説明

帯状タイヤ部材の切断装置及び切断方法

【課題】スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材をスチールコードに沿って切断するときに、帯状タイヤ部材の表面に垂直に切断する。
【解決手段】帯状タイヤ部材切断装置1を左方へ移動させる。カムフォロワ141,142がドラム7の外周面上を走行し、上ローラ111と下ローラ121,122がラジアルカーカスプライ6を挟み、切断刃13がラジアルカーカスプライ6を切断しながら左方へ移動する。ラジアルカーカスプライ6は、右側縁から左側縁まで切断されていく。上ローラ111及び下ローラ121,122により挟まれたラジアルカーカスプライ6の厚さ方向と、切断刃13の延びる方向とが垂直になるように維持された状態で切断するため、ラジアルカーカスプライ6をその表面に垂直に切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材をスチールコードに沿って切断するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材として、スチールコードがゴム製の帯状部材の幅方向に配列されたラジアルタイヤ用カーカスプライ、スチールコードがゴム製の帯状部材の斜め方向に配列されたベルト等がある。これらの帯状タイヤ部材はタイヤ成型ドラムに巻付けられるときに所定の長さに切断され、無端状に接続される。
【0003】
このような帯状部材を切断する方法として、スチールコードを等間隔で平行に埋設した所定幅の帯状部材を、ヒータを備えた切断刃をスチールコードに沿って幅方向に往復移動させながら切断する帯状部材の切断装置において、両側部と中央下端部に刃を備えた切断刃を帯状部材の幅方向の途中からスチールコード間に挿入し、切断刃を帯状部材の幅方向の一方に移動させてゴム部分を切断し、部材端末部に到達して切断刃が帯状部材から抜け出ないうちに切断刃の切断進行方向を逆方向に替えて帯状部材の端末部まで切断するようにした装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この切断装置は、切断刃の上にヒータを固定し、ヒータを往復駆動ベルトに吊り下げた構成を有するため、切断中に帯状タイヤ部材から受ける力により切断刃の姿勢が変化する。このため、帯状タイヤ部材の表面に垂直に切断することは困難である。特に、超大型のOR(Off the Road:建設車両用)ラジアルタイヤの場合、スチールコードの径が大きく、コード間隔が非常に狭いため、上記のようにカーカスプライの上面から切断刃を差し込むと、切断刃がスチールコード上に乗り上げてしまい、スチールコードの中間で切断できないことがある。また、切断中は切断刃の温度が下降するため、ゴムの溶融状態が変化してしまい、安定した切断面が得られず、コードの露出などの問題が発生する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−175490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材をスチールコードに沿って切断するときに、帯状タイヤ部材の表面に垂直に切断できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材をその側縁から前記スチールコードに沿って切断する帯状タイヤ部材切断装置であって、対向するローラと、該対向するローラの少なくとも一方を回転駆動するローラ駆動手段と、前記対向するローラを保持するとともに、前記対向するローラが前記帯状タイヤ部材の表裏両面を挟んで回転するとき、その回転力により前記帯状タイヤ部材のスチールコードが延びている方向へ移動するローラ保持部材と、該ローラ保持部材の移動方向後方に設けられた切断刃とを有する帯状タイヤ部材の切断装置である。
請求項2の発明は、請求項1記載の帯状タイヤ部材の切断装置において、前記切断刃の切断中の温度を一定に制御する温度制御手段を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載の帯状タイヤ部材の切断装置において、前記対向するローラは2組設けられおり、前記切断刃は、前記2組のローラの略中間を通り、前記ローラの軸線に垂直な直線上に設けられていることを特徴とする。
請求項4の発明は、スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材の側縁部の表裏両面をローラにより挟む工程と、前記ローラの回転により前記ローラを前記スチールコードが延びている方向へ移動させるとともに、前記ローラの移動方向後方をローラとともに移動する切断刃により、前記帯状タイヤ部材を側縁からスチールコードに沿って切断する工程とを有する帯状タイヤ部材の切断方法である。
【0008】
〔作用〕
本発明によれば、帯状タイヤ部材の側縁部の表裏両面をローラで挟み、ローラを回転させることによりローラをスチールコードが延びている方向へ移動させるとともに、その移動方向後方をローラとともに移動する切断刃により、帯状タイヤ部材を側縁からスチールコードに沿って切断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材をスチールコードに沿って切断するときに、帯状タイヤ部材の表面に垂直に切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態の帯状タイヤ部材の切断装置を切断対象であるラジアルタイヤ用カーカスプライ(以下、ラジアルカーカスプライと言う)の長手方向から見た図(以下、正面図と言う)であり、図2は図1における切断刃13から下の部分を実線で示し、回転軸10及びその両端の上ローラ111及び112を一点鎖線で示した平面図である。
【0011】
図1及び2において、ラジアルカーカスプライ6は、図示されていないロールから巻き出され、ドラム7の外周面に巻き付けられる。また、帯状タイヤ部材の切断装置(以下、帯状タイヤ部材切断装置と言う)1の全体は、図1及び2上で左右に移動可能に構成されており、左方(図2の矢印Rの方向)への移動中に、移動方向の後方に設けられている切断刃13によりラジアルカーカスプライ6をドラム7の外周面上でスチールコード61に沿って切断する。
【0012】
帯状タイヤ部材切断装置1は、回転軸10の両端に取り付けられた上ローラ111及び112と、上ローラ111と対向する下ローラ121及び122、並びに上ローラ112と対向する下ローラ123及び124とを備えている。ここで、回転軸10は、ラジアルカーカスプライ6の搬送方向(図2の矢印P方向)に平行であり、上ローラ111と112、下ローラ121と123及び122と124は、ともにラジアルカーカスプライ6の搬送方向に一定の間隔をあけて配置されている。また、帯状タイヤ部材切断装置1は、ラジアルカーカスプライ6の搬送方向に対し、上ローラ111と112、下ローラ121と123及び122と124の中間の位置に配置された切断刃13を備えている。
【0013】
帯状タイヤ部材切断装置1は、平面視略L字型の固定フレーム21と、固定フレーム21に対し、図の紙面奥側に配置された可動フレーム22と、固定フレーム21の右端付近に連結ピン23で連結されたピストンシリンダ機構24と、ピストンシリンダ機構24のピストンロッド241の先端付近の連結ピン25で連結されるとともに、固定フレーム21の左上端付近に連結ピン26で連結された揺動フレーム27とを有する。可動フレーム22の左上端は連結ピン28により、揺動フレーム27の略中央に連結されている。従って、ピストンシリンダ機構24のピストンロッド241を矢印Qに示すように伸縮させることによって、揺動フレーム27を連結ピン26を中心に揺動させ、揺動フレーム27の略中央に連結されている可動フレーム22を回転軸10を中心に揺動(旋回)させることができる。
【0014】
可動フレーム22には、上ローラ111及び112の回転軸10が回転自在に取り付けられている。回転軸10の軸線方向の中央部には、ウォームホイール30が固定されている。従って、回転軸10、上ローラ111及び112、並びにウォームホイール30は一体的に回転する。
【0015】
ウォームホイール30の上には、回転軸10と直交し、かつ水平方向に延設された上ローラ駆動装置31が配置されている。上ローラ駆動装置31はモータを内蔵しており、その回転軸に接続された駆動軸32にはウォーム33が固定されている。従って、駆動軸32を回転させることにより、上ローラ111及び112を回転させることができる。ここで、ウォームホイール30は、回転軸10に固定されており、回転軸10は固定フレーム21に取り付けられているから、ピストンシリンダ機構24のピストンロッド241を矢印Qに示すように伸縮させることによって、可動フレーム22が回転軸10を中心に揺動し、上ローラ111及び112と下ローラ121〜124並びに切断刃13との間の隙間の大きさを変化させることができる。
【0016】
可動フレーム22の下面の右端付近には切断刃保持部16が固定され、切断刃保持部16の下には下ローラ保持フレーム15が固定されている。帯状タイヤ部材切断装置1は、図2の左右方向、上下方向が、ラジアルカーカスプライ6の幅方向、長手方向となるように配置される。
【0017】
切断刃13は、下ローラ122及び124の右方であり、かつその2個の下ローラ122,124の中間の位置を通り、かつそれらの軸線と直交する水平な直線上に位置するように、切断刃保持部16に固定されている。切断刃13は正面形状が略「く」の字型であり、刃先が鉛直方向(上ローラ111及び112、下ローラ121〜124の高さ方向であり、ラジアルカーカスプライ6の厚さ方向でもある)に延設されている。切断刃保持部16は、切断刃13を加熱するヒータと、切断刃13の所定の部位の温度を検出する温度センサと、その温度が一定の値になるようにヒータの加熱量のフィードバック制御を行う温度制御装置とを備えている。
【0018】
下ローラ保持フレーム15にて、下ローラ121及び123の左側、並びに下ローラ122及び124の右側には、1個ずつ計4個のカムフォロワ141〜144が取り付けられている。これらのカムフォロワ141〜144は、帯状タイヤ部材切断装置1が図の左方へ移動するときに、ラジアルカーカスプライ6の下方に位置するドラム7の外周面上を軸線方向に走行する。
【0019】
下ローラ保持フレーム15の左端付近には傾斜面151が形成されている。後述するように、傾斜面151は、ラジアルカーカスプライ6の幅方向の右側縁部を上ローラ111及び112と下ローラ121〜124とで挟むときに、ラジアルカーカスプライ6の高さと、上ローラ111及び112と下ローラ121〜124の隙間の高さとに差異があったとしても、ラジアルカーカスプライ6の幅方向の右側縁部を前記の隙間に案内する機能を備えている。
【0020】
以上の構成を有する帯状タイヤ部材切断装置1がラジアルカーカスプライ6を切断するときは、ラジアルカーカスプライ6の搬送を停止させる。
【0021】
帯状タイヤ部材切断装置1では、ピストンシリンダ機構24により、上ローラ111及び112と下ローラ121〜124並び切断刃13との間に隙間が小さな状態になっている。この状態で上ローラ駆動装置31を駆動することにより、上ローラ111及び112を回転させる。この回転により、上ローラ111及び112と下ローラ121〜124は、その隙間に挟んでいるラジアルカーカスプライ6に沿って左方へ走行し、帯状タイヤ部材切断装置1が左方へ走行(自走)する。このとき、カムフォロワ141〜144がドラム7の外周面上を走行して帯状タイヤ部材切断装置1の移動をガイドする。このように、上ローラ111及び112と下ローラ121〜124並び切断刃13がラジアルカーカスプライ6の右側縁から中央部を越えて左側縁に向かって移動することで、ラジアルカーカスプライ6は切断刃13により右側縁から切断され始め、左側縁まで切断される。
【0022】
このとき、切断刃13は隣り合う2本のスチールコード61の中間の位置をスチールコード61に平行に切断していく。この切断動作中、切断刃13は一定の温度になるように制御されている。
【0023】
切断刃13がラジアルカーカスプライ6の左側縁に到達したら、上ローラ111及び112の回転の回転を停止させ、上ローラ111及び112と、下ローラ121〜124並びに切断刃13との間の隙間を広げ、帯状タイヤ部材切断装置1を図示されていない移動手段により右方へ戻す。これにより、帯状タイヤ部材切断装置1は、切断されたラジアルカーカスプライ6から離れる。
【0024】
このように、本発明の実施形態の帯状タイヤ部材切断装置1によれば、上ローラ111及び112、下ローラ121〜124並びに切断刃13は、いずれも可動フレーム22と一体的に構成され、上ローラ111及び112並びに下ローラ121〜124により挟まれたラジアルカーカスプライ6の厚さ方向と、切断刃13の延びる方向とが垂直になるように維持される。そして、その状態でラジアルカーカスプライ6を切断するため、ラジアルカーカスプライ6をその表面に垂直に切断することができる。また、上ローラ111及び112並びに下ローラ121〜124からなる2組の対向するローラでラジアルカーカスプライ6を挟むことにより、より安定した状態で隣り合うスチールコード61の中間の位置を垂直に正確に切断することができる。さらに、切断中、切断刃の温度を一定に制御することにより、安定した切断面が得られる。本発明は、特に超大型のORラジアルタイヤ用の帯状タイヤ部材の切断に有効である。また、帯状タイヤ部材切断装置1を図2の紙面上で回転させる手段を設けることにより、スチールコードが帯状タイヤ部材の側縁に斜めに配列されている場合の切断にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の帯状タイヤ部材切断装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態の帯状タイヤ部材切断装置の平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・帯状タイヤ部材切断装置、6・・・ラジアルカーカスプライ、111,112・・・上ローラ、121〜124・・・下ローラ、13・・・切断刃、16・・・切断刃保持部、31・・・上ローラ駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材をその側縁から前記スチールコードに沿って切断する帯状タイヤ部材切断装置であって、
対向するローラと、該対向するローラの少なくとも一方を回転駆動するローラ駆動手段と、前記対向するローラを保持するとともに、前記対向するローラが前記帯状タイヤ部材の表裏両面を挟んで回転するとき、その回転力により前記帯状タイヤ部材のスチールコードが延びている方向へ移動するローラ保持部材と、該ローラ保持部材の移動方向後方に設けられた切断刃とを有する帯状タイヤ部材の切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の帯状タイヤ部材の切断装置において、
前記切断刃の切断中の温度を一定に制御する温度制御手段を有することを特徴とする帯状タイヤ部材の切断装置。
【請求項3】
請求項1記載の帯状タイヤ部材の切断装置において、
前記対向するローラは2組設けられおり、前記切断刃は、前記2組のローラの略中間を通り、前記ローラの軸線に垂直な直線上に設けられていることを特徴とする帯状タイヤ部材の切断装置。
【請求項4】
スチールコードが埋設された帯状タイヤ部材の側縁部の表裏両面をローラにより挟む工程と、前記ローラの回転により前記ローラを前記スチールコードが延びている方向へ移動させるとともに、前記ローラの移動方向後方をローラと共に移動する切断刃により、前記帯状タイヤ部材を側縁からスチールコードに沿って切断する工程とを有する帯状タイヤ部材の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−50974(P2009−50974A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221062(P2007−221062)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】