説明

帯域制御装置及び方法

【課題】高い精度で、トラフィックの推定を行い回線帯域の制御を行う帯域制御装置を提供する。
【解決手段】帯域制御装置は、制御対象通信装置及び/又は制御対象通信装置と接続する通信装置から、制御対象通信装置を経由する回線のトラフィックと相関のあるトラフィック相関情報を収集する情報収集手段と、トラフィック相関情報から、互いに異なるアルゴリズムにより前記回線の帯域を算出する複数の帯域算出手段と、各帯域算出手段が算出した前記回線の帯域と、前記回線のトラフィックの実測値との関係の履歴に基づき、帯域算出手段を選択する選択手段と、選択した帯域算出手段が算出した前記回線の帯域を、制御対象通信装置に設定する手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回線の帯域を制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク内に設定されているパスや回線の帯域を制御するための各種方法が提案ささている(例えば、特許文献1、2及び非特許文献1、参照。)。
【0003】
特許文献1によると、通信装置に入力されるデータのスループット又はパケット廃棄率に基づき帯域を決定している。また、特許文献2によると、トラフィック量の長期変動特性及び短期変動特性を算出し、両者を考慮して帯域制御を行うこととしている。更に、非特許文献1によると、通信端末としての計算機のCPU使用率に基づき帯域の決定を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−324473号公報
【特許文献2】特開2004−247957号公報
【非特許文献1】宮本崇弘、他、“計算機の動作状況に応じた動的帯域割当て方式の提案”、電子情報通信学会、IN2006−125、pp.67−72、2006年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネットワークを運用するに当たり、輻輳の発生を避け、必要な帯域を必要な区間に確保することは非常に重要であるが、このためには、トラフィックがどの様に変動するかを正確に予測することが必要になる。しかしながら、トラフィック量の変動には様々な要因が関係し、従来技術よりも優れた帯域制御技術が常に求められている。
【0006】
したがって、本発明は、従来技術よりも高い精度で、トラフィックの推定を行い回線帯域の制御を行う帯域制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における帯域制御装置によれば、
制御対象通信装置及び/又は制御対象通信装置と接続する通信装置から、制御対象通信装置を経由する回線のトラフィックと相関のあるトラフィック相関情報を収集する情報収集手段と、トラフィック相関情報から、互いに異なるアルゴリズムにより前記回線の予測帯域を算出する複数の帯域算出手段と、各帯域算出手段が算出した前記回線の予測帯域と、前記回線のトラフィックの実測値との関係の履歴に基づき、帯域算出手段を選択する選択手段と、選択した帯域算出手段が算出した前記回線の予測帯域を、前記回線の帯域として制御対象通信装置に設定する手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の帯域制御装置における他の実施形態によれば、
情報収集手段は、複数種類のトラフィック相関情報を収集し、少なくとも1つの帯域算出手段が使用するトラフィック相関情報の種類は、他の帯域算出手段が使用するものと異なること、更に、少なくとも1つの帯域算出手段は、複数種類のトラフィック相関情報を使用することも好ましい。また、前記複数種類のトラフィック相関情報を使用する帯域算出手段は、少なくとも1つのトラフィック相関情報の値が閾値を超えた場合と超えない場合とで、異なるアルゴリズム又は各トラフィック相関情報の値に対して異なる重みを使用することも好ましい。
【0009】
また、本発明の帯域制御装置における他の実施形態によれば、
情報収集手段は、制御対象通信装置と接続する通信装置の監視制御装置からもトラフィック相関情報を収集することも好ましく、更に、選択手段は、各帯域算出手段が算出した予測帯域と、トラフィックの実測値との差に基づき、帯域算出手段に所定の点数を付与し、付与した点数の累積値に基づき、帯域算出手段を選択することも好ましい。
【0010】
本発明におけるプログラムによれば、
前記帯域制御装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明における帯域制御方法によれば、
制御対象通信装置及び/又は制御対象通信装置と接続する通信装置から、制御対象通信装置を経由する回線のトラフィックと相関のあるトラフィック相関情報を収集するステップと、トラフィック相関情報から、前記回線の予測帯域を、それぞれ異なるアルゴリズムにより複数算出するステップと、各アルゴリズムにより算出した前記回線の予測帯域と、前記回線のトラフィックの実測値との関係の履歴に基づき、予測帯域を選択するステップと、選択した予測帯域を、前記回線の帯域として制御対象通信装置に設定するステップと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による帯域制御装置は、複数の帯域算出手段が、互いに異なるアルゴリズムに基づき各回線の帯域を予測し、選択手段が、各帯域算出手段の過去の予測値と、実測値との関係に基づき、その回線に対して使用する帯域算出手段を選択する。得られるトラフィック相関情報に対するトラフィックの変動は回線によって異なる。つまり、制御対象通信装置が設置されるネットワークにより異なり、更に、同一ネットワークにおいても、そのネットワーク内での設置位置や時間等により異なる。しかしながら、本発明の帯域制御装置においては、その回線にあった帯域算出手段を選択することができ、従来よりも精度の高い回線制御を行うことができる。
【0013】
更に、正確なトラフィックの推定には、できるだけ多様なアルゴリズムを用いることが好ましいため、制御対象通信装置のみならず、制御対象通信装置と接続する通信装置や、通信装置の監視制御を行う監視制御装置からも複数種類のトラフィック相関情報を取得する。これにより、制御対象通信装置から取得した単一のトラフィック相関情報に基づき、単一のアルゴリズムにて帯域予測を行っていた従来技術による方法と比較して、より精度高くトラフィックの予測を行うことができる。また、トラフィック相関情報の値に応じて、重み又はアルゴリズムを変更することで、実際のトラフィックの振る舞いに近い帯域の算出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の帯域制御方法を説明するためのシステム構成図である。図1によると、システムは、帯域制御装置1と、帯域制御装置により帯域制御される制御対象通信装置2と、制御対象通信装置2と接続する通信装置3及び計算機4と、計算機4に対する監視制御装置5を備えている。
【0015】
ここで、計算機4とは、例えば、パーソナルコンピュータや汎用コンピュータ等の通信機能を有する計算機を指し、通信端末とも呼ばれる通信装置の一形態である。また、監視制御装置5とは、計算機4からの通信ログの収集や、計算機4に対する制御を実行する装置である。なお、本発明による帯域制御装置1は、制御対象である制御対象通信装置2と一体の装置として構成しても良い。
【0016】
本発明による、帯域制御装置1は、制御対象である制御対象通信装置2のみならず、制御対象通信装置2と接続する他の通信装置、更には、制御対象通信装置2と接続する他の通信装置の監視制御を行う装置からも、制御対象通信装置2を通過する回線の帯域を予測するためのトラフィック相関情報を収集する。
【0017】
トラフィック相関情報とは、トラフィック情報そのもの及びトラフィックと相関を有する情報であり、トラフィクと相関を有する情報の具体例としては、制御対象通信装置2、通信装置3及び計算機4のパケット廃棄率、CPU使用率、メモリの空き容量、ディスクの空き容量や、計算機4の監視制御装置5が計算機5から収集した通信ログ、計算機5に対して行った通信制御処理や、更には、監視制御装置5が、複数の計算機5に並列処理させる場合における、その並列処理への計算機5の追加又は削除指示等をいう。
【0018】
図2は、本発明による帯域制御装置1のブロック図である。図1によると、帯域制御装置1は、情報収集部11と、複数の帯域算出部12と、選択部13と、装置制御部14とを備えている。
【0019】
情報収集部11は、制御対象通信装置2、通信装置3及び/又は計算機4から1つ以上のトラフィック相関情報を、周期的又は非周期的に、収集する。
【0020】
帯域算出部12は、各回線のトラフィック相関情報から、制御対象通信装置2が、当該回線のために確保する帯域を予測する。本発明による帯域制御装置1において、回線の予測帯域を算出するために使用するアルゴリズムは、帯域算出部12ごとに異なっている。また、使用するトラフィック相関情報も、例えば、トラフィック情報のみという1種類のみではなく、CPU使用率及びトラフィック情報の両方を使用するといった様に、複数種類を使用することも好ましい。更に、制御対象通信装置2のみならず、制御対象通信装置2と接続する通信装置3及び制御対象通信装置2と接続する装置の監視制御装置5から取得したトラフィック情報も使用する。
【0021】
帯域算出の簡易な例としては、通信装置3の送信トラフィック情報の増減値を一定時間前の値と比較して増減した値を現在の帯域に加算する方法、計算機4のCPU使用率の範囲と各帯域の値をあらかじめ対応させておき選択する方法、CPU使用率とメモリの空き容量の範囲それぞれの組合せと各帯域の値を対応させておき選択する方法等がある。
【0022】
また、帯域算出部12は、使用するトラフィック相関情報の値が閾値を超えた場合と、超えない場合で、異なるアルゴリズムを使用して帯域を算出し、また、アルゴリズムで使用する重み係数を、実トラフィックの値を基に変更することも好ましい。例えば、図5に示す様に、トラフィック情報と、CPU使用率からそれぞれ帯域を求め、トラフィック情報から求めた帯域が50Mbps未満の場合には、両方の値をそれぞれ重み1で加算し、トラフィック情報から求めた帯域が50Mbps以上の場合には、CPU使用率から求めた値の重みを0.5とし、トラフィック情報から求めた値の重みは1のままで、両値を加算する。
【0023】
更に、実測値と算出した帯域の値の差に応じて、アルゴリズム及び/又はアルゴリズムで使用する重みを変更しても良い。
【0024】
本発明による帯域制御装置1は、この様に、各帯域算出部12が、互いに異なるアルゴリズムにより、それぞれ、各回線の帯域を算出するが、選択部13は、各回線について、その時点で一番確からしいと考えられる帯域を算出する帯域算出部12を選択し、機器制御部14は、選択部13が選択した帯域算出部12が算出する回線の帯域を、当該回線の帯域として制御対象通信装置2に設定する。帯域算出部12の選択は、各帯域算出部12が、過去に算出した予測帯域と、実測値との関係の履歴に基づいて行い、以下、具体例を示す。
【0025】
図3は、選択部13による選択処理を説明する図である。図3によると、4つの帯域算出部A、B、C及びDが、それぞれある回線の帯域を算出している場合を示している。時刻t1において、帯域の実測値に一番近い値を出力したのは、帯域算出部Aであるため、時刻t2においては、帯域算出部Aの出力値を選択部13は選択する。続いて、刻t2において、帯域の実測値に一番近い値を出力したのは、帯域算出部Dであるため、時刻t3においては、帯域算出部Dの出力値を選択部13は選択する。この様に、本実施例においては、直前の算出結果が、実測値に一番近かった帯域算出部12の出力値を、次の帯域として選択する。
【0026】
図4は、選択部13による選択処理の他の実施例を説明する図である。ここで、各帯域算出部の出力値と、実測値は図3の通りとする。本例においては、実測値と算出値が1番近かったものから順に4、3、2、1点のスコアを配点し、この値の累積値の大きい帯域算出部の出力を選択する。図3において、時刻t1での出力値は、帯域算出部A、D、B、Cの順で実測値に近いため、時刻t2において、帯域算出部Aに4点、Bに2点、Cに1点、Dに3点が配点され、よって、時刻t2では、帯域算出部Aの出力が選択される。続いて、時刻t2での出力値は、帯域算出部Dが1番目であり、Cが2番目であり、A及びBが3番目であるため、時刻t3において、帯域算出部Aに2点、Bに2点、Cに3点、Dに4点が配点され、よって、時刻t3での累積値は、帯域算出部Aが6点、Bが4点、Cが4点、Dが7点となり、帯域算出部Dの出力が選択される。なお、時刻の経過に従い、過去のスコアの重みを小さくしても良い。
【0027】
以上、本発明による帯域制御装置1は、複数の帯域算出部12が、それぞれ、異なるアルゴリズムに基づき各回線の帯域を算出し、選択部13が、各帯域算出部12が算出した回線の帯域と、その回線のトラフィックの実測値との関係の履歴に基づき、その回線に対して使用する帯域算出部12を選択することで、従来技術と比較して、実際の回線の振る舞いに適合するアルゴリズムを使用した帯域を設定することができる。
【0028】
ある制御対象通信装置を経由する回線の振る舞いは、ネットワークにより、更に、同一ネットワークにおいても、そのネットワーク内での制御対象通信装置の設置位置や時間等により異なるため、できるだけ多様なアルゴリズムを用いることが好ましい。このため、制御対象通信装置2のみならず、制御対象通信装置2と接続する通信装置や、通信装置の監視制御を行う監視制御装置からも複数種類のトラフィック相関情報を取得する。これにより、制御対象通信装置2から取得した単一のトラフィック相関情報に基づき、単一のアルゴリズムにて帯域予測を行っていた従来技術による方法と比較して、より精度高くトラフィックの予測を行うことができる。
【0029】
本発明においては、従来技術と異なり、トラフィック相関情報の値により重み及び/又はアルゴリズムを変更し、また、実測値との比較により重み及び/又はアルゴリズムを変更することで、実際のトラフィックの振る舞いに近い帯域の算出を可能にする。
【0030】
なお、本発明による帯域制御装置は、コンピュータを図2の各部として機能させるコンピュータプログラムにより実現することができる。このコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。更に、本発明は、ハードウェアのみや、ソフトウェアのみならず、それらの組合せによっても実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の帯域制御方法を説明するためのシステム構成図である。
【図2】本発明による帯域制御装置のブロック図である。
【図3】選択部による選択処理を説明する図である。
【図4】選択部による選択処理の他の形態を説明する図である。
【図5】帯域算出部による帯域算出の一形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 帯域制御装置
2 制御対象通信装置
3 通信装置
4 計算機
5 監視制御装置
11 情報収集部
12 帯域算出部
13 選択部
14 装置制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象通信装置及び/又は制御対象通信装置と接続する通信装置から、制御対象通信装置を経由する回線のトラフィックと相関のあるトラフィック相関情報を収集する情報収集手段と、
トラフィック相関情報から、互いに異なるアルゴリズムにより前記回線の予測帯域を算出する複数の帯域算出手段と、
各帯域算出手段が算出した前記回線の予測帯域と、前記回線のトラフィックの実測値との関係の履歴に基づき、帯域算出手段を選択する選択手段と、
選択した帯域算出手段が算出した前記回線の予測帯域を、前記回線の帯域として制御対象通信装置に設定する手段と、
を備えている帯域制御装置。
【請求項2】
情報収集手段は、複数種類のトラフィック相関情報を収集し、
少なくとも1つの帯域算出手段が使用するトラフィック相関情報の種類は、他の帯域算出手段が使用するものと異なる、
請求項1に記載の帯域制御装置。
【請求項3】
情報収集手段は、複数種類のトラフィック相関情報を収集し、
少なくとも1つの帯域算出手段は、複数種類のトラフィック相関情報を使用する、
請求項1又は2に記載の帯域制御装置。
【請求項4】
前記複数種類のトラフィック相関情報を使用する帯域算出手段は、少なくとも1つのトラフィック相関情報の値が閾値を超えた場合と超えない場合とで、異なるアルゴリズム又は各トラフィック相関情報の値に対して異なる重みを使用する、
請求項3に記載の帯域制御装置。
【請求項5】
情報収集手段は、制御対象通信装置と接続する通信装置の監視制御装置からもトラフィック相関情報を収集する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の帯域制御装置。
【請求項6】
選択手段は、各帯域算出手段が算出した予測帯域と、トラフィックの実測値との差に基づき、帯域算出手段に所定の点数を付与し、付与した点数の累積値に基づき、帯域算出手段を選択する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の帯域制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の帯域制御装置としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項8】
制御対象通信装置及び/又は制御対象通信装置と接続する通信装置から、制御対象通信装置を経由する回線のトラフィックと相関のあるトラフィック相関情報を収集するステップと、
トラフィック相関情報から、前記回線の予測帯域を、それぞれ異なるアルゴリズムにより複数算出するステップと、
各アルゴリズムにより算出した前記回線の予測帯域と、前記回線のトラフィックの実測値との関係の履歴に基づき、予測帯域を選択するステップと、
選択した予測帯域を、前記回線の帯域として制御対象通信装置に設定するステップと、
を備えている帯域制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−199451(P2008−199451A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34571(P2007−34571)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】