説明

差圧測定システム及び差圧測定方法

【課題】 光学的に高いダイナミックレンジで差圧の測定が可能で、測定誤差を取り消し可能な差圧測定システムを提供する。
【解決手段】 第1照射波長成分及び第1照射波長成分とは波長の異なる第2照射波長成分を照射する光源114、第1圧力感度で第1外圧PO1に応じて第1照射波長成分の光強度を変化させ、第1測定波長成分を出力する第1センサ5、第1圧力感度に対して正負の符号が反対の第2圧力感度で、第2外圧PO2に応じて第1測定波長成分の光強度を変化させ、第2測定波長成分を出力する第2センサ15、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分を伝搬し、第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬する光導波路30, 31, 32, 33, 34、第2測定波長成分及び参照波長成分に共通する変調を補正する補正モジュール74A、及び変調が補正された第2測定波長成分の光強度から、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧を測定する差圧測定モジュール75Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力測定技術に関し、特に差圧測定システム及び差圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油プラント等を制御する場合、石油プラント内の異なる位置における流体の差圧を測定することが必要な場合がある。従来の差圧測定方法としては、測定位置にファブリペロ干渉計を配置し、圧力によって生じるファブリペロ干渉計の光路差の変化を干渉縞から読み取る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、干渉縞の信号は光路差に依存しない光強度成分の信号に重畳している。そのため、光強度成分の信号に重畳した干渉縞の信号をアナログからデジタル信号に変換すると、デジタル信号の一部のビットのみに干渉縞の信号が割り当てられ、その他のビットには差圧測定には関係のない光強度成分の信号が割り当てられる。したがって、ファブリペロ干渉計の光路差の変化を干渉縞から読み取る方法は、差圧測定のダイナミックレンジが低下するという問題があった。さらに光を伝搬する導波路等の透過率が変調する場合もある。導波路の透過率の変調は、差圧測定に測定誤差をもたらすという問題もあった。
【特許文献1】特開2003-166890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、光学的に高いダイナミックレンジで差圧の測定が可能で、測定誤差を取り消し可能な差圧測定システム及び差圧測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、第1照射波長成分及び第1照射波長成分とは波長の異なる第2照射波長成分を含む照射光を照射する光源と、第1圧力感度で第1外圧に応じて第1照射波長成分の光強度を変化させ、第1測定波長成分として出力する第1センサと、第1圧力感度に対して正負の符号が反対の第2圧力感度で、第2外圧に応じて第1測定波長成分の光強度を変化させ、第2測定波長成分として出力する第2センサと、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分を伝搬し、第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬する光導波路と、第2測定波長成分及び参照波長成分に共通する変調を補正する補正モジュールと、変調が補正された第2測定波長成分の光強度から、第1外圧及び第2外圧の差圧を測定する差圧測定モジュールとを備える差圧測定システムが提供される。
【0005】
第2測定波長成分の光強度は第1及び第2外圧の差圧を直接反映している。さらに補正モジュールが第2測定波長成分及び参照波長成分に共通する光強度の変調を補正することで、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分を伝搬する光導波路の透過率等の伝搬効率の変調の影響が取り消される。そのため、本発明の第1の態様に係る差圧測定システムは、光学的に高いダイナミックレンジで第1及び第2外圧の差圧を測定することを可能とし、かつ測定誤差を取り消すことも可能にする。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1照射波長成分及び第1照射波長成分とは波長の異なる第2照射波長成分を含む照射光を照射することと、第1圧力感度で第1外圧に応じて第1照射波長成分の光強度を変化させ、第1測定波長成分として出力することと、第1圧力感度に対して正負の符号が反対の第2圧力感度で、第2外圧に応じて第1測定波長成分の光強度を変化させ、第2測定波長成分として出力することと、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分を伝搬し、第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬することと、第2測定波長成分及び参照波長成分に共通する変調を補正することと、変調が補正された第2測定波長成分の光強度から、第1外圧及び第2外圧の差圧を測定することとを含む差圧測定方法が提供される。
【0007】
第2測定波長成分の光強度は第1及び第2外圧の差圧を直接反映している。さらに第2測定波長成分及び参照波長成分に共通する光強度の変調を補正することで、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分を伝搬する光導波路の透過率等の伝搬効率の変調の影響が取り消される。そのため、本発明の第2の態様に係る差圧測定方法によれば、光学的に高いダイナミックレンジで第1及び第2外圧の差圧を測定することを可能とし、かつ測定誤差の取り消すことも可能にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学的に高いダイナミックレンジで差圧の測定が可能で、測定誤差を取り消し可能な差圧測定システム及び差圧測定方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る差圧測定システムは、図1に示すように、第1照射波長成分及び第1照射波長成分とは波長の異なる第2照射波長成分を含む照射光を照射する光源114、第1圧力感度で第1外圧PO1に応じて第1照射波長成分の光強度を変化させ、第1測定波長成分として出力する第1センサ5、第1圧力感度に対して正負の符号が反対の第2圧力感度で、第2外圧PO2に応じて第1測定波長成分の光強度を変化させ、第2測定波長成分として出力する第2センサ15、及び第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分を伝搬し、第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬する光導波路30, 31, 32, 33, 34を備える。差圧測定システムは信号処理装置17Aをさらに備える。信号処理装置17Aは、第2測定波長成分及び参照波長成分に共通する変調を補正する補正モジュール74A、及び変調が補正された第2測定波長成分の光強度から、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧を測定する差圧測定モジュール75Aを備える
光源114には紫外域から赤外域(185nm〜2000nm)までの連続スペクトルに対応可能なキセノンランプ、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、半導体レーザ共振器、及びマルチモードレーザダイオード等が使用可能である。光源114には光導波路30が接続されている。光導波路30は照射光の第1照射波長成分を伝搬する。また光導波路30は照射光の第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬する。光導波路30には、照射光を2方向に分割する第1スプリッタ21が接続されている。第1スプリッタ21には、照射光を伝搬する光導波路31が接続されている。
【0011】
光導波路31の末端には第1センサ5が接続されている。第1センサ5は光導波路31の末端に接する第1波長フィルタ26を有する。第1波長フィルタ26は照射光の第1照射波長成分のみ透過させ、参照波長成分を反射する。また第1センサ5は、図2に示すように、第1波長フィルタ26の主面から放射された第1照射波長成分を集光するレンズ等である第1集光部24を有する。第1集光部24は第1波長フィルタ26の主面に対して第1間隔d1をおいて配置されている。さらに第1センサ5は、第1集光部24の光軸上で第1集光部24の焦点よりも第1集光部24側に移動可能に配置されたダイアフラム等の第1感圧部25を有する。つまり、第1感圧部25は第1集光部24に対し、第1集光部24の焦点距離FL1Iから第1圧力依存距離L1を引いた距離(FL1I - L1)をおいて配置されている。第1感圧部25は第1外圧PO1を受けて第1集光部24の光軸上を移動する。第1感圧部25の移動可能な範囲は、第1集光部24の主面から、第1集光部24の焦点までである。第1外圧PO1が上昇すると第1感圧部25は第1集光部24方向に移動し、第1圧力依存距離L1は長くなる。反対に第1外圧PO1が低下すると第1感圧部25は第1集光部24の焦点方向に移動し、第1圧力依存距離L1が短くなる。また、第1感圧部25の表面には例えばクロム酸化膜等が堆積されており、第1感圧部25は第1集光部24で集光された第1照射波長成分を反射する。第1感圧部25で反射された第1照射波長成分は第1集光部24及び第1波長フィルタ26を経て再び光導波路31に第1測定波長成分として入射する。
【0012】
ところで、x-y-z空間のz軸を光軸とした場合、図3に示すような基本ガウシアンビームは下記(1)式で表される。
【0013】
E = (2/π)1/2(1/w(z))×exp[-i(kz - φ(z))-r2{(1/w2(z))+(ik / 2R(z))}]
…(1)
(1)式において、Eは電場、w(z)は光軸(z)方向におけるビーム半径の関数、iは虚数、kは波数、φ(z)は光軸(z)方向における位相の関数、rは光軸からの距離、R(z)は光軸(z)方向における波面の曲率半径の関数を示す。ビーム半径の関数w(z)は下記(2)式で与えられる。
【0014】
w(z) = w0 {1 + (λz / πw02)2}1/2 …(2)
(2)式において、λは波長、w0はビーム半径の最小値である。なお、ビーム半径が最小値w0となる位置をビームウェストと呼ぶ。上記(1)式における波面の曲率半径の関数R(z)は下記(3)式、位相の関数φ(z)は下記(4)式、光軸からの距離rは下記(5)式で与えられる。
【0015】
R(z) = z {1 + (λz / πw02)2} …(3)
φ(z) = tan-1 (λz / πw02) …(4)
r = (x2 + y2)1/2 …(5)
上記(1)式で与えられるガウシアンビームの複素ビームパラメータq(z)は下記(6)式で与えられる。
【0016】
1 / q(z) = 1 / R(z) - i (λ/ πw2(z)) …(6)
ビームウェスト(z = 0)では波面の曲率半径R(0)が無限大になる。そのため、ビームウェストにおける複素ビームパラメータq(0)は下記(7)式で与えられる。
【0017】
1 / q(0) = 0 - i (λ/ πw2(z))
∴q(0) = i (πw2(0) / λ) …(7)
A, B, C, Dを行列要素とする幾何光学の光線行列で表されるエレメントを通過する前後の複素ビームパラメータをq1, q2と定義すると、それぞれの複素ビームパラメータq1, q2の関係は下記(8)式で与えられる。
【0018】
q2 = (Aq1 + B) / (Cq1 + D) …(8)
また、光線行列で表されるエレメントを通過する前後の光線の光軸からの距離をr1, r2、及び傾きdr/dzをr1', r2'とすると、それぞれの関係は下記(9)式の行列式で与えられる。
【数1】

【0019】
例えば、図4に示すように光軸(z)方向に間隔dをおいた空間の前後の光線の光軸からの距離r1, r2、及び傾きr1', r2'のそれぞれの関係は、下記(10)式の行列式で与えられる。
【数2】

【0020】
図5に示すレンズ29が焦点距離FLの薄肉レンズであると仮定すると、レンズ29に入射する光線の光軸からの距離r1と傾きr1'、及びレンズ29から出射する光線の光軸からの距離r2と傾きr2'のそれぞれの関係は、下記(11)式の行列式で与えられる。
【数3】

【0021】
さて、図2に示す第1波長フィルタ26の主面から放射された第1照射波長成分は、第1波長フィルタ26の主面をビームウェストとするガウシアンビームとみなすことが可能である。したがって、第1波長フィルタ26の主面における第1照射波長成分の複素ビームパラメータは上記(7)式で与えられる。ここで、第1波長フィルタ26の主面と第1集光部24とは第1間隔d1をおいて配置されているため、第1照射波長成分の光線に対する第1波長フィルタ26と第1集光部24との間の空間は、下記(12)式で与えられる光線行列MI1で表すことができる。また焦点距離FL1Iの第1集光部24を薄肉レンズとみなすと、第1照射波長成分の光線に対する第1集光部24は下記(13)式で与えられる光線行列MI2で表すことができる。さらに第1照射波長成分の光線に対する第1集光部24と第1感圧部25との間の空間は、下記(14)式で与えられる光線行列MI3で表すことができる。
【数4】

【数5】

【数6】

【0022】
第1感圧部25の表面を反射率100%のフラットな鏡面とすると、第1照射波長成分の光線に対する第1感圧部25は下記(15)式で与えられる光線行列MRで表すことができる。
【数7】

【0023】
第1感圧部25で反射された第1照射波長成分の光線に対する第1感圧部25と第1集光部24との間の空間は、下記(16)式で与えられる光線行列MO1で表すことができる。また第1集光部24の第1波長フィルタ26側の焦点距離をFL1Oとして、第1感圧部25で反射された第1照射波長成分の光線に対する第1集光部24は下記(17)式で与えられる光線行列MO2で表すことができる。さらに、第1感圧部25で反射された第1照射波長成分の光線に対する第1集光部24と第1波長フィルタ26との間の空間は、下記(18)式で与えられる光線行列MO3で表すことができる。
【数8】

【数9】

【数10】

【0024】
したがって、第1波長フィルタ26の主面から放射された第1照射波長成分が再び第1波長フィルタ26の主面に到達するまでの空間は、上記(12)乃至(18)式で与えられた光線行列MI1, MI2, MI3, MR, MO1, MO2, MO3の積である下記(19)式で与えられる光線行列MTで表すことができる。
【0025】
MT = MO3 MO2 MO1 MR MI3 MI2 MI1 …(19)
よって、第1波長フィルタ26の主面における複素ビームパラメータ及び上記(19)式で与えられる光線行列MTから、第1センサ5内部を往復して再び第1波長フィルタ26の主面にたどり着いた第1照射波長成分の複素ビームパラメータを上記(8)式を用いて算出することができる。さらに上記(6)式を用いて、再び第1波長フィルタ26の主面にたどり着いた第1照射波長成分のビーム半径を算出することができる。
【0026】
図6は、第1集光部24の主面から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)を0.1mm、0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.8mm、0.9mmとした場合の、第1感圧部25で反射された第1照射波長成分のビーム径を示している。なお、第1集光部24の焦点距離FL1Iは1mmであり、第1波長フィルタ26の主面を原点(z=0)としている。図6に示すように、第1集光部24の主面から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が焦点距離FL1I(1mm)に近づくほど、第1感圧部25で反射された第1照射波長成分のビーム径は小さくなる。
【0027】
仮に、図7に示すように、第1感圧部25が第1集光部24の焦点位置に配置されると、第1感圧部25に入射する第1照射波長成分の光路と、第1感圧部25から反射された第1照射波長成分の光路とが全体として一致する。そのため、光導波路31に第1測定波長成分として再入射する第1照射波長成分のビーム径は最小となり、第1測定波長成分の光強度は最大となる。これに対し第1センサ5の第1感圧部25は、第1集光部24の焦点位置よりも第1集光部24側に配置される。そのため、第1感圧部25から反射された第1照射波長成分の光路とが全体として一致しない。したがって、光導波路31に再入射する第1測定波長成分の光強度は、第1感圧部25が第1集光部24の焦点位置に配置された場合と比較して弱い。さらに第1外圧PO1が上昇すると、第1感圧部25は第1集光部24に向かって移動し、第1集光部24の焦点位置からより第1集光部24に近づく。そのため、第1集光部24の主面から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が焦点距離FL1Iと比較してより短くなり、光導波路31に再入射する第1測定波長成分の光強度はさらに弱まる。反対に、第1外圧PO1が低下すると第1感圧部25は第1集光部24の焦点位置に近づく。そのため、第1集光部24の主面から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が焦点距離FL1Iに近づき、光導波路31に再入射する第1測定波長成分の光強度は強まる。以上説明したように、第1センサ5においては第1外圧PO1が上昇した場合、第1測定波長成分の光強度が弱まり、第1外圧PO1が低下した場合、第1測定波長成分の光強度が強まる。つまり、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有するよう、第1センサ5の圧力感度である第1圧力感度が設定されている。
【0028】
第1測定波長成分及び参照波長成分は、光導波路31、第1スプリッタ21に接続された光導波路32によって伝搬され、光導波路32に接続された第2スプリッタ22に到達する。第2スプリッタ22は、第1測定波長成分及び参照波長成分を2方向に分割する。第2スプリッタ22には、第1測定波長成分及び参照波長成分を伝搬する光導波路33が接続されている。
【0029】
光導波路33の末端には第2センサ15が接続されている。第2センサ15は光導波路33の末端に接する第2波長フィルタ126を有する。第2波長フィルタ126は第1測定波長成分のみ透過させ、参照波長成分を反射する。また第2センサ15は、図8に示すように、第2波長フィルタ126の主面から放射された第1測定波長成分を集光するレンズ等である第2集光部124を有する。第2集光部124は第2波長フィルタ126の主面に対して第2間隔d2をおいて配置されている。さらに第2センサ15は、第2集光部124の光軸上で第2集光部124の焦点よりも遠方に移動可能に配置されたダイアフラム等の第2感圧部125を有する。つまり、第2感圧部125は第2集光部124に対し、第2集光部124の焦点距離FL2Iに第2圧力依存距離L2を足した距離(FL2I + L2)をおいて配置されている。第2感圧部125は第2外圧PO2を受けて第2集光部124の光軸上を移動する。第2感圧部125の移動可能な範囲は、第2集光部124の焦点から遠方に向かって焦点距離FL2Iと同じ距離の範囲である。第2外圧PO2が上昇すると第2感圧部125は焦点方向に移動し、第2圧力依存距離L2が短くなる。反対に第2外圧PO2が低下すると第2感圧部125は第2集光部124の焦点からより遠ざかる方向に移動し、第2圧力依存距離L2が長くなる。また、第2感圧部125の表面には例えばクロム酸化膜等が堆積されており、第2感圧部125は第2集光部124で集光された第1測定波長成分を反射する。第2感圧部125で反射された第1測定波長成分は第2集光部124及び第2波長フィルタ126を経て再び光導波路33に第2測定波長成分として入射する。
【0030】
ここで、第2センサ15の第2感圧部125は、第2集光部124に対し第2集光部124の焦点位置より遠方に配置される。したがって、光導波路33に再入射する第2測定波長成分の光強度は、図7で説明したように、第2感圧部125が第2集光部124の焦点位置に配置された場合と比較して弱い。しかし、第2外圧PO2が上昇すると第2感圧部125は第2集光部124の焦点位置に近づく。そのため、第2集光部124の主面から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が焦点距離FL2Iに近づき、光導波路33に再入射する第2測定波長成分の光強度は強まる。反対に、第2外圧PO2が低下すると第2感圧部125は第2集光部124の焦点からより遠ざかる。そのため、第2集光部124の主面から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が焦点距離FL2Iと比較してより長くなり、光導波路33に再入射する第2測定波長成分の光強度は弱まる。図9に示すように、第1センサ5においては第1外圧PO1が上昇した場合、第1測定波長成分の光強度が弱まるよう、第1圧力感度が設定されているのに対し、第2センサ15においては第2外圧PO2が上昇した場合、第2測定波長成分の光強度が強まり、第2外圧PO2が低下した場合、第2測定波長成分の光強度が弱まる。つまり、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とが正の相関関係を有するよう、第2センサ15の圧力感度である第2圧力感度が設定されている。したがって、第1圧力感度と第2圧力感度とは正負の符号が反対の関係を有している。
【0031】
図10は、第1センサ5の第1集光部24の主面から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)、第2センサ15の第2集光部124の主面から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)、及び第2測定波長成分の光強度の関係を示している。第1センサ5において、第1集光部24から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が長くなり焦点距離FL1Iに近づくほど、第2測定波長成分の光強度は強くなる。また第2センサ15において、第2集光部124から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が短くなり焦点距離FL2Iに近づくほど、第2測定波長成分の光強度は強くなる。図11は、第1圧力依存距離L1及び第2圧力依存距離L2の差Δ(L1-L2)と、第2測定波長成分の光強度との関係を示している。差Δ(L1-L2)が大きいほど第2測定波長成分の光強度は弱まり、差Δ(L1-L2)が小さいほど第2測定波長成分の光強度は強まる。
【0032】
第2測定波長成分及び参照波長成分は、図1に示す光導波路33で伝搬され、第2スプリッタ22に接続された光導波路34で第3スプリッタ23に伝搬される。第3スプリッタ23は第2測定波長成分及び参照波長成分を2方向に分割する。第3スプリッタ23には光導波路35, 36が接続されている。光導波路35, 36のそれぞれは、分割された第2測定波長成分及び参照波長成分を伝搬する。光導波路35には、第2測定波長成分のみを透過させ、参照波長成分を透過させない測定用波長フィルタ53が接続されている。測定用波長フィルタ53には光導波路94が接続されている。光導波路94は測定用波長フィルタ53を透過した第2測定波長成分を伝搬する。光導波路94の端面に対向して測定用受光素子153が配置される。測定用受光素子153は光導波路94で伝搬された第2測定波長成分を受光し、第2測定波長成分の光強度GMを検出する。第2測定波長成分の光強度GMは下記(20)式で表される。
GM = GS1×V1×V2×T …(20)
(20)式において、GS1は照射光の第1照射波長成分の光強度を示す。V1は第1照射波長成分の光強度に対する第1測定波長成分の光強度の比を示す。上述したように、第1センサ5から出力される第1測定波長成分の光強度は第1外圧PO1に応じて変動するため、第1照射波長成分の光強度に対する第1測定波長成分の光強度の比V1は第1外圧PO1に応じて変動する。V2は第1測定波長成分の光強度に対する第2測定波長成分の光強度の比を示す。上述したように、第2センサ15から出力される第2測定波長成分の光強度は第2外圧PO2に応じて変動するため、第1測定波長成分の光強度に対する第2測定波長成分の光強度の比V2は第2外圧PO2に応じて変動する。Tは第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分が経由した光導波路30〜35, 94等の透過率を表す。
【0033】
光導波路36には、参照波長成分のみを透過させ、第2測定波長成分を透過させない参照用波長フィルタ63が接続されている。参照用波長フィルタ63には光導波路95が接続されている。光導波路95は参照用波長フィルタ63を透過した参照波長成分を伝搬する。光導波路95の端面に対向して参照用受光素子154が配置される。参照用受光素子154は光導波路95で伝搬された参照波長成分を受光し、参照波長成分の光強度GRを検出する。参照波長成分の光強度GRは下記(21)式で表される。
【0034】
GR = GS2×T …(21)
(21)式において、GS2は照射光の第2照射波長成分の光強度を示す。Tは参照波長成分が経由した光導波路30〜34, 36, 95の透過率を表す。光導波路35と光導波路36、光導波路94と光導波路95の透過率を等しくすることにより、(20)式における透過率Tと、(21)式における透過率Tとは等しいとみなすことができる。
【0035】
測定用受光素子153、及び参照用受光素子154のそれぞれは、信号処理装置17Aに電気的に接続されている。信号処理装置17Aの補正モジュール74Aは、下記(22)式に示すように、第2測定波長成分の光強度GMを参照波長成分の光強度GRで割ることにより、補正された第2測定波長成分の光強度GCを算出する。
【0036】
GC = GM / GR = (GS1×V1×V2×T) / (GS2×T) = (GS1 / GS2)×V1×V2…(22)
補正された第2測定波長成分の光強度GCは、透過率Tの影響を受けない。そのため、透過率T等の伝搬効率の変調が補正される。また、照射光が単一の光源114から照射されているため、照射光の第1照射波長成分の光強度GS1の第2照射波長成分の光強度GS2に対する下記(23)式で与えられる比αは一定である。
【0037】
α= GS1 / GS2 …(23)
したがって、補正された第2測定波長成分の光強度GCは下記(24)式で与えられる。
【0038】
GC = (GS1 / GS2)×V1×V2 ≒α×V1×V2 …(24)
そのため、補正された第2測定波長成分の光強度GCは、光源114から照射された照射光の光強度の変調の影響も受けない。また比αの値は予め測定することにより取得可能である。そのため、照射光の光強度の変調も補正される。
【0039】
差圧測定モジュール75Aは、補正モジュール74Aが算出した第2測定波長成分の補正された光強度GCから第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を測定する。差圧測定モジュール75Aが補正された第2測定波長成分の光強度GCから第1及び第2外圧PO1, PO2の差圧を測定する原理を以下説明する。図12は、第1センサ5の第1集光部24の主面から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)と、第1センサ5の反射率との関係を示している。ここで第1センサ5の「反射率」とは、第1照射波長成分の光強度に対する第1測定波長成分の光強度の比V1に相当する。また図12は、第2センサ15の第2集光部124の主面から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)と、第2センサ15の反射率との関係を示している。ここで第2センサ15の「反射率」とは、第1測定波長成分の光強度に対する第2測定波長成分の光強度の比V2に相当する。さらに図12は、第1及び第2センサ5, 15のそれぞれの反射率と、測定用受光素子153が受光する第2測定波長成分の光強度GMとの関係を示している。なお、第1集光部24の焦点距離FL1I及び第2集光部124の焦点距離FL2Iのそれぞれは1mmである。
【0040】
初期状態で第1集光部24から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が0.5mmであり、第2集光部124から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が1.5mmであるとする。この場合、第1センサ5の反射率は0.809であり、第2センサ15の反射率は0.832である。また、第2測定波長成分の光強度GMは0.673である。第1外圧PO1が低下し、第1集光部24から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が0.6mmになると、第1測定波長成分の光強度が強まる。そのため第1センサ5の反射率は上昇し、0.817になる。同時に第2外圧PO2が第1外圧PO1との差圧を一定に保ったまま低下すると、第2集光部124から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が1.6mmになる。すると第2測定波長成分の光強度が弱まるため第2センサ15の反射率は低下し、0.825になる。この場合、第1センサ5の反射率は上昇するものの、第2センサ15の反射率が低下するため、第2測定波長成分の光強度GMは0.673のままである。以後同様に第1外圧PO1及び第2外圧PO2のそれぞれが差圧を一定に保ったまま低下すると、第1センサ5の反射率の上昇と、第2センサ15の反射率の低下が同時に生じる。そのため、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧が一定である限り、第2測定波長成分の光強度GMは0.673を維持し続ける。反対に、第1外圧PO1及び第2外圧PO2のそれぞれが差圧を一定に保ったまま上昇する場合も、第2測定波長成分の光強度GMは変化しない。したがって、差圧測定モジュール75Aは上記(24)式で与えられる補正された第2測定波長成分の光強度GCが一定であれば、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧が一定であると判定する。
【0041】
図13においては、初期状態で第1集光部24から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が0.8mmであり、第2集光部124から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が1.5mmであるとする。この場合、第1センサ5の反射率は0.828であり、第2センサ15の反射率は0.83である。また、第2測定波長成分の光強度GMは0.69である。第1外圧PO1が上昇し、第1集光部24から第1感圧部25までの距離(FL1I - L1)が0.7mmになると、第1測定波長成分の光強度が弱まる。そのため第1センサ5の反射率は低下し、0.823になる。同時に第2外圧PO2が低下すると、第2集光部124から第2感圧部125までの距離(FL2I + L2)が1.6mmになる。すると第2測定波長成分の光強度が弱まるため第2センサ15の反射率は低下し、0.825になる。この場合、第1センサ5及び第2センサ15の両方の反射率が低下するため、第2測定波長成分の光強度GMは0.676に弱まる。以後同様に、第1外圧PO1が上昇し、第2外圧PO2が低下することにより差圧を広がっていくと、第2測定波長成分の光強度GMはさらに弱まる。反対に、第1外圧PO1が低下し、第2外圧PO2が上昇することにより差圧が狭まっていくと、第2測定波長成分の光強度GMは強まっていく。なお、第1外圧PO1が上昇し第2外圧PO2が一定である場合は、第2測定波長成分の光強度GMは弱まる。また第1外圧PO1が一定で第2外圧PO2が上昇する場合は、第2測定波長成分の光強度GMは強まる。したがって、補正された第2測定波長成分の光強度GCが変化した場合、差圧測定モジュール75Aは第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧が変化したと判定する。さらに、例えば、予め第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧と、補正された第2測定波長成分の光強度GCとの関係式あるいは対比表等を取得しておけば、補正された第2測定波長成分の光強度GCを関係式に代入し、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧を算出することが可能である。
【0042】
信号処理装置17Aに接続されたデータ記憶装置170Aは、光強度記憶モジュール172A、補正光強度記憶モジュール174A、関係記憶モジュール175A、及び差圧記憶モジュール176Aを有する。光強度記憶モジュール172Aは、測定用受光素子153が検出した第2測定波長成分の光強度GM及び参照用受光素子154が検出した参照波長成分の光強度GRを保存する。補正光強度記憶モジュール174Aは、補正モジュール74Aが算出した第2測定波長成分の補正された光強度GCを保存する。関係記憶モジュール175Aは、予め取得した第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧と補正された第2測定波長成分の光強度GCとの関係式等を保存する。また関係記憶モジュール175Aは、予め取得した比αの値も保存する。差圧記憶モジュール176Aは、差圧測定モジュール75Aが算出した第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を保存する。
【0043】
従来の差圧測定システムにおいては、第2測定波長成分を2方向に分割して干渉計で干渉させ、干渉計で形成された干渉縞をコンピュータで解析することにより第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を求めていた。そのため、干渉縞位置の同定等に処理時間がかかるという問題があった。これに対し、第1の実施の形態に係る差圧測定システムは、第2測定波長成分の光強度GMを測定することにより第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を測定しており、干渉縞の同定等の複雑な処理を必要としない。また従来の差圧測定システムで測定される干渉縞の信号は、光路差に依存しない光強度成分の信号に重畳していた。そのため、差圧の測定に必要な干渉縞の信号のダイナミックレンジが低いという問題があった。これに対し、第1の実施の形態に係る差圧測定システムで計測される第2測定波長成分の光強度GMは、第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を直接反映している。そのため、高いダイナミックレンジで第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を測定可能であり、僅かな差圧の変化も正確に測定することが可能となる。
【0044】
また、照射光を照射する光源114の光軸ズレや発光パワーの揺らぎ等によって、照射光の光強度が第1外圧PO1及び第2外圧PO2とは無関係に変調する場合がある。照射光の光強度が第1外圧PO1及び第2外圧PO2とは無関係に変調すると、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧測定に誤差が生じる。これに対し実施の形態に係る差圧測定システムは、補正モジュール74Aが、上記(22)式及び(24)式に示すように、第2測定波長成分の光強度GMを参照波長成分の光強度GRで割る。そのため、第2測定波長成分の光強度GMに含まれうる第1照射波長成分の光強度GS1の変調の影響を取り除くことが可能となる。さらに、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分が経由した光導波路30〜35, 94等の透過率Tが変調する場合もある。透過率Tが変調しても、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧測定に誤差が生じる。これに対し実施の形態に係る差圧測定システムは、上記(22)式に示すように、補正モジュール74Aが透過率Tの影響を受けない補正された第2測定波長成分の光強度GCを算出する。補正された第2測定波長成分の光強度GCは、第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を反映する第1センサ5の反射率V1及び第2センサ15の反射率V2のみが含まれる。それ故、実施の形態に係る差圧測定システムによれば、第1照射波長成分の光強度GS1の変調及び透過率Tの変調の影響を取り除き、高い精度で第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を測定することが可能となる。
【0045】
なお、光導波路30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 94, 95のそれぞれについては、シングルモード又はマルチモードの光ファイバ等が使用可能である。第1スプリッタ21、第2スプリッタ22、及び第3スプリッタ23のそれぞれには、光ファイバカプラ、ハーフミラー、又は薄膜導波路分岐装置等が使用可能である。第1波長フィルタ26、第2波長フィルタ126、測定用波長フィルタ53、及び参照用波長フィルタ63のそれぞれにはノッチフィルタやバンドパスフィルタ等が使用可能である。
【0046】
次に図14を用いて、第1の実施の形態に係る差圧測定方法について説明する。
【0047】
(a) ステップS101で、第1照射波長成分及び第2照射波長成分を含む照射光を、図1に示す光源114から光導波路30に照射する。ステップS102で第1照射波長成分は、光導波路30及び第1スプリッタ21を経て、光導波路31で第1センサ5に伝搬される。同時に第2照射波長成分も、光導波路30及び第1スプリッタ21を経て、光導波路31で第1センサ5に参照波長成分として伝搬される。第1照射波長成分は第1センサ5の第1波長フィルタ26を透過し、参照波長成分は第1波長フィルタ26で反射される。
【0048】
(b) ステップS103で、第1波長フィルタ26の主面から照射された第1照射波長成分を、第1センサ5の第1集光部24で集光する。ステップS104で、第1集光部24の焦点よりも近くに配置され、第1外圧PO1に応じて第1集光部24の光軸上を移動する第1感圧部25で、集光された第1照射波長成分を反射する。ステップS105で、反射された第1照射波長成分を第1集光部24で集光し、集光された第1照射波長成分は第1波長フィルタ26を経て第1測定波長成分として再び光導波路31に入射する。第1感圧部25は第1集光部24の焦点よりも近くに配置されているため、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有する。
【0049】
(c) ステップS106で、第1測定波長成分及び参照波長成分は光導波路31、第1スプリッタ21、光導波路32、及び第2スプリッタ22を経て、光導波路33で第2センサ15に伝搬される。第1測定波長成分は第2センサ15の第2波長フィルタ126を透過し、参照波長成分は第2波長フィルタ126で反射される。ステップS107で、第2波長フィルタ126の主面から照射された第1測定波長成分を、第2センサ15の第2集光部124で集光する。
【0050】
(d) ステップS108で、第2集光部124の焦点よりも遠くに配置され、第2外圧PO2に応じて第2集光部124の光軸上を移動する第2感圧部125で、集光された第1測定波長成分を反射する。ステップS109で、反射された第1測定波長成分を第2集光部124で集光し、集光された第1測定波長成分は第2測定波長成分として再び光導波路33に入射する。第2感圧部125は第2集光部124の焦点よりも遠くに配置されているため、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有する。
【0051】
(e) ステップS110で、第2測定波長成分は光導波路33、第2スプリッタ22、光導波路34、第3スプリッタ23、光導波路35、及び測定用波長フィルタ53を経て、光導波路94で測定用受光素子153に伝搬される。測定用受光素子153は第2測定波長成分を受光し、上記(20)式で与えられる第2測定波長成分の光強度GMを測定する。測定用受光素子153は、第2測定波長成分の光強度GMを信号処理装置17Aの補正モジュール74Aに電気的に送信する。補正モジュール74Aは受信した第2測定波長成分の光強度GMを光強度記憶モジュール172Aに保存する。
【0052】
(f) ステップS110と同時にステップS111で、参照波長成分は光導波路33、第2スプリッタ22、光導波路34、第3スプリッタ23、光導波路36、及び参照用波長フィルタ63を経て、光導波路95で参照用受光素子154に伝搬される。参照用受光素子154は参照波長成分を受光し、上記(21)式で与えられる参照波長成分の光強度GRを測定する。参照用受光素子154は、参照波長成分の光強度GRを信号処理装置17Aの補正モジュール74Aに電気的に送信する。補正モジュール74Aは受信した参照波長成分の光強度GRを光強度記憶モジュール172Aに保存する。
【0053】
(g) ステップS112で補正モジュール74Aは、光強度記憶モジュール172Aから第2測定波長成分の光強度GM及び参照波長成分の光強度GRを読み出す。次に補正モジュール74Aは、第2測定波長成分の光強度GMを参照波長成分の光強度GRで割り、上記(24)式で与えられる補正された第2測定波長成分の光強度GCを算出する。補正モジュール74Aは、算出した第2測定波長成分の補正された光強度GCを補正光強度記憶モジュール174Aに保存する。
【0054】
(h) ステップS113で差圧測定モジュール75Aは、補正光強度記憶モジュール174Aから補正された第2測定波長成分の光強度GCを読み出す。次に差圧測定モジュール75Aは、予め取得された第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧と補正された第2測定波長成分の光強度GCとの関係式を、関係記憶モジュール175Aから読み出す。また差圧測定モジュール75Aは、予め取得された比αの値も関係記憶モジュール175Aから読み出す。その後差圧測定モジュール75Aは、関係式に比αの値及び補正された第2測定波長成分の光強度GCを代入し、第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を算出する。差圧測定モジュール75Aは算出した第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を差圧記憶モジュール176Aに保存し、第1の実施の形態に係る差圧測定方法を終了する。
【0055】
以上示した第1の実施の形態に係る差圧測定方法によれば、第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を直接反映する補正された第2測定波長成分の光強度GCから第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧が測定される。そのため、高いダイナミックレンジで第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を測定することが可能となる。また補正された第2測定波長成分の光強度GCは、第2測定波長成分の光強度GMから差圧測定に無関係な第1照射波長成分の光強度GS1及び透過率Tを除した値に相当する。したがって第1の実施の形態に係る差圧測定方法によれば、第1照射波長成分の光強度GS1及び透過率Tのそれぞれの変調に影響されることなく、高い精度で第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を測定することが可能となる。
【0056】
なお図1に示す補正モジュール74Aは、第2測定波長成分の光強度GMを参照波長成分の光強度GRで割って、補正された第2測定波長成分の光強度GCを算出すると説明した。これに対し、参照波長成分の光強度GRを第2測定波長成分の光強度GMで割った値を、補正された第2測定波長成分の光強度GCとしてもよい。
【0057】
(第1の実施の形態の変形例)
第1の実施の形態においては、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とが「負」の相関関係を有するよう図1に示す第1センサ5の第1圧力感度が設定され、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とが「正」の相関関係を有するよう第2センサ15の第2圧力感度が設定された例を説明した。これに対し、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とが「正」の相関関係を有するよう第1センサ5の第1圧力感度が設定され、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とが「負」の相関関係を有するよう第2センサ15の第2圧力感度が設定されてもよい。
【0058】
具体的には、第1の実施の形態の変形例に係る第1センサ5の第1感圧部25は、図15に示すように、第1集光部24に対して第1集光部24の焦点距離FL1Iに第1圧力依存距離L1を足した距離(FL1I + L1)をおいて配置されている。第1外圧PO1が上昇すると第1感圧部25は第1集光部24の焦点に向かって移動し、第1圧力依存距離L1は短くなる。そのため、第1測定波長成分の光強度は強まる。反対に第1外圧PO1が低下すると第1感圧部25は第1集光部24の焦点から遠ざかる方向に移動し、第1圧力依存距離L1が長くなる。そのため、第1測定波長成分の光強度は弱まる。
【0059】
また、第1の実施の形態の変形例に係る第2センサ15の第2感圧部125は、図16に示すように、第2集光部124に対して第2集光部124の焦点距離FL2Iから第2圧力依存距離L2を引いた距離(FL2I - L2)をおいて配置されている。第2外圧PO2が上昇すると第2感圧部125は第2集光部124に向かって移動し、第2圧力依存距離L2は長くなる。そのため、第2測定波長成分の光強度は弱まる。反対に第2外圧PO2が低下すると第2感圧部125は第2集光部124の焦点に向かって移動し、第2圧力依存距離L2が短くなる。そのため、第2測定波長成分の光強度は強まる。
【0060】
第1の実施の形態の変形例においても、第2圧力感度が第1圧力感度に対して正負の符号が反対の感度を有している。そのため、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧が一定である限り、第1外圧PO1及び第2外圧PO2が変化しても第2測定波長成分の光強度は一定となる。したがって、第1外圧PO1及び第2外圧PO2のそれぞれの値が変化しても、第1外圧PO1及び第2外圧PO2の差圧を正確に測定することが第1の実施の形態の変形例においても可能となる。
【0061】
(第2の実施の形態)
図17に示す第2の実施の形態に係る差圧測定システムの光源114は、図1と同様である。光源114には、第1照射波長成分及び参照波長成分を伝搬する光導波路130が接続されている。光導波路130には第1波長分離部321が接続されている。第1波長分離部321には光導波路131及び光導波路132が接続されている。第1波長分離部321はそれぞれ波長の異なる第1照射波長成分と参照波長成分とを分離し、第1照射波長成分を光導波路131に中継し、参照波長成分を光導波路132に中継する。
【0062】
第1照射波長成分は、光導波路131で第1センサ105に伝搬される。図18に示すように、第2の実施の形態に係る第1センサ105は、第1外圧PO1を受ける第1感圧部225を有する。第1感圧部225は、光導波路131の端部から放射された第1照射波長成分の入射角が30度となるように配置されている。また第1感圧部225の法線方向において、第1感圧部225と光導波路131とは初期状態で第1放射距離H1をおいて配置されている。第1外圧PO1が上昇した場合、図19に示すように、第1感圧部225は初期状態から第1圧力依存距離L1が第1感圧部225の法線方向において正に増加するよう移動する。そのため、第1感圧部225と光導波路130との間隔は第1放射距離H1から第1圧力依存距離L1を引いた距離(H1 - L1)となる。第1外圧PO1が低下した場合、第1感圧部225は第1圧力依存距離L1が第1感圧部225の法線方向において減少するよう移動する。
【0063】
第1感圧部225で反射された第1照射波長成分が第1測定波長成分として入射する光導波路133は光導波路131に隣接して配置される。光導波路131, 133のそれぞれの断面の直径をQとすると、光導波路131の端面の中心と、光導波路133の端面の中心との間隔は、第1感圧部225の主面と平行方向において直径Qの2倍の長さに相当する。ここで、図18に示すように第1圧力依存距離L1が0の場合、反射された第1照射波長成分の光強度のピークは光導波路131の端面の中心から、第1感圧部225の主面と平行方向において直径Qの1.5倍の距離をおいた点に現れるよう、設定されている。したがって図20に示すように、光導波路133に入射する第1測定波長成分は、第1照射波長成分のうち光強度がピークとなる光軸上の光成分を含まない。ここで第1外圧PO1が上昇し、図19に示すように第1圧力依存距離L1が増加して第1感圧部225が光導波路131, 133に近づくと、図21に示すように第1感圧部225で反射された第1照射波長成分の光強度のピークが現れる位置は光導波路133から遠ざかる。反対に、第1外圧PO1が低下し、第1圧力依存距離L1が減少して第1感圧部225が光導波路131, 133から遠ざかると、第1感圧部225で反射された第1照射波長成分の光強度のピークが現れる位置は光導波路133に近づく。
【0064】
したがって、第1センサ105においては第1外圧PO1が上昇した場合、第1測定波長成分の光強度が弱まり、第1外圧PO1が低下した場合、第1測定波長成分の光強度が強まる。つまり、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有するよう、第1センサ105の圧力感度である第1圧力感度が設定されている。換言すれば、図22に示すように、第1外圧PO1が上昇するほど第1センサ105の全体の反射率は低下し、第1外圧PO1が低下するほど第1センサ105の全体の反射率は上昇する。
【0065】
図17に示す光導波路132及び光導波路133は光カプラ等の第1結合部322に接続されている。第1結合部322には光導波路134が接続されている。第1結合部322は、光導波路132で伝搬された参照波長成分及び光導波路133で伝搬された第1測定波長成分を光導波路134に中継する。光導波路134には第2波長分離部323が接続されている。第2波長分離部323には光導波路135及び光導波路136が接続されている。第2波長分離部323は光導波路134で伝搬された第1測定波長成分及び参照波長成分を分離し、第1測定波長成分を光導波路135に中継する。また第2波長分離部323は、参照波長成分を光導波路136に中継する。
【0066】
第1測定波長成分は光導波路135で第2センサ115に伝搬される。図23に示すように、第2の実施の形態に係る第2センサ115は、第2外圧PO2を受ける第2感圧部325を有する。第2感圧部325は、光導波路135の端部から放射された第1測定波長成分の入射角が30度となるように配置されている。また第2感圧部325の法線方向において、第2感圧部325と光導波路135とは初期状態で第2放射距離H2をおいて配置されている。第2放射距離H2は第1放射距離H1と同じでもよい。第2外圧PO2が上昇した場合、図24に示すように、第2感圧部325は初期状態から第2圧力依存距離L2が第2感圧部325の法線方向において正に増加するよう移動する。そのため、第2感圧部325と光導波路135との間隔は第2放射距離H2から第2圧力依存距離L2を引いた距離(H2 - L2)となる。第2外圧PO2が低下した場合、第2感圧部325は第2圧力依存距離L2が第2感圧部325の法線方向において減少するよう移動する。なお、第1外圧PO1に対する第1圧力依存距離L1の比と、第2外圧PO2に対する第2圧力依存距離L2の比とは等しくなるよう設定されている。
【0067】
第2感圧部325で反射された第1測定波長成分が第2測定波長成分として入射する光導波路137は光導波路135に隣接して配置される。光導波路135, 137のそれぞれの断面の直径をQとすると、光導波路135の端面の中心と、光導波路137の端面の中心との間隔は、第2感圧部325の主面と平行方向において直径Qと等しい長さである。ここで、図23に示すように第2圧力依存距離L2が0の場合、反射された第1測定波長成分の光強度のピークは光導波路135の端面の中心から、第2感圧部325の主面と平行方向において直径Qの1.5倍の距離をおいた点に現れるよう、設定されている。したがって、図25に示すように、光導波路137に入射する第2測定波長成分は、第1測定波長成分のうち光強度がピークとなる光軸上の光成分を含まない。ここで第2外圧PO2が上昇し、図24に示すように第2圧力依存距離L2が増加して第2感圧部325が光導波路135, 137に近づくと、図26に示すように第2感圧部325で反射された第1測定波長成分の光強度のピークが現れる位置は光導波路137に近づく。反対に、第2外圧PO2が低下し、第2圧力依存距離L2が減少して第2感圧部325が光導波路135, 137から遠ざかると、第2感圧部325で反射された第1測定波長成分の光強度のピークが現れる位置は光導波路137から遠ざかる。
【0068】
したがって、第2センサ115においては第2外圧PO2が上昇した場合、第2測定波長成分の光強度が強まり、第2外圧PO2が低下した場合、第2測定波長成分の光強度が弱まる。つまり、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有するよう、第2センサ115の圧力感度である第2圧力感度が設定されている。換言すれば、図27に示すように、第2外圧PO2が上昇するほど第2センサ115の全体の反射率は上昇し、第2外圧PO2が低下するほど第2センサ115の全体の反射率は低下する。したがって、図28に示すように、第1圧力感度と第2圧力感度とは正負の符号が反対の関係を有している。
【0069】
図29に示すように、第1外圧PO1が上昇し、第1圧力依存距離L1が長くなるほど第2測定波長成分の光強度は弱まる。これに対し、第2外圧PO2が上昇し、第2圧力依存距離L2が長くなるほど第2測定波長成分の光強度は強まる。しかし、第1圧力依存距離L1と第2圧力依存距離L2との差(L1 - L2)が一定である限り、図30に示すように第1圧力依存距離L1及び第2圧力依存距離L2のそれぞれが変動しても、第2測定波長成分の光強度は変化しない。したがって、第2測定波長成分の光強度は、第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を正確に反映する。
【0070】
図17に示す光導波路136及び光導波路137のそれぞれは、光カプラ等の第2結合部324に接続されている。第2結合部324には光導波路138が接続されている。第2結合部324は、光導波路136で伝搬された参照波長成分及び光導波路137で伝搬された第2測定波長成分のそれぞれを光導波路138に中継する。光導波路138には第3波長分離部330が接続されている。第3波長分離部330には光導波路94及び光導波路95が接続されている。第3波長分離部330は光導波路138で伝搬された第2測定波長成分及び参照波長成分を分離し、第2測定波長成分を光導波路94に中継する。また第3波長分離部330は、参照波長成分を光導波路95に中継する。
【0071】
光導波路94で伝搬された第2測定波長成分は測定用受光素子153で受光され、測定用受光素子153は第2測定波長成分の光強度GMを信号処理装置17Aに電気的に送信する。光導波路95で伝搬された参照波長成分は参照用受光素子154で受光され、参照用受光素子154は参照波長成分の光強度GRを信号処理装置17Aに電気的に送信する。
【0072】
なお、第1照射波長成分、第1測定波長成分、及び第2測定波長成分が伝搬される光導波路130, 131, 133, 134, 135, 137, 138, 94と、参照波長成分が伝搬される光導波路130, 132, 134, 136, 138, 95とは、光路長が等しく設定されていることが好ましい。
信号処理装置17Aが第2測定波長成分の光強度GM及び参照波長成分の光強度GRから第1外圧PO1と第2外圧PO2との差圧を算出する方法は、第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。なお、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とが「正」の相関関係を有するよう図17に示す第1センサ105の第1圧力感度を設定し、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とが「負」の相関関係を有するよう第2センサ115の第2圧力感度が設定してもよい。
【0073】
次に図31を用いて、第2の実施の形態に係る差圧測定方法について説明する。
【0074】
(a) ステップS101を図14と同様に実施する。図31のステップS102で第1照射波長成分は、図17に示す光導波路130、第1波長分離部321、及び光導波路131を経て第1センサ105に伝搬される。第1照射波長成分は、光導波路131の端部から放射される。ステップS103で、第1外圧PO1に応じて移動する第1感圧部225で第1照射波長成分を反射する。ステップS104で、反射された第1照射波長成分は第1測定波長成分として光導波路133に入射する。光導波路133は光導波路131に対し、初期状態で反射された第1照射波長成分の光強度のピークが現れる位置よりも遠くに配置されているため、第1外圧PO1と第1測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有する。
【0075】
(b) ステップS104で第1測定波長成分は、光導波路133、第1結合部322、光導波路134、第2波長分離部323、及び光導波路135を経て第2センサ115に伝搬される。第1測定波長成分は、光導波路135の端部から放射される。ステップS105で、第2外圧PO2に応じて移動する第2感圧部325で第1測定波長成分を反射する。ステップS106で、反射された第1測定波長成分は第2測定波長成分として光導波路137に入射する。光導波路137は光導波路135に対し、初期状態で反射された第1測定波長成分の光強度のピークが現れる位置よりも近くに配置されているため、第2外圧PO2と第2測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有する。
【0076】
(c) ステップS107で、第2測定波長成分は光導波路137、第2結合部324、光導波路138、第3波長分離部330、及び光導波路94を経て測定用受光素子153に伝搬される。測定用受光素子153は第2測定波長成分を受光し、第2測定波長成分の光強度GMを測定する。測定用受光素子153は、第2測定波長成分の光強度GMを信号処理装置17Aに電気的に送信する。
【0077】
(d) またステップS201で、第2照射波長成分は光導波路130、第1波長分離部321、光導波路132、第1結合部322、光導波路134、第2波長分離部323、光導波路136、第2結合部324、光導波路138、第3波長分離部330、及び光導波路95を経由して参照用受光素子154に参照波長成分として伝搬される。ステップS202で参照用受光素子154は参照波長成分を受光し、参照波長成分の光強度GRを測定する。参照用受光素子154は、参照波長成分の光強度GRを信号処理装置17Aに電気的に送信する。なおステップS201及びステップS202は、ステップS102乃至ステップS108と並行に実施される。最後にステップS301を図14のステップS112と同様に実施し、図31のステップS302を図14のステップS113と同様に実施実施して、第2の実施の形態に係る差圧測定方法を終了する。
【0078】
(第2の実施の形態の変形例)
図32に示すように、光導波路131から放射された第1照射波長成分を集光するレンズ等の第1集光部301を、光導波路131と第1感圧部225との間に配置してもよい。第1集光部301を配置することにより第1照射波長成分が集光され、第1感圧部225で反射された第1照射波長成分の図20に示した光強度の広がりが狭まる。そのため第1感圧部225の移動に伴う第1測定波長成分の光強度の変化量が大きくなり、より高い感度で第1外圧PO1の変化を検出することが可能となる。この場合、第2センサ115においても、図33に示すように、光導波路135から放射された第1測定波長成分を集光するレンズ等の第2集光部302を、光導波路135と第2感圧部325との間に配置するとよい。
【0079】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図2に示す第1波長フィルタ26の材料の屈折率と、空気等の第1波長フィルタ26の周囲の媒体の屈折率との差に起因して、第1波長フィルタ26と空気の界面においてフレネル反射が生じ得る。フレネル反射した第1照射波長成分は、光導波路31を第1スプリッタ21に向かって進行する。したがって、フレネル反射した第1照射波長成分と第1センサ5から出力された第1測定波長成分の間には、第1波長フィルタ26の主面と第1感圧部25との間隔に比例する位相差が生じる。第1波長フィルタ26の主面と第1感圧部25との間の往復距離が第1照射波長成分のコヒーレンス長以内であると、フレネル反射した第1照射波長成分と第1測定波長成分とは干渉する。そのため干渉縞が生じ、第2測定波長成分の光強度測定の誤差要因となりうる。第2センサ15においても同様である。干渉を防止するためには、第1波長フィルタ26の主面と第1感圧部25との間の往復距離及び第2波長フィルタ126の主面と第2感圧部125との間の往復距離のそれぞれを、第1照射波長成分のコヒーレンス長以上にする。さらに、第1波長フィルタ26の主面と第1感圧部25との間の往復距離と、第2波長フィルタ126の主面と第2感圧部125との間の往復距離との差も第1照射波長成分のコヒーレンス長以上にする。あるいは、第1波長フィルタ26の第1集光部24側の主面に、端部を開口数に基づいて斜め研磨処理された光導波路をさらに配置することや、端部に反射防止膜を堆積された光導波路をさらに配置することによっても、干渉を防止することが可能となる。第2センサ15においても同様である。
【0080】
また、第1波長フィルタ26の主面と第1感圧部25との間の1度往復した第1照射波長成分と、2度往復した第1照射波長成分も、第1波長フィルタ26の主面と第1感圧部25との間の往復距離に相当する光路差により干渉しうる。図34は、第1測定波長成分の光強度の実測値と、干渉を無視した場合の理論値との差を理論値で割った値をエラーとして、光路差のスキャン量とエラーとの関係を示したグラフである。端部を反射防止処理した光導波路を配置しなかった場合、干渉により光路差のスキャン量に応じてエラーが生じている。これに対し、端部を反射防止処理した光導波路を配置して干渉を防止した場合、エラーはほぼ0%になる。
【0081】
さらに第2の実施の形態においては、図18に示す第1センサ105において光導波路131と光導波路133との間隔を2Qとし、図23に示す第2センサ115において光導波路135と光導波路137との間隔をQとすることにより、第1圧力感度及び第2圧力感度のそれぞれで定義される圧力と光強度との相関関係の正負を逆にすることを説明した。これに対し、第2センサ115において光導波路135と光導波路137との間隔を第1センサ105と同じくQとし、第2放射距離H2を第1放射距離H1の2倍とすること等によっても、第1圧力感度及び第2圧力感度のそれぞれで定義される圧力と光強度との相関関係の正負を逆にすることが可能である。
【0082】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る差圧測定システムの模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る第1センサの第1の模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る基本ガウシアンビームの模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る光線の第1の模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る光線の第2の模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る第1照射波長成分のビーム径を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る第1センサの第2の模式図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る第2センサの模式図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る第1圧力感度と第2圧力感度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る集光部から感圧部までの距離と第2測定波長成分の光強度との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る第1及び第2圧力依存距離の差と第2測定波長成分の光強度との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る第1及び第2センサの反射率と第2測定波長成分の光強度との関係を示す第1のグラフである。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る第1及び第2センサの反射率と第2測定波長成分の光強度との関係を示す第2のグラフである。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る差圧測定方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る第1センサの模式図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る第2センサの模式図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る差圧測定システムの模式図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る第1センサの第1の模式図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る第1センサの第2の模式図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る第1センサの内部で反射された第1照射波長成分の光強度分布を示す第1のグラフである。
【図21】本発明の第2の実施の形態に係る第1センサの内部で反射された第1照射波長成分の光強度分布を示す第2のグラフである。
【図22】本発明の第2の実施の形態に係る第1センサの反射率を示すグラフである。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係る第2センサの第1の模式図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態に係る第2センサの第2の模式図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態に係る第2センサの内部で反射された第1測定波長成分の光強度分布を示す第1のグラフである。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係る第2センサの内部で反射された第1測定波長成分の光強度分布を示す第2のグラフである。
【図27】本発明の第2の実施の形態に係る第2センサの反射率を示すグラフである。
【図28】本発明の第2の実施の形態に係る第1センサ及び第2センサの反射率を示すグラフである。
【図29】本発明の第2の実施の形態に係る第2測定波長成分の光強度を示す第1のグラフである。
【図30】本発明の第2の実施の形態に係る第2測定波長成分の光強度を示す第2のグラフである。
【図31】本発明の第2の実施の形態に係る差圧測定方法を示すフローチャートである。
【図32】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る第1センサの模式図である。
【図33】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る第2センサの模式図である。
【図34】本発明のその他の実施の形態に係る第1センサで生じうる干渉の影響を説明するグラフある。
【符号の説明】
【0084】
5, 105…第1センサ
15, 115…第2センサ
17A…信号処理装置
21…第1スプリッタ
22…第2スプリッタ
23…第3スプリッタ
24, 301…第1集光部
25, 225…第1感圧部
26…第1波長フィルタ
29…レンズ
30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 94, 95, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 136, 137, 138…光導波路
53…測定用波長フィルタ
63…参照用波長フィルタ
74A…補正モジュール
75A…差圧測定モジュール
114…光源
124, 302…第2集光部
125, 325…第2感圧部
126…第2波長フィルタ
153…測定用受光素子
154…参照用受光素子
170A…データ記憶装置
172A…光強度記憶モジュール
174A…補正光強度記憶モジュール
175A…関係記憶モジュール
176A…差圧記憶モジュール
321…第1波長分離部
322…第1結合部
323…第2波長分離部
324…第2結合部
330…第3波長分離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1照射波長成分及び前記第1照射波長成分とは波長の異なる第2照射波長成分を含む照射光を照射する光源と、
第1圧力感度で第1外圧に応じて前記第1照射波長成分の光強度を変化させ、第1測定波長成分として出力する第1センサと、
前記第1圧力感度に対して正負の符号が反対の第2圧力感度で、第2外圧に応じて前記第1測定波長成分の光強度を変化させ、第2測定波長成分として出力する第2センサと、
前記第1照射波長成分、前記第1測定波長成分、及び前記第2測定波長成分を伝搬し、前記第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬する光導波路と、
前記第2測定波長成分及び前記参照波長成分に共通する変調を補正する補正モジュールと、
前記変調が補正された前記第2測定波長成分の光強度から、前記第1外圧及び第2外圧の差圧を測定する差圧測定モジュール
とを備えることを特徴とする差圧測定システム。
【請求項2】
前記補正モジュールは、前記第2測定波長成分の光強度を前記参照波長成分の光強度で割ることを特徴とする請求項1に記載の差圧測定システム。
【請求項3】
前記補正モジュールは、前記参照波長成分の光強度を前記第2測定波長成分の光強度で割ることを特徴とする請求項1に記載の差圧測定システム。
【請求項4】
前記第1外圧と前記第1測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有するよう、前記第1圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項5】
前記第1センサは、
前記第1照射波長成分を集光する第1集光部と、
前記第1集光部の焦点よりも前記第1集光部の近くに移動可能に配置され、前記第1外圧に応じて前記第1集光部の光軸上を移動し、前記集光された第1照射波長成分を反射する第1感圧部
とを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項6】
前記第2外圧と前記第2測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有するよう、前記第2圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項7】
前記第2センサは、
前記第1測定波長成分を集光する第2集光部と、
前記第2集光部の焦点よりも遠くに移動可能に配置され、前記第2外圧に応じて前記第2集光部の光軸上を移動し、前記集光された第1測定波長成分を反射する第2感圧部
とを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項8】
前記第1外圧と前記第1測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有するよう、前記第1圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項9】
前記第1センサは、
前記第1照射波長成分を集光する第1集光部と、
前記第1集光部の焦点よりも遠くに移動可能に配置され、前記第1外圧に応じて前記第1集光部の光軸上を移動し、前記集光された第1照射波長成分を反射する第1感圧部
とを備えることを特徴とする請求項1、2、3、8のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項10】
前記第2外圧と前記第2測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有するよう、前記第2圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項1、2、3、8、9のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項11】
前記第2センサは、
前記第1測定波長成分を集光する第2集光部と、
前記第2集光部の焦点よりも前記第2集光部の近くに移動可能に配置され、前記第2外圧に応じて前記第2集光部の光軸上を移動し、前記集光された第1測定波長成分を反射する第2感圧部
とを備えることを特徴とする請求項1、2、3、8、9、10のいずれか1項に記載の差圧測定システム。
【請求項12】
第1照射波長成分及び前記第1照射波長成分とは波長の異なる第2照射波長成分を含む照射光を照射することと、
第1圧力感度で第1外圧に応じて前記第1照射波長成分の光強度を変化させ、第1測定波長成分として出力することと、
前記第1圧力感度に対して正負の符号が反対の第2圧力感度で、第2外圧に応じて前記第1測定波長成分の光強度を変化させ、第2測定波長成分として出力することと、
前記第1照射波長成分、前記第1測定波長成分、及び前記第2測定波長成分を伝搬し、前記第2照射波長成分を参照波長成分として伝搬することと、
前記第2測定波長成分及び前記参照波長成分に共通する変調を補正することと、
前記変調が補正された前記第2測定波長成分の光強度から、前記第1外圧及び第2外圧の差圧を測定すること
とを含むことを特徴とする差圧測定方法。
【請求項13】
前記変調を補正することは、前記第2測定波長成分の光強度を前記参照波長成分の光強度で割ることを特徴とする請求項12に記載の差圧測定方法。
【請求項14】
前記変調を補正することは、前記参照波長成分の光強度を前記第2測定波長成分の光強度で割ることを特徴とする請求項12に記載の差圧測定方法。
【請求項15】
前記第1外圧と前記第1測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有するよう、前記第1圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の差圧測定方法。
【請求項16】
前記第1測定波長成分として出力することは、
前記第1照射波長成分を第1集光部で集光することと、
前記第1集光部の焦点よりも前記第1集光部の近くに移動可能に配置され、前記第1外圧に応じて前記第1集光部の光軸上を移動する第1感圧部で前記集光された第1照射波長成分を反射すること
とを含むことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の差圧測定方法。
【請求項17】
前記第2外圧と前記第2測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有するよう、前記第2圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項に記載の差圧測定方法。
【請求項18】
前記第2測定波長成分として出力することは、
前記第1測定波長成分を第2集光部で集光することと、
前記第2集光部の焦点よりも遠くに移動可能に配置され、前記第2外圧に応じて前記第2集光部の光軸上を移動する第2感圧部で前記集光された第1測定波長成分を反射すること
とを含むことを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の差圧測定方法。
【請求項19】
前記第1外圧と前記第1測定波長成分の光強度とは正の相関関係を有するよう、前記第1圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の差圧測定方法。
【請求項20】
前記第1測定波長成分として出力することは、
前記第1照射波長成分を第1集光部で集光することと、
前記第1集光部の焦点よりも遠くに移動可能に配置され、前記第1外圧に応じて前記第1集光部の光軸上を移動する第1感圧部で前記集光された第1照射波長成分を反射すること
とを含むことを特徴とする請求項12、13、14、19に記載の差圧測定方法。
【請求項21】
前記第2外圧と前記第2測定波長成分の光強度とは負の相関関係を有するよう、前記第2圧力感度が設定されていることを特徴とする請求項12、13、14、19、20のいずれか1項に記載の差圧測定方法。
【請求項22】
前記第2測定波長成分として出力することは、
前記第1測定波長成分を第2集光部で集光することと、
前記第2集光部の焦点よりも前記第2集光部の近くに移動可能に配置され、前記第2外圧に応じて前記第2集光部の光軸上を移動する第2感圧部で前記集光された第1測定波長成分を反射すること
とを含むことを特徴とする請求項12、13、14、19、20、21のいずれか1項に記載の差圧測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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