説明

帯状ワークの巻き取り装置、およびこの巻き取り装置を備えた露光装置

【課題】帯状のワークを巻き取りリールに巻き取る時、一様にテンションがかかった状態で巻き取ることができ、巻き取られたワークに粗密が生じないようにすること。
【解決手段】巻き出しリール1に巻かれた帯状ワークWは、たるみ部A1等を経て露光部3に送られ、露光光が照射されて露光される。露光が終わると、ワークWは、たるみ部A2、テンションローラTR等を経て巻き取りリール2に巻き取られる。テンションローラTRには、制動力の大きさが可変なブレーキ機構8が設けられる。ワークWのたるみ量が大きいときは、テンションローラTRの制動力は小さな値Loに設定され、ワークWは一定のテンションをかけられながら巻き取りリール2に巻き取られる。ワークWのたるみ量が小さくなると、上記ブレーキ機構8の制動力を大きい値Hi(Hi>Lo)に設定し、テンションローラTRの回転を停止させ、巻き取りリール2の巻き取りを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば長尺の帯状ワークにパターンを露光する露光装置において、露光後のワークの巻取りを行うための機構である帯状ワークの巻き取り装置、およびこの巻き取り装置を備えた露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等のディスプレイパネル、携帯電話、デジタルカメラ、ICカード等では、厚さ25μm〜125μm程度のポリエステルやポリイミド等の樹脂フィルム上に集積回路を実装したフィルム回路基板が用いられている。フィルム回路基板は、その製造工程においては、例えば幅500mm、厚さ100μm、長さ数百mの長尺帯状のワークであり、通常リールに巻かれている。
また、フィルム回路基板は、上記の樹脂フィルム上に、導電体(例えば銅箔)が貼り付けられている。フィルム回路基板の製造は、レジストを塗布する工程、所望の回路パターンを転写する露光工程、レジストの現像工程、不要の導電体を除去するエッチング工程等を、例えば4回から5回繰り返すことにより行なわれる。各工程においては、フィルム回路基板がリールから巻き出され、処理加工され、再びリールに巻き取られる。以下このようなフィルム回路基板のことを帯状ワークと呼ぶ。上記帯状ワークの露光装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
図5に帯状ワークの露光装置の一例を示す。
帯状ワークW(以下、単にワークWともいう)は、巻き出しリール1にロール状に巻かれている。
巻き出しロール1から出た帯状ワークWは、第1のたるみ部A1、第1のガイドローラR2を経てエンコーダローラR3と押さえロールR3’により狭持される。エンコーダローラR3は、ワーク搬送時、後述する搬送ローラにおいてスリップが生じていないか確認するためのロールである。
帯状ワークWは、搬送ローラR4と第2の押さえローラR4’によって狭持され、搬送ローラR4が回転することにより設定された所定量搬送され、露光部3のワークステージ10上に送られる。
【0004】
露光部3上には、ランプ4aと集光ミラー4bなどから構成される光照射部4と、ワークWに露光するパターン(マスクパターン)を有するマスクMおよびマスクMを保持するマスクステージ11と、投影レンズ5が設けられている。また、ワークステージ10はワークステージ駆動機構6上に取り付けられており、上下、左右方向に駆動可能であるとともに、ワークステージ10面に垂直な軸を中心として回転可能である。
露光部3で、帯状ワークWは、露光される領域の裏面側が、ワークステージ10の表面に不図示の真空吸着等の保持手段により保持される。
帯状ワークWは、ワークステージ10に吸着保持された後、マスクMと位置合せが行われる。位置合わせ終了後、光照射部4から放射される露光光がマスクM、投影レンズ5を介してワークWに照射され、マスクパターンがワークWに転写される。
露光が終わると、帯状ワークWは搬送ロールR4と押さえロールR4’によって狭持され、次のワークWの次の露光領域がワークステージ10上に来るように搬送され、搬送後露光される。
このようにして帯状ワークWは順次露光され、第2のたるみ部A2、ガイドローラR5を経て、ワークWは、回転摩擦負荷を持ったテンションローラTRにより一定のテンション(張力)をかけられながら巻き取りリール2に巻き取られる。
巻き取りリール2は、巻き取りリール駆動機構7により回転停止の動作を行う。巻き取りリール駆動機構の動作は、装置の制御部20により制御される。
【0005】
図6は第2のたるみ部A2における動作を説明する図であり、巻き取りリール2によるワークWの巻き取りは、次のようにして行われる。
図5、図6に示すように、第2のたるみ部A2には、ワークWの有無(ワークWのたるみの大きさ)を検出するセンサS1,S2が上下に2個所配置されている。
図6(a)に示すように上センサS1,下センサS2がワーク無し(センサON)を検出すると、制御部20は巻き取りリール駆動機構に対して停止信号を送出し、巻き取りリール2は回転を停止する。これにより、ワークWがたるみはじめるが、同図(b)に示すように上センサS1がワーク有り(センサOFF)を検出しても巻き取りリール2は停止を継続する。
ワークWがさらにたるみ、同図(c)に示すように、上センサS1、下センサS2がワーク有り(センサOFF)を検出(ワークWのたるみが多い状態を検出)すると、制御部20は巻き取りリール駆動機構7に動作信号を送り、巻き取りリール2が回転してワークWの巻取りを開始する。
【0006】
ワークWが巻き取られ、同図(d)に示すようにした下センサS2がワーク無し(センサON)を検出しても巻き取りリール2は回転を継続し、同図(a)に示すよう上下両方のセンサS1,S2がワークW無しを検出(ワークWのたるみが少ない状態を検出)すると、制御部20は巻き取りリール駆動機構7に停止信号を送り、巻き取りリール2は回転を停止し、ワークWの巻取りを停止する。
上記のように、上下のセンサS1,S2のうち上のセンサS1がワークW有りを、下のセンサS2がワークW無しを検出している場合は、制御部20は巻き取りリール駆動機構に対して動作中であれば動作の信号を、停止中であれば停止の信号を送る。
このような帯状のワークの巻き取り方法については、特許文献1に記載されている。
このように、巻き取りリール2は、回転と停止を繰り返しながら(間歇的な動作を繰り返しながら)ワークWを巻き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−100036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、露光を終えた帯状ワークWは、巻き取りリール2の上流側に設けられた、回転摩擦負荷を持ったテンションローラTRに掛けられて、一定のテンションがかかった状態にして、巻き取りリール2により巻き取られる。しかし、このようにして巻き取りリール2に巻き取ったワークWにおいて、テンションがかかっている部分とテンションがかかっていないゆるい部分とが生じ、巻かれている状態に粗密が生じるという状態が生じた。
図7に、ワークWが、粗密が生じた状態でリールに巻かれたイメージ図を示す。例えば約300mのワークの場合、リールに巻かれると直径が400mm程度になるが、巻かれている状態に粗密が生じると縦横の直径で10mm〜20mm程度の差が出る。
このようにリールに巻き取られた状態に粗密が生じると、次の工程でこのリールからワークを巻き出すときに、搬送に緩急がつくために搬送トラブルが生じることがある。また、リールから巻きだすときに、テンションがかかっていない部分でワークにインパクトがかかり、ワークを伸ばしてしまうことや、リール内でワークがスリップして、ワーク同士が擦れ、傷がつくことも考えられる。
本発明は上記問題点を解決するものであって、本発明の目的は、帯状のワークを巻き取りリールに巻き取る時、一様にテンションがかかった状態で巻き取ることができるようにし、巻き取られたワークに粗密が生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
テンションローラTRを介して巻き取っているのに、巻き取られたワークWに一様にテンションがかからないのはなぜなのか、発明者は鋭意検討した結果、以下のようなことが原因であることを突き止めた。
上記したように、テンションローラTRは回転摩擦負荷を持ったローラである。しかし、それ自体には回転摩擦負荷(回転に対する制動力)を制御する機構は備わっていない。
そのため、巻き取りリール2がワークWの巻き取り開始から終了まで一定の速度で回転していれば、ワークWに一様なテンションをかけることができる。しかし、上記従来例で示したような、巻き取りリール2を間歇的に動作させる(回転と停止を繰り返して巻き取る)場合は、以下のようになる。図8を用いて説明する。図8は、図5の装置において、テンションローラTRと巻き取りリール2の部分を拡大して示したものである。
【0010】
図8(a)に示すように、巻き取りリール2が回転しワークWを巻き取っている時。テンションローラTRがワークWに一定の負荷をかけながら回転している。巻き取りリール2には一定のテンションがかかった状態でワークが巻き取られる。
しかし、第2のたるみ部A2において、ワークWのたるみが少なくなると、たるみ部A2のセンサS1,S2の信号に基づき、制御部20は巻き取りリール2の回転を停止する。巻き取りリール2が停止すると、ワークWの巻き取りは停止するが、テンションローラTRは慣性によりすぐには止まらず惰性で回転し、ワークWを押し出す。そのため、図8(b)に示すように、テンションローラTRと巻き取りリール2の間でワークWがたるむ。
そして、第2のたるみ部A2において、ワークWのたるみが多くなると、たるみ部A2のセンサS1,S2の信号に基づき、制御部20は巻き取りリール2の回転を開始する。この時、巻き取りリール2が回転を再開すると、図8(c)に示すように、まず、上記において巻き取りリール2とテンションローラTRの間でたるんだワークWが、テンションがかからないままリール2に巻き取られる。その後、ワークWはテンションローラTRによりテンションがかけられてリール2に巻き取られる。
このようにして、巻き取りリール2に巻き取られるワークWに、テンションがかかっている部分と、かかっていない部分が生じる。
【0011】
この問題を解決するために、本発明においては、テンションローラTRに、テンションローラに対する制動力の大きさが可変なテンションローラ・ブレーキ機構を設け、制御部20によりそのブレーキ動作を制御できるようにした。
すなわち、ワークの巻取りに際し、テンションローラTRのブレーキ機構と巻き取りリール2の動作を次のように制御する。
(i)図2(a)に示すように、巻き取りリール2が回転し、ワークWを巻き取っている時は、テンションローラTRのブレーキ機構の制動力を小さな値Loに設定する。これにより、ワークWは、小さな制動力(回転摩擦負荷)Loが与えられたテンションローラTRにより一定のテンション(張力)をかけられながら巻き取りリール2に巻き取られる。
この状態は、前記図7(a)と同じ状態であり、テンションローラTRはワークWに一定の負荷をかけながら回転している。
【0012】
(ii)図2(b)に示すように、第2のたるみ部A2におけるワークのたるみが少なくなり、第2のたるみ部A2に設けた上下2個のセンサS1,S2がワークWを検出しない状態になると、制御部20は、巻き取りリール2の回転を停止する段階になったことを検出する。
(iii)制御部20は、巻き取りリール駆動機構7に停止信号を送り、図2(c)に示すように、巻き取りリール2の回転を停止する。また、上記巻き取りリール2の回転を停止する際、テンションローラTRのブレーキ機構の制動力を大きい値Hi(Hi>Lo)に設定する。これにより、テンションローラTRの回転は停止する。
すなわち、上記テンションローラTRのブレーキ機構の制動力を上記巻き取りリール2が回転しているときの制動力より大きな値Hiに設定する。
これにより、テンションローラTRは図7(b)に示したように惰性で回転することなく停止する。このため、テンションローラTRと巻き取りリール2の間でワークWがたるむことがなく、ワークWは巻き取りリール2に、テンションがかかっていないゆるい部分が生ずることなく、巻き取られる。
(iv)ワークWのたるみが多くなり、第2のたるみ部A2に設けた上下2個のセンサS1,S2がワークWを検出した状態になると、図2(d)に示すように、制御部20はテンションローラTRの制動力を小さな値Loに設定し、巻き取りリール2の回転を開始する。
これにより、前記したようにワークWは、テンションローラTRにより一定のテンションをかけられながら巻き取りリール2に巻き取られる。
【0013】
なお、上記(iii)において、制御部20からの、テンションローラTRの制動力を大きい値Hiに設定する信号の送出と、巻き取りリール2の回転停止信号の送出は、同時であってもよいが、テンションローラTRが慣性によりすぐには停止しないこと等を考慮して、テンションローラTRの制動力を大きい値Hiに設定した後に、巻き取りリール2の回転停止信号を送出するのが好ましいと考えられる。
【0014】
すなわち、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)長尺帯状のワークを回転と停止を繰り返しながら巻き取る巻き取りリールと、該巻き取りリールを回転させる巻き取りリール駆動機構と、上記巻き取りリールの上流側に設けられ、上記巻き取りリールに巻き取られる上記ワークに回転摩擦負荷によりテンションをかけるテンションローラと、上記テンションローラに設けられ、該テンションローラに対する制動力の大きさが可変なテンションローラ・ブレーキ機構と、上記テンションローラの上流側に設けられたワークのたるみ部における、ワークのたるみ量を検出するセンサと、上記センサからの信号に基づき、上記巻き取りリール駆動機構とテンションローラ・ブレーキ機構の動作を制御する制御部とを備えた帯状ワークの巻き取り装置において、上記巻き取りリールの回転を停止する際、上記テンションローラ・ブレーキ機構の制動力を、上記巻き取りリールが回転しているときの制動力より大きな値に設定する。
(2)露光光を照射する光照射部と、パターンを形成したマスクを支持するマスクステージと、巻き出しリールから巻きだした長尺帯状のワークを、該ワークの長手方向に搬送するワーク搬送機構と、ワーク搬送機構により搬送した帯状ワークを保持するワークステージと、上記搬送機構により上記ワークステージから搬出された帯状ワークを巻き取る巻き取り機構とを備え、ワークステージに保持した帯状ワークに対して、光照射部からの露光光をマスクを介して照射することにより、マスクに形成したパターンを上記帯状ワークに露光する帯状ワークの露光装置において、上記巻取り機構として、上記(1)の帯状ワークの巻き取り装置を用いる。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)巻き取りリールが回転を停止する際に、テンションローラの制動力を、巻き取りリールが回転しているときの制動力より大きな値に設定したので、巻き取りリールが回転を停止したときに、テンションローラが惰性で回転せず、テンションローラと巻き取りリールの間でワークがたるまない。
(2)このため、巻取りを再開した時に、テンションがかからない状態でワークが巻き取られることはなく、巻き取りリールには、ワークが常に一定のテンションがかかった状態で巻き取られる。
したがって、巻き取られたワークに粗密が生じることがなく、リールからワークを巻き出すときに、搬送に緩急がつき搬送トラブルが生じたり、リールから巻きだすときに、ワークを伸ばしてしまったり、リール内でワークがスリップして、ワーク同士が擦れ、傷がつくことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の搬送機構を備えた、帯状ワークの露光装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明におけるテンションローラのブレーキ機構と巻き取りリールの動作を説明する図である。
【図3】図1のテンションローラTRと巻き取りリール2の部分を拡大して示した斜視図である。
【図4】本発明の実施例の搬送機構の動作を示すタイムチャートである。
【図5】帯状ワークの露光装置の一例を示す図である。
【図6】図5に示す第2のたるみ部A2における動作を説明する図である。
【図7】ワークWが粗密が生じた状態でリールに巻かれた状態を示すイメージ図である。
【図8】巻き取りリールを間歇的に動作させる場合におけるテンションローラと巻き取りリールの間のワークの状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施例の搬送機構を備えた、帯状ワークの露光装置の構成例を示す図である。前記図5との違いは、テンションローラTRに、ローラに与える制動力を可変にできるブレーキ機構を設けていることと、制御部がそのブレーキ動作を制御できる点であり、その他の点は図5と同様である。
図1において、図5と同様、帯状ワークW(ワークW)は、巻き出しリール1にロール状に巻かれている。巻き出しロール1から出た帯状ワークWは、たるみ部A1、第1のガイドローラR2を経てエンコーダローラR3と押さえロールR3’により狭持される。
帯状ワークWは、搬送ローラR4と第2の押さえローラR4’によって狭持され、搬送ローラR4が回転することにより、ワークWは設定された所定量搬送され、露光部3のワークステージ10上に送られる。
【0018】
露光部3上には、前記したように光照射部4と、マスクMおよびマスクMを保持するマスクステージ11と、投影レンズ5が設けられている。また、ワークステージ10はワークステージ駆動機構6上に取り付けられており、上下、左右方向に駆動可能であるとともに、ワークステージ10面に垂直な軸を中心として回転可能である。
露光部3で、帯状ワークWは、露光される領域の裏面側が、ワークステージ10の表面に不図示の真空吸着等の保持手段により保持され、マスクMと位置合せが行われる。位置合わせ終了後、光照射部4から放射される露光光がマスクM、投影レンズ5を介してワークWに照射され、マスクパターンがワークWに転写される。
露光が終わると、帯状ワークWは搬送ロールR4と押さえロールR4’によって狭持され、次のワークWの次の露光領域がワークステージ10上に来るように搬送され、搬送後露光される。
【0019】
このようにして帯状ワークWは順次露光され、たるみ部A2、ガイドローラR5、テンションローラTRを経て、巻き取りリール2に巻き取られる。
テンションローラTRには、該テンションローラに対する制動力の大きさが可変なテンションローラ・ブレーキ機構8が設けられ、テンションローラTRの制動力は、制御部20により制御される。また、巻き取りリール2は、前記したように、巻き取りリール駆動機構7により回転停止の動作を行う。巻き取りリール駆動機構7の動作は、装置の制御部20により制御される。
【0020】
図3は、図1のテンションローラTRと巻き取りリール2の部分を拡大して示した斜視図である。
テンションローラTRの回転軸には、その制動力が可変なテンションローラ・ブレーキ機構8が設けられ、このブレーキ機構8の制動力は制御部20により制御される。上記制動力が可変なテンションローラ・ブレーキ機構8としては、例えば電磁力により制動力を制御することができる電磁ブレーキ等を用いることができる。
帯状のワークWは、上記テンションローラTRを介して巻き取りリール2に巻き取られる。また、巻き取りリール2の回転軸には、巻き取りリール駆動機構7が設けられている。
制御部20は、前記したように第2のたるみ部A2に設けたセンサS1,S2からの信号に基づき、テンションローラTRのブレーキ機構8の動作(制動力の大きさ)を制御する。また、巻き取りリール駆動機構2の動作(巻き取りリールの回転と停止)も制御する。
【0021】
本発明の帯状ワークの巻き取り動作の制御について、前記図2と図4のタイムチャートを使って説明する。
(1)第2のたるみ部A2において、上下2個のセンサS1,S2によりワーク有が検出される。図2(a)に示すように、制御部20は、テンションローラTRのブレーキ機構8に制動力を小さな値Loに設定する信号を送るとともに、巻き取りリール駆動機構7にも巻き取り開始の信号を送る。
上記制動力Loは、ワークWが巻き取りリール2に巻き取られるときに、ワークWに加わるテンションの値が適切な値(ワークに過度なテンションが加わらず、巻き取り径が所望の大きさとなる値)になるような大きさであり、後述する制動力Hiより小さい値である。
これにより、テンションローラTRの制動力がLoとなり、巻き取りリール2が回転する。ワークWには、テンションローラTRに加わる制動力Lo(回転摩擦負荷)により一定のテンションがかり、巻き取りリール2に巻かれる(図4のA参照)。
【0022】
(2)ワークWの巻取りが進み、第2のたるみ部A2において、上下2個のセンサS1,S2によりワーク無しが検出される。制御部20は、テンションローラTRのブレーキ機構8に制動力を大きな値Hiに設定する信号を送る。これにより、図2(b)に示すようにテンションローラTRの回転が停止する。しかし、巻き取りリール2の回転(巻き取り動作)はこの段階では継続する(図4のB参照)。
そのため、テンションローラTRが惰性で回転することによるワークWの押し出しはなく、テンションローラTRと巻き取りリール2の間でのワークのたるみは生じない。
(3)制御部20は、テンションローラTRのブレーキ機構8に制動力を大きな値Hiに設定する信号を送ってから所定時間後(例えば0.1秒から0.2秒後)に、巻き取りリール駆動機構7に対して巻き取り停止の信号を送る。これにより図2(c)に示すように、巻き取りリール2の回転(巻き取り動作)が停止する(図4のC参照)。
(4)巻き取り動作が停止している間に、露光部からワークWが送られてきて、ワークWのたるみが多くなると、第2のたるみ部A2において、上下2個のセンサS1,S2によりワーク有が検出される。
このため、図2(a)と同様に、制御部20は、テンションローラTRのブレーキ機構8に制動力を小さな値Loに設定する信号を送るとともに、巻き取りリール駆動機構7にも巻き取り開始の信号を送る。これにより、図2(d)に示すように、ワークWの巻き取り動作が開始される(図4のD参照)
【0023】
なお、上記では、テンションローラTRの制動力を大きい値Hiに設定する信号を送出してから、巻き取りリール2の回転停止信号の送出するまでの遅れ時間を、例えば0.1秒から0.2秒後にしているが、このおくれ時間は、テンションローラTRの慣性力、装置の動作遅れ時間等に応じて、ワークのテンションが最適な値になるように適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0024】
1 巻き出しリール
2 巻き取りリール
3 露光部
4 光照射部
4a ランプ
4b 集光ミラー
5 投影レンズ
6 ワークステージ駆動機構
7 巻き取りリール駆動機構
8 テンションローラ・ブレーキ機構
10 ワークステージ
11 マスクステージ
20 制御部
A1 第1のたるみ部
A2 第2のたるみ部
M マスク
R2 第1のガイドローラ
R3 エンコーダローラ
R3’ 押さえロール
R5 ガイドローラ
S1,S2 センサ
TR テンションローラ
W 帯状ワーク(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のワークを回転と停止を繰り返しながら巻き取る巻き取りリールと、
該巻き取りリールを回転させる巻き取りリール駆動機構と、
上記巻き取りリールの上流側に設けられ、上記巻き取りリールに巻き取られる上記ワークに回転摩擦負荷によりテンションをかけるテンションローラと、
上記テンションローラに設けられ、該テンションローラに対する制動力の大きさが可変なテンションローラ・ブレーキ機構と、
上記テンションローラの上流側に設けられたワークのたるみ部における、ワークのたるみ量を検出するセンサと、
上記センサからの信号に基づき、上記巻き取りリール駆動機構とテンションローラ・ブレーキ機構の動作を制御する制御部とを備えた帯状ワークの巻き取り装置において、
上記巻き取りリールの回転を停止する際、上記テンションローラ・ブレーキ機構の制動力を、上記巻き取りリールが回転しているときの制動力より大きな値に設定する
ことを特徴とする帯状ワークの巻き取り装置。
【請求項2】
露光光を照射する光照射部と、
パターンを形成したマスクを支持するマスクステージと、
巻き出しリールから巻きだした長尺帯状のワークを、該ワークの長手方向に搬送するワーク搬送機構と、
ワーク搬送機構により搬送した帯状ワークを保持するワークステージと、
上記搬送機構により上記ワークステージから搬出された帯状ワークを巻き取る巻き取り機構とを備え、
ワークステージに保持した帯状ワークに対して、光照射部からの露光光をマスクを介して照射することにより、マスクに形成したパターンを上記帯状ワークに露光する帯状ワークの露光装置において、
上記巻取り機構は、請求項1に記載の帯状ワークの巻き取り装置である
ことを特徴とする帯状ワークの露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−254842(P2012−254842A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128056(P2011−128056)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】