その加工制御方法を実施するための加工情報作成方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられて所定方向へ移動可能な付加主軸とを有し、前記付加主軸に設けた工具によってワークの加工を行う工作機械における加工制御方法であって、前記主軸頭を、前記ワークの加工面に対して前記付加主軸の移動方向でその移動量以内に収まるように平滑化された近似面に沿って相対移動させながら、前記付加主軸を、前記加工面と近似面との差分だけ移動させて前記工具によるワークの加工を行わせることを特徴とするものである。
同じく上記目的を達成する請求項2に記載の発明は、ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられて所定方向へ移動可能な付加主軸とを有し、前記付加主軸に設けた工具によってワークの加工を行う工作機械における加工制御方法であって、前記主軸頭を、前記ワークの加工面の基本形状面に沿って相対移動させながら、前記付加主軸を、前記加工面と基本形状面との差分だけ移動させて前記工具によるワークの加工を行わせることを特徴とするものである。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の加工制御方法を実施させるための加工情報を作成する方法であって、前記ワークの形状を表す加工面のデータに基づいて、前記加工面を前記付加主軸の移動方向で前記付加主軸の移動量以内に収まるように平滑化した近似面のデータを求め、その近似面のデータから前記主軸頭の移動情報を、前記加工面のデータと近似面のデータとの前記付加主軸の移動方向での差から前記付加主軸の移動情報を夫々作成することを特徴とするものである。
同じく上記目的を達成する請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の加工制御方法を実施させるための加工情報を作成する方法であって、前記ワークの形状を表す加工面のデータに基づいて、前記加工面の基本形状面を指定し、その基本形状面のデータから前記主軸頭の移動情報を、前記加工面のデータと基本形状面のデータとの前記付加主軸の移動方向での差から前記付加主軸の移動情報を夫々作成することを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明における「ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭」は、主軸頭自体が3軸方向へ移動するものは勿論、ワークを載置するテーブルが例えばX−Y方向へ移動し主軸頭がZ方向へ移動することで、主軸頭を相対的に3軸方向へ移動させるようなものも含む。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び2に記載の発明によれば、必要な移動量を主軸頭と付加主軸とに振り分けるようにしたことで、形状急変部でも送り速度を減速させることなく高速加工が可能となる。よって、シボ加工等の複雑な表面加工を、加工精度や加工効率を低下させることなく行うことができる。
請求項3及び4に記載の発明によれば、加工面のデータに基づいて主軸頭及び付加主軸の移動情報を簡単且つ正確に作成することができる。特に請求項4の発明では、加工面の基本形状面を利用することで、平滑化した近似面のデータを求める必要がなくなるため、加工情報の作成が請求項3の方法よりも簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械1の一例を示す説明図で、工作機械1は、ベッド2と、該ベッド2に固定された一対のコラム3,3と、そのコラム3,3間に架設されたクロスレール6とによって剛性を有する門形構造を有し、クロスレール6の前面に、Y軸方向(左右方向)へスライド可能で、Z軸方向(上下方向)に沿って上下動可能な主軸頭4を備えてなる。主軸頭4には、ワーク表面に対する加工を行う工具Tが取り付けられた付加主軸10が、Z軸と平行なW軸方向(ここでは、上下方向)へスライド可能に備えられている。また、ベッド2には、ワークを載置可能なテーブル5がX軸方向(前後方向)に沿ってスライド可能に設置されている。なお、付加主軸10は、主軸頭4よりも質量が小さいものである。
【0012】
以上のような工作機械1においては、テーブル5をX軸方向へ送るとともに、主軸頭4をY軸及びZ軸方向へ送り、さらに、付加主軸10をW軸方向へ送りながら、ワークに対する加工を行う。尚、主軸頭4、テーブル5、及び付加主軸10の各方向への送り動作は、工作機械1に備えられたNC装置によって制御される。
【0013】
ここで、ワークに複雑な表面加工を施す際の主軸頭4、テーブル5、及び付加主軸10の送り制御(加工制御方法)について、図2に示すようにワークに凸部を有する加工面Sを形成する場合を例にして説明する。
加工面Sを形成するにあたり、加工面Sと比較してZ軸方向で滑らかな近似面となる平滑化曲面Rが用いられる。平滑化曲面Rとは、各加工点P1、P2・・、Pn・・における加工面Sとの付加主軸10の移動方向(この場合Z軸方向)での差分w1・・、wn・・の最大値wmaxが、付加主軸10の移動量以内となるような曲面である。そして、NC装置は、平滑化曲面Rを元に作成された加工情報に基づいて、付加主軸10に取り付けられている工具Tの先端が平滑化曲面R上の加工点P1,P2・・、Pn・・に沿って送られるように主軸頭4及びテーブル5をX、Y、及びZ軸方向へ送る一方、各加工点P1、P2・・、Pn・・において、その差分w1・・、wn・・だけ付加主軸10をW軸方向へ送ることにより加工面Sの加工を行うものである。
【0014】
次に、加工面Sを加工するための主軸頭4及びテーブル5と付加主軸10に移動指令を与える加工情報作成方法について、図3及び図4に基づいて説明する。
まず、平滑化曲面Rは、基本となる曲面R1を加工面Sの形状データを元に生成する(図3(A)及び図4のS1)。なお、加工面Sの形状データは、キーボードやマウス、タブレット等の入力手段を介して、記憶手段としての例えば加工情報作成装置のデータ記憶部に保存されて、CRTやプリンタ等の出力手段へ任意に出力可能である。
本形態では加工面Sのなだらかな形状に合わせて基本曲面R1としているが、平面(例えば加工形状をXY平面に投影した形状を含む平面)でもよい。どの加工形状要素を基本曲面とするかオペレータが指定(表示された加工形状の面をヒットする、面の名前を入力する等して指定)してもよく、任意の複数点をオペレータが指定することによりその点を通る曲面を基本曲面としてもよい。
そして、基本曲面R1と加工面Sとを比較して、その間の付加主軸移動方向の距離wを求める(S2)。距離wを付加主軸の移動量lmaxと比較し(S3)、距離wが付加主軸の移動量lmax以内の場合は、その基本曲面R1が平滑化曲面Rとなる(図3(A)及びS5)。距離wがlmaxを超えている場合は、基本曲面R1を表す自由曲面の制御点のうち、lmaxを超える近傍の制御点を移動したり、曲面を分割し制御点を操作することにより基本曲面R1を変形し、距離wが移動量lmaxを超えない平滑化曲面Rを生成する(図3(B)及びS4)。
【0015】
なお、基本曲面R1と加工面Sとの距離w1の判定値を±方向の2値(lp、lm)とした場合、同図(C)に示すように、w1がlp以内で、且つw2がlm以内に収まる場合にその基本曲面R1が平滑化曲面Rとして生成されることになる。また、これらの判定値はワークを加工する場合の付加主軸の移動量を規定するもので、加工面の形状に応じて付加主軸の移動量以内の値を適宜設定すればよい。図3(A)(B)から明らかなように、判定値が大きければより滑らかな平滑化曲面Rが生成され、小さければ加工面Sの形状に近い平滑化曲面Rが生成される。
【0016】
こうして平滑化曲面Rのデータが得られると、図4のS6以下の手順で加工情報を作成する。ここでは3軸制御の場合で説明する。
まずS6で、周知の方法によって平滑化曲面R上の加工点Pnの座標(Xn,Yn,Zn)を求める。次に、S7で、加工点Pnを通り付加主軸10の軸線方向に伸びる直線と、加工面Sとの交点を算出し、S8で、加工点Pnと当該交点との距離Wを求める。そして、S9で、加工点Pnの座標と距離Wとを対応させて加工情報として記憶する。
この処理を平滑化曲面Rにおける一本の加工曲線に対して繰り返して実施することで、加工曲線に関する加工情報を得ることができる。これを平滑化曲面R全体に対して行うことで、下記の表1に示すような加工情報を加工面S全体に亘って得ることができる。
【0017】
[表1]
G01 Xx1 Yy1 Zz1 Ww1 F**
Xx2 Yy2 Zz2 Ww2
Xx3 Yy3 Zz3 Ww3
Xx4 Yy4 Zz4 Ww4
Xx5 Yy5 Zz5 Ww5
・・・
X,Y,Z:主軸頭、テーブルの移動指令(主軸頭、テーブルの移動情報)
W :付加主軸の移動指令(付加主軸の移動情報)
【0018】
こうして得た加工情報に基づいた加工制御方法によれば、質量の大きな主軸頭4を、加工面Sと比較して滑らかな平滑化曲面Rに沿って送るとともに、比較的質量の小さな付加主軸10を、平滑化曲面Rの各加工点P1、P2・・、Pn・・において、平滑化曲面Rと加工面Sとの差分w1・・、wn・・だけW軸方向へ送りながら加工を行うことになる。すなわち、必要な移動量を主軸頭4と付加主軸10とに振り分けるようにしたことで、形状急変部でも送り速度を減速させることなく高速加工が可能となる。よって、シボ加工等の複雑な表面加工を、加工精度や加工効率を低下させることなく行うことができる。
【0019】
また、上記形態の加工情報作成方法によれば、加工面Sのデータに基づいて、加工面Sを付加主軸10の移動方向で付加主軸10の移動量以内に収まるように平滑化曲面Rのデータを求め、その平滑化曲面Rのデータから主軸頭4の移動情報を、加工面Sのデータと平滑化曲面Rのデータとの付加主軸10の移動方向での差から付加主軸10の移動情報を夫々作成するようにしたことで、上記加工制御方法に必要な加工情報を加工面Sと平滑化曲面Rとの形状データから簡単且つ正確に作成することができる。
【0020】
なお、上記形態の加工情報作成方法は、平滑化曲面Rのデータを求め、その平滑化曲面Rのデータから主軸頭4の移動情報を、加工面Sのデータと平滑化曲面Rのデータとの付加主軸10の移動方向での差から付加主軸10の移動情報を夫々作成する方法であるが、平滑化曲面のデータを求めることなく、加工面における微小凹凸を除いた基本形状面から加工情報を作成することもできる。以下、この加工情報作成方法を説明する。
ここでは図5に示すように、基本形状面としての基本曲面PのNCデータと、微小凹凸を有する加工面Sの加工形状データとを使用する場合を説明する。基本曲面PのNCデータは、加工面Sにおける微小凹凸を除いた基本形状データから周知の方法により予め作成して保存しておく。また、加工面Sの加工形状データは微小間隔の座標値(Tm,Tn・・)として表されているものとする。
【0021】
図6は本例の加工情報作成方法のフローチャートで、同図において、最初にS11で、基本曲面PのNCデータのファイルから次ブロックを読む。次のS12で、読み込んだデータが座標値であるか否かを判別する。座標値でなければS13でそのまま出力し、座標値であれば、S14の判別で、ラインの先頭か否かを判別する。ラインの先頭であれば、S15で、Paに対応する加工形状データTaを読み基本曲面Pとの差をWaとし、S16で(Xa,Ya,Za,Wa)をNC形式で出力して、S17で次ブロック位置を現在位置に書き換える(Pa←Pb)。S18の判別でファイルの終わりでなければ、S11に戻る。
一方、S14の判別でラインの先頭でなければ、S19で、現在位置Pa(Xa,Ya,Za)と次ブロック位置Pb(Xb,Yb,Zb)に対応する加工面S上の座標値Ta,Tbを前後の座標値、例えばT、Tから比例計算する。そして、S20では、PaとPbとの間にある加工形状データを読み、T1〜Tnとして記憶する。
【0022】
次に、S21でPaから1番目の加工形状データであるとして、S22でTiに対応する基本曲面P上の座標値(Xi,Yi,Zi)をPaとPbから比例計算し、S23でTiと基本曲面Pとの差Wiを計算して、S24で(Xi,Yi,Zi,Wi)をNC形式で出力する。
そして、S25の判別で、加工形状データがn番目、すなわち最後でなければ、S26で次の加工形状データとしてS22からS24までの処理を繰り返してPaとPb間にある加工形状データの全てをNC形式で出力して、S25の判別で最後の加工形状データを処理すると、S27でPbに対応する加工形状データTbを読んで基本曲面Pとの差をWbとして、S28で(Xb,Yb,Zb,Wb)をNC形式で出力する。
こうしてブロック間のNCデータ作成が終了すると、S17で次ブロック位置を現在位置に書き換え、S18でファイルが終わりであればNCデータ作成を終了する。
【0023】
次に、微小凹凸を有する加工面SaのNCデータPaと、微小凹凸を除いた基本曲面SbのNCデータPbとを用いて主軸頭及び付加主軸の移動情報を得る方法を、図7及び図8のフローチャートに基づいて説明する。なお、夫々のNCデータは周知の方法により予め作成して保存しておく。
まず、S31で、Sbの第1ブロックの座標値Pb1(Xb1,Yb1,Zb1)を読む。次にS32で、Sbの第2ブロックの座標値Pb2(Xb2,Yb2,Zb2)を読む。S33で1番目のNCデータであるとして、S34で、Saの第mブロックの座標値Pam(Xam,Yam,Zam)を読む。次に、S35で、PamはPb2より先か否かを判別する。ここで先であれば、S36でPb2の座標値をPb1に移し、S37で次のブロックの座標値をPb2として(Xb2,Yb2,Zb2)に読み込む。
【0024】
一方、S35の判別でPamがPb2より先でなければ、S38において、Sb上の座標値Zb1とZb2との比例計算により、Pam(Xam,Yam)に対応するSa上の点PのZ座標値Zbを求める。そして、S39では、X=Xam,Y=Yam,Z=Zb,W=Zam−Zbの加工情報を作成して出力する。このX,Y,Zが主軸頭4及びテーブル5の移動指令(主軸頭4の移動情報)、Wが付加主軸10の移動指令(付加主軸10の移動情報)となる。
その後、S40でPamがライン最終点であるか否かを判別し、最終点であれば1ライン処理が終了となる。最終点でなければ、S41でm=m+1番目としてS34以降の処理を繰り返す。
【0025】
こうして得られた加工情報に基づいて、NC装置は、基本曲面のNCデータ(図5の場合はPa,P・・Pb・・、図7の場合はPb1,P・・Pb2・・)に基づいて、付加主軸10に取り付けられている工具Tの先端が基本曲面P又はSb上の加工点に沿って送られるように主軸頭4及びテーブル5をX、Y、及びZ軸方向へ送る一方、各加工点において付加主軸10をW軸方向へ送ることにより、加工面S又はSaの加工を行うことになる。
よって、この加工制御方法においても、必要な移動量を主軸頭4と付加主軸10とに振り分けるようにしたことで、形状急変部でも送り速度を減速させることなく高速加工が可能となり、シボ加工等の複雑な表面加工を、加工精度や加工効率を低下させることなく行うことができる。
【0026】
また、図5,6及び図7,8で説明した加工情報作成方法においては、基本曲面PのNCデータと微小凹凸を有する加工面Sの加工形状データとを作成するか、或いは加工面SaのNCデータPaと基本曲面SbのNCデータPbを作成するかして、基本曲面PのNCデータ或いは基本曲面SbのNCデータPbから主軸頭4の移動情報を、加工面Sの加工形状データと基本曲面PのNCデータとの付加主軸10の移動方向での差、或いは加工面SaのNCデータPaと基本曲面SbのNCデータPbとの付加主軸10の移動方向での差から付加主軸10の移動情報を夫々作成することで、加工情報を簡単且つ正確に作成することができる。
【0027】
なお、移動情報を作成するための平滑化した近似面や基本形状面のデータは、上記形態に限らず、適宜変更して採用可能である。例えば図4のフローチャートでは、平滑化曲面の生成に代えて加工面における微小凹凸を除いた基本曲面を指定することにより、指定された基本曲面上の加工点を求め、その加工点と加工面との差分から付加主軸の移動情報を得るようにすることもできる。また、図5〜8で示す加工情報作成方法では、基本曲面のNCデータに代え、基本曲面の加工形状データと加工面のNCデータとを用いて付加主軸の移動情報を得るようにしても差し支えない。
勿論基本形状面としては曲面に限らず、平面や、平面と曲面との組み合わせも考えられる。
【0028】
一方、工作機械の形態は上記の形態に限らず、テーブルがXYの一方向のみ移動して主軸頭が2軸で移動するものや、テーブルが固定で主軸頭が3軸で移動するものであっても差し支えない。また、主軸頭の移動はX,Y,Zの3軸に限定するものではなく、回転軸を含めた4軸、5軸制御のマシニングセンタや、エンドエフェクタを複数のアクチュエータで支持して任意の姿勢で動作させるパラレルリンクを用いたマシニングセンタ等であっても差し支えない。これは付加主軸でも同様で、Z軸に限らず他の方向でも本発明は採用可能で、付加主軸が主軸頭にアタッチメントとして付加される場合も含む。
よって、加工情報を作成する場合、回転軸を含めた4軸、5軸制御の場合は、例えば平滑化曲面の加工点における法線方向を算出し、その法線方向の角度を回転軸の指令角度とすることができる。また、法線方向に対し一定角度傾斜させ、その角度を回転軸の指令角度とすることもできる。
【0029】
さらに、上記形態の加工情報作成では、曲面上の加工点を加工情報として生成しているが、平滑化曲面及び加工面を夫々工具半径分オフセットし、工具中心座標を求めることにより加工情報を生成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】工作機械の説明図である。
【図2】加工制御方法の説明図である。
【図3】平滑化曲面の生成手順を示す説明図である。
【図4】加工情報作成方法のフローチャートである。
【図5】加工情報作成方法の変更例を示す説明図である。
【図6】加工情報作成方法の変更例のフローチャートである。
【図7】加工情報作成方法の変更例を示す説明図である。
【図8】加工情報作成方法の変更例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1・・工作機械、2・・ベッド、3・・コラム、4・・主軸頭、5・・テーブル、6・・クロスレール、10・・付加主軸、T・・工具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられて所定方向へ移動可能な付加主軸とを有し、前記付加主軸に設けた工具によってワークの加工を行う工作機械における加工制御方法であって、
前記主軸頭を、前記ワークの加工面に対して前記付加主軸の移動方向でその移動量以内に収まるように平滑化された近似面に沿って相対移動させながら、前記付加主軸を、前記加工面と近似面との差分だけ移動させて前記工具によるワークの加工を行わせることを特徴とする工作機械における加工制御方法。
【請求項2】
ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられて所定方向へ移動可能な付加主軸とを有し、前記付加主軸に設けた工具によってワークの加工を行う工作機械における加工制御方法であって、
前記主軸頭を、前記ワークの加工面の基本形状面に沿って相対移動させながら、前記付加主軸を、前記加工面と基本形状面との差分だけ移動させて前記工具によるワークの加工を行わせることを特徴とする工作機械における加工制御方法。
【請求項3】
ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられて所定方向へ移動可能な付加主軸とを有し、前記付加主軸に設けた工具によってワークの加工を行う工作機械に、請求項1に記載の加工制御方法を実施させるための加工情報を作成する方法であって、
前記ワークの形状を表す加工面のデータに基づいて、前記加工面を前記付加主軸の移動方向で前記付加主軸の移動量以内に収まるように平滑化した近似面のデータを求め、その近似面のデータから前記主軸頭の移動情報を、前記加工面のデータと近似面のデータとの前記付加主軸の移動方向での差から前記付加主軸の移動情報を夫々作成することを特徴とする工作機械における加工情報作成方法。
【請求項4】
ワークに対し直交する3軸方向へ相対移動可能な主軸頭と、その主軸頭に設けられて所定方向へ移動可能な付加主軸とを有し、前記付加主軸に設けた工具によってワークの加工を行う工作機械に、請求項2に記載の加工制御方法を実施させるための加工情報を作成する方法であって、
前記ワークの形状を表す加工面のデータに基づいて、前記加工面の基本形状面を指定し、その基本形状面のデータから前記主軸頭の移動情報を、前記加工面のデータと基本形状面のデータとの前記付加主軸の移動方向での差から前記付加主軸の移動情報を夫々作成することを特徴とする工作機械における加工情報作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−90463(P2008−90463A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268683(P2006−268683)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】