説明

工作機械用制御装置

【課題】工作機械を試験する前に作業者に加工プログラムの実行順を入力させる作業負担を回避して簡便に加工プログラムのデバッグを実現する工作機械用制御装置を提供すること。
【解決手段】系統番号1、2の小さい順に加工プログラムブロックS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の待ち合わせ指令da1−1、da1−2、da2−1、da2−2まで複数の加工プログラムS1、S2を直列に実行するとともに複数の加工プログラムS1、S2相互で加工プログラムブロックS1−1、S1−2、S2−1、S2−2を並列に実行しない工作機械用制御装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC自動旋盤装置などの工作機械に用いられる工作機械用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の動作を制御する制御装置として、各パスに対応する動作を試験する際に、制御系統相互でパートプログラムすなわち加工プログラムが並列に実行されないように加工プログラムを直列に実行することによって各制御対象の動作状態を試験することができるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−148109号公報(特許請求の範囲、図1乃至図3参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工作機械を試験する前に、作業者に加工プログラムの実行順を入力させる作業負担を生じさせてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、工作機械を試験する前に作業者に加工プログラムの実行順を入力させる作業負担を回避して簡便に加工プログラムのデバッグを実現する工作機械用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、工作機械の所定の駆動軸を制御する制御系統を複数備え、各制御系統各々に対応する加工プログラムからなる多系統プログラムの実行によって前記工作機械を作動させ、前記各加工プログラムが、所定の制御系統間で待ち合わせを行う待ち合わせ指令を備えた工作機械用制御装置において、前記各制御系統の加工プログラムの未実行のプログラムを、前記待ち合わせ指令まで、前記制御系統の系統番号に基づいて予め定められる制御系統の順で、再帰的に繰り返して実行し、前記各制御系統の加工プログラムを直列的に順次実行する連続実行手段を設けていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る工作機械用制御装置において、前記連続実行手段が、前記制御系統の系統番号が小さい順に制御系統の順序を設定していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る工作機械用制御装置は、連続実行手段が、各制御系統の加工プログラムの未実行のプログラムを、待ち合わせ指令まで、制御系統の系統番号に基づいて予め定められる制御系統の順で、再帰的に繰り返して実行し、加工プログラムの実行順を作業者が手動で入力することなく、各制御系統の加工プログラムを直列的に順次実行するため、例えば各制御系統によって同時実行される加工プログラムが、前記連続実行手段よって、自動的に直列的に順次実行され、作業者が加工プログラムの実行順を入力する作業負担を回避して簡単に工作機械の試験、すなわち、加工プログラムのデバッグを実行することができる。
【0009】
そして、本請求項2に係る工作機械用制御装置は、請求項1に係る工作機械用制御装置が奏する効果に加えて、連続実行手段が、制御系統の系統番号が小さい順に制御系統の順序を設定しているため、加工プログラムを順に実行して効率良くデバッグを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る工作機械用制御装置の構成を示したブロック図。
【図2】ワーク加工時における加工プログラムブロックの実行状態を概念的に示したタイミングチャート。
【図3】デバッグ時における加工プログラムブロックの実行状態の一例を概念的に示したタイミングチャート。
【図4】デバッグ時における加工プログラムブロックの実行状態を表示する表示部の一例を示した画像図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る工作機械用制御装置を説明する。
なお本発明の「加工プログラムブロック」は、加工プログラムを構成する行単位の指令を動作単位毎に一纏めにした集合を意味する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施例1に係る工作機械用制御装置100は、記憶部110と、制御部120と、ディスプレイ装置等の表示部130とを備えている。
工作機械用制御装置100は、2つの制御系統を備え、制御を行う工作機械Mの複数の駆動軸を、いずれかの制御系統に所属させ、各制御系統に割り当てられた所属軸を、制御系統毎に独立して制御する。
本工作機械用制御装置100は、系統番号1、2を付された状態で互いに区別され、前記記憶部110に記憶されている2つの制御系統の各々に対応する加工プログラムS1、S2からなる多系統プログラムに基づいて、前記制御部120によって、前記工作機械Mの2個の制御対象MA1、MA2のそれぞれを互いに独立して制御することにより、前記制御対象MA1、MA2を動作させてワークWを加工する。
【0013】
制御対象MA1は、ワークWを支持する正面主軸MA1−1と、正面主軸MA1−1を回転駆動自在に支持する正面主軸台MA1−2と、加工工具MA1−3とを備えている。
工作機械用制御装置100は、加工プログラムS1に基づいて制御対象MA1の動作を制御する。
より具体的には、前記工作機械MのX1軸及びZ1軸などの複数の所属軸を制御し、正面主軸MA1−1、正面主軸台MA1−2及び加工工具MA1−3を作動させてワークWの加工等を行う。
【0014】
制御対象MA2は、背面主軸MA2−1と、背面主軸MA2−1を回転駆動自在に支持する背面主軸台MA2−2と、加工工具MA2−3とを備えている。
工作機械用制御装置100は、加工プログラムS2に基づいて制御対象MA2の動作を制御する。
より具体的には、前記工作機械MのX2軸及びZ2軸などの複数の所属軸を制御し、背面主軸MA2−1、背面主軸台MA2−2及び加工工具MA2−3を作動させてワークWの加工等を行う。
【0015】
次に、図1乃至図4を参照しながら、工作機械用制御装置100による工作機械Mの制御方法を詳細に説明する。
図2に示すように、加工プログラムS1は、制御対象MA1を所定動作させる加工プログラムブロックS1−1と、加工プログラムブロックS1−2とが直列に記載され、加工プログラムS2は、制御対象MA2を所定動作させる加工プログラムブロックS2−1と、加工プログラムブロックS2−2とが直列に記載されて構成されている。
ただし加工プログラムブロックS1−2及び加工プログラムブロックS2−2が、加工プログラムブロックS1−1及び加工プログラムブロックS2−1の終了を待って実行されるように、加工プログラムブロックS1−1と、加工プログラムブロックS1−2との間に待ち合わせ指令da1−1が設けられ、加工プログラムブロックS2−1と、加工プログラムブロックS2−2との間に待ち合わせ指令da2−1が設けられている。
また加工プログラムブロックS1−2以降の図示しない加工プログラムブロックと、加工プログラムブロックS2−2以降の図示しない加工プログラムブロックとが、加工プログラムブロックS1−2及び加工プログラムブロックS2−2の終了を待って実行されるように、加工プログラムブロックS1−2と、加工プログラムブロックS2−2の後に、待ち合わせ指令da1−2と待ち合わせ指令da2−2が設けられている。
図2に示すように、工作機械用制御装置100は、工作機械Mの通常の動作時は、加工プログラムブロックS1−1、S2−1を相互に並行して実行して制御対象MA1、MA2を相互に並行して動作させ、待ち合わせ指令da1−1,da2−1によって、加工プログラムブロックS1−1、S2−1の実行完了を待って、加工プログラムブロックS1−2、S2−2を相互に並行して実行して制御対象MA1、MA2を相互に並行して動作させる。
以降、待ち合わせ指令毎に加工プログラムS1、S2の各加工プログラムブロックを、加工プログラムの完了を待ち合わせながら実行する。
これにより、制御対象MA1、MA2のそれぞれを互いに独立して並列に同時作動させて、効率良くワークWを加工することができる。
【0016】
一方工作機械用制御装置100は、制御部120に、各制御系統の加工プログラムS1,S2を直列的に順次実行する連続実行手段が備えられ、制御部120による連続実行手段の実行によって、工作機械Mの制御対象MA1、MA2を直列的に順次動作させることができるように構成されている。
前記連続実行手段によって、制御部120は、図3に示すように、系統番号の小さい制御系統1で未実行の加工プログラムブロックS1−1を待ち合わせ指令da1−1まで実行し、次に、系統番号の大きい制御系統2で未実行の加工プログラムブロックS2−1を待ち合わせ指令da2−1まで実行する。
その後再帰的に系統番号の小さい制御系統1に戻り、制御系統1の未実行の加工プログラムブロックS1−2を待ち合わせ指令da1−2まで実行し、次に、制御系統2で未実行の加工プログラムブロックS2−2を待ち合わせ指令da2−2まで実行する。
これにより、加工プログラムブロックS1−1、S1−2、S2−1、S2−2が待ち合わせ指令da1−1、da1−2、da2−1、da2−2まで順次直列に実行される。
本実施形態において、前記連続実行手段は、制御系統の系統番号が小さい順に実行される制御系統の順序を定めるように設定されている。
なお、前記連続実行手段は、前記制御部120が、ソフトウェア又はハードウェアに基づいて上記作動を実行することによって構成される。
【0017】
上記連続実行手段は、作業者等がスイッチの切り換え等によって任意に実行させることができ、例えば、前記多系統プログラムを試験的に実行する場合に、前記制御部120を連続実行手段として機能させて、工作機械Mを作動させることにより、制御対象MA1、MA2のそれぞれを相互に並行して動作させることなく、自動的に個別に順次実行させることができ、作業者は、デバッグ時に複数の制御対象系統MA1、MA2を並行して監視する監視負担を回避し、各制御対象MA1、MA2のそれぞれ毎に動作を確認し、各加工プログラムS1、S2を相互に独立して容易にデバッグすることができる。
前記制御部120を連続実行手段として機能させて工作機械Mを作動させる場合、各加工プログラムブロックの実行順序は、制御系統の実行順序と待ち合わせ指令によって自動的に定まるため、各加工プログラムブロックの実行順序を手動等によって入力する必要はなく、各加工プログラムブロックを容易に直列的に順に実行することができる。
【0018】
次に、図4を参照しながら、前記連続実行手段による制御処理の際に本工作機械用制御装置100の表示部130に表示される画像を説明する。
図4(a)、(b)は、前記連続実行手段による制御処理の際の経過時間に沿って順次表示部130に表示される加工プログラムS1、S2を示している。
【0019】
図4(a),(b)に示すように、実行中のプログラム行DL1−1−1,DL2−1−1が、例えば、文字及び背景を相互に白黒に反転させた状態で表示される。
この際、次に実行されるプログラム行DL1−1−2,DL1−2−1が、例えば、図中点線で示すように点滅状態で表示される。
すなわち、連続実行手段による制御処理によって、実行中のプログラム行とその次に実行されるプログラム行とが、作業者に相互に区別させるように表示部130に表示される。
【0020】
したがって、加工プログラムS1、S2の実行状況を作業者に目視で容易に確認させることができる。
特に、図4(b)に示されるように、プログラム行DL2−1−1が実行中の場合、次に実行されるプログラム行DL1−2−1が、実行中のプログラム行DL2−1−1の加工プログラムブロックS2−1と異なる加工プログラムブロックS1−2となるため、上記表示によって、次に実行されるプログラムブロック行DL1−2−1を容易に判断することができる。
【符号の説明】
【0021】
100 ・・・ 工作機械用制御装置
110 ・・・ 記憶部
120 ・・・ 制御部
130 ・・・ 表示部
DL1−1−1、DL1−1−2、DL1−2−1、DL2−1−1 ・・・ プログラム行
da1−1、da1−2、da2−1、da2−2 ・・・ 待ち合わせ指令
M ・・・ 工作機械
MA1、MA2 ・・・ 制御対象系統
MA1−1 ・・・ 正面主軸
MA1−2 ・・・ 正面主軸台
MA1−3、MA2−3 ・・・ 加工工具
MA2−1 ・・・ 背面主軸
MA2−2 ・・・ 背面主軸台
S1、S2 ・・・ 加工プログラム
S1−1、S1−1、S2−1、S2−2 ・・・ 加工プログラムブロック
W ・・・ ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の所定の駆動軸を制御する制御系統を複数備え、
各制御系統各々に対応する加工プログラムからなる多系統プログラムの実行によって前記工作機械を作動させ、
前記各加工プログラムが、所定の制御系統間で待ち合わせを行う待ち合わせ指令を備えた工作機械用制御装置において、
前記各制御系統の加工プログラムの未実行のプログラムを、前記待ち合わせ指令まで、制御系統の系統番号に基づいて予め定められる制御系統の順で、再帰的に繰り返して実行し、各制御系統の加工プログラムを直列的に順次実行する連続実行手段を設けた工作機械用制御装置。
【請求項2】
前記連続実行手段が、前記制御系統の系統番号が小さい順に制御系統の順序を設定した請求項1の工作機械用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−208845(P2012−208845A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75331(P2011−75331)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000137856)シチズンマシナリーミヤノ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】