説明

希土類含有ゼオライトと低減された量の貴金属とを含む触媒を用いたアルキル化方法

希土類含有ゼオライトおよび水素化金属を含む固体酸触媒を利用した、改善されたアルキル化方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルキル化という用語は、芳香族または飽和の炭化水素等のアルキル化可能化合物の、オレフィン等のアルキル化剤との反応を指す。この反応は、例えばイソブタンを、2〜6個の炭素原子を含有するオレフィンでアルキル化することにより、高いオクタン価を有し、ガソリンの沸点範囲内であるアルキレートを得ることを可能にするので、この反応は興味深い。真空ガス油および常圧残油等のより重質な石油の画分をクラッキングすることにより得られるガソリンとは異なり、アルキル化により得られるガソリンは、硫黄および窒素等の汚染物質を本質的に含まないので、清浄な燃焼特性を有する。高いオクタン価が表すその高いアンチノック特性により、芳香族化合物または鉛等の、環境に有害なアンチノック化合物を添加する必要が低減される。また、ナフサを改質することにより、またはより重質な石油の画分をクラッキングすることにより得られるガソリンとは異なり、アルキレートが含有する芳香族化合物またはオレフィンはあるとしても少ししかなく、アルキレートにより環境面でのさらなる有利がもたらされる。
【背景技術】
【0002】
アルキル化反応は、酸により触媒される。従来のアルキル化工程の設備は、硫酸およびフッ化水素酸等の液体酸触媒を利用している。このような液体酸触媒の使用には、広範囲の問題を伴う。例えば、硫酸およびフッ化水素酸は両方とも腐食性が高いので、使用される設備は厳しい運転要件を満たさなければならない。生成した燃料中に腐食性の高い材料が存在することは好ましくないので、残留した酸をアルキレートから除去しなければならない。また、液体の相分離を行わなければならないので、この工程は複雑で高価である。さらに、フッ化水素等の毒性物質が環境に放たれるおそれが常にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、希土類含有ゼオライトと、先行技術と比べて低減された量の貴金属とを含む固体酸触媒を利用した、改善されたアルキル化方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明の触媒配合物のRONへの影響を示す。白金含有率を、0.05重量%〜0.35重量%の間で変化させた。すべての試験触媒には、約70重量%のゼオライトが含まれていた。この触媒は約5重量%の希土類を含有する。重量空間速度を計算したところ、約0.2であり、反応器に供給されたイソブタンおよびオレフィンのイソブタン−オレフィン比を計算したところ、約24であった。この結果は、RONが、約0.15〜0.20重量%のPt含有率を上回って変化することはほとんどないことを示している。約0.15重量%未満のPt含有率で、RONのより著しい減少が観測される。
【図2】希土類を含有しないゼオライトを含む触媒の貴金属含有率を変化させると、触媒性能は、貴金属含有率が減少するにつれて、はるかにより急速に悪化し、約0.35重量%の貴金属含有率で最適となり、これは、ゼオライトが希土類を含むときに必要とされる含有率よりはるかに高いことを示している。重量空間速度を計算すると、約0.13であり、反応器に供給されたイソブタンおよびオレフィンのイソブタン−オレフィン比を計算すると、約30であった。
【発明を実施するための形態】
【0005】
この触媒の水含有率は、約1.5重量%〜約6重量%の範囲であり、ある実施形態において、それは、約1.8重量%〜約4重量%の範囲であり、別の実施形態において、それは、約2重量%〜約3重量%の範囲である。この触媒の水含有率は、アルキル化工程において使用中の触媒の水含有率として定義され、600℃において触媒を2時間加熱した際の重量減少を判定することにより測定される(強熱減量、すなわちLOI600)。
【0006】
この触媒は水素化金属を含む。適切な水素化金属の例は、周期表のVIII族の金属等の遷移金属、およびそれらの混合物である。これらの中で、周期表のVIII族の貴金属、特に白金、パラジウム、およびそれらの混合物が特に好ましい。しかし、貴金属は、それらの高いコストのために経済的な不利を有している。触媒中に存在する水素化金属の量は、その性質次第である。水素化金属が、周期表のVIII族の貴金属である場合、この触媒は、約0.01〜約2重量%の範囲内で金属を含有する。希土類、または希土類の混合物を用いて、触媒の固体酸成分を修飾することにより、以下に記載のように、貴金属の量を最適化できることを見出した。ある実施形態において、貴金属の最適量は、約0.10重量%〜約0.35重量%の間の範囲である。別の場合には、貴金属の最適量は、約0.15重量%〜0.30重量%の間の範囲である。なお別の場合には、貴金属の最適量は、約0.15重量%〜0.25重量%の間の範囲である。
【0007】
この触媒は固体酸をさらに含む。固体酸の例は、ゼオライトベータ、MCM−22、MCM−36、モルデナイト、H−Y−ゼオライトおよびUSY−ゼオライトを包含するX−ゼオライトおよびY−ゼオライト等のフォージャサイト等のゼオライト、シリカアルミナ等の非ゼオライト固体酸、ジルコニウム、チタンまたはスズの硫酸化酸化物等の硫酸化酸化物、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、リン等の混合酸化物、ならびに塩素化酸化アルミニウムまたは粘土である。好ましい固体酸は、モルデナイト、ゼオライトベータ、HYゼオライトおよびUSYゼオライトを包含するX−ゼオライトおよびY−ゼオライト等のフォージャサイトを包含するゼオライトである。固体酸の混合物を用いることもできる。ある実施形態において、固体酸は、24.72〜約25.00オングストロームの単位セルサイズ(a)をもつフォージャサイトであり、別の実施形態において、固体酸は、24.34〜24.72オングストロームの単位セルサイズをもつY−ゼオライトである一方で、別の場合において、固体酸は、24.42〜24.56オングストロームの単位セルサイズをもつY−ゼオライトである。なお別の実施形態において、固体酸は、24.56〜24.72オングストロームの単位セルサイズをもつY−ゼオライトである。
【0008】
触媒の固体酸成分は、希土類、または希土類の混合物、すなわち、ランタニド系列から選択される元素を含む。ある実施形態において、希土類は、約0.5重量%〜約32重量%の範囲である。別の場合において、希土類は、約2重量%〜約9重量%の範囲である。なお別の場合において、希土類は、約4重量%〜約6重量%の範囲である。
【0009】
従来の手段により、(1種または複数の)希土類元素と交換して固体酸成分にすることができる。ある実施形態において、固体酸成分は、ランタンと交換したY−ゼオライトである。
【0010】
この触媒は、マトリックス材料をさらに含むことができる。適切なマトリックス材料の例は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、粘土、およびそれらの混合物である。アルミナを含むマトリックス材料が一般に好ましい。ある実施形態において、この触媒は、触媒中に存在する固体酸およびマトリックス材料の全重量に基づいて、固体酸約2重量%〜約98重量%、およびマトリックス材料約98重量%〜約2重量%を含む。別の実施形態において、この触媒は、触媒中に含有される固体酸およびマトリックス材料の全重量に基づいて、固体酸約10重量%〜約90重量%、およびマトリックス材料約90重量%〜約10重量%を含む。別の実施形態において、この触媒は、マトリックス材料約10重量%〜約80重量%、および残余の固体酸を含む。なお別の実施形態において、この触媒は、触媒中に含有される固体酸およびマトリックス材料の全重量に基づいて、マトリックス材料約10重量%〜約40重量%、および残余の固体酸を含む。
【0011】
この触媒は、好ましくはハロゲン成分を含有しない。
【0012】
ある実施形態において、この触媒は、(i)(本明細書において「マクロ孔」として定義される)約40〜約8000nmの直径をもつ触媒細孔内の容積と、(ii)この触媒粒子の特定長さとの間の比が、約0.01〜約0.90ml/(gmm)の範囲内であり、この触媒が少なくとも0.20ml/gの全細孔容積を有する触媒粒子を含む。
【0013】
触媒粒子の特定長さは、この触媒粒子の固体部分の幾何学的容積と幾何学的表面との間の比として定義される。幾何学的容積および幾何学的表面の測定は、当業者に既知であり、例えばDE2354558に記載のように行われ得る。
【0014】
マクロ孔容積および全細孔容積は、直径3.6〜8000nmの細孔を対象とするWashburnの式に基づいて水銀圧入により測定される。
【0015】
ある実施形態において、マクロ孔内の容積と特定長さとの間の比は、約0.20ml/(gmm)超、別の場合において約0.30ml/(gmm)超である。なお別の実施形態において、この比は、約0.40ml/(gmm)超であるが、約0.80ml/(gmm)未満である。
【0016】
ある実施形態において、この触媒は、少なくとも約0.23ml/g、別の場合において少なくとも約0.25ml/gの全細孔容積を有する。
【0017】
ある実施形態において、この触媒粒子は、少なくとも約0.10mm、別の場合において少なくとも約0.16mm、なお別の場合において少なくとも約0.20mmの特定長さを有する。ある実施形態において、特定長さの上限は、約2.0mm、別の場合において約1.0mm、なお別の場合において約0.6mmにある。
【0018】
マクロ孔内の細孔容積は、この触媒のある実施形態において少なくとも約0.05ml/g、別の場合において少なくとも約0.08ml/gである。ある実施形態において、マクロ孔内の細孔容積の上限は、約0.30ml/g未満、別の場合において約0.25ml/g未満である。
【0019】
この触媒の粒子は、球、円柱、輪、ならびに対称または非対称の多葉形、例えば三つ葉および四つ葉を包含する、多くの様々な形状を有することができる。
【0020】
ある実施形態において、この触媒粒子は、少なくとも約0.5mm、別の実施形態において少なくとも約0.8mm、なお別の実施形態において少なくとも約1.0mmの平均粒径を有する。ある実施形態において、平均粒径の上限は、約10.0mmに、別の場合において約5.0mmに、なお別の実施形態において約3.0mmにある。
【0021】
本発明に係る方法で使用される触媒は、水含有率を調節することにより調製される。例えば、固体酸成分をマトリックス材料と混合して、担体粒子を形成し、次いでこの粒子を焼成することができる。水素化の機能を、例えば、水素化金属成分の溶液を担体粒子に含浸させることにより触媒組成物中に組み込むことができる。含浸後に触媒を焼成することができる。
【0022】
ある実施形態において、この触媒は、水素等の還元ガス中において約200〜約500℃の範囲内の温度で還元される。別の実施形態において、この触媒は、約250〜約350℃の範囲内の温度で還元される。還元を、水含有率の調節前、触媒への水添加後、および/または水含有率を調製する方法として還元を用いることにより行うことができる。ある実施形態において、還元は、水含有率の調節前に行われる。別の場合において、還元は、乾燥した非還元ガス(窒素、ヘリウムおよび空気等)中で触媒を乾燥した後に行われる。
【0023】
この触媒の水含有率を、PCT/EP2005/000929に記載のような様々な方法により調節することができ、その全体は参照により組み込まれる。このような方法を、以下に方法1、2および3として例示する。
【0024】
方法1には、触媒を水に曝すことにより触媒のLOIを増加させることが含まれる。このことを、水含有雰囲気、例えば環境条件における空気に、触媒を曝すことにより達成することができる。この方法の実施形態には、所望のLOIに達するまで、還元された触媒を水に曝すこと、所望の水準を上回るLOIに達するまで、還元されていない触媒を水に曝し、次いで触媒を還元することにより所望の水準にLOIを減少させること、所望の水準を上回るLOIに達するまで、還元された触媒を水に曝し、次いで不活性雰囲気または還元雰囲気のいずれかの中で触媒を処理することにより所望の水準にLOIを減少させること、ならびに水素および水を含有する雰囲気の中で触媒を還元することが挙げられる。
【0025】
方法2には、所望の水準を上回るLOIをもつ、還元されていない触媒を還元することにより、存在する触媒のLOIを所望の水準に減少させることが含まれる。
【0026】
方法3には、所望の水準を下回るLOIを有する触媒を伴うアルキル化工程を開始し、処理中にアルキル化単位に水を添加することによる、例えば、炭化水素の供給材料に水を添加することによる、水含有雰囲気中で触媒を再生することによる、および/または再生された触媒を水含有雰囲気に曝すことによる、in−situでの水添加が含まれる。
【0027】
2種以上の上記方法の組合せを用いることもできる。
【0028】
アルキル化工程においてアルキル化されるべき炭化水素は、4〜10個の炭素原子を有するイソアルカン等の分岐した飽和炭化水素である。例は、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、またはそれらの混合物である。アルキル化剤は、2〜10個の炭素原子を有するオレフィンまたはオレフィン混合物である。ある実施形態において、アルキル化工程は、ブテンによるイソブタンのアルキル化からなる。
【0029】
当業者には明らかなように、アルキル化工程は、流動床工程、スラリー工程および固定床工程を包含する任意の適切な形をとることができる。この工程を、いくつかの床および/または反応器の中で行うことができ、望ましければ、それぞれにアルキル化剤を別々に添加する。このような場合において、本発明の方法を、それぞれ別々の床または反応器の中で行うことができる。
【0030】
上述のように、触媒のLOIを所望の水準に増加させるために、工程中において水を添加することができる。この水を、例えば炭化水素の供給材料、またはアルキル化剤の供給材料により、アルキル化反応中に導入することができる。あるいは、場合による下記の(穏和な)再生ステップ中に水含有雰囲気を用いることにより、または別々の中間的な水和ステップにおいて触媒を水と接触させることにより、この触媒を水和することができる。同様の手順を適用して、処理中に(すなわち、アルキル化反応および/または再生の間に)そのLOIを減少させた後に、触媒を再水和することができる。
【0031】
適切な工程条件は当業者に知られている。好ましくは、WO98/23560に開示されているようなアルキル化工程が適用される。本方法において適用される工程条件を、以下の表に要約する。
【0032】
【表1】

【0033】
場合によって、触媒は、気相中で水素による高温再生を受けることができる。この高温再生を、少なくとも約150℃の温度で行うことができ、再生は、ある実施形態において約150℃〜約600℃で、別の場合において約200℃〜約400℃で行われる。この再生手順の詳細については、WO98/23560(特に4頁、12〜19行)に言及され、その全体は本明細書に参照により組み込まれる。高温再生を、アルキル化工程中に周期的に適用することができる。高温再生に起因して、触媒の水含有率が所望の水準未満に減少した場合は、触媒を、上述の方法で工程中に再水和させることができる。
【0034】
高温再生処理の他に、WO98/23560(特に9頁、13行〜13頁、2行)に記載のように、より穏和な再生をアルキル化工程中に適用することができ、その全体は本明細書に参照により組み込まれる。アルキル化工程中において、触媒は、炭化水素および水素を含有する供給材料と接触することにより、再生ステップを断続的に受けることができ、上記の再生は、ある実施形態において触媒の活性サイクルの約90%以下で、別の実施形態において60%以下で、なお別の実施形態において20%以下で、別の実施形態において10%以下で行われる。触媒の活性サイクルは、本明細書において、アルキル化剤の供給開始から、触媒含有反応器部分に添加したアルキル化剤に対してその20%が、転化されず、分子内での異性化を含まずに、触媒含有反応器部分から出る時点までの時間として定義される。
【0035】
本発明の触媒を、a)約400〜約575℃の範囲内の温度で固体酸含有粒子を焼成するステップと、b)焼成された粒子にVIII族の貴金属を組み込んで、貴金属含有粒子を形成するステップと、c)約350〜約600℃の範囲内の温度で貴金属含有粒子を焼成するステップとを含む方法により調製することができる。
【0036】
水素化成分を組み込む前および後の両方で焼成ステップを特定の温度帯において行えば、本発明の触媒のアルキル化反応における性能をさらに改善することができる。
【0037】
固体酸含有粒子は、約400〜約575℃の範囲内の、別の実施形態において約450〜約550℃の範囲内の、なお別の実施形態において約460〜約500℃の範囲内の温度で、ステップa)において焼成される。加熱速度は、約0.1〜約100℃/分、ある実施形態において約0.5〜約50℃/分、別の実施形態において約1〜約30℃/分の範囲である。焼成は、約0.01〜約10時間、ある実施形態において約0.1〜約5時間、別の実施形態において約0.5〜約2時間行われる。焼成を、空気および/または不活性ガス(例えば窒素)の気流中で行うことができる。ある実施形態において、このガス流は乾燥している。
【0038】
別の実施形態において、固体酸含有粒子は、焼成される前に乾燥される。この乾燥を、約110〜約150℃の温度で行うことができる。
【0039】
焼成を、固定床反応器、流動床焼成炉および回転管焼成炉等の任意の設備で行うことができる。
【0040】
次いで、VIII族の1種または複数の貴金属は、焼成された固体酸含有粒子に、ステップb)において組み込まれる。ある実施形態において、これは、VIII族の貴金属イオン、および/またはそれらの錯体、ならびに(場合によって)NH+イオンを含む溶液を用い、固体酸含有粒子の含浸または競合イオン交換により行われる。別の実施形態において、VIII族の貴金属は、白金、パラジウム、およびそれらの組合せである。なお別の実施形態において、VIII族の貴金属の少なくとも1種は、白金である。適切なVIII族の貴金属塩には、貴金属またはそれらの錯体(例えばNH錯体)の硝酸塩、塩化物および硝酸アンモニウム塩が挙げられる。
【0041】
次いで、生成した貴金属含有粒子は、ステップc)において350〜600℃の範囲内の温度で焼成される。ある実施形態において、粒子は、約400〜約550℃で、別の場合において約450〜約500℃で焼成される。この温度は、粒子を約0.1〜約100℃/分で、約350〜約600℃の間の所望の最終的な値に加熱することにより達せられ得る。ある実施形態において、粒子は、約0.5〜約50℃/分で、別の場合において約1〜約30℃/分で加熱される。焼成を、約0.01〜約10時間、ある実施形態において約0.1〜約5時間、別の場合において約0.5〜約2時間行うことができる。焼成を、空気および/または不活性ガス(例えば窒素)の気流中で行うことができる。ある実施形態において、このガス流は乾燥している。
【0042】
場合によって、別個の乾燥ステップが、ステップ(b)および(c)の間に適用される。あるいは、貴金属含有粒子は、焼成ステップ中に乾燥される。また、場合によって、約15〜120分の休止が、約200〜約250℃の温度で導入される。
【0043】
生成した触媒粒子を、焼成ステップ(c)の後で、約200〜約500℃、ある実施形態の形において約250〜約350℃の温度範囲で、水素等の還元ガス中で還元することができる。
【実施例】
【0044】
希土類イオン、および低減された濃度の貴金属を含む触媒の性能:
希土類イオンを含まない、参照の標準的なY−ゼオライトを、従来の経路を経て調製した。すなわち、ナトリウム−Y−ゼオライト(NaY)を調製し(SAR 5.5、NaO約13重量%)、次いでNHイオンとイオン交換し(一般に残留NaO約4.2重量%)、約575〜約625℃で蒸気処理して約24.53〜24.57Åのaを生じ、NHイオンとの2回目のイオン交換をし(一般に残留NaO 1.0重量%)、約500〜約550℃でさらに蒸気処理して約24.44〜24.52Åのaを生じ、約6〜約12にバルクSAR(SARは、ゼオライト材料中に存在するSiOとAlとの比(mol/mol)として定義される)を増加させるために、約80℃の温度においてNHイオン不存在下でHSOまたはHClのいずれかにより酸浸出し(NaOは約0.2重量%に低下する)、乾燥した。
【0045】
本発明のゼオライトは、同様の手順により調製されるが、NHイオンおよび希土類イオンを1回目の交換ステップで用い、蒸気処理温度を約400〜約500℃に下げる。この低い蒸気処理温度では、非フレーム構造のアルミナの形成がより少なく、酸浸出を要しない。このように、1回目の蒸気処理の後に、NHイオンとの交換のみが必要とされ、次いでゼオライトを乾燥する。しかし、適切なSAR、aおよびNaO含有率を達成することが要求される場合には、多数の蒸気処理ステップ、およびNHイオンとの交換ステップが用いられることがある。ある実施形態において、NaOの範囲は、約0.2〜約0.9重量%の範囲であり、SARは、約6〜約8の範囲であり、aは、約24.58〜24.72オングストロームの範囲であり、希土類は、約2〜約9重量%の範囲である。
【0046】
他の実施形態において、NaOは、約0.3〜約0.5重量%の範囲であり、SARは、約6〜約7の範囲であり、aは、約24.62〜24.70オングストロームの範囲であり、希土類は、約4〜約6重量%の範囲である。
【0047】
試験したアルキル化触媒は、以下の組成および特性を有する。すなわち、上述のゼオライト約60〜約80%、アルミナ約20〜約40%、白金約0.05〜約0.35%であり、平均粒子長は約2〜約6mmの範囲であり、平均の長さ/直径比は約1〜約7.5の範囲であり、粒径は約0.5〜約3mmの範囲であり、側面破壊強度は約1.5〜約10ポンド/mmの範囲である。
【0048】
一般的な試験手順:
その全体が本明細書に参照により組み込まれるWO98/23560に記載のような、2cmの直径を有する固定床再循環反応器に、触媒押出品38.6グラム(乾燥ベース、すなわち水含有率について補正した実重量)とカーボランダム粒子(60メッシュ)との容積/容積1:1の混合物を充填した。反応管の中央に直径6mmの熱電対を配置した。反応器に乾燥窒素を30分間フラッシュした(21 Nl/時)。次に、高圧で系の漏れを試験し、その後、圧力を21barに、窒素気流を21 Nl/時に設定した。次いで、反応器の温度を1℃/分の速度で275℃に上昇させ、275℃で窒素を乾燥水素に切り替え、触媒を275℃で還元した。
【0049】
あるいは、処理の合間に同じ触媒試料を高温再生する場合には、水素で反応器を排気およびフラッシュして、アルキル化の反応温度を維持しつつ炭化水素を除去した後に、水素気流を21 Nl/時に設定し、次いで、反応器温度を1℃/分の速度で275℃に上昇させ、触媒を275℃で再生した。
【0050】
2時間後に、反応器の温度を反応温度に下げた。冷却中に水を水素気流に添加して、触媒のLOI約2〜3重量%を得た(触媒のLOIを、600℃で2時間加熱後における触媒の重量減少と定義した)。
【0051】
反応温度の到達とともに、水素気流を停止した。アルキレート約2.5〜3重量%(失活速度を加速するために添加され、添加したアルキレートの組成は、記載の条件での工程により製造されたアルキレートに類似している)および溶解水素約1mol%を含有するイソブタンを、約4000グラム/時の速度で反応器に供給した(希土類を含まない触媒の場合において、アルキレートをイソブタンに添加していないので、試験条件はあまり厳密さが低かったことに留意)。約95〜98%のイソブタン/アルキレート混合物を、反応器に戻した。約2〜5%を分析のために排出した。系内の液量が確実に一定になる量のイソブタン/アルキレート混合物を、反応器に供給した。系が安定化したら、水素の添加を停止し、希土類含有試料の場合には約0.2、希土類を含まない試料の場合には約0.13のcis−2−ブテンWHSVが得られる量のcis−2−ブテンを添加した。系内の液体の総流量を、約4000g/時に維持した。反応器入口におけるイソブタンのcis−2−ブテンとの重量比は、希土類を含む試料の場合には約500〜600、希土類を含まない試料の場合には約700〜800であった。反応器中の圧力は、約21barであった。炭化水素再循環流の全アルキレート濃度(添加および生成したアルキレートから)は、分析のための排出流を制御することにより、試験中は約6.5〜7.5重量%に維持した。希土類を含まない試料の場合、アルキレート濃度は約2.5〜3.5重量%であったことに注意されたい。
【0052】
反応の1時間後は毎回、触媒を、イソブタン/アルキレート混合物で5分間洗浄し、次いで水素1mol%のイソブタン/アルキレート混合物中溶液との接触による50分間の再生をし、次いでさらに5分間イソブタン/アルキレート混合物で洗浄することにより再生した(洗浄および再生の時間は全部で1時間)。この洗浄ステップ後、アルキル化を再度開始した。
【0053】
洗浄ステップ、再生ステップおよび反応ステップの間の温度は同じであった。
【0054】
この工程は上記のように行われ、触媒の性能を時間の関数として測定した。
【0055】
この性能を、反応流路あたりのオレフィンの転化率と、リサーチ法オクタン価(RON)により特性決定した。RONは、WO9823560の13および14頁に記載のように測定され、唯一の例外は、C9以上すべて(2,2,5−トリメチルヘキサンを除く)が寄与するRONを90でなく84と見積もったことであった。
【0056】
反応流路あたりのオレフィンの転化率は、オレフィン分子内での異性化を含まない、触媒床の入口と出口との間で転化(変換)されるオレフィンの重量画分(パーセンテージとして)である。触媒の失活につながる2回目の反応を減らすために、オレフィンの高い転化率が望まれる。したがって、すべての触媒を、95%超であった初回の転化水準で比較した。希土類を含む触媒の試験条件の場合においては、温度を、これらの転化水準を得るために、約75℃に制御しなければならなかった。希土類を含まない触媒の、はるかにより厳密でない試験条件の場合においては、温度を約55℃で制御した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.15重量%〜0.25重量%の間の少なくとも1種の貴金属と、希土類含有固体酸成分とを含む触媒の存在下において、アルキル化可能な有機化合物をアルキル化剤と反応させてアルキレートを形成する、炭化水素のアルキル化方法であって、
前記触媒は、飽和炭化水素および水素を含有する供給材料と接触することにより、再生ステップを断続的に受けるものであり、
前記再生は、前記触媒の活性サイクルの90%以下で行われ、
前記触媒の活性サイクルは、前記アルキル化剤の供給開始から、触媒含有反応器部分の入口に対する前記アルキル化剤の20%が、転化されず、分子内での異性化を含まずに、触媒含有反応器部分から出る時点までの時間として定義され、
前記触媒は、前記触媒活性の任意の実質的な減少がある前に再生される、
前記アルキル化方法。
【請求項2】
前記アルキル化可能な有機化合物がイソブタンであり、前記アルキル化剤がC3〜C5アルケンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキル化剤が、ブテンまたはブテンの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の貴金属が、アルミナを含むマトリックス材料約2〜約98重量%を含む担体上に配置され、残りが希土類含有固体酸成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記固体酸成分がフォージャサイトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固体酸成分が、ナトリウムゼオライトを調製するステップと、NHイオンおよび希土類イオンにより前記ナトリウムゼオライトをイオン交換してNaOを約4〜約5重量%に低減するステップと、aが約24.62〜約24.70Åの範囲となるように約400〜約500℃で前記ゼオライトを蒸気処理するステップと、NHイオンによりイオン交換してNaOを約0.3〜約0.9重量%に低減するステップと、乾燥するステップとを含む方法により調製される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生成物ゼオライトのバルクSARが約6〜約12の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記貴金属が、白金、パラジウムまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記希土類がランタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、気相中での水素による高温再生を周期的に受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、a)約400〜約575℃の範囲内の温度で固体酸含有粒子を焼成し、b)焼成された粒子にVIII族の貴金属を組み込んで貴金属含有粒子を形成し、c)約350〜約600℃の範囲内の温度で貴金属含有粒子を焼成することにより調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、600℃における強熱減量として測定される水約1.5〜約6重量%をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、前記アルキル化方法における使用前に、固体酸と少なくとも1種の貴金属とを含む乾燥した触媒に水を添加することにより調製される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル化方法は、約1.5重量%未満の水を含む触媒を用いて開始され、当該水が前記アルキル化方法の間に前記触媒に添加される、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−500620(P2011−500620A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529337(P2010−529337)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063409
【国際公開番号】WO2009/050067
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(505002495)アルベマーレ ネザーランズ ビー.ブイ. (19)
【Fターム(参考)】