説明

工程離型材

【課題】合成皮革等の製造に利用できる両面にエンボスパターンを備える工程離型材を提供するものである。
【解決手段】工程離型材は、少なくとも表裏両面がポリオレフィン樹脂層からなり、その表裏両面にエンボスパターンが設けられていることを特徴とするものである。この工程離型材は、表裏両面にエンボスパターンが設けられているので、その表裏両面を利用してウレタンペースト等のキャスティングを行い合成皮革等の製造を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成皮革の製造に用いる工程離型材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形付け用の離型材は紙の上に、ポリプロピレン等からなる離型層が設けられ、合成皮革等の製造工程において、ウレタンペーストや塩化ビニルゾル等をキャスティングする離型材として使用されている。この合成皮革に製造用に用いられる離型材の役割は、ウレタンペースト等の樹脂溶液が乾燥するまでの保持、および乾燥した樹脂被膜の表面形状が転写されるため、型付けの役目を兼ねる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−269931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の離型材は紙の表面に離型層に設けたものであり、離型層に熱エンボスを施すときに熱エンボスに相応して紙も変形する。そのため紙のもう一方の面側にも離型層を設けて離型材の両面を利用するようにすることはできない。
本発明の課題は、合成皮革等の製造に利用できる両面にエンボスパターンを備える工程離型材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、少なくとも表裏両面がポリオレフィン樹脂層からなり、その表裏両面にエンボスパターンが設けられている工程離型材を要旨とする。
【0005】
本発明において、工程離型材の厚さは100μ〜250μあることが望ましい。100μより薄いと、一方のポリオレフィン樹脂層面に熱エンボスを施すとき、そのエンボスの影響が他方のポリオレフィン樹脂層面に及ぼされ平坦性が損なわれるので好ましくない。一方250μを越える厚さにすることは不必要なことであり、経済的に好ましくない。
【0006】
また、本発明において、工程離型材はポリオレフィン樹脂単層で構成することができる。また工程基材は、ポリエステル樹脂層の両面にポリオレフィン樹脂をラミネートしてなるポリオレフィン樹脂層/ポリエステル樹脂層/ポリオレフィン樹脂層の層構成の積層材で構成することができる。
【0007】
本発明において、エンボス加工前の工程離型材を一対のエンボスロール間に通すことにより表裏のポリオレフィン樹脂層表面に同時にエンボスを入れることができるので効率よく経済的に工程離型材を製造することができる。
【0008】
上記のように本発明の工程離型材は、紙を用いずにポリオレフィン樹脂単層またはポリオレフィン樹脂層/ポリエステル樹脂層/ポリオレフィン樹脂層の層構成の積層材からなるので表裏にエンボスパターンを備えることができる。
【0009】
本発明の工程離型材を用い、その表裏両面を利用してウレタンペースト等のキャスティングを行い合成皮革等の製造を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の工程離型材は、少なくとも表裏両面がポリオレフィン樹脂層からなり、その表裏両面にエンボスパターンが設けられているもので、その表裏両面を利用してウレタンペースト等のキャスティングを行い合成皮革等の製造を行うことができるという利点を有する。その場合一方のポリオレフィン樹脂層面を利用して合成皮革の製造を行った後もう一方のポリオレフィン樹脂層面を利用して別の合成皮革の製造を行うといったように両ポリオレフィン樹脂層面を交互に利用することができる。本発明の工程離型紙は、エンボス加工前の工程離型材を一対のエンボスロール間に通すことにより表裏のポリオレフィン樹脂層表面に同時にエンボスを入れて製造でき、効率よく経済的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2は本発明の工程離型材を示す。
【0012】
図1、図2に示すように、本発明の工程離型材3は、少なくとも表裏両面1a、1bがポリプロピレン、4−メチルペンテン−1ポリマー等のポリオレフィン樹脂層1の表面からなり、その表裏両面1a、1bにエンボスパターン2a、2bが設けられているものである。図1は本発明の第1の実施の形態を示し、この工程離型材はポリオレフィン樹脂1の単層で構成されている。図2は本発明の第2の実施の形態を示し、この工程離型材はポリオレフィン樹脂層1/ポリエステル樹脂層4/ポリオレフィン樹脂層1の層構成の積層材で構成されている。
【0013】
第1及び第2の実施の形態において、工程離型材3の厚さは100μ〜250μあることが望ましい。100μより薄いと、一方のポリオレフィン樹脂層面1aに熱エンボスを施すとき、そのエンボスの影響が他方のポリオレフィン樹脂層面1bに及ぼされ平坦性が損なわれるので好ましくない。一方250μを越える厚さにすることは不必要なことであり、経済的に好ましくない。また、第2の実施の形態においてポリエステル樹脂層は二軸延伸されたもので、12μ〜30μの厚さを有することが望ましい。ポリエステル樹脂層の厚さが12μよりも小さい時はエンボス時の高圧で、ダメージを受け、切れ易くなるので好ましくなく、一方30μを越えると加工適性が低下し好ましくない。
【0014】
本発明の工程離型材において表裏両面1a、1bの上にシリコーン樹脂をコーティングしてもよい。
【0015】
本発明の工程離型材のポリオレフィン樹脂層面にエンボスパターンを入れるとき、図3に示すように、エンボス加工前の工程離型材3aを一対のエンボスロール5、6間に通すことにより表裏のポリオレフィン樹脂層表面に同時にエンボスを入れることができるので、本発明の工程離型材は効率よく経済的に得ることができる。尚、図3においては図示を簡単にするためにエンボスパターン5、6のエンボスパターン及びポリオレフィン樹脂層面に形成されるエンボスパターンを省略図示している。
【0016】
本発明の工程離型材において、表裏のエンボスパターン2a、2bは同一でも或いは表裏で異なるパターンであってもよい。
【0017】
本発明の工程離型材を用い、その表面1a又は1bにペースト状の表皮層用ポリウレタン樹脂を塗布し、110〜140℃の温度で乾燥、固化後に、2液反応型ポリウレタン系接着剤を塗布し、編織布又は布織布からなる基布と貼り合わせ、乾燥し、50〜70℃の熱成室内で2〜3日間反応させた後に、工程離型材を剥離後、プリント、つや調整等の表面処理、もみ等の仕上げを行い、ポリウレタンレザーを製造することができる。
【0018】
また、工程離型材上にペースト状の表皮層用ポリウレタン樹脂を塗布し、乾燥、固化させた後に、その上にポリ塩化ビニル樹脂発泡層を形成後に編織布又は布織布からなる基布と貼り合わせ、その後工程離型材を剥がしてポリウレタンとポリ塩化ビニルを組みあわせたセミ合皮を製造することができる。
【0019】
本発明の工程離型材の一方のポリオレフィン樹脂層面1aを利用して合成皮革の製造を行った後もう一方のポリオレフィン樹脂層面1bを利用して別の合成皮革の製造を行うといったように両ポリオレフィン樹脂層面1a、1bを交互に利用することができる。その場合において、工程離型材の表裏を均等に利用することができるように、表裏の区別を容易にするように表裏を異なる色で着色してもよい。
【0020】
次に本発明の工程離型材の実施例及びそれを用いて合成皮革を製造する利用例を挙げて具第的に説明する。
【実施例】
【0021】
基材として、二軸延伸ポリエステルフィルム12μ(E5100、東洋紡製)を用い、その両面に、押出コーティング法により、PTX(ポリメチルペンテン、RT18、三井化学製)を150μの厚さにコーティングした。その後エンボス加工機(由利ロール機械製)を用いて、前記のようにしてPTXを両面にコーティングした二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に、象柄を、また、もう一方の面に、蛇柄を同時にエンボス加工してエンボス加工紙を作製した。この時エンボス加工は160℃のエンボス温度で行った。
【0022】
[利用例]
実施例のエンボス加工紙の片面(象柄の面)に、ポリウレタンPU(クリスボン6116SL、DIC製、1液PU)50g/m2をコーティングし、130℃で2分乾燥後、更に2液接着剤(主剤:クリスボン4070、硬化剤:クリスボンNX、促進剤:クリスボンHM、DIC製)30g/m2をコーティングし、基布を貼り合わせた。その後反転してもう一方の面(蛇柄の面)に同じポリウレタンPUをコーティングし、同じ2液接着剤をコーティングし、基布を貼り合わせた。最後にエンボス加工紙の両面にポリウレタンPUをコーティングし、接着剤を介して基布を張り合わせたものを巻き取り、40℃の温度下に3日間エージングした。
エージング完了後、エンボス加工紙からエンボス加工しの両面に形成された合成皮革を剥がし、一回の合成皮革製造で、象柄と蛇柄の2種類の紙柄の合成皮革を作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の工程離型材は合成皮革の製造工程に用いる離型材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の工程離型材の第1の実施の形態の断面図である。
【図2】本発明の工程離型材の第2の実施の形態の断面図である。
【図3】本発明の工程離型材の製造過程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ポリオレフィン樹脂層
1a ポリオレフィン樹脂層の表面
1b ポリオレフィン樹脂層の表面
2a エンボスパターン
2b エンボスパターン
3 工程離型紙
4 ポリエステル樹脂層
5 エンボスローラ
6 エンボスローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表裏両面がポリオレフィン樹脂層からなり、その表裏両面にエンボスパターンが設けられていることを特徴とする工程離型材。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂単層からなることを特徴とする請求項1に記載の工程離型材。
【請求項3】
ポリエステル樹脂層の両面にポリオレフィン樹脂がラミネートされた積層材からなることを特徴とする請求項1に記載の工程離型材。
【請求項4】
100〜250μの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の工程離型材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−264265(P2006−264265A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89545(P2005−89545)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】