説明

工作機械における工具と工作物との間の意図しない衝突の回避方法

【課題】
工作物の短い工作時間を可能にする工作機械における、工作物と工具との間の意図しない衝突の回避方法ならびに工作機械の制御装置を提供すること。
【解決手段】
部分プログラム(3)の実行開始時に、部分プログラム(3)に基づく工具(18)と工作物(21)との間の相対運動を制御するための運動目標値(x,y,z,ov)の算定と、それらの算定された運動目標値(x,y,z,ov)に基づく工具(18)による工作物(21)の材料除去量(M)の算定とが開始され、工具モデル(WM)が算定され、その工具モデル(WM)が工作物モデル(WSM)と重なり合うか否かが検査され、重なり合うことが確認された際に工具(18)と工作物(21)との間の相対運動がその相対運動が停止するまで減速させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械における工具と工作物との間の意図しない衝突の回避方法に関する。更に、本発明は工作機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いて工作物を加工する際に、工具および/又は工作物の破壊を招き得る工具と工作物との間の意図しない衝突を回避しなければならない。工作機械の運動を制御する部分プログラムの実行が、特にプログラムの途中で中断され、工具が手動で工作物から遠ざけられ、それからプログラム続行のために手動で再び元の位置へ戻される際に、しばしば工具と工作物との間で意図しない衝突が生じる。何故ならば、操作者によって手動で設定された運動を実現するために機械軸がいわゆる内挿合成(Interpolationaverbund)で動作し、従って工作物および/又は工具を移動するために複数の機械軸が同時に運動させられるので、操作者にとって、手入力した運動設定が工作機械によってどのように実行されるかを判断することがしばしば困難であるからである。衝突後の工作物は、もはや使用できないために、しばしば工作機械において何時間も又はそれどころか何日も続いた加工が無駄になった。
【0003】
工作物の加工中のシミュレーションにより工作物モデルを算定し、これに基づいて衝突回避を実現する衝突回避システムは公知である(例えば、非特許文献1参照)。しかし工作物モデルの算定は非常に多くの計算時間を必要とするので、一方ではこのような衝突回避システムを実施するためには高い計算能力が要求され、他方では実際の工作物加工の開始に先立ってシミュレーションが実行されなければならない。何故ならば、工作物モデルの算定は一般に高い計算能力があっても実際の工作物加工と同時に実行できないからである。このことによって実際には、操作者が加工のためにスタートボタンを押した際に、ともかく先ずは工作機械において何も行なわれない。何故ならば、工作機械が先ず或る時間にわたって工作物の加工時に工具によって生じる実際の幾何学的な工作物形状、即ち工作物モデルを予め計算しなければならないからである。これによって工作物のための加工時間が増える。更に、特に手動操作時に工作物と工具との間にかなり大きな安全離間距離が必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】刊行物“gegen den Kollisionskurs”,“Antriebspraxis 02/2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、工作物の短い加工時間を可能にする工作機械における、工作物と工具との間の意図しない衝突の回避方法ならびに工作機械の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、工作機械における工具と工作物との間の意図しない衝突を回避するための方法であって、部分プログラムの実行開始時に、この部分プログラムに基づく工具と工作物との間の相対運動を制御するための複数の運動目標値の算定と、それらの算定された運動目標値に基づく工具による工作物における材料除去量の算定とを開始し、この部分プログラムの実行の終了後又は中断後に前記相対運動が停止に至ったときに、算定された材料除去量に基づいて工作物モデルを算定し、手動操作入力に基づいて複数の運動目標値を算定し、それらの運動目標値に基づいて未来の予測される運動目標値を算定し、それらの未来の予測される運動目標値に基づいて工具の制動終端配置を算定し、工具の制動終端配置および工具の幾何学的形状を記述する工具形状モデルに基づいて工具モデルを算定し、その工具モデルが工作物モデルと重なり合うか否かを検査し、重なり合うことを確認した際に工具と工作物との間の相対運動をその相対運動が停止するまで減速させる方法によって解決される。
【0007】
更に、この課題は次の工作機械の制御装置によって解決される。即ち、この装置は、工具と工作物との間の相対運動を制御するための複数の運動目標値を部分プログラムに基づいて算定するために、また、部分プログラムの実行開始時に、それらの算定した運動目標値に基づく工具による工作物における材料除去量の算定を開始させるべく構成され、更に工具と工作物との間の相対運動を制御するための運動目標値を手動操作入力に基づいて算定すべく構成された制御ユニットと、
それらの算定した運動目標値に基づいて工具による工作物における材料除去量を算定すべく構成された材料除去量算定ユニットと、
部分プログラムの実行の終了後又は中断後に前記相対運動が停止に至ったときに、その算定した材料除去量に基づいて工作物モデルを算定すべく構成された工作物モデル算定ユニットと、
前記運動目標値に基づいて未来の予測される運動目標値を算定すべく構成され、更に未来の予測される運動目標値に基づいて工具の制動終端配置を算定すべく構成された制動終端配置算定ユニットと、
前記制動終端配置と工具の幾何学的形状を記述する工具形状モデルとに基づいて工具モデルを算定すべく構成された工具モデル算定ユニットと、
工具モデルが工作物モデルと重なり合うか否かを検査すべく構成され、更に重なり合うことを確認した際に工具と工作物との間の相対運動がその相対運動が停止するまで減速させるように構成された検査ユニットと、
を有する。
【0008】
本発明は工具と工作物との間の安全離間距離を必要としないので、本発明による方法は非常に微細な、特に小さい工作物においても実施可能である。
【0009】
本発明の有利な諸構成は、従属請求項から明らかとなる。方法に関する有利な諸構成は、装置の有利な諸構成と類似してもたらされ、またその逆も可である。
【0010】
工作機械の制御装置は、例えばCNC制御装置の形で存在し、CNC制御装置は、例えば、本発明による方法を実施するためのプログラムコードを有する1つ又は複数のコンピュータプログラムが実行される単独又は複数の計算ユニットの形で存在することができる。この1つ又は複数の計算ユニットは、それぞれ1つ又は複数のコンピュータプログラムが動作する1つ又は複数のプロセッサを有することができる。
【0011】
本発明の実施例を図面に示し、以下において更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は工作機械を示す概略図である。
【図2】図2は本発明による工作機械の制御装置を示すブロック図である。
【図3】図3は工作物を加工するためのフライスが移動される運動軌道Sを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には概略的に工作機械11が示されている。工作機械11はこの実施例では5つの機械軸を制御可能であり、これらの機械軸によって、この実施例ではフライスの形で存在する工具18と工作物21との間の相対運動が実行される。工具18は、モータ15によって回転駆動される工具ホルダ17に装着されている。モータ15およびそれにともなう工具18は、図を見やすくするために図1に示されていない複数の駆動装置により、X,Y,Z方向に直進運動可能であると共にα方向に回転可能である。更に、工作物21は、駆動される回転テーブル25によりβ方向に回転可能である。回転テーブル25は、静止した機械台19上に回転可能に支持されている。
【0014】
工作物21は工作物ホルダ20によって回転テーブル25に固定されている。
【0015】
すなわち、工作機械11は5つの機械軸を有し、いわゆる5軸工作機械である。
【0016】
ここで付記するに、本発明による工作機械が5つよりもさらに多い又は少ない機械軸を有してもよいことは自明である。
【0017】
図2には1つの工作機械の、即ちこの実施例では工作機械11の本発明による制御装置10と、工具および工作物を動かすための駆動装置とがブロック図の形で示されている。
【0018】
制御装置10は1つの制御ユニット2を有し、この制御ユニット2は部分プログラム3および/又は手動操作入力に基づいて工具18と工作物21との間で行なわれる相対運動を制御するための運動目標値x,y,zおよびovを算定する。制御ユニット2は、それらの運動目標値を、工具によって工作物に対して実行すべき運動が命令の形で規定されている部分プログラム3に基づいて算定する。付加的に、工具および/又は工作物の運動は、操作装置1を介して入力される手動操作入力により、工作機械の現場で操作者によって設定することができる。操作装置1は、例えばハンドル車および/又はキーボードである。
【0019】
部分プログラム3は、一般にCAM/CADシステム又は場合によってはCAM/CADシステムに後置接続されたいわゆるポストプロセッサによって発生させられる。部分プログラムには、静止している工作物21に対する工具18の運動が規定されている(図3参照)。工具18は運動軌道Sに沿って移動する。制御ユニット2によって算定される運動目標値は、この実施例では位置目標値x,y,zの形で存在し、これらの位置目標値はX、YおよびZ方向、即ち3次元空間における工具18のいわゆる工具中心点TPの運動を表す。工具中心点TPは、好ましくは工具18の回転軸上の規定点である。更に、制御ユニット2によって運動目標値として方向ベクトルovも算定される。方向ベクトルovは、工具18が運動軌道S上を移動させられるときの工具の方向ベクトルOVの方向、従って3次元空間内での工具の向きを指定する。
【0020】
これらの運動目標値によって、運動軌道S上の工作物に対する工具の位置および方向が運動軌道Sの各点について規定されている。
【0021】
工具と工作物との間で行なわれる相対運動を制御するための複数の運動目標値の算定は、部分プログラムに基づいてこの部分プログラムの実行開始時に行なわれる。これと並行して、算定されたこれらの運動目標値に基づく工作物における材料除去量Mの算定が開始される。内挿クロックサイクルにて(例えば、4msごとに)、運動目標値x,y,zおよびovが算定直後に材料除去量算定ユニット30に伝達される。材料除去量算定ユニット30は、これらの運動目標値に基づいて工具による工作物の加工によって生じる工作物の材料除去量Mを計算する。材料除去量Mを算定するために、更に工作物の素材データRが制御ユニット2から材料除去量算定ユニット30に伝達される。素材データRは工作物の素材の幾何学的形状(工具によって加工する前の工作物の幾何学的形状)を記述し、装置10の記憶装置に記憶されている。更に、工具の幾何学的形状を記述する工具形状モデルWFMも制御ユニット2から材料除去量算定ユニット30に伝達される。工具形状モデルWFMは装置10の記憶装置に記憶されている。材料除去量算定ユニット30は、工具形状モデルWFM、複数の運動目標値ならびに工作物素材データRに基づいて、工具の加工によって工作物において生じる材料除去量Mを算定する。
【0022】
材料除去量Mの算定は、この実施例では、とりわけリアルタイムで複数の運動目標値の算定と一緒に行なわれる。制御ユニット2は、複数の運動目標値を一般に好ましくは或る固定の時間サイクル、即ちいわゆる内挿クロックサイクルで発生する。例えばこの実施例では、制御ユニット2によって4ミリ秒ごとにこれらの運動目標値が発生させられる場合に、それに応じて4ミリ秒ごとに材料除去量Mが新たに算定されて更新される。しかし、材料除去量Mの算定をリアルタイムで行なわなくてもよいことは自明である。
【0023】
部分プログラムの終了後、即ち部分プログラムの完全実行後において、又は部分プログラム3の実行中断後において、工作物と工具との間の相対運動が停止に至ったときに、工作物モデル算定ユニット31によって、算定された材料除去量Mと工作物素材データRとに基づいて、工作物の幾何学的形状を記述する工作物モデルWSMが算定される。工作物素材データRは、制御ユニット2から工作物モデル算定ユニット31に伝達される。部分プログラムの実行中断は、例えば操作者によって、例えば自動運転から手動運転へ切り替えられることによって行なわれる。工作物モデルWSMを算定するために、この実施例では、工作物モデル算定ユニット31によって、工作物表面上にある互いに隣接した点を結ぶ碁盤目が計算されるので、この実施例では、工作物モデルWSMは、碁盤目によって形成されたいわゆる体積モデルの形で存在する。材料除去量Mと工作物素材データRとに基づく工作物モデルWSMの算定は非常に計算に時間がかかるので、これはリアルタイムで、即ち機械において実際に行なわれる実加工と時間的に並行して、実行することができない。
【0024】
部分プログラム3の実行の終了後又は中断後に工作物と工具との間の相対運動が停止に至ったときに、制御ユニット2から開始信号Sが工作物モデル算定ユニット31に伝達される。工作物モデル算定ユニット31は、開始信号Sを受け取るや否や、その際にはもはや変化しない材料除去量Mから工作物モデルWSMを算定する。工作物モデル算定ユニット31による工作物モデルWSMの算定が行われている間は、工作物モデル算定ユニット31は、工作物モデルの計算が完了するまで、手動操作入力に対する阻止信号BLを制御ユニット2に送信する。阻止信号BLが出されている間は、工具と工作物との間の相対運動を制御するために工作機械の操作者によって操作装置1に入力される手動操作入力が阻止される。工作物モデル算定ユニット31には材料除去量Mが入力量として直ぐ使える状態で存在し、その材料除去量Mに基づいて工作物モデル算定ユニット31によって比較的速やかに工作物モデルWSMを計算できるので、手動操作入力の阻止は短時間しか続かない。しかる後に、即ち工作物モデルWSMの算定終了後に、操作者は操作装置1での手動操作入力によって、例えば工具を機械軸により工作物から移動すべく、工具と工作物との間の相対運動を設定することができる。制御ユニット2は、手動操作入力に基づいて運動目標値x,y,zおよびovを、先に部分プログラムによる制御により行なったのと同じやり方で算定する。工作物モデルWSMは検査ユニット7に伝達される。
【0025】
これらの運動目標値は、更に制御ユニット2から制動終端配置算定ユニット27に供給され、これの内部において第1の算定ユニット4に入力量として導かれる。制動終端配置算定ユニット27の第1の算定ユニット4は、現在の運動目標値x,y,zおよびovからそれぞれ未来の予測される運動目標値x’,y’,z’ およびov’を求める。未来の運動目標値は、この実施例では、制御ユニット2によって発生させられた現在の運動目標値と、過去に存在した運動目標値とから、外挿法によって算定される。例えば現在の運動目標値と過去に存在した運動目標値とから、各方向における工具速度を計算することができ、この速度に基づいて未来の予測される工具位置を算定することができる。工具の方向ベクトルの方向も同様のやり方で未来に外挿することができる。その場合にこれらの運動目標値は、制御ユニットのいわゆる補間クロックの1サイクルだけ、即ち一般にほんの少しのミリ秒だけ先の未来を予測計算すればよい。したがって、未来の予測される運動目標値は、制御ユニット2の直ぐ次の補間クロックサイクルにおいて発生させられる、未来の実際の運動目標値と非常に正確に一致する。しかし、未来の予測される運動目標値がほんの少ないミリ秒だけよりも更に先の未来にあってもよいことは自明である。
【0026】
次に、未来の予測される運動目標値x’,y’,z’およびov’が、制動終端配置算定ユニット27の第2の算定ユニット5に伝達される。第2の算定ユニット5は、予測される未来の運動目標値x’,y’,z’ およびov’に基づいて、工具18の制動終端配置BAを算定する。制動終端配置BAは、未来の予測される運動目標値に基づいて工具と工作物との間の相対運動がその相対運動が停止するまで減速された場合における、工具と工作物との間の相対運動の停止状態での工具の位置および方向を表す。次に、制動終端配置BAが工具モデル算定ユニット6に伝達される。工具モデル算定ユニット6は制動終端配置BAおよび工具の幾何学的形状を記述する工具形状モデルWFMに基づいて工具モデルWMを求める。それゆえ、工具モデルWMは、この実施例では、工具の幾何学的形状、工具の位置、工具の方向を記述する。
【0027】
制御ユニット2はこのために工具の工具形状モデルWFMを工具モデル算定ユニット6に伝達する。工具形状モデルは、制御装置10の記憶装置に記憶されている。次に、工具モデルWMが検査ユニット7に伝達され、検査ユニット7において工具モデルWMが工作物モデルWSMと重なり合うか否が検査される。
【0028】
工具モデルWMが工作物モデルWSMと重なり合うことを検査ユニット7が確認したならば、検査ユニット7によって工具と工作物との相対運動がその相対運動が停止するまで減速される。検査ユニット7はこのために工具モデルと工作物モデルとが重なり合う場合に制動信号BSを発生し、これを制御ユニット2に伝達する。制御ユニット2は、これに応じて運動目標値を発生し、相対運動がその相対運動が停止するまで減速させる。
【0029】
時間的に見ると、制御ユニット2から制動終端配置算定ユニット27への複数の運動目標値の伝達と並行して、それらの運動目標値が座標変換ユニット28に伝達される。座標変換ユニット28は、工作機械の運動系に応じて、即ち工具および/又は工作物の運動のために実際に使用できる工作機械の機械軸に応じて、これらの機械軸を運動させるための駆動装置の運動を制御するための制御目標値として、位置目標値xsoll,ysoll,zsoll,αsollおよびβsollを発生する。工作機械の運動系がどのように構成されているかに応じて、工作物と工具との間の相対運動を実現すべく工作物および/又は工具が運動させられる。例えば工作物のみが運動可能で工具が静止配置されている運動系を工作機械が有する場合には、工作物と工具との間の相対運動を実現するために工作物が運動させられる。
【0030】
駆動装置を制御するためのこれらの位置目標値は、それぞれの付属調節部8a,8b,8c,8dおよび8eに伝達される。これらの調節部は対応して付設された変換器22a,22b,22c,22dおよび22eを制御する。これらの変換器は、それぞれ付設の電動機23a,23b,23c,23dおよび23eに給電し、これらの電動機はそれぞれ1つの機械軸を駆動する。図を見やすくするために図2には示されていない位置センサから位置実際値xist,yist,zist,αistおよびβistが、これらの駆動装置を制御すべく制御実際値として調節部8a,8b,8c,8dおよび8eに伝達される。
【0031】
従って、意図しない衝突を回避するための本発明による方法は、機械において実際に行なわれる工具および/又は工作物の運動に並行して動作する。
【0032】
したがって、部分プログラムの実行開始後において、工作物の本来の実加工が開始される前に、或る時間の間、シミュレーション計算が予め行なわれるという時間がもはや必要でない。従って、工作物の加工のための加工時間が本発明によって短縮される。
【0033】
この方法は、とりわけ比較的僅かな時間で、未来にある予測運動目標値を算定するので高精度で動作し、これにより工作物と工具との間の安全離間距離が必要でなく、従ってこの方法は、非常に小さい特に微細な工作物の製作の際にも使用可能である。
【0034】
ここで付記しておくに、本実施例では、制御ユニット2、制動終端配置算定ユニット27、工具モデル算定ユニット6、検査ユニット7、材料除去算定ユニット30、工作物モデル算定ユニット31、ならびに座標変換ユニット28が、1つ又は複数のプロセッサ上で実行されるプログラムコード部分の形で存在する。
【0035】
その場合に個々のユニットは、単独又は複数のプロセッサを制御可能な単独の計算ユニット上で動作してよいが、しかし互いに分離された複数の計算ユニット上で動作してもよい。例えば、制御ユニット2、制動終端配置算定ユニット27、工具モデル算定ユニット6、検査ユニット7ならびに座標変換ユニット28が第1の計算ユニット上で動作し、材料除去量算定ユニット30および工作物モデル算定ユニット31が、例えばパーソナルコンピュータのような第2の計算ユニット上で動作してよい。しかし、全てのユニットが唯一の計算ユニット上で動作してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 操作装置
2 制御ユニット
3 部分プログラム
4 第1の算定ユニット
5 第2の算定ユニット
6 工具モデル算定ユニット
7 検査ユニット
8a〜8e 調節部
10 制御装置
11 工作機械
15 モータ
17 工具ホルダ
18 工具
19 機械台
20 工作物ホルダ
21 工作物
22a〜22e 変換器
23a〜23e 電動機
25 回転テーブル
27 制動終端配置算定ユニット
28 座標変換ユニット
30 材料除去量算定ユニット
31 工作物モデル算定ユニット
BA 制動終端配置
BL 阻止信号
BS 制動信号
M 材料除去量
OV 方向ベクトル
R 工作物素材データ
S 運動軌道
TP 工具中心点
WM 工具モデル
WFM 工具形状モデル
WSM 工作物モデル
X,Y,Z 並進運動方向
α 回転方向
β 回転方向
x,y,z,ov 運動目標値
x’,y’,z’,ov’ 予測される未来の運動目標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(11)における工具(18)と工作物(21)との間の意図しない衝突を回避するための方法であって、部分プログラム(3)の実行開始時に、部分プログラム(3)に基づく工具(18)と工作物(21)との間の相対運動を制御するための運動目標値(x,y,z,ov)の算定と、それらの算定された運動目標値(x,y,z,ov)に基づく工具(18)による工作物(21)における材料除去量(M)の算定とを開始し、部分プログラム(3)の実行の終了後又は中断後に前記相対運動が停止に至ったときに、算定された材料除去量(M)に基づいて工作物モデル(WSM)を算定し、手動操作入力に基づいて運動目標値(x,y,z,ov)を算定し、それらの運動目標値(x,y,z,ov)に基づいて未来の予測される運動目標値(x’,y’,z’,ov’)を算定し、それらの未来の予測される運動目標値(x’,y’,z’,ov’)に基づいて工具(18)の制動終端配置(BA)を算定し、工具(18)の制動終端配置(BA)および工具(18)の幾何学的形状を記述する工具形状モデル(WFM)に基づいて工具モデル(WM)を算定し、その工具モデル(WM)が工作物モデル(WSM)と重なり合うか否かを検査し、重なり合うことを確認した際に、工具(18)と工作物(21)との間の相対運動をその相対運動が停止するまで減速させることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの計算ユニットによって1つ又は複数のコンピュータプログラムを実行する際に、請求項1記載の方法を実施するためのプログラムコードを有する1つ又は複数のコンピュータプログラム。
【請求項3】
部分プログラム(3)の実行開始時に、工具(18)と工作物(21)との間の相対運動を制御するための運動目標値(x,y,z,ov)を部分プログラム(3)に基づいて算定し、それらの算定した運動目標値(x,y,z,ov)に基づく工具(18)による工作物(21)における材料除去量(M)の算定を開始させるように構成され、更に工具(18)と工作物(21)との間の相対運動を制御するための運動目標値(x,y,z,ov)を手動操作入力に基づいて算定するように構成された制御ユニット(2)と、
それらの算定した運動目標値(x,y,z,ov)に基づいて工具(18)による工作物(21)における材料除去量(M)を算定するように構成された材料除去量算定ユニット(30)と、
部分プログラム(3)の実行の終了後又は中断後に前記相対運動が停止に至ったときに、その算定した材料除去量(M)に基づいて工作物モデル(WSM)を算定するように構成された工作物モデル算定ユニット(31)と、
前記運動目標値(x,y,z,ov)に基づいて未来の予測される運動目標値(x’,y’,z’,ov’)を算定するように構成され、更に未来の予測される運動目標値(x’,y’,z’,ov’)に基づいて工具(18)の制動終端配置(BA)を算定するように構成された制動終端配置算定ユニット(27)と、
前記制動終端配置(BA)と工具(18)の幾何学的形状を記述する工具形状モデル(WFM)とに基づいて工具モデル(WM)を算定するように構成された工具モデル算定ユニットと、
工具モデル(WM)が工作物モデル(WSM)と重なり合うか否かを検査するように構成され、更に重なり合うことを確認した際に工具(18)と工作物(21)との間の相対運動をその相対運動が停止するまで減速させるように構成された検査ユニット(7)と、
を有することを特徴とする工作機械(11)の制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置を有する工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−226749(P2012−226749A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93041(P2012−93041)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】