説明

帯板多層圧着設備

【課題】安定化層を除去しかつ再度安定化層(酸化層)が形成される前に圧着することができ、素材を高温にして活性化して接合することができ、帯板の表面のゴミを除去・洗浄しかつ再付着を防止して接合することができ、各帯板の接合時の張力を正確に保持することができ、圧着時の各帯板のそれぞれの圧延伸率がほぼ等しくなるよう制御することができる帯板多層圧着設備を提供する。
【解決手段】真空容器内に、複数の巻出しリール装置14a、14bと、複数の巻出し張力制御設備16a、16bと、表面活性化装置18と、圧着装置20と、巻取りリール装置22と、を備える。圧着装置20は、複数の帯板を圧着させる1対の圧着ロール21a、21bを備え、1対の圧着ロールは、各帯板の出側の伸び歪みが同じになるように、異なる直径を有し、及び/又は、異なる周速で回転駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の帯板を圧着する帯板多層圧着設備に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の帯板を圧着してクラッド材を製造する手段として、例えば、特開平4−138884号公報(特許文献1)の「Al/ステンレス鋼クラッド板製造時における板厚製造方法」が開示されている。この図3に模式的に示すように、加熱装置5,6と圧延機7を備え、Al又はAl合金の加熱温度を調整することで「クラッド素材間」及び「Al又はAl合金と圧延ロール間」の摩擦抵抗を変化させ、これによって製品の板厚制御を行うものである。なお、この図で1,2はペイオフリール、3,4はコイル、8はテンションリールである。
【0003】
【特許文献1】特開平4−138884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した手段では、帯板を空気中で圧着するため、帯板表面に形成されている安定化層(例えば酸化膜)の洗浄・活性化が不十分であり、圧着強度が低い問題点があった。また、板材(切板)を真空中でバッチ処理により圧着する試験例も報告されているが、真空中で表面の洗浄・活性化ができず、予め外部で処理した切板を使用しても、その後短時間に安定化(例えば酸化)されてしまうため、圧着強度が依然として低い問題点があった。
【0005】
すなわち、帯板を圧着して高い圧着強度を有するクラッド材を製造するためには、安定化層を除去しかつ再度安定化層(酸化層)が形成される前に圧着する、素材を高温にして活性化して接合する、帯板の表面のゴミを除去・洗浄しかつ再付着を防止する、等が不可欠であるが、これらを確実に行うことができる帯板多層圧着設備は従来なかった。
【0006】
また、更に高品質/高接合強度のクラッド材を製造するためには、各帯板の接合時の張力を正確に保持し、各張力を圧着前の帯板の硬さに応じたある最適値に設定でき、圧着時の各帯板のそれぞれの圧延伸率がほぼ等しくなるようにする必要がある。
【0007】
本発明は、かかる要望を満たすために創案されたものである。すなわち、本発明の主目的は、安定化層を除去しかつ再度安定化層(酸化層)が形成される前に圧着することができ、素材を高温にして活性化して接合することができ、帯板の表面のゴミを除去・洗浄しかつ再付着を防止して接合することができ、各帯板の接合時の張力を正確に保持することができ、圧着時の各帯板のそれぞれの圧延伸率がほぼ等しくなるよう制御することができる帯板多層圧着設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、真空ポンプで真空引きされる真空容器内に、複数のコイル状帯板をそれぞれ巻き出す複数の巻出しリール装置と、該巻き出しリール装置で巻き出した帯板の張力をそれぞれ制御する複数の巻出し張力制御設備と、前記巻き出しリール装置から巻き出した複数の帯板の接合表面の洗浄・活性化を行う表面活性化装置と、前記複数の帯板を真空中で圧着させる圧着装置と、圧着した単一の帯板をコイル状に巻き取る巻取りリール装置と、を備え、前記圧着装置は、複数の帯板を圧着させる1対の圧着ロールを備え、該1対の圧着ロールは、各帯板の出側の伸び歪みが同じになるように、異なる直径を有し、及び/又は、異なる周速で回転駆動される、ことを特徴とする帯板多層圧着設備が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成により、真空容器内で表面活性化を行うことにより、安定化層を除去しかつ再度安定化層(酸化層)が形成されるのを防止しつつ圧着することができる、同時に、帯板の表面のゴミを除去・洗浄しかつ再付着を防止して接合することができる。また、巻出し張力制御設備を真空容器内に内蔵することにより、各帯板の接合時の張力を正確に保持することができる。
また、例えば、帯板が硬いものと柔らかいものの場合に、硬い側を小径にして平均面圧を高くし、逆に柔らかい側を大径にして平均面厚を下げ、出側の伸び歪みを同一にすることができる。この場合、中立点で、材料速度とロール速度が一致し、同じ板厚の帯板では、出側でもほぼ同一の厚さとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。図1は、本発明の帯板多層圧着設備の全体構成図である。この図に示すように、本発明の帯板多層圧着設備10は、真空ポンプ11で真空引きされる真空容器12内に、複数(この図で2つ)の巻出しリール装置14a,14b、複数(この図で2つ)の巻出し張力制御設備16a,16b、表面活性化装置18、圧着装置20、及び巻取りリール装置22を備えている。なお、本発明は、2つの巻出しリール装置及び巻出し張力制御設備に限定されず、3つ以上のこれらを備えてもよい。
【0011】
図2は、図1のA−A線における断面図である。この図に示すように、巻出しリール装置14aは、コイル状帯板9aの巻出しスプール23を両端から挟持する挟みドラム24と、ドラム24を回転自在にシールするシール装置26と、シール装置26を帯板9aの幅方向に移動可能にシールするダイヤフラム28とからなる。シール装置26にはドラム24との間にシール25が設けられ、その間を回転可能に気密にシールしている。また、ダイヤフラム28の一端はシール装置26の本体部分に固着され、他端は真空容器12に固着された、シール装置26を幅方向に移動可能に気密にシールしている。また、ドラム24は外部からペイオフモータ15aで回転駆動され、かつ液圧シリンダ27により、ドラム24及びモータ15aが帯板9aの幅方向に移動できるようになっている。この構成により、真空容器12の外部からコイル(帯板9a)を幅方向に移動可能に挟持しながら、コイル状帯板9aを巻き出すことができる。なお、巻出しリール装置14bも、同様の構成である。
【0012】
巻出し張力制御設備16a,16bは、図1に示すように、帯板9a,9bに張力を付加するダンサロール32と、ダンサロール32の位置を検出する位置検出装置34(例えばカメラ)と、張力制御装置36(例えば、液圧シリンダ)とからなり、位置検出装置で検出したダンサロール32の位置偏差(x,x)をそれぞれの巻出しリール装置14a,14bのモータ速度にフィードバックしながら、張力制御装置36により帯板9a,9bの張力をそれぞれ制御するようになっている。この構成により、帯板の各張力を圧着前の帯板の硬さに応じたある最適値に設定できる。
【0013】
表面活性化装置18は、例えば帯板9a,9bの接合表面にプラズマ或いはイオンを照射して板表面層を洗浄・活性化する電子銃装置であり、巻き出しリール装置から巻き出した複数の帯板の接合表面の洗浄・活性化を行うようになっている。この構成により、板表面層の洗浄と同時に素材を高温にして活性化して接合することができる。
【0014】
圧着装置20は、複数の帯板9a,9bを圧着させる1対の圧着ロール21a,21bを備える。この1対の圧着ロール21a,21bは、圧着圧延モータ37a,37bでそれぞれ駆動される。また圧着ロール21a,21bは、異なる直径を有し、及び/又は、異なる周速で回転駆動され、複数の帯板9a,9bを真空中で単一の帯板9cに圧着させ、同時に出側の伸び歪みが同じになるように制御される。この構成により、例えば、帯板が硬いものと柔らかいものの場合に、硬い側を小径にして平均面圧を高くし、逆に柔らかい側を大径にして平均面厚を下げ、出側の伸び歪みを同一にすることができる。この場合、中立点で、材料速度とロール速度が一致し、同じ板厚の帯板では、出側でもほぼ同一の厚さとなる。
【0015】
巻取りリール装置22は、好ましくは巻出しリール装置14a,14bと同様に構成され、巻取りモータ15cにより圧着した単一の帯板9cをコイル状に巻き取る。
【0016】
上述した本発明の構成により、真空容器12内で表面活性化を行うことにより、帯板9a,9bの安定化層を除去しかつ再度安定化層(酸化層)が形成されるのを防止しつつ圧着することができる、同時に、帯板の表面のゴミを除去・洗浄しかつ再付着を防止して接合することができる。また、巻出し張力制御設備16a,16bを真空容器12内に内蔵することにより、各帯板9a,9bの接合時の張力を正確に保持することができる。
【0017】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の帯板多層圧着設備の全体構成図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】従来の帯板多層手段の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1,2 ペイオフリール
3,4 コイル
5,6 加熱装置
7 圧延機
8 テンションリール
9a,9b,9c 帯板
10 帯板多層圧着設備
12 真空容器
14a,14b 巻出しリール装置
15a,15b ペイオフモータ
16a,16b 巻出し張力制御設備
18 表面活性化装置
20 圧着装置
21a,21b 圧着ロール
22 巻取りリール装置
23 巻出しスプール
24 挟みドラム
25 シール
26 シール装置
27 液圧シリンダ
28 ダイヤフラム
32 ダンサロール
34 位置検出装置
36 張力制御装置
37a,37b 圧着圧延モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプで真空引きされる真空容器内に、複数のコイル状帯板をそれぞれ巻き出す複数の巻出しリール装置と、該巻き出しリール装置で巻き出した帯板の張力をそれぞれ制御する複数の巻出し張力制御設備と、前記巻き出しリール装置から巻き出した複数の帯板の接合表面の洗浄・活性化を行う表面活性化装置と、前記複数の帯板を真空中で圧着させる圧着装置と、圧着した単一の帯板をコイル状に巻き取る巻取りリール装置と、を備え、
前記圧着装置は、複数の帯板を圧着させる1対の圧着ロールを備え、該1対の圧着ロールは、各帯板の出側の伸び歪みが同じになるように、異なる直径を有し、及び/又は、異なる周速で回転駆動される、ことを特徴とする帯板多層圧着設備。
【請求項2】
前記表面活性化装置は、帯板の接合表面にプラズマ或いはイオンを照射して板表面層を洗浄・活性化する電子銃装置である、ことを特徴とする請求項1記載の帯板多層圧着設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−28796(P2009−28796A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287475(P2008−287475)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【分割の表示】特願平10−37009の分割
【原出願日】平成10年2月19日(1998.2.19)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】