巨大分子集合体の存在に関連した状態、特に眼科障害の治療
巨大分子の集合体の生成及び/又は沈着に関連した医学的状態、特に有害な眼状態と関連した医学的状態の治療の方法及び製剤を提供する。本製剤は、少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤を含有し、ここで電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の極性基と会合することを確実にするのに十分である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、老化にしばしば関連する有害な眼状態を始めとする、障害、疾患、及び他の有害な医学的状態の治療に主に関連する。より具体的には、本発明は、眼の中に存在し得るような巨大分子の集合体の存在に関連した状態の治療に関する。本発明は、眼科学と老人医学を始めとする、多様な分野に有用性を見出す。
【0002】
背景技術
正常な変化と病的な変化を始めとする、眼の進行性、加齢関連の変化は、いつでも、ヒトや他の哺乳動物の延長した生活の、歓迎されないが不可避な部分となっている。これらの変化の多くは、眼の機能と美容上の外観の両方に深刻な影響を及ぼす。これらの変化には、白内障の発症;水晶体の硬化、混濁化、柔軟性の低下、及び黄変;角膜の黄変及び混濁化;老視;眼内圧亢進及び緑内障をもたらす小柱の凝集;硝子体液中の浮遊物の増加;虹彩の硬直化とその拡張範囲の低下;加齢関連の黄斑変性(AMD);網膜動脈におけるアテローム硬化沈着物の生成;ドライアイ症候群;並びに、網膜の桿体及び錐状体の感受性及び明順応能力の低下が含まれる。加齢関連の視覚悪化には、視力、視覚コントラスト、色及び深度知覚、水晶体調節、光感受性、及び暗順応の喪失が含まれる。加齢関連の変化には、虹彩の色外観の変化と老人環の形成も含まれる。本発明は、主に、加齢に関連した多数の眼の障害及び疾患を予防して治療するための製剤及び方法に関する。
【0003】
以下に説明するように、角膜、強膜、小柱、虹彩、水晶体、硝子体液、及び網膜を始めとする、眼のすべての部分が老化プロセスにより影響を受ける。
角膜:
角膜は、眼の最外層である。それは、眼の前面を覆う澄明でドーム形状の表面である。角膜は、5層からなる。上皮は、表面を形成する細胞の層である。それは、約5〜6の細胞層の厚さにすぎず、損傷したときは速やかに再生する。損傷が角膜中へより深く貫通するならば、瘢痕形成が起きて、混濁領域を残し、角膜がその清澄さと光沢を失うことを引き起こす場合がある。上皮のすぐ下には、非常に硬くて貫通することが難しい保護層である、ボーマン膜がある。ボーマン膜の真下には、角膜の最も厚い層である固有質が存在し、これは、平行に並んだ小さなコラーゲン原線維からなり、角膜にその澄明性をもたらす配置をとる。固有層の下にはデスメー膜が存在して、これは最も内側の角膜層である内皮のすぐ上にある。内皮は、1つの細胞層だけの厚さであり、角膜から眼房水へ水を汲み出して、それを澄明に保つことに役立つ。傷害を受けるか又は罹患すれば、上記の細胞は、再生しない。
【0004】
眼が老化するにつれて、角膜はより混濁する場合がある。混濁化は多くの形態をとり得る。混濁化の最も一般的な形態は、角膜の辺縁に影響を及ぼし、「老人環」又は「弓」と呼ばれる。この種の混濁化には、はじめに、デスメー膜への脂質の沈着が関わる。引き続き、脂質がボーマン膜へ、そしておそらくは固有質へも沈着する。老人環は、通常、視覚上は重要でないが、美容面で注目される老化の兆候である。しかしながら、視覚に何らかの影響を及ぼす可能性がある、他の加齢関連の角膜混濁化がある。これらには、フランソワの中心混濁ジストロフィー(固有質の中央層に影響を及ぼす)と後部クロコダイルシャグリーン(crocodile shagreen:後部固有質の中心混濁化である)が含まれる。散乱光による混濁化は、視覚コントラストと視力の進行性の低下をもたらす。
【0005】
角膜の混濁化は、例えば、角膜構造の変性;コラーゲンや他のタンパク質のメタロプロテイナーゼによる架橋結合形成;紫外線(UV)光での傷害;酸化傷害;並びに、カルシウム塩、タンパク老廃物、及び過剰脂質のような物質の蓄積を始めとするいくつかの要因の結果として発症する。
【0006】
角膜変化を遅らせるか又は逆転させるための確立された治療法は、外科的介入以外にない。例えば、はじめに上皮を除去した後に、混濁した構造を鈍い器具で削り取り、続いて、角膜表面をレーザービームで滑らかに彫ることができる。角膜の瘢痕形成及び混濁化の重症例では、角膜移植が唯一有効なアプローチである。
【0007】
角膜だけでなく眼内の他の構造にも有害な影響を及ぼす別の一般的な眼障害は、乾性角結膜炎であり、一般的には、「ドライアイ症候群」又は「ドライアイ」と呼ばれる。ドライアイは、一群の原因より生じる可能性があり、しばしば、高齢者の問題になる。この障害には、痒みの感覚、粘液の過剰分泌、焼けるような感覚、光への感受性増加、及び疼痛がつきものである。ドライアイは、現行では、低分子量ポリエチレングリコールのような滑沢剤を含有する市販製品である「人工涙液」で治療されている。外科的治療も稀ではなく、通常、涙液分泌を眼に保持するような穿刺プラグの挿入が関与する。しかしながら、いずれの種類の治療も問題がある。外科的治療は侵襲性で、潜在的に危険であり、一方、人工涙液製品は、ごく一時的でしばしば不十分な緩和しかもたらさない。
【0008】
強膜:
強膜は、眼の白色部分である。若い個体では、強膜に青味があるが、人が年をとるにつれて、強膜は、結膜における加齢関連の変化の結果として黄変する。経時的には、UVと粉塵曝露が結膜組織に変化をもたらし、結膜脂肪斑や翼状片の形成をもたらす場合がある。これらが眼で成長すると、強膜及び角膜の組織の破壊をさらに引き起こす可能性がある。現行では、結膜移植を始めとする外科手術が、結膜脂肪斑と翼状片への唯一受け入れられた治療法である。
【0009】
小柱:
小柱メッシュワークとも呼ばれる小柱は、眼の前房中の虹彩−強膜連結部に位置するメッシュ様の構造である。小柱は、水性体液(眼房水)を濾過して、前房からシュレンム管へのその流れを制御することに役立つ。眼が老化するにつれて、残滓とタンパク質−脂質老廃物が蓄積して小柱を塞ぐ場合がある。眼内圧の増加を生じる問題であり、これがさらに緑内障と網膜、視神経、及び眼の他の構造への傷害をもたらす可能性がある。緑内障薬は、この圧力を抑えることに役立つ可能性があり、外科手術は、小柱を迂回する人工的な開口部を創出して、硝子体液や眼房水から外への液体の流れを再確立させることができる。しかしながら、小柱の内部における残滓とタンパク質−脂質老廃物の蓄積を防ぐための方法は知られていない。
【0010】
虹彩と瞳孔:
加齢とともに、照明の変化に応答する虹彩の拡張及び収縮はより遅くなり、その動きの範囲も減少する。また、瞳孔は加齢とともにますます小さくなり、特に低光量条件下で、眼に入る光の量を重篤に束縛する。経時的な瞳孔の狭化と虹彩の硬直化、遅い順応、及び束縛は、高齢者が夜間に物を見て、照明の変化へ順応するときの困難さの主たる原因になっている。虹彩の形状、硬直性、及び順応性における変化は、一般には、線維症と構造タンパク間の架橋形成に由来すると考えられている。経時的なタンパク質及び脂質老廃物の虹彩への沈着はまたその天然色を薄める場合がある。虹彩上の淡色の沈着物と瞳孔の狭化は、いずれもきわめて注目される老化の美容マーカーであり、個人に社会的な影響を及ぼす場合がある。これらの変化のいずれにも、また虹彩の天然色の加齢に伴う変化に対しても、標準的な治療法はない。
【0011】
水晶体:
加齢とともに、水晶体は黄変し、より硬く、硬直化して、柔軟性を失い、拡散的に、又は特定の位置で、混濁化する可能性がある。このように、水晶体が光を通さなくなると、視覚コントラストと視力が低下する。黄変はまた、色知覚に影響を及ぼす。水晶体の硬直化と筋肉の水晶体調節不能性は、一般には老視として知られる状態をもたらす。老視は、ほとんどいつでも中年以降に発症するが、眼が焦点を正確に合わせることができないことである。この加齢関連の眼の病理は、調節能力、即ち、水晶体の形状をより球状に(又は凸状に)変化させることによって近くにあるか又は遠くにある物体に焦点を合わせる、水晶体を介した眼の能力の喪失において発露される。近視と遠視の個人もともに老視になり得る。加齢に関連した調節幅の喪失は進行性であり、老視は、おそらく、すべての眼の悩みの中で最も蔓延しているものであり、最終的には、ほとんどすべての人が通常の平均寿命の間に罹患するものである。
【0012】
水晶体におけるこれらの変化は、コラーゲン線維間の糖化した架橋連結、タンパク複合体の蓄積、紫外線による構造破壊、酸化傷害、及びタンパク、脂質老廃物とカルシウム塩の沈着を始めとする、水晶体の構造の退行変化によると考えられている。水晶体の伸展性及び粘稠性は、線維膜と細胞骨格クリスタリンの特性に依存する。水晶体の線維膜は、きわめて高いコレステロール対リン脂質比を特徴とする。これら成分のどの変化も、水晶体膜の変形能に影響を及ぼす。水晶体変形能の喪失はまた、水晶体タンパク質の細胞膜への結合の増加にも原因があるとされてきた。
【0013】
老視を緩和するための代償的な選択肢には、現在、二焦点拡大鏡、及び/又はコンタクトレンズ、モノビジョン眼内レンズ(IOL)及び/又はコンタクトレンズ、多焦点IOL、並びに、放射状角膜切開術(RK)、角膜表層切開術(PRK)及びレーザー角膜屈折矯正術(LASIK)を使用するモノビジョン及び不同視角膜矯正外科手術が含まれる。現在、老視への普遍的に受け入れられた治療法又は治癒法は利用されていない。
【0014】
水晶体の混濁は、一般に白内障として知られる異常な状態を生じる。白内障の形成は、進行性の眼疾患であり、引き続いて、視力の低下をもたらす。この眼疾患のほとんどは、加齢関連の老人性白内障である。白内障形成の発症率は、60代の人々で60〜70%、80代以上の人々でほとんど100%であると考えられている。しかしながら、現時点では、白内障の進展を阻害することが明らかに証明された薬剤はない。故に、有効な治療薬剤の開発が望まれてきた。現在、白内障の治療は、眼鏡、コンタクトレンズ、又は嚢外白内障摘出術後の眼内レンズの水晶体包への挿入のような外科手段を使用する視力の矯正に依存している。
【0015】
白内障手術では、手術後の続発性白内障の発症が問題となっている。続発性白内障は、嚢外白内障摘出術の後で残る後嚢の表面に存在する混濁と同等である。続発性白内障の機序は、主に以下の通りである。水晶体上皮細胞(前嚢)を切除した後で、続発性白内障は、水晶体皮質の摘出時に完全には除去されない残留水晶体上皮細胞が後嚢上へ遊走して増殖し、後嚢混濁化をもたらすことより生じる。白内障手術では、水晶体上皮細胞を完全に除去することが不可能であるので、必然的に、続発性白内障をいつでも防ぐことは困難である。上記の後嚢混濁化の発生率は、嚢内後房レンズインプラントを受けてない眼で40〜50%、そして嚢内レンズインプラントを受けた眼で7〜20%であると言われている。さらに、白内障手術後では、内眼球炎として分類される眼の感染症も観察されてきた。
【0016】
硝子体液:
浮遊物は、網膜に影を落とすことによって明瞭な視覚に干渉する残滓粒子である。現在、浮遊物を抑制するか又は消失させるための標準治療法はない。
【0017】
網膜:
網膜でも加齢に伴っていくつかの変化が起こり得る。網膜動脈中でのアテローム硬化性の蓄積及び漏出は、周辺視覚の低下だけでなく、黄斑変性をもたらす可能性がある。桿体及び錐状体は、その色素がより緩やかに補充されるにつれて、経時的に非感受性になり得る。進行的に、これらの影響はいずれも視力を低下させて、最終的には部分的又は完全な失明をもたらす可能性がある。加齢関連の黄斑変性のような網膜疾患は、治癒することが難しいままである。現行の網膜治療には、血管の眼への漏出を止めるためのレーザー手術が含まれる。
【0018】
上記に示唆したように、老化に関連した眼の問題を始めとする、多くの眼の障害及び疾患に対処する現行の治療の試みは、しばしば外科的介入を伴う。外科的手技は、当然ながら侵襲性であり、さらに、望ましい治療目標に到達しないことが多い。追加的に言えば、外科手術はきわめて高額であり、重大な望ましくない後遺症をもたらす場合がある。例えば、続発性白内障は、白内障手術の後で発症することがあり、感染症が起こることもある。白内障手術の後では、内眼球炎も観察されてきた。さらに、先進的な外科手術では十分に開発された医学的インフラが必要とされるので、それは常に利用可能なわけではない。故に、手術の必要性を回避する直接的で有効な薬物療法を提供することは、きわめて有利であろう。
【0019】
特定の個々の老化に関連した眼状態に対処することが提唱された製品がある。例えば、Simalasan点眼剤のような人工涙液及び生薬製剤がドライアイ症候群を治療することが示唆されており、眼内圧を低下させるため、不快感を軽減するため、損傷後の治癒を促進するため、炎症を抑えるため、及び感染症を予防するために他の点眼剤も利用可能である。しかしながら、多数の製品を1日に数回自己投与することは不便であり、乏しい患者コンプライアンス(ひいては、全体効果の低下)を潜在的にもたらし、製剤成分の有害な相互反応を招く可能性がある。例えば、一般的な保存剤の塩化ベンザルコニウムは、四酢酸エチレンジアミン(EDTA)のような他の望ましい成分と反応する場合がある。従って、当該技術分野には、多数の老化に関連した視覚の問題や関連した眼障害を予防する、阻止する、及び/又は逆転させることができる総合的な医薬製剤へのニーズがある。
【0020】
今日まで、そのような製剤は、大部分は、複雑な多成分の医薬製品が製剤開発者及び製造業者にとってしばしば問題を招くという理由で、提供されてこなかった。例えば、異なる溶解プロフィール及び/又は膜輸送速度を有する薬剤を組み合わせることにより、種々の問題が生じ得る。後者の考察事項に関しては、「浸透エンハンサー」とも呼ばれる輸送促進剤を製剤へ取り込む必要があり、それは、医薬的に許容され、製剤安定性に影響を及ぼさず、製剤の他の成分や製剤が接触する生理学的な構造に対して不活性でそれらと適合していなければならない。
【0021】
多くの有害な眼状態が、眼中の巨大分子集合体の生成、存在、及び/又は成長と関連している。実際、多くの病理は、全身のタンパク質、他のペプチジル種、リポタンパク質、脂質、ポリヌクレオチド、及び他の巨大分子の沈着及び/又は凝集より生じるか又はそれと関連している。例えば、最終糖化産物(AGEとも呼ばれる)は、非酵素的糖化として知られるプロセスに架橋連結が続くことによって、グルコースや他の還元糖がタンパク質、リポタンパク質、及びDNAへ結合することによって生成される。これらの架橋連結した巨大分子は、結合組織を硬化させて、腎臓、網膜、血管壁、及び神経において組織傷害をもたらす。AGEは、事実、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、及び慢性関節リウマチのような多様な退行性疾患の病理発生とだけでなく、正常な老化プロセスとも関連付けられてきた。ペプチジル沈着物はまた、アルツハイマー病、鎌状赤血球貧血、多発性骨髄腫、及びプリオン病とも関連付けられている。脂質、特にステロール及びステロールエステルは、病原性の沈着物を in vivo(アテローム動脈硬化巣、胆石、等が含まれる)で生成する生体分子の追加群を代表する。今日まで、複数のこのような障害を治療できることが確認された単一の製剤は存在しない。
【0022】
発明の開示
本発明は、当該技術分野の上述のニーズへ向けられて、1つの態様において、眼の中の巨大分子の集合体を消失させるか又はその大きさを低下させるための方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる眼科製剤の治療有効量を投与することを含んでなる。極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、ここでヘテロ原子は、好ましくは酸素原子である。電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子の1つと会合することを確実にするのに十分なものである。
【0023】
巨大分子の集合体の生成又は沈着に関連した多くの眼障害があるので、本発明は、加齢関連の黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症、及び緑内障を始めとする、一群の有害な眼状態の予防及び治療に有用性があると理解されよう。本発明はまた、眼において酸化的及び/又はフリーラジカル傷害が関与する有害な眼状態(このうちいくつかは、巨大分子の集合体の生成又は沈着にも関連している)の予防及び治療において本製剤を使用する方法に関する。これらの有害な眼状態には、例えば、角膜、網膜、水晶体、強膜、及び眼の前房及び後房の状態、疾患、又は障害が含まれる。有害な眼状態は、本明細書においてその用語が使用されるように、高齢者に頻繁に見られる「正常な」状態(例、視力及びコントラスト感度の減少)であっても、老化プロセスに関連してもしてなくてもよい病理状態であってもよい。後者の有害な眼状態には、多種多様な眼の障害及び疾患が含まれる。本製剤を使用して予防及び/又は治療することができる老化関連の眼の問題には、制限なしに、混濁化(角膜と水晶体の両方の混濁化)、白内障形成(続発性白内障形成が含まれる)、及び脂質の沈着、視力障害、コントラスト感度の減少、まぶしがり症、眩視、ドライアイ、夜間視力の喪失、瞳孔の狭化、老視、加齢関連の黄斑変性、眼内圧の上昇、緑内障、及び老人環と関連した他の問題が含まれる。「老化関連」は、高齢患者においてより断然頻繁に生じるものとして一般に認められているが、若年者にも起こり得るし、実際に時々起こる状態を意味する。本製剤はまた、粉塵、風、又は紫外線により典型的には引き起こされるが、目の老化に関連した変性疾患の症状でもあり得る、結膜脂肪斑及び翼状片のような眼表面の増殖の治療にも使用することができる。一般には老化関連としてみられないが、本製剤を使用して治療することができる別の有害な状態には、円錐角膜が含まれる。また、本製剤は、有利にも、概して、どの哺乳動物の個体においても、視力を改善するために利用し得ることが強調されるべきである。即ち、本製剤の眼への投与は、患者の年齢又は有害な眼状態の存在にもかかわらず、色及び深度の知覚だけでなく、視力及びコントラスト感度を改善することができる。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、続発性白内障を始めとする、白内障の予防又は治療のための方法、製剤、及びインプラントを提供する。本方法には、上記に定義される製剤、即ち、(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる製剤の眼への投与が含まれ、ここで極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、そしてさらにここで、電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子の少なくとも1つと会合することを確実にするのに十分なものである。
【0025】
別の態様において、以下を含む医薬製剤を提供する:
(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤;
(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤(ここで極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、そしてさらにここで、電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子と会合することを確実にするのに十分なものである);及び
(c)医薬的に許容される水性担体。
【0026】
本眼科製剤は、例えば、溶液剤、懸濁液剤、軟膏剤、ゲル剤、リポソーム分散液剤、コロイド状微粒子懸濁液剤、等として眼への薬物投与に適したどの形態でも、又は眼挿入物において(例えば、任意選択的に生物分解可能な制御放出ポリマーマトリックスにおいて)投与してもよい。重要にも、本製剤の少なくとも1つの成分、そして好ましくは2以上の製剤成分は、多数の状態及び障害を予防又は治療することに有用であるか、又は1より多い作用機序を有する、又はその両方であるという点で「多機能性」である。従って、本製剤は、当該技術分野の重大な問題、即ち、多数の眼障害のある患者を治療するために多数の製剤を使用する時の異なる製剤種及び/又は活性剤の間の交差反応を解消する。追加的に、好ましい態様において、本製剤は、天然に存在する、及び/又は米国食品及び医薬品管理局によりGRAS(「概ね安全とみなされる」)とされている成分だけからなる。
【0027】
本発明はまた、上記に述べたキレート形成剤(例、EDTA)及び/又はメチルスルホニルメタンのような電荷マスキング剤の制御放出用の眼挿入物に関する。この挿入物は、膨潤可能なヒドロゲル形成ポリマーを水性の液体製剤へ取り込むことによって作製し得るような、徐々にではあるが完全に溶けるインプラントであってよい。挿入物は、不溶性であってもよく、この場合、薬剤(複数)は、拡散又は浸透により内部リザバーから外膜を介して放出される。
【0028】
図面の簡単な説明
本特許又は出願のファイルは、少なくとも1つの実施図面をカラーで含有する。本特許又は特許出願公開公報のカラー図面が付いたコピーは、要求と必要料金の支払いに応じて、当該事務局により提供される。
【0029】
図1A、1B、2A、及び2Bは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【0030】
図3A、3B、4A、及び4Bは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【0031】
図5は、実施例14において、製剤3より生じるコントラスト感度改善をプラセボと比較して比較する。
図6は、実施例15の溶液剤A、B、及びCの30分、2時間、及び16時間後の透過を比較する。
【0032】
図7A及び7Bは、実施例16に見られるようなEDTAの浸透を図示する。
図8A及び8Bは、実施例17からの様々な治療の効果を図示する。
図9は、実施例17の治療の機能としてのラット水晶体における透過を図示する。
【0033】
図10は、実施例18に見られるような、様々な治療の細胞生存度に及ぼす効果を図示する。
発明の態様の詳細な説明
特記しないかぎり、本発明は、特定の製剤種、製剤成分、投与方式、等に限定されず、変形が許される。また、本明細書に使用する用語法は、具体的な態様について記載する目的ためだけのものであり、限定することを企図しないことを理解されたい。
【0034】
本明細書と付帯の特許請求の範囲において使用するように、単数形の冠詞「a」、「an」、及び「the」には、文脈が明らかに他のやり方で示さなければ、複数の指示物が含まれる。従って、例えば、「キレート形成剤」への言及には、単数のそのような薬剤だけでなく、2以上の異なるキレート形成剤の組合せ又は混合物も含まれ、「電荷マスキング剤」への言及には、単数の電荷マスキング剤だけでなく、2以上の異なる電荷マスキング剤の組合せ又は混合物が含まれ、「医薬的に許容される担体」への言及には、単一の担体だけでなく、2以上のそのような担体が含まれる、等である。
【0035】
本明細書と以下に続く特許請求の範囲において、いくつかの用語について言及するが、それらは以下の意味を有すると定義されよう:
製剤成分へ言及する場合、使用する用語、例えば、「薬剤」又は「成分」には、特定の分子実体だけでなく、その医薬的に許容される類似体も含まれ、それには、限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、コンジュゲート、活性代謝産物、及び他のそのような誘導体、類似体、及び関連化合物が含まれる。
【0036】
本明細書に使用する用語「治療すること」及び「治療」は、有害な状態、障害、又は疾患に罹患した臨床症状のある個体へ、症状の重症度及び/又は頻度の低下をもたらす、症状及び/又はその根底にある原因を消失させる、及び/又は傷害の改善又は治癒を促進するように、薬剤又は製剤を投与することに関連する。用語「予防すること」及び「予防」は、具体的な有害な状態、障害、又は疾患に罹りやすい臨床的には無症状の個体へ薬剤又は組成物を投与することに関連するので、症状及び/又はその根底にある原因の発生の予防に関する。本明細書において他に示さなければ、明確に、又は含みにより、用語「治療」(又は「治療すること」)を可能な予防へ言及せずに使用するならば、予防も同様に含まれると企図されるので、「老視の治療の方法」には、「老視の予防の方法」が含まれると解釈すべきである。
【0037】
製剤又は製剤成分の「有効量」及び「治療有効量」という用語は、望まれる効果を提供するのに、無毒であるが十分な量の製剤又は成分を意味する。
用語「制御放出」は、薬剤の放出が即座ではない、薬剤含有製剤又はその分画に関連し、即ち、「制御放出」製剤を用いると、投与は、薬剤の吸収プールへの即時放出を生じない。この用語は、「レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」第19版(ペンシルヴェニア州イーストン、Mack Publishing Company, 1995)において定義されるように、「非即時放出」と相互交換可能的に使用される。一般に、本明細書に使用する用語「制御放出」は、「遅延放出」製剤よりむしろ「持続放出」製剤に関連する。用語「持続放出」(「延長放出」と同義)は、慣用の意味において、薬剤の延長された時間の期間にわたる漸次放出をもたらす製剤を意味するために使用される。
【0038】
「医薬的に許容される」又は「眼科学的に許容される」成分は、生物学的にも、他のやり方でも望まれないものではない成分を意味し、即ち、該成分は、望まれない生物学的効果を引き起こすことも、それが含まれる製剤組成物の他の成分のいずれとも有害なやり方で相互反応することもなく、本発明の眼科製剤へ取り込んで、患者の眼へ局所的に投与することができる。用語「医薬的に許容される」を薬理活性のある薬剤以外の成分に関連して使用するとき、該成分は、毒性学的試験や製造試験の必要基準を満たしていること、又は米国食品及び医薬品管理局により作成された「不活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)」に含まれることが含意される。
【0039】
句「式を有する」又は「構造を有する」は、限定的であることを企図せず、用語「含んでなる」が通常使用されるのと同じやり方で使用される。
本明細書に使用する用語「アルキル」は、1〜6の炭素原子を含有する、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、等のような直鎖、分岐鎖、又は環式の飽和炭化水素基を意味する。他に示さなければ、用語「アルキル」には、未置換及び置換のアルキルが含まれ、ここで置換基は、例えば、ハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アルコキシ、アシル、等であってよい。
【0040】
本明細書に使用する用語「アルコキシ」には、単一の末端エーテル連結を介して結合したアルキル基が企図される;即ち、「アルコキシ」基は、−O−アルキルと表してよく、ここでアルキルは、上記に定義される通りである。
【0041】
本明細書に使用されて、他に特定されなければ、用語「アリール」は、単一の芳香族環又は、一緒に縮合、直接的に連結、又は間接的に連結(異なる芳香族環がメチレン又はエチレン部分のような共通の基へ結合しているように)している多数の芳香族環を含有する芳香族の置換基を意味する。好ましいアリール基は、5〜14の炭素原子を含有する。例示のアリール基は、1つの芳香族環又は2つの縮合若しくは連結した芳香族環を含有し、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン、等である。他に示さなければ、用語「アリール」には、未置換及び置換のアリールが含まれ、ここで置換基は、任意選択的に置換される「アルキル」基に関して上記に述べた通りである。
【0042】
用語「アラルキル」は、アリール置換基のあるアルキル基を意味し、ここで「アリール」と「アルキル」は、上記に定義される通りである。好ましいアラルキル基は、6〜14の炭素原子を含有して、特に好ましいアラルキル基は、6〜8の炭素原子を含有する。アラルキル基の例には、制限なしに、ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチル、等が含まれる。
【0043】
用語「アシル」は、式:−(CO)−アルキル、−(CO)−アリール、又は−(CO)−アラルキルを有する置換基を意味し、ここで「アルキル」、「アリール」、及び「アラルキル」は、上記に定義される通りである。
【0044】
用語「ヘテロアルキル」及び「ヘテロアラルキル」は、ヘテロ原子を含有するアルキル及びアラルキル基、即ち、1以上の炭素原子が炭素以外の原子(例えば、窒素、酸素、イオウ、リン、又はケイ素、典型的には、窒素、酸素、又はイオウ)で置き換わっているアルキル及びアラルキル基をそれぞれ意味するために使用される。
【0045】
用語「ペプチジル化合物」には、2以上のアミノ酸を含むあらゆる構造が含まれると企図される。ペプチドの全部又は一部を形成するアミノ酸は、20種の慣用の天然に存在するアミノ酸、即ち、アラニン(A)、シスチン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、及びチロシン(Y)のいずれでもよい。上記アミノ酸のいずれも、例えば、慣用のアミノ酸の異性体又は類似体(例、D−アミノ酸)、非タンパク質アミノ酸、翻訳後修飾アミノ酸、酵素修飾アミノ酸、又はアミノ酸を模倣するように設計された構築体又は構造のような、非慣用アミノ酸に置き換えてよい。本明細書のペプチジル化合物には、タンパク質、オリゴペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、グリコシル化ペプチド、糖タンパク質、等が含まれる。
【0046】
次いで、1つの態様において、眼の中の巨大分子の集合体を消失させるか又はその大きさを低下させるための方法を提供する。この方法は、(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる無菌眼科製剤の治療有効量を患者の眼(複数)へ投与することを含む。極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、ここでヘテロ原子は、好ましくは酸素原子である。電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子の少なくとも1つと会合することを確実にするのに十分なものである。本製剤は、眼への薬物投与に適したどの形態でも(例えば、点眼剤又は眼洗液としての投与用の溶液剤又は懸濁液剤として、軟膏剤として、又は結膜、強膜、眼の毛様体扁平部(pars plana)、前房、又は後房に移植し得る眼挿入物において)、眼へ適用してよい。そのような挿入物は、眼表面への製剤の制御放出、典型的には、延長された時間期間にわたる持続放出を提供する。
【0047】
本製剤は、電荷マスキング剤として使用する化合物(例、メチルスルホニルメタン)が製剤の皮膚を通した透過を可能にする浸透エンハンサーとしても役立つ限りにおいて、皮膚を通過する浸透のために、眼の周囲の皮膚へ適用してもよい。
【0048】
本明細書のキレート形成剤として有用な化合物には、二価又は多価の金属カチオンへ配位結合するか又はそれと錯体を形成することにより、そのようなカチオンの金属イオン封鎖剤として役立つあらゆる化合物が含まれる。従って、本明細書の用語「キレート形成剤」には、二価及び多価のリガンド(典型的には、「キレーター」と呼ばれる)だけでなく、金属カチオンへ配位結合するか又はそれと錯体を形成することが可能な一価のリガンドも含まれる。しかしながら、本発明に好ましいキレート形成剤は、ポリ酸、例えば、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、又はポリリン酸の塩基付加塩であり、ポリカルボン酸塩が特に好ましい。キレート形成剤は、概して、製剤の約0.6重量%〜10重量%、好ましくは約1.0重量%〜5.0重量%である。
【0049】
本発明に関連して有用な好適な生体適合性のキレート形成剤には、制限なしに、EDTA、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジメルカプトプロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATPA)、クエン酸のようなモノマーのポリ酸、これらの眼科学的に許容される塩、及び上記のいずれもの組合せが含まれる。他の例示のキレート形成剤には、リン酸塩(phosphates)、例えば、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩が含まれる。
【0050】
EDTAと眼科学的に許容されるEDTA塩が特に好ましく、ここで代表的な眼科学的に許容されるEDTA塩は、典型的には、EDTA二アンモニウム、EDTA二ナトリウム、EDTA二カリウム、EDTA三アンモニウム、EDTA三ナトリウム、EDTA三カリウム、及びEDTA二ナトリウムカルシウムより選択される。
【0051】
以下の表は、本発明に関連して有用な一般的なキレート形成剤のいくつかを、それらが錯体を形成するカチオンのいくつかとともに示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この表におけるカチオンの列挙は、排他的なものとみてはならない。これら薬剤の多くは、どの金属カチオンともある程度は錯体を形成するものである。
本製剤には、少なくとも1つの極性基を含有して約250未満、好ましくは約125未満の分子量を有する電荷マスキング剤も含まれ、ここで極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する少なくとも2つのヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含有する。電荷マスキング剤は、一般に、式(I):
【0054】
【化1】
【0055】
[式中、極性基は、中央の−Q(O)2−部分により表され、Qは、S又はPであり、R1とR2は、独立して、C1−C6アルキル(好ましくはC1−C3アルキル)、C1−C6へテロアルキル(好ましくはC1−C3ヘテロアルキル)、C6−C14アラルキル(好ましくはC6−C8アラルキル)、及びC2−C12へテロアラルキル(好ましくはC4−C10へテロアラルキル)より選択される]
の構造を有する。最適には、メチルスルホニルメタンにあるように、QはSであり、R1とR2は、いずれもC1−C3アルキル、例えばメチルである。
【0056】
本発明の代表的な態様において、製剤は、テトラカルボン酸の塩基付加塩の形態をしたキレート形成剤と、式(I)[式中、R1とR2は、独立して、C1−C3アルキル、C1−C3ヘテロアルキル、C6−C8アラルキル、及びC4−C10へテロアラルキルより選択され、Qは、S又はPである]の構造を有する電荷マスキング剤を含み、そして電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、2:1〜12:1の範囲に、好ましくは4:1〜10:1の範囲にあり、そして最適には約8:1である。
【0057】
本製剤には、追加の薬剤、例えば、AGE破壊剤(breaker)のような既知の抗AGE剤も含めることができる。当該技術分野で認められているように、AGE破壊剤は、糖化結合を切断して、それによりすでに形成されたAGEの解離を促進するように作用する。好適なAGE破壊剤には、制限なしに、L−カルノシン、3−フェナシル−4,5−ジメチルチアゾリニウムクロリド(PTC)、N−フェナシルチアゾリニウムブロミド(PTB)、及び3−フェナシル−4,5−ジメチルチアゾリニウムブロミド(ALT−711,Alteon)が含まれる。抗AGE剤は、糖化阻害剤とAGE形成阻害剤より選択してもよい。代表的なそのような薬剤には、アミノグアニジン、4−(2,4,6−トリクロロフェニルウレイド)フェノキシ−イソ酪酸、4−[(3,4−ジクロロフェニルメチル)2−クロロ−フェニルウレイド]フェノキシイソ酪酸、N,N’−ビス(2−クロロ−4−カルボキシフェニル)ホルムアミジン、及びこれらの組合せが含まれる。
【0058】
本発明での1つの代表的な抗AGE剤は、L−カルノシン、天然のヒスチジン含有ジペプチドである。L−カルノシンはまた、天然に存在する抗酸化薬であるので、本発明において多数の機能を提供する。好ましい態様において、L−カルノシンは、存在すれば、製剤のほぼ0.2重量%〜5.0重量%である。
【0059】
本製剤には、微小循環エンハンサー、即ち、毛細血管内での血流を高めることに役立つ薬剤も含めることができる。微小循環エンハンサーは、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、例えば、(I)型PDE阻害剤であり得る。そのような化合物は、当業者に理解されるように、サイクリックAMP(cAMP)の細胞内レベルを上昇させるように作用する。好ましい微小循環エンハンサーは、アポビンカミン−22−酸エチルとも呼ばれる、ビンポセチンである。ビンポセチンは、ビンカミン、ビンカアルカロイドの合成誘導体であり、その抗酸化特性と細胞中の過剰なカルシウム蓄積に抗する保護作用の故に、本発明に特に好ましい。ビンカミンは、ビンポセチン以外のビンカアルカロイドと同様に、本発明での微小循環エンハンサーとしても有用である。好ましくは、存在するどの微小循環エンハンサー(例えば、ビンポセチン)も、製剤の約0.01重量%〜約0.2重量%、好ましくは約0.02重量%〜約0.1重量%の範囲である。
【0060】
本製剤中の他の任意選択の添加剤には、二次エンハンサー、即ち、1以上の追加の浸透エンハンサーが含まれる。例えば、本発明の製剤は、追加のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有することができる。DMSOを二次エンハンサーとして加えるならば、その量は、好ましくは製剤の約1.0重量%〜2.0重量%の範囲にあり、MSMのDMSOに対する重量比は、典型的には、約1:1〜約50:1の範囲にある。
【0061】
少なくとも一部が水性である、本製剤へ取り込むための他の可能な添加剤には、制限なしに、濃化剤、等張剤、緩衝剤、及び保存剤が含まれるが、但し、そのようなどの賦形剤も、製剤の他の成分のいずれとも有害なやり方で相互作用をしないことが条件である。また注目すべきは、選択されるキレート形成剤(そして好ましいAGE破壊剤)それ自体が保存剤として役立つという事実に照らせば、保存剤が必ずしも必要でないことである。好適な濃化剤は、眼科製剤の技術分野の当業者に知られるものであり、例を挙げれば、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース(HPMC)、及びナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)のようなセルロースポリマーと、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒアルロン酸、又はその塩(例、ヒアルロン酸ナトリウム)のような他の膨潤可能な親水性ポリマー、及び一般的には「カルボマー」と呼ばれる(そしてB.F.GoodrichよりCarbopol(登録商標)ポリマーとして市販されている)架橋連結アクリル酸ポリマーが含まれる。あらゆる濃化剤の好ましい量は、約15cps〜25cpsの範囲の粘度が提供されるようなものである(上記範囲の粘度を有する溶液は、一般に、眼製剤の快適さと保持の両方に最適とみなされているので)。眼科製剤に一般的に使用されるどの好適な等張剤及び緩衝剤も使用してよいが、但し、溶液の浸透圧が涙液のそれより2〜3%より多く逸脱しないこと、そして製剤のpHが約6.5〜約8.0の範囲に、好ましくは約6.8〜約7.8の範囲に、そして最適には約7.4のpHに維持されることが条件である。好ましい緩衝剤には、重炭酸ナトリウム及びカリウムのような炭酸塩が含まれる。
【0062】
本発明の製剤には、製剤の具体的な種類に依存する、医薬的に許容される眼科用の担体又は運搬体も含まれる。例えば、本発明の製剤は、眼科用の溶液剤又は懸濁液剤として提供され得るが、この場合、担体は、少なくとも部分的に水性である。理想的には、点眼剤として投与され得る眼科溶液剤は、水溶液である。本製剤は、軟膏剤でもよく、この場合、製剤的に許容される担体は、軟膏基剤からなる。ここで好ましい軟膏基剤は、体温に近い融点又は軟化点を有して、眼科調製物に一般に使用されるどの軟膏基剤も有利に利用してよい。一般的な軟膏基剤には、ワセリンとワセリン及び鉱油の混合物が含まれる。
【0063】
本発明の製剤は、ヒドロゲル剤、分散液剤、又はコロイド状懸濁液剤として調製してよい。ヒドロゲル剤は、好適な濃化剤として上記に示したような膨潤可能なゲル形成ポリマー(即ち、MC、HEC、HPC、HPMC、NaCMC、PVA、又はヒアルロン酸又はその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)の取込みにより生成するが、但し、当該技術分野で「ヒドロゲル剤」と呼ばれる製剤は、典型的には、「濃化」溶液剤又は懸濁液剤と呼ばれる製剤より高い粘度を有する。そのような予め生成するヒドロゲル剤とは対照的に、眼への適用に続いてその場でヒドロゲルを生成するように製剤を調製してもよい。そのようなゲル剤は、室温では液体であるが、体液との接触状態に置かれるときのように、より高い温度ではゲル化する(それにより、「熱可逆性」ヒドロゲルと呼ばれる)。この特性を付与する生体適合性ポリマーには、アクリル酸ポリマー及び共重合体、N−イソプロピルアクリルアミド誘導体、並びに、酸化エチレン及び酸化プロピレンのABAブロック共重合体(慣用的には「ポロキサマー」と呼ばれて、BASF−WyandotteよりPluronic(登録商標)として市販されている)が含まれる。本製剤は、分散液剤又はコロイド状懸濁液剤の形態で調製してもよい。好ましい分散液剤は、リポソーム分散液剤であり、この場合、製剤は、「リポソーム」、つまり交互の水性コンパートメントと脂質の二重層からなる微視的な小胞の内部に包まれる。コロイド状分散液剤は、一般に、微粒子(即ち、ミクロスフェア、ナノスフェア、マイクロカプセル、又はナノカプセル)より生成され、ここでミクロスフェアとナノスフェアは、一般に、製剤が捕捉、吸着、又は他のやり方で含まれるポリマーマトリックスのモノリシック粒子であるのに対し、マイクロカプセルとナノカプセルでは、製剤が実際に被包化される。これら微粒子の大きさの上限は、約5μm〜約10μmである。
【0064】
本製剤はまた、結膜、強膜、又は眼の毛様体扁平部へ、又は眼の前房若しくは後房への挿入物の移植に続いて、一般的には約12時間〜60日間、そして可能には12ヶ月以上もの範囲の延長された時間期間にわたる製剤の制御放出をもたらす、無菌の眼挿入物へ取り込んでもよい。眼挿入物の1つの種類は、拡散及び/又はマトリックス分解により製剤を眼へ漸次放出する、モノリシックポリマーマトリックスの形態のインプラントである。そのようなインプラントでは、挿入物の除去が不要となるように、ポリマーが完全に溶解するか又は生物分解可能である(即ち、眼において物理的に又は酵素的に侵食される)ことが好ましい。これらの種類の挿入物は当該技術分野でよく知られていて、典型的には、コラーゲン、ポリビニルアルコール、又はセルロースポリマーのような、水膨潤可能でゲル形成性のポリマーからなる。本製剤を送達するために使用し得る別の種類の挿入物は、製剤のインプラントから外への漸次拡散を可能にする、浸透可能ポリマー膜内で囲まれた中央リザバーに製剤が含まれる拡散性インプラントである。浸透挿入物、即ち、眼への適用とその後の涙液の吸収に続くインプラント内部での浸透圧の増加の結果として製剤が放出されるインプラントも使用してよい。
【0065】
本発明の方法及び製剤は、巨大分子の集合体の生成及び/又は沈着に関連した多種多様な状態を治療することに有用である。数多くの医学的病理は、結晶性集合体、原線維集合体、及び非結晶性集合体が含まれる巨大分子の集合体の in vivo 形成又は沈着により引き起こされるか又は増悪する。選択されるオリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質が含まれるある種のペプチジル化合物は、様々な医学的状態、障害、及び疾患に関連する結晶及び原線維を形成することが知られている。例えば、アミロイドペプチド、特にβ−アミロイドは、アルツハイマー病と関連する細胞外及び脳循環系の老人斑を含む、秩序だった原線維集合体を形成することが知られている。Han et al. (1995),「中核のアルツハイマーペプチド、NACはβ−アミロイドの種を供給するか又はそれにより種にされるアミロイド原線維を形成する:NACは、神経変性疾患の共通の引金又は標的なのか?(The Core Alzheimer's Peptide NAC Forms Amyloid Fibrils which Seed and are Seeded by β-Amyloid: Is NAC a Common Trigger or Target in Neurodegenerative Disease?)」Chemistry and Biology 2: 163-169; Serpell et al. (2000),「家族性アルツハイマー病のAβの分子構造(Molecular Structure of a Familiar Alzheimer's Aβ)」Biochemistry 13269-13275; Jarrett and Lansbury (1992),「アミロイド原線維形成には、化学的に識別可能な核形成現象を必要とする:細菌タンパク質、OsmB由来のアミロイド発生配列の研究(Amyloid Fibril Formation Requires a Chemically Discriminating Nucleation Event: Studies of an Amyloidogenic Sequence from the Bacterial Protein OsmB)」Biochemistry 31(49): 12345-12352; 及び Jarrett et al. (1993),「βアミロイドタンパク質のカルボキシ末端は、アミロイド形成の種入れに必須である:アルツハイマー病の病理発生への意義(The Carboxy Terminus of the Beta Amyloid Protein is Critical for the Seeding of Amyloid Formation: Implications for the Pathogenesis of Alzheimer's Disease)」Biochemistry J. 32: 4639-4679 を参照のこと。プリオン病、例えば、伝染性海綿様脳症として知られる一群の疾患も、脳組織における異常タンパク質の沈着を特徴として、ここで沈着物は、プリオンタンパク質(PrP)より主に形成される原線維アミロイド斑からなる。そのような疾患には、動物のスクラピー伝染性ミンク脳症、ミュールジカ及びヘラジカの慢性消耗性疾患、ネコ海綿様脳症、及びウシ海綿様脳症(「狂牛病」)と、ヒトのクールー、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー病、及び致死性家族性不眠症が含まれる。15マーのアミノ酸配列、PrP96−111は、アミロイド線維形成の種を供給することによって、プリオン形成を in vivo で始動させることの原因になると提唱されている。Come et al. (1993),「プリオン病におけるアミロイド形成の動的モデル:種入れの重要性(A Kinetic Model for Amyloid Formation in the Prion Diseases: Importance of Seeding)」Proc Natl Acad Sc. USA 90: 5959-5963 を参照のこと。マルタン病と関連しているフィブリリンは、有害な医学的状態を引き起こす秩序だった原線維構造を形成するタンパク質の別の例である。様々なコラーゲンより生成される原線維プラークも、ある種の医学的病理、例えば心疾患とコラーゲン線維の腎糸球体症と関連している: Rossi et al. (2001),「正常な左心室と高血圧の左心室肥大及び慢性シャーガス病モノ心臓炎における結合組織骨格(Connective Tissue Skeleton in the Normal Left Ventricle and Hypertensive Left Ventricle Hypertrophy and Chronic Chagasic Monocarditis)」MedSci Mon 7: 820-832; Yasuda et al. (1999),「コラーゲン線維症の腎糸球体症:全身性疾患(Collagenofibrotic Glomerulopathy: A Syetemic Disease)」Am J Kidney Dis 33: 123-127 を参照のこと。
【0066】
他の同様に問題のある生体分子には、制限なしに、その結晶化が嚢胞性線維症と関連する嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(「CFTR」)タンパク質(Berger at al. (2000),「ATPのアデニン環との相互作用における嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子とHisPの違い(Differences Between Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator and HisP in the Interaction with Adenine Ring of ATP)」J Biol Chem 275: 29407-29412 を参照のこと);喘息、好酸球性骨肉芽腫、好酸球性肺炎、及び顆粒球性白血病と関連したシャルコー・ライデン結晶を生成するホスホリパーゼ(Reginato and Kumik (1989),「腎疾患及び関節炎に関連するシュウ酸カルシウムと他の結晶(Calcium Oxalate and Other Crystals Associated with Kidney Diseases and Arthritis)」Semin Arthritis Rheum 18: 198-224 を参照のこと);結晶沈着物を骨髄(くる病や滑膜炎に関連する)、尿細管及び胃腸管(シスチン尿症に関連する)、並びに、腎臓、眼、及び甲状腺が含まれる多種多様な他の身体組織(シスチン蓄積症、この疾患の重症型、腎症シスチン蓄積症、又はファンコーニ症候群が含まれる)に生成するシスチン;及びヘモグロビン、ヘマトイジン、クリオグロブリン、及び免疫グロブリン(関節血症や他の関節障害、クリオグロブリン血症、及び多発性骨髄腫に関連する)が含まれる。「痛風、尿酸過剰血症、及び他の血症関連関節血症(Gout, Hyperuricemia, and Other Crystal-Associated Arthropathies)」Smyth et al. 監修(ニューヨーク:マーセル・デッカー社、1999)、15-28頁中、Gatter and Owen, Jr.,「2.結晶同定と関節液分析(Crystal Identification and Joint Fluid Analysis)」;及び Regionato and Kurnik, 同上、を参照のこと。
【0067】
脂質、特にステロールとステロールエステルは、病原性の沈着物を in vivo で生成する生体分子の追加群を表す。アテローム硬化斑(アテローマ)とコレステロール塞栓は、主にコレステロール一水和物と結晶性コレステリルエステル(コレステリルパルミテート、オレエート、リノリエート、パルミトリエート、リノレネート、ミリステートが含まれる)からなる。North et al. (1978),「アテローム硬化斑脂質におけるコレステロール一水和物結晶の溶解(The Dissolution of Cholesterol Monohydrate Crystals in Atherosclerotic Plaque Lipids)」Atherosclerosis 30: 211-217;Burks and Engelman (1981),「中性子散乱により決定した液晶中間相におけるコレステリルミリステートのコンホメーション(Cholesteryl Myristate Conformation in Liquid Crystalline Mesophases Determined by Neutron Scattering)」Proc Natl Acad Sci USA 78: 6863-6867;及び Peng et al. (December 2000),「ヒト及びウサギのアテローム硬化斑におけるコレステリルエステルのマジック・アングルスピニング13C−NMRによる定量(Quantification of Cholesteryl Esters in Human and Rabbit Atherosclerotic Plaques by Magic-Angle Spinning 13C-NMR)」Atherscler Thromb Vasc Bioi, pp. 2682-2688 を参照のこと。胆石は、胆汁におけるコレステロール一水和物の結晶化より通常生じるので、胆石の生成もコレステロール結晶化と関連している。Dowling (2000),「概説:胆石の病因論(Review: Pathogenesis of Gallstones)」Aliment Pharmacol Ther 14 (Suppl. 2): 39-46 を参照のこと
。コレステロール結晶は、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、骨嚢胞、骨肉芽腫症(エルドハイム・チェスター病)、黄色腫、強皮症、及びパラプロテイン血症が含まれる、一群の追加の医学病理と関連している。「痛風、尿酸過剰血症、及び他の血症関連関節血症(Gout, Hyperuricemia, and Other Crystal-Associated Arthropathies)」、同上、中 Regionato and Falasca,「24.シュウ酸カルシウムと他の様々な結晶関節症(Calcium Oxalate and Other Miscellaneous Crystal Arthopathies)」を参照のこと。上記の参考文献では、他の種類の脂質、例えば、脂肪酸の結晶性沈着物も同様に病原性であると提唱された。Regionato and Kurnik, 同上、を参照のこと。コレステロール結晶は、過熟性白内障においても観察されている(例えば、Brooks, A. M. V. et al. (1994),「過熟性白血病における真珠光粒子の結晶性(Crystalline nature of the iridescent particles in hypermature cataracts)」Br J Ophth 78: 581-582;Knapp, H. C. (1937),「続発性緑内障を引き起こす、過熟性白内障における水晶体嚢の自発的な破裂(Spontaneous rupture of the lens capsule in hypermature cataract causing secondary glaucoma)」Am J Ophthalmol 20: 820-821)。
【0068】
本発明の方法及び製剤は、上記に考察した分子集合体の生成又は沈着にその多くが関わる、角膜、網膜、水晶体、強膜、並びに眼の前房及び後房の状態、疾患、又は障害を始めとする、一群の有害な眼状態を治療することにも有用である。特に興味深いのは、老化プロセス及び/又は眼への酸化的及びフリーラジカル傷害と関連する有害な眼状態である。例を挙げると、制限なしに、本製剤は、一般に、老化と関連している以下の有害な眼状態を治療するのに有用である:水晶体の硬化、混濁化、柔軟性の低下、及び黄変;角膜の黄変及び混濁化;老視;眼内圧亢進及び緑内障をもたらす小柱の凝集;硝子体液中の浮遊物の増加;虹彩の硬直化とその拡張範囲の低下;加齢関連の黄斑変性;網膜動脈におけるアテローム硬化性及び他の脂質沈着物の生成;ドライアイ症候群;続発性白内障を始めとする白内障の発症;まぶしがり症、眩視や網膜の桿体及び錐状体の感受性及び明順応能力の低下に伴う諸問題;老人環;瞳孔の狭化;視覚コントラスト、色知覚、深度知覚の減少を始めとする視覚の喪失;夜間視力の喪失;水晶体調節の低下;黄斑浮腫;黄斑の瘢痕形成;及び帯状角膜症。一般に、老化個体は、これらの状態の1より多くに罹患していて、通常、2以上の異なる医薬品の自己投与を必要とする。本発明の方法及び製剤は、多数の状態を治療することに有用であるので、追加の製品を必要とせず、それ故に、多数の医薬品を使用することの不便さや内在リスクが解消される。本製剤を使用して治療することができる追加の有害な眼状態には、円錐角膜と結膜脂肪斑及び翼状片のような眼表面の増殖が含まれる。また、本製剤は、どの哺乳動物の個体においても、その個体が有害な視覚状態に罹患しているかどうかに関わらず、コントラスト感度、色知覚、及び深度知覚を始めとする視覚を改善するために使用し得ることが強調されるべきである。
【0069】
本発明はまた、本発明の製剤又はその成分の制御放出のための眼挿入物に関する。これらの眼挿入物は、強膜と前房及び後房を始めとする、眼のどの領域へ移植してもよい。この挿入物は、膨潤可能なヒドロゲル形成ポリマーを本明細書の他所に記載の水性液体製剤へ取り込むことによって作製し得るような、徐々にではあるが完全に溶けるインプラントであってよい。挿入物は、不溶性であってもよく、この場合、薬剤は、本明細書の他所にも記載のように、拡散又は浸透により内部リザバーから外膜へ放出される。
【0070】
実施例1
本発明の点眼製剤、製剤1を以下のように調製した:高純度脱イオン(DI)水(500ml)を0.2マイクロメートルフィルターにより濾過した。この濾過済みDI水へMSM(27g)、EDTA(13g)、及びL−カルノシン(5g)を加えて、溶解を示す可視透過性に達するまで混合した。この混合物を、滴瓶キャップ付き10mlボトルへそれぞれ注いだ。この点眼剤は、重量百分率ベースで以下の組成を有した:
【0071】
【表2】
【0072】
実施例2
製剤1について、4名の被検者(いずれも男性、52〜84歳、様々な人種)を治療する場合の効果を評価した。被検者1は、50歳代であり、視覚の問題も、眼の検出可能な異常も有さなかった。被検者2及び3は、50歳代であり、両眼の角膜辺縁の周りに顕著な老人環を有したが、他の有害な眼状態はなかった(老人環は、典型的には、美容上の汚点とみなされている)。被検者4は、80歳代であり、白内障とザルツマン結節に罹患していて、極端なまぶしがり症と眩視の問題が報告されていた。この被検者は、眩視と視力喪失のために、新聞、本、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことが非常に困難であった。
【0073】
これらの被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。すべての被検者について、眼科医が12ヶ月の間とその後検査した。副作用は、本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されず、眼科医により観察されなかった。4名の被検者すべてが本試験を完了した。
【0074】
すべての被検者が試験に入って4週目に主観的な変化に気づいた。この段階で被検者により報告された変化には、輝きの増加、視覚の明瞭性の改善、及び眩視の低下(特に、被検者4)が含まれる。
【0075】
8週後、以下の変化が注目された:4名すべての被検者が明瞭性とコントラストに関する視覚の著明改善を報告し、昼間色が輝きを増したようであることを示した。被検者1の視界は、20/25(矯正後)から20/20(同じ矯正)へよりよく改善し、彼の眼は、青味を深めた。被検者2及び3は、老人環の有意な低下を明示した。
【0076】
被検者4は、視力が元は最高の矯正でも左眼で20/400、右眼で20/200であり、急性まぶしがり症と眩視を有していた。眩視とまぶしがり症が抑制され、本被検者は、再び、新聞、本、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことを始めた。右眼の視力は、20/200(矯正)から20/60(ピンホール)(同じ矯正)へ有意に改善した。左眼の視力も、20/400から20/200(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0077】
16週後、以下の変化が注目された:すべての被検者で、夜間視力が含まれる視力改善の継続と、コントラスト感度の改善、色知覚の継続改善が報告された。被検者1の視界は、20/20(矯正後)から20/15(同じ矯正)へ改善し続けた。被検者2及び3は、老人環の低下を明示し続けた。
【0078】
被検者4は、眩視とまぶしがり症のさらなる低下と、本、新聞、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことの容易さにおけるさらなる改善を報告した。被検者4はまた、夜間の眩視が消失したことを報告した。この被検者は、もはや昼間でも快適で、黒眼鏡の必要はなく、眩視の重篤な問題を患ってもいなかった。右眼の視力は、20/60(ピンホール)から20/50(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/200から20/160(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0079】
8ヶ月後、被検者4の右眼の視力は、20/50(ピンホール)から20/40(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/160から20/100(同じ矯正)へ改善した。左眼の暗点が消散しはじめて、彼は、かつての暗点を通してぼんやりと読むことができた。この時点で、彼のコントラスト感度も測定した。彼の白内障は、4+(0〜4の尺度、4が最高)と測定された。中央の黄斑瘢痕は、眼科医には、光路の不鮮明さのためにほとんど見えなかった。10ヶ月後、被検者1の視力は、20/15から20/10(同じ矯正)へさらに改善した。
【0080】
さらに2ヶ月後、即ち、全12ヶ月の後で、被検者4の視力は、改善し続けた。この被検者は、今や、本、新聞、コンピュータ画面を何ら問題なく読むことができた。この被検者はまた、白内障の改善も示した(0〜4尺度で、4+から3〜4+へ向上した)。光路の明瞭性が十分に改善したので、眼科医には、黄斑の瘢痕が明瞭に見えた。コントラスト感度では、40%から100%への改善があった。スネレン視力では、彼は、右眼が20/40から20/30(ピンホール)へ、そして左眼が20/100〜20/80へ向上した。
【0081】
実施例3
本発明の第二の点眼製剤、製剤2を以下のように調製した:高純度脱イオン(DI)水(500ml)を0.2マイクロメートルフィルターにより濾過した。この濾過済みDI水へMSM(13.5g)、EDTA(13g)、及びL−カルノシン(5.0g)を加えて、溶解を示す可視透過性に達するまで混合した。この混合物を、それぞれ滴瓶フタのある10mlボトルへ注いだ。この点眼剤の組成は、重量百分率ベースで以下の成分を有した:
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4
実施例2に記載の実験に続いて、やや弱目の点眼製剤、製剤2(実施例3の記載のように調製)を使用して、詳細なコントロール追跡試験を行った。プラセボ点眼剤も調製して投与した。プラセボ点眼剤は、緩衝化等張水溶液(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムを保存剤としての0.1重量%ソルビン酸及び0.025重量% EDTA二ナトリウムとともに含有する)の形態の市販の無菌生理食塩水溶液を含んだ。
【0084】
本試験は、1つの陽性対照を除けば二重盲検であり、患者も眼科医も、製剤の点眼液が与えられたのか生理食塩水溶液が与えられたのかを知らなかった。患者を無作為化して、試験製剤又は生理食塩水のいずれかを与えた。
【0085】
本試験には、5名の被検者が関わり、うち3名は、製剤2の点眼剤を与えて、1名の被検者にはプラセボ点眼剤を与えた。さらに、1名の被検者には、製剤1のより高い強度の点眼剤を与えた。それぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)を、1日2〜4回、8週にわたる期間の間投与した。点眼剤は各被検者の両目へ投与した。試験の参加者は、多くの人種であり、女性20%、男性80%であった。
【0086】
眼科医によるベースラインと続行の検査には、自動屈折、角膜トポグラフィー、外面写真、波面写真、遠距離及び14インチでの眼鏡矯正視力、Vision Sciences Research Corporation(カリフォルニア州サンレイモン)Functional Acuity Contrast Test(FACT)チャートを使用するコントラスト感度検査、瞳孔検査及び瞳孔サイズ測定、細隙灯検査、眼内圧測定、及び眼底拡張検査が含まれた。
【0087】
8週後、被検者を再び検査した。各被検者のコントラスト感度の結果を表1に示し、すべての結果を表2に要約する。
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
製剤1及び製剤2で治療した被検者は、角膜の滑らかさ及び規則性の改善、調節/焦点合わせ能力の改善、より均一で安定した涙膜、並びに、角膜及び水晶体の黄変の減少を始めとする、きわめて有意な改善をいずれも示した。プラセボを与えた被検者は、有意な変化を何も明示しなかった。すべての被検者で、遠くの道路標識、より輝いて鮮明な色を見る能力の改善と夜間視力の改善が報告された。
【0091】
実施例5
製剤1について、46歳の男性被検者において効果を評価した。治療前、被検者には、重篤な視覚上の問題も眼の異常もなかったが、彼は、両眼の屈折誤差を矯正するために二焦点眼鏡を必要とした。
【0092】
被検者は、無関係の眼科医が、治療の前と8週の治療に続いて再び検査した。検査には、以下が含まれた。すなわち、遠視(20フィート)及び近視(14インチ)についてのスネレン視力検査、自動屈折、瞳孔拡張(瞳孔計、最大暗順応瞳孔サイズ)、細隙灯検査、自動角膜トポグラフィーマッピング、コントラスト感度(機能性視力コントラスト検査)、自動波面異常マッピング、及び前房の写真である。
【0093】
治療は、それぞれの眼に1滴(ほぼ0.04mL)の製剤1を1日2〜4回、8週間、局所点滴注入することであった。この治療の結果は、以下の通りであった:
点眼剤投与時の一過性のわずかな眼刺激以外に、何の刺激、発赤、疼痛も、他の有害な効果も眼科医により観察されず、被検者により報告されなかった。
【0094】
スネレン視力:同一の屈折矯正を使用すると、遠視力は、右眼で20/25+1から20/20へ、左眼で20/20−2から20/20へ改善した。近視は、両眼が20/50で変わらなかった。
【0095】
自動屈折:右眼は不変であった:球面−3.75;乱視+2.5(24度の軸)。左眼は、軽度改善を示した:球面−4.00から−3.75へ減少した;乱視は、+3.50(175度)から+3.25(179度)へ減少した。
【0096】
瞳孔拡張:両眼が5.0から6.0mmへ改善した。
細隙灯検査:網膜は不変のように見えて、いずれの検査の間も白内障を観察しなかった。
【0097】
角膜トポグラフィー:両眼で角膜の滑らかさと規則性の改善を観察した。眼科医は、この改善が涙膜の均一化及び安定化による可能性があることに注目した。
コントラスト感度:測定値を表3に示す。
【0098】
【表6】
【0099】
上記のデータは、コントラスト感度の一貫した有意改善を示す。
自動波面マッピング:右眼では、球面異常はほとんど不変であった(+0.15660から+0.15995)。網膜のイメージ形成は、60x70から45x70分の弧へ改善し、これは25%小さいイメージ形成を表す。左眼では、球面異常が+0.14512から+0.09509へ減少して、34.4%の改善を表した。網膜のイメージ形成は、推定20%小さいイメージで改善した。
【0100】
前房の写真、図1A(右眼、治療前)、図1B(右眼、治療後)、図2A(左眼、治療前)、及び図2B(左眼、治療後):虹彩の色は、より深い青へ変化した。この変化の度合いは、「衝撃的」と報告された。この変化は、おそらくは、角膜の黄変の減少によるものであった。
【0101】
さらに、被検者は、治療の後で、度が低い処方眼鏡へ切り換えて、もはや二焦点眼鏡を必要としないと報告した。彼は、以下の所見を述べた:「この点眼剤を約8週間使ってきて、視界は著しく改善しました。種々の色をより鮮明に見ることができます。これまでの二焦点眼鏡を昔の度の低い非焦点眼鏡に換えました。遠くをずっとよく見ることができて、読書用の眼鏡を必要としません。私の眼は、本来の眼の色のようなダークブルーになって、夜間視力が改善しました」。
【0102】
実施例6
製剤1について、60歳の男性被検者において効果を評価した。治療前、被検者には、両眼の屈折誤差以外は、重篤な視覚上の問題も眼の異常もなかった。
【0103】
被検者は、無関係の眼科医が、治療の前と7週の治療に続いて再び検査した。検査には、以下が含まれた:遠視(20フィート)及び近視(14インチ)についてのスネレン視力検査、自動屈折、瞳孔拡張(瞳孔計、最大暗順応瞳孔サイズ)、細隙灯検査、自動角膜トポグラフィーマッピング、コントラスト感度(機能性視力コントラスト検査)、自動波面異常マッピング、及び前房の写真。
【0104】
治療は、それぞれの眼に1滴(ほぼ0.04mL)の製剤1を1日2〜4回、7週間、局所点滴注入することであった。この治療の結果は、以下の通りであった:
点眼剤投与時の一過性のわずかな眼刺激以外に、何の刺激、発赤、疼痛も、他の有害な効果も眼科医により観察されず、被検者により報告されなかった。
【0105】
スネレン視力:同一の屈折矯正を使用すると(意図せずして、左眼では矯正不足であった)、遠視力は、右眼が20/25で不変のままであり、左眼で20/40−2から20/40へ改善した。近視は、右眼で20/70から20/100へ低下して(距離への過剰矯正のためらしい)、左眼で20/40−2から20/25へ改善した。
【0106】
自動屈折:右眼は不変の球面測定値(−6.00)であり、乱視がわずかに改善した(115度で+0.75から113度で+0.50)。左眼は、わずかな改善を示した:球面が−8.25から−8.00へ向上し;乱視は、84度で+1.00から82度で+1.00と不変であった。
【0107】
瞳孔拡張:右眼は4.0から4.5mmへ改善し、左眼は、4.0mmで不変であった。
細隙灯検査:網膜は不変のように見えて、いずれの検査の間でもわずかな白内障を観察した。
【0108】
角膜トポグラフィー:両眼で角膜の滑らかさと規則性の改善を観察した。眼科医は、この改善が涙膜の均一化及び安定化による可能性があることに注目した。
コントラスト感度:測定値を表4に示す。
【0109】
【表7】
【0110】
上記のデータは、コントラスト感度の一貫した有意改善を示す。
自動波面マッピング:右眼では、球面異常が+0.01367から+0.00425へ減少した(69%の改善)。網膜のイメージ形成は、80x80から70x65分の弧へ改善し、これは28.9%小さいイメージ形成を表す。左眼では、球面異常が+0.04687から−0.00494へ減少して、>100%の改善を表した。網膜のイメージ形成は、150x150から100x100分の弧へ改善し、これは33%小さいイメージ形成を表す。眼科医は、二回目の検査でこう述べた:「球面異常全体は、60歳の人の眼よりも若い健常な眼のそれにより近いものである」。
【0111】
前房の写真、図3A(右眼、治療前)、図3B(右眼、治療後)、図4A(左眼、治療前)、及び図4B(左眼、治療後):観察されたのは、水晶体混濁の明らかな減少、結晶性水晶体の黄変の低下、及び角膜澄明性の改善である。
【0112】
さらに、被検者は、こう述べた:「この点眼剤を約7週間使ってきました。以前は220ヤードでほとんど見えなかったゴルフボールが、今では300ヤードで見ることができます。視力は、特に遠くの道路標識を視るときに、格段と改善しました。種々の色がより明るく、鮮明に見えます」。
【0113】
実施例7
製剤1の成分として投与したときのEDTAの目での薬物動態挙動をウサギにおいて5日間にわたり評価した。本試験には、体重がそれぞれほぼ2.5〜3kgである2匹の健常な雄性ウサギを使用した。
【0114】
試験の1日目、1滴の製剤1を両方のウサギの各眼(全部で4つの眼)に局所点滴注入した。この試験の経過の間、追加の点眼剤は投与しなかった。眼房水の試料を(以下の表に示すように)投与後15分、30分、1時間、4時間、3日、及び5日目に抽出した。4つの眼すべてから投与後5日目に硝子体液を抽出した。眼房水と硝子体液のすべての試料においてEDTAの濃度をHPLC分析によって測定した。
【0115】
試験の結果を表5に要約する。
【0116】
【表8】
【0117】
実施例1〜7は、多機能剤のMSM及びEDTAを含み、L−カルノシンAGE破壊剤を添加した局所点眼剤が昼間視力と夜間視力の両方の質を有意に改善し、コントラスト感度を大いに改善し、瞳孔拡張を改善し、より均一で安定した涙膜を産生し、老人環を抑制して、眩視とまぶしがり症に関連した不快感を大いに抑制したことを示す。有害な病理学的変化や視力の低下は観察されなかった。
【0118】
実施例8
以下の in vivo 実験では、浸透亢進性の浸透剤としてのMSMとともに投与されるときのEDTAの眼での薬物動態挙動をウサギにおいて5日の期間にわたり評価した。本試験には、体重がそれぞれほぼ2.5〜3Kgである2匹の健常な雄性ウサギを使用した。
【0119】
本発明の点眼製剤は、以下のように調製した:高純度脱イオン(DI)水(500ml)を0.2ミクロンフィルターにより濾過した。この濾過済みDI水へMSM(27g)、EDTA(13g)、及びL−カルノシン(5g)を加えて、溶解を示す可視透過性に達するまで混合した。この混合物を、それぞれ滴瓶フタのある10mlボトルへ注いだ。この点眼剤は、重量百分率ベースで以下の組成を有した:
【0120】
【表9】
【0121】
試験の1日目、1滴の製剤1を両方のウサギの各眼(全部で4つの眼)に局所点滴注入した。この試験の経過の間、追加の点眼剤は投与しなかった。眼房水の試料を(以下の表に示すように)投与後15分、30分、1時間、4時間、3日、及び5日目に抽出した。4つの眼すべてから投与後5日目に硝子体液を抽出した。眼房水と硝子体液のすべての試料においてEDTAの濃度をHPLC分析によって測定した。
【0122】
試験の結果を以下の表に要約する。
【0123】
【表10】
【0124】
これらの結果は、製剤1がEDTAを眼の前房(眼房水)へ非常に速く送達することを示す:投与後たった30分で10.7g/mLの濃度へ達しているのである。眼房水は、ほぼ90分ごとに前房から完全に流出されるので、慣用の点眼製剤からの化合物は、典型的には、投与後4時間で眼房水に検出されない。我々は、しかしながら、投与後5日目でも、眼房水中に有意な濃度のEDTAを観察した。我々のデータはまた、EDTAが硝子体液に到達して、そこで眼房水とほとんど同じ濃度で存在したことを示している。従って、硝子体液(そしておそらくは近隣の組織)は、吸収されたEDTAのレザバーとして作用して、このEDTAの一部が経時的に拡散して眼房水へ戻っていた可能性がある。
【0125】
製剤1由来のEDTAが、硝子体液が含まれる眼の後房へ透過したことの明示は、本製剤が、点眼剤として投与するときに眼の後房へ治療薬剤を送達することの可能性を示すものである。そのような眼の後房への薬物送達は、加齢関連の黄斑変性、黄斑浮腫、緑内障、細胞移植拒絶、感染症、及びブドウ膜炎が含まれる多くの眼の状態、疾患、及び障害の治療を可能にする。
【0126】
実施例9
製剤1について、白内障とザルツマン結節に罹患していて、その最高の矯正でも左眼で20/400、右眼で20/200であり、急性まぶしがり症と眩視だけでなく、左眼に重篤な黄斑の瘢痕形成を有している、80歳代の男性被検者を治療する場合の効果を評価した。この被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されるか又は眼科医により観察される副作用はなかった。
【0127】
試験に入ってから4週後にこの被検者が報告した変化には、輝きが増したこと、視覚の明瞭性の改善、眩視の低下が含まれた。8週後、眩視とまぶしがり症が抑制され、本被検者は、再び、新聞、本、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことを始めた。右眼の視力は、20/200(矯正)から20/60(ピンホール)(同じ矯正)へ有意に改善した。左眼でも、彼の視力は、20/400から20/200(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0128】
本被検者は、眩視とまぶしがり症のさらなる低下と、本、新聞、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことの容易さにおけるさらなる改善を報告した。被検者はまた、夜間の眩視が消失したことを報告した。この被検者は、もはや昼間でも快適で、黒眼鏡の必要はなく、眩視の重篤な問題を患ってもいなかった。右眼の視力は、20/60(ピンホール)から20/50(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/200から20/160(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0129】
8ヶ月後、この被検者の右眼の視力は、20/50(ピンホール)から20/40(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/160から20/100(同じ矯正)へ改善した。左眼の暗点が消散しはじめて、彼は、かつての暗点を通してぼんやりと読むことができた。この時点で、彼のコントラスト感度も測定した。彼の白内障は、4+(0〜4の尺度、4が最高)と測定された。中央の黄斑の瘢痕は、眼科医には、光路の不鮮明さのためにほとんど見えなかった。
【0130】
全12ヶ月の後で、この被検者の視力は、改善し続けた。この被検者は、今や、本、新聞、及びコンピュータ画面を何ら問題なく読むことができた。この被検者はまた、白内障の改善も示した(0〜4尺度で、4+から3〜4+へ向上した)。光路の明瞭性が十分に改善したので、眼科医には、黄斑の瘢痕が明瞭に見えた。コントラスト感度では、40%〜100%への改善があった。スネレン視力では、右眼が20/40から20/30(ピンホール)へ、そして左眼が20/100から20/80へ向上した。この被検者はまた、40年ではじめて波形文字を左眼で読み始めることができたと報告している。
【0131】
上記の結果は、本点眼剤が眼の奥の網膜に到達していること、MSMがEDTA及びL−カルノシンの透過を支援していることを実証する。これらの結果は、実施例4のウサギの試験結果と一致している。
【0132】
実施例10
製剤1について、両方の眼にある「浮遊物」の問題を抱えている60歳代の女性被検者を治療する場合の効果を評価した。この被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されるか又は眼科医により観察される副作用はなかった。
【0133】
この点眼剤を使用して8週後、被検者は、その浮遊物の有意な低下を報告し、本医薬品が硝子体へ到達して、有益な効果を及ぼすことが再び確認された。
実施例11
製剤1について、矯正視力が20/15で、ごく顕著な老人環を有する50歳代の男性被検者を治療する場合の効果を評価した。この被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されるか又は眼科医により観察される副作用はなかった。
【0134】
16週後、被検者は、視力の20/25から20/15への改善だけでなく、その老人環のきわめて有意な低下を報告した。
実施例12
本発明の点眼製剤、製剤3を以下のように調製した:ほぼ500mlの高純度脱イオン(DI)水を0.2マイクロメートルフィルターにより濾過して、27gのメチルスルホニルメタン(MSM)と13gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・二水和物(EDTAを加えた。この製剤を可視透過性に達するまで混合し、NaOHでpHを7.2へ調整して、容量を500mlへ調整した。この混合物を、滴瓶キャップ付き10mlボトルへそれぞれ注いだ。この点眼剤は、重量百分率ベースで以下の組成を有した:
【0135】
【表11】
【0136】
実施例13
製剤3について、120日の最長期間で効果を評価した。患者には製剤3又はプラセボ(市販の非保存生理食塩水)のいずれか一方を与えて、各眼へ1滴(ほぼ0.04ml)、1日4回を使用するように指導した。試験製剤かプラセボのいずれか一方を受けるように患者を無作為化した。12の眼が製剤3を受けて、13の眼がプラセボを受けた。本試験は二重盲検で行い、患者も眼科医も、製剤3点眼剤又はプラセボのどちらを与えたのかを知らなかった。
【0137】
FACTTM(Functional Acuity Contrast Test)とCST 1800 Digital(登録商標)コントラスト感度テスターを使用して、中間相条件の模倣薄暮(3本の蝋燭/m2)下でコントラスト感度を測定した。測定は、各眼について単眼で2回実施して、同一2検体の測定値を平均した。
【0138】
FACTTMは、正弦波の回折格子チャートを使用してコントラスト感度を検査する。このチャートは、5列(明暗サイクル)からなり、各列は、9レベルのコントラスト感度を有する。正弦波の回折格子は、循環パターンで設定された灰色のバーが様々な大きさ及びコントラストとして見える、特別な検査パターンである。明暗サイクルAの回折格子は、最大の灰色バー(最長の波長)として見えて、明暗サイクルEの回折格子は、最小の灰色バー(最短の波長)として見える。CST 1800 Digital(登録商標)コントラスト感度テスターを通してこのチャートを眺めている間に、被検者は、各回折格子の配向(右、上、又は左)を報告する。それぞれの明暗サイクルには、パッチとも呼ばれる9レベルのコントラスト感度がある。レベル1は最大のコントラストを有し、レベル9は最小のコントラストを有する。被検者は、各列(A、B、C、D及びE)について見える最後の回折格子(1〜9)の配向を報告する。
【0139】
FACTをスコア化するとき、対数スケールを使用して、9レベルのコントラスト感度をグラフ化する。1つのレベル又はパッチの改善は、ほぼ1.5倍のコントラスト感度増加を表す。コントラスト感度改善を定量化するために、14日目(T0)からのデータを、少なくとも60日の治療を完了した各被検者について得られる最後のコントラスト感度データと比較した。
【0140】
製剤3を受けた12の眼の中で、8つの眼(67%)が2つの明暗サイクルにおいて少なくとも2つのパッチのコントラスト感度改善、統計学的に有意な結果(p=0.0237)を示した。プラセボを受けた13の眼では、3つ(23%)だけが2つの明暗サイクルにおいて少なくとも2つのパッチの改善を示した。
【0141】
コントラスト感度改善の別の測定として、それぞれの明暗サイクルについて、製剤3を受けた眼の平均パッチ改善を、プラセボを受けた眼の群と比較した(図5)。製剤3を受けた眼は、すべての明暗サイクルにおいて有意なコントラスト改善を示し、明暗サイクルDでは2.5パッチより大きい改善であり、明暗サイクルEでは3パッチを超える改善であった。
【0142】
眼又は全身の重篤な有害事象を報告した被検者は一人もいなかった。
実施例14
(目的)ラットの眼へ適用する点眼剤中の14C−EDTAの眼房水への浸透の程度をMSMの存在の有無で定量する。
【0143】
(試薬)エチレンジアミン四酢酸−1,2−14C−四ナトリウムをシグマより購入した。14C−EDTA(比活性:10.6mCi/ミリモル、放射化学純度:99%以上)。本試験に使用する他の化学品は、いずれも分析用であり、市販品を購入した。ScintiVerse II Cocktail(液体シンチレーション溶媒)は、Fisher Scientificからの水系、非水系、及びエマルジョン計数システム用の汎用LSC Cocktailであった。
【0144】
(動物)体重200〜250gの雄性スプリーグ・ドーリーラットをテキサス大学医学部のCentral Animal Care Serviceより入手した。動物の福祉については、「眼科及び視覚研究における動物の使用」に関するNIHガイドライン及びARVO規則に厳格に従った。100%二酸化炭素を低い流速(1分につきケージの25〜30%容量)で約2分間使用して、動物を犠牲にした。
【0145】
(実験手順)以下の3種の点眼溶液剤の各100μlを調製した。
【0146】
【表12】
【0147】
各点眼溶液剤の8μlを各眼の角膜へ適用した。各溶液剤で1匹のラットを処置した。0.5、2、及び16時間の時点で、30ゲージ微細針をインスリンシリンジとともに使用して眼房水を各眼より吸引して、50μlのPBSに分与した。タンパク質を可溶化するために、試料を50℃の水浴に3時間入れて、10,000rpmで10分間の遠心分離を続けた。
【0148】
(試料の放射活性の定量)25mlのScintiVerse II計数液を含有する計数バイアルへ試料を加え、激しく混合して、そのまま暗所に1時間静置させた。次いで、液体シンチレーションカウンター(LS 1801 Liquid Scintillation Systems,ベックマン・インスツルメンツ社)を使用して試料を計数した。各溶液剤を受けた2つの眼につき、各時点で、1分あたりのカウントを平均した。
【0149】
角膜から眼房水へ輸送される各溶液剤の能力について評価するために、眼房水中の14C−EDTAの量を溶液剤A、B、及びCの間で比較した(図6)。MSMの非存在下では、EDTA濃度にかかわらず、眼房水にEDTAがほとんど存在していなかった。MSMの存在下では、30分の時点で、眼房水中の14C−EDTAの量がほぼ5倍増加していた。
【0150】
実施例15
EDTA薬物動態試験
(目的)MSMを含有する点眼剤を使用して、ラットの眼の様々な構造(角膜、眼房水、水晶体、硝子体、及び網膜)へ浸透するC−14標識化EDTAの量を決定する。
【0151】
(試薬)エチレンジアミン四酢酸−1,2−14C−四ナトリウムをシグマより購入した。14C−EDTA(比活性:10.6mCi/ミリモル、放射化学純度:99%以上)。本試験に使用する他の化学品は、いずれも分析用であり、市販品を購入した。ScintiVerse II Cocktail(液体シンチレーション溶媒)は、Fisher Scientificからの水系、非水系、及びエマルジョン計数システム用の汎用LSC Cocktailであった。
【0152】
(動物)体重200〜250gの雄性スプリーグ・ドーリーラットをテキサス大学医学部のCentral Animal Care Serviceより入手した。動物の福祉については、NIHガイドラインと「眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVO規則」に厳格に従った。100%二酸化炭素を低い流速(1分につきケージの25〜30%容量)で約2分間使用して、動物を犠牲にした。
【0153】
【表13】
【0154】
【表14】
【0155】
点眼剤1の8μlをラットの眼へ適用した。0.5、1、2,4、及び16時間後にラットを犠牲にして、眼球を取り出した。各時点で、眼球をすぐに5mlの生理食塩水で6回洗浄した。両方の眼から眼房水を吸引して、50μlのPBSに分与した。それぞれの眼から角膜、水晶体、硝子体、及び網膜を分離して、H2Oと10N NaOHを以下の比で含有するエッペンドルフ管に入れた:
【0156】
【表15】
【0157】
タンパク質を可溶化するために、試料を50℃の水浴に3時間入れて、10,000rpmで10分間の遠心分離を続けた。25mlのScintiVerse II計数液を含有する計数バイアルへ試料を加え、激しく混合して、そのまま暗所に1時間静置させた。次いで、ベックマン・シンチレーションカウンター(LS 1801 Liquid Scintillation Systems,ベックマン・インスツルメンツ社)を使用してそれらを計数した。
【0158】
8μlの点眼剤2をラットの眼へ適用した。0.5、2、及び4時間後、ラットを犠牲にして、点眼剤1と同じやり方で実験を行なった。
各製剤の眼の構造における分布を調べるために、各時点につきナノグラム数のEDTAを計算した(図7A)。特に、眼房水、角膜、及び水晶体では、用量依存性が観察された。点眼剤1について、それぞれの眼構造に見出されるEDTAの百分率を2時間の時点で計算した(図7B)。EDTAの大部分は眼房水に見出されたが、点眼剤1の製剤は、検査したすべての組織に存在していた。
【0159】
実施例16
ラット水晶体器官培養(RLCE)における酸化誘発毒性の評価
(材料)EDTA、アスコルビン酸、及びH2O2は、シグマより購入した。細胞培養基の成分は、すべてInvitrogenからのものであった。
【0160】
(動物)体重200〜250gの雄性スプリーグ・ドーリーラットをテキサス大学医学部のCentral Animal Care Serviceより入手した。動物の福祉については、NIHガイドラインと「眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVO規則」に厳格に従った。100%二酸化炭素を低い流速(1分につきケージの25〜30%容量)で約2分間使用して、動物を犠牲にした。
【0161】
(水晶体培養)ラット水晶体を解剖して、無菌PBS中1%ペニシリン/ストレプトマイシンで洗浄した。この水晶体を、0.1%ゲンタマイシンを含有する培地199中に、5% CO2加湿雰囲気において37℃で培養した。この水晶体をそれぞれ2つの水晶体の群へ分けて、H2O2、MSM及び/又はEDTAとともにグルコース又はアスコルビン酸塩のいずれかへ曝露した。培地は、7日間、毎日交換した。Nikon Eclipse 200の下で水晶体を可視化して、多次元映像システム(Multidimensional Imaging System)を使用して写真を撮った。
【0162】
【表16】
【0163】
(実験手順)
1.7匹のラットを犠牲にし、可及的速やかに眼球を取り出して、0.1%ゲンタマイシン入りPBSを含有する試験管へそれを入れた。
【0164】
2.即座に水晶体を解剖して、PBSで洗浄した。
3.すべての水晶体を2つの12ウェルプレートへ移した(各水晶体につきウェルあたり2mlの培地)。各処置を2つのウェルで実施した。6つの処置液の最終濃度は、以下の通りであった:
【0165】
【表17】
【0166】
4.培地と試薬は毎日交換した。
5.水晶体培養の7日後、写真を撮って、水晶体を通過する光透過性のレベルを決定した。
【0167】
(結果)水晶体培養の写真は、グルコースとアスコルビン酸塩(+過酸化水素)の両方で有意なラット水晶体混濁が誘発されることを示した(図8A及び8B)。MSMは、いずれの酸化薬による水晶体混濁化も緩和したが、MSM+EDTAは、最も有効な保護をもたらした。
【0168】
水晶体を介する光通過量によって、各処置の水晶体混濁を定量化した。写真の結果と一致して、MSMは、両方の酸化処置に対する光通過のレベルを改善したが、MSM+EDTAは、さらに大きな改善を示した(図9)。アスコルビン酸塩/過酸化水素(AH)で処置した水晶体を介する光通過は、対照を介する光通過の32%であった(上のグラフ)。アスコルビン酸塩/過酸化水素及びMSM(AH+M)とアスコルビン酸塩/過酸化水素及びMSM/EDTA(AH+ME)で処置した水晶体を介する光通過は、それぞれ57%と66%であった。酸化薬として50mMグルコースを使用するときも、類似のパターンが観察された(下のグラフ)。グルコースで処置した水晶体を介する光通過は、非処置対照を介する光通過の45%にすぎなかった。グルコース+MSM(G+M)とグルコース及びMSM/EDTA(G+ME)で処置した水晶体を介する光通過は、それぞれ68%と92%であった。
【0169】
実施例17
ヒト水晶体上皮細胞(HLEC)における酸化誘発毒性とMSM及び/又はEDTAでの保護に続く細胞生存度の評価
(材料)EDTA(四ナトリウム塩)、硫酸アンモニウム第一鉄、塩化鉄、アデノシン5’−二リン酸(ADP)、アスコルビン酸、及びH2O2は、シグマより購入した。細胞培養基の成分は、すべてInvitrogenからのものであった。
【0170】
(細胞培養と処置)寿命が延長したヒト水晶体上皮細胞(HLEC)を、0.1%ゲンタマイシンを含有して20%胎仔ウシ血清を補充したDMEM培地中に、5% CO2加湿雰囲気において37℃で培養した。1.0x105個のHLEC/ml(継代5)を12ウェルプレートに播いて一晩後に、酸化試薬とMSM及び/又はEDTAを添加した。
【0171】
(細胞生存度)細胞の生存は、トリパンブルー染色により決定して、血球計で計数した。死んだ細胞が青く染まるのに対して、生きている細胞はトリパンブルーを排除する。細胞生存度は、生存細胞数/全細胞数の百分率として表す。
【0172】
【表18】
【0173】
(実験手順)
1. 0.5x105個/mlのHLEC(継代5)を3つの12ウェルプレートへ播き、37℃で一晩インキュベートした。
【0174】
2.培地を2% FBS DMEM培地へ交換した。
3.適切なウェルへ酸化試薬とMSM及び/又はEDTAを加えた。最終濃度は、以下の通りであった:
【0175】
【表19】
【0176】
酸化試薬とMSM及び/又はEDTAを加えた後で、細胞を5% CO2及び95%空気とともに37℃で16時間インキュベートして、0.25% トリプシン−EDTAとともに採取して、トリパンブルーを用いて細胞生存度を決定した。
【0177】
(結果)図10は、各条件下での細胞生存度のパーセントを示す。酸化薬は、30%(Fenton)〜ほぼ45%(アスコルビン酸塩+H2O2)へ細胞生存度を減少させた。4mM MSMの添加は、すべての酸化薬に対して細胞生存度パーセントを高めたが、4mM MSM+0.5mM EDTAの添加は、生存可能細胞の百分率をさらに増加させた。χ2乗検定を実施して、MSM/EDTAの保護効果が統計学的に有意であるかどうかを決定した。酸化薬+MSM/EDTA混合物を含有するウェルでは、Fenton以外のすべての酸化薬に対して、統計学的に有意な結果(0.05未満のP値)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1A】図1Aは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図1B】図1Bは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図2A】図2Aは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図2B】図2Bは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図3A】図3Aは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図3B】図3Bは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図4A】図4Aは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図4B】図4Bは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図5】図5は、実施例14において、製剤3より生じるコントラスト感度改善をプラセボと比較して比較する。
【図6】図6は、実施例15の溶液剤A、B、及びCの30分、2時間、及び16時間後の透過を比較する。
【図7A】図7Aは、実施例16に見られるようなEDTAの浸透を図示する。
【図7B】図7Bは、実施例16に見られるようなEDTAの浸透を図示する。
【図8A】図8Aは、実施例17からの様々な治療の効果を図示する。
【図8B】図8Bは、実施例17からの様々な治療の効果を図示する。
【図9】図9は、実施例17の治療の機能としてのラット水晶体における透過を図示する。
【図10】図10は、実施例18に見られるような、様々な治療の細胞生存度に及ぼす効果を図示する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、老化にしばしば関連する有害な眼状態を始めとする、障害、疾患、及び他の有害な医学的状態の治療に主に関連する。より具体的には、本発明は、眼の中に存在し得るような巨大分子の集合体の存在に関連した状態の治療に関する。本発明は、眼科学と老人医学を始めとする、多様な分野に有用性を見出す。
【0002】
背景技術
正常な変化と病的な変化を始めとする、眼の進行性、加齢関連の変化は、いつでも、ヒトや他の哺乳動物の延長した生活の、歓迎されないが不可避な部分となっている。これらの変化の多くは、眼の機能と美容上の外観の両方に深刻な影響を及ぼす。これらの変化には、白内障の発症;水晶体の硬化、混濁化、柔軟性の低下、及び黄変;角膜の黄変及び混濁化;老視;眼内圧亢進及び緑内障をもたらす小柱の凝集;硝子体液中の浮遊物の増加;虹彩の硬直化とその拡張範囲の低下;加齢関連の黄斑変性(AMD);網膜動脈におけるアテローム硬化沈着物の生成;ドライアイ症候群;並びに、網膜の桿体及び錐状体の感受性及び明順応能力の低下が含まれる。加齢関連の視覚悪化には、視力、視覚コントラスト、色及び深度知覚、水晶体調節、光感受性、及び暗順応の喪失が含まれる。加齢関連の変化には、虹彩の色外観の変化と老人環の形成も含まれる。本発明は、主に、加齢に関連した多数の眼の障害及び疾患を予防して治療するための製剤及び方法に関する。
【0003】
以下に説明するように、角膜、強膜、小柱、虹彩、水晶体、硝子体液、及び網膜を始めとする、眼のすべての部分が老化プロセスにより影響を受ける。
角膜:
角膜は、眼の最外層である。それは、眼の前面を覆う澄明でドーム形状の表面である。角膜は、5層からなる。上皮は、表面を形成する細胞の層である。それは、約5〜6の細胞層の厚さにすぎず、損傷したときは速やかに再生する。損傷が角膜中へより深く貫通するならば、瘢痕形成が起きて、混濁領域を残し、角膜がその清澄さと光沢を失うことを引き起こす場合がある。上皮のすぐ下には、非常に硬くて貫通することが難しい保護層である、ボーマン膜がある。ボーマン膜の真下には、角膜の最も厚い層である固有質が存在し、これは、平行に並んだ小さなコラーゲン原線維からなり、角膜にその澄明性をもたらす配置をとる。固有層の下にはデスメー膜が存在して、これは最も内側の角膜層である内皮のすぐ上にある。内皮は、1つの細胞層だけの厚さであり、角膜から眼房水へ水を汲み出して、それを澄明に保つことに役立つ。傷害を受けるか又は罹患すれば、上記の細胞は、再生しない。
【0004】
眼が老化するにつれて、角膜はより混濁する場合がある。混濁化は多くの形態をとり得る。混濁化の最も一般的な形態は、角膜の辺縁に影響を及ぼし、「老人環」又は「弓」と呼ばれる。この種の混濁化には、はじめに、デスメー膜への脂質の沈着が関わる。引き続き、脂質がボーマン膜へ、そしておそらくは固有質へも沈着する。老人環は、通常、視覚上は重要でないが、美容面で注目される老化の兆候である。しかしながら、視覚に何らかの影響を及ぼす可能性がある、他の加齢関連の角膜混濁化がある。これらには、フランソワの中心混濁ジストロフィー(固有質の中央層に影響を及ぼす)と後部クロコダイルシャグリーン(crocodile shagreen:後部固有質の中心混濁化である)が含まれる。散乱光による混濁化は、視覚コントラストと視力の進行性の低下をもたらす。
【0005】
角膜の混濁化は、例えば、角膜構造の変性;コラーゲンや他のタンパク質のメタロプロテイナーゼによる架橋結合形成;紫外線(UV)光での傷害;酸化傷害;並びに、カルシウム塩、タンパク老廃物、及び過剰脂質のような物質の蓄積を始めとするいくつかの要因の結果として発症する。
【0006】
角膜変化を遅らせるか又は逆転させるための確立された治療法は、外科的介入以外にない。例えば、はじめに上皮を除去した後に、混濁した構造を鈍い器具で削り取り、続いて、角膜表面をレーザービームで滑らかに彫ることができる。角膜の瘢痕形成及び混濁化の重症例では、角膜移植が唯一有効なアプローチである。
【0007】
角膜だけでなく眼内の他の構造にも有害な影響を及ぼす別の一般的な眼障害は、乾性角結膜炎であり、一般的には、「ドライアイ症候群」又は「ドライアイ」と呼ばれる。ドライアイは、一群の原因より生じる可能性があり、しばしば、高齢者の問題になる。この障害には、痒みの感覚、粘液の過剰分泌、焼けるような感覚、光への感受性増加、及び疼痛がつきものである。ドライアイは、現行では、低分子量ポリエチレングリコールのような滑沢剤を含有する市販製品である「人工涙液」で治療されている。外科的治療も稀ではなく、通常、涙液分泌を眼に保持するような穿刺プラグの挿入が関与する。しかしながら、いずれの種類の治療も問題がある。外科的治療は侵襲性で、潜在的に危険であり、一方、人工涙液製品は、ごく一時的でしばしば不十分な緩和しかもたらさない。
【0008】
強膜:
強膜は、眼の白色部分である。若い個体では、強膜に青味があるが、人が年をとるにつれて、強膜は、結膜における加齢関連の変化の結果として黄変する。経時的には、UVと粉塵曝露が結膜組織に変化をもたらし、結膜脂肪斑や翼状片の形成をもたらす場合がある。これらが眼で成長すると、強膜及び角膜の組織の破壊をさらに引き起こす可能性がある。現行では、結膜移植を始めとする外科手術が、結膜脂肪斑と翼状片への唯一受け入れられた治療法である。
【0009】
小柱:
小柱メッシュワークとも呼ばれる小柱は、眼の前房中の虹彩−強膜連結部に位置するメッシュ様の構造である。小柱は、水性体液(眼房水)を濾過して、前房からシュレンム管へのその流れを制御することに役立つ。眼が老化するにつれて、残滓とタンパク質−脂質老廃物が蓄積して小柱を塞ぐ場合がある。眼内圧の増加を生じる問題であり、これがさらに緑内障と網膜、視神経、及び眼の他の構造への傷害をもたらす可能性がある。緑内障薬は、この圧力を抑えることに役立つ可能性があり、外科手術は、小柱を迂回する人工的な開口部を創出して、硝子体液や眼房水から外への液体の流れを再確立させることができる。しかしながら、小柱の内部における残滓とタンパク質−脂質老廃物の蓄積を防ぐための方法は知られていない。
【0010】
虹彩と瞳孔:
加齢とともに、照明の変化に応答する虹彩の拡張及び収縮はより遅くなり、その動きの範囲も減少する。また、瞳孔は加齢とともにますます小さくなり、特に低光量条件下で、眼に入る光の量を重篤に束縛する。経時的な瞳孔の狭化と虹彩の硬直化、遅い順応、及び束縛は、高齢者が夜間に物を見て、照明の変化へ順応するときの困難さの主たる原因になっている。虹彩の形状、硬直性、及び順応性における変化は、一般には、線維症と構造タンパク間の架橋形成に由来すると考えられている。経時的なタンパク質及び脂質老廃物の虹彩への沈着はまたその天然色を薄める場合がある。虹彩上の淡色の沈着物と瞳孔の狭化は、いずれもきわめて注目される老化の美容マーカーであり、個人に社会的な影響を及ぼす場合がある。これらの変化のいずれにも、また虹彩の天然色の加齢に伴う変化に対しても、標準的な治療法はない。
【0011】
水晶体:
加齢とともに、水晶体は黄変し、より硬く、硬直化して、柔軟性を失い、拡散的に、又は特定の位置で、混濁化する可能性がある。このように、水晶体が光を通さなくなると、視覚コントラストと視力が低下する。黄変はまた、色知覚に影響を及ぼす。水晶体の硬直化と筋肉の水晶体調節不能性は、一般には老視として知られる状態をもたらす。老視は、ほとんどいつでも中年以降に発症するが、眼が焦点を正確に合わせることができないことである。この加齢関連の眼の病理は、調節能力、即ち、水晶体の形状をより球状に(又は凸状に)変化させることによって近くにあるか又は遠くにある物体に焦点を合わせる、水晶体を介した眼の能力の喪失において発露される。近視と遠視の個人もともに老視になり得る。加齢に関連した調節幅の喪失は進行性であり、老視は、おそらく、すべての眼の悩みの中で最も蔓延しているものであり、最終的には、ほとんどすべての人が通常の平均寿命の間に罹患するものである。
【0012】
水晶体におけるこれらの変化は、コラーゲン線維間の糖化した架橋連結、タンパク複合体の蓄積、紫外線による構造破壊、酸化傷害、及びタンパク、脂質老廃物とカルシウム塩の沈着を始めとする、水晶体の構造の退行変化によると考えられている。水晶体の伸展性及び粘稠性は、線維膜と細胞骨格クリスタリンの特性に依存する。水晶体の線維膜は、きわめて高いコレステロール対リン脂質比を特徴とする。これら成分のどの変化も、水晶体膜の変形能に影響を及ぼす。水晶体変形能の喪失はまた、水晶体タンパク質の細胞膜への結合の増加にも原因があるとされてきた。
【0013】
老視を緩和するための代償的な選択肢には、現在、二焦点拡大鏡、及び/又はコンタクトレンズ、モノビジョン眼内レンズ(IOL)及び/又はコンタクトレンズ、多焦点IOL、並びに、放射状角膜切開術(RK)、角膜表層切開術(PRK)及びレーザー角膜屈折矯正術(LASIK)を使用するモノビジョン及び不同視角膜矯正外科手術が含まれる。現在、老視への普遍的に受け入れられた治療法又は治癒法は利用されていない。
【0014】
水晶体の混濁は、一般に白内障として知られる異常な状態を生じる。白内障の形成は、進行性の眼疾患であり、引き続いて、視力の低下をもたらす。この眼疾患のほとんどは、加齢関連の老人性白内障である。白内障形成の発症率は、60代の人々で60〜70%、80代以上の人々でほとんど100%であると考えられている。しかしながら、現時点では、白内障の進展を阻害することが明らかに証明された薬剤はない。故に、有効な治療薬剤の開発が望まれてきた。現在、白内障の治療は、眼鏡、コンタクトレンズ、又は嚢外白内障摘出術後の眼内レンズの水晶体包への挿入のような外科手段を使用する視力の矯正に依存している。
【0015】
白内障手術では、手術後の続発性白内障の発症が問題となっている。続発性白内障は、嚢外白内障摘出術の後で残る後嚢の表面に存在する混濁と同等である。続発性白内障の機序は、主に以下の通りである。水晶体上皮細胞(前嚢)を切除した後で、続発性白内障は、水晶体皮質の摘出時に完全には除去されない残留水晶体上皮細胞が後嚢上へ遊走して増殖し、後嚢混濁化をもたらすことより生じる。白内障手術では、水晶体上皮細胞を完全に除去することが不可能であるので、必然的に、続発性白内障をいつでも防ぐことは困難である。上記の後嚢混濁化の発生率は、嚢内後房レンズインプラントを受けてない眼で40〜50%、そして嚢内レンズインプラントを受けた眼で7〜20%であると言われている。さらに、白内障手術後では、内眼球炎として分類される眼の感染症も観察されてきた。
【0016】
硝子体液:
浮遊物は、網膜に影を落とすことによって明瞭な視覚に干渉する残滓粒子である。現在、浮遊物を抑制するか又は消失させるための標準治療法はない。
【0017】
網膜:
網膜でも加齢に伴っていくつかの変化が起こり得る。網膜動脈中でのアテローム硬化性の蓄積及び漏出は、周辺視覚の低下だけでなく、黄斑変性をもたらす可能性がある。桿体及び錐状体は、その色素がより緩やかに補充されるにつれて、経時的に非感受性になり得る。進行的に、これらの影響はいずれも視力を低下させて、最終的には部分的又は完全な失明をもたらす可能性がある。加齢関連の黄斑変性のような網膜疾患は、治癒することが難しいままである。現行の網膜治療には、血管の眼への漏出を止めるためのレーザー手術が含まれる。
【0018】
上記に示唆したように、老化に関連した眼の問題を始めとする、多くの眼の障害及び疾患に対処する現行の治療の試みは、しばしば外科的介入を伴う。外科的手技は、当然ながら侵襲性であり、さらに、望ましい治療目標に到達しないことが多い。追加的に言えば、外科手術はきわめて高額であり、重大な望ましくない後遺症をもたらす場合がある。例えば、続発性白内障は、白内障手術の後で発症することがあり、感染症が起こることもある。白内障手術の後では、内眼球炎も観察されてきた。さらに、先進的な外科手術では十分に開発された医学的インフラが必要とされるので、それは常に利用可能なわけではない。故に、手術の必要性を回避する直接的で有効な薬物療法を提供することは、きわめて有利であろう。
【0019】
特定の個々の老化に関連した眼状態に対処することが提唱された製品がある。例えば、Simalasan点眼剤のような人工涙液及び生薬製剤がドライアイ症候群を治療することが示唆されており、眼内圧を低下させるため、不快感を軽減するため、損傷後の治癒を促進するため、炎症を抑えるため、及び感染症を予防するために他の点眼剤も利用可能である。しかしながら、多数の製品を1日に数回自己投与することは不便であり、乏しい患者コンプライアンス(ひいては、全体効果の低下)を潜在的にもたらし、製剤成分の有害な相互反応を招く可能性がある。例えば、一般的な保存剤の塩化ベンザルコニウムは、四酢酸エチレンジアミン(EDTA)のような他の望ましい成分と反応する場合がある。従って、当該技術分野には、多数の老化に関連した視覚の問題や関連した眼障害を予防する、阻止する、及び/又は逆転させることができる総合的な医薬製剤へのニーズがある。
【0020】
今日まで、そのような製剤は、大部分は、複雑な多成分の医薬製品が製剤開発者及び製造業者にとってしばしば問題を招くという理由で、提供されてこなかった。例えば、異なる溶解プロフィール及び/又は膜輸送速度を有する薬剤を組み合わせることにより、種々の問題が生じ得る。後者の考察事項に関しては、「浸透エンハンサー」とも呼ばれる輸送促進剤を製剤へ取り込む必要があり、それは、医薬的に許容され、製剤安定性に影響を及ぼさず、製剤の他の成分や製剤が接触する生理学的な構造に対して不活性でそれらと適合していなければならない。
【0021】
多くの有害な眼状態が、眼中の巨大分子集合体の生成、存在、及び/又は成長と関連している。実際、多くの病理は、全身のタンパク質、他のペプチジル種、リポタンパク質、脂質、ポリヌクレオチド、及び他の巨大分子の沈着及び/又は凝集より生じるか又はそれと関連している。例えば、最終糖化産物(AGEとも呼ばれる)は、非酵素的糖化として知られるプロセスに架橋連結が続くことによって、グルコースや他の還元糖がタンパク質、リポタンパク質、及びDNAへ結合することによって生成される。これらの架橋連結した巨大分子は、結合組織を硬化させて、腎臓、網膜、血管壁、及び神経において組織傷害をもたらす。AGEは、事実、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、及び慢性関節リウマチのような多様な退行性疾患の病理発生とだけでなく、正常な老化プロセスとも関連付けられてきた。ペプチジル沈着物はまた、アルツハイマー病、鎌状赤血球貧血、多発性骨髄腫、及びプリオン病とも関連付けられている。脂質、特にステロール及びステロールエステルは、病原性の沈着物を in vivo(アテローム動脈硬化巣、胆石、等が含まれる)で生成する生体分子の追加群を代表する。今日まで、複数のこのような障害を治療できることが確認された単一の製剤は存在しない。
【0022】
発明の開示
本発明は、当該技術分野の上述のニーズへ向けられて、1つの態様において、眼の中の巨大分子の集合体を消失させるか又はその大きさを低下させるための方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる眼科製剤の治療有効量を投与することを含んでなる。極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、ここでヘテロ原子は、好ましくは酸素原子である。電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子の1つと会合することを確実にするのに十分なものである。
【0023】
巨大分子の集合体の生成又は沈着に関連した多くの眼障害があるので、本発明は、加齢関連の黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症、及び緑内障を始めとする、一群の有害な眼状態の予防及び治療に有用性があると理解されよう。本発明はまた、眼において酸化的及び/又はフリーラジカル傷害が関与する有害な眼状態(このうちいくつかは、巨大分子の集合体の生成又は沈着にも関連している)の予防及び治療において本製剤を使用する方法に関する。これらの有害な眼状態には、例えば、角膜、網膜、水晶体、強膜、及び眼の前房及び後房の状態、疾患、又は障害が含まれる。有害な眼状態は、本明細書においてその用語が使用されるように、高齢者に頻繁に見られる「正常な」状態(例、視力及びコントラスト感度の減少)であっても、老化プロセスに関連してもしてなくてもよい病理状態であってもよい。後者の有害な眼状態には、多種多様な眼の障害及び疾患が含まれる。本製剤を使用して予防及び/又は治療することができる老化関連の眼の問題には、制限なしに、混濁化(角膜と水晶体の両方の混濁化)、白内障形成(続発性白内障形成が含まれる)、及び脂質の沈着、視力障害、コントラスト感度の減少、まぶしがり症、眩視、ドライアイ、夜間視力の喪失、瞳孔の狭化、老視、加齢関連の黄斑変性、眼内圧の上昇、緑内障、及び老人環と関連した他の問題が含まれる。「老化関連」は、高齢患者においてより断然頻繁に生じるものとして一般に認められているが、若年者にも起こり得るし、実際に時々起こる状態を意味する。本製剤はまた、粉塵、風、又は紫外線により典型的には引き起こされるが、目の老化に関連した変性疾患の症状でもあり得る、結膜脂肪斑及び翼状片のような眼表面の増殖の治療にも使用することができる。一般には老化関連としてみられないが、本製剤を使用して治療することができる別の有害な状態には、円錐角膜が含まれる。また、本製剤は、有利にも、概して、どの哺乳動物の個体においても、視力を改善するために利用し得ることが強調されるべきである。即ち、本製剤の眼への投与は、患者の年齢又は有害な眼状態の存在にもかかわらず、色及び深度の知覚だけでなく、視力及びコントラスト感度を改善することができる。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、続発性白内障を始めとする、白内障の予防又は治療のための方法、製剤、及びインプラントを提供する。本方法には、上記に定義される製剤、即ち、(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる製剤の眼への投与が含まれ、ここで極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、そしてさらにここで、電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子の少なくとも1つと会合することを確実にするのに十分なものである。
【0025】
別の態様において、以下を含む医薬製剤を提供する:
(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤;
(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤(ここで極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、そしてさらにここで、電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子と会合することを確実にするのに十分なものである);及び
(c)医薬的に許容される水性担体。
【0026】
本眼科製剤は、例えば、溶液剤、懸濁液剤、軟膏剤、ゲル剤、リポソーム分散液剤、コロイド状微粒子懸濁液剤、等として眼への薬物投与に適したどの形態でも、又は眼挿入物において(例えば、任意選択的に生物分解可能な制御放出ポリマーマトリックスにおいて)投与してもよい。重要にも、本製剤の少なくとも1つの成分、そして好ましくは2以上の製剤成分は、多数の状態及び障害を予防又は治療することに有用であるか、又は1より多い作用機序を有する、又はその両方であるという点で「多機能性」である。従って、本製剤は、当該技術分野の重大な問題、即ち、多数の眼障害のある患者を治療するために多数の製剤を使用する時の異なる製剤種及び/又は活性剤の間の交差反応を解消する。追加的に、好ましい態様において、本製剤は、天然に存在する、及び/又は米国食品及び医薬品管理局によりGRAS(「概ね安全とみなされる」)とされている成分だけからなる。
【0027】
本発明はまた、上記に述べたキレート形成剤(例、EDTA)及び/又はメチルスルホニルメタンのような電荷マスキング剤の制御放出用の眼挿入物に関する。この挿入物は、膨潤可能なヒドロゲル形成ポリマーを水性の液体製剤へ取り込むことによって作製し得るような、徐々にではあるが完全に溶けるインプラントであってよい。挿入物は、不溶性であってもよく、この場合、薬剤(複数)は、拡散又は浸透により内部リザバーから外膜を介して放出される。
【0028】
図面の簡単な説明
本特許又は出願のファイルは、少なくとも1つの実施図面をカラーで含有する。本特許又は特許出願公開公報のカラー図面が付いたコピーは、要求と必要料金の支払いに応じて、当該事務局により提供される。
【0029】
図1A、1B、2A、及び2Bは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【0030】
図3A、3B、4A、及び4Bは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【0031】
図5は、実施例14において、製剤3より生じるコントラスト感度改善をプラセボと比較して比較する。
図6は、実施例15の溶液剤A、B、及びCの30分、2時間、及び16時間後の透過を比較する。
【0032】
図7A及び7Bは、実施例16に見られるようなEDTAの浸透を図示する。
図8A及び8Bは、実施例17からの様々な治療の効果を図示する。
図9は、実施例17の治療の機能としてのラット水晶体における透過を図示する。
【0033】
図10は、実施例18に見られるような、様々な治療の細胞生存度に及ぼす効果を図示する。
発明の態様の詳細な説明
特記しないかぎり、本発明は、特定の製剤種、製剤成分、投与方式、等に限定されず、変形が許される。また、本明細書に使用する用語法は、具体的な態様について記載する目的ためだけのものであり、限定することを企図しないことを理解されたい。
【0034】
本明細書と付帯の特許請求の範囲において使用するように、単数形の冠詞「a」、「an」、及び「the」には、文脈が明らかに他のやり方で示さなければ、複数の指示物が含まれる。従って、例えば、「キレート形成剤」への言及には、単数のそのような薬剤だけでなく、2以上の異なるキレート形成剤の組合せ又は混合物も含まれ、「電荷マスキング剤」への言及には、単数の電荷マスキング剤だけでなく、2以上の異なる電荷マスキング剤の組合せ又は混合物が含まれ、「医薬的に許容される担体」への言及には、単一の担体だけでなく、2以上のそのような担体が含まれる、等である。
【0035】
本明細書と以下に続く特許請求の範囲において、いくつかの用語について言及するが、それらは以下の意味を有すると定義されよう:
製剤成分へ言及する場合、使用する用語、例えば、「薬剤」又は「成分」には、特定の分子実体だけでなく、その医薬的に許容される類似体も含まれ、それには、限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、コンジュゲート、活性代謝産物、及び他のそのような誘導体、類似体、及び関連化合物が含まれる。
【0036】
本明細書に使用する用語「治療すること」及び「治療」は、有害な状態、障害、又は疾患に罹患した臨床症状のある個体へ、症状の重症度及び/又は頻度の低下をもたらす、症状及び/又はその根底にある原因を消失させる、及び/又は傷害の改善又は治癒を促進するように、薬剤又は製剤を投与することに関連する。用語「予防すること」及び「予防」は、具体的な有害な状態、障害、又は疾患に罹りやすい臨床的には無症状の個体へ薬剤又は組成物を投与することに関連するので、症状及び/又はその根底にある原因の発生の予防に関する。本明細書において他に示さなければ、明確に、又は含みにより、用語「治療」(又は「治療すること」)を可能な予防へ言及せずに使用するならば、予防も同様に含まれると企図されるので、「老視の治療の方法」には、「老視の予防の方法」が含まれると解釈すべきである。
【0037】
製剤又は製剤成分の「有効量」及び「治療有効量」という用語は、望まれる効果を提供するのに、無毒であるが十分な量の製剤又は成分を意味する。
用語「制御放出」は、薬剤の放出が即座ではない、薬剤含有製剤又はその分画に関連し、即ち、「制御放出」製剤を用いると、投与は、薬剤の吸収プールへの即時放出を生じない。この用語は、「レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」第19版(ペンシルヴェニア州イーストン、Mack Publishing Company, 1995)において定義されるように、「非即時放出」と相互交換可能的に使用される。一般に、本明細書に使用する用語「制御放出」は、「遅延放出」製剤よりむしろ「持続放出」製剤に関連する。用語「持続放出」(「延長放出」と同義)は、慣用の意味において、薬剤の延長された時間の期間にわたる漸次放出をもたらす製剤を意味するために使用される。
【0038】
「医薬的に許容される」又は「眼科学的に許容される」成分は、生物学的にも、他のやり方でも望まれないものではない成分を意味し、即ち、該成分は、望まれない生物学的効果を引き起こすことも、それが含まれる製剤組成物の他の成分のいずれとも有害なやり方で相互反応することもなく、本発明の眼科製剤へ取り込んで、患者の眼へ局所的に投与することができる。用語「医薬的に許容される」を薬理活性のある薬剤以外の成分に関連して使用するとき、該成分は、毒性学的試験や製造試験の必要基準を満たしていること、又は米国食品及び医薬品管理局により作成された「不活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)」に含まれることが含意される。
【0039】
句「式を有する」又は「構造を有する」は、限定的であることを企図せず、用語「含んでなる」が通常使用されるのと同じやり方で使用される。
本明細書に使用する用語「アルキル」は、1〜6の炭素原子を含有する、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、等のような直鎖、分岐鎖、又は環式の飽和炭化水素基を意味する。他に示さなければ、用語「アルキル」には、未置換及び置換のアルキルが含まれ、ここで置換基は、例えば、ハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アルコキシ、アシル、等であってよい。
【0040】
本明細書に使用する用語「アルコキシ」には、単一の末端エーテル連結を介して結合したアルキル基が企図される;即ち、「アルコキシ」基は、−O−アルキルと表してよく、ここでアルキルは、上記に定義される通りである。
【0041】
本明細書に使用されて、他に特定されなければ、用語「アリール」は、単一の芳香族環又は、一緒に縮合、直接的に連結、又は間接的に連結(異なる芳香族環がメチレン又はエチレン部分のような共通の基へ結合しているように)している多数の芳香族環を含有する芳香族の置換基を意味する。好ましいアリール基は、5〜14の炭素原子を含有する。例示のアリール基は、1つの芳香族環又は2つの縮合若しくは連結した芳香族環を含有し、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン、等である。他に示さなければ、用語「アリール」には、未置換及び置換のアリールが含まれ、ここで置換基は、任意選択的に置換される「アルキル」基に関して上記に述べた通りである。
【0042】
用語「アラルキル」は、アリール置換基のあるアルキル基を意味し、ここで「アリール」と「アルキル」は、上記に定義される通りである。好ましいアラルキル基は、6〜14の炭素原子を含有して、特に好ましいアラルキル基は、6〜8の炭素原子を含有する。アラルキル基の例には、制限なしに、ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチル、等が含まれる。
【0043】
用語「アシル」は、式:−(CO)−アルキル、−(CO)−アリール、又は−(CO)−アラルキルを有する置換基を意味し、ここで「アルキル」、「アリール」、及び「アラルキル」は、上記に定義される通りである。
【0044】
用語「ヘテロアルキル」及び「ヘテロアラルキル」は、ヘテロ原子を含有するアルキル及びアラルキル基、即ち、1以上の炭素原子が炭素以外の原子(例えば、窒素、酸素、イオウ、リン、又はケイ素、典型的には、窒素、酸素、又はイオウ)で置き換わっているアルキル及びアラルキル基をそれぞれ意味するために使用される。
【0045】
用語「ペプチジル化合物」には、2以上のアミノ酸を含むあらゆる構造が含まれると企図される。ペプチドの全部又は一部を形成するアミノ酸は、20種の慣用の天然に存在するアミノ酸、即ち、アラニン(A)、シスチン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、及びチロシン(Y)のいずれでもよい。上記アミノ酸のいずれも、例えば、慣用のアミノ酸の異性体又は類似体(例、D−アミノ酸)、非タンパク質アミノ酸、翻訳後修飾アミノ酸、酵素修飾アミノ酸、又はアミノ酸を模倣するように設計された構築体又は構造のような、非慣用アミノ酸に置き換えてよい。本明細書のペプチジル化合物には、タンパク質、オリゴペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、グリコシル化ペプチド、糖タンパク質、等が含まれる。
【0046】
次いで、1つの態様において、眼の中の巨大分子の集合体を消失させるか又はその大きさを低下させるための方法を提供する。この方法は、(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる無菌眼科製剤の治療有効量を患者の眼(複数)へ投与することを含む。極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する、少なくとも1つ、そして好ましくは少なくとも2つのヘテロ原子を含有し、ここでヘテロ原子は、好ましくは酸素原子である。電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の上記ヘテロ原子の少なくとも1つと会合することを確実にするのに十分なものである。本製剤は、眼への薬物投与に適したどの形態でも(例えば、点眼剤又は眼洗液としての投与用の溶液剤又は懸濁液剤として、軟膏剤として、又は結膜、強膜、眼の毛様体扁平部(pars plana)、前房、又は後房に移植し得る眼挿入物において)、眼へ適用してよい。そのような挿入物は、眼表面への製剤の制御放出、典型的には、延長された時間期間にわたる持続放出を提供する。
【0047】
本製剤は、電荷マスキング剤として使用する化合物(例、メチルスルホニルメタン)が製剤の皮膚を通した透過を可能にする浸透エンハンサーとしても役立つ限りにおいて、皮膚を通過する浸透のために、眼の周囲の皮膚へ適用してもよい。
【0048】
本明細書のキレート形成剤として有用な化合物には、二価又は多価の金属カチオンへ配位結合するか又はそれと錯体を形成することにより、そのようなカチオンの金属イオン封鎖剤として役立つあらゆる化合物が含まれる。従って、本明細書の用語「キレート形成剤」には、二価及び多価のリガンド(典型的には、「キレーター」と呼ばれる)だけでなく、金属カチオンへ配位結合するか又はそれと錯体を形成することが可能な一価のリガンドも含まれる。しかしながら、本発明に好ましいキレート形成剤は、ポリ酸、例えば、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、又はポリリン酸の塩基付加塩であり、ポリカルボン酸塩が特に好ましい。キレート形成剤は、概して、製剤の約0.6重量%〜10重量%、好ましくは約1.0重量%〜5.0重量%である。
【0049】
本発明に関連して有用な好適な生体適合性のキレート形成剤には、制限なしに、EDTA、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジメルカプトプロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATPA)、クエン酸のようなモノマーのポリ酸、これらの眼科学的に許容される塩、及び上記のいずれもの組合せが含まれる。他の例示のキレート形成剤には、リン酸塩(phosphates)、例えば、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩が含まれる。
【0050】
EDTAと眼科学的に許容されるEDTA塩が特に好ましく、ここで代表的な眼科学的に許容されるEDTA塩は、典型的には、EDTA二アンモニウム、EDTA二ナトリウム、EDTA二カリウム、EDTA三アンモニウム、EDTA三ナトリウム、EDTA三カリウム、及びEDTA二ナトリウムカルシウムより選択される。
【0051】
以下の表は、本発明に関連して有用な一般的なキレート形成剤のいくつかを、それらが錯体を形成するカチオンのいくつかとともに示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この表におけるカチオンの列挙は、排他的なものとみてはならない。これら薬剤の多くは、どの金属カチオンともある程度は錯体を形成するものである。
本製剤には、少なくとも1つの極性基を含有して約250未満、好ましくは約125未満の分子量を有する電荷マスキング剤も含まれ、ここで極性基は、約3.00より大きいポーリング電気陰性度を有する少なくとも2つのヘテロ原子、好ましくは酸素原子を含有する。電荷マスキング剤は、一般に、式(I):
【0054】
【化1】
【0055】
[式中、極性基は、中央の−Q(O)2−部分により表され、Qは、S又はPであり、R1とR2は、独立して、C1−C6アルキル(好ましくはC1−C3アルキル)、C1−C6へテロアルキル(好ましくはC1−C3ヘテロアルキル)、C6−C14アラルキル(好ましくはC6−C8アラルキル)、及びC2−C12へテロアラルキル(好ましくはC4−C10へテロアラルキル)より選択される]
の構造を有する。最適には、メチルスルホニルメタンにあるように、QはSであり、R1とR2は、いずれもC1−C3アルキル、例えばメチルである。
【0056】
本発明の代表的な態様において、製剤は、テトラカルボン酸の塩基付加塩の形態をしたキレート形成剤と、式(I)[式中、R1とR2は、独立して、C1−C3アルキル、C1−C3ヘテロアルキル、C6−C8アラルキル、及びC4−C10へテロアラルキルより選択され、Qは、S又はPである]の構造を有する電荷マスキング剤を含み、そして電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、2:1〜12:1の範囲に、好ましくは4:1〜10:1の範囲にあり、そして最適には約8:1である。
【0057】
本製剤には、追加の薬剤、例えば、AGE破壊剤(breaker)のような既知の抗AGE剤も含めることができる。当該技術分野で認められているように、AGE破壊剤は、糖化結合を切断して、それによりすでに形成されたAGEの解離を促進するように作用する。好適なAGE破壊剤には、制限なしに、L−カルノシン、3−フェナシル−4,5−ジメチルチアゾリニウムクロリド(PTC)、N−フェナシルチアゾリニウムブロミド(PTB)、及び3−フェナシル−4,5−ジメチルチアゾリニウムブロミド(ALT−711,Alteon)が含まれる。抗AGE剤は、糖化阻害剤とAGE形成阻害剤より選択してもよい。代表的なそのような薬剤には、アミノグアニジン、4−(2,4,6−トリクロロフェニルウレイド)フェノキシ−イソ酪酸、4−[(3,4−ジクロロフェニルメチル)2−クロロ−フェニルウレイド]フェノキシイソ酪酸、N,N’−ビス(2−クロロ−4−カルボキシフェニル)ホルムアミジン、及びこれらの組合せが含まれる。
【0058】
本発明での1つの代表的な抗AGE剤は、L−カルノシン、天然のヒスチジン含有ジペプチドである。L−カルノシンはまた、天然に存在する抗酸化薬であるので、本発明において多数の機能を提供する。好ましい態様において、L−カルノシンは、存在すれば、製剤のほぼ0.2重量%〜5.0重量%である。
【0059】
本製剤には、微小循環エンハンサー、即ち、毛細血管内での血流を高めることに役立つ薬剤も含めることができる。微小循環エンハンサーは、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、例えば、(I)型PDE阻害剤であり得る。そのような化合物は、当業者に理解されるように、サイクリックAMP(cAMP)の細胞内レベルを上昇させるように作用する。好ましい微小循環エンハンサーは、アポビンカミン−22−酸エチルとも呼ばれる、ビンポセチンである。ビンポセチンは、ビンカミン、ビンカアルカロイドの合成誘導体であり、その抗酸化特性と細胞中の過剰なカルシウム蓄積に抗する保護作用の故に、本発明に特に好ましい。ビンカミンは、ビンポセチン以外のビンカアルカロイドと同様に、本発明での微小循環エンハンサーとしても有用である。好ましくは、存在するどの微小循環エンハンサー(例えば、ビンポセチン)も、製剤の約0.01重量%〜約0.2重量%、好ましくは約0.02重量%〜約0.1重量%の範囲である。
【0060】
本製剤中の他の任意選択の添加剤には、二次エンハンサー、即ち、1以上の追加の浸透エンハンサーが含まれる。例えば、本発明の製剤は、追加のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有することができる。DMSOを二次エンハンサーとして加えるならば、その量は、好ましくは製剤の約1.0重量%〜2.0重量%の範囲にあり、MSMのDMSOに対する重量比は、典型的には、約1:1〜約50:1の範囲にある。
【0061】
少なくとも一部が水性である、本製剤へ取り込むための他の可能な添加剤には、制限なしに、濃化剤、等張剤、緩衝剤、及び保存剤が含まれるが、但し、そのようなどの賦形剤も、製剤の他の成分のいずれとも有害なやり方で相互作用をしないことが条件である。また注目すべきは、選択されるキレート形成剤(そして好ましいAGE破壊剤)それ自体が保存剤として役立つという事実に照らせば、保存剤が必ずしも必要でないことである。好適な濃化剤は、眼科製剤の技術分野の当業者に知られるものであり、例を挙げれば、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース(HPMC)、及びナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)のようなセルロースポリマーと、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒアルロン酸、又はその塩(例、ヒアルロン酸ナトリウム)のような他の膨潤可能な親水性ポリマー、及び一般的には「カルボマー」と呼ばれる(そしてB.F.GoodrichよりCarbopol(登録商標)ポリマーとして市販されている)架橋連結アクリル酸ポリマーが含まれる。あらゆる濃化剤の好ましい量は、約15cps〜25cpsの範囲の粘度が提供されるようなものである(上記範囲の粘度を有する溶液は、一般に、眼製剤の快適さと保持の両方に最適とみなされているので)。眼科製剤に一般的に使用されるどの好適な等張剤及び緩衝剤も使用してよいが、但し、溶液の浸透圧が涙液のそれより2〜3%より多く逸脱しないこと、そして製剤のpHが約6.5〜約8.0の範囲に、好ましくは約6.8〜約7.8の範囲に、そして最適には約7.4のpHに維持されることが条件である。好ましい緩衝剤には、重炭酸ナトリウム及びカリウムのような炭酸塩が含まれる。
【0062】
本発明の製剤には、製剤の具体的な種類に依存する、医薬的に許容される眼科用の担体又は運搬体も含まれる。例えば、本発明の製剤は、眼科用の溶液剤又は懸濁液剤として提供され得るが、この場合、担体は、少なくとも部分的に水性である。理想的には、点眼剤として投与され得る眼科溶液剤は、水溶液である。本製剤は、軟膏剤でもよく、この場合、製剤的に許容される担体は、軟膏基剤からなる。ここで好ましい軟膏基剤は、体温に近い融点又は軟化点を有して、眼科調製物に一般に使用されるどの軟膏基剤も有利に利用してよい。一般的な軟膏基剤には、ワセリンとワセリン及び鉱油の混合物が含まれる。
【0063】
本発明の製剤は、ヒドロゲル剤、分散液剤、又はコロイド状懸濁液剤として調製してよい。ヒドロゲル剤は、好適な濃化剤として上記に示したような膨潤可能なゲル形成ポリマー(即ち、MC、HEC、HPC、HPMC、NaCMC、PVA、又はヒアルロン酸又はその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)の取込みにより生成するが、但し、当該技術分野で「ヒドロゲル剤」と呼ばれる製剤は、典型的には、「濃化」溶液剤又は懸濁液剤と呼ばれる製剤より高い粘度を有する。そのような予め生成するヒドロゲル剤とは対照的に、眼への適用に続いてその場でヒドロゲルを生成するように製剤を調製してもよい。そのようなゲル剤は、室温では液体であるが、体液との接触状態に置かれるときのように、より高い温度ではゲル化する(それにより、「熱可逆性」ヒドロゲルと呼ばれる)。この特性を付与する生体適合性ポリマーには、アクリル酸ポリマー及び共重合体、N−イソプロピルアクリルアミド誘導体、並びに、酸化エチレン及び酸化プロピレンのABAブロック共重合体(慣用的には「ポロキサマー」と呼ばれて、BASF−WyandotteよりPluronic(登録商標)として市販されている)が含まれる。本製剤は、分散液剤又はコロイド状懸濁液剤の形態で調製してもよい。好ましい分散液剤は、リポソーム分散液剤であり、この場合、製剤は、「リポソーム」、つまり交互の水性コンパートメントと脂質の二重層からなる微視的な小胞の内部に包まれる。コロイド状分散液剤は、一般に、微粒子(即ち、ミクロスフェア、ナノスフェア、マイクロカプセル、又はナノカプセル)より生成され、ここでミクロスフェアとナノスフェアは、一般に、製剤が捕捉、吸着、又は他のやり方で含まれるポリマーマトリックスのモノリシック粒子であるのに対し、マイクロカプセルとナノカプセルでは、製剤が実際に被包化される。これら微粒子の大きさの上限は、約5μm〜約10μmである。
【0064】
本製剤はまた、結膜、強膜、又は眼の毛様体扁平部へ、又は眼の前房若しくは後房への挿入物の移植に続いて、一般的には約12時間〜60日間、そして可能には12ヶ月以上もの範囲の延長された時間期間にわたる製剤の制御放出をもたらす、無菌の眼挿入物へ取り込んでもよい。眼挿入物の1つの種類は、拡散及び/又はマトリックス分解により製剤を眼へ漸次放出する、モノリシックポリマーマトリックスの形態のインプラントである。そのようなインプラントでは、挿入物の除去が不要となるように、ポリマーが完全に溶解するか又は生物分解可能である(即ち、眼において物理的に又は酵素的に侵食される)ことが好ましい。これらの種類の挿入物は当該技術分野でよく知られていて、典型的には、コラーゲン、ポリビニルアルコール、又はセルロースポリマーのような、水膨潤可能でゲル形成性のポリマーからなる。本製剤を送達するために使用し得る別の種類の挿入物は、製剤のインプラントから外への漸次拡散を可能にする、浸透可能ポリマー膜内で囲まれた中央リザバーに製剤が含まれる拡散性インプラントである。浸透挿入物、即ち、眼への適用とその後の涙液の吸収に続くインプラント内部での浸透圧の増加の結果として製剤が放出されるインプラントも使用してよい。
【0065】
本発明の方法及び製剤は、巨大分子の集合体の生成及び/又は沈着に関連した多種多様な状態を治療することに有用である。数多くの医学的病理は、結晶性集合体、原線維集合体、及び非結晶性集合体が含まれる巨大分子の集合体の in vivo 形成又は沈着により引き起こされるか又は増悪する。選択されるオリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質が含まれるある種のペプチジル化合物は、様々な医学的状態、障害、及び疾患に関連する結晶及び原線維を形成することが知られている。例えば、アミロイドペプチド、特にβ−アミロイドは、アルツハイマー病と関連する細胞外及び脳循環系の老人斑を含む、秩序だった原線維集合体を形成することが知られている。Han et al. (1995),「中核のアルツハイマーペプチド、NACはβ−アミロイドの種を供給するか又はそれにより種にされるアミロイド原線維を形成する:NACは、神経変性疾患の共通の引金又は標的なのか?(The Core Alzheimer's Peptide NAC Forms Amyloid Fibrils which Seed and are Seeded by β-Amyloid: Is NAC a Common Trigger or Target in Neurodegenerative Disease?)」Chemistry and Biology 2: 163-169; Serpell et al. (2000),「家族性アルツハイマー病のAβの分子構造(Molecular Structure of a Familiar Alzheimer's Aβ)」Biochemistry 13269-13275; Jarrett and Lansbury (1992),「アミロイド原線維形成には、化学的に識別可能な核形成現象を必要とする:細菌タンパク質、OsmB由来のアミロイド発生配列の研究(Amyloid Fibril Formation Requires a Chemically Discriminating Nucleation Event: Studies of an Amyloidogenic Sequence from the Bacterial Protein OsmB)」Biochemistry 31(49): 12345-12352; 及び Jarrett et al. (1993),「βアミロイドタンパク質のカルボキシ末端は、アミロイド形成の種入れに必須である:アルツハイマー病の病理発生への意義(The Carboxy Terminus of the Beta Amyloid Protein is Critical for the Seeding of Amyloid Formation: Implications for the Pathogenesis of Alzheimer's Disease)」Biochemistry J. 32: 4639-4679 を参照のこと。プリオン病、例えば、伝染性海綿様脳症として知られる一群の疾患も、脳組織における異常タンパク質の沈着を特徴として、ここで沈着物は、プリオンタンパク質(PrP)より主に形成される原線維アミロイド斑からなる。そのような疾患には、動物のスクラピー伝染性ミンク脳症、ミュールジカ及びヘラジカの慢性消耗性疾患、ネコ海綿様脳症、及びウシ海綿様脳症(「狂牛病」)と、ヒトのクールー、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー病、及び致死性家族性不眠症が含まれる。15マーのアミノ酸配列、PrP96−111は、アミロイド線維形成の種を供給することによって、プリオン形成を in vivo で始動させることの原因になると提唱されている。Come et al. (1993),「プリオン病におけるアミロイド形成の動的モデル:種入れの重要性(A Kinetic Model for Amyloid Formation in the Prion Diseases: Importance of Seeding)」Proc Natl Acad Sc. USA 90: 5959-5963 を参照のこと。マルタン病と関連しているフィブリリンは、有害な医学的状態を引き起こす秩序だった原線維構造を形成するタンパク質の別の例である。様々なコラーゲンより生成される原線維プラークも、ある種の医学的病理、例えば心疾患とコラーゲン線維の腎糸球体症と関連している: Rossi et al. (2001),「正常な左心室と高血圧の左心室肥大及び慢性シャーガス病モノ心臓炎における結合組織骨格(Connective Tissue Skeleton in the Normal Left Ventricle and Hypertensive Left Ventricle Hypertrophy and Chronic Chagasic Monocarditis)」MedSci Mon 7: 820-832; Yasuda et al. (1999),「コラーゲン線維症の腎糸球体症:全身性疾患(Collagenofibrotic Glomerulopathy: A Syetemic Disease)」Am J Kidney Dis 33: 123-127 を参照のこと。
【0066】
他の同様に問題のある生体分子には、制限なしに、その結晶化が嚢胞性線維症と関連する嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(「CFTR」)タンパク質(Berger at al. (2000),「ATPのアデニン環との相互作用における嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子とHisPの違い(Differences Between Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator and HisP in the Interaction with Adenine Ring of ATP)」J Biol Chem 275: 29407-29412 を参照のこと);喘息、好酸球性骨肉芽腫、好酸球性肺炎、及び顆粒球性白血病と関連したシャルコー・ライデン結晶を生成するホスホリパーゼ(Reginato and Kumik (1989),「腎疾患及び関節炎に関連するシュウ酸カルシウムと他の結晶(Calcium Oxalate and Other Crystals Associated with Kidney Diseases and Arthritis)」Semin Arthritis Rheum 18: 198-224 を参照のこと);結晶沈着物を骨髄(くる病や滑膜炎に関連する)、尿細管及び胃腸管(シスチン尿症に関連する)、並びに、腎臓、眼、及び甲状腺が含まれる多種多様な他の身体組織(シスチン蓄積症、この疾患の重症型、腎症シスチン蓄積症、又はファンコーニ症候群が含まれる)に生成するシスチン;及びヘモグロビン、ヘマトイジン、クリオグロブリン、及び免疫グロブリン(関節血症や他の関節障害、クリオグロブリン血症、及び多発性骨髄腫に関連する)が含まれる。「痛風、尿酸過剰血症、及び他の血症関連関節血症(Gout, Hyperuricemia, and Other Crystal-Associated Arthropathies)」Smyth et al. 監修(ニューヨーク:マーセル・デッカー社、1999)、15-28頁中、Gatter and Owen, Jr.,「2.結晶同定と関節液分析(Crystal Identification and Joint Fluid Analysis)」;及び Regionato and Kurnik, 同上、を参照のこと。
【0067】
脂質、特にステロールとステロールエステルは、病原性の沈着物を in vivo で生成する生体分子の追加群を表す。アテローム硬化斑(アテローマ)とコレステロール塞栓は、主にコレステロール一水和物と結晶性コレステリルエステル(コレステリルパルミテート、オレエート、リノリエート、パルミトリエート、リノレネート、ミリステートが含まれる)からなる。North et al. (1978),「アテローム硬化斑脂質におけるコレステロール一水和物結晶の溶解(The Dissolution of Cholesterol Monohydrate Crystals in Atherosclerotic Plaque Lipids)」Atherosclerosis 30: 211-217;Burks and Engelman (1981),「中性子散乱により決定した液晶中間相におけるコレステリルミリステートのコンホメーション(Cholesteryl Myristate Conformation in Liquid Crystalline Mesophases Determined by Neutron Scattering)」Proc Natl Acad Sci USA 78: 6863-6867;及び Peng et al. (December 2000),「ヒト及びウサギのアテローム硬化斑におけるコレステリルエステルのマジック・アングルスピニング13C−NMRによる定量(Quantification of Cholesteryl Esters in Human and Rabbit Atherosclerotic Plaques by Magic-Angle Spinning 13C-NMR)」Atherscler Thromb Vasc Bioi, pp. 2682-2688 を参照のこと。胆石は、胆汁におけるコレステロール一水和物の結晶化より通常生じるので、胆石の生成もコレステロール結晶化と関連している。Dowling (2000),「概説:胆石の病因論(Review: Pathogenesis of Gallstones)」Aliment Pharmacol Ther 14 (Suppl. 2): 39-46 を参照のこと
。コレステロール結晶は、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、骨嚢胞、骨肉芽腫症(エルドハイム・チェスター病)、黄色腫、強皮症、及びパラプロテイン血症が含まれる、一群の追加の医学病理と関連している。「痛風、尿酸過剰血症、及び他の血症関連関節血症(Gout, Hyperuricemia, and Other Crystal-Associated Arthropathies)」、同上、中 Regionato and Falasca,「24.シュウ酸カルシウムと他の様々な結晶関節症(Calcium Oxalate and Other Miscellaneous Crystal Arthopathies)」を参照のこと。上記の参考文献では、他の種類の脂質、例えば、脂肪酸の結晶性沈着物も同様に病原性であると提唱された。Regionato and Kurnik, 同上、を参照のこと。コレステロール結晶は、過熟性白内障においても観察されている(例えば、Brooks, A. M. V. et al. (1994),「過熟性白血病における真珠光粒子の結晶性(Crystalline nature of the iridescent particles in hypermature cataracts)」Br J Ophth 78: 581-582;Knapp, H. C. (1937),「続発性緑内障を引き起こす、過熟性白内障における水晶体嚢の自発的な破裂(Spontaneous rupture of the lens capsule in hypermature cataract causing secondary glaucoma)」Am J Ophthalmol 20: 820-821)。
【0068】
本発明の方法及び製剤は、上記に考察した分子集合体の生成又は沈着にその多くが関わる、角膜、網膜、水晶体、強膜、並びに眼の前房及び後房の状態、疾患、又は障害を始めとする、一群の有害な眼状態を治療することにも有用である。特に興味深いのは、老化プロセス及び/又は眼への酸化的及びフリーラジカル傷害と関連する有害な眼状態である。例を挙げると、制限なしに、本製剤は、一般に、老化と関連している以下の有害な眼状態を治療するのに有用である:水晶体の硬化、混濁化、柔軟性の低下、及び黄変;角膜の黄変及び混濁化;老視;眼内圧亢進及び緑内障をもたらす小柱の凝集;硝子体液中の浮遊物の増加;虹彩の硬直化とその拡張範囲の低下;加齢関連の黄斑変性;網膜動脈におけるアテローム硬化性及び他の脂質沈着物の生成;ドライアイ症候群;続発性白内障を始めとする白内障の発症;まぶしがり症、眩視や網膜の桿体及び錐状体の感受性及び明順応能力の低下に伴う諸問題;老人環;瞳孔の狭化;視覚コントラスト、色知覚、深度知覚の減少を始めとする視覚の喪失;夜間視力の喪失;水晶体調節の低下;黄斑浮腫;黄斑の瘢痕形成;及び帯状角膜症。一般に、老化個体は、これらの状態の1より多くに罹患していて、通常、2以上の異なる医薬品の自己投与を必要とする。本発明の方法及び製剤は、多数の状態を治療することに有用であるので、追加の製品を必要とせず、それ故に、多数の医薬品を使用することの不便さや内在リスクが解消される。本製剤を使用して治療することができる追加の有害な眼状態には、円錐角膜と結膜脂肪斑及び翼状片のような眼表面の増殖が含まれる。また、本製剤は、どの哺乳動物の個体においても、その個体が有害な視覚状態に罹患しているかどうかに関わらず、コントラスト感度、色知覚、及び深度知覚を始めとする視覚を改善するために使用し得ることが強調されるべきである。
【0069】
本発明はまた、本発明の製剤又はその成分の制御放出のための眼挿入物に関する。これらの眼挿入物は、強膜と前房及び後房を始めとする、眼のどの領域へ移植してもよい。この挿入物は、膨潤可能なヒドロゲル形成ポリマーを本明細書の他所に記載の水性液体製剤へ取り込むことによって作製し得るような、徐々にではあるが完全に溶けるインプラントであってよい。挿入物は、不溶性であってもよく、この場合、薬剤は、本明細書の他所にも記載のように、拡散又は浸透により内部リザバーから外膜へ放出される。
【0070】
実施例1
本発明の点眼製剤、製剤1を以下のように調製した:高純度脱イオン(DI)水(500ml)を0.2マイクロメートルフィルターにより濾過した。この濾過済みDI水へMSM(27g)、EDTA(13g)、及びL−カルノシン(5g)を加えて、溶解を示す可視透過性に達するまで混合した。この混合物を、滴瓶キャップ付き10mlボトルへそれぞれ注いだ。この点眼剤は、重量百分率ベースで以下の組成を有した:
【0071】
【表2】
【0072】
実施例2
製剤1について、4名の被検者(いずれも男性、52〜84歳、様々な人種)を治療する場合の効果を評価した。被検者1は、50歳代であり、視覚の問題も、眼の検出可能な異常も有さなかった。被検者2及び3は、50歳代であり、両眼の角膜辺縁の周りに顕著な老人環を有したが、他の有害な眼状態はなかった(老人環は、典型的には、美容上の汚点とみなされている)。被検者4は、80歳代であり、白内障とザルツマン結節に罹患していて、極端なまぶしがり症と眩視の問題が報告されていた。この被検者は、眩視と視力喪失のために、新聞、本、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことが非常に困難であった。
【0073】
これらの被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。すべての被検者について、眼科医が12ヶ月の間とその後検査した。副作用は、本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されず、眼科医により観察されなかった。4名の被検者すべてが本試験を完了した。
【0074】
すべての被検者が試験に入って4週目に主観的な変化に気づいた。この段階で被検者により報告された変化には、輝きの増加、視覚の明瞭性の改善、及び眩視の低下(特に、被検者4)が含まれる。
【0075】
8週後、以下の変化が注目された:4名すべての被検者が明瞭性とコントラストに関する視覚の著明改善を報告し、昼間色が輝きを増したようであることを示した。被検者1の視界は、20/25(矯正後)から20/20(同じ矯正)へよりよく改善し、彼の眼は、青味を深めた。被検者2及び3は、老人環の有意な低下を明示した。
【0076】
被検者4は、視力が元は最高の矯正でも左眼で20/400、右眼で20/200であり、急性まぶしがり症と眩視を有していた。眩視とまぶしがり症が抑制され、本被検者は、再び、新聞、本、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことを始めた。右眼の視力は、20/200(矯正)から20/60(ピンホール)(同じ矯正)へ有意に改善した。左眼の視力も、20/400から20/200(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0077】
16週後、以下の変化が注目された:すべての被検者で、夜間視力が含まれる視力改善の継続と、コントラスト感度の改善、色知覚の継続改善が報告された。被検者1の視界は、20/20(矯正後)から20/15(同じ矯正)へ改善し続けた。被検者2及び3は、老人環の低下を明示し続けた。
【0078】
被検者4は、眩視とまぶしがり症のさらなる低下と、本、新聞、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことの容易さにおけるさらなる改善を報告した。被検者4はまた、夜間の眩視が消失したことを報告した。この被検者は、もはや昼間でも快適で、黒眼鏡の必要はなく、眩視の重篤な問題を患ってもいなかった。右眼の視力は、20/60(ピンホール)から20/50(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/200から20/160(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0079】
8ヶ月後、被検者4の右眼の視力は、20/50(ピンホール)から20/40(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/160から20/100(同じ矯正)へ改善した。左眼の暗点が消散しはじめて、彼は、かつての暗点を通してぼんやりと読むことができた。この時点で、彼のコントラスト感度も測定した。彼の白内障は、4+(0〜4の尺度、4が最高)と測定された。中央の黄斑瘢痕は、眼科医には、光路の不鮮明さのためにほとんど見えなかった。10ヶ月後、被検者1の視力は、20/15から20/10(同じ矯正)へさらに改善した。
【0080】
さらに2ヶ月後、即ち、全12ヶ月の後で、被検者4の視力は、改善し続けた。この被検者は、今や、本、新聞、コンピュータ画面を何ら問題なく読むことができた。この被検者はまた、白内障の改善も示した(0〜4尺度で、4+から3〜4+へ向上した)。光路の明瞭性が十分に改善したので、眼科医には、黄斑の瘢痕が明瞭に見えた。コントラスト感度では、40%から100%への改善があった。スネレン視力では、彼は、右眼が20/40から20/30(ピンホール)へ、そして左眼が20/100〜20/80へ向上した。
【0081】
実施例3
本発明の第二の点眼製剤、製剤2を以下のように調製した:高純度脱イオン(DI)水(500ml)を0.2マイクロメートルフィルターにより濾過した。この濾過済みDI水へMSM(13.5g)、EDTA(13g)、及びL−カルノシン(5.0g)を加えて、溶解を示す可視透過性に達するまで混合した。この混合物を、それぞれ滴瓶フタのある10mlボトルへ注いだ。この点眼剤の組成は、重量百分率ベースで以下の成分を有した:
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4
実施例2に記載の実験に続いて、やや弱目の点眼製剤、製剤2(実施例3の記載のように調製)を使用して、詳細なコントロール追跡試験を行った。プラセボ点眼剤も調製して投与した。プラセボ点眼剤は、緩衝化等張水溶液(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムを保存剤としての0.1重量%ソルビン酸及び0.025重量% EDTA二ナトリウムとともに含有する)の形態の市販の無菌生理食塩水溶液を含んだ。
【0084】
本試験は、1つの陽性対照を除けば二重盲検であり、患者も眼科医も、製剤の点眼液が与えられたのか生理食塩水溶液が与えられたのかを知らなかった。患者を無作為化して、試験製剤又は生理食塩水のいずれかを与えた。
【0085】
本試験には、5名の被検者が関わり、うち3名は、製剤2の点眼剤を与えて、1名の被検者にはプラセボ点眼剤を与えた。さらに、1名の被検者には、製剤1のより高い強度の点眼剤を与えた。それぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)を、1日2〜4回、8週にわたる期間の間投与した。点眼剤は各被検者の両目へ投与した。試験の参加者は、多くの人種であり、女性20%、男性80%であった。
【0086】
眼科医によるベースラインと続行の検査には、自動屈折、角膜トポグラフィー、外面写真、波面写真、遠距離及び14インチでの眼鏡矯正視力、Vision Sciences Research Corporation(カリフォルニア州サンレイモン)Functional Acuity Contrast Test(FACT)チャートを使用するコントラスト感度検査、瞳孔検査及び瞳孔サイズ測定、細隙灯検査、眼内圧測定、及び眼底拡張検査が含まれた。
【0087】
8週後、被検者を再び検査した。各被検者のコントラスト感度の結果を表1に示し、すべての結果を表2に要約する。
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
製剤1及び製剤2で治療した被検者は、角膜の滑らかさ及び規則性の改善、調節/焦点合わせ能力の改善、より均一で安定した涙膜、並びに、角膜及び水晶体の黄変の減少を始めとする、きわめて有意な改善をいずれも示した。プラセボを与えた被検者は、有意な変化を何も明示しなかった。すべての被検者で、遠くの道路標識、より輝いて鮮明な色を見る能力の改善と夜間視力の改善が報告された。
【0091】
実施例5
製剤1について、46歳の男性被検者において効果を評価した。治療前、被検者には、重篤な視覚上の問題も眼の異常もなかったが、彼は、両眼の屈折誤差を矯正するために二焦点眼鏡を必要とした。
【0092】
被検者は、無関係の眼科医が、治療の前と8週の治療に続いて再び検査した。検査には、以下が含まれた。すなわち、遠視(20フィート)及び近視(14インチ)についてのスネレン視力検査、自動屈折、瞳孔拡張(瞳孔計、最大暗順応瞳孔サイズ)、細隙灯検査、自動角膜トポグラフィーマッピング、コントラスト感度(機能性視力コントラスト検査)、自動波面異常マッピング、及び前房の写真である。
【0093】
治療は、それぞれの眼に1滴(ほぼ0.04mL)の製剤1を1日2〜4回、8週間、局所点滴注入することであった。この治療の結果は、以下の通りであった:
点眼剤投与時の一過性のわずかな眼刺激以外に、何の刺激、発赤、疼痛も、他の有害な効果も眼科医により観察されず、被検者により報告されなかった。
【0094】
スネレン視力:同一の屈折矯正を使用すると、遠視力は、右眼で20/25+1から20/20へ、左眼で20/20−2から20/20へ改善した。近視は、両眼が20/50で変わらなかった。
【0095】
自動屈折:右眼は不変であった:球面−3.75;乱視+2.5(24度の軸)。左眼は、軽度改善を示した:球面−4.00から−3.75へ減少した;乱視は、+3.50(175度)から+3.25(179度)へ減少した。
【0096】
瞳孔拡張:両眼が5.0から6.0mmへ改善した。
細隙灯検査:網膜は不変のように見えて、いずれの検査の間も白内障を観察しなかった。
【0097】
角膜トポグラフィー:両眼で角膜の滑らかさと規則性の改善を観察した。眼科医は、この改善が涙膜の均一化及び安定化による可能性があることに注目した。
コントラスト感度:測定値を表3に示す。
【0098】
【表6】
【0099】
上記のデータは、コントラスト感度の一貫した有意改善を示す。
自動波面マッピング:右眼では、球面異常はほとんど不変であった(+0.15660から+0.15995)。網膜のイメージ形成は、60x70から45x70分の弧へ改善し、これは25%小さいイメージ形成を表す。左眼では、球面異常が+0.14512から+0.09509へ減少して、34.4%の改善を表した。網膜のイメージ形成は、推定20%小さいイメージで改善した。
【0100】
前房の写真、図1A(右眼、治療前)、図1B(右眼、治療後)、図2A(左眼、治療前)、及び図2B(左眼、治療後):虹彩の色は、より深い青へ変化した。この変化の度合いは、「衝撃的」と報告された。この変化は、おそらくは、角膜の黄変の減少によるものであった。
【0101】
さらに、被検者は、治療の後で、度が低い処方眼鏡へ切り換えて、もはや二焦点眼鏡を必要としないと報告した。彼は、以下の所見を述べた:「この点眼剤を約8週間使ってきて、視界は著しく改善しました。種々の色をより鮮明に見ることができます。これまでの二焦点眼鏡を昔の度の低い非焦点眼鏡に換えました。遠くをずっとよく見ることができて、読書用の眼鏡を必要としません。私の眼は、本来の眼の色のようなダークブルーになって、夜間視力が改善しました」。
【0102】
実施例6
製剤1について、60歳の男性被検者において効果を評価した。治療前、被検者には、両眼の屈折誤差以外は、重篤な視覚上の問題も眼の異常もなかった。
【0103】
被検者は、無関係の眼科医が、治療の前と7週の治療に続いて再び検査した。検査には、以下が含まれた:遠視(20フィート)及び近視(14インチ)についてのスネレン視力検査、自動屈折、瞳孔拡張(瞳孔計、最大暗順応瞳孔サイズ)、細隙灯検査、自動角膜トポグラフィーマッピング、コントラスト感度(機能性視力コントラスト検査)、自動波面異常マッピング、及び前房の写真。
【0104】
治療は、それぞれの眼に1滴(ほぼ0.04mL)の製剤1を1日2〜4回、7週間、局所点滴注入することであった。この治療の結果は、以下の通りであった:
点眼剤投与時の一過性のわずかな眼刺激以外に、何の刺激、発赤、疼痛も、他の有害な効果も眼科医により観察されず、被検者により報告されなかった。
【0105】
スネレン視力:同一の屈折矯正を使用すると(意図せずして、左眼では矯正不足であった)、遠視力は、右眼が20/25で不変のままであり、左眼で20/40−2から20/40へ改善した。近視は、右眼で20/70から20/100へ低下して(距離への過剰矯正のためらしい)、左眼で20/40−2から20/25へ改善した。
【0106】
自動屈折:右眼は不変の球面測定値(−6.00)であり、乱視がわずかに改善した(115度で+0.75から113度で+0.50)。左眼は、わずかな改善を示した:球面が−8.25から−8.00へ向上し;乱視は、84度で+1.00から82度で+1.00と不変であった。
【0107】
瞳孔拡張:右眼は4.0から4.5mmへ改善し、左眼は、4.0mmで不変であった。
細隙灯検査:網膜は不変のように見えて、いずれの検査の間でもわずかな白内障を観察した。
【0108】
角膜トポグラフィー:両眼で角膜の滑らかさと規則性の改善を観察した。眼科医は、この改善が涙膜の均一化及び安定化による可能性があることに注目した。
コントラスト感度:測定値を表4に示す。
【0109】
【表7】
【0110】
上記のデータは、コントラスト感度の一貫した有意改善を示す。
自動波面マッピング:右眼では、球面異常が+0.01367から+0.00425へ減少した(69%の改善)。網膜のイメージ形成は、80x80から70x65分の弧へ改善し、これは28.9%小さいイメージ形成を表す。左眼では、球面異常が+0.04687から−0.00494へ減少して、>100%の改善を表した。網膜のイメージ形成は、150x150から100x100分の弧へ改善し、これは33%小さいイメージ形成を表す。眼科医は、二回目の検査でこう述べた:「球面異常全体は、60歳の人の眼よりも若い健常な眼のそれにより近いものである」。
【0111】
前房の写真、図3A(右眼、治療前)、図3B(右眼、治療後)、図4A(左眼、治療前)、及び図4B(左眼、治療後):観察されたのは、水晶体混濁の明らかな減少、結晶性水晶体の黄変の低下、及び角膜澄明性の改善である。
【0112】
さらに、被検者は、こう述べた:「この点眼剤を約7週間使ってきました。以前は220ヤードでほとんど見えなかったゴルフボールが、今では300ヤードで見ることができます。視力は、特に遠くの道路標識を視るときに、格段と改善しました。種々の色がより明るく、鮮明に見えます」。
【0113】
実施例7
製剤1の成分として投与したときのEDTAの目での薬物動態挙動をウサギにおいて5日間にわたり評価した。本試験には、体重がそれぞれほぼ2.5〜3kgである2匹の健常な雄性ウサギを使用した。
【0114】
試験の1日目、1滴の製剤1を両方のウサギの各眼(全部で4つの眼)に局所点滴注入した。この試験の経過の間、追加の点眼剤は投与しなかった。眼房水の試料を(以下の表に示すように)投与後15分、30分、1時間、4時間、3日、及び5日目に抽出した。4つの眼すべてから投与後5日目に硝子体液を抽出した。眼房水と硝子体液のすべての試料においてEDTAの濃度をHPLC分析によって測定した。
【0115】
試験の結果を表5に要約する。
【0116】
【表8】
【0117】
実施例1〜7は、多機能剤のMSM及びEDTAを含み、L−カルノシンAGE破壊剤を添加した局所点眼剤が昼間視力と夜間視力の両方の質を有意に改善し、コントラスト感度を大いに改善し、瞳孔拡張を改善し、より均一で安定した涙膜を産生し、老人環を抑制して、眩視とまぶしがり症に関連した不快感を大いに抑制したことを示す。有害な病理学的変化や視力の低下は観察されなかった。
【0118】
実施例8
以下の in vivo 実験では、浸透亢進性の浸透剤としてのMSMとともに投与されるときのEDTAの眼での薬物動態挙動をウサギにおいて5日の期間にわたり評価した。本試験には、体重がそれぞれほぼ2.5〜3Kgである2匹の健常な雄性ウサギを使用した。
【0119】
本発明の点眼製剤は、以下のように調製した:高純度脱イオン(DI)水(500ml)を0.2ミクロンフィルターにより濾過した。この濾過済みDI水へMSM(27g)、EDTA(13g)、及びL−カルノシン(5g)を加えて、溶解を示す可視透過性に達するまで混合した。この混合物を、それぞれ滴瓶フタのある10mlボトルへ注いだ。この点眼剤は、重量百分率ベースで以下の組成を有した:
【0120】
【表9】
【0121】
試験の1日目、1滴の製剤1を両方のウサギの各眼(全部で4つの眼)に局所点滴注入した。この試験の経過の間、追加の点眼剤は投与しなかった。眼房水の試料を(以下の表に示すように)投与後15分、30分、1時間、4時間、3日、及び5日目に抽出した。4つの眼すべてから投与後5日目に硝子体液を抽出した。眼房水と硝子体液のすべての試料においてEDTAの濃度をHPLC分析によって測定した。
【0122】
試験の結果を以下の表に要約する。
【0123】
【表10】
【0124】
これらの結果は、製剤1がEDTAを眼の前房(眼房水)へ非常に速く送達することを示す:投与後たった30分で10.7g/mLの濃度へ達しているのである。眼房水は、ほぼ90分ごとに前房から完全に流出されるので、慣用の点眼製剤からの化合物は、典型的には、投与後4時間で眼房水に検出されない。我々は、しかしながら、投与後5日目でも、眼房水中に有意な濃度のEDTAを観察した。我々のデータはまた、EDTAが硝子体液に到達して、そこで眼房水とほとんど同じ濃度で存在したことを示している。従って、硝子体液(そしておそらくは近隣の組織)は、吸収されたEDTAのレザバーとして作用して、このEDTAの一部が経時的に拡散して眼房水へ戻っていた可能性がある。
【0125】
製剤1由来のEDTAが、硝子体液が含まれる眼の後房へ透過したことの明示は、本製剤が、点眼剤として投与するときに眼の後房へ治療薬剤を送達することの可能性を示すものである。そのような眼の後房への薬物送達は、加齢関連の黄斑変性、黄斑浮腫、緑内障、細胞移植拒絶、感染症、及びブドウ膜炎が含まれる多くの眼の状態、疾患、及び障害の治療を可能にする。
【0126】
実施例9
製剤1について、白内障とザルツマン結節に罹患していて、その最高の矯正でも左眼で20/400、右眼で20/200であり、急性まぶしがり症と眩視だけでなく、左眼に重篤な黄斑の瘢痕形成を有している、80歳代の男性被検者を治療する場合の効果を評価した。この被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されるか又は眼科医により観察される副作用はなかった。
【0127】
試験に入ってから4週後にこの被検者が報告した変化には、輝きが増したこと、視覚の明瞭性の改善、眩視の低下が含まれた。8週後、眩視とまぶしがり症が抑制され、本被検者は、再び、新聞、本、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことを始めた。右眼の視力は、20/200(矯正)から20/60(ピンホール)(同じ矯正)へ有意に改善した。左眼でも、彼の視力は、20/400から20/200(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0128】
本被検者は、眩視とまぶしがり症のさらなる低下と、本、新聞、そしてコンピュータ画面上の情報を読むことの容易さにおけるさらなる改善を報告した。被検者はまた、夜間の眩視が消失したことを報告した。この被検者は、もはや昼間でも快適で、黒眼鏡の必要はなく、眩視の重篤な問題を患ってもいなかった。右眼の視力は、20/60(ピンホール)から20/50(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/200から20/160(同じ矯正)へ改善した。左眼では、瘢痕形成による中心暗点を有し続けた。
【0129】
8ヶ月後、この被検者の右眼の視力は、20/50(ピンホール)から20/40(ピンホール)へ改善した。左眼でも、彼の視力は、20/160から20/100(同じ矯正)へ改善した。左眼の暗点が消散しはじめて、彼は、かつての暗点を通してぼんやりと読むことができた。この時点で、彼のコントラスト感度も測定した。彼の白内障は、4+(0〜4の尺度、4が最高)と測定された。中央の黄斑の瘢痕は、眼科医には、光路の不鮮明さのためにほとんど見えなかった。
【0130】
全12ヶ月の後で、この被検者の視力は、改善し続けた。この被検者は、今や、本、新聞、及びコンピュータ画面を何ら問題なく読むことができた。この被検者はまた、白内障の改善も示した(0〜4尺度で、4+から3〜4+へ向上した)。光路の明瞭性が十分に改善したので、眼科医には、黄斑の瘢痕が明瞭に見えた。コントラスト感度では、40%〜100%への改善があった。スネレン視力では、右眼が20/40から20/30(ピンホール)へ、そして左眼が20/100から20/80へ向上した。この被検者はまた、40年ではじめて波形文字を左眼で読み始めることができたと報告している。
【0131】
上記の結果は、本点眼剤が眼の奥の網膜に到達していること、MSMがEDTA及びL−カルノシンの透過を支援していることを実証する。これらの結果は、実施例4のウサギの試験結果と一致している。
【0132】
実施例10
製剤1について、両方の眼にある「浮遊物」の問題を抱えている60歳代の女性被検者を治療する場合の効果を評価した。この被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されるか又は眼科医により観察される副作用はなかった。
【0133】
この点眼剤を使用して8週後、被検者は、その浮遊物の有意な低下を報告し、本医薬品が硝子体へ到達して、有益な効果を及ぼすことが再び確認された。
実施例11
製剤1について、矯正視力が20/15で、ごく顕著な老人環を有する50歳代の男性被検者を治療する場合の効果を評価した。この被検者へ本製剤をそれぞれの眼へ1滴(ほぼ0.04mL)、1日2〜4回、12ヶ月にわたる期間の間投与した。本製剤の眼への投与時のわずかな一過性の刺激を除いて、被検者により報告されるか又は眼科医により観察される副作用はなかった。
【0134】
16週後、被検者は、視力の20/25から20/15への改善だけでなく、その老人環のきわめて有意な低下を報告した。
実施例12
本発明の点眼製剤、製剤3を以下のように調製した:ほぼ500mlの高純度脱イオン(DI)水を0.2マイクロメートルフィルターにより濾過して、27gのメチルスルホニルメタン(MSM)と13gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・二水和物(EDTAを加えた。この製剤を可視透過性に達するまで混合し、NaOHでpHを7.2へ調整して、容量を500mlへ調整した。この混合物を、滴瓶キャップ付き10mlボトルへそれぞれ注いだ。この点眼剤は、重量百分率ベースで以下の組成を有した:
【0135】
【表11】
【0136】
実施例13
製剤3について、120日の最長期間で効果を評価した。患者には製剤3又はプラセボ(市販の非保存生理食塩水)のいずれか一方を与えて、各眼へ1滴(ほぼ0.04ml)、1日4回を使用するように指導した。試験製剤かプラセボのいずれか一方を受けるように患者を無作為化した。12の眼が製剤3を受けて、13の眼がプラセボを受けた。本試験は二重盲検で行い、患者も眼科医も、製剤3点眼剤又はプラセボのどちらを与えたのかを知らなかった。
【0137】
FACTTM(Functional Acuity Contrast Test)とCST 1800 Digital(登録商標)コントラスト感度テスターを使用して、中間相条件の模倣薄暮(3本の蝋燭/m2)下でコントラスト感度を測定した。測定は、各眼について単眼で2回実施して、同一2検体の測定値を平均した。
【0138】
FACTTMは、正弦波の回折格子チャートを使用してコントラスト感度を検査する。このチャートは、5列(明暗サイクル)からなり、各列は、9レベルのコントラスト感度を有する。正弦波の回折格子は、循環パターンで設定された灰色のバーが様々な大きさ及びコントラストとして見える、特別な検査パターンである。明暗サイクルAの回折格子は、最大の灰色バー(最長の波長)として見えて、明暗サイクルEの回折格子は、最小の灰色バー(最短の波長)として見える。CST 1800 Digital(登録商標)コントラスト感度テスターを通してこのチャートを眺めている間に、被検者は、各回折格子の配向(右、上、又は左)を報告する。それぞれの明暗サイクルには、パッチとも呼ばれる9レベルのコントラスト感度がある。レベル1は最大のコントラストを有し、レベル9は最小のコントラストを有する。被検者は、各列(A、B、C、D及びE)について見える最後の回折格子(1〜9)の配向を報告する。
【0139】
FACTをスコア化するとき、対数スケールを使用して、9レベルのコントラスト感度をグラフ化する。1つのレベル又はパッチの改善は、ほぼ1.5倍のコントラスト感度増加を表す。コントラスト感度改善を定量化するために、14日目(T0)からのデータを、少なくとも60日の治療を完了した各被検者について得られる最後のコントラスト感度データと比較した。
【0140】
製剤3を受けた12の眼の中で、8つの眼(67%)が2つの明暗サイクルにおいて少なくとも2つのパッチのコントラスト感度改善、統計学的に有意な結果(p=0.0237)を示した。プラセボを受けた13の眼では、3つ(23%)だけが2つの明暗サイクルにおいて少なくとも2つのパッチの改善を示した。
【0141】
コントラスト感度改善の別の測定として、それぞれの明暗サイクルについて、製剤3を受けた眼の平均パッチ改善を、プラセボを受けた眼の群と比較した(図5)。製剤3を受けた眼は、すべての明暗サイクルにおいて有意なコントラスト改善を示し、明暗サイクルDでは2.5パッチより大きい改善であり、明暗サイクルEでは3パッチを超える改善であった。
【0142】
眼又は全身の重篤な有害事象を報告した被検者は一人もいなかった。
実施例14
(目的)ラットの眼へ適用する点眼剤中の14C−EDTAの眼房水への浸透の程度をMSMの存在の有無で定量する。
【0143】
(試薬)エチレンジアミン四酢酸−1,2−14C−四ナトリウムをシグマより購入した。14C−EDTA(比活性:10.6mCi/ミリモル、放射化学純度:99%以上)。本試験に使用する他の化学品は、いずれも分析用であり、市販品を購入した。ScintiVerse II Cocktail(液体シンチレーション溶媒)は、Fisher Scientificからの水系、非水系、及びエマルジョン計数システム用の汎用LSC Cocktailであった。
【0144】
(動物)体重200〜250gの雄性スプリーグ・ドーリーラットをテキサス大学医学部のCentral Animal Care Serviceより入手した。動物の福祉については、「眼科及び視覚研究における動物の使用」に関するNIHガイドライン及びARVO規則に厳格に従った。100%二酸化炭素を低い流速(1分につきケージの25〜30%容量)で約2分間使用して、動物を犠牲にした。
【0145】
(実験手順)以下の3種の点眼溶液剤の各100μlを調製した。
【0146】
【表12】
【0147】
各点眼溶液剤の8μlを各眼の角膜へ適用した。各溶液剤で1匹のラットを処置した。0.5、2、及び16時間の時点で、30ゲージ微細針をインスリンシリンジとともに使用して眼房水を各眼より吸引して、50μlのPBSに分与した。タンパク質を可溶化するために、試料を50℃の水浴に3時間入れて、10,000rpmで10分間の遠心分離を続けた。
【0148】
(試料の放射活性の定量)25mlのScintiVerse II計数液を含有する計数バイアルへ試料を加え、激しく混合して、そのまま暗所に1時間静置させた。次いで、液体シンチレーションカウンター(LS 1801 Liquid Scintillation Systems,ベックマン・インスツルメンツ社)を使用して試料を計数した。各溶液剤を受けた2つの眼につき、各時点で、1分あたりのカウントを平均した。
【0149】
角膜から眼房水へ輸送される各溶液剤の能力について評価するために、眼房水中の14C−EDTAの量を溶液剤A、B、及びCの間で比較した(図6)。MSMの非存在下では、EDTA濃度にかかわらず、眼房水にEDTAがほとんど存在していなかった。MSMの存在下では、30分の時点で、眼房水中の14C−EDTAの量がほぼ5倍増加していた。
【0150】
実施例15
EDTA薬物動態試験
(目的)MSMを含有する点眼剤を使用して、ラットの眼の様々な構造(角膜、眼房水、水晶体、硝子体、及び網膜)へ浸透するC−14標識化EDTAの量を決定する。
【0151】
(試薬)エチレンジアミン四酢酸−1,2−14C−四ナトリウムをシグマより購入した。14C−EDTA(比活性:10.6mCi/ミリモル、放射化学純度:99%以上)。本試験に使用する他の化学品は、いずれも分析用であり、市販品を購入した。ScintiVerse II Cocktail(液体シンチレーション溶媒)は、Fisher Scientificからの水系、非水系、及びエマルジョン計数システム用の汎用LSC Cocktailであった。
【0152】
(動物)体重200〜250gの雄性スプリーグ・ドーリーラットをテキサス大学医学部のCentral Animal Care Serviceより入手した。動物の福祉については、NIHガイドラインと「眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVO規則」に厳格に従った。100%二酸化炭素を低い流速(1分につきケージの25〜30%容量)で約2分間使用して、動物を犠牲にした。
【0153】
【表13】
【0154】
【表14】
【0155】
点眼剤1の8μlをラットの眼へ適用した。0.5、1、2,4、及び16時間後にラットを犠牲にして、眼球を取り出した。各時点で、眼球をすぐに5mlの生理食塩水で6回洗浄した。両方の眼から眼房水を吸引して、50μlのPBSに分与した。それぞれの眼から角膜、水晶体、硝子体、及び網膜を分離して、H2Oと10N NaOHを以下の比で含有するエッペンドルフ管に入れた:
【0156】
【表15】
【0157】
タンパク質を可溶化するために、試料を50℃の水浴に3時間入れて、10,000rpmで10分間の遠心分離を続けた。25mlのScintiVerse II計数液を含有する計数バイアルへ試料を加え、激しく混合して、そのまま暗所に1時間静置させた。次いで、ベックマン・シンチレーションカウンター(LS 1801 Liquid Scintillation Systems,ベックマン・インスツルメンツ社)を使用してそれらを計数した。
【0158】
8μlの点眼剤2をラットの眼へ適用した。0.5、2、及び4時間後、ラットを犠牲にして、点眼剤1と同じやり方で実験を行なった。
各製剤の眼の構造における分布を調べるために、各時点につきナノグラム数のEDTAを計算した(図7A)。特に、眼房水、角膜、及び水晶体では、用量依存性が観察された。点眼剤1について、それぞれの眼構造に見出されるEDTAの百分率を2時間の時点で計算した(図7B)。EDTAの大部分は眼房水に見出されたが、点眼剤1の製剤は、検査したすべての組織に存在していた。
【0159】
実施例16
ラット水晶体器官培養(RLCE)における酸化誘発毒性の評価
(材料)EDTA、アスコルビン酸、及びH2O2は、シグマより購入した。細胞培養基の成分は、すべてInvitrogenからのものであった。
【0160】
(動物)体重200〜250gの雄性スプリーグ・ドーリーラットをテキサス大学医学部のCentral Animal Care Serviceより入手した。動物の福祉については、NIHガイドラインと「眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVO規則」に厳格に従った。100%二酸化炭素を低い流速(1分につきケージの25〜30%容量)で約2分間使用して、動物を犠牲にした。
【0161】
(水晶体培養)ラット水晶体を解剖して、無菌PBS中1%ペニシリン/ストレプトマイシンで洗浄した。この水晶体を、0.1%ゲンタマイシンを含有する培地199中に、5% CO2加湿雰囲気において37℃で培養した。この水晶体をそれぞれ2つの水晶体の群へ分けて、H2O2、MSM及び/又はEDTAとともにグルコース又はアスコルビン酸塩のいずれかへ曝露した。培地は、7日間、毎日交換した。Nikon Eclipse 200の下で水晶体を可視化して、多次元映像システム(Multidimensional Imaging System)を使用して写真を撮った。
【0162】
【表16】
【0163】
(実験手順)
1.7匹のラットを犠牲にし、可及的速やかに眼球を取り出して、0.1%ゲンタマイシン入りPBSを含有する試験管へそれを入れた。
【0164】
2.即座に水晶体を解剖して、PBSで洗浄した。
3.すべての水晶体を2つの12ウェルプレートへ移した(各水晶体につきウェルあたり2mlの培地)。各処置を2つのウェルで実施した。6つの処置液の最終濃度は、以下の通りであった:
【0165】
【表17】
【0166】
4.培地と試薬は毎日交換した。
5.水晶体培養の7日後、写真を撮って、水晶体を通過する光透過性のレベルを決定した。
【0167】
(結果)水晶体培養の写真は、グルコースとアスコルビン酸塩(+過酸化水素)の両方で有意なラット水晶体混濁が誘発されることを示した(図8A及び8B)。MSMは、いずれの酸化薬による水晶体混濁化も緩和したが、MSM+EDTAは、最も有効な保護をもたらした。
【0168】
水晶体を介する光通過量によって、各処置の水晶体混濁を定量化した。写真の結果と一致して、MSMは、両方の酸化処置に対する光通過のレベルを改善したが、MSM+EDTAは、さらに大きな改善を示した(図9)。アスコルビン酸塩/過酸化水素(AH)で処置した水晶体を介する光通過は、対照を介する光通過の32%であった(上のグラフ)。アスコルビン酸塩/過酸化水素及びMSM(AH+M)とアスコルビン酸塩/過酸化水素及びMSM/EDTA(AH+ME)で処置した水晶体を介する光通過は、それぞれ57%と66%であった。酸化薬として50mMグルコースを使用するときも、類似のパターンが観察された(下のグラフ)。グルコースで処置した水晶体を介する光通過は、非処置対照を介する光通過の45%にすぎなかった。グルコース+MSM(G+M)とグルコース及びMSM/EDTA(G+ME)で処置した水晶体を介する光通過は、それぞれ68%と92%であった。
【0169】
実施例17
ヒト水晶体上皮細胞(HLEC)における酸化誘発毒性とMSM及び/又はEDTAでの保護に続く細胞生存度の評価
(材料)EDTA(四ナトリウム塩)、硫酸アンモニウム第一鉄、塩化鉄、アデノシン5’−二リン酸(ADP)、アスコルビン酸、及びH2O2は、シグマより購入した。細胞培養基の成分は、すべてInvitrogenからのものであった。
【0170】
(細胞培養と処置)寿命が延長したヒト水晶体上皮細胞(HLEC)を、0.1%ゲンタマイシンを含有して20%胎仔ウシ血清を補充したDMEM培地中に、5% CO2加湿雰囲気において37℃で培養した。1.0x105個のHLEC/ml(継代5)を12ウェルプレートに播いて一晩後に、酸化試薬とMSM及び/又はEDTAを添加した。
【0171】
(細胞生存度)細胞の生存は、トリパンブルー染色により決定して、血球計で計数した。死んだ細胞が青く染まるのに対して、生きている細胞はトリパンブルーを排除する。細胞生存度は、生存細胞数/全細胞数の百分率として表す。
【0172】
【表18】
【0173】
(実験手順)
1. 0.5x105個/mlのHLEC(継代5)を3つの12ウェルプレートへ播き、37℃で一晩インキュベートした。
【0174】
2.培地を2% FBS DMEM培地へ交換した。
3.適切なウェルへ酸化試薬とMSM及び/又はEDTAを加えた。最終濃度は、以下の通りであった:
【0175】
【表19】
【0176】
酸化試薬とMSM及び/又はEDTAを加えた後で、細胞を5% CO2及び95%空気とともに37℃で16時間インキュベートして、0.25% トリプシン−EDTAとともに採取して、トリパンブルーを用いて細胞生存度を決定した。
【0177】
(結果)図10は、各条件下での細胞生存度のパーセントを示す。酸化薬は、30%(Fenton)〜ほぼ45%(アスコルビン酸塩+H2O2)へ細胞生存度を減少させた。4mM MSMの添加は、すべての酸化薬に対して細胞生存度パーセントを高めたが、4mM MSM+0.5mM EDTAの添加は、生存可能細胞の百分率をさらに増加させた。χ2乗検定を実施して、MSM/EDTAの保護効果が統計学的に有意であるかどうかを決定した。酸化薬+MSM/EDTA混合物を含有するウェルでは、Fenton以外のすべての酸化薬に対して、統計学的に有意な結果(0.05未満のP値)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1A】図1Aは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図1B】図1Bは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図2A】図2Aは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図2B】図2Bは、実施例5に記載するように、46歳の男性被検者の治療前(右眼−図1A;左眼−図2A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図1B;及び左眼−図2B)の眼の写真である。
【図3A】図3Aは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図3B】図3Bは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図4A】図4Aは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図4B】図4Bは、実施例6に記載するように、60歳の男性被検者の治療前(右眼−図3A;左眼−図4A)と、本発明の点眼製剤で8週の治療を受けた後(右眼−図3B;及び左眼−図3B)の眼の写真である。
【図5】図5は、実施例14において、製剤3より生じるコントラスト感度改善をプラセボと比較して比較する。
【図6】図6は、実施例15の溶液剤A、B、及びCの30分、2時間、及び16時間後の透過を比較する。
【図7A】図7Aは、実施例16に見られるようなEDTAの浸透を図示する。
【図7B】図7Bは、実施例16に見られるようなEDTAの浸透を図示する。
【図8A】図8Aは、実施例17からの様々な治療の効果を図示する。
【図8B】図8Bは、実施例17からの様々な治療の効果を図示する。
【図9】図9は、実施例17の治療の機能としてのラット水晶体における透過を図示する。
【図10】図10は、実施例18に見られるような、様々な治療の細胞生存度に及ぼす効果を図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の中の巨大分子の集合体を消失させるか又はその大きさを低下させるための方法であって、
(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成(chelating)原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる眼科製剤の治療有効量を投与することを含んでなり、
ここで電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の極性基と会合することを確実にするのに十分である、上記方法。
【請求項2】
非細胞傷害性キレート形成剤がポリ酸の塩基付加塩である、請求項1の方法。
【請求項3】
ポリ酸が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、及びポリホスホン酸より選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
ポリ酸がポリカルボン酸である、請求項3の方法。
【請求項5】
塩基付加塩がアルカリ金属塩である、請求項4の方法。
【請求項6】
電荷マスキング剤が2つの極性基を含有する、請求項1の方法。
【請求項7】
極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項1の方法。
【請求項8】
各極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項6の方法。
【請求項9】
キレート形成剤がテトラカルボン酸の塩基付加塩であり、
電荷マスキング剤が、式(I):
【化1】
[式中、R1とR2は、独立して、C1−C6アルキル、C1−C6へテロアルキル、C6−C14アラルキル、及びC2−C12へテロアラルキルより選択されて、Qは、S又はPである]
の構造を有し、
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が、2:1〜12:1の範囲にある、請求項1の方法。
【請求項10】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が4:1〜10:1の範囲にある、請求項9の方法。
【請求項11】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が約8:1である、請求項10の方法。
【請求項12】
電荷マスキング剤が約125未満の分子量を有する、請求項1の方法。
【請求項13】
製剤が医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項14】
担体が水性である、請求項13の方法。
【請求項15】
製剤を点眼剤の形態で投与する、請求項13の方法。
【請求項16】
製剤が、キレート形成剤と電荷マスキング剤と水性担体とから本質的になる、請求項14の方法。
【請求項17】
巨大分子の集合体が終末糖化産物を含む、請求項1の方法。
【請求項18】
巨大分子がペプチジル化合物である、請求項1の方法。
【請求項19】
巨大分子がタンパク質である、請求項18の方法。
【請求項20】
巨大分子がリポタンパク質である、請求項18の方法。
【請求項21】
巨大分子が脂質である、請求項1の方法。
【請求項22】
巨大分子がポリヌクレオチドである、請求項1の方法。
【請求項23】
キレート形成剤が製剤の少なくとも0.6重量%である、請求項1の方法。
【請求項24】
(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤;
(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤(ここで電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の極性基と会合することを確実にするのに十分である);及び
(c)医薬的に許容される水性担体
から本質的になる製剤。
【請求項25】
非細胞傷害性キレート形成剤がポリ酸の塩基付加塩である、請求項24の製剤。
【請求項26】
ポリ酸が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、及びポリホスホン酸より選択される、請求項24の製剤。
【請求項27】
ポリ酸がポリカルボン酸である、請求項26の製剤。
【請求項28】
塩基付加塩がアルカリ金属塩である、請求項27の製剤。
【請求項29】
電荷マスキング剤が2つの極性基を含有する、請求項24の製剤。
【請求項30】
極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項24の製剤。
【請求項31】
各極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項29の製剤。
【請求項32】
キレート形成剤がテトラカルボン酸の塩基付加塩であり、
電荷マスキング剤が、式(I):
【化2】
[式中、R1とR2は、独立して、C1−C6アルキル、C1−C6へテロアルキル、C6−C14アラルキル、及びC2−C12へテロアラルキルより選択されて、Qは、S又はPである]
の構造を有し、
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が、2:1〜12:1の範囲にある、請求項24の製剤。
【請求項33】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が4:1〜10:1の範囲にある、請求項32の製剤。
【請求項34】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が約8:1である、請求項33の製剤。
【請求項35】
電荷マスキング剤が約125未満の分子量を有する、請求項24の製剤。
【請求項36】
担体が水性である、請求項24の製剤。
【請求項37】
製剤が、キレート形成剤と電荷マスキング剤と水性担体とから本質的になる、請求項36の製剤。
【請求項38】
巨大分子の集合体が終末糖化産物を含む、請求項24の製剤。
【請求項39】
巨大分子がペプチジル化合物である、請求項24の製剤。
【請求項40】
巨大分子がタンパク質である、請求項39の製剤。
【請求項41】
巨大分子がリポタンパク質である、請求項39の製剤。
【請求項42】
巨大分子が脂質である、請求項24の製剤。
【請求項43】
巨大分子がポリヌクレオチドである、請求項24の製剤。
【請求項44】
製剤に、眼科学的に活性な薬剤がさらに含まれる、請求項24の製剤。
【請求項45】
キレート形成剤が製剤の少なくとも0.6重量%である、請求項24の製剤。
【請求項1】
眼の中の巨大分子の集合体を消失させるか又はその大きさを低下させるための方法であって、
(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成(chelating)原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤と(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤からなる眼科製剤の治療有効量を投与することを含んでなり、
ここで電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の極性基と会合することを確実にするのに十分である、上記方法。
【請求項2】
非細胞傷害性キレート形成剤がポリ酸の塩基付加塩である、請求項1の方法。
【請求項3】
ポリ酸が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、及びポリホスホン酸より選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
ポリ酸がポリカルボン酸である、請求項3の方法。
【請求項5】
塩基付加塩がアルカリ金属塩である、請求項4の方法。
【請求項6】
電荷マスキング剤が2つの極性基を含有する、請求項1の方法。
【請求項7】
極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項1の方法。
【請求項8】
各極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項6の方法。
【請求項9】
キレート形成剤がテトラカルボン酸の塩基付加塩であり、
電荷マスキング剤が、式(I):
【化1】
[式中、R1とR2は、独立して、C1−C6アルキル、C1−C6へテロアルキル、C6−C14アラルキル、及びC2−C12へテロアラルキルより選択されて、Qは、S又はPである]
の構造を有し、
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が、2:1〜12:1の範囲にある、請求項1の方法。
【請求項10】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が4:1〜10:1の範囲にある、請求項9の方法。
【請求項11】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が約8:1である、請求項10の方法。
【請求項12】
電荷マスキング剤が約125未満の分子量を有する、請求項1の方法。
【請求項13】
製剤が医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項14】
担体が水性である、請求項13の方法。
【請求項15】
製剤を点眼剤の形態で投与する、請求項13の方法。
【請求項16】
製剤が、キレート形成剤と電荷マスキング剤と水性担体とから本質的になる、請求項14の方法。
【請求項17】
巨大分子の集合体が終末糖化産物を含む、請求項1の方法。
【請求項18】
巨大分子がペプチジル化合物である、請求項1の方法。
【請求項19】
巨大分子がタンパク質である、請求項18の方法。
【請求項20】
巨大分子がリポタンパク質である、請求項18の方法。
【請求項21】
巨大分子が脂質である、請求項1の方法。
【請求項22】
巨大分子がポリヌクレオチドである、請求項1の方法。
【請求項23】
キレート形成剤が製剤の少なくとも0.6重量%である、請求項1の方法。
【請求項24】
(a)少なくとも3つの負電荷キレート形成原子を含有する非細胞傷害性キレート形成剤;
(b)少なくとも1つの極性基を含有して約250未満の分子量を有する電荷マスキング剤(ここで電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比は、実質的にすべての負電荷キレート形成原子が電荷マスキング剤上の極性基と会合することを確実にするのに十分である);及び
(c)医薬的に許容される水性担体
から本質的になる製剤。
【請求項25】
非細胞傷害性キレート形成剤がポリ酸の塩基付加塩である、請求項24の製剤。
【請求項26】
ポリ酸が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、及びポリホスホン酸より選択される、請求項24の製剤。
【請求項27】
ポリ酸がポリカルボン酸である、請求項26の製剤。
【請求項28】
塩基付加塩がアルカリ金属塩である、請求項27の製剤。
【請求項29】
電荷マスキング剤が2つの極性基を含有する、請求項24の製剤。
【請求項30】
極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項24の製剤。
【請求項31】
各極性基中の少なくとも1つの原子が酸素原子である、請求項29の製剤。
【請求項32】
キレート形成剤がテトラカルボン酸の塩基付加塩であり、
電荷マスキング剤が、式(I):
【化2】
[式中、R1とR2は、独立して、C1−C6アルキル、C1−C6へテロアルキル、C6−C14アラルキル、及びC2−C12へテロアラルキルより選択されて、Qは、S又はPである]
の構造を有し、
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が、2:1〜12:1の範囲にある、請求項24の製剤。
【請求項33】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が4:1〜10:1の範囲にある、請求項32の製剤。
【請求項34】
電荷マスキング剤のキレート形成剤に対するモル比が約8:1である、請求項33の製剤。
【請求項35】
電荷マスキング剤が約125未満の分子量を有する、請求項24の製剤。
【請求項36】
担体が水性である、請求項24の製剤。
【請求項37】
製剤が、キレート形成剤と電荷マスキング剤と水性担体とから本質的になる、請求項36の製剤。
【請求項38】
巨大分子の集合体が終末糖化産物を含む、請求項24の製剤。
【請求項39】
巨大分子がペプチジル化合物である、請求項24の製剤。
【請求項40】
巨大分子がタンパク質である、請求項39の製剤。
【請求項41】
巨大分子がリポタンパク質である、請求項39の製剤。
【請求項42】
巨大分子が脂質である、請求項24の製剤。
【請求項43】
巨大分子がポリヌクレオチドである、請求項24の製剤。
【請求項44】
製剤に、眼科学的に活性な薬剤がさらに含まれる、請求項24の製剤。
【請求項45】
キレート形成剤が製剤の少なくとも0.6重量%である、請求項24の製剤。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−501727(P2009−501727A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521704(P2008−521704)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/027686
【国際公開番号】WO2007/011875
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505233332)チャクシュ・リサーチ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/027686
【国際公開番号】WO2007/011875
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505233332)チャクシュ・リサーチ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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