説明

布検出装置及び布検出方法

【課題】複雑環境下における任意位置の布検出を行う方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる布検出装置は、画像を取り込むカメラと、サンプル画像からしわ特徴を学習し、その学習結果とカメラによって取り込まれた測定対象物の入力画像から布領域の検出を行う演算装置と、しわ特徴の学習結果を記憶する記憶装置と、検出された布領域を表示させるディスプレイとを備えたものである。このような構成により、複雑環境下における任意位置の布検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像中の布領域を検出する布検出装置及び布検出方法に関するものであり、特に、複雑環境下における画像から布領域を検出して切り出す布検出装置及び布検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、裁断機やミシン等の布送りを行う機器において、布送りの際のしわを無くすために、しわの有無を検出し、しわがなくなるように布送りを制御する技術が存在する。
例えば、特許文献1には、欠陥情報をしわ、破れ及び汚れを識別する欠陥種別情報と、布片の欠陥位置を示す欠陥位置情報とからなる布片検査装置が開示されている。特許文献2には、生地の走行振れや皺の発生を防止し、欠陥の濃淡、形状等も識別できる検反方法及びその装置が開示されている。特許文献3には繊維束や繊維材料のより正確な検出、およびさらなる特徴の測定を可能にし、測定値が作動幅にわたるしわの検出に利用される技術が開示されている。また、特許文献4には、照明部分を光学的に観察する赤外線センサを設けてある繊維構造物あるいはフィルム状物に内在するしわを検出する検反装置が開示されている。さらに特許文献5には、上下方向の移動も可能な、カメラおよびスリット撮影機を搭載した移動計測ビークルを半円周軌道固定台上に載せ、局所領域の変形過程の計測のために、格子模様が描かれた柔軟な生地を対象に貼り付ける技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3813121号公報
【特許文献2】特開平6−33368号公報
【特許文献3】特開2002−173840号公報
【特許文献4】特開平3−255946号公報
【特許文献5】特開2001−194127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、従来のしわを検出する技術では、測定対象物の位置や状態がある程度特定された状況でしわの有無を検出するものであり、複雑環境下における任意位置の布検出を目的とするものではなかった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、画像中の複雑環境下における任意位置の布検出を行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる布検出装置は、画像を取り込むカメラと、サンプル画像からしわ特徴を学習し、その学習結果と前記カメラによって取り込まれた測定対象物の入力画像から布領域の検出を行う演算装置と、前記しわ特徴の学習結果を記憶する記憶装置と、検出された前記布領域を表示させるディスプレイとを備えたものである。このような構成により、複雑環境下における任意位置の布検出を行うことができる。
【0006】
また、本発明にかかる布検出方法は、サンプル画像からしわ特徴を学習し、その学習結果と前記カメラによって取り込まれた測定対象物の入力画像のしわ特徴を比較することにより、入力画像の布領域を検出する方法である。これにより、複雑環境下における任意位置の布検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、画像中の複雑環境下における任意位置の布検出を行う方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の実施の形態1.
まず、図1を用いて、本実施の形態1にかかる布検出装置について説明する。この布検出装置100は、図1に示されるように、カメラ101、しわ特徴学習結果を記憶する記憶装置102、しわ特徴学習及び布検出のための演算装置103及び画像情報をユーザに提示するディスプレイ104を備えている。
【0009】
この装置100では、布を含む幾つかの複雑環境からなるサンプル画像から、演算装置103がしわ領域と非しわ領域のパターンを学習し、学習したパターン結果を記憶装置102へ記憶させる。記憶装置102に記憶されたしわ領域と非しわ領域のパターン結果を用いて、カメラ101からの入力画像をしわ領域、非しわ領域、不明領域に分類する。分類結果を元にして、演算装置103は、セグメンテーション手法を用いて、カメラ1から入力された複雑環境の画像からしわ領域を切り出し、布検出を行う。
【0010】
図2は、演算装置103が、サンプル画像からしわ領域と非しわ領域のパターンを識別し、そのパターン結果を記憶装置102へ記憶させるための処理を示すフロー図である。図2を用いて、演算装置103によるしわ特徴学習を、記憶装置102へ記憶させる処理の説明を行う。
【0011】
サンプル画像は、特定の空間周波数を強調するフィルタを用いることにより、特定の空間周波数が強調された画像が取り出される(S101)。次に、これらの特定周波数強調画像より、しわ領域と非しわ領域を人手で切り出す(S102及びS103)。演算装置103は、切り出された各領域について、しわの濃度ヒストグラムを抽出し、これらの濃度ヒストグラムをしわの特徴量として記録する(S104)。濃度ヒストグラムは、濃度を25分割したときの出現頻度をしわの特徴量としている。演算装置103は、記録されたしわ領域と非しわ領域の特徴量を学習する(S105)。演算装置103は、その結果を記憶装置102に記憶させる(S106)。
【0012】
図3は、演算器103を用いて、カメラ1から入力された複雑環境の画像を、しわ領域、非しわ領域及び不明領域の3つの領域に分類するための処理を示すフロー図である。図3を用いて、複雑環境の画像からしわ領域を切り出す処理の説明を行う。
【0013】
演算器103は、カメラ101から入力された複雑環境の画像の一部を切り出し、切り出されたブロックに対して濃度ヒストグラムを計算し、上述した3領域のどれに分類されるかを算出する。これをラスタ走査などで入力画像の全領域に対して行うことにより、全領域を上述した3領域に分類する(S107)。分類した結果をもとに、セグメンテーション手法を用いて、しわ特徴を持つ領域を、複雑環境の画像から切り出し、布検出を行う(S108)。
【0014】
以上、説明したように、本実施の形態1にかかる布領域検出方法では、複雑環境の画像から、任意位置の布検出が可能である。
【0015】
発明の実施の形態2.
次に、本実施の形態2にかかる複雑環境の画像からの布検出の方法を説明する。図4及び図5は、本実施の形態2にかかる複雑環境の画像からの布検出の方法において使用する装置200である。図4及び図5に示される装置は、図1に示される装置に対して、2次元移動手段201又は3次元移動手段202、奥行き検出手段203及び環境地図204を追加したものであり、他の構成部分は同一の番号で示し、説明を省略する。
【0016】
図6は、本実施の形態2にかかる画像中の布領域検出のための処理を示すフロー図であり、このフロー図を用いて処理説明を行う。
【0017】
本実施の形態1で説明した、しわ特徴学習結果とカメラ101からの入力画像により、しわ領域検出を行う(S201)が、カメラ101からの入力画像は、奥行き検出手段203を用いた、2次元移動手段201又は3次元移動手段202による複数の視点からの画像であるため、奥行き検出も行う(S201)。これらの検出情報は、環境地図204に位置情報として登録される(S202)。
【0018】
2次元移動手段201又は3次元移動手段202により、カメラ101を移動させる(S203)。カメラ101を移動させることによる別の視点からの入力画像により、再度しわ領域検出および奥行き検出を行う(S204)。これらの検出情報は、環境地図204に過去の情報とマージして登録される(S205)。以降、ステップ203からステップ205を繰り返す。
【0019】
このような一連の処理により、複雑環境の画像から、任意位置の高精度な布検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】発明の実施の形態1にかかる布検出装置の構成図である。
【図2】発明の実施の形態1にかかるしわ特徴学習処理のフロー図である。
【図3】発明の実施の形態1にかかるしわ領域検出処理のフロー図である。
【図4】発明の実施の形態2にかかる布検出装置の構成図である。
【図5】発明の実施の形態2にかかる布検出装置の構成図である。
【図6】発明の実施の形態2にかかるしわ領域検出処理のフロー図である。
【符号の説明】
【0021】
100 布検出装置
101 カメラ
102 記憶装置
103 演算装置
104 ディスプレイ
200 布検出装置
201 2次元移動手段
202 3次元移動手段
203 奥行き検出手段
204 環境地図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を取り込むカメラと、
サンプル画像からしわ特徴を学習し、その学習結果と前記カメラによって取り込まれた測定対象物の入力画像から布領域の検出を行う演算装置と、
前記しわ特徴の学習結果を記憶する記憶装置と、
検出された前記布領域を表示させるディスプレイとを備えた布検出装置。
【請求項2】
前記カメラは、床の上を移動する2次元移動手段、又は3次元空間中を動く3次元移動手段と、
測定対象の置かれている3次元的な奥行き情報を検出する奥行き検出手段を有することを特徴とする請求項1記載の布検出装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記サンプル画像から得られたしわ領域及び非しわ領域のしわ特徴として濃度ヒストグラムを算出して、その濃度ヒストグラムのパターンを学習し、
入力画像の濃度ヒストグラムと学習した前記濃度ヒストグラムのパターンを比較することにより、布領域を検出することを特徴とする請求項1記載の布検出装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記2次元移動手段又は前記3次元移動手段によって、複数の視点から測定対象物の入力画像が取り込まれた際に、測定対象物の位置情報も前記記憶装置に記憶することを有する請求項1又は2記載の布検出装置。
【請求項5】
サンプル画像からしわ特徴を学習し、その学習結果とカメラによって取り込まれた測定対象物の入力画像のしわ特徴を比較することにより、入力画像の布領域を検出する布検出方法。
【請求項6】
測定対象物の入力画像を複数の視点から取り込むことにより、布検出を行うことを特徴とする請求項5記載の布検出方法。
【請求項7】
前記サンプル画像から得られたしわ領域及び非しわ領域のしわ特徴として濃度ヒストグラムを算出して、その濃度ヒストグラムのパターンを学習し、
入力画像の濃度ヒストグラムと学習した前記濃度ヒストグラムのパターンを比較することにより、布領域を検出することを特徴とする請求項5記載の布検出方法。
【請求項8】
前記サンプル画像において、カメラから得られた画像に特定の空間周波数成分を強調するフィルタをかけることで、強調されたしわ特徴を持つサンプル画像を得ることを特徴とする請求項5記載の布検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−59562(P2010−59562A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225006(P2008−225006)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 文部科学省、科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】