説明

工作機械及びその熱変形量推定方法

【課題】 比較的簡単な構成でもって簡易的に、主軸と移動部材との間の相対的位置の補正を行うことができる工作機械を提供すること。
【解決手段】 工作機械本体の主軸部に回転自在に支持された主軸と、工作機械本体に往復動自在に支持された移動部材と、主軸を回転駆動するための第1駆動源12と、移動部材を往復動させるための往復駆動機構24と、往復駆動機構24を駆動するための第2駆動源34と、第1及び第2駆動源12,34を作動制御するための制御手段とを備え、主軸と一体的に被加工物が回動され、移動部材と一体に加工工具が移動される工作機械。主軸部温度を検知するための第1温度検知手段40とボールねじ部温度を検知するための第2温度検知手段42とが設けられ、制御手段は、第1及び第2温度検知手段40,42の検知温度に基づいて主軸と移動部材との間の相対的位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工工具により切削などの加工を行う工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤などの工作機械は、床面などに設置される工作機械本体と、工作機械本体に設けられた主軸部と、主軸部に回転自在に支持された主軸と、主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に延びるように工作機械本体に設けられた支持機構と、支持機構に往復動自在に支持された移動部材とを備え、加工工具(又は被加工物)が主軸と一体的に回転駆動され、被加工物(又は加工工具)が移動部材と一体的に移動される。このような工作機械では、主軸を回転駆動するための第1駆動源が設けられ、この第1駆動源によって主軸が所定方向に回転駆動される。また、移動部材を支持機構に沿って往復動させるための往復駆動機構と、往復駆動機構を介して移動部材を移動させるための第2駆動源とが設けられ、第2駆動源によって往復駆動機構を介して移動部材が、主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に往復移動される。
【0003】
このような工作機械を用いて被加工物を加工すると、第1及び第2駆動源から発生する熱、被加工物を加工する際に発生する熱、回転する主軸から発生する熱などによって工作機械の各種構成要素の温度が上昇し、加工時のこの温度変動によって各種構成要素が熱変形し、この熱変形に起因して加工誤差が生じるという問題がある。
【0004】
このようなことから、加工時の熱変形量を推測して熱変形を補正するようにした工作機械が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この工作機械においては、主軸の先端部に熱変形測定装置が設けられ、主軸ベッド、コラム、ベアリング及び冷却油入口(又は冷却油出口)などに温度センサが設けられ、また多項式モデルを演算するための演算手段が設けられる。各温度センサからの検出信号及び熱変形測定装置からの測定信号が演算手段に送られ、演算手段はこれら検出信号及び測定信号に基づいて熱変形量を演算し、推定演算した熱変形量に基づいて加工位置を補正することによって、熱変形による加工誤差を小さく抑えている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−61780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した工作機械では、次の通りの解決すべき問題がある。第1に、工作機械の熱変形量を演算するに際し、主軸ベッド、コラム、ベアリング、冷却水入口などに温度センサを設けるとともに、主軸の先端部に熱変形測定装置を設けており、それ故に、熱変形測定装置及び多数の温度センサを必要とし、その構成が複雑になるという問題がある。第2に、これら温度センサの検知信号及び熱変形測定装置の測定信号に基づいて熱変形量を演算しており、それ故に、熱変形量の演算が複雑になり、実際の工作機械に適用するのが難しいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、比較的簡単な構成でもって簡易的に、主軸と移動部材との間の相対的位置の補正を行うことができ、これによって熱変形による加工精度の低下を抑えることができる工作機械を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、少ない個所の温度測定でもって、主軸と移動部材との間の相対的位置の補正をほぼ正確に行うことができる工作機械を提供することである。
また、本発明の更に他の目的は、比較的簡単に且つ簡易的に主軸と移動部材との間の相対的位置の熱変形量を推定することができる工作機械の熱変形量推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の工作機械は、工作機械本体と、前記工作機械本体に設けられた主軸部と、前記主軸部に回転自在に支持された主軸と、前記工作機械本体に設けられ、前記主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に延びる支持機構と、前記支持機構に往復動自在に支持された移動部材と、前記主軸を回転駆動するための第1駆動源と、前記移動部材を前記支持機構に沿って往復動させるための往復駆動機構と、前記往復駆動機構を介して前記移動部材を移動させるための第2駆動源と、前記第1及び第2駆動源を作動制御するための制御手段と、を備え、加工工具又は被加工物の一方が前記主軸と一体的に回転駆動され、それらの他方が前記移動部材と一体的に移動される工作機械において、
前記主軸に関連して、その温度変化を検知するための第1温度検知手段が設けられているとともに、前記往復駆動機構に関連して、その温度変化を検知するための第2温度検知手段が設けられており、前記制御手段は、前記第1及び第2温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置を補正することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械では、前記制御手段は、前記第1温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算するための主軸部熱変形補正演算手段と、前記第2温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算するための移動部材熱変形補正演算手段と、前記主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び前記移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値を合成した合成熱変形補正値を演算するための合成熱変形補正演算手段とを備え、前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の補正が前記合成熱変形補正値となるように前記第2駆動源を作動制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械では、前記工作機械本体の周囲の温度を検知するための第3温度検知手段が更に設けられており、前記主軸部熱変形補正演算手段は前記第1及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、前記移動部材熱変形補正演算手段は前記第2及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、前記合成熱変形補正演算手段は前記主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び前記移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値を合成した合成熱変形補正値を演算することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械では、前記往復駆動機構はボールねじ機構から構成され、前記ボールねじ機構は、前記主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に延び、前記第2駆動源によって回転駆動されるねじ軸と、前記ねじ軸に螺合されたナット部材と、前記ねじ軸と前記ナット部材との間に介在された多数のボール部材と、から構成され、前記第2温度検知手段は前記ナット部材に取り付けられており、また前記第1温度検知手段は前記主軸部の主軸ハウジングに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械では、前記制御手段は、更に、前記工作機械本体の加工停止時間を計時するタイマ手段を備えており、前記タイマ手段が前記所定時間を計時すると前記主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び前記移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値をリセットすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載の工作機械では、前記工作機械本体は旋盤本体であり、前記主軸にはチャック手段が設けられ、前記チャック手段に前記被加工物が着脱自在に装着され、また前記移動部材は刃物台であり、前記刃物台に前記加工工具が交換可能に取り付けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項7に記載の工作機械の熱変形量推定方法は、工作機械本体の主軸部に回転自在に支持された主軸と、前記主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に往復動自在に前記工作機械本体に支持された移動部材と、前記移動部材を往復動させるための往復駆動機構と、前記主軸を回転駆動するための第1駆動源と、前記往復動駆動機構を介して前記移動部材を移動させるための第2駆動源とを備えた工作機械における前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の熱変動を推定する工作機械の熱変形量推定方法であって、
前記主軸に関連して、その温度変化を検知するための第1温度検知手段を設け、前記往復駆動機構に関連して、その温度変化を検知するための第2温度検知手段を設け、前記第1温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、前記第2温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、前記主軸に関連する主軸部熱変形量及び前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を合成して前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の熱変形量を推定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項8に記載の工作機械の熱変形量推定方法では、前記工作機械本体の周囲の温度を検知するための第3温度検知手段を更に設け、前記第1及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、前記第2及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、前記主軸に関連する主軸部熱変形量及び前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を合成して前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の熱変形量を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の工作機械及び請求項7に記載の熱変形量推定方法によれば、被加工物(又は加工工具)と一体的に回転駆動される主軸に関連して第1温度検知手段が設けられ、加工工具(又は被加工物)と一体的に移動される移動部材を移動させるための往復駆動機構に関連して第2温度検知手段が設けられる。工作機械の加工精度は主軸と移動部材との間の相対的位置に直接的に関係し、温度変化などによってこの相対的位置が変動すると加工精度が低下する。このようなことから、この相対的位置関係の一方の主軸に関連して第1温度検知手段が設けられ、またこの相対的位置関係の他方の移動部材を移動させるための往復駆動機構に関連して第2温度検知手段が設けられ、このように配設した第1及び第2温度検知手段の検知温度に基づいて上記相対的位置を補正することによって、比較的簡単に且つ簡易的に、加工時の熱変形を補正して加工精度の低下を抑えることができる。また、工作機械本体に対する温度検知は、主軸に関連する部位と、往復駆動機構に関連する部位であり、これらの温度変動に対する熱変形補正の演算は比較的簡単で容易であり、このような演算でもって加工時の熱変形に伴う加工精度の低下を抑えることができる。このような工作機械は例えばNC旋盤、マシニングセンタなどであり、NC旋盤の場合、被加工物が主軸と一体的に回転駆動され、加工工具が移動部材と一体的に移動され、またマシニングセンタの場合、加工工具が主軸と一体的に移動され、被加工物が移動部材と一体的に移動される。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械によれば、工作機械を制御するための制御手段は、主軸部熱変形補正演算手段、移動部材熱変形補正演算手段及び合成熱変形補正演算手段を備え、主軸部熱変形補正演算手段は第1温度検知手段の検知温度に基づいて主軸に関連する熱変形量を演算し、移動部材熱変形補正演算手段は第2温度検知手段の検知温度に基づいて往復駆動機構に関連する熱変形量を演算し、合成熱変形補正手段はこれら主軸に関連する主軸部熱変形量及び往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量に基づいて主軸と移動部材との間の相対的位置の合成熱変形補正値(この合成熱変形補正値が、実質上、主軸と移動部材との間の相対的熱変形量に相当する)を演算するので、比較的簡単に且つ簡易的に、しかも比較的正確に上記相対的位置の熱変形量を演算することができる。特に、主軸部熱変形量は、第1温度検知手段の検知温度に基づいて演算され、移動部材熱変形量は、主軸部熱変形量の演算とは別個に、第2温度検知手段の検知温度に基づいて演算されるので、主軸部熱変形量及び移動部材熱変形量の演算を比較的簡単に且つ容易に行うことができる。そして、上記相対的位置の補正量が演算した合成熱変形補正値となるように第2駆動源を作動制御することによって、加工時の熱変形を所要の通りに補正することができ、これによって、温度上昇に伴う加工精度の低下を抑えることができる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械及び請求項8に記載の熱変形推定方法によれば、工作機械本体の周囲温度を検知するための第3温度検知手段が設けられ、この第3温度検知手段の検知温度も用いられ、工作機械本体の周囲温度も考慮して熱変形の補正が行われる。即ち、主軸部熱変形補正演算手段は第1及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、移動部材熱変形補正演算手段は第2及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、合成熱変形補正演算手段は主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値を合成した合成熱変形補正値を演算するので、演算された合成熱変形補正量は周囲温度を考慮したより正確なものとなる。そして、かく演算した合成熱変形補正値となるように第2駆動源を作動制御することによって、温度上昇に伴う加工精度の低下をより一層効果的に抑えることができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械によれば、往復駆動機構がボールねじ機構から構成され、第2温度検知手段がそのナット部材に設けられているので、往復駆動機構に関連する温度変化を所要の通りに検知することができる。また、第1温度検知手段が主軸部の主軸ハウジングに設けられているので、主軸に関連する温度変化を所要の通りに検知することができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械によれば、制御手段は、工作機械本体の加工停止時間を計時するタイマ手段を備えている。このタイマ手段は、工作機械本体による加工が停止すると計時を開始し、工作機械本体による加工停止から所定時間、例えば60分計時すると、今まで演算されていた主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形値がリセットされ、主軸部熱変形補正演算手段及び移動部材熱変形補正演算手段は改めて主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正値を演算し、このように改めて演算することによって、工作機械本体の加工停止時間が長くなってその温度状態が変化した場合においても、変化した温度状態に応じた主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正値が演算され、これによって、温度状態の変化に伴う主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正値のズレを解消して加工時の熱変形に伴う加工精度の低下をより効果的に抑えることができる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の工作機械によれば、工作機械としての旋盤に適用され、主軸にチャック手段が設けられ、このチャック手段に被加工物が着脱自在に装着される。また、移動部材としての刃物台には、加工工具が取換え可能に取り付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う工作機械及びその熱変形量推定方法の実施形態について説明する。図1は、本発明に従う工作機械(本発明の熱変形量推定方法が適用された工作機械)の一例としてのNC旋盤の一実施形態の一部を簡略的に示す正面図であり、図2は、図1のNC旋盤の主軸部及び刃物台並びにこれらに関連する構成を簡略的に示す図であり、図3は、図1のNC旋盤の制御系を簡略的に示すブロック図であり、図4は、主軸部の温度変化と主軸部の相対熱変形量との関係を示す図であり、図5は、図3の制御系による制御を示すフローチャートである。
【0024】
図1において、工作機械の一例としての図示のNC旋盤は、工場の床面などに設置される工作機械本体としての旋盤本体2を備え、この旋盤本体2の上部にベッド4が配設され、このベッド4の片側部(図1において左部)に主軸部6が設けられている。主軸部6内には、図示していないが、軸受手段を介して主軸が回転自在に支持され、この主軸にはチャック手段8が装着されている。チャック手段8は開閉自在な複数のチャック爪10を有し、かかるチャック爪10に、加工すべき被加工物(図示せず)が着脱自在に装着される。旋盤本体2内には、第1駆動源を構成する第1駆動モータ12(図3参照)が内蔵され、第1駆動モータ12と主軸とが駆動ベルト14を介して駆動連結されている。このように構成されているので、第1駆動モータ12が回転駆動されると、駆動ベルト14を介して主軸(図示せず)及びチャック手段8が所定方向に回転駆動される。
【0025】
旋盤本体2のベッド4の他側部(図1において右部)には門型の支持ブロック16が取り付けられ、この支持ブロック16に第1支持機構20(支持ブロック16の横側に間隔をおいて設けられている)を介して移動本体部17が装着され、この移動本体部17に工具支持部18が支持されている。第1支持機構20は主軸(図示せず)の回転軸線S(図2参照)に実質上垂直に、即ち図1及び図2において上下方向に延びており、工具支持部18はこの移動本体部17とともにと第1支持機構20を介して主軸に近接及び離隔する方向(図2において矢印Xで示す方向)に往復移動される。
【0026】
また、移動本体部17には第2支持機構(図示せず)が設けられ、工具支持部18がこの第2支持機構を介して移動本体部17に移動自在に支持され、移動部材としての刃物台22が工具支持部18に移動自在に支持されている。第2支持機構は主軸(図示せず)の回転軸線Sに対して実質上平行な方向に、即ち図1及び図2において左右方向に延びており、工具支持部18及び刃物台22はこの第2支持機構を介して主軸(換言すると、チャック手段8に装着された被加工物)に近接及び離隔する方向(図1において矢印Zで示す方向)に往復移動される。このように支持された刃物台22には、被加工物に例えば切削加工を施すための加工工具(図示せず)が交換可能に取り付けられる。
【0027】
支持ブロック16内には、移動本体部17、工具支持部18、第2支持機構(図示せず)及び刃物台22を同時に主軸(換言すると、チャック手段8に装着された被加工物)に対して近接及び離隔する方向(図2において矢印Xで示す方向)に移動させるための第1往復駆動機構24が内蔵されている。図示の往復駆動機構24はボールねじ機構25から構成され、支持ブロック18内に一対の軸受手段26を介して回転自在に支持されたねじ軸28と、このねじ軸28に螺合されたナット部材30と、ねじ軸28とナット部材30との間に介在された多数のボール部材(図示せず)とから構成され、ねじ軸28が、第1支持機構20と同様に、主軸の回転軸線Sに対して実質上垂直な方向に延び、ナット部材30に支持部材32が取り付けられ、この支持部材32に移動本体部17が取り付けられている。また、この往復駆動機構24を介して移動本体部17(これに取り付けられた工具支持部18、第2支持機構及び刃物台22も)を移動させるさせるための第2駆動源を構成する第2駆動モータ34が設けられ、この第2駆動モータ34が支持ブロック16の上部に取り付けられ、その出力部がボールねじ機構25のねじ軸28に駆動連結されている。このように構成されているので、第2駆動モータ34が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回転駆動されると、ボールねじ機構25のねじ軸28が例えば所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動され、これによってナット部材30が支持部材32、移動本体部17、工具支持部18、第2支持機構及び刃物台22と一体的に図1及び図2において下方(又は上方)に移動され、刃物台22に取り付けられた加工工具(図示せず)は主軸の回転軸線Sに近接する方向(又は離隔する方向)(図2に矢印Xで示す方向)に移動される。
【0028】
移動本体部17に関連して、図示していないが、刃物支持部18を移動させるための第2往復駆動機構が内蔵され、この第2往復駆動機構も、上述した第1往復駆動機構24と同様のボールねじ機構から構成されている。第2往復駆動機構を介して刃物支持部18を移動させるための第3駆動源を構成する第3駆動モータ36は、移動本体部17の後部(図1及び図2において右部)に取り付けられ、その出力部が第2往復駆動機構のねじ軸に駆動連結され、このねじ軸に多数のボール部材を介して螺合されたナット部材が刃物支持部18に取り付けられている。このように構成されているので、第3駆動モータ36が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回転駆動されると、第2ボールねじ機構を介して刃物支持部18が図1及び図2において左方(又は右方)に移動され、刃物台22に取り付けられた加工工具(図示せず)は主軸に近接する方向(又は離隔する方向)(図1に矢印Zで示す方向)に移動される。
【0029】
このNC旋盤においては、加工時に生じる熱変形を補正して加工精度の低下を抑えるために、更に、次のように構成されている。加工精度に大きな影響を与える温度変動を検知するために、二つの温度検知手段が用いられ、第1温度検知手段40は主軸に関連する温度(以下、単に「主軸部温度」ともいう)を検知し、第2温度検知手段42は往復駆動機構24に関連する温度(以下、単に「ボールねじ部温度」ともいう)を検知する。この実施形態では、第1温度検知手段42は例えば熱電対から構成され、主軸部6の内部に主軸を覆うように配設された主軸ハウジング(図示せず)に取り付けられ、主軸に関連する温度(主軸部温度)として主軸ハウジングの表面温度を検知する。また、第2温度検知手段42は例えば測温抵抗体から構成され、ボールねじ機構25のナット部材30に取り付けられ、第1往復駆動機構24に関連する温度(ボールねじ部温度)としてボールねじ機構25のナット部材の表面温度を検知する。尚、第1及び第2温度検知手段40,42としてその他の公知の温度センサを用いるようにしてもよい。
【0030】
上述したことに関連して、NC旋盤の制御を行うためのコントローラを構成する制御手段46は、第1〜第3駆動モータ12,34,36を作動制御するための作動制御手段48、主軸部熱変形補正演算手段50、移動部材熱変形補正演算手段52、合成熱変形補正演算手段54及び補正値差演算手段55を備え、更に各種データが登録されたメモリ56を含み、このメモリ56には、熱変動に伴う主軸部の熱変形量(この熱変形量が主軸に関連した主軸部熱変形補正値となる)を演算する際に用いる主軸部熱変形補正式データ58と、熱変動に伴う移動部材の熱変形量(この熱変形量が往復駆動機構に関連した移動部材熱変形補正値となる)を演算する際に用いる移動部材熱変形補正式データ60とが登録されている。主軸部熱変形補正演算手段50は主軸部熱変形補正式データ58を用いて主軸部熱変形補正値を演算し、移動部材熱変形補正演算手段52は移動部材熱変形補正式データ60を用いて移動部材熱変形補正値を演算し、合成熱変形補正演算手段54は演算した主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正値を合成して合成熱変形補正値を演算し、補正値差演算手段55は、前回演算された合成熱変形補正値と今回演算された合成熱変形補正値との補正値差を演算する。
【0031】
ここで、メモリ56に登録された主軸部熱変形補正式データ58及び移動部材熱変形補正式データ60について説明する。主軸部熱変形補正式データ58については、主軸部6の熱変形測定結果に基づいて設定される。この主軸部6の熱変形量(H1)は、図4に示すように、
H1=C1+C2 ・・・(1)
C1:ベッド4の熱変形量 C2:主軸の軸受手段の熱変形量
と表される。そして、ベッド4の熱変形量(C1)は、
C1=〔a1+(a2×T0)+(a3×T1)〕×ΔTs ・・・(2)
a1,a2,a3:係数 T0:主軸部温度の初期温度
T1:周囲温度 ΔTs:主軸部温度の変化
で表され(尚、実施形態の場合、主軸部温度の初期温度T0及び周囲温度T1は測定していないので一定として取り扱う)、式(2)における係数a1,a2,a3は、旋盤の機種などにより異なり、例えば表1に示す通りとなる。
【0032】
【表1】

また、主部軸の軸受手段の熱変形量(C2)は、
C2=N×〔b1+(b2×T0)+(b3×T1)〕×
{1−exp〔(ln0.1)×t/30)〕} ・・・(3)
b1,b2,b3:係数 N:主軸の回転速度(rpm)
T0:主軸部温度の初期温度 T1:周囲温度
t:収束するまでの経過時間(分)
で表され(尚、実施形態の場合、主軸部温度の初期温度T0及び周囲温度T1は測定していないので一定として取り扱う)、式(3)における係数b1,b2,b3は、旋盤の機種などにより異なり、例えば表2に示す通りとなる。
【0033】
【表2】

また、移動部材熱変形補正式データ60については、ボールねじ機構25の熱変形測定結果に基づいて設定される。このボールねじ機構25の熱変形量(H2)は、
【数1】

【0034】
と表され、熱変形測定結果との差が小さい最も最適な次数の近似式が適用され、例えば7次式が最適と適用された場合における係数Piは、旋盤の機種などにより異なり、例えば表3に示す通りとなる。
【0035】
【表3】

次に、図2、図3及び図5を参照して、上述した旋盤の熱変形補正について説明する。被加工物の加工中においては、第1温度検知手段40が主軸(図示せず)に関連する温度(主軸部温度)を検知し(ステップS1)、第1温度検知手段40からの検知信号が制御手段46に送られる。かく検知信号が送られると、主軸部熱変形補正演算手段50は主軸部熱変形補正式データ58、換言すると上記式(1)、(2)及び(3)を用い、第1温度検知手段40の検知温度に基づいて主軸に関連する熱変形量(この熱変形量が補正するための主軸部熱変形補正値となる)を演算する(ステップS2)
また、第2温度検知手段42が第1往復駆動機構24に関連する温度(ボールねじ部温度)を検知し(ステップS3)、第2温度検知手段42からの検知信号が制御手段46に送られる。かく検知信号が送られると、移動部材熱変形補正演算手段52は移動部材熱変形補正式データ60、換言すると上記式(4)を用い、第2温度検知手段42の検知温度に基づいて往復駆動機構24に関連する移動部材熱変形量(この熱変形量が補正するための移動部材熱変形補正値となる)を演算する(ステップS4)。そして、合成熱補正補正演算手段54は主軸部熱変形補正演算手段52により演算された主軸熱変形補正値及び移動部材熱変形補正演算手段52により演算された移動部材熱変形補正値を合成して合成熱変形補正値を演算し(ステップS5)、かく演算され合成熱変形補正値がメモリ56に登録される。その後、変形差演算手段55は、メモリ56に登録された前の演算における熱変形補正値と今回演算された熱変形補正値との補正値差を演算する(ステップS6)。
【0036】
このように合成熱熱変形補正値の補正値差を演算して補正値差がない(補正値差がゼロである)場合、主軸(図示せず)と移動部材22との間の相対的位置を補正する必要はなく、このような場合、ステップS7からステップS10に移る。一方、熱変形補正値の補正値差が存在し、今回の熱変形補正値の方が前回の熱変形補正値よりも大きい(又は小さい)場合には、主軸と移動部材22との間の相対的位置が小さくなる(又は大きくなる)ように補正する必要があり、かかる場合、ステップS7からステップS8に進み、作動制御手段48は第2駆動モータ34を作動させ、移動本体部17及びこれに取り付けられた各種構成要素(移動部材22に取り付けられた加工工具を含む)が、熱変形補正値の補正値差分だけ主軸の中心軸線Sに近接する方向(又は離隔する方向)に移動され(ステップS9)、上述した熱変形の補正が被加工物の加工が終了するまで繰り返して行われる。このようにして熱変形を補正するので、主軸に関連する温度及び第1往復駆動機構24に関連する温度を用いて、比較的簡単に且つ簡易的に行うことができ、また主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正値の演算も簡単になり、またこのように補正することによって、主軸と移動部材22との間の相対的位置を温度に関係なくほぼ一定に保つことができ、その結果、温度変化による加工低下を抑えて被加工物を高精度に加工することができる。
【0037】
以上、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤に適用して説明したが、本発明はその他の工作機械、例えばマシニングセンタなどにも同様に適用することができる。
例えば、上述した実施形態では、刃物台22(移動部材)を主軸の回転軸線Sに対して実質上垂直な方向として、旋盤本体2の上下方向(図2において矢印Xで示す方向)に移動させる形態のものに適用して説明したが、このような構成に限定されず、刃物台22を主軸の回転軸線Sに対して実質上垂直な方向として、旋盤本体2の前後方向(図1及び図2において紙面に垂直な方向)に移動させる形態のものにも同様に適用することができ、この場合、刃物台22を旋盤本体2の上記前後方向に移動させて加工時に生じる熱変形の補正を行うようになる。
【0038】
また、上述した実施形態では、主軸部温度を検知するための第1温度検知手段40とボールねじ部温度を検知するための第2温度検知手段42を設けているが、これらに加えて、NC旋盤(工作機械)を設置した周囲温度を検知するための第3の温度検知手段を設け、これら第1〜第3温度検知手段の検知温度に基づいて、主軸と移動部材との間の相対的位置を補正するようにしてもよい。かかる場合、例えば、上記主軸部熱変形補正式データ58及び移動部材熱変形補正式データ60におけるパラメータとしての周囲温度T1として第3温度検知手段の検知温度を適用することができる。或いは、このような周囲温度T1の適用に代えて、主軸部熱変形補正式データ58におけるパラメータの一つとして、主軸部温度の初期温度と周囲温度との温度差を付け加えるとともに、移動部材熱変形補正式データ60におけるパラメータの一つとしてとして、ボールねじ部温度の初期温度と周囲温度との温度差を付け加えるようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、温度変化に伴う熱変形補正として主軸部6に関連する温度(第1温度検知手段40の検知温度)及び往復駆動機構24に関連する温度(第2温度検知手段42の検知温度)に基づいて補正しているが、これに加えて、工具支持部18を往復移動させるための第2往復駆動機構(図示せず)に関連する温度(例えば、第2往復駆動機構のナット部材に第4温度検知手段を設ける)を検知し、第1、第2及び第4温度検知手段の検知温度に基づいて熱変形の補正をするようにしてもよい。
【0040】
更に、旋盤本体2(工作機械本体)による加工を一時的に停止した場合、この旋盤本体2の温度低下によって主軸と移動部材22との間の相対的位置が変化するので、このような温度低下を考慮して次の加工時における熱変形を補正するには、次のように構成するのが望ましい。即ち、図6に示すように、制御手段46Aは、更に、補正値リセット手段72及びタイマ手段74を含み、タイマ手段74が所定時間(旋盤本体2の温度が初期値近傍まで低下する時間であって、例えば60分程度に設定される)計時すると、補正値リセット手段72がリセット信号を生成するように構成する。旋盤本体2に設けられる操作パネル76は、主電源のオン、オフを行うためのメインスイッチ78と、旋盤本体2による加工、加工停止を行うための起動スイッチ80とを備え、この起動スイッチ80のオフ(加工停止)により(具体的には、起動スイッチ80のオフによる加工停止信号に基づいて)タイマ手段74が作動される。
【0041】
このように構成した場合、起動スイッチ80をオフにして旋盤本体2による加工を停止すると、タイマ手段74が作動して計時を開始し、この開始から所定時間を計時すると、補正値リセット手段72がリセット信号を生成する。かくリセット信号が生成されると、このリセット信号に基づいて、メモリ手段56に記憶されていた合成熱変形補正手段54による合成熱変形値(換言すると、主軸部熱変形補正演算手段50による主軸部熱変形補正値及び移動部材熱変形補正演算手段52による移動部材熱変形補正値)がリセットされて初期化される。従って、この場合には、その後に起動スイッチ80をオンにして旋盤本体2による加工を再開すると、この再開ときの新たな温度状態でもって、主軸部熱変形補正演算手段50は主軸部熱変形補正値を演算し、移動部材熱変形補正演算手段52は移動部材熱変形補正値を演算する。このように新たな温度状態により熱変形補正値が演算されるので、旋盤本体2の加工停止後長時間経過した後加工を再開したときにおいても、主軸部における主軸部熱変形量及びボールねじ部25における移動部材熱変形量をズレなく演算することができ、加工再開時における加工精度低下の発生をより効果的に抑えることができる。尚、タイマ手段74が計時する所定時間は、旋盤(工作機械)の機種などによって適宜設定されるが、かく設定される所定時間は、例えば周囲温度の変化(例えば、季節におる温度変化等)に応じて補正するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の一実施形態の一部を簡略的に示す正面図。
【図2】図1のNC旋盤の主軸部及び刃物台並びにこれらに関連する構成を簡略的に示す図。
【図3】図1のNC旋盤の制御系を簡略的に示すブロック図。
【図4】主軸部温度変化と主軸部の熱変形量との関係を示す図。
【図5】図3の制御系による制御を示すフローチャート。
【図6】NC旋盤の制御系の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
2 旋盤本体(工作機械本体)
4 ベッド
6 主軸部
8 チャック手段
12 第1駆動モータ(第1駆動源)
16 支持ブロック
17 移動本体部
18 刃物支持部
22 刃物台(移動部材)
24 第1往復駆動機構
25 ボールねじ機構
28 ねじ軸
30 ナット部材
34 第2駆動モータ(第2駆動源)
40 第1温度検知手段
42 第2温度検知手段
46,46A 制御手段
50 主軸部熱変形補正演算手段
52 移動部材熱変形補正演算手段
54 合成熱変形補正演算手段
55 補正値差演算手段
58 主軸部熱変形補正式データ
60 移動部材熱変形補正式データ
72 補正値リセット手段
74 タイマ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体と、前記工作機械本体に設けられた主軸部と、前記主軸部に回転自在に支持された主軸と、前記工作機械本体に設けられ、前記主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に延びる支持機構と、前記支持機構に往復動自在に支持された移動部材と、前記主軸を回転駆動するための第1駆動源と、前記移動部材を前記支持機構に沿って往復動させるための往復駆動機構と、前記往復駆動機構を介して前記移動部材を移動させるための第2駆動源と、前記第1及び第2駆動源を作動制御するための制御手段と、を備え、加工工具又は被加工物の一方が前記主軸と一体的に回転駆動され、それらの他方が前記移動部材と一体的に移動される工作機械において、
前記主軸に関連して、その温度変化を検知するための第1温度検知手段が設けられているとともに、前記往復駆動機構に関連して、その温度変化を検知するための第2温度検知手段が設けられており、前記制御手段は、前記第1及び第2温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置を補正することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算するための主軸部熱変形補正演算手段と、前記第2温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算するための移動部材熱変形補正演算手段と、前記主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び前記移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値を合成した合成熱変形補正値を演算するための合成熱変形補正演算手段とを備え、前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の補正が前記合成熱変形補正値となるように前記第2駆動源を作動制御することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械本体の周囲の温度を検知するための第3温度検知手段が更に設けられており、前記主軸部熱変形補正演算手段は前記第1及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、前記移動部材熱変形補正演算手段は前記第2及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、前記合成熱変形補正演算手段は前記主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び前記移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値を合成した合成熱変形補正値を演算することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記往復駆動機構はボールねじ機構から構成され、前記ボールねじ機構は、前記主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に延び、前記第2駆動源によって回転駆動されるねじ軸と、前記ねじ軸に螺合されたナット部材と、前記ねじ軸と前記ナット部材との間に介在された多数のボール部材と、から構成され、前記第2温度検知手段は前記ナット部材に取り付けられており、また前記第1温度検知手段は前記主軸部の主軸ハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御手段は、更に、前記工作機械本体の加工停止時間を計時するタイマ手段を備えており、前記タイマ手段が前記所定時間を計時すると前記主軸部熱変形補正演算手段による主軸部熱変形補正値及び前記移動部材熱変形補正演算手段による移動部材熱変形補正値をリセットすることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の工作機械。
【請求項6】
前記工作機械本体は旋盤本体であり、前記主軸にはチャック手段が設けられ、前記チャック手段に前記被加工物が着脱自在に装着され、また前記移動部材は刃物台であり、前記刃物台に前記加工工具が交換可能に取り付けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の工作機械。
【請求項7】
工作機械本体の主軸部に回転自在に支持された主軸と、前記主軸の回転軸線に対して実質上垂直な方向に往復動自在に前記工作機械本体に支持された移動部材と、前記移動部材を往復動させるための往復駆動機構と、前記主軸を回転駆動するための第1駆動源と、前記往復動駆動機構を介して前記移動部材を移動させるための第2駆動源とを備えた工作機械における前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の熱変動を推定する熱変形量推定方法であって、
前記主軸に関連して、その温度変化を検知するための第1温度検知手段を設け、前記往復駆動機構に関連して、その温度変化を検知するための第2温度検知手段を設け、前記第1温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、前記第2温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、前記主軸に関連する主軸部熱変形量及び前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を合成して前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の熱変形量を推定することを特徴とする工作機械の熱変形量推定方法。
【請求項8】
前記工作機械本体の周囲の温度を検知するための第3温度検知手段を更に設け、前記第1及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記主軸に関連する主軸部熱変形量を演算し、前記第2及び第3温度検知手段の検知温度に基づいて前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を演算し、前記主軸に関連する主軸部熱変形量及び前記往復駆動機構に関連する移動部材熱変形量を合成して前記主軸と前記移動部材との間の相対的位置の熱変形量を推定することを特徴とする請求項7に記載の工作機械の熱変形量推定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate