説明

布製品識別装置および布製品把持システム

【課題】容易且つ高精度で、布製品を識別できる布製品識別装置、および、該布製品識別装置を備えた布製品把持システムを得る。
【解決手段】布製品把持システム100は、第1載置台40Aに置かれる布製品を把持した後にその把持した布製品を展開して第2載置台40Bに静置するものであって、主に、布製品処理ロボット(把持装置)10と、第2載置台40B、および制御部30の一部(判別部)を含む布製品識別装置50と、カメラ16と、から構成される。判別部の主要部である布製品判別ソフトウェアは、カメラ16で撮像した画像データから得られる布製品の光線の透過量に基づいて、布製品の所定部位を判別するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、タオル、シーツ等の布製品の自動識別装置および自動把持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アパレル業界や、クリーニング業界、リネンサプライ業界、福祉業界、医療業界等から、布製品のハンドリング、例えば、布製品の搬送や、布製品の積み重ね、布製品の折り畳み等を全て自動で行うことが可能なロボットの開発を待ち望む声が聞かれる。
【0003】
ところで、このような布製品の全自動ハンドリングを実現させる技術の一つとして、個々の布製品の特徴部分を認識する技術が提案されている。例えば、下記特許文献1においては、対象衣類の状態を入力画像から推定する衣類状態推定方法において、衣類の大まかな基本形状を表すモデルを作成し、このモデルを用いて、一点で把持した時に起こり得る形状をすべて予測し、この予測形状の解析に応じて、一点で把持された前記対象衣類を撮影した入力画像から得られる特徴量を処理し、どの予測形状に最も近いかを算出することにより、その状態を推定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−5361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものにおいては、対象衣類の状態を予測できるものの、衣類などの布製品を識別することは困難なものであった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、容易且つ高精度で、布製品を識別できる布製品識別装置、および、該布製品識別装置を備えた布製品把持システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 一局面に従う布製品識別装置は、光線を透過するとともに布製品を載置可能な透過部を有した載置台と、前記透過部の前記布製品を載置する側と反対側に配設された光源と、前記透過部の前記布製品を載置する側から、前記光線が照射された前記布製品を撮像し、前記布製品の画像データを得る撮像部と、前記画像データから得られる前記布製品の光線の透過量に基づいて、前記布製品の所定部位を判別する判別部と、を備えているものである。
【0008】
上記(1)の構成によれば、載置台の透過部に載置された布製品に、光源からの光線を照射することができるとともに、布製品における光線の透過量を検出するための画像データを撮像することができる。また、判別部によって、該画像データから得られる布製品の光線の透過量に基づいて、布製品(衣類など)の所定部位(例えば、衣類の襟などの光線が透過しづらい部分)を判別することで、布製品の特徴部分(例えば、衣類の襟など)を認識することが可能となり、容易且つ高精度で、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することができる。また、衣類などの布製品を完全に拡げなくても、乱雑な状態のまま、該布製品の特徴部分を認識できる場合があり、その結果として、該特徴部分から布製品の種類毎の識別が可能になる場合がある。
【0009】
(2) 上記(1)の布製品識別装置においては、前記判別部が、前記布製品の光線の透過量が所定値以下、所定値以上、又は所定範囲となっている部分を前記布製品の所定部位として判別するものであることが好ましい。ここで、布製品の光線の透過量が所定値以下の部分とは、光線が透過しづらい部分(例えば、通常の布地で構成された衣類の襟など)のことをいう。なお、例えば、布製品の特徴部分であっても、光線が透過しやすい材料(例えば、透明材料又は網目材料など)で構成されている場合がある。このような場合には、布製品の光線の透過量が所定値以上になっている部分を、光線が透過しやすい材料で構成されている部分(例えば、透明材料又は網目材料で構成された衣類の襟など)とする。また、布製品の光線の透過量が所定範囲の部分とは、通常の衣類のものほど光線が透過しづらい部分ではなく、且つ、上述の光線が透過しやすい材料で構成されているものほど光線が透過しやすい部分でもないような部分(例えば、半透明材料で構成された衣類の襟など)をいう。
【0010】
上記(2)の構成によれば、布製品の特徴部分を認識し易くできるので、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かをより容易に識別することができる。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)の布製品識別装置においては、前記判別部において、前記布製品の光線の透過量が所定値以下、所定値以上、又は所定範囲となっている部分が連続している領域を、前記布製品の所定部位として判別することが好ましい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、布製品の光線の透過量が所定値以下、所定値以上、又は所定範囲となっている部分が連続している領域を布製品の所定部位として判別するので、より高精度で布製品の特徴部分を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かをより容易に識別することができる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)の布製品識別装置においては、前記画像データにおいて前記布製品の光線の透過量分布を所定の透過量範囲ごとに分類し、前記画像データを前記所定の透過量範囲ごとの領域に区分けするとともに異なった明度で表示するように、前記画像データを加工する画像処理を行って処理画像データを得る画像処理部を備え、前記判別部が、前記処理画像データにおける明度データを基に、前記布製品の所定部位がいずれの位置にあるか判別するものであることが好ましい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、画像処理部によって得た処理画像データにおける明度データと、予め設定した布製品の所定部位の光線の透過量データとを基に、判別部によって布製品の所定部位を判別することで、布製品の特徴部分を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを高精度で識別することができる。なお、処理画像データにおける明度データの中に、予め設定した前記布製品の所定部位の光線の透過量のデータと一致するものがない場合、判別部は、処理画像データに布製品の所定部位がないと判別することとしてもよい。
【0015】
(5) 上記(4)の布製品識別装置においては、前記領域ごとの輪郭を認識し、前記領域ごとに輪郭画像データを抽出する輪郭認識部を備え、前記判別部が、前記輪郭画像データと、予め設定された前記布製品の所定部位の輪郭画像データとを基に、前記所定部位がいずれの位置にあるか判別するものであることが好ましい。
【0016】
上記(5)の構成によれば、布製品の所定部位を上記領域ごとの輪郭を用いて判別することで、布製品の特徴部分をより認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かをより高精度で識別することができる。なお、輪郭画像データ抽出部で得た輪郭画像データの中に、予め設定された所定部位の輪郭画像データと一致するものがない場合、判別部は、処理画像データに布製品の所定部位がないと判別することとしてもよい。
【0017】
(6) 上記(1)〜(5)の布製品識別装置においては、前記画像処理部から得た前記光線の透過量の情報を基に、前記光源から発せられる光線の光量を調整する光量調整部を備えていることが好ましい。
【0018】
上記(6)の構成によれば、布製品の生地の材質又は厚みに合わせて、光源から発せられる光線の光量を適宜変化させることで、布製品の特徴部分を認識しやすくすることができる。その結果として、より容易に、どの種類の布製品かを識別することができる。なお、上述の明度データは、光線の光量に合わせて、適宜補正されるものであってもよい。
【0019】
(7) 別の観点として、上記(1)〜(5)の布製品識別装置においては、前記光線が赤外線であり、前記撮像部が赤外線を撮像可能なものであり、前記画像処理部から得た前記赤外線の透過量の情報を基に、前記光源から発せられる赤外線の振幅を調整する振幅調整部を備えているものであってもよい。
【0020】
上記(7)の構成によれば、布製品の生地の材質又は厚みに合わせて、光源から発せられる赤外線の振幅を適宜変化させることで、布製品の特徴部分を認識しやすくすることができる。その結果として、より容易に、どの種類の布製品かを識別することができる。
【0021】
(8) 他の局面に従う布製品把持システムは、上記(1)〜(7)のいずれか1つの布製品識別装置と、前記判別部によって得た前記布製品の所定部位の位置情報を基に移動操作されるものであるとともに前記布製品を把持可能な把持装置と、を備えているものである。
【0022】
上記(8)の構成によれば、布製品識別装置によって布製品の特徴部分を容易且つ高精度で判別できているので、把持装置によって布製品の特徴部分を掴む、又は、布製品の特徴部分を基点として特定した他の位置を掴むことが容易となる。したがって、把持装置によって、布製品を置き直す又は布製品を広げることなどの操作を円滑に行うことが可能な布製品把持システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る布製品把持システムの外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける画像データ生成処理の結果として得られる布製品の写真である。
【図3】本発明の実施の形態に係るコンピュータにおける処理画像データ生成処理の結果として得られる布製品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態に係る布製品把持システムについて説明する。
【0025】
本発明の実施の形態に係る布製品把持システム100は、図1に示されるように、第1載置台40Aに置かれる布製品を把持した後にその把持した布製品を展開して第2載置台40Bに静置するものであって、主に、布製品処理ロボット(把持装置)10と、第2載置台40B、および制御部30の一部(判別部)を含む布製品識別装置50と、から構成される。
【0026】
以下、布製品処理ロボット10、布製品識別装置50についてそれぞれ詳述していく。
【0027】
<布製品処理ロボット>
図1に示すように、布製品処理ロボット10は、ロボットハンド20、ロボットアーム15、カメラ(撮像部)16および制御部30の一部からなる。図1においては、布製品処理ロボット10を一対(2個)設けてあり、布製品処理ロボット10の間に第1載置台40Aおよび第2載置台40Bが設けられている。
【0028】
図1に示すように、ロボットハンド20は、ロボットアーム15の先端側部分に回動自在に取り付けられている。したがって、ロボットアーム15は、ロボットハンド20を3次元空間内で自由自在に動かすことができる。また、カメラ16は、ロボットアーム15の上部からロボットハンド20近傍を撮像できるように設けられている。
【0029】
制御部30は、カメラ16により撮像されたデータに基づいて、ロボットアーム15およびロボットハンド20の動作を制御する。
【0030】
<布製品識別装置>
布製品識別装置50は、図1に示されるように、主に、第2載置台40Bおよび制御部30の一部(判別部)から構成される。なお、以下、第2載置台40Bおよび制御部30の一部(判別部)についてそれぞれ詳述していくが、制御部30については、判別部以外の構成も説明する。
【0031】
(1)第2載置台
第2載置台40Bは、図1に示されるように、上部面に天板として設けられ、光線を透過するとともに布製品を載置可能な透過部41と、透過部41における布製品を載置する側と反対側に配設された光源42と、光線を透過しない材質からなり、透過部41を固定支持するとともに内部に光源42が配設された枠部材43と、を有しているものである。
【0032】
ここで、透過部41の例としては、透明な樹脂板、透明なガラス板などが挙げられる。また、光源42は、制御部30からの命令、又は、操作者が直接操作することなどにより、光線の光量を可変することができるものである。また、枠部材43の例としては、種々の金属板が挙げられるが、光線を遮ることができるものであれば、どのような材質のものであってもよい。
【0033】
(2)制御部
制御部30は、マザーボードや、CPU、メインメモリ、ハードディスク、USBインターフェイスボードやRS−232Cインターフェイスボード等を備えている。そして、ハードディスクには距離決定ソフトウェアや、布製品処理ロボット制御ソフトウェア、画像処理ソフトウェア(画像処理部の主要部)、布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)等のソフトウェアがインストールされており、これらのソフトウェアはCPUやメインメモリ等によって実行される。以下、各ソフトウェアによる処理について説明する。
【0034】
(距離決定ソフトウェアによる処理)
制御部30は、2つのカメラ16において同時に画像が生成されると、距離決定ソフトウェアにより、カメラ16からそれらの画像のデータを収集する。次に、この制御部30では、距離決定ソフトウェアにより、両面像の画素の対応関係がデータ化される。続いて、この制御部30では、ステレオカメラ機能と画素対応関係データとに基づいて画像中の二次元画像座標点までの距離が求められる。その後、カメラモジュールにおいて、両面像中から最も似通った対象物を、画素間を横に移動しながら対応付けしていく。そして、全ての画素について検索が完了すると、画像中の対象物までの距離が求められる。
【0035】
なお、このような手法は当業者に公知の手法であるため、これ以上詳細な説明は行わない。
【0036】
(布製品処理ロボット制御ソフトウェアによる処理)
制御部30では、布製品処理ロボット制御ソフトウェアにより、布製品の把持箇所が決定され、布製品処理ロボット10の布製品の把持処理から布製品の静置処理までの一連の動作を実現する制御信号が生成され、その制御信号が逐次、布製品処理ロボット10に送信される。
【0037】
(画像処理ソフトウェアによる処理)
布製品処理ロボット制御ソフトウェアによって動作した布製品処理ロボットによって、山積みされた塊状の布製品のうち1枚が把持され、第2載置台40B(光源42は電源ON状態)に載置される。その後、制御部30では、画像処理ソフトウェア(画像処理部の主要部)によって、先ず、布製品を撮像する処理を行うようにカメラ16を制御するための制御信号が生成され、その制御信号がカメラ16に送信され、できるだけ周りが暗い状況でカメラ16が布製品を撮像し、布製品の画像データを生成する。
【0038】
ここで、上記画像データ生成の一例を挙げる。例えば、Tシャツ(布製品の一例)を第2載置台40Bに載置した際には、図2に示されるような画像データ(グレースケールのもの)が生成される。なお、図2に示されたTシャツの袖及び脇腹の下部付近は、胸元及び腹側に折れ曲がって重なっている。また、図2に示されたTシャツの、第2載置台40Bの透過部41(図2において、白及びグレー表示されている略四角形の領域)に載りきらなかった部分は、透過部41から垂れさがっている(図示せず)。また、図2においては、透過部41外周囲には光線が照射されていないので、黒色表示されている。
【0039】
次に、画像処理ソフトウェアにより、上記生成された画像データにおける布製品の光線の透過量分布を所定の透過量範囲ごとに分類し、生成された画像データを所定の透過量範囲ごとの領域に区分けするとともに異なった明度で表示するように、加工して画像処理し、処理画像データを得る(処理画像データの生成)。このとき、処理画像データにおける各領域の明度データも生成しておく。
【0040】
ここで、上記処理画像データ生成の一例を挙げる。例えば、上述の図2に示されたTシャツの画像データを用いた場合、画像処理ソフトウェアにより、先ず、該画像データからTシャツの光線の透過量分布を5つの透過量範囲(256諧調で、0〜42、43〜84、85〜154、155〜205、206〜255の5段階)に分類する。該分類後、第2載置台40B上のTシャツを4つの領域((a)Tシャツの襟の内側である「襟内側部分」、(b)布製品が2枚以上重なった部分である「2枚以上重なり部分」、(c)Tシャツの襟及びTシャツの縁である「襟、縁」、(d)透過部41のうち光源42から光が透過した部分である「光透過部分」、及び、上記(a)〜(c)及び「光透過部分」以外の部分である「背景」、の4つの領域)に区分けするとともに、上記(a)〜(d)の各範囲を4段階の諧調で表示するように、上記画像データを加工する画像処理を行って処理画像データを得る。例えば、256諧調のうち、(a)は205、(b)は160、(c)は80、(d)は0とする処理を行って処理画像データ(図3参照)を得る。このとき、処理画像データにおける各領域の諧調のデータ(明度データ)も生成しておく。
【0041】
(布製品判別ソフトウェアによる処理)
制御部30では、布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)により、上述の処理画像データにおける各領域の明度データを基に、布製品の所定部位がいずれの位置にあるか判別する。すなわち、上述のようにして得られた明度データのうち、予め設定した値のデータ領域部分を布製品の所定部位(特徴部分)として判別する。所定部位として認識した際には、予めハードディスク内に設定しておいた各布製品の特徴部分(衣類であれば、縁の形状、袖、襟など、シーツ、タオルであれば、縁部など)のデータと照合(パターンマッチングなど)することで、どの布製品であるかを識別する。
【0042】
ここで、上記布製品判別ソフトウェアによる判別処理の一例を挙げる。例えば、上述の図3に示されたTシャツの処理画像データを用いた場合、上述のようにして得られた明度データのうち、上記(c)の「襟、縁」に該当するデータの領域部分を、Tシャツの特徴部分の「襟」として認識するように予め設定しておくことで、布製品判別ソフトウェアにより、「襟、縁」に該当するデータの領域部分を所定部位である「襟」として認識する。「襟」部分を所定部位として認識した際には、予めハードディスク内に設定しておいた各布製品の特徴部分のデータ(ここでは、Tシャツの「襟」のデータ)と照合(パターンマッチング)し、Tシャツであることを識別する。
【0043】
なお、処理画像データにおける明度データの中に、予め設定した布製品の所定部位の光線の透過量のデータ又は明度データと一致するものがない場合、布製品判別ソフトウェアは、処理画像データに布製品の所定部位がないと判別する。そして、上述の布製品処理ロボット制御ソフトウェアによって布製品処理ロボット10を制御し、布製品を持ち上げて落下させる動作を行わせ、再度、画像処理ソフトウェアによる処理をした後、布製品判別ソフトウェアによる判別処理を繰り返す。なお、この繰り返しは、布製品の判別がなされるまで行われる。
【0044】
<布製品識別装置を備えた布製品把持システムの特徴>
本発明の実施の形態に係る布製品把持システム100は、以下のような特徴を有した布製品識別装置50を備えたものである。すなわち、布製品識別装置50は、第2載置台40Bの透過部41に載置された布製品に、光源42からの光線を照射することができるとともに、布製品における光線の透過量を検出するための画像データを撮像することができるカメラ16を有している。また、該画像データを基に画像処理ソフトウェアを用いた処理により得られた処理画像データにおける明度データと、予め設定した布製品の所定部位の光線の透過量データとを基に、布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)を用いた処理によって布製品の所定部位を判別することで、布製品の特徴部分を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを容易且つ高精度で識別することができる。また、衣類などの布製品を完全に拡げなくても、乱雑な状態のまま、該布製品の特徴部分を認識できる場合があり、その結果として、該特徴部分から布製品の種類毎の識別が可能になる場合がある。
【0045】
また、布製品識別装置50によって布製品の特徴部分が判別できているので、布製品処理ロボット10(把持装置)によって布製品の特徴部分を掴む、又は、布製品の特徴部分を基点として特定した他の位置を掴むことが容易となる。したがって、布製品処理ロボット10によって、布製品を置き直す又は布製品を広げることなどの操作を円滑に行うことが可能な布製品把持システム100を提供できる。
【0046】
<変形例>
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、下記の変形例がある。
【0047】
上記実施の形態に係る布製品識別装置50においては、制御部30における布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)により、カメラ16で撮像して得た画像データから得られる布製品の光線の透過量に基づいて、布製品の所定部位を判別するものであるが、下記(A)〜(C)のように布製品の所定部位を判別することとしてもよい。
【0048】
(A) 制御部30における布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)により、カメラ16で撮像して得た画像データを基に、布製品の光線の透過量が所定値以下となっている部分を布製品の所定部位(例えば、布地で構成された衣類の襟などの光線が透過しづらい部分)として判別することとしてもよい。これによっても、布製品の特徴部分(例えば、衣類の襟など)を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することができる。特に、布製品の光線の透過量が所定値以下となっている部分が連続している領域(例えば、帯状の領域など)を布製品の所定部位として判別することとすれば、より高精度で布製品の特徴部分(例えば、衣類の襟など)を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することがさらに容易になる。
【0049】
(B) 制御部30における布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)により、カメラ16で撮像して得た画像データを基に、布製品の光線の透過量が所定値以上となっている部分を布製品の所定部位(例えば、光線が透過しやすい材料(例えば、透明材料又は網目材料など)で構成されている衣類の襟などの光線が透過しやすい部分)として判別することとしてもよい。この場合、布製品の特徴部分(例えば、光線が透過しやすい材料(例えば、透明材料又は網目材料など)で構成されている衣類の襟など)を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することができる。特に、布製品の光線の透過量が所定値以上となっている部分が連続している領域(例えば、帯状の領域など)を布製品の所定部位として判別することとすれば、より高精度で布製品の特徴部分(例えば、衣類の襟など)を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することがさらに容易になる。
【0050】
(C) 制御部30における布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)により、カメラ16で撮像して得た画像データを基に、布製品の光線の透過量が所定範囲となっている部分を布製品の所定部位(例えば、半透明材料で構成された衣類の襟などの光線が所定量透過する部分)として判別することとしてもよい。これによっても、布製品の特徴部分(例えば、半透明材料で構成された衣類の襟など)を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することができる。特に、布製品の光線の透過量が所定範囲となっている部分が連続している領域(例えば、帯状の領域など)を布製品の所定部位として判別することとすれば、より高精度で布製品の特徴部分(例えば、衣類の襟など)を認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かを識別することがさらに容易になる。
【0051】
(D) また、上記実施の形態に係る布製品識別装置50においては、以下のように変形してもよい。すなわち、布製品の画像データを区分けしてなる領域同士の境界線を輪郭として輪郭画像データを抽出する輪郭画像データ抽出ソフトウェア(輪郭画像データ抽出部の主要部)を制御部30のハードディスク内にさらに格納しているとともに、制御部30における布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)が、上述の輪郭画像データ抽出ソフトウェアを用いて得た輪郭画像データと、予めハードディスク内に設定された種々の布製品の所定部位の輪郭画像データとを基に、該所定部位がいずれの位置にあるか判別するものであってもよい。例えば、図3に示したTシャツの袖の領域は、その他の領域の境界が明確にわかるようになっている。この袖の領域とその他の領域との境界線を輪郭として輪郭画像データを抽出し、予め制御部30のハードディスク内に設定された種々の布製品の所定部位の輪郭画像データとを照合し、布製品の所定部位がいずれの位置にあるか判別するものであってもよい。なお、この判別には、公知のパターンマッチングを用いてもよい。このような構成によれば、布製品の所定部位を上記領域ごとの輪郭を用いて判別することで、布製品の特徴部分をより認識することが可能となり、布製品の特徴部分からどの種類の布製品かをより高精度で識別することができる。また、輪郭画像データ抽出ソフトウェアを用いて得た輪郭画像データの中に、予め制御部30のハードディスク内に設定された布製品の所定部位の輪郭画像データと一致するものがない場合、判別部は、処理画像データに布製品の所定部位がないと判別することとしてもよい。
【0052】
(E) 上記実施の形態に係る布製品識別装置50においては、制御部30における画像処理ソフトウェア(画像処理部の主要部)から得た光線の透過量の情報を基に、光源42から発せられる光線の光量を調整することが可能な光量調整部を備えていてもよい。これにより、布製品の生地の材質又は厚みに合わせて、光源42から発せられる光線の光量を適宜変化させることで、布製品の特徴部分を認識しやすくすることができる。その結果として、より容易に、どの種類の布製品かを識別することができる布製品識別装置50を提供できる。なお、上記実施の形態で説明した明度データは、光線の光量に合わせて、適宜補正されるものであってもよい。
【0053】
(F) 上記実施の形態に係る布製品識別装置50においては、光源42が赤外線を発生させるものであるとともに、カメラ16が赤外線を撮像可能なものであるとともに、画像処理ソフトウェア(画像処理部の主要部)が、赤外線の透過量の情報を検出できるものであって、該画像処理ソフトウェアから得た赤外線の透過量の情報を基に、光源42から発せられる赤外線の振幅を調整する振幅調整部を備えているものであってもよい。なお、ここでの布製品判別ソフトウェアは、画像処理ソフトウェアによって得られた赤外線の透過量の情報を用いた処理画像データに対応するように変形されている。このような構成によれば、布製品の生地の材質又は厚みに合わせて、光源42から発せられる赤外線の振幅を適宜変化させて、布製品の特徴部分を認識しやすくすることができる。その結果として、より容易に、どの種類の布製品かを識別することができる布製品識別装置50を提供できる。
【0054】
(G) また、図3に例示したように、「襟内側部分」の近辺には「襟、縁」が存在している。したがって、布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)において、まず「襟内側部分」を判別した後、該「襟内側部分」の近辺に「襟、縁」があると判別できた場合に布製品の識別を行うこととすれば、布製品の識別精度を向上させることが可能である。
【0055】
(H) 上記実施の形態においては、布製品判別ソフトウェア(判別部の主要部)による布製品の特徴部分についてのパターンマッチングによって、どの種類の布製品かを識別しているが、この代わりに、布製品の縁部分の輪郭形状データを検出し、該輪郭形状データと予めハードディスク内に格納しておいた各布製品の輪郭形状データとを照合し、どの種類の布製品かを識別することとしてもよい。
【0056】
(I) 上記実施の形態においては、図2に示されたTシャツの画像データから、Tシャツの光線の透過量分布を5つの透過量範囲に分けた例(256諧調で、0〜42、43〜84、85〜154、155〜205、206〜255の5段階に分けたもの)を示したが、これに限られず、各透過量範囲の数値は、Tシャツの材質、厚みなどに合わせて、適宜変更することとしてもよい。また、上記実施の形態においては、上記5つの透過量範囲に関する領域を(a)〜(d)の4つの領域に区分けし、これら(a)〜(d)の各範囲を4段階の諧調の値(256諧調のうち、(a)は205、(b)は160、(c)は80、(d)は0)で表示する処理を行って処理画像データ(図3参照)を得ることとしたが、上記4段階の諧調の各値に限られず、該各値を適宜変更して処理画像データを得ることとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 布製品処理ロボット
15 ロボットアーム
16 カメラ
20 ロボットハンド
30 制御部
40A 第1載置台
40B 第2載置台
41 透過部
42 光源
43 枠部材
50 布製品識別装置
100 布製品把持システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を透過するとともに布製品を載置可能な透過部を有した載置台と、
前記透過部の前記布製品を載置する側と反対側に配設された光源と、
前記透過部の前記布製品を載置する側から、前記光線が照射された前記布製品を撮像し、前記布製品の画像データを得る撮像部と、
前記画像データから得られる前記布製品の光線の透過量に基づいて、前記布製品の所定部位を判別する判別部と、を備えていることを特徴とする布製品識別装置。
【請求項2】
前記判別部が、前記布製品の光線の透過量が所定値以下、所定値以上、又は所定範囲となっている部分を前記布製品の所定部位として判別することを特徴とする請求項1に記載の布製品識別装置。
【請求項3】
前記判別部において、前記布製品の光線の透過量が所定値以下、所定値以上、又は所定範囲となっている部分が連続している領域を、前記布製品の所定部位として判別することを特徴とする請求項1又は2に記載の布製品識別装置。
【請求項4】
前記画像データにおいて前記布製品の光線の透過量分布を所定の透過量範囲ごとに分類し、前記画像データを前記所定の透過量範囲ごとの領域に区分けするとともに異なった明度で表示するように、前記画像データを加工する画像処理を行って処理画像データを得る画像処理部を備え、
前記判別部が、前記処理画像データにおける明度データを基に、前記布製品の所定部位がいずれの位置にあるか判別するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の布製品識別装置。
【請求項5】
前記領域同士の境界線を輪郭として、輪郭画像データを抽出する輪郭画像データ抽出部を備え、
前記判別部が、前記輪郭画像データ抽出部で得た輪郭画像データと、予め設定された所定部位の輪郭画像データとを基に、前記所定部位がいずれの位置にあるか判別することを特徴とする請求項4に記載の布製品識別装置。
【請求項6】
前記画像処理部から得た前記光線の透過量の情報を基に、前記光源から発せられる光線の光量を調整する光量調整部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の布製品識別装置。
【請求項7】
前記光線が赤外線であるとともに、前記撮像部が赤外線を撮像可能なものであり、
前記画像処理部から得た前記赤外線の透過量の情報を基に、前記光源から発せられる赤外線の振幅を調整する振幅調整部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の布製品識別装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の布製品識別装置と、
前記判別部によって得た前記布製品の所定部位の位置情報を基に移動操作されるものであるとともに前記布製品を把持可能な把持装置と、を備えていることを特徴とする布製品把持システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−128730(P2011−128730A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284499(P2009−284499)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】