説明

工作機械用の回転割出し装置

【課題】回転割出し装置に含まれるロータリジョイントをより小径なものとし、ロータリジョイントにおける摺動面の面積を小さくすることにより、摺動抵抗に伴う動力損失を小さくして回転割出し装置を効率的に駆動する。
【解決手段】フレーム(2)内で回転自在に設けられ回転駆動対象(10)を支持する回転軸(6)と、回転駆動対象(10)に加工用流体を供給するためのロータリジョイント(15、32)とを含み、回転駆動対象(10)から引き出された複数本のケーブル(27、43)が回転軸(6)の軸線方向へフレーム(2)内を挿通された状態で配線されている工作機械用の回転割出し装置(1)において、ロータリジョイント(15)の摺動部を構成するディストリビュータ(16)およびシャフト(21)のうち、半径方向外側に位置する部材の有する中空円筒部(17)の外周面の外側にケーブル(27)のうちの少なくとも1本を配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動する回転駆動対象に対し電力や流体圧を供給するロータリジョイントを備えた工作機械用の回転割出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、いわゆるマシニングセンタ等の工作機械において、工具が取り付けられるスピンドルを回転駆動するスピンドルユニットを支持し、旋回駆動するためのフォーク形の駆動部(A軸駆動部)を有するスピンドルヘッドを開示している。前記スピンドルヘッドでは、A軸駆動部は、スリーブ(36)によって支持されており、スリーブ(36)に取り付けられたDDモータのモータロータ(70)によってC軸回りに回転駆動される。このA軸駆動部及びA軸駆動部をC軸回りに回転駆動する部分(C軸駆動部)は、いずれもそれらの回転角度を割出して所定の位置で停止させる回転割出し装置として機能する。A軸駆動部は駆動源としてDDモータを備えており、また、図示はされていないが、スピンドルユニットも駆動モータ(スピンドルモータ)を内蔵している。
【0003】
一方、特許文献2は、回転割出し装置としてのインデックステーブル(回転テーブル装置)に関するものであり、その回転テーブル装置がロータリジョイントを備えることを開示している。
【0004】
これらに代表される回転割出し装置において、上記の特許文献1に記載の装置のように、回転駆動される回転駆動対象が、電気的な駆動部を有する場合が多々ある。この場合、この駆動部に対し電力を供給するための電力供給用のケーブルを配線する必要がある。
【0005】
このケーブルは、回転駆動対象の回転に伴って上記ケーブルが装置外で振り回されるのを避けるべく、回転割出し装置のフレーム内で、回転駆動対象を支持する回転軸の軸線に沿った状態で配線される。また、一般的には、フレーム内でのケーブルの捩れ等を抑えるために、上記ケーブルを回転軸の軸線付近で配線するのが常識とされている。すなわち、回転割出し装置では、回転軸の中心に貫通孔を形成し、その貫通孔内に上記のようなケーブルを配線するのが一般的である。
【0006】
そして、回転割出し装置が特許文献2に記載のようにロータリジョイントを備える場合には、例えば、そのロータリジョイントが円筒状のディストリビュータとディストリビュータに嵌装されたシャフトとで構成される場合において、ディストリビュータの中心に貫通孔を形成し、その貫通孔内に上記ケーブルを配線するという構成が一般的に採用されている。
【0007】
しかし、そのような構成の場合、上記ケーブルが太い及び/又は本数が多い場合、ロータリジョイントの摺動抵抗が大きくなるという問題が生じる。詳しくは、回転割出し装置の回転軸の回転に伴い、ディストリビュータとシャフトとは、その嵌合面が摺動しつつ相対回転する。また、両者間にはシール部材が介装されているため、単に摺接する場合と比べて摺動抵抗は大きい。そして、両者間の摺動抵抗は摺動面の面積に比例し、その面積は摺動部面の径に比例するため、摺動面の径が大きくなる程に摺動抵抗は大きくなる。上記のように配線されるケーブルが太い及び/又は本数が多い場合、ケーブルを配線するための貫通孔を径の大きなものにせざるを得ない。そのため、それに伴ってディストリビュータとシャフトとの間の摺動面の面積が大きくなり、その結果、両者の相対回転に伴う摺動抵抗が増大する。そして、ロータリジョイントにおけるディストリビュータとシャフトとの間の摺動抵抗が大きいと、その分だけ動力損失が大きくなってしまう。
【特許文献1】米国特許5,584,621号明細書
【特許文献2】特開2002-36047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、前述の回転割出し装置に含まれるロータリジョイントをより小径なものとし、ロータリジョイントにおける摺動面の面積を小さくすることにより、摺動抵抗に伴う動力損失を小さくして回転割出し装置を効率的に駆動できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題のもとに、請求項1に係る発明は、フレーム(2)内で回転自在に設けられると共に端部に設けられた回転体(3)を介して回転駆動対象(10)を支持する回転軸(6)と、前記回転軸(6)の軸線に関し前記回転軸(6)と同心的に設けられたロータリジョイント(15、32)であって前記回転駆動対象(10)に対し加工用の流体を供給するためのロータリジョイント(15、32)とを含み、前記回転駆動対象(10)から引き出された複数本のケーブル(27、43)が前記回転軸(6)の軸線方向へ挿通された状態で配線されている工作機械用の回転割出し装置(1)において、前記ロータリジョイント(15、32)を、前記フレーム(2)に対し相対回転不能に設けられたディストリビュータ(16、33)と前記ディストリビュータ(16、33)に対し相対回転可能に嵌装されたシャフト(21、38)とから構成し、前記ディストリビュータ(16、33)及びシャフト(21、38)は、一方が前記回転体(3)の回転中心に軸心を一致させて配置された軸部(22、34)を有し、他方が前記軸部(22、34)に嵌装される中空円筒部(17、39)を有し、前記ケーブル(27、43)のうちの少なくとも1本が、前記ロータリジョイント(15、32)のディストリビュータ(16、33)及びシャフト(21、38)の前記他方における中空円筒部(17、39)の外周面の外側で配線されている。
【0010】
請求項1に従属する請求項2において、前記ディストリビュータ(33)およびシャフト(21)の一方の前記軸部(22、34)が中実で形成されており、前記ケーブル(27、43)は、その全てが前記中空円筒部(17、39)の外周面の外側で配線されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、フレーム(2)内で回転自在に設けられると共に端部に設けられた回転体(3)を介して回転駆動対象(10)を支持する回転軸(6)と、回転駆動対象(10)に対し加工用の流体を供給するためのロータリジョイント(15、32)とを含み、回転駆動対象(10)から引き出された複数本のケーブル(27、43)が前記回転軸(6)の軸線方向へフレーム(2)内を挿通する状態で配線されている工作機械用の回転割出し装置(1)において、ロータリジョイント(15、32)の摺動部を構成するディストリビュータ(16、33)およびシャフト(21、38)のうち、半径方向外側に位置する部材が有する中空円筒部(17、39)の外周面の外側に前記ケーブル(27、43)のうちの少なくとも1本を配線するから、従来ロータリジョイント内部に配線されていたケーブルの本数を少なく、または無くすことができる。これにより、ロータリジョイントをより小径なものとし、ロータリジョイントのディストリビュータとシャフトとの摺動面の面積を小さくすることができ、摺動面に生じる摺動抵抗に伴う動力損失を小さくして回転割出し装置を効率的に駆動できるようになる。
【0012】
また、ロータリジョイントの軸芯部に貫通孔を形成して前記ケーブルを配線する場合であっても、複数本のケーブルの全てを上記貫通孔内で配線する場合に比べ、貫通孔の径を小さくすることができる。その結果、ディストリビュータとシャフトとの間の摺動面の面積を小さくすることができ、摺動抵抗を小さくして動力損失を少なくすることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、請求項1の発明において、ロータリジョイント(15、32)のディストリビュータ(16、33)およびシャフト(21、38)のうち、半径方向内側に位置する部材が有する軸部(22、34)を中実で形成し、前記ケーブル(27、43)は、その全てが前記中空円筒部(17、39)の外周面の外側に配線されているから、ロータリジョイントの軸芯部に貫通孔を形成して前記ケーブルを配線する場合と比較して、ロータリジョイント(15、32)の軸部(22、34)の径を大幅に小さくでき、請求項1の発明の効果を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の対象となる回転割出し装置には、以下で説明する実施例の回転割出しテーブルのほか、例えば、5軸加工機のスピンドルヘッドにおいてスピンドルユニットをA軸回りに旋回駆動する部分(A軸駆動部)や、このA軸駆動部を工作機械のZ軸と平行な軸線(C軸)回りに回転駆動する部分(C軸駆動部)も含まれる。すなわち、回転割出し装置とは、ワークや工具等を支持する回転駆動対象を回転駆動し、回転駆動対象を所定の回転位置(角度位置)へもたらす(割り出す)装置を広く含む概念である。以下、本発明を回転割出しテーブルに適用した例を示す。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明が適用される回転割出し装置の一例としての回転割出しテーブル1を示している。回転割出しテーブル1は、概説すると、回転体としての円テーブル3を支持する回転軸6が、ベースとなるフレーム2に回転自在に取り付けられた装置であり、回転テーブル装置、インデックステーブル、ロータリーテーブルなどとも呼ばれるものである。
【0016】
回転割出しテーブル1についてより詳しく説明する。円テーブル3は、フレーム2内で回転自在に設けられた回転軸6の一方の端部に固定されており、フレーム2に固定された軸受8によってフレーム2に対し回転可能に支持されている。回転軸6は、回転軸6の外殻を構成する回転スリーブ7と、回転スリーブ7にねじにより固定され回転スリーブ7と共に軸受8の内輪を挟み込むベアリング押さえ9と、後述のロータリジョイント15のシャフト21とから構成されている。円テーブル3は、ベアリング押さえ9にねじにより固定されており、これにより円テーブル3は回転軸6と一体に回転する。なお、本例では、回転体としての円テーブル3は、回転軸6と別体に形成されているが、回転体は、回転軸6と一体的に形成された部分であっても良い。
【0017】
また、円テーブル3には配線等に用いられる貫通孔4が形成されており、その貫通孔4の内周面は、その一部(後述のロータリジョイント15側)が半径方向内側に突出して段部5が形成されている。段部5は、回転軸6の軸線方向のロータリジョイント15側にも突出しており、ベアリング押さえ9に対しいわゆるインロー式で嵌め込まれている。さらに、円テーブル3は、その外周面がフレーム2に固定されたクランプスリーブ48の内周面に嵌め込まれている。この、クランプスリーブ48は、油圧により径が収縮し、円テーブル3を回転不能にクランプするものである。
【0018】
一方、円テーブル3上には、回転駆動対象10として、例えば治具装置(ワークを保持する装置)が搭載されている。なお、回転駆動対象10としては治具装置のほか、回転割出しテーブル1の使用の態様により様々なものが考えられる。例えば、回転割出しテーブル1の円テーブル3上に更に別の回転割出しテーブルが搭載される場合があり、この場合は、円テーブル3上の別の回転割出しテーブルが回転駆動対象10となる。
【0019】
また、回転割出しテーブル1は、回転軸6の駆動手段として、ギヤ等の駆動伝達機構を介さずに回転軸6を直接的に駆動するDDモータ11(ダイレクト(直接駆動型)駆動モータ)を内蔵している。DDモータ11は、モータロータ12と、モータステータ13とを有しており、モータロータ12は回転軸6の回転スリーブ7に固定され、モータステータ13はフレーム2に固定されたステータスリーブ14に回転不能に嵌め込まれている。なお、本例では、回転軸6の駆動手段としてDDモータを採用しているが、DDモータに代えて、例えば回転軸6に固定されたウォームホイールを、駆動モータに連結したウォームにより駆動するウォームギヤ機構を採用しても良い。
【0020】
次に、回転割出しテーブル1に内蔵されているロータリジョイント15について説明する。ロータリジョイント15は、概説すると、回転する回転駆動対象10に対し、回転割出しテーブル1の本体側から加工用の流体を供給するためのものであり、回転しない側の部材すなわちフレーム2に固定されるディストリビュータ16と、回転側の部材すなわち円テーブル3および回転軸6とともに回転するシャフト21とからなる。ここにいう、加工用の流体としては、例えば、回転駆動対象10が前述の治具装置である場合には、ワークをクランプするクランプ装置用の作動流体である。また、回転割出し装置が前述のスピンドルヘッドの場合には、スピンドルユニットへ供給される冷却用のクーラント液や水、加工時に発生する切り粉等を除去するためのエア等が挙げられる。
【0021】
ロータリジョイント15について詳述すると、ロータリジョイント15は、回転軸6の軸線に関し同心的に設けられており、フレーム2に対し相対回転不能に設けられ、装置外部から加工用の流体の供給を受けるディストリビュータ16と、ディストリビュータ16に対し相対回転可能に嵌装され、ディストリビュータ16から加工用の流体の供給を受けるシャフト21とからなる。なお、一般に、ディストリビュータとシャフトとの半径方向の位置関係は、ディストリビュータの内側にシャフトを通す場合と、ディストリビュータの外側にシャフトを嵌める場合の2通りが考えられるが、ここでは、ディストリビュータの内側にシャフトを通す場合を説明し、後述の実施例2(図3)においてディストリビュータの外側にシャフトを嵌める場合を説明する。
【0022】
ディストリビュータ16は、シャフト21の軸部22(後述)に嵌装される中空円筒部17と、フレーム2に固定され、中空円筒部17と一体的に形成されたフランジ部18とを有している。中空円筒部17およびフランジ部18の内部には、回転割出しテーブル1の装置外部から加工用流体の供給を受ける流体流路19が円周方向に位置をずらして複数形成されており、流体流路19は、中空円筒部17の内周面に形成された複数の環状溝20に通じている。
【0023】
一方、シャフト21は、円テーブル3の回転中心に軸心を一致させて配置され、ディストリビュータ16の中空円筒部17と嵌まり合う軸部22と、円テーブル3およびベアリング押さえ9に固定されるフランジ部23とを有している。軸部22の外周面には、ディストリビュータ16の中空円筒部17の環状溝20に対応する位置で、複数の環状溝24が形成されており、複数の環状溝24はそれぞれ軸部22およびフランジ部23の内部に円周方向に位置をずらして複数形成された流体流路25に通じている。なお、前述のとおり、シャフト21は、フランジ部23によって円テーブル3および回転軸6の一部である回転スリーブ7に固定され、円テーブル3および回転スリーブ7と一体的に回転する。したがって、シャフト21は、ロータリジョイント15の一部であると同時に、回転軸6の一部にも相当する。
【0024】
以上のような構成のロータリジョイント15により、回転軸6すなわちシャフト21が回転しても、ディストリビュータ16側の流体流路19と、シャフト21側の流体流路25とが繋がった状態が維持され、装置外部から供給される加工用流体は、流体流路19、流体流路25および円テーブル3内部に形成された流体流路26を通じて回転駆動対象10に供給される。
【0025】
一方、回転駆動対象10からは、回転駆動対象10に対し電力を供給する電力供給用の複数本のケーブル27が引き出されている。このケーブル27の具体例としては、回転駆動対象10が電気的な駆動部を有する場合、例えば、前述した回転割出しテーブル1の円テーブル3上に更に別の回転割出しテーブルが搭載される場合には、別の回転割出しテーブルの駆動モータ等に電力を供給するための電力供給ケーブル(動力ケーブル)である。その他にも、回転駆動対象10に備えられたセンサ(回転検出器等)に繋がれた信号線等も含まれる。
【0026】
回転駆動対象10から引き出されたケーブル27は、円テーブル3側から貫通孔4内を通過して回転割出しテーブル1内に引き込まれ、回転割出しテーブル1内部の各部材に形成された切欠部28、29、30を通すように配線され、回転軸6の軸線方向へ挿通されて回転割出しテーブル1内部を貫通し、ディストリビュータ16のフランジ部18の軸線方向に関する反円テーブル3側端面に設けられたケーブルガイド31により保持され、さらにその先で工作機械側の図示しない電源回路へ向けて配線される。なお、回転駆動対象10、円テーブル3および回転軸6の回転に伴って、ケーブル27はフレーム2内で捩れることとなるが、ワークの加工のあたって円テーブル3を同一方向に1回転以上回転させることは少ないため、ケーブル27をフレーム2内である程度の余裕ある長さで配線すれば、ケーブル27の捩れは特に問題とならない。
【0027】
切欠部28、29、30は、それぞれ円テーブル3の段部5、シャフト21のフランジ部23、ディストリビュータ16のフランジ部18に形成されている。これら切欠部28、29、30は、上記部材の円周方向の所定の範囲(円テーブル3の回転に伴うケーブル27の運動を許容できる程度の範囲)に亘る扇形に形成されている(図2)。
【0028】
このように、円テーブル3の段部5、シャフト21のフランジ部23、ディストリビュータ16のフランジ部18にケーブル27を通す切欠部28、29、30を形成したことにより、ロータリジョイント15(フランジ部18、フランジ部23を除く)の外側にケーブル27を通すことが可能となる。
【0029】
図2において、12本のケーブル27の全てが、ロータリジョイント15の本体外側すなわち本例ではディストリビュータ16の中空円筒部17の外周面外側に配線されている。これにより、ロータリジョイントの軸部に貫通孔を形成してケーブルを配線する場合と比較して、ロータリジョイントの径を小さくすることができる。その結果、ディストリビュータとシャフトとの間の摺動面の面積を小さくすることができ、摺動抵抗を小さくして動力損失を少なくすることができる。
【0030】
なお、本例では、本発明の効果を最大限に発揮させるために、シャフト21の軸部22を中実棒状に形成してロータリジョイントの径を極力小さくし、ロータリジョイント本体内部にケーブルを通さないで、複数本のケーブルの全てをロータリジョイント本体の外側に配線するものとしたが、シャフト21の軸部22に貫通孔を形成して、複数のケーブルのうちの1本又は数本を前記貫通孔内で配線する場合であっても、複数本のケーブルの全てを上記貫通孔内で配線する場合に比べ、貫通孔の径を小さくすることができる。その結果、ディストリビュータとシャフトとの間の摺動面の面積を小さくすることができ、摺動抵抗を小さくして動力損失を少なくすることができる。
【実施例2】
【0031】
図3は、ロータリジョイントのディストリビュータとシャフトとの半径方向の位置関係が実施例1とは逆の例を示している。すなわち、本例において、ロータリジョイント32は、ディストリビュータ33の外側にシャフト38が嵌め込まれている構成である。
【0032】
ロータリジョイント32は、回転軸6の軸線に関し同心的に設けられており、フレーム2に対し相対回転不能に設けられて装置外部から加工用の流体の供給を受けるディストリビュータ33と、ディストリビュータ33に対し相対回転可能に嵌装されてディストリビュータ33から加工用の流体の供給を受けるシャフト38とからなる。
【0033】
ディストリビュータ33は、シャフト38の中空円筒部39(後述)に嵌装される軸部34と、軸部34と一体的に形成されて回転止め44によってフレーム2に対し相対回転不能に設けられたフランジ部35とを有している。軸部34およびフランジ部35の内部には、割出し円テーブル1の装置外部から加工用流体の供給を受ける流体流路36が円周方向に位置をずらして複数形成されており、各流体流路36は、軸部34の外周面に形成された複数の環状溝37に通じている。
【0034】
一方、シャフト38は、円テーブル3の回転中心に軸心を一致させて配置され、ディストリビュータ33の軸部34と嵌まり合う中空円筒部39と、中空円筒部39と一体的に形成されて円テーブル3およびベアリング押さえ9に固定されるフランジ部40とを有している。中空円筒部39の内周面には、ディストリビュータ33の軸部34の環状溝37に対応する位置で、複数の環状溝41が形成されており、複数の環状溝41はそれぞれ中空円筒部39およびフランジ部40の内部に円周方向に位置をずらして複数形成された流体流路42に通じている。
【0035】
実施例1と同様に、回転駆動対象10からは、回転駆動対象10に対し電力を供給する電力供給用の複数本のケーブル43が引き出されている。ケーブル43は、円テーブル3側から貫通孔4内を通過して回転割出しテーブル1内に引き込まれ、テーブル3の段部5およびシャフト38のフランジ部40に形成された切欠部45、46を通すように配線され、回転軸6の軸線方向へ挿通されて回転割出しテーブル1内部を貫通し、ロータリジョイント32を囲繞する回転スリーブ7(円テーブル3に固定)の内周面の反円テーブル側端部で半径方向内側へ突出させて形成したケーブルガイド47により保持され、さらにその先で工作機械の図示しない電源回路へ向けて配線される。ケーブルガイド47が形成された回転スリーブ7は、回転軸6(シャフト38)及び円テーブル3と一体に回転し、回転スリーブ7にケーブルガイド47により保持されたケーブル43もフレーム2内で回転軸6等と共に回転するから、フレーム2内でケーブル43が捩れることはない。したがって、本例では、切欠部45、46の形成にあたりケーブル43の運動を考慮する必要はない(ケーブル43を通せるだけの空間があれば足りる)。
【0036】
図4は、本発明が適用可能なスピンドルヘッドの概要図である。スピンドルヘッドとは、5軸加工機等の工作機械に用いられ、工具が装着されるスピンドルを回転駆動するスピンドルユニットを支持して旋回駆動する装置のことをいう。ここに示すスピンドルヘッドは、5軸加工機に搭載された場合において、スピンドルヘッド全体が工作機械のXYZ方向に移動するのに加え、スピンドルヘッドに支持されたスピンドルユニットがXY平面と平行な軸(A軸)回りおよびZ軸と平行な軸(C軸)回りに回転運動する。C軸駆動部によって回転駆動されるA軸駆動部およびスピンドルユニットには、駆動モータ、流体圧クランプ等が内蔵されており、C軸駆動部およびA軸駆動部には、駆動モータ等に電力を供給するケーブルが挿通されると共に、加工用の流体を供給するためのロータリジョイントが内蔵されている。
【0037】
いま、A軸駆動部に着目すれば、本発明に言う回転体は、スピンドルユニットを支持する支持軸(回転軸)に設けられ、スピンドルユニットが取り付けられるジョイント部分であり、回転駆動対象は、スピンドルユニットである。また、C軸駆動部に着目すれば、本発明に言う回転体は、A軸駆動部が取り付けられるジョイント部分であり、回転駆動対象は、A軸駆動部となる。
【0038】
このように、本発明は実施例1、2の回転割出しテーブルに限らず、図4に示すスピンドルユニットを旋回駆動するためのスピンドルヘッドにも適用可能である。なお、このスピンドルヘッドとしては、図4に示すフォーク形(スピンドルユニットを両側で支持)のものに限らず、特開平3-178709号に記載の様なスピンドルユニットを片持ち支持するものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、回転対象を回転駆動し、かつ回転中の回転対象に対し流体、電力を供給するロータリジョイントを備えた装置に広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】回転割出しテーブル1の断面図である。
【図2】回転割出しテーブル1の平面図である。
【図3】回転割出しテーブル1の断面図である。
【図4】5軸加工機のスピンドルヘッドの概要図である。
【符号の説明】
【0041】
1 工作機械用の回転割出し装置としての回転割出しテーブル
2 フレーム
3 回転体としての円テーブル
4 貫通孔
5 段部
6 回転軸
7 回転スリーブ
8 軸受
9 ベアリング押さえ
10 回転駆動対象
11 DDモータ
12 モータロータ
13 モータステータ
14 ステータスリーブ
15 ロータリジョイント
16 ディストリビュータ
17 中空円筒部
18 フランジ部
19 流体流路
20 環状溝
21 シャフト
22 軸部
23 フランジ部
24 環状溝
25 流体流路
26 流体流路
27 ケーブル
28 切欠部
29 切欠部
30 切欠部
31 ケーブルガイド
32 ロータリジョイント
33 ディストリビュータ
34 軸部
35 フランジ部
36 流体流路
37 環状溝
38 シャフト
39 中空円筒部
40 フランジ部
41 環状溝
42 流体流路
43 ケーブル
44 回転止め
45 切欠部
46 切欠き部
47 ケーブルガイド
48 クランプスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(2)内で回転自在に設けられると共に端部に設けられた回転体(3)を介して回転駆動対象(10)を支持する回転軸(6)と、前記回転軸(6)の軸線に関し前記回転軸(6)と同心的に設けられたロータリジョイント(15、32)であって前記回転駆動対象(10)に対し加工用の流体を供給するためのロータリジョイント(15、32)とを含み、前記回転駆動対象(10)から引き出された複数本のケーブル(27、43)が前記回転軸(6)の軸線方向へ挿通された状態で配線されている工作機械用の回転割出し装置(1)において、
前記ロータリジョイント(15、32)は、前記フレーム(2)に対し相対回転不能に設けられたディストリビュータ(16、33)と前記ディストリビュータ(16、33)に対し相対回転可能に嵌装されたシャフト(21、38)とからなり、前記ディストリビュータ(16、33)及びシャフト(21、38)は、一方が前記回転体(3)の回転中心に軸心を一致させて配置された軸部(22、34)を有し、他方が前記軸部(22、34)に嵌装される中空円筒部(17、39)を有し、
前記ケーブル(27、43)のうちの少なくとも1本が、前記ロータリジョイント(15、32)のディストリビュータ(16、33)及びシャフト(21、38)の前記他方における中空円筒部(17、39)の外周面の外側で配線されていることを特徴とする工作機械用の回転割出し装置(1)。
【請求項2】
前記ディストリビュータ(16、33)およびシャフト(21、38)の一方の前記軸部(22、34)が中実で形成されており、前記ケーブル(27、43)は、その全てが前記中空円筒部(17、39)の外周面の外側で配線されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械用の回転割出し装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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