説明

工業化住宅

【課題】タイル材の無駄を無くして製造コストを低減しつつ、意匠性を向上しうる。
【解決手段】外壁パネル2の表面に、略矩形状のタイル材3が複数枚貼り付けられた外壁8を有する工業化住宅1である。外壁パネル2の縦寸法L1及び横寸法L2は、タイル材の割付寸法W1の縦寸法M1及び横寸法M2の整数倍の大きさに形成される。割付寸法W1は、タイル材3、3間に目地14が形成される場合、一つのタイル材3及びそのタイル材3の周囲に配される目地14の半幅を含む外径寸法とする。また、タイル材3、3間に目地14が形成されない場合、タイル材3のみの外径寸法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造コストを低減しつつ、意匠性を向上しうる工業化住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、外壁パネルの表面に、矩形状のタイル材が複数貼り付けられた外壁を有する工業化住宅が提案されている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、タイル材は、外壁パネルの寸法を考慮して形成されないため、割付けには微調整が必要となる。
【0003】
割付けを微調整する方法としては、例えば、図7(a)に示されるように、規定のタイル材aを現場にてカットすることにより、水平方向の長さeを短くしたカットタイル材b(ハッチングを付して示される)を特定の列に割付ける方法や、図7(b)に示されるように、外壁パネルcの任意の位置に垂直方向にのびる通し目地dを設け、その目地幅fを変化させる方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−9274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7(a)に示される方法では、タイル材aを現場にて種々のサイズにカットするのに手間がかかるとともに、カットされた残りの部分のタイル材aを廃棄する必要があり、コストが増大するという問題があった。また、図7(b)に示される方法では、通し目地dの目地幅fが他の目地gと異なるため、タイル模様の連続性が損なわれ、意匠性を損なうという問題があった。特に、図7(b)のようなタイル材aが馬踏目地状に配される場合には、通し目地dが設けられることによって、タイル模様の連続性がさらに損なわれるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、外壁をなす外壁パネルの縦寸法及び横寸法を、タイル材の割付寸法の縦寸法及び横寸法の整数倍にすることを基本として、タイル材の無駄を無くして製造コストを低減しつつ、意匠性を向上しうる工業化住宅を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、外壁パネルの表面に、略矩形状の複数のタイル材が貼り付けられた外壁を有する工業化住宅であって、前記外壁パネルの縦寸法及び横寸法が、前記タイル材の割付寸法の縦寸法及び横寸法の整数倍であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明のように、前記外壁パネルは、屋内外を貫通する開口部を有し、かつ前記開口部は、前記タイル材の前記割付寸法で仮想区画されたグリッドラインに沿って開口することにより、前記開口部から外壁パネルの外縁までの周囲寸法が、前記割付寸法の前記縦寸法又は前記横寸法の整数倍であるのが望ましい。
【0009】
また、請求項3記載の発明のように、前記タイル材は、前記割付寸法の第1のタイル材1種からなるのが望ましい。
【0010】
また、請求項4記載の発明のように、前記タイル材は、前記割付寸法の第1のタイル材と、該第1のタイル材とは異なるとともに、前記外壁パネルに適合する割付寸法を有する第2のタイル材とからなるのが望ましい。
【0011】
また、請求項5記載の発明のように、前記外壁パネル間を継ぐ出隅コーナ材又は入隅コーナ材は、前記割付寸法の前記縦寸法及び前記横寸法の整数倍であるのが望ましい。
【0012】
また、請求項6記載の発明のように、前記外壁パネルは、表面に予め前記タイル材の割付位置を示す模様が付されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の工業化住宅では、外壁パネルの縦寸法及び横寸法が、タイル材の割付寸法の縦寸法及び横寸法の整数倍とされる。これにより、外壁パネルにタイル材を貼り付ける際、タイル材をカットしたり、通し目地の目地幅を変える等の微調整をする必要が無く、タイル材を容易に隙間なく割付けることが可能になる。従って、製造コストを低減しうる。しかも、外壁パネルは、タイル材を同一目地間隔で無駄なく割付けできるとともに、タイル模様にズレがなく、連続性を得ることができるので、意匠性を向上しうる。また、タイル材の発注個数なども事前に計算できるので、費用の見積もりを容易にでき、無駄な発注を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の工業化住宅の一形態を例示する部分正面図である。
【図2】図1の外壁パネル及び出隅コーナ材を示す分解斜視図である。
【図3】タイル材を拡大して示す正面図である。
【図4】2種類のタイル材が貼り付けられた外壁パネルを拡大して示す正面図である。
【図5】本発明の工業化住宅の他の実施形態を例示する部分正面図である。
【図6】図5の外壁パネル及び出隅コーナ材を示す分解斜視図である。
【図7】(a)はカットされたタイル材が割付けられた外壁パネルを拡大して示す正面図、(b)は垂直方向にのびる通し目地が設けられた外壁パネルを拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の工業化住宅の部分正面図、図2には、その外壁パネル、及び出隅コーナ材を示す分解斜視図が示される。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態の工業化住宅1は、外壁8をなす外壁パネル2、外壁パネル2、2間を継ぐ出隅コーナ材4、屋根材5、及び床パネル(図示省略)等の規格化された基本部材が予め工場で生産され、それらの基本部材を、現場にて組み立てることによって形成される。
【0017】
本実施形態の外壁パネル2の表面には、横長矩形状の複数のタイル材3が貼り付けられる。図2に示されるように、前記外壁パネル2は、例えば、溝型鋼などの枠材が矩形に枠組みされた枠体13に縦又は横の補強枠(図示省略)を加えたパネルフレーム11と、該パネルフレーム11の両面に添着され、かつ外縁部が枠体13の外周部に揃えられた面材12とを含んで形成される。
【0018】
前記面材12には、屋外側に配される外装板12Aと、屋内側に配される内装板12Bとを含む、前記外装板12Aには、例えば、窯業系、金属系その他のサイディング板などが用いられる。また、内装板12Bには、例えば、石膏ボード及び/又は合板等が用いられる。
【0019】
また、本実施形態のタイル材3は、陶磁器から形成され、外装板12Aの表面に例えば変性シリコン系等の接着剤(図示省略)を介して、通し目地状に貼り付けられる。
【0020】
前記外壁パネル2の縦寸法L1が、建物の階高と略同じ寸法に形成され、例えば、2500〜3500mm程度、本形態では2900mmに設定されている。また、外壁パネル2の横寸法L2は、例えば1モジュールを900mmとすると、その整数倍の寸法、例えば1800mm、2700mm、又は3600mm…などの大きさに形成される。本実施形態の横寸法L2は、3600mmに形成される。
【0021】
また、図2及び図3に示されるように、本実施形態の外壁パネル2の縦寸法L1及び横寸法L2は、タイル材3の割付寸法W1の縦寸法M1及び横寸法M2のそれぞれ整数倍に設定される。前記「割付寸法W1」は、図3に示されるように、タイル材3、3の間に目地14が形成される場合、一つのタイル材3及びそのタイル材3の周囲に配される目地14の半幅を含む外径寸法とする。また、タイル材3、3の間に目地14が形成されない場合、タイル材3のみの外径寸法とする。
【0022】
前記外壁パネル2の縦寸法L1は、割付寸法W1の縦寸法M1の整数倍とされ、例えば、10倍、20倍、又は30倍…などの大きさに設定され、本実施形態では54倍に形成される。また、本実施形態の壁パネルの横寸法L2は、割付寸法W1の横寸法M2の整数倍とされ、本実施形態では24倍に形成される。なお、外壁パネル2の縦横比は、割付寸法W1と異なってもよいことは言うまでもない。
【0023】
このように、本実施形態の工業化住宅1では、従来のように、タイル材3を現場にて中途半端にカットしたり、目地14の幅を変える等の微調整をすることなく、該タイル材3を外壁パネル2に、隙間なく容易に割付ける事ができるので、無駄を無くし製造コストを低減しうる。しかも、外壁パネル2は、タイル材3が同一目地間隔で隙間なく割付けられるとともに、そのタイル模様にズレがなく、連続性を得ることができるので、意匠性を向上しうる。さらに、タイル材3の発注個数なども事前に計算できるので、費用の見積もりを容易にでき、無駄な発注を防ぐことができる。
【0024】
なお、本実施形態のタイル材3は、割付寸法W1の第1のタイル材3Aの1種から構成されるので、タイル材3の種類が増えることによる割付作業の煩雑化や、製造コストの増大を抑制できる。
【0025】
また、図2に示されるように、本実施形態の外壁パネル2には、屋内外を貫通する開口部15が形成されている。この開口部15は、タイル材3の割付寸法W1で仮想区画されたグリッドラインGL1に沿って開口されるのが好ましい。これにより、開口部15から外壁パネル2の外縁までの周囲寸法が、割付寸法W1の縦寸法M1又は横寸法M2の整数倍に設定される。
【0026】
前記周囲寸法は、図において、開口部15の上縁15uから外壁パネル2の上縁2uまでの上側寸法L3、開口部15の下縁15dから外壁パネル2の下縁2dまでの下側寸法L4、開口部15の右縁15rから外壁パネル2の右縁2rまでの右側寸法L5、開口部15の左縁15lから外壁パネル2の左縁2lまでの左側寸法L6とする。上側及び下側寸法L3、L4は、夫々割付寸法W1の縦寸法M1の整数倍に設定される。また、右側及び左側寸法L5、L6は、夫々割付寸法W1の横寸法M2の整数倍に設定される。これにより、外壁パネル2に開口部15を設けた場合であっても、タイル材3の割付けを容易にできるとともに、タイル模様の連続性を得ることができる。
【0027】
図4に示されるように、外壁パネル2の表面には、予めタイル材3の割付位置を示す、例えばタイル材3の割付寸法W1のコーナ位置を示す「+」等の模様16が付されるのが好ましい。これにより、作業者は、現場にて前記模様16を基準として、タイル材3を精度良く位置決めして貼り付けることができる。従って、仕上がりを高め、かつ施工効率を向上しうる。
【0028】
また、1枚の外壁パネル2には、第1のタイル材3Aと、該第1のタイル材3Aとは異なる大きさの第2のタイル材3Bとを混合して割付けることもできる。本実施形態では、第2のタイル材3Bは、例えば、開口部15の周囲に貼り付けられている。本実施形態の第2のタイル材3Bは、割付寸法W1の半分の大きさの第2の割付寸法W2を有して形成される。具体的には、第2の割付寸法W2の横寸法が、割付寸法W1の横寸法M2の1/2である。このような第2のタイル材3Bも、外壁パネル2に隙間なく割付けることができるので、第1のタイル材3Aとともに、外壁パネル2に適合できる。このように、外壁パネル2には、第1、第2のタイル材3A、3Bからなる異種のタイル材3を混合して割付けできるので、バリエーションに富んだタイル模様を容易に形成できる。また、第2のタイル材3Bは、例えば、馬踏目地状に割付けた場合、外壁パネル2の端部等に好適に利用できる。なお、第2のタイル材3Bは、予め工場等でカットされていれば、現場にてカットする必要がないため、施工効率を向上しうる点で好ましい。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態の出隅コーナ材4、または入隅コーナ材(図示省略)の縦寸法L7及び横寸法L8は、割付寸法W1の縦寸法M1及び横寸法M2の整数倍であるのが好ましい。これにより、タイル材3を現場にて中途半端にカットしたり、目地14の幅を変える等の微調整をすることなく、該タイル材3を出隅コーナ材4及び入隅コーナ材に、隙間なく容易に割付けることができるとともに、タイル模様を連続させることができる。
【0030】
図5には、本発明の工業化住宅1の他の実施形態を例示する部分正面図、図6には、その外壁パネル2の斜視図が示される。この実施形態の外壁パネル2には、第1、第2のタイル材3A、3Bが、馬踏目地状に貼り付けられている。この実施形態の開口部15は、第2の割付寸法W2の第2のグリッドラインGL2に沿って開口することにより、第1、第2のタイル材3A、3Bを容易に割付けできる。なお、この例では、外壁パネル2、出隅コーナ材4、4に、第1、第2のタイル材3A、3Bを連続させて割付けているので、馬踏目地状のタイル模様を連続させることができる。
【0031】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0032】
1 工業化住宅
2 外壁パネル
3 タイル材
8 外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルの表面に、略矩形状の複数のタイル材が貼り付けられた外壁を有する工業化住宅であって、
前記外壁パネルの縦寸法及び横寸法が、前記タイル材の割付寸法の縦寸法及び横寸法の整数倍であることを特徴とする工業化住宅。
【請求項2】
前記外壁パネルは、屋内外を貫通する開口部を有し、かつ
前記開口部は、前記タイル材の前記割付寸法で仮想区画されたグリッドラインに沿って開口することにより、前記開口部から外壁パネルの外縁までの周囲寸法が、前記割付寸法の前記縦寸法又は前記横寸法の整数倍である請求項1に記載の工業化住宅。
【請求項3】
前記タイル材は、前記割付寸法の第1のタイル材1種からなる請求項1又は2に記載の工業化住宅。
【請求項4】
前記タイル材は、前記割付寸法の第1のタイル材と、該第1のタイル材とは異なるとともに、前記外壁パネルに適合する割付寸法を有する第2のタイル材とからなる請求項1又は2に記載の工業化住宅。
【請求項5】
前記外壁パネル間を継ぐ出隅コーナ材又は入隅コーナ材には、前記割付寸法の前記縦寸法及び前記横寸法の整数倍で前記タイル材が貼り付けられる請求項1ないし4の何れかに記載の工業化住宅。
【請求項6】
前記外壁パネルは、表面に予め前記タイル材の割付位置を示す模様が付される請求項1ないし5の何れかに記載の工業化住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−203193(P2010−203193A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52540(P2009−52540)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】