説明

帯状ガラスから製造されたガラスシートにおける応力偏差を低減する方法および装置

【課題】移動する帯状ガラス(13)から裁断されるガラスシート(11)における応力レベルの偏差を低減する。
【解決手段】分離アセンブリ(20)が帯状ガラス(13)に分離線(47)を形成する部位の下方の少なくとも一つの部位における帯状ガラス(13)のエッジ領域(53,55)の水平面内の動きを制限することにより、応力レベルの偏差の低減が達成される。帯状ガラス(13)のエッジ領域(53,55)に係合する垂直に配列された複数組のホイール(35)は、帯状ガラス(13)の中央の高品質領域の水平方向の動きを、品質を損なうおそれなしに制限するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレー(LCD)のような表示装置における基板として用いられるガラスシートのようなガラスシートの製造に関するものである。特に本発明は、例えばこのようなディスプレーの製造時において複数の部分に裁断されるときにガラス基板が呈する歪みの量を低減するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置は種々の用途に用いられている。例えば、薄膜トランジスタ液晶ディスプレー(TFT−LCD)は、ほんの僅かだけ名前を挙げると、ノートブック・コンピュータ、フラットパネル・デスクトップモニタ、LCDテレビ、ならびにインターネットおよび通信装置に用いられている。
【0003】
TFT−LCDパネルおよび有機発光ダイオード(OLED)のような多くの表示装置は、平坦なガラスシート(ガラス基板)上に直接形成される。生産速度を高めかつコストを低減するために、一般的なパネル製造工程においては、1枚の基板上または基板のサブピース上に多数枚のパネルを同時に作成している。このような工程における種々の時点において、基板は裁断線に沿って小部分に分割される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような裁断は、ガラス内部の応力分布、特にガラスが真空で平坦化されるときに見られる面内応力分布を変化させる。特に裁断は、裁断されたエッジが引っ張られなくなる態様で裁断線において応力を解放する。このような応力解放は一般に、真空で平坦化されたガラスのサブピースの形状変化、すなわちディスプレー製造業者が「歪み」と呼んでいる現象を招来する。形状変化の量は一般に極めて僅かであるが、現代のディスプレーに用いられている画素構造の観点からすると、裁断により生じる歪みは、相当な数の欠陥(不合格)ディスプレーを生じさせる程極めて大きい。したがって、この歪みの問題は、裁断後の歪みを許容範囲の2μm以下に抑えることができるかに関して、ディスプレー製造業者および仕様の大きな関心事である。
【0005】
本発明は、歪みをコントロールすることに関し、特に、下方延伸法、オーバーフロー・ダウンドロー法(フュージョン法としても知られている)および上方延伸法(アップドロー)等のような垂直延伸法によって製造されるガラスシートから裁断されるサブピースにおける歪みをコントロールする方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の様相によれば、本発明は、垂直延伸法を用いたガラスシート(11)の製造方法が提供され、この方法は、
成形アセンブリ(41)を用いて、中央領域(51)および両エッジ領域(53,55)を有しかつそれぞれが第1面および第2面を有する帯状ガラス(13)を形成し、
成形アセンブリ(41)の下方に配置されかつ帯状ガラス(13)にその幅方向に沿って分離線(47)を形成する分離アセンブリ(20)を用いて、帯状ガラス(13)から複数のガラスシート(11)を連続的に切り離し、
帯状ガラスの両エッジ領域(53,55)のそれぞれの第1面および第2面の双方を、分離アセンブリ(20)が分割線(47)を形成する部位の下方に配置されたエッジ案内アセンブリ(33)が備える垂直面内に案内する、諸ステップを含む。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記案内ステップが、成形アセンブリ(41)と分離アセンブリ(20)との間の位置にある、中央領域(51)の少なくとも一部分の水平方向の動きを低減する。これらの実施の形態においては、上記一部分におけるガラスの温度が、上記ガラスのガラス転移温度範囲内にあることが好ましい。動作に関して如何なる特定の理論にも縛られる意図はないが、このようにして、帯状ガラス(13)から裁断されたガラスシート(11)の応力レベルにおける偏差が、例えばガラスシート(11)の一方のエッジに沿った少なくとも一箇所において低減される。
【0008】
第2の様相によれば、本発明は、帯状ガラス(13)のエッジ領域(53または55)を垂直面内に案内するためのアセンブリを提供し、このアセンブリは、
第1垂直軸(59)および第2垂直軸(61)を備えた本体(49)、
支持体(63,67)上に取り付けられた垂直方向に間隔をおいた第1組のホイール(35)であって、これらのホイールが帯状ガラス(13)のエッジ領域(53または55)に接触不能な第1位置から、これらのホイールが帯状ガラス(13)のエッジ領域(53または55)に接触してこのエッジ領域を案内し得る第2位置まで第1垂直軸(59)の周りを回動可能であり、それぞれがガラス係合面(71)を備えている第1組のホイール(35)、
支持体(65,69)上に取り付けられた垂直方向に間隔をおいた第2組のホイール(35)であって、これらのホイールが帯状ガラス(13)のエッジ領域に接触不能な第1位置から、これらのホイールが帯状ガラス(13)のエッジ領域(53または55)に接触してこのエッジ領域を案内し得る第2位置まで第2垂直軸(61)の周りを回動可能であり、それぞれがガラス係合面(71)を備えている第2組のホイール(35)、
を備え、
第1組および第2組のホイール(35)がそれらの第2位置にあるときには、第1組のホイール(35)のガラス係合面(71)と第2組のホイール(35)のガラス係合面(71)との間の間隔が、両ガラス係合面(71)間に配置された帯状ガラス(13)のエッジ領域(53または55)がほぼ垂直な面を維持するのに十分な程度に狭くなるように、第1および第2垂直軸(59,61)の間隔が設定されている。
【0009】
説明を容易にするために、本発明はガラスシートの製造に関して記載されかつ請求項が作成されている。明細書および請求項を通じて、「ガラス」という言葉はガラスおよびガラスセラミック材料の双方をカバーするように意図されていることを理解すべきである。 また、「ガラスの温度」とは、帯状ガラスの中心線における表面温度を意味する。これらの温度は、パイロメータおよび/または接触熱電対を用いるような、種々の公知の技法によって測定可能である。
【0010】
上述の本発明の種々の様相の概要に用いられている参照番号は、読者の便宜のためのみのものであって、本発明の範囲の制限を意図したものではなく、またそのように解釈されるべきものでもない。さらに、上述の概要の記載および下記の詳細な説明は、本発明の例示に過ぎず、本発明の性質および性格を理解するための概観または枠組みの提供を意図したものである。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、当業者であれば、その一部がすでに明らかであるか、あるいは本発明をここに記載されたように実施することによって認識し得るであろう。添付の図面は、本発明の理解をさらに深めるために提供されているものであって、本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部分を構成するものである。図面の縮尺は一定ではない。本明細書および図面に開示された本発明の種々の特徴は、その何れかをまたは全てを組合せて用いることが可能なことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】延伸法により形成された、そこから個々のガラスシートが裁断される帯状ガラスを示す概略図である。中心線および中央領域に対する帯状ガラスの両エッジ領域の部位が本図に示されている。
【図2A】移動する帯状ガラスからのガラスシートの分離を示す図である。
【図2B】移動する帯状ガラスからのガラスシートの分離を示す図である。
【図2C】移動する帯状ガラスからのガラスシートの分離を示す図である。
【図3A】本発明により構成された案内手段の開放位置を示す正面図である。
【図3B】本発明により構成された案内手段の開放位置を示す平面図である。
【図4A】図3の案内手段の閉鎖位置を示す正面図である。
【図4B】図3の案内手段の閉鎖位置を示す平面図である。
【図5】ガラスシート形成ラインの一部として据え付けられた図3および図4の案内手段を示す図である。
【図6A】不動のエッジ案内アセンブリを示す図である。
【図6B】分離アセンブリとともに移動するエッジ案内アセンブリを示す図である。
【図7A】分離線の下方における帯状ガラスの水平方向の動きを制限せずに得られる応力レベルの偏差を示す実験データのグラフである。
【図7B】分離線の下方における帯状ガラスの水平方向の動きを制限することによって得られる応力レベルの偏差の低下を示す実験データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は中央領域51(帯状ガラスの高品質部分)および両エッジ領域53,55(品質を問わない帯状ガラスの部分または「ビード」部分)を含む帯状ガラス13を表し、両エッジ領域は、これらのエッジ領域に単数または複数のエッジまたは牽引ホイールが接触した結果、一般にギザギザになっている。また図1には、帯状ガラスの中心線57および帯状ガラスから個々のガラスシート11が切り離される分離線47が示されている。
【0014】
図2A,図2Bおよび図2Cは、個々のガラスシート11を帯状ガラス13から切り離すために、本発明により用いることができる適当な分離アセンブリ20を示す。この形式の分離アセンブリは、その内容が引例として本明細書に組み入れられる米国特許第6,616,025号明細書に開示されている。勿論、もし必要であれば、異なる構成および機能を有する他の機器も本発明の実施に使用することが可能である。
【0015】
図2A,図2Bおよび図2Cのそれぞれにおいて、参照番号41は、例えばLCDガラスを製造するためのオーバーフロー・ダウンドロー形式の成形アセンブリのような、帯状ガラス13を製造する成形アセンブリを表す。この形式の成形アセンブリは従来から知られているので、本発明の説明を曖昧にしないために、その詳細説明は省略する。勿論、他の形式のガラス成形装置(例えばスロットドロー・アセンブリ)を用いることもできる。オーバーフローシステムと同様に、これらの装置は、ガラス製造における職人技能の範囲内である。
【0016】
図2A,図2Bおよび図2Cにおける参照番号43は、分離されたシートを製造工程の次の段階、例えばエッジ整形ステーション、検査ステーション等に搬送させるための、ガラスシートグリッパ45を備えたガラスシート搬送システムを表す。この形式の装置も従来から当業者に知られているので、やはり本発明の説明を曖昧にしないために、その詳細説明は省略する。勿論、図示以外の装置を本発明の実施に使用してもよい。
【0017】
図2Aは、帯状ガラス13のリーディングエッジが罫書きサブアセンブリ21を通過して、シート切離しサブアセンブリ15の領域内に入った時点における全体のシステムを示す。罫書きサブアセンブリ21は、アンビル23、罫書き25および罫書き搬送機27を備えることができる。もし必要であれば、例えばレーザーを用いたシステムのような他の形式の罫書きシステムを用いることはできるが、罫書きサブアセンブリは、従来と同様に、可動罫書き/可動アンビル形式のものとすることができる。
【0018】
シート切離しサブアセンブリ15は、シート係着部材19、例えばガラスシート11の長さおよび幅よりも小さい四角形の四隅に配置された4個の板ガラス係着部材19を取り付けたフレーム17を備えることができる。板ガラス係着部材19は、例えば柔らかい真空吸引カップとすることができるが、必要に応じて、例えばクランプのような、ガラスシートを拘束するための他の装置を用いてもよい。
【0019】
シート切離しサブアセンブリ15は、コネクタアセンブリ31を介してフレーム17に連結された搬送機29を備えている。搬送機29は、フレームおよびコネクタアセンブリに直線運動および回転運動を与える産業ロボットおよび/または固定された自動機とすることができる。一旦、分離線47におけるガラスシートの帯状ガラスからの分離が行なわれると、コネクタアセンブリ31は、フレーム17および取り付けられた1枚のガラスシートが搬送機に対して制御された態様で「下方への移動」を受けることができるのが好ましい。
【0020】
図2Bは、罫書き25による帯状ガラス13における分離線47の形成を示す。本図にも示されているように、板ガラス係着部材19はすでにガラスシートに係着されている。この係着は、ガラスシートが罫書かれる以前または以後のいずれに行われてもよい。係着は、例えば柔らかい真空吸引カップのような十分に柔らかい係着部材の使用と組み合わせた板ガラス係着部材の確実な配置によって達成される。
【0021】
もし罫書き後に上記係着がなされた場合には、この係着が、帯状ガラスからガラスシートを時期尚早に分離させるおそれのある罫書き線の周りに曲げモーメントを発生させないようにすべきである。すなわち、この係着は、ガラスの平面を維持しながら行なうことを要する。最上位の係着部材と罫書き線との間の距離を調整することによって、係着時の曲げモーメントを低減させることができる。
【0022】
ガラスシートの取り外しサブアセンブリ15がガラスに対し罫書きの以前に係着されようと、以後に係着されようと、上記サブアセンブリは、帯状ガラスからガラスシートを分離させる曲げモーメントが印加される以前にガラスに係着される必要がある。ガラスの平面が維持されている限り、帯状ガラス13はたとえ罫書かれるときであっても実質的な重量を支えている。上記分離線が開きかつ引っ張り力/圧縮力勾配をガラス内に生じさせる曲げモーメントの印加によって、ガラスシートを通じて駆動されるときにのみ、ガラスシートはその強度を失う。
【0023】
図2Cは曲げモーメントの印加を示す。本図に示されているように、上記曲げモーメントは、回転が発生する支点としてのアンビル23を用いて、ガラスシートの第1面(罫書かれない側)の周りに印加されるのが好ましい。この好ましい実施の形態においては、コネクタアセンブリ31は、分離されたガラスシートの後縁を、直ちに帯状ガラスの前縁から遠ざける。このようにして、エッジの損傷を最少にすることができる。
【0024】
実際には、帯状ガラス13が成形アセンブリ41を後にするにつれて、ガラスがカールして垂直方向の移動を維持しない傾向がある。帯状ガラスの長さが増大するにつれて、その重量によってガラスを垂直面に引き戻されることになる。シート切離しサブアセンブリの底部の高さにおいてほぼ50mm程度以上となり得るこの動きは、帯状ガラスのその長さ方向に沿った形状の一時的な変化を招く。特に、この動きは、このガラスのガラス転移温度範囲(GTTR)を通過する帯状ガラスのその部分の形状変化を招く。
【0025】
フュージョン法またその他の形式のガラス製造工程において、帯状ガラスが冷えるにつれて、帯状ガラスを構成しているガラスは、物理的な寸法変化のみでなく分子レベルの複雑な構造変化に直面する。例えば、成形アセンブリから分離アセンブリまで移動するにつれて、帯状ガラスの冷却を注意深くコントロールすることにより、フュージョン法において用いられるアイソパイプの底部における厚さ約50mmの柔軟な液体から厚さ約0.5mmの硬いガラスシートへの移行が達成される。
【0026】
ガラスがそのGTTRを通過するにつれて、冷却過程の臨界的部分が発生する。特に、GTTRは、GTTR内およびGTTRの上下の双方におけるガラスの挙動のために、歪みに関して重要な役割を演ずる。GTTRの上方にある、より高い温度において、ガラスは基本的に液体のように振舞い、すなわち、印加される応力に対する応答は歪み速度であり、粘性応答は本質的に検知不能である。
【0027】
ガラスが高温から冷えてGTTRを通過するとき、液体のような振舞いから固体のような振舞いへの突然の転移は示さない。その代わりに、ガラスの粘度が徐々に増大し、粘性応答および弾性応答が顕著になり、最終的に固体のように振舞う。ガラスがこの過程を通り過ぎるにつれて、ガラス内の応力の量に影響を与え得る永久的な形状を呈し、ガラスが、例えばLCDディスプレーの製造においてサブピースに裁断されるときに多量の歪みが現れる。
【0028】
本発明によれば、長さが増大するにつれて重量が増大することに起因する帯状ガラスの形状の変化は、GTTR内における帯状ガラスの形状における変化を、したがって、帯状ガラスから裁断されるガラスシートの応力レベルの偏差を「凍結」することができることが判明した。特に、この形状の変化(または帯状ガラスの部分の垂直面からの等価的な移動)がシート形成サイクル中に生じるので、上部および底部が異なる形状を有し、したがって種々の応力値およびこれらの応力値における種々の偏差を有するガラスシートとなるのである。両エッジ間における応力値のこれらの偏差は、それがサブピースに裁断されたときにシートに関する歪み値に影響を与える。
【0029】
LCDディスプレーのような製品の製造に利用されるガラスシートの長さが増大するにつれて(例えば965mmを超えるまで)、成形アセンブリの下方の帯状ガラスの面振れの機会が増す。より薄いガラスシート、例えば厚さが0.5mmのような0.7mm未満のシートは、より多くの面振れを示す。より大きい形状変化もやはり、一般的に帯状ガラスから裁断されたガラスシートの応力レベルおよび応力変動性のレベルを増大させる。したがって、ガラス内の応力変動性のレベルを効果的に低下させるためには、形状の変動性をコントロールする必要がある。
【0030】
本発明によれば、ガラスシート分離サイクル中にGTTR内にある帯状ガラスの形状の変動性は、少なくともかなりの部分において、分離線の下方の部位における、すなわち実質的にGTTRよりも下方にある部位における帯状ガラスの動きに左右されることが判明した。この動きは、帯状ガラスの上方へ転送され、GTTRにあるガラス内に固定されることになる。
【0031】
GTTR内にある帯状ガラスの動きの量を低減するために、本発明は、分離線の下方の帯状ガラスの動きに対する機械的な制限手段を提供するものである。この制限手段は、帯状ガラスの長さの増大および個々のガラスシート分離を通じて帯状ガラスを垂直面内に保持する機能を有する。この制限動作は、裁断されかつ帯状ガラスから切り離される以前のガラスシートの水平方向の動きを低減し、換言すると、上記制限動作は、GTTRにある帯状ガラスの水平方向の動きを含む、分離アセンブリの上方の部位における帯状ガラスの水平方向の動きを低減する。このようにして、応力変動性レベルを低減されたガラスシートが得られる。特に、多くのサンプルに亘って応力がより一貫性を有するものとなり、頂部エッジにおける応力が底部エッジにおける応力により等しくなる。
【0032】
例えば、分離線の下方において水平方向の動きを制限された帯状ガラスから生産された50枚の一連のガラスシートの母集団を、同じ条件ではあるが上述のような制限を受けない条件の下で生産された50枚の一連のガラスシートの母集団と少なくとも一箇所の部位において比較すると、より低い応力値の標準偏差を有する。例えば応力変動性は、標準偏差で約207Pa(30psi )から約69Pa(10psi )に低減することができる。
【0033】
従来から知られているように、応力レベルは、複屈折測定法を用いてガラスシートの一箇所以上の部位で測定することができる。このような測定は一般に、ガラスシートが平坦な表面に真空吸引されている状態で行なわれる。測定は、ガラスシートの二次元平面全体に亘って分布された部位において、あるいは限られた数の部位において、例えばガラスシートの一つ以上のエッジに沿って、および/またはガラスシート上の所定の基準部位において、例えばガラスシートがサブピースに分割される線の近傍の部位において行なうことができる。
【0034】
ガラスの品質を損なわないために、本発明の上記制限は帯状ガラスのエッジ領域に沿って施される。すなわちこの制限は、帯状ガラスをその高品質領域に接触することなしに安定させる。また、好ましい実施の形態においては、帯状ガラスに制限を施すのに用いられる装置は、現存する分離アセンブリに対する最小限の変更によって、あるいは変更なしに直ちに組込み可能な構成を有する。
【0035】
図3および図4は、本発明のエッジ案内アセンブリに利用可能な代表的な装置を示し、図5は、代表的な成形装置41、罫書きサブアセンブリ21、およびガラスシート切離しサブアセンブリを備えたこの装置の組合せを示す。これらの図に見られるように、この装置は、帯状ガラスの品質を問わない双方のエッジ領域における帯状ガラスの前(第1)面および背(第2)面上に配置し得る案内ホイールによって形成される垂直面を提供する。
【0036】
より詳細に説明すると、図3Aおよび図4Aは、エッジ案内装置の正面図、図3Bおよび図4Bは平面図である。図3は、開放、非案内状態にある装置を示し、図4はエッジ案内状態にある装置を示す。これら二つの状態間の移動は、電動モータまたは圧縮空気駆動(好ましい)を用いて行なうことができる。図示されてはいないが、この装置は、例えば帯状ガラスからの個々のガラスシートの切離しを一組のホイールが妨害する恐れがあるので、その一組のホイール35のみを帯状ガラス13から離すように構成されていることが好ましい。
【0037】
これらの図に示されているように、この装置は、第1垂直軸57および第2垂直軸61(例えば一対の軸が本体に取り付けられている)と、これらに回動可能に連結されたアーム63および65とを備えた本体49を有する。アーム63および65はまた、ガラスに対する係合面71が一つの垂直面上に上下に整列している複数のホイール35を担持しているレール67および69に連結されている。図3〜図5には3個のホイール35が示されているが、本発明の実施に際しては、これよりも多いまたは少ないホイールを必要に応じて用いることができる。使用されるホイール群の垂直方向長さおよび数は、一般に生産される個々のガラスシートの長さに関連し、より長いガラスシートに対しては、垂直方向の長さがより長い、かつより多いホイールが用いられる。
【0038】
このエッジ案内アセンブリは分離アセンブリの下方に配置されるので、工程のこの時点におけるガラスの温度は比較的低い。このことは、このアセンブリを構成するのに種々の材料の使用を可能にする。例えば、本体49、アーム63および65、レール67および69、ならびにホイール35は、アルミニウムのような通常の金属材料で構成することができる。勿論、他の材料も必要に応じて用いることができる。また、ホイール35は過熱を避けるために駆動を必要としないが、帯状ガラスのエッジ領域に対する表面接触によって簡単に回転運動が得られる。しかしながら、必要に応じて駆動ホイールを用いることができる。ホイールを用いること以外に、本発明のエッジ案内アセンブリは、分離線の下方における帯状ガラスの水平方向の動きをコントロールするために、両エッジ領域の第1面および第2面に配置された摩擦係数の低いパッドのような、他の手段を用いることができる。
【0039】
実際に、図3および図4に示されているような二つの案内手段が用いられる場合、それらの一方はエッジ領域53を案内し、他方はエッジ領域55を案内する(図1参照)。各案内手段は、分離線の下方へ延びるときのガラスの垂直面に一致するように調整される。このようにして、これら案内手段は、両エッジが同一の垂直面内にない帯状ガラスとともに用いることができる。
【0040】
この案内手段のガラス係合面は、これらの係合面とガラスとの間の間隔が個別に調整することが可能なように、水平面内で独立的に移動可能なことが好ましい。一般に、両ガラス係合面と帯状ガラスとの間の間隔は約10mm未満であり、その結果、帯状ガラスの第1面に係合するガラス係合面と、第2面に係合するガラス係合面との間の全体の間隔は20mm未満である。上述のように、帯状ガラスの第1面はガラスの罫書かれない側であり、第2面は罫書かれる側であり、ガラスシートは帯状ガラスから第1面の方向に切り離される。
【0041】
勿論、本発明の実施を実施する場合に、ガラス係合面間の間隔は、帯状ガラスの平坦性と、帯状ガラスから裁断されたガラスシートにおける測定された応力レベルのような変数に応じて、より狭くもより広くもすることができる。十分な可撓性を与えるために、案内手段は、この案内手段のガラス係合面と帯状ガラスのとの間の間隔を0mmと20mmとの間にすることが可能であることが好ましい。
【0042】
実際に、帯状ガラスの第1面上の一組のホイールは、個々のガラスシートが、例えば罫書き線の周りの曲げによってから切り離されることができるように、帯状ガラスの面から離される。帯状ガラスの第2面上の一組のホイールは、個々のガラスシートが係合されかつ切り離されるときに帯状ガラスに係合されたままになって帯状ガラスを同一面内に保持する。あるいは、帯状ガラスの第2面上の一組のホイールが、ガラスシート分離工程中、ガラスシートから離れていてもよい。
【0043】
上記案内手段は、ガラスシート切離しサイクル中に垂直方向に移動するように取り付けられていても、固定されていてもよい。図6Aおよび図6Bは、二種類の可能性を示す。これらの図において、矢印73は分離アセンブリ20の少なくとも一部の動きを示し、矢印75は帯状ガラス13の動きを示す。図6Aにおける線37は、エッジ案内アセンブリが成形装置41に対して固定的である場合を概略的に示し、図6Bにおける線39は、エッジ案内アセンブリが分離アセンブリの少なくとも一部とともに移動することを概略的に示す。例えば、エッジ案内アセンブリは、分離アセンブリの罫書きサブアセンブリの一部に固定されることが可能で、ガラスシートの形成および切離しサイクル中は上記罫書きサブアセンブリの一部とともに垂直方向へ移動可能である。
【0044】
いかなる態様にも限定する意図はないが、本発明の具体例について以下に詳細に説明する。
【実施例】
【0045】
フュージョン法によって製造されかつ0.5mmの厚さを有する帯状ガラスを、分割線の下方においてその両エッジに沿って水平面内の動きを人の手によって制限した。このような制限を受けてまたは受けないで製造された連続的なサンプルの応力測定を行った。特に、応力測定はガラスシートの四つのエッジに沿って行った。
【0046】
帯状ガラスを製造するのに用いられるアイソパイプに対するガラスの取入れ口に最も近い帯状ガラスの側部に対応するエッジに関して、最も高い応力レベルの偏差が観察された。それらの応力レベルが、制限が施されない場合に関する図7Aに示されている。図7Bは、制限が上述のように制限が施された場合の同じエッジの結果を示す。応力レベル偏差における著しい低下が明らかである。応力レベル偏差における低下は他の3個のエッジに関しても見られるが、制限が施されない状態に関する応力レベルは低いので、水平方向の動きを制限することによって得られる応力レベルの低下はより少ない。
【0047】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明かつ図示したが、本発明の精神および範囲から離れることなしに種々の変更が可能なことを理解すべきである。
【0048】
例えば、上述の具体例は厚さ0.5mmのガラスを用いたが、本発明は、例えば約0.1から2.0mm台までの種々の厚さを有するガラスを用いることができる。さらに本発明は、ディスプレーに用いられる如何なる形式のガラスの製造にも、または薄いガラスシートが役に立つ他の用途のガラスの製造にも利用することができる。代表的な例として、コーニング社の1737番またはEagle 2000番のガラス、または他の製造業者によって製造されるディスプレー用のガラスがある。
【0049】
本発明の精神および範囲から離れることなしに種々の変形、変更が可能なことは、上述の説明から当業者には明らかであろう。添付の請求項は、上述の特定の実施の形態のみでなく、そのような変形、変更をもカバーすることを意図するものである。
【符号の説明】
【0050】
11 ガラスシート
13 移動する帯状ガラス
15 ガラスシート切離しサブアセンブリ
17 フレーム
19 板ガラス係着部材
20 分離アセンブリ
23 アンビル
25 罫書き
27 罫書き搬送機
29 搬送機
31 コネクタアセンブリ
33 エッジ案内アセンブリ
35 エッジ案内アセンブリのホイール
37 不動のエッジ案内アセンブリを示す概略線
39 可動のエッジ案内アセンブリを示す概略線
41 帯状ガラス13を生産する成形アセンブリ
43 板ガラス搬送システム
45 板ガラスグリッパ
47 分離線
49 エッジ案内アセンブリの本体
51 帯状ガラスの中央領域
53,55 帯状ガラスのエッジ領域
57 帯状ガラスの中心線
59 第1垂直軸
61 第2垂直軸
63 第1支持アーム
65 第2支持アーム
67 第1支持レール
69 第2支持レール
71 ホイール35のガラス係合面
73 分離アセンブリ20の少なくとも一部の動きを示す矢印
75 帯状ガラス13の動きを示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状ガラスのエッジ領域を垂直面内に案内するアセンブリであって、
(a)第1垂直軸および第2垂直軸を備えた本体、
(b)支持体上に取り付けられた垂直方向に間隔をおいた第1組のホイールであって、該複数のホイールが前記帯状ガラスのエッジ領域に接触不能な第1位置から、前記ホイールが前記帯状ガラスのエッジ領域に接触して該エッジ領域を案内し得る第2位置まで前記第1垂直軸の周りを回動可能であり、それぞれがガラス係合面を備えている第1組のホイール、
(c)支持体上に取り付けられた垂直方向に間隔をおいた第2組のホイールであって、該複数のホイールが前記帯状ガラスのエッジ領域に接触不能な第1位置から、前記ホイールが前記帯状ガラスのエッジ領域に接触して該エッジ領域を案内し得る第2位置まで前記第2垂直軸の周りを回動可能であり、それぞれがガラス係合面を備えている第2組のホイール、
を備え、
前記第1組および第2組のホイールがそれらの第2位置にあるときには、前記第1組のホイールの前記ガラス係合面と前記第2組のホイールの前記ガラス係合面との間の間隔が、該両ガラス係合面間に配置された前記帯状ガラスのエッジ領域がほぼ垂直な面を維持するのに十分な程度に狭くなるように、前記第1および第2垂直軸の間隔が設定されていることを特徴とする案内アセンブリ。
【請求項2】
前記第1組および第2組のホイールがそれらの第2位置にあるときには、前記第1組のホイールの前記ガラス係合面と前記第2組のホイールの前記ガラス係合面との間の間隔が20mm以内であることを特徴とする請求項1記載の案内アセンブリ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−121806(P2012−121806A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68828(P2012−68828)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2008−538896(P2008−538896)の分割
【原出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】