説明

工作機械用の割出し装置におけるクランプ装置

【課題】工作機械用の割出し装置におけるクランプ装置において、任意角度の割出しが可能で高い剛性やクランプトルクが得られること。
【解決手段】主軸に対し回転不能なクランプ部と、主軸の軸線方向へ変位可能なクランプピストンが受ける流体圧をクランプ部に作用させる押圧機構とを備え、主軸の割り出された角度位置を保持するクランプ装置において、クランプ部は、主軸に対し相対回転不能な第1のクランプ部と、主軸と一緒に回転する第2のクランプ部とを備え、押圧機構は、第1のクランプ部を押圧する第1の押圧部と、第2のクランプ部を押圧する第2の押圧部とを備え、クランプピストンが流体圧力によって往動すると、第2のクランプ部または第2の押圧部に弾性変位が生じ、第1のクランプ部には軸線方向の力が、第2のクランプ部には主軸の半径方向の力が加わって、回転軸がクランプされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械用の割出し装置におけるクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられる割出し装置には、例えば、回転テーブル装置(ロータリテーブル、インデックステーブルとも言う。)がある。また、回転テーブル装置においては、割り出された主軸の角度位置を保持するため、クランプ装置が備えられるのが一般的である。従来、このような回転テーブル装置におけるクランプ装置として、次の3つの方式が知られている。
【0003】
スリーブクランプ方式。これは、主軸に対してその外側を囲繞するスリーブを配置したものである。そして、スリーブの外側に作動流体を供給することによって、スリーブの薄肉部を変形させて主軸に押圧させ、主軸の位相を保持するものである(特許文献1)。
【0004】
ディスククランプ方式。これは、主軸からその軸周りに一体的に突出するクランプディスクと、クランプディスクの片側の被クランプ面に対して軸線方向に変位可能に設けられたクランプピストンと、クランプディスクのクランプピストンとは反対側の被クランプ面に対向して設けられたフレーム側のクランプ面とを備えている。そして、クランプピストンを含む押圧機構に作動流体を供給することによって、クランプピストンの押圧部がクランプディスクを押圧し、その結果、クランプ面と押圧部とでクランプディスクがクランプされ、主軸の位相が保持される(特許文献2)。
【0005】
カップリング方式。これは、フレーム側に固定した第1の固定カップリング部材と、主軸側に固定した第2の固定カップリング部材と、双方のカップリング部材に対して軸線方向に進退可能に設けた移動カップリング部材とを備えるものである。そして、各々のカップリング部材には、噛合い用の割出歯が設けられている。また、移動カップリング部材を軸線方向に進退(変位)させるピストン部材も設けられている。ピストン部材によって移動カップリング部材を各固定カップリング部材に向かって前進させると、割出歯が噛み合い、それによって主軸の位相が保持される(特許文献3)。
【0006】
上述の3つの方式のクランプ装置には以下のような問題がある。したがって汎用性を考えると、何れも満足できるものとは言えない。
【0007】
スリーブクランプ方式の場合、クランプトルク(主軸を保持する力/以下では、「クランプ力」とも言う。)は、クランプ面(薄肉部が主軸に対し力を及ぼす面)の径と軸線方向の長さに依存する。
【0008】
したがって、大きいクランプ力を得るには、クランプ面及びスリーブの径方向の寸法や、軸線方向の寸法を大きくしなければならず、いずれも装置の大型化を招く。しかも、回転テーブル装置は、マシニングセンタ等の工作機械上に設置されるものであり、工作機械上での設置スペースの関係から、径方向や軸線方向の寸法に制限を受ける。したがって実際にはクランプトルクを大きくするのは難しい。
【0009】
なお、クランプトルクが小さい場合は、モーメント負荷(ワークの加工に伴って作用する回転方向の負荷)の大きい重加工において円テーブルの割出し位置を保持することができないため、そのような重加工には対応できない。
【0010】
また、ディスククランプ方式の場合、クランプトルクは、クランプディスクの径と、クランプピストンの押圧力に依存する。したがって、大きいクランプ力を得るには、同様に装置の大型化を招く。しかも、装置を大型化して大きいクランプ力を得ても、クランプ装置自体、特にクランプディスクのモーメント負荷に対する剛性が低いため、円テーブルの割出し位置を安定して保持することができず、この場合もスリーブクランプ方式と同様に重加工に対応できない。
【0011】
また、カップリング方式の場合、割出歯同士の噛合いによる保持であるため、割出し位置は完全に固定された状態となるし、装置のモーメント負荷に対する剛性も高い。しかし、割出し角度が割出し歯の歯数に依存するため、任意角度での円テーブルの割出しが不可能であり、加工面で制限を受ける。
【0012】
なお、上述の問題は、工作機械の割出し装置のうち、回転テーブル装置に限らず、他の装置にも当てはまると考えられる。例えば、回転駆動される支軸を介してスピンドルを支持し、その角度位置を割出すスピンドルヘッドの場合である(特許文献4)。
【0013】
【特許文献1】特開2006―35391号公報
【特許文献2】実開平6−42047号公報
【特許文献3】特開平7−256538号公報
【特許文献4】米国特許第5584621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記実情を考慮して開発されたもので、その目的は、任意角度の割出しが可能でありながらも高い剛性やクランプトルクが得られるクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、回転駆動される主軸に対し相対回転不能に設けられたクランプ部と、主軸の軸線方向へ変位可能に設けられたクランプピストンを含むと共にクランプピストンが受ける作動流体の圧力をクランプ部に対し作用させる押圧機構とを備え、主軸の割り出された角度位置を保持する工作機械用の割出し装置におけるクランプ装置を前提とする。
【0016】
そして、クランプ部は、主軸に対し相対回転不能に設けられた第1のクランプ部としてのクランプディスクと、主軸又は主軸と一体的に回転する部材に形成されて主軸の半径方向と交差する方向に延在する受圧面を含む第2のクランプ部とを含み、押圧機構は、前記クランプディスクに対向すると共にクランプピストンとクランプディスクとの間に介在する第1の押圧部と、第2のクランプ部の受圧面に対向すると共にクランプピストンと第2のクランプ部との間に介在する第2の押圧部とを含み、クランプピストンが前記作動流体の圧力を受けることによって当接状態となる第2のクランプ部及び押圧機構における第2の押圧部の一方は、クランプピストンを介して作用する軸線方向の押圧力を受けて第2のクランプ部の受圧面に対する主軸の半径方向の押圧力を発生させる押圧力転向部を含み、第2のクランプ部及び第2の押圧部の少なくとも一方は、第2の押圧部が第2のクランプ部に対し押圧力を作用させることに伴ってクランプピストンの前記軸線方向の変位を許容するように弾性的に変位可能に設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、押圧機構におけるクランプピストンが作動流体から受ける圧力は、第2の押圧部を介して第2のクランプ部の受圧面に作用する。そのとき、第2のクランプ部の受圧面には、押圧力転向部の作用により、クランプピストンが作動流体から受ける主軸の軸線方向(以下、「軸線方向」と言う。)の圧力と直交する方向(主軸の半径方向(以下、「半径方向」と言う。))の押圧力が作用する。
【0018】
更に、第2のクランプ部及び第2の押圧部の少なくとも一方は、第2の押圧部が第2のクランプ部に対し押圧力を作用させることに伴ってクランプピストンの軸線方向の変位を許容するように弾性的に変位可能に設けられているため、クランプピストンは、第2の押圧部と第2のクランプ部とが当接した状態から、作動流体の圧力を受けて更に軸線方向へ変位する。ちなみに、剛体同士が当接した場合は、それ以上の変位は不可能であるが、当接状態となる第2の押圧部と第2のクランプ部の少なくとも一方が押圧力の増加に伴って弾性的に変位するように構成されているため、クランプピストンの変位が許容される。
【0019】
そして、このクランプピストンの更なる変位により、クランプピストンとクランプディスクとの間に介在する第1の押圧部を介し、クランプディスクに対し軸線方向の押圧力が作用する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主軸と一緒に回転するクランプ部に対し、半径方向及び軸線方向の2つの押圧力が同時に作用するため、強固なクランプ力を得ることができる。しかも、クランプディスクのみでクランプする構成とは異なり、モーメント負荷に対する十分な剛性を持つと共に、任意角度の割出しが可能となり、カップリング方式のように割出し角度に制限を受けずに済む。
【0021】
また、本発明によれば1つのクランプピストンの動作によって半径方向及び軸線方向の2つの押圧力が同時に発生する構成であるため、単に2方式のクランプ装置を併用するものと比べ、構成が簡素化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明が適用される工作機械用の割出し装置の一例として、主軸としての回転軸2の回転角度を任意に割出し可能な回転テーブル装置1を示している。また、図1に示す回転テーブル装置1は、ギヤ等の減速機構を用いない直接駆動型モータ(以下、「DDモータ」と言う。)3を駆動源とする駆動機構を採用した例である。但し、本発明が適用される割出し装置は、回転軸(主軸)2に相対回転不能に組み付けられたウォームホイールを、駆動モータ等で回転させる駆動軸上に設けたウォームギヤで回転駆動する構成としても良い。
【0023】
図1の回転テーブル装置1は、ワークが搭載される円テーブル4と、円テーブル4を支持する回転軸2と、回転軸2を回転可能に支持するフレーム5と、フレーム5と回転軸2との間に収容されるDDモータ3と、フレーム5と回転軸2との間に収容されるクランプ装置6とを備えている。そして、DDモータ3を駆動させると、フレーム5に対して円テーブル4が回転軸2と一緒に、回転軸2の軸線を中心にして回転して、その角度位置が割出される。また、クランプ装置6を作動させると、回転軸2がクランプされ、前記回転によって割出された円テーブル4の角度位置が保持される。以下、各構成要素を詳述する。
【0024】
円テーブル4は、その表面にワーク(又はワークが取り付けられる治具)を載置して保持するものである。円テーブル4は、円テーブル4の裏面側に設けられる主軸としての回転軸2に対し、両者の軸線を一致させた状態で取り付けられている。円テーブル4は、その軸線を中心とする円周上の複数個所にネジ部材4aが等間隔に螺挿されており、そのネジ部材4aによって回転軸2の一端に固定されている。
【0025】
回転軸2は、図示の例では、2つの軸部材2a、2aから成っており、両軸部材2a、2aを軸線を一致させた状態で組み合わせ、ネジ部材2bによって連結した構成となっている。
【0026】
フレーム5は、回転テーブル装置1のベースとなる部分であって、回転軸2を受け入れて支持するための貫通孔を有している。この貫通孔は、回転軸2を受け入れた状態で、フレーム5と回転軸2との間に環状の空間部9が存在する大きさに形成され、さらに、円テーブル4側において空間部9が段階的に拡径するように形成されている。それにより、フレーム5の円テーブル4側には、空間部9内において段部5aが形成されている。また、フレーム5には、段部5aが形成された空間部9の円テーブル4側の開口を塞ぐフロントカバー7と、空間部9の反円テーブル4側の開口を塞ぐリアカバー8とが取り付けられている。このフロントカバー7及びリアカバー8は、何れも回転軸2を囲繞するリング状の部材であって、その内周部が回転軸2の外周面に接近し、その外周部がフレーム5に対してネジ部材7a、8aによって連結されている。したがって、フロントカバー7、リアカバー8もフレーム5の一部といってもよい。なお、フロントカバー7の外周部は、円テーブル4の外周部裏面に位置する。
【0027】
空間部9には、DDモータ3、クランプ装置6の他、アキシャル軸受11、ラジアル軸受12、回転検出器13が設けられている。なお、ラジアル軸受12は、回転軸2の軸部材2aとフレーム5との間に介装されており、アキシャル軸受11との協働で、回転軸2をフレーム5に対し回転自在に支持された状態としている。
【0028】
DDモータ3は、回転軸2を回転駆動するもので、ロータ3aの外周面をステータ3bが囲繞するインナーロータ形である。DDモータ3は、固定鉄心にコイルを巻回して構成されたステータ3bと、ステータ3bの内周面に近接して対向する複数のマグネットを円周方向に亘って配置したロータ3aとを同心円状に配置したものである。ロータ3aは回転軸2に対してネジ部材3cによって連結されている。また、ステータ3bはフレーム5に対してネジ部材3dによって連結されている。
【0029】
回転検出器13は、回転軸2の回転量を検出するためのエンコーダ13aと、エンコーダ13aに検出される被検出子13bとを備えている。回転軸2に設けられた被検出子13bを、フレーム5に設けられたエンコーダ13aが検出し、エンコーダ13aからの検出信号に基づいて回転軸2の回転量が検出される。
【0030】
クランプ装置6は、図1又は図2に示すように、回転駆動される回転軸2に対し相対回転不能に設けられたクランプ部20と、作動流体の圧力によってクランプピストン42をクランプ部20へ移動させて軸線方向の押圧力を作用させる押圧機構40とを備えている。
【0031】
また、本発明によるクランプ装置6は、複数方向の押圧力によって回転軸2をクランプするものである。なお、ここでいう複数方向の押圧力とは、軸線方向の押圧力と、軸線方向と直交する方向(半径方向)の押圧力である。このために、クランプ部20と押圧機構40の一方には、軸線方向の押圧力から半径方向の押圧力を発生させる押圧力転向部を備えている。また、クランプ部20と押圧機構40の少なくとも一方の一部は、クランプ部20が半径方向の押圧力を受けながらも、押圧機構40におけるクランプピストン42の軸線方向への変位(移動)を許容させてクランプ部20が軸線方向の押圧力をも受けられるようにするために、弾性的に変位可能に設けられている。以下、これらの構成について詳述する。
【0032】
クランプ部20は、軸線方向の圧力を受ける第1のクランプ部としてのクランプディスク21と、半径方向の圧力を受ける第2のクランプ部31とから構成される。そして、クランプディスク21及び第2のクランプ部31は、回転軸2の軸部材2aに対して半径方向外側に向けてそれぞれフランジ状に突出するように設けられている。なお、クランプディスク21は第2のクランプ部31よりも大径であるため、半径方向において、クランプディスク21の外周部が第2のクランプ部31よりも外側に突出し、第2のクランプ部31の範囲で両者は重なり合っている。また、クランプディスク21と第2のクランプ部31とが重なり合った部分は、軸線方向の両外側において前述のアキシャル軸受11によりフレーム5及びフロントカバー7に対し支持されている。
【0033】
ここで、クランプディスク21の軸線方向の両面のうち、第2のクランプ部31側の面をA面、その反対側の面をB面と称する。また、軸線方向における位置関係を表現するに際して、クランプディスク21を基準とし、クランプディスク21に近い側を軸線方向内側、遠い側を軸線方向外側と称する。
【0034】
図示の例では、第2のクランプ部31は、回転軸2に一体的に形成されている。つまり、回転軸2は、ラジアル軸受12によってフレーム5に対し支持される軸部材2aと、軸部材2aから半径方向に延びるフランジ状の大径部とを一体形成した構成となっている。そして、この大径部が第2のクランプ部31として機能する。また、この大径部(第2のクランプ部31)の外周面は、回転軸2の半径方向と交差する方向に延在する受圧面31aであり、図示の例では軸線方向内側に向かって拡径するテーパー状に受圧面31aが形成されている。
【0035】
クランプディスク21は、回転軸2とは別体のリング状の平板であって、回転軸2の外周面に嵌り込むかたちで設けられている。また、クランプディスク21は、その内周部におけるA面が第2のクランプ部31における軸線方向内側の面に対向するように設けられている。
【0036】
クランプディスク21と第2のクランプ部31とが重なり合う箇所において、第2のクランプ部31には凹部32が円周方向に沿って形成され、クランプディスク21には凸部22が円周方向に沿って形成されており、クランプディスク21の凸部22が第2のクランプ部31の凹部32に嵌合している。その上で、この嵌合部分において、円周方向に亘る複数箇所でネジ部材25が軸線方向に向けて螺挿されており、それによってクランプディスク21が第2のクランプ部31に連結されている。したがって、クランプディスク21は、回転軸2に対し第2のクランプ部31を介して相対回転不能に組み付けられている。
【0037】
前述のフレーム5における貫通孔内に形成された段部5aは、多段に形成されており、半径方向における最も外側の段の軸線方向内側の面が、クランプディスク21の外周部のB面と対向し、クランプディスク21に作用する押圧力を受けるクランプ面5bとなる。
【0038】
押圧機構40は、クランプディスク21と第2のクランプ部31とに押圧力を作用させるピストン部材41と、ピストン部材41を軸線方向に往復運動させる往復装置61とを備えている。
【0039】
ピストン部材41は、回転軸2と同軸的に設けられるリング状であって、クランプディスク21の外周部のA面側であって、第2のクランプ部31よりも半径方向外側に配置されている。また、ピストン部材41は、軸線方向に往復動するクランプピストン42と、クランプピストン42の軸線方向内側の端部である第1の押圧部43と、第1の押圧部43に対して半径方向内側に離間して設けられ軸線方向に延在する円筒状の第2の押圧部44と、第1の押圧部43と第2の押圧部44とを半径方向に連結するリング状の連結部45とを備える。連結部45は、第2の押圧部44の軸線方向内側の端部と第1の押圧部43とを連結している。このように図示の例では、本発明でいうクランプピストン、第1の押圧部及び第2の押圧部が一体的に形成され、ピストン部材41の一部として存在している。
【0040】
第1の押圧部43は、クランプディスク21の外周部のA面を軸線方向に押圧するものであって、クランプディスク21のA面に対向して離間して設けられている。すなわち、第1の押圧部43は、クランプピストン42とクランプディスク21との間に介在している。
【0041】
第2の押圧部44は、第2のクランプ部31を軸線方向に交差する方向に押圧するものであって、弾性的に変位可能な可撓性を有し、第2のクランプ部31の受圧面31aを囲繞するように軸線方向に延在する円筒状に形成されている。すなわち、第2の押圧部44は、クランプピストン42と第2のクランプ部31との間に介在している。
【0042】
また、第2の押圧部44の内周面は、軸線方向内側へ向けて拡径するテーパー状に形成されている。一方、第2の押圧部44の外周面も、前記内周面と同様のテーパー状に形成されている。しかも、第2の押圧部44の内周面及び外周面のテーパー角度(回転軸2の軸線に対し為す角度)は、第2のクランプ部31の受圧面31aよりも若干大きく形成されている。すなわち、この内周面の軸線方向外側部が第2のクランプ部31の受圧面31aに当接した状態において、この内周面の軸線方向内側部と第2のクランプ部31の受圧面31aとの間に間隙が生じるように形成されている。
【0043】
また、第2の押圧部44には円周方向に等間隔で複数のスリット44aが、内周面から外周面を貫通して放射状に設けられている。スリット44aは、第2の押圧部44に対してその軸線方向外側の端面から連結部45の軸線方向外側の面に達するまで延在して設けられる。したがって、スリット44aは軸線方向外側に向かって開口する状態となっている。スリット44aによって、第2の押圧部44が撓み易くなり、弾性的に変位(変形)し易くなっている。
【0044】
上述したクランプ部20の第2のクランプ部31と押圧機構40のピストン部材41における第2の押圧部44との一方には、軸線方向の押圧力から半径方向の押圧力を発生させる押圧力転向部を備えている。図示の例では、押圧力転向部は、第2のクランプ部31の外周面、すなわちテーパー状の受圧面31aとなる。詳しくは、押圧機構40における第2の押圧部44は、クランプピストン42が作動流体の圧力を受けることに伴い、第2のクランプ部31の受圧面31aに圧接され、受圧面31aに対し軸線方向の押圧力を作用させる。すると、受圧面31aがテーパー面であることから、テーパー面のカム作用(楔効果)により、図3(イ)に示すように、軸線方向の押圧力F1に対し、第2のクランプ部31に対し半径方向に作用する増力された押圧力F2が発生する。したがって、受圧面31aが押圧力転向部に相当する。
【0045】
また、上記のように、第2のクランプ部31は、第2の押圧部44から軸線方向の押圧力F1を受けることによって増力された半径方向の押圧力F2が発生するように構成されており、クランプ部20(第2のクランプ部31)は、増力作用を奏する構成(部分)、すなわち、増力部を有している。
【0046】
往復装置61は、ピストン部材41を嵌挿して軸線方向に変位可能とするシリンダ62と、ピストン部材41を軸線方向外側に常時付勢するリターンスプリング63と、作動流体をシリンダ62の内部に取り込む流体圧回路64とを備えている。
【0047】
シリンダ62は、フロントカバー7とフレーム5とによって形成され、軸線方向外側が閉鎖すると共に軸線方向内側が開口するように形成されている。そして、シリンダ62の軸線方向に延在する半径方向内側及び外側の内周面とフロントカバー7の軸線方向内側の面とにより、ピストン部材41のクランプピストン42の軸線方向の変位を案内する案内溝62aが形成されている。この案内溝62aは、クランプピストン42の軸線方向の変位を案内するもので、クランプピストン42における軸線方向外側の端部を囲繞するように設けられている。
【0048】
リターンスプリング63は、引張りバネであって、クランプピストン42の軸線方向外側の端面とフロントカバー7との間において円周方向の複数個所に介装されている。リターンスプリング63の中をネジ部材42aの軸部が貫通してクランプピストン42に螺挿されている。ネジ部材42aの頭部がリターンスプリング63よりも軸線方向外側に突出しており、この頭部が遊嵌する規制穴7bがフロントカバー7に設けてある。規制穴7bの底に頭部が到達すると、クランプピストン42の後退位置が規制される。
【0049】
流体圧回路64は、フロントカバー7と案内溝62aとクランプピストン42の軸線方向外側の面とによって構成される密閉空間である圧力室65と、フレーム5に形成された供給管5cとを備えている。また、供給管5cは、フレーム5の外側から圧力室65に連通して設けられている。供給管5cは、圧力室65とは反対側の開口端が圧油供給口5dとなる。そして、外部から圧油供給口5dを経て作動流体としての圧油が圧力室65に供給される。
【0050】
上述した回転テーブル装置1のクランプ装置6は、以下の手順で円テーブル4(回転軸2)の角度位置を割り出した後にその角度位置を保持する。
【0051】
まず、DDモータ3によって回転軸2が回転駆動されて、円テーブル4の角度位置が割出される。このとき、ピストン部材41が軸線方向内側に変位可能な状態にある。つまり、第1のクランプ部であるクランプディスク21とピストン部材41における第1の押圧部43との間、並びに第2のクランプ部31と第2の押圧部44との間には軸線方向の間隙が存在している。
【0052】
次いで、その割り出された円テーブル4(回転軸2)の角度位置を保持するために、圧油供給口5d及び供給管5cを介し、作動流体としての圧油が圧力室65に供給される。それにより、圧力室65内部の油の圧力が高まるため、ピストン部材41(クランプピストン42)がリターンスプリング63の付勢力に抗して軸線方向内側に変位する。
【0053】
クランプピストン42の変位に伴い、クランプピストン42と一体に形成された第2の押圧部44も第2のクランプ部31の受圧面31aに向かって変位する。それに伴い、第2の押圧部44は、その内周面側が受圧面31aに当接し、圧油の圧力によって受圧面31aに圧接された状態となる。その結果、前述のように、第2のクランプ部31に対し半径方向内側への押圧力が発生する。
【0054】
なお、第2の押圧部44が第2のクランプ部31の受圧面31aに当接した初期の状態では、クランプディスク21とフレーム5のクランプ面5bとの間、及びクランプディスク21と第1の押圧部43との間の少なくとも前者には、間隙が存在している。したがって、クランプディスク21には実質、押圧力は作用していない。
【0055】
前述のように第2の押圧部44には、スリット44aによって可撓性が付与されている。したがって、第2の押圧部44が第2のクランプ部31に対して圧接されることに伴い、その反力によって第2の押圧部44が半径方向(拡径方向)へ撓んで第2の押圧部44の内周面の当接部が拡径される。そのため、第2の押圧部44と第2のクランプ部31とが当接した状態からでもクランプピストン42(第1の押圧部43)の軸線方向内側への変位が許容される。すなわち、クランプピストン42の変位は、第2の押圧部44と第2のクランプ部31との当接によって規制されることなく、第2の押圧部44が第2のクランプ部31に圧接された状態から第2の押圧部44が内周面を拡径する方向へ弾性的に変位することによって許容される。
【0056】
また、第2の押圧部44の内周面と第2のクランプ部31の受圧面31aとは、前述したようにテーパー角が異なるため、最初は線で当接した状態となっているが、第2の押圧部44が撓むことによって面で当接した状態となる。
【0057】
そして、第1の押圧部43は、クランプピストン42が受ける圧油の圧力により、第2の押圧部44と第2のクランプ部31とが圧接状態となった後にも軸線方向内側へ変位し、クランプディスク21の外周側端部(被クランプ部)をフレーム5のクランプ面5bに対し押圧する。それにより、クランプディスク21は、第1の押圧部43から軸線方向の押圧力を受けて、第1の押圧部43とフレーム5のクランプ面5bとの間でクランプされた状態となる。
【0058】
その結果、回転軸2は、自身に形成された第2のクランプ部31と、自身に対して相対回転不能に組み付けられたクランプディスク21との2箇所について、各々異なる方向の押圧力によってクランプされることになる。つまり、第2のクランプ部31の受圧面31aが第2の押圧部44から半径方向内側へ向けた押圧力(クランプ力)を受けると共に、クランプディスク21が第1の押圧部43から軸線方向への押圧力を受けることによって第1の押圧部43とクランプ面5bとの間でクランプされた状態となる。したがって、この2箇所で同時に発生する半径方向及び軸線方向でのクランプ力により、回転軸2の角度位置が強固に保持された状態となる。
【0059】
上記の例では、第2の押圧部44の内周面と第2のクランプ部31の外周面(受圧面31a)とのテーパー角を異ならせるものとしたが、両者のテーパー角を同じとし、最初から面全体で当接するようにしてもよい。なお、その場合は、第2の押圧部44とクランプピストン42(第1の押圧部43)を連結している部分、つまり連結部45が可撓性を有するものとし、第2の押圧部44が連結部45の撓みによって弾性的に変位するものとすればよい。
【0060】
但し、上記の連結部45で撓ませる構成では、第2の押圧部44全体の変位により、第2の押圧部44と第2のクランプ部31とが第2の押圧部44における軸線方向内側の端部のみで当接する構造となり、上記のような面ではなく線で当接した状態となる。したがって、より大きいクランプ力が必要な場合は、上記の例の方が好ましいといえる。
【0061】
また、上記の例では、図3(イ)に示すように、第2の押圧部44の内周面及び第2のクランプ部31の外周面が共にテーパー状に形成されるものとしたが、図3(ロ)に示すように、第2のクランプ部31の外周面が軸線方向に延在する面に形成されるものでもよい。また、上記の例では、第2のクランプ部31は、テーパー状の外周面と軸線方向外側の平面31bとが交差して、交差部分に角が存在する形状としたが、図3(ロ)に示すように、角をなくす形状にしてもよい。つまり第2のクランプ部31の外周面を軸線方向に延在する面とし、この外周面と軸線方向外側の平面31bとが外側に膨らむ円弧面で連続する形状であってもよい。この場合でも、円弧面は第2のクランプ部31の受圧面31aとなる。したがって、この受圧面31aに第2の押圧部44を作用させることにより、第2のクランプ部31を半径方向へ押圧する力が発生する。
【0062】
上記の例では、クランプピストン42、第1の押圧部43、及び第2の押圧部44を一体に形成したもの、すなわち単一のピストン部材41が各機能を有するものとしたが、当然ながら、各部を別体に形成して組み付けた構成とすることも可能である。
【0063】
また、上記の例では第2の押圧部44が第2のクランプ部31(受圧面31a)に圧接することに伴って第2の押圧部44が弾性的に変位する構成としたが、これに代えて、図4に示すように、第2のクランプ部31が弾性的に変位する構成としてもよい。
【0064】
図4に示す例が上記の例と異なるのは、第2のクランプ部31が回転軸2とは別体であること、第2のクランプ部31が回転軸2に対し相対回転不能に且つ軸線方向に変位可能に設けられていること、第2のクランプ部31を軸線方向外側へ付勢する付勢部材33が設けられていること、第2の押圧部44がクランプピストン42に対し変位不能となるようにピストン部材41が設けられていることである。以下、詳述する。
【0065】
押圧機構40における第2の押圧部44は、前記の連結部45を介してクランプピストン42に支持される構成ではなく、クランプピストン42の一部分をなすように一体に形成されている。したがって、ピストン部材41は、クランプピストン42に対し第2の押圧部44が弾性的に変位不能となっている。
【0066】
第2のクランプ部31は、回転軸2の大径部2cとは別体に形成されており、大径部2cの外周面に嵌るリング状のクランプ部材として形成されている。また、回転軸2の大径部2cの外周面には、軸線方向に延在する1つ以上の凸部2dが円周方向の適宜箇所に形成され、一方で、第2のクランプ部31(クランプ部材)の内周面には、この凸部2dに対応する凹溝31cが形成されている。そして、回転軸2の凸部2dとクランプ部材31の凹溝31cとが嵌め合わされることにより、クランプ部材31は、回転軸2に対し相対回転不能であって軸線方向へ移動可能(摺動可能)に組み合わされている。このように組み合わされていることから、クランプ部材31は回転軸2の一部とみなしてもよい。
【0067】
更に、クランプ部材31とクランプディスク21とは、軸線方向に対向配置されており、両者の間には付勢部材33としての圧縮バネが円周方向の複数個所において介装されている。このため、第2のクランプ部31における軸線方向内側の面には圧縮バネ33の一端部を嵌め込む収容穴31dが形成されている。また、圧縮バネ33が介装されていることにより、第2のクランプ部31は、常時軸線方向外側に向けて付勢され、第2の押圧部44から押圧力を受けない場合にはクランプディスク21との間に変位用の間隙が形成されている。
【0068】
また、フロントカバー7における軸線方向内側の面には、クランプ部材31に当接する係止部7c(ストッパ)が形成されている。そして、クランプ部材31は第2の押圧部44から押圧力を受けない状態では、係止部7cに当接して軸線方向外側への変位が規制され、後退位置が定まっている。
【0069】
図4に示す構成では、クランプピストン42が圧油による圧力を受けて軸線方向内側へ向けて変位するのに伴い、第2の押圧部44がクランプ部材31の受圧面31aに当接し、その後、圧接される。それにより、前記例と同様に、クランプ部材31に対し半径方向の押圧力が作用する。この作用によって回転軸2に対し半径方向のクランプ力が作用することになる。
【0070】
また、第2の押圧部44がクランプ部材31の受圧面31aに圧接した状態から、更にクランプピストン42が軸線方向内側へ変位することに伴って、クランプ部材31が圧縮バネ33の付勢力に抗して軸線方向内側へ変位する。したがって、クランプピストン42の変位は、第2の押圧部44とクランプ部材31との当接によって規制されることなく、第2の押圧部44がクランプ部材31に圧接された状態からクランプ部材31がクランプピストン42の変位方向へ弾性的に変位することによって許容される。
【0071】
そして、更にクランプピストン42が軸線方向内側へ変位することに伴って、第1の押圧部43がクランプディスク21を押圧し、第1の押圧部43とフレーム5のクランプ面5bとの間でクランプディスク21がクランプされた状態となる。よって、第2の押圧部44がクランプ部材31に圧接しつつ、クランプディスク21に対し第1の押圧部43によって押圧力を作用させることが可能となる。
【0072】
以上の2つの例では、第1の押圧部43及び第2の押圧部44がクランプピストン42と一体的に形成されている構成としたが、これに限らず、図5、図6に示すように、第1の押圧部43及び第2の押圧部44をクランプピストン42とは別体の部材とすることも可能である。
【0073】
図5に示す例は、第2の押圧部44がクランプピストン42及び第1の押圧部43とは別体の部材に形成されている構成を有している。そして、図5に示す例が最初の例と異なるのは、第2の押圧部44を含む梃子レバー34がフレーム5の支持部51に揺動可能に支持されていること、クランプピストン42の往復動に伴って梃子レバー34が揺動すること、梃子レバー34の往動に伴って第2の押圧部44が第2のクランプ部31を押圧することである。
【0074】
また、図5に示す例では、クランプピストン42の回転テーブル側にクランプディスク21が設けられている。一方、図では省略してあるが、クランプピストン42の反回転テーブル側には圧力室65及びリターンスプリング63等も設けられている。したがって、クランプピストン42は軸線方向に往復動可能に設けられている。また、クランプピストン42の内周面であって、第1の押圧部43よりも反回転テーブル側の部分は、クランプディスク21から軸線方向外側へ向かって縮径するテーパー状に形成されている。
【0075】
梃子レバー34は、回転軸2の大径部2cである第2のクランプ部31の外周面に沿って離間して複数(好ましくは、バランスを考えて3以上)配置される。ここで大径部2cの外周面は、受圧面31aとなり、軸線方向に延在する面となっている。
【0076】
梃子レバー34は、略L字状に屈曲する部材であって、屈曲部分でフレーム5に支持されており、一端でクランプピストン42の内周面に形成されたテーパー部分に当接し、他端で第2のクランプ部31に相当する回転軸2の大径部2cの外周面に(間接的に)当接するように設けられている。すなわち、梃子レバー34は、屈曲部分が支点に、上記一端が力点に、上記他端が作用点になる。また、梃子レバー34の屈曲部は、フレーム5の支持部51に対して凹凸嵌合により位置決めされている。ここでは、屈曲部が球状に膨大しており、球状形状に対応してフレーム5の支持部51には球面状の窪みが設けられている。
【0077】
梃子レバー34は、屈曲部(支点)から前記他端(作用点)までの距離が屈曲部から前記一端(力点)までの距離よりも長くなるように形成されている。したがって、力点に作用する力が増力されて作用点(第2のクランプ部31)に作用する。すなわち、第2の押圧部44を含む押圧機構40における梃子レバー34は、増力作用を奏する構成となっており、押圧機構40が増力部を有しているといえる。
【0078】
この構成によれば、クランプピストン42が軸線方向内側へ変位するのに伴って、梃子レバー34の一端がクランプピストン42のテーパー状の内周面に当接して前記一端に押圧力が作用する。その作用により、梃子レバー34自体が屈曲部を中心に図示の時計回り方向へ回動し、それに伴って前記他端が略半径方向へ変位して第2のクランプ部31に対し半径方向の押圧力が発生する。
【0079】
このように梃子レバー34は、クランプピストン42から軸線方向の押圧力を受けることによって第2のクランプ部31の外周面に半径方向の押圧力を発生させるものであり、梃子レバー34自体が第2の押圧部44及び押圧力転向部に相当する。
【0080】
更に、梃子レバー34は、それ自身が可撓性を有するように形成されている。それにより、作用点(第2の押圧部44)が第2のクランプ部31の外周面に当接した状態からでも、梃子レバー34が弾性変形し、クランプピストン42の軸線方向内側への変位が許容される。したがって、クランプピストン42(第1の押圧部43)により、クランプディスク21に対しても押圧力を作用させることが可能となる。
【0081】
また、図示の例では、梃子レバー34と第2のクランプ部31との間に第2のクランプ部31を囲繞する薄肉の円筒部46aを有する押圧部材46が介装されている。押圧部材46は、円筒部46aの軸線方向外側に連続する固着部46bを有し、固着部46bがフレーム5の支持部51にネジ部材46cで固着されている。そして、押圧部材46の円筒部46aは、その薄肉により少なくとも縮径方向に変形可能となっており、第2の押圧部44による押圧力は、押圧部材46の円筒部46aを介して第2のクランプ部31に作用する。
【0082】
この構成によれば、梃子レバー34による半径方向の押圧力は円筒部46aの全周に対して部分的に作用するが、それによって円筒部46aが縮径方向に変形するため、第2のクランプ部31の外周面に対し全周に亘って押圧力が作用されるものとなる。
【0083】
なお、図示の例では、梃子レバー34とフレーム5の支持部51との間に圧縮バネ52が介装されている。圧縮バネ52は、梃子レバー34の第2の押圧部44が押圧部材46の円筒部46aに対し常時当接する状態を維持するものであって、図では常時時計回り方向に梃子レバー34を付勢している。但し、圧縮バネ52のバネ力は、円筒部46aを変形させない程度としてある。そして、この圧縮バネ52により、梃子レバー34はクランプピストン42が作用点に当接していない状態でも、その姿勢が維持されて脱落することはない。
【0084】
図6に示す例は、第1の押圧部43がクランプピストン42とは別体の部材に形成されている構成を有している。そして、その他に、図6に示す例が図4に示す例と異なるのは、第1の押圧部43を含むフレーム側クランプ部材47が軸線方向へ往復動可能に設けられていること、第1の押圧部43が付勢部材48によってクランプディスク21から離間するよう軸線方向外側に付勢されていること、第1の押圧部43とフレーム5とクランプピストン42との間に形成された空間にボール部材49が収容されていること、ボール部材49は第1の押圧部43とフレーム5とクランプピストン42とからなる3つの部材に各々1点で接していること、クランプピストン42の軸線方向への往復動をボール部材49の軸線方向に対して斜めに交差する方向の運動に変えてから第1の押圧部43に伝えることである。
【0085】
クランプディスク21の外周側端部(被クランプ部)のA面方向に、クランプピストン42とは別体のクランプ部材47(フレーム側クランプ部材)が設けられている。このフレーム側クランプ部材47は、フレーム5の内周面に嵌挿されるリング状の部材であって、軸線方向へ摺動可能に設けられている。また、フレーム側クランプ部材47の内周側における軸線方向内側の面がクランプディスク21の外周側端部のA面と軸線方向に対向するように設けられている。したがって、このフレーム側クランプ部材47の内周側における軸線方向内側部が第1の押圧部43に相当する。
【0086】
フレーム側クランプ部材47は、クランプディスク21の外縁よりも半径方向外側でフレーム5との間に介装された付勢部材48としての圧縮バネにより、常時クランプディスク21から離間するよう軸線方向外側へ付勢されている。そして、クランプピストン42から押圧力を受けない場合にはフレーム側クランプ部材47は、クランプディスク21との間に変位用の間隙が形成されている。また、この圧縮バネ48は、第2のクランプ部31に設けられた圧縮バネ33と同様に、円周方向の複数個所において配置される。また、フレーム側クランプ部材47には、圧縮バネ48の一端部を嵌め込む収容穴47aが形成されている。
【0087】
フレーム側クランプ部材47が摺動するフレーム5の内周面には軸線方向に延在する1つ以上の凸部53が円周方向の適宜箇所に形成され、一方で、フレーム側クランプ部材47の外周面にはこの凸部53に対応する凹溝47bが形成されている。そして、これら凸部53と凹溝47bとが嵌め合わされることにより、フレーム側クランプ部材47は、フレーム5に対し相対回転不能であって軸線方向へ移動可能(摺動可能)に組み合わされている。
【0088】
フレーム側クランプ部材47とクランプピストン42との間に複数個のボール部材49が円周方向の適宜箇所に設けられている。具体的には、フレーム側クランプ部材47の内周面における軸線方向外側部には、その内径が軸線方向内側に向けて縮径するテーパー面47cが形成されており、一方で、クランプピストン42の外周面における軸線方向内側部には、その外径が軸線方向内側に向かって縮径するテーパー面42bが形成されている。また、フレーム側クランプ部材47よりも軸線方向外側には、案内溝62aよりも半径方向外側に延在する段部54がフレーム5に形成されている。この段部54にもその内周面の軸線方向内側部において、軸線方向内側へ向けて拡径するテーパー面54aが形成されている。そして、これら3つのテーパー面47c、42b、54aによって囲まれた環状の空間に複数個のボール部材49が円周方向の適宜箇所に配設されている。なお、このボール部材49は、接触状態で円周方向の全周に亘って設けてもよいし、円周方向に間隔をおいて設けてもよい。
【0089】
そして、この構成によれば、クランプピストン42がボール部材49に作用させる押圧力(図のF1)が増力されてクランプディスク21に作用する。すなわち、図4の例と同様にしてクランプピストン42が第2の押圧部44で、第2のクランプ部31である回転軸側クランプ部材と当接した後に回転軸側クランプ部材31を弾性的に変位させつつ更に軸線方向へ変位することに伴い、ボール部材49に対し軸線方向の押圧力F1が作用する。そして、クランプピストン42のテーパー面42bのカム作用(楔効果)により、軸線方向の押圧力F1が半径方向外側へ向く力F2に増力されてボール部材49に作用する。更に、ボール部材49とフレーム側クランプ部材47との当接部では、フレーム側クランプ部材47のテーパー面47cのカム作用により、半径方向の押圧力F2が軸線方向内側へ向く力F3として作用する。それにより、フレーム側クランプ部材47が圧縮バネ48のバネ力に抗して軸線方向内側へ変位し、クランプディスク21をフレーム5のクランプ面5bに押圧する。
【0090】
本発明は上述した各種の例に限定されない。例えば、回転軸2の半径方向外側に第1のクランプ部21、第2のクランプ部31、第1の押圧部43及び第2の押圧部44等を設ける構成に限らず、これらを回転軸2の半径方向内側に設ける構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】回転テーブル装置の全体を示す断面図である。
【図2】回転テーブル装置のクランプ装置の片側を示す拡大断面図である。
【図3】(イ)図は図1の例における力の伝達具合を示すベクトル図である。(ロ)図は図1の変形例における力の伝達具合を示すベクトル図である。
【図4】別の例におけるクランプ装置の片側を示す拡大断面図である。
【図5】別の例におけるクランプ装置の片側を示す拡大断面図である。
【図6】別の例におけるクランプ装置の片側を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1回転テーブル装置、2回転軸、2a軸部材、2bネジ部材、2c大径部、2d凸部、
3DDモータ、3aロータ、3bステータ、3cネジ部材、3dネジ部材、
4円テーブル、4aネジ部材、
5フレーム、5a段部、5bクランプ面、5c供給管、5d圧油供給口、
6クランプ装置、
7フロントカバー、7aネジ部材、7b規制穴、7c係止部、
8リアカバー、8aネジ部材、
9空間部、
11アキシャル軸受、12ラジアル軸受、
13回転検出器、13aエンコーダ、13b被検出子、
20クランプ部、21クランプディスク、22凸部、25ネジ部材、
31第2のクランプ部、31a受圧面、31b平面、31c凹溝、31d収容穴、
32凹部、33付勢部材、34梃子レバー、
40押圧機構、41ピストン部材、42クランプピストン、42aネジ部材、
42bテーパー面、
43第1の押圧部、44第2の押圧部、44aスリット、45連結部、46押圧部材、
46a円筒部、46b固着部、46cネジ部材、47フレーム側クランプ部材、
47a収容穴、47b凹溝、47cテーパー面、48付勢部材、49ボール部材、
51支持部、52圧縮バネ、53凸部、54段部、54aテーパー面、
61往復装置、62シリンダ、62a案内溝、63リターンスプリング、
64流体圧回路、65圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される主軸に対し相対回転不能に設けられたクランプ部と、主軸の軸線方向へ変位可能に設けられたクランプピストンを含むと共にクランプピストンが受ける作動流体の圧力をクランプ部に対し作用させる押圧機構とを備え、主軸の割り出された角度位置を保持する工作機械用の割出し装置におけるクランプ装置において、
クランプ部は、主軸に対し相対回転不能に設けられた第1のクランプ部としてのクランプディスクと、主軸又は主軸と一体的に回転する部材に形成されて主軸の半径方向と交差する方向に延在する受圧面を含む第2のクランプ部とを含み、
押圧機構は、前記クランプディスクに対向すると共にクランプピストンとクランプディスクとの間に介在する第1の押圧部と、第2のクランプ部の受圧面に対向すると共にクランプピストンと第2のクランプ部との間に介在する第2の押圧部とを含み、
クランプピストンが前記作動流体の圧力を受けることによって当接状態となる第2のクランプ部及び押圧機構における第2の押圧部の一方は、クランプピストンを介して作用する軸線方向の押圧力を受けて第2のクランプ部の受圧面に対する主軸の半径方向の押圧力を発生させる押圧力転向部を含み、
第2のクランプ部及び第2の押圧部の少なくとも一方は、第2の押圧部が第2のクランプ部に対し押圧力を作用させることに伴ってクランプピストンの前記軸線方向の変位を許容するように弾性的に変位可能に設けられていることを特徴とする工作機械用の割出し装置におけるクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−99789(P2010−99789A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274580(P2008−274580)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】