説明

帯域保証装置および帯域保証方法

【課題】帯域の変更要求に対する応答、および帯域変更を速やかにおこなえること。
【解決手段】帯域保証装置410は、NIDとの間のOVC上に設置された中継装置およびNIDに設定されたCIRを収集する制御部601と、制御部601により収集したCIRの最小値を求めておき、NIDからOVCに対する帯域変更要求時には、CIRの最小値に基づき、帯域変更要求の受け付けの可否を判断してNIDに応答する判定部602aと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OVCにおける帯域を保証する帯域保証装置および帯域保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NE(Network Element)群を管理するEMS(Element Management System)と、複数のEMSを収容するNMS(Network Management System)を有するネットワークシステムが提案されており、あるレイヤ2ドメイン内でのNEへの各種設定は、EMSを介して手動でおこなわれている(たとえば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
レイヤ2ネットワークにおいて、VLANごとに一定の帯域保証をおこなう場合、特許文献1、2の技術では、EMSが複数のNEを管理して、最低保証通信速度(CIR)の変更をおこなう。動画配信やVoIPサービスといった、確保された一定帯域上で、固定的なレイヤ2サービスをおこなう場合においては、現状のEMSを用いたVLANパス管理が適している。
【0004】
各ユーザ拠点とクラウドサービス拠点との間の帯域保証を考えた場合、必ずしも、常に固定的な帯域保証のみでは、充分でない場合もあり、クラウドサービス上のCPUを多く消費するようなアプリケーションを実行している場合においては、一時的に多くの通信量を必要としたり、データベースバックアップやアップロードなどの作業が発生するようなケースにおいては、必要とされる帯域も一時的に増える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−51076号公報
【特許文献2】特開2002−252636号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ITU−T Y.1731 ”OAM functions and mechanisms for Ethernet based networks” 2008年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、OVC上のすべての中継装置が、CIRの変更を許容可能かどうかを即時に判別することができなかった。OVC上のすべての中継装置に、CIRの変更を即時に反映させることができないため、特定のユーザ拠点から利用をおこなうクラウドサービス上のサーバ数や帯域数が一時的に増加するようなケースにおいても、容易に必要となる帯域の最低保証量を変更できない。このため、帯域ボトルネックにより、クラウドサービスの使用方法が限定されるケースが生じた。
【0008】
従来技術1では、一元管理している管理サーバに対して帯域要求した後、管理サーバがネットワークの帯域を見回ってから空き帯域を確保する構成であり、必要とする帯域要求が生じてから実際に帯域を確保するまでに待ち時間がかかった。また、従来技術2では、波長パスを予約する構成であり、波長パス予約時にIPアドレスを指定して経路予約するため、拠点同士が1:1となる場合に限定され、複数の拠点間の各経路における帯域保証はできない。
【0009】
開示の帯域保証装置および帯域保証方法は、上述した問題点を解消するものであり、帯域の変更要求に対する応答、および帯域変更を速やかにおこなえることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示技術は、ユーザ拠点側装置との間のOVC上に設置された複数の機器に設定された最低保証通信速度を収集する処理部と、処理部により収集した最低保証通信速度の最小値を求めておき、ユーザ拠点側装置からOVCに対する帯域変更要求時には、最低保証通信速度に基づき、帯域変更要求の受け付けの可否を判断してユーザ拠点側装置に応答する判定部と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
開示の帯域保証装置および帯域保証方法によれば、帯域の変更要求に対する応答、および帯域変更を速やかにおこなえるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、レイヤ2ネットワークの階層管理を示す図である。
【図2】図2は、OVCの適用例を示す図である。
【図3−1】図3−1は、EVCのフレームフォーマットを示す図である。
【図3−2】図3−2は、OVCのフレームフォーマットを示す図である。
【図4】図4は、実施の形態にかかる帯域保証装置を含むネットワーク構成を示す図である。
【図5】図5は、空き帯域の情報収集を説明する図である。
【図6】図6は、帯域保証装置の構成を示す図である。
【図7】図7は、装置間のメッセージを示すシーケンス図である。
【図8−1】図8−1は、NID管理テーブルを示す図表である。
【図8−2】図8−2は、CIRデータベースを示す図表である。
【図8−3】図8−3は、CIR最小値管理テーブルを示す図表である。
【図8−4】図8−4は、CIR管理テーブルを示す図表である。
【図9】図9は、CIR問い合わせのフレームフォーマットの例を示す図である。
【図10】図10は、設定可能CIR通知のフレームフォーマットの例を示す図である。
【図11】図11は、CIR変更要求のフレームフォーマットの例を示す図である。
【図12】図12は、CIR設定要求のフレームフォーマットの例を示す図である。
【図13】図13は、CIR設定要求への応答のフレームフォーマットの例を示す図である。
【図14】図14は、CIR変更要求への応答フレームフォーマットの例を示す図である。
【図15】図15は、下り通信に関する帯域保証に関するやりとりを示す概要図である。
【図16】図16は、上り通信に関する帯域保証に関するやりとりを示す概要図である。
【図17】図17は、帯域保証装置における下り通信の処理を説明する詳細図である。
【図18】図18は、ポリサーへのトークン注入を説明する図である。
【図19】図19は、帯域保証装置における上り通信の処理を説明する詳細図である。
【図20】図20は、帯域保証装置の判定部の処理内容を示すフローチャートである。
【図21】図21は、CIRに対応したトークンバケットの最大サイズの設定内容を示す図表である。
【図22】図22は、CIR最小値を求める処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。開示の帯域保証装置は、ユーザ拠点間のVLANトンネルパス(OVC:Operator Virtual Connection)を複数収容し、定期的に各OVC上にある複数の中継装置の設定または変更可能なCIR(Committed Information Rate)を収集し、OVC上でのCIRの設定又は変更可能な最小値を求めておくことにより、ユーザ拠点からの帯域変更(CIR変更要求)を受けたときに、即時に、要求の受付可否を判定してOVCにおいてCIRを変更する。CIRは、あるOVCについて、バースト的なデータ増加発生時などにおいても、一定の転送レートのサービスをおこなうための最低保証通信速度を示す。
【0014】
はじめに開示技術の前提となる監視区間の概要について説明する。図1は、レイヤ2ネットワークの階層管理を示す図である。非特許文献1に記載のITU−T Y.1731 OAM(Operation Administration and Maintenance)を用いたレイヤ2ネットワークの階層管理について説明する。
【0015】
拠点の端末CE101,101間のネットワーク100に複数のブリッジ102が設けられた構成において、異なるネットワーク監視区間(1)〜(3)に対しては、異なるMEG Level(Maintenance Entity Group Level)を設定し、障害監視などをおこなう。MEP(図中□で記載)は、MEG End Pointであり、監視区間の終端点を示す。MIP(図中○)は、MEG Intermediate Pointであり、監視中間点を示す。
【0016】
非特許文献1に記載の技術によるOAMを用いると、さらに、VLANで識別されるユーザごとに、OAM機能を提供可能であるため、広域なレイヤ2ネットワーク(Y.1731では、Bridge)において、より細かな単位で、安定した障害監視・管理をおこなうことが可能である。
【0017】
図2は、OVCの適用例を示す図である。ある拠点から、Operator1ネットワーク200を介して、複数のVLANパス(図では、EVC1,EVC2)を別拠点に送る場合に、EVCという単位で個々に送信するよりも、Operator1ネットワーク200をトンネルするOVC(Operator Virtual Connection)を作成し、OVC上に複数のEVCを送信する方法を用いることによって、Operator1上のすべてのネットワーク200で、EVCを管理するよりも、VLANの管理を容易にできる利点を有する。
【0018】
図3−1は、EVCのフレームフォーマットを示す図である。EVCは、レイヤ2フレーム内に、802.1Q Tagを挿入し、Tag TypeにCustomer VLAN Tag(C−Tag)を示す8100を挿入する。VLAN IDは、12bitのVIDフィールドにて規定する。
【0019】
図3−2は、OVCのフレームフォーマットを示す図である。EVCのフレームフォーマットに、さらに、802.1Q Outer Tagを挿入し、Tag TypeにService VLAN Tag(S−Tag)を示す88a8を挿入する。VLAN IDは、12bitのVIDフィールドにて規定する。OVCを規定することにより、OVC上の中継装置は、S−Tagのみを参照すればよいため、レイヤ2フレームの転送処理を簡略化できる。
【0020】
(実施の形態)
図4は、実施の形態にかかる帯域保証装置を含むネットワーク構成を示す図である。ユーザ拠点NID−クラウドサービス拠点(たとえばデータセンタ)間での帯域保証サービスの構成について説明する。ユーザ拠点側に設置されたNID401は、Network Interface Deviceを示し、NID401は、ユーザの保有するネットワークと、Network Operatorが保有するネットワーク402の分界点として機能する。NID401からクラウドサービス拠点403までの経路においては、数多くのNIDを集線して、1つのクラウドサービス拠点403に接続するために、複数の中継装置405が介在する構成となっている。
【0021】
そして、クラウドサービス拠点403の入口に、各NID401とのVLANパス(OVC)に対して、中継装置405に対して割り当てられているCIRを管理する帯域保証装置410を導入する。この帯域保証装置410は、中継装置405の機能を有している。帯域保証装置410とNID401には、監視区間の終端点の機能(たとえば、Y.1731 OAMのMEP機能)を設け、中継装置405には、監視中間点の機能(Y.1731 MIP機能)を設ける。中継装置405が複数存在する状態でも同様である。図4において、NID401はMEP、中継装置405は、MIP、帯域保証装置410はMEPとなる。
【0022】
そして、NID1からクラウドサービス拠点403の入口に位置する中継装置405までの経路に設定をおこなったOVC1に対して、最低保証帯域CIR1を割り当てる。同様に、NID2からクラウドサービス拠点403の入口に位置する中継装置405までの経路に設定をおこなったOVC2に対して、最低保証帯域CIR2を割り当てる。同様に、NID3〜NID6についても対応するOVC3〜OVC6に対してそれぞれCIR3〜CIR6を割り当てる。
【0023】
図5は、空き帯域の情報収集を説明する図である。帯域保証装置410は、監視フレーム(たとえば、Y.1731 OAM Link Traceフレーム)を、NID401と、中継装置405に定期的に送信し、CIR設定可能空き帯域の情報を、OVCごとに収集する。そして、帯域保証装置410は、OVCに対して、NID401と、中継装置405から取得したCIR設定可能空き帯域の中で、最小となる値を格納する。このCIR設定可能空き帯域の収集は、たとえば、Y.1731 OAMプロトコルにて帯域情報を含めることによっておこなえる。
【0024】
そして、帯域保証装置410は、ユーザ拠点からのCIR変更要求を受信時に、CIR変更要求値を、OVC上のCIR設定可能空き帯域の最小値、および帯域保証装置410が受付可能なCIRと比較し、CIR変更を受付可能かどうか判定する。帯域保証装置410は、CIR設定変更を受付できるか否かを判定するための判定部(CAC:Call Admission Control)を備え、CACが、自帯域保証装置410内のポリサー(Policer)や、シェイパー(Shaper)の使用状況を監視することによって、判定する。CIR変更が受付できる場合、帯域保証装置410は、自帯域保証装置410と中継装置405に対して、CIR設定変更を、所定の通信プロトコル(たとえば、Y.1731 OAMプロトコル)を用いて即時に反映させる。
【0025】
(帯域保証装置の構成)
図6は、帯域保証装置の構成を示す図である。以下の説明では、主に帯域保証にかかる構成について説明し、通信の制御等については省略する。帯域保証装置410は、制御部601と、入出力インターフェース610と、スイッチユニット630と、を含む。制御部601は、ソフトウェア、あるいはハードウェアで構成でき、通信および帯域保証に関する処理を実行する。ソフトウェアの場合、CPUがROM等に格納された帯域保証のプログラムを実行し、RAM等のメモリをワークエリアとして用いデータ処理することにより構成できる。
【0026】
制御部601は、上り方向/下り方向の個々のOVCのCIRを監視し、CIR設定等の制御をおこなう。制御部601は、処理部602と、OAMフレーム送受信部603と、処理部602が設定および参照する複数の管理テーブルを有する。管理テーブルは、NID管理テーブル604と、CIRデータベース605と、CIR最小値管理テーブル606と、CIR管理テーブル607と、を含む。
【0027】
処理部602は、判定部(CAC)602aを含む。判定部602aは、CIRの変更が可能か否かを判定し、入出力インターフェース610のスケジューラ(またはシェイパー)623と、ポリサー614に対し、判定した新たなCIRを割り当てる。OAMフレーム送受信部603は、入出力インターフェース610を介してOAM通信フレームの送受信を処理し、MEPの機能を有する。NID管理テーブル604には、NIDとOVCの対応関係が格納される。CIRデータベース605には、OVC(S−Tag)ごとの経路の情報と、中継装置から収集した設定可能CIRが格納される。CIR最小値管理テーブル606には、OVCごとのCIRの設定または変更可能な最小値が格納される。CIR管理テーブル607には、OVCごとの現在のCIR等が格納される。
【0028】
入出力インターフェース610は、NID401側と、クラウドサービス拠点403側にそれぞれ設けられる。この入出力インターフェース610は、入力処理部611と、出力処理部621と、を含む。入力処理部611は、レイヤ2(L2)入力フレーム処理部612と、分別部(Classifier)613と、ポリサー614と、を含む。出力処理部621は、キューイング622と、スケジューラ623と、L2出力フレーム処理部624と、を含む。入出力インターフェース610,610間には、レイヤ2フレームの受け渡しをおこなうスイッチユニット630が設けられる。
【0029】
(装置間のメッセージシーケンス)
図7は、装置間のメッセージを示すシーケンス図である。1つのOVCに対するやりとりを示してある。帯域保証装置410は、NID管理テーブル604により、NID401のMACアドレスと、OVCを識別するためのS−Tagの対応を管理している(ステップS701)。帯域保証装置410は、所定のフレーム(LTMフレーム、たとえば、Y.1731のLink Traceフレーム)を用いて、ターゲットMACアドレスをNID401のMACアドレス、送信元(Origin)MACアドレスを自MACアドレスとしたCIR設定可能値の問い合わせフレームをNID401および中継装置405に向けて送信する(ステップS702)。この所定のフレームは、OVCごとに定期的に送信される。
【0030】
NID401および、中継装置405では、所定のフレーム内の送信元MACアドレスと、ターゲットMACアドレスの情報を参照し、帯域保証装置410に所定のフレームを用いてそれぞれ返信フレームを送信する(ステップS703)。この返信フレームには、設定可能なCIR値が含まれる。これにより、帯域保証装置410は、OVCごとのCIR設定可能最小値の最新情報を格納する(ステップS704)。
【0031】
この後、NID401においてCIRの変更をおこなうときには、所定のフレーム(たとえば、後述するVSM(Vender Specific Message)フレーム)を用いて帯域保証装置410に対し、CIR変更要求をおこなう(ステップS705)。これにより、帯域保証装置410は、CIR変更可否を判定し(ステップS706)、CIRが変更可能であれば、OVCに対してCIRを変更する(ステップS707)。そして、帯域保証装置410は、CIR変更時に、所定のフレームを用いてNID401宛てに変更後のCIR値を含むCIR設定要求をおこなう(ステップS708)。
【0032】
NID401および、中継装置405では、所定のフレームによるCIR設定要求に対応して、OVCに対してCIRを変更し(ステップS709)、それぞれ、帯域保証装置410に所定のフレームを用いてそれぞれCIR設定完了の返信フレームを送信する(ステップS710)。この後、帯域保証装置410は、CIR変更完了を所定のフレームを用いてOVCに送信する(ステップS711)。
【0033】
この後、拠点ユーザによるCIR変更要求時には、NID401からS−Tagを含めたVSMフレームを帯域保証装置410に対して送信する。たとえば、VSMフレームの送信トリガは、拠点ユーザがNID401に、Webインターフェースでアクセスをおこない、CIR変更操作をおこなうことにより、送信される。
【0034】
図8−1〜図8−4は、帯域保証装置の管理テーブルの内容を示す図表である。図8−1は、NID管理テーブルを示す図表である。NID管理テーブル604は、NID401のMACアドレスと、OVCを示すS−Tagとが対応付けられている。
【0035】
図8−2は、CIRデータベースを示す図表である。CIRデータベース605は、OVCを示すS−Tagと、トランザクションID(Transaction ID)と、中継装置405のMACアドレスと、帯域保証装置410からのHop数と、設定可能CIR値からなる。これにより、同一のフレーム(LTMフレームに対するLTR(Link Trace Response)フレーム)をトランザクションIDにより識別することで、OVCに対応した複数の装置(NID401,中継装置405)からの応答を関連づけることが可能である。
【0036】
LTRフレームは、LTMフレームのTransaction IDのコピーをおこない、返信される。また、帯域保証装置410からのHop数については、LTMフレームにて送信をおこなった所定のエリア(たとえばTTL(255))と、返信されたLTRフレームでの減算数を比較することにより、帯域保証装置410からのレイヤ2Hop数をCIRデータベース605に格納できる。また、古くなった情報については、CIRデータベース605から定期的に削除をおこなってもよい。
【0037】
図8−3は、CIR最小値管理テーブルを示す図表である。このCIR最小値管理テーブル606は、処理部602がCIRデータベース605を参照して設定する。同一トランザクションIDを有する複数の設定可能CIR値を抽出し、この複数の設定可能CIR値の中から最小のCIR値を抽出し、格納したものである。
【0038】
図8−4は、CIR管理テーブルを示す図表である。CIR管理テーブル607は、OVC(S−Tag)ごとに、現状のCIRでの最低帯域保証値を格納する。
【0039】
図9は、CIR問い合わせのフレームフォーマットの例を示す図である。帯域保証装置410が送信する所定のフレーム(LTMフレーム)の例を示している。LTMフレーム900のうち、不使用の領域(Reserveされている7bitのFlagsフィールド)901を用い、NID401および中継装置405にCIR設定可能値を問い合わせる。Flagsフィールド901のReservedの値は、0:通常のLink Traceフレーム、1:CIR設定可能値問い合わせ、2:CIR設定要求とする。
【0040】
上述したLTMフレームは、図3−1および図3−2に示したEVC,OVCのデータペイロード部分に格納し、伝送される。このデータペイロード部分には、LTMフレームに限らず、LTR、VSM、VSR(Vender Specific Response)の各フレームについても同様に収容され、伝送される。また、OVCを識別するためのS−Tagは、図3−2に示した802.1Q Outer Tag内の12bitのVIDフィールドに格納をおこなう。中継装置405やNID401は、IEEE802.1adフレームフォーマットで、帯域保証装置410からのLTMフレームを受信し、S−Tagを識別することによって、問い合わせを要求したOVCの情報を識別できる。
【0041】
他のLTRフレーム、VSMフレーム、VSRフレームについても同様に、IEEE802.1adフレームフォーマットでやりとりがおこなわれ、S−Tag内のVIDにてOVCの情報を識別できる。LTMの送信元MACアドレス(Source MAC)は帯域保証装置410のMACアドレスとし、宛先MACアドレス(Destination MAC)はマルチキャストアドレスとする。
【0042】
LTMの宛先MACアドレスは、マルチキャストアドレス(たとえば、Y.1731 Service OAMでは、Multicast Class2 DA:01−80−C2−00−00:3x:xはMEG Levelを示す)とし、受信をおこなったMIPがOAMフレーム送受信部603で受信できるようにする。中継装置405では、受信したLTMフレームのMEG Levelが自身の属するMEG Levelに一致し、受信したLTMフレームのTarget MACアドレスが、自身のデータベースに格納されているNID401のMACアドレスに一致する場合のみ、LTMのTransaction ID、LTMのTTLを1減算させた値を盛り込んだLTRフレームをLTMのOrigin MAC Addressに返信する。
【0043】
図10は、設定可能CIR通知のフレームフォーマットの例を示す図である。NID401および中継装置405が返信する所定のフレーム(LTRフレーム)の例を示している。LTRフレーム1000のうち、不使用の領域(ReserveされているFlagsフィールド)1001を用い、Flagsフィールド1001内のReservedに値1をセットすることによって、CIR設定可能値問い合わせ応答であることを示す。また、新たに、8bitのTLVフィールド1002を用いて、CIR設定可能値を設定し、送信する。帯域保証装置410では、OVC上の中継装置405やNID401から定期的にこのLTRフレームを受信することにより、最新のCIR設定可能値を得ることができる。
【0044】
図11は、CIR変更要求のフレームフォーマットの例を示す図である。NID401が送信する所定のフレーム(VSMフレーム)の例を示している。CIR設定変更要求時には、VSMフレーム1100のFlagsフィールド1101のReservedに値1を設定し、CIR設定変更要求であることを示す。また、TLVフィールド1102にCIR変更要求値を設定し、送信する。このVSMフレームを受信した帯域保証装置410では、CIR変更可否を判定し、変更可であれば、中継装置405と、NID401に対して、LTMフレームを用いてCIR設定要求をおこなう。
【0045】
図12は、CIR設定要求のフレームフォーマットの例を示す図である。帯域保証装置410が送信する所定のフレーム(LTMフレーム)の例を示している。このフレームは、図9に示したLTMフレームと同じである。そして、CIR設定要求時には、LTMフレーム1200のFlagsフィールド1201のReservedに値2を設定し、CIR設定要求であることを示す。また、TLVフィールド1202にCIR設定要求値を設定し、送信する。このCIR設定要求値は、設定要求する通信速度の値(Mbps)や、あらかじめ用意したテンプレートの一定値(たとえば、10M、20M、…100M等)を設定してもよい。
【0046】
図13は、CIR設定要求への応答のフレームフォーマットの例を示す図である。図示のように、たとえば、LTRフレーム1300のFlagsフィールド1301のReservedに値2を設定し、CIR設定可能値問い合わせへの応答であることを示し、送信する。
【0047】
図14は、CIR変更要求への応答フレームフォーマットの例を示す図である。図示のように、たとえば、VSRフレーム1400のFlagsフィールド1401を用いて、CIR変更完了(値:0)、または、NG(値:1)を設定し、帯域保証装置410に通知をおこなう。なお、事前に帯域保証装置410が設定可能帯域の問い合わせをおこなっているため、通常はNGとはならない。
【0048】
(中継装置およびNIDの構成)
中継装置405と、NID401の構成は、上述した帯域保証装置410の構成と基本的に同じであり、説明は省略する。中継装置405では、管理テーブルを用いてOVCごとに、現状のCIRでの最低帯域保証値を格納する。同様に、NID401においても、OVCごとに、現状のCIRでの最低帯域保証値を格納する。
【0049】
(帯域保証動作の概要)
図15は、下り通信に関する帯域保証に関するやりとりを示す概要図である。クラウドサービス拠点→NID方向の装置間の動作概要を示し、各装置におけるデータベース、テーブル等の細かな記載は省略している。
【0050】
帯域保証装置410は、判定部(CAC)602aにより、スケジューラ623、ポリサー614、CIR最小値管理テーブル606の情報から、OVC1501に対するCIR変更の可否を判定する。また、CIR変更が可能な場合は、CIR変更情報をスケジューラ623と、ポリサー614に反映させる。さらに、OAMフレーム送受信部603は上記のMEP機能を有し、OAMフレーム1502により、中継装置405と、NID401との間で帯域制御のための情報のやりとりをおこなう。
【0051】
中継装置405は、OAMフレーム送受信部603が上記MIP機能を有し(図中では603Aと記載した)、OAMフレーム1502の中継をおこなう。同様に、判定部(CAC)602aを有し、スケジューラ623に設定を反映させる。NID401は、OAMフレーム送受信部603が上記のMEP機能を有し、OAMフレーム1502の送受信をおこなう。また、判定部(CAC)602aを有し、スケジューラ623に設定を反映させる。
【0052】
図16は、上り通信に関する帯域保証に関するやりとりを示す概要図である。NID→クラウドサービス拠点方向の装置間の動作概要を示している。図15との相違は、ポリサー614が伝送路上のエッジ前段位置に配置されており、伝送方向の入口(上流)で伝送量を制限している点である。
【0053】
NID401は、OAMフレーム送受信部603が上記のMEP機能を有し、OAMフレーム1502の送受信をおこなう。また、判定部(CAC)602aを有し、スケジューラ623、ポリサー614に設定を反映させる。中継装置405は、OAMフレーム送受信部603が上記MIP機能を有し(図中では603Aと記載した)、OAMフレーム1502の中継をおこなう。同様に、判定部(CAC)602aを有し、スケジューラ623に設定を反映させる。
【0054】
帯域保証装置410は、判定部(CAC)602aを有し、スケジューラ623と、CIR最小値管理テーブル606の情報から、OVC1501に対するCIR変更の可否を判定する。また、CIR変更情報をスケジューラ623に反映させる。さらに、OAMフレーム送受信部603が上記MEP機能を有し、OAMフレーム1502により、中継装置405と、NID401との間で帯域制御のための情報のやりとりをおこなう。
【0055】
上記の図15、図16に示した構成において、レイヤ2ネットワークに流入するトラフィックを制限するポリサー614機能を、それぞれ、帯域保証装置410と、NID401が有する構成とし、中継装置405では、ポリサー614機能を有しない構成としている。これにより、ネットワークのエッジ部分にのみポリサー614を導入して、トラフィック制限についての管理・運用を簡素化できるようになる。なお、別ネットワークからのトラフィックが、中継装置405に直接、流入する等、ネットワークの構成が複雑な場合には、OVCのエッジ部分のみならず、全装置にポリサー614機能を導入してもよい。
【0056】
(下り通信における帯域保証にかかる各部の処理詳細について)
図17は、帯域保証装置における下り通信の処理を説明する詳細図である。クラウドサービス拠点403→NID401への下り通信にかかる帯域保証装置410の各構成部の処理について説明する。
【0057】
(入出力インターフェースBの入力処理部611)
L2入力フレーム処理部612に入力されたC−Tagフレーム(図3−1)に対して、S−Tag、C−Tag対応設定部1701の設定により、図3−2に示したS−Tagを付与する。そして、ポリサー614は、トークンバケット方式であり、S−Tag、CIR、EIR(Excess Information Rate)対応設定部1702の設定に応じたトークンをトークン注入部1703から定期的に注入する。つぎに、ポリサー614は、トークンバケット処理部1704によりフレームのカラーリング(Coloring)をおこない、Redフレーム廃棄部1705によりRedフレームを廃棄し、Greenフレームと、Yellowフレームは出力インターフェースAへ転送をおこなう。
【0058】
出力インターフェースAへのフレーム転送は、S−Tag、IF番号対応設定部1706の設定により、メタデータ挿入部1707により出力先インターフェース番号を含ませておこなう。スイッチユニット630では、転送フレームの出力先インターフェース番号を参照し、L2データスイッチング部631で出力先インターフェースAへの転送をおこなう。
【0059】
(入出力インターフェースAの出力処理部621)
受信データに対して、メタデータ削除部1711によりメタデータを削除し、VLANごとなどの一定のルールに従って、データをキューイング部1712にキューイングする。つぎに、スケジューラ623により、キューイングされたデータの読み出し順序を決定し、順番に読み取る。つぎに、S−Tag、CIR、EIR出力ポート対応設定部1713の設定により、シェイパー1714で帯域制限し、L2出力フレーム処理部624によりデータを一定レートで出力ポートから送信する。バースト的な入力に対しては、一旦、出力先フレームバッファ1715にデータを格納後、一定レートにて出力をおこなう。
【0060】
(制御部601)
(1)判定部(CAC)602aは、OAMフレーム送受信部603を介して要求されたCIRの変更を受付可能であるかどうかを判定する。
(2)CAC602aは、OAMフレーム送受信部603より受信したCIR変更要求値と、CIR最小値管理テーブル606に格納されているCIR最小値とを比較し、CIR最小値の方が大きければつぎの判定に移る。
【0061】
(3)つぎに、CAC602aは、ポリサー614側のリソースと比較をおこなう。入力インターフェースBでは、カード全体として割り当て可能なトークンの注入レートを管理し、トークンが割り当て可能な範囲内において、CIRの変更を許容する。カード全体の注入レートの管理は、全フロー、CIR設定上限値、EIR設定上限値対応設定部1716の設定により基づきおこなう。
(4)つぎに、CAC602aは、ポリサー614にてトークンの注入が許容されると、出力インターフェースAのシェイパー1714でのCIR変更の受付可否の判定をおこなう。シェイパー1714において、S−Tag、CIR、EIR対応設定部1702により、出力ポートの対応を管理する。
【0062】
(5)つぎに、CAC602aは、シェイパー1714において帯域変更をおこなうCIRの属するVLAN出力ポート物理帯域設定部1717の設定値を参照し、出力ポートから出力されるS−Tag群についてのCIR合計値が、出力ポートのレートを上回っていないかどうかを判定する。
(6)つぎに、CAC602aは、CIRの合計値が出力ポートのレート以下であれば、S−Tag、CIR、EIR、出力ポート対応設定部1713の設定値のうち、該当するS−TagについてのCIR値を変更する。
(7)そして、CAC602aは、変更されたCIR値のレートでL2出力フレーム処理部624からフレームを出力する。
【0063】
図18は、ポリサーへのトークン注入を説明する図である。ポリサー614では、OVCごとに、トークンバケットについて、最大サイズ(バースト許容サイズ)がそれぞれCBSと、EBSで規定する2つのバケットを有し、バーストサイズに応じて、流入するフレームの受付上限値を設定する。また、CIRの設定レートのチェック1801と、EIRの設定レートのチェック1802をそれぞれおこなってこれらのレートに応じたトークンをCBS、EBSのバケットに定期的に注入する。フレーム1803の転送の際には、バケットからフレームサイズ分のトークンを差し引く。CBSを超過した入力フレーム1804は、EBSに送られた後にフレーム1805として出力されるが、EBSを超過したフレーム1806は廃棄される。
【0064】
(上り通信における帯域保証にかかる各部の処理詳細について)
図19は、帯域保証装置における上り通信の処理を説明する詳細図である。NID401→クラウドサービス拠点403への上り通信にかかる帯域保証装置410の各構成部の処理について説明する。図17に記載した構成と同一機能を有する構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0065】
(入出力インターフェースAの入力処理部611)
L2入力フレーム処理部612に入力されたS−Tagフレームについて、出力インターフェースBへ転送をおこなう。出力インターフェースBへのフレーム転送は、S−Tagに対して出力先インターフェース番号を含んだメタデータの挿入によりおこなう。スイッチユニット630では、出力先インターフェース番号を参照し、出力先インターフェースAへの転送をおこなう。
【0066】
(入出力インターフェースBの出力処理部621)
到着データに対して、メタデータを削除し、VLANごとなどの一定のルールに従って、データをキューイング。つぎに、スケジューラでキューイングされたデータの読み出し順序を決定し、順番に読み取る。つぎに、S−Tagに対して設定されているCIR、EIRの情報を元に、データを一定レートで出力ポートから送信をおこなう。バースト的な入力に対しては、一旦、出力先フレームバッファにデータを格納後、一定レートにて出力をおこなう。
【0067】
(制御部601)
(1)判定部(CAC)602aは、OAMフレーム送受信部603を介して要求されたCIRの変更を受付可能であるかどうかを判定する。
(2)CAC602aは、OAMフレーム送受信部603より受信したCIR変更要求値と、CIR最小値管理テーブル606に格納されているCIRの設定または変更可能な最小値とを比較し、CIR最小値の方が大きければつぎの判定に移る。
【0068】
(3)つぎに、CAC602aは、ポリサー614側のリソースと比較をおこなう。入力インターフェースBでは、カード全体として割り当て可能なトークンの注入レートを管理し、トークンが割り当て可能な範囲内において、CIRの変更を許容する。カード全体の注入レートの管理は、全フロー、CIR設定上限値、EIR設定上限値対応設定部1716の設定により基づきおこなう。
(4)つぎに、CAC602aは、ポリサー614にてトークンの注入が許容されると、出力インターフェースAのシェイパー1714でのCIR変更の受付可否の判定をおこなう。シェイパー1714において、S−Tag、CIR、EIR対応設定部1702により、出力ポートの対応を管理する。
【0069】
(5)つぎに、CAC602aは、シェイパー1714において帯域変更をおこなうCIRの属するVLAN出力ポート物理帯域設定部1717の設定値を参照し、出力ポートから出力されるS−Tag群についてのCIR合計値が、出力ポートのレートを上回っていないかどうかを判定する。
(6)つぎに、CAC602aは、CIRの合計値が出力ポートのレート以下であれば、S−Tag、CIR、EIR、出力ポート対応設定部1713の設定値のうち、該当するS−TagについてのCIR値を変更する。
(7)そして、CAC602aは、変更されたCIR値のレートでL2出力フレーム処理部624からフレームを出力する。
【0070】
(帯域保証装置の判定部の処理内容)
図20は、帯域保証装置の判定部の処理内容を示すフローチャートである。帯域保証装置410は、NID401からのCIRの変更要求を含むVSMフレームを受信すると(ステップS2001)、CAC602aは、VSMフレームからS−Tag,CIR変更要求値を抽出する(ステップS2002)。つぎに、CAC602aは、CIR最小値管理テーブル606を検索し、S−Tag(該当OVC)に対するCIR最小値を得る(ステップS2003)。
【0071】
つぎに、CAC602aは、CIR変更要求値がCIR最小値未満であるか判断する(ステップS2004)。CIR変更要求値がCIR最小値未満であれば(ステップS2004:Yes)、ステップS2005に移行し、CIR変更要求値がCIR最小値以上であれば(ステップS2004:No)、ステップS2008に移行する。
【0072】
ステップS2005では、CAC602aは、ΣCIRがCIR設定上限値未満であるか判断する。ΣCIRは、CIR変更要求値と、CIR管理テーブル607に格納されたOVCごとの現在のCIR値により算出される。このΣCIRには、CIR変更要求分を含む。CIR設定上限値は、ポリサー614が上述したように管理している。そして、ΣCIRがCIR設定上限値未満であれば(ステップS2005:Yes)、ステップS2006に移行し、ΣCIRがCIR設定上限値以上であれば(ステップS2005:No)、ステップS2008に移行する。
【0073】
ステップS2006では、CAC602aは、Σ(CIR+EIR)が物理出力ポート物理帯域未満であるか判断する。Σ(CIR+EIR)は、シェイパー1714が管理する。ここで、ΣCIRだけを用いて判断してもよく、この場合には、EIR帯域を一時的に減らしてCIRを優先することができる。そして、Σ(CIR+EIR)が物理出力ポート物理帯域未満であれば(ステップS2006:Yes)、ステップS2007に移行し、Σ(CIR+EIR)が物理出力ポート物理帯域以上であれば(ステップS2006:No)、ステップS2008に移行する。
【0074】
ステップS2007では、スケジューラ623にCIR設定を反映させ、終了する。ステップS2008では、設定変更不可と判定し、終了する。
【0075】
図21は、CIRに対応したトークンバケットの最大サイズの設定内容を示す図表である。上述したトークンバケットの最大サイズCBS,EBSは、CIRのレートに応じた値をあらかじめテンプレート2100として保持することができる。ポリサー614は、変更したCIRの値に応じて、CBS,EBSを変更する。
【0076】
また、帯域保証装置410は、LTMフレーム(図9参照)内のTLVフィールドを用いて、CIRと同様に、これらCBS,EBSの設定値を同一のOVC上の中継装置405と、NID401に通知し、連動してCIRの変更処理をおこなうこともできる。
【0077】
図22は、CIR最小値を求める処理内容を示すフローチャートである。制御部601の判定部(CAC)602aが主に実行する処理について説明する。はじめに、LTMフレームをOVCに送信し(ステップS2201)、この際のS−Tagと、トランザクションIDと、NID MACアドレスを一時保存する(ステップS2202)。NID401のMACアドレスは、LTMのターゲットMACアドレスより抽出する。つぎに、タイマを起動させる(ステップS2203)。タイマは、たとえば、5〜10秒の所定期間に設定される。
【0078】
そして、CAC602aは、タイマの計測が満了するごとに(ステップS2204)、CIRデータベース605からS−Tag,トランザクションIDでHop数が最大のMACアドレスを抽出する(ステップS2205)。この後、抽出したMACアドレスがNID MACアドレスであるか判断する(ステップS2206)。この際、NID MACアドレスは、NID管理テーブル604を参照し、抽出したMACアドレスと対比する。NID401のMACアドレスであれば(ステップS2206:Yes)、ステップS2207に移行し、NID401のMACアドレスでなければ(ステップS2206:No)、S2210に移行する。
【0079】
ステップS2207では、1〜最大Hop数までの値の格納があるか判断する。同一のOVC上のすべての機器の情報が取得できているかを判断する。そして、すべての値の格納があれば(ステップS2207:Yes)、CIRデータベース605を参照し、同一トランザクションIDから各中継装置の設定(変更)可能なCIRを取得し、さらに、その中のCIR最小値を抽出し(ステップS2208)、CIR最小値管理テーブル606にS−Tag,CIRの設定または変更可能な最小値を格納する(ステップS2209)。この後、ステップS2211に移行する。
【0080】
一方、ステップS2207において、すべての値の格納がされていなければ(ステップS2207:No)、ステップS2210に移行する。ステップS2210では、利用不可であるとし、処理を終了する。または、更にCIR最小値管理テーブル606から該当するS−Tagエントリを削除し、ステップS2211に移行してもよい。なお、新規の場合は登録がないため削除しない。
【0081】
ステップS2211では、S−Tag,トランザクションID,NID MACアドレス一時保存情報を削除し、一連の処理を終了する。
【0082】
以上説明した実施の形態においては、1つのOVCに対するCIR変更をおこなう構成について説明したが、複数のOVCに対しても、同様にCIR変更をおこなうことができ、複数拠点のユーザ間での帯域の有効利用ができるようになる。
【0083】
そして、帯域保証装置は、CIRの情報を用いて、あらかじめ定期的にNID、および中継装置とやりとりして設定可能なCIRの最小値を求める構成であるため、ユーザ拠点(NID)側からのCIR設定変更の要求があったとき、このCIR設定変更の要求に対して即座に判定できる。これにより、ユーザ拠点からの帯域変更の要求に対して短時間で応答できるようになり、待ち時間がなく、すぐに帯域変更できるようになる。
【0084】
そして、帯域保証装置が帯域変更の可否を判定し、所定の通信プロトコルを用いて、OVC上に設けられたNID、および中継装置に対してもCIR変更の設定をおこなうことができ、CIR設定変更を簡単な構成で短時間に実行できるようになる。また、OVC上のNIDや中継装置の台数にかかわらず、帯域変更を即座に効率的におこなうことができる。特に、レイヤ2のMACアドレスとVLANタグの情報を用いてOVC上の機器を管理するため、通信の転送効率を向上でき、処理も簡単におこなうことができる。
【0085】
また、上記の帯域保証を帯域の使用量に応じた従量課金をおこなうサービスに適用する場合には、クラウドサービスへの回線を有効に帯域使用でき、提供するネットワークオペレータの収益拡大も可能となる。たとえば、空いた帯域を複数のOVCに割り振りすることもできるようになる。
【0086】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0087】
(付記1)ユーザ拠点側装置との間のOVC上に設置された複数の機器に設定された最低保証通信速度を収集する制御部と、
前記制御部により収集した前記最低保証通信速度の最小値を求めておき、前記ユーザ拠点側装置から前記OVCに対する帯域変更要求時には、前記最低保証通信速度に基づき、前記帯域変更要求の受け付けの可否を判断して前記ユーザ拠点側装置に応答する判定部と、
を備えたことを特徴とする帯域保証装置。
【0088】
(付記2)前記判定部は、
前記帯域変更要求が受け付け可能な場合には、前記最低保証通信速度の最小値を、通信速度を制限する手段に設定することを特徴とする付記1に記載の帯域保証装置。
【0089】
(付記3)前記判定部は、
前記帯域変更要求が受け付け可能な場合には、前記複数の機器に対して前記最低保証通信速度の変更を要求することを特徴とする付記2に記載の帯域保証装置。
【0090】
(付記4)前記制御部は、
定期的に、前記OVC上に設置された複数の機器に対し、所定の通信フレームに送信元および送信先のアドレスを設定して要求し、
複数の前記機器から所定の通信フレームの応答に設定された前記最低保証通信速度を、前記アドレスに基づき前記機器ごとに対応付けて更新可能に格納部に格納することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の帯域保証装置。
【0091】
(付記5)前記制御部は、
前記OVC上に設置された複数の機器に対し、所定の通信フレームを用いて、前記複数の機器に対する前記最低保証通信速度の変更を要求し、応答を受けることを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の帯域保証装置。
【0092】
(付記6)前記制御部は、
前記通信フレームの未使用の領域を用いて前記要求と応答、および設定値を送出することを特徴とする付記4または5に記載の帯域保証装置。
【0093】
(付記7)前記制御部は、
前記複数の機器から受信した同一トランザクションIDを有する複数の前記所定のフレームに含まれる前記最低保証通信速度を収集することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の帯域保証装置。
【0094】
(付記8)前記通信速度を制限する手段は、ポリサーであり、
前記判定部は、
前記帯域変更要求の受け付けの可否を、前記ポリサーが管理する余剰トークンの中から、前記帯域変更分のトークンを割り当てることが可能か否かに基づき判定することを特徴とする付記2に記載の帯域保証装置。
【0095】
(付記9)前記通信速度を制限する手段は、シェイパーであり、
前記判定部は、
前記帯域変更要求の受け付けの可否を、前記シェイパーが管理する通信ポートに対して設定されている複数のOVCの前記帯域変更要求の合計値が前記通信ポートの物理帯域を超えるか否かに基づき判定することを特徴とする付記2または8に記載の帯域保証装置。
【0096】
(付記10)前記ポリサーは、
前記帯域変更時のレートに対応する前記トークンのバケットサイズをあらかじめ複数保持し、変更後の前記帯域に対応する前記トークンのバケットサイズを設定することを特徴とする付記8に記載の帯域保証装置。
【0097】
(付記11)ユーザ拠点側装置との間のOVC上に設置された複数の機器に設定された最低保証通信速度を収集する収集工程と、
収集した前記最低保証通信速度の最小値を求めておき、前記ユーザ拠点側装置から前記OVCに対する帯域変更要求時には、前記最低保証通信速度に基づき、前記帯域変更要求の受け付けの可否を判断して前記ユーザ拠点側装置に応答する判定工程と、
を含むことを特徴とする帯域保証方法。
【符号の説明】
【0098】
100 ネットワーク
102 ブリッジ
401 ユーザ拠点装置(NID)
402 ネットワーク
403 クラウドサービス拠点
405 中継装置
410 帯域保証装置
601 制御部
602 処理部
602a 判定部(CAC)
603 OAMフレーム送受信部
604 NID管理テーブル
605 CIRデータベース
606 CIR最小値管理テーブル
607 CIR管理テーブル
610 入出力インターフェース
611 入力処理部
612 L2入力フレーム処理部
614 ポリサー
621 出力処理部
622 キューイング
623 スケジューラ
624 L2出力フレーム処理部
630 スイッチユニット
631 L2データスイッチング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ拠点側装置との間のOVC上に設置された複数の機器に設定された最低保証通信速度を収集する制御部と、
前記制御部により収集した前記最低保証通信速度の最小値を求めておき、前記ユーザ拠点側装置から前記OVCに対する帯域変更要求時には、前記最低保証通信速度に基づき、前記帯域変更要求の受け付けの可否を判断して前記ユーザ拠点側装置に応答する判定部と、
を備えたことを特徴とする帯域保証装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記帯域変更要求が受け付け可能な場合には、前記最低保証通信速度の最小値を、通信速度を制限する手段に設定することを特徴とする請求項1に記載の帯域保証装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記帯域変更要求が受け付け可能な場合には、前記複数の機器に対して前記最低保証通信速度の変更を要求することを特徴とする請求項2に記載の帯域保証装置。
【請求項4】
前記制御部は、
定期的に、前記OVC上に設置された複数の機器に対し、所定の通信フレームに送信元および送信先のアドレスを設定して要求し、
複数の前記機器から所定の通信フレームの応答に設定された前記最低保証通信速度を、前記アドレスに基づき前記機器ごとに対応付けて更新可能に格納部に格納することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の帯域保証装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記OVC上に設置された複数の機器に対し、所定の通信フレームを用いて、前記複数の機器に対する前記最低保証通信速度の変更を要求し、応答を受けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の帯域保証装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記通信フレームの未使用の領域を用いて前記要求と応答、および設定値を送出することを特徴とする請求項4または5に記載の帯域保証装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数の機器から受信した同一トランザクションIDを有する複数の前記所定のフレームに含まれる前記最低保証通信速度を収集することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の帯域保証装置。
【請求項8】
前記通信速度を制限する手段は、ポリサーであり、
前記判定部は、
前記帯域変更要求の受け付けの可否を、前記ポリサーが管理する余剰トークンの中から、前記帯域変更分のトークンを割り当てることが可能か否かに基づき判定することを特徴とする請求項2に記載の帯域保証装置。
【請求項9】
前記通信速度を制限する手段は、シェイパーであり、
前記判定部は、
前記帯域変更要求の受け付けの可否を、前記シェイパーが管理する通信ポートに対して設定されている複数のOVCの前記帯域変更要求の合計値が前記物理ポートの物理帯域を超えるか否かに基づき判定することを特徴とする請求項2または8に記載の帯域保証装置。
【請求項10】
ユーザ拠点側装置との間のOVC上に設置された複数の機器に設定された最低保証通信速度を収集する収集工程と、
収集した前記最低保証通信速度の最小値を求めておき、前記ユーザ拠点側装置から前記OVCに対する帯域変更要求時には、前記最低保証通信速度に基づき、前記帯域変更要求の受け付けの可否を判断して前記ユーザ拠点側装置に応答する判定工程と、
を含むことを特徴とする帯域保証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−248926(P2012−248926A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116717(P2011−116717)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】