説明

帯状体の洗浄方法、製造方法及び洗浄装置と、連続鋼板製造設備

【課題】帯状鋼板等の帯状体の表面に存在する異物を洗浄する際に、洗浄不良や下流側への洗浄液の持ち込み、あるいはこれら両者に起因した押し込み疵の発生や溶接不良を、低コストで確実に事実上解消する。
【解決手段】異物が存在する帯状鋼板22の表面に向けて、その幅方向を含むとともにその表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに洗浄液23を噴射することにより、帯状鋼板22の表面に対して斜めに噴射された洗浄液23が、表面に衝突して表面から離れる方向に反射した後に帯状鋼板22から離れたまま帯状鋼板22の幅方向の端部よりも外側へ飛散する際に、異物を飛散する洗浄液22に随伴させることによって、異物を、帯状鋼板22の幅方向の端部よりも外側へ飛散させて、帯状鋼板22から異物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状体の洗浄方法、製造方法及び洗浄装置と、連続鋼板製造設備に関する。具体的には、本発明は、例えば帯状鋼板等の帯状体の表面に存在する異物を除去するための帯状体の洗浄方法、製造方法及び洗浄装置と、この洗浄装置を備える連続鋼板製造設備とに関する。
【背景技術】
【0002】
高温で熱間圧延された帯状鋼板の表面には、黒皮と呼ばれるスケールが形成される。この黒皮を除去するため、熱間圧延された帯鋼板は引き続いて酸洗ラインに送られる。
図7は、酸洗ライン入側の構成の一例を模式的に示す説明図である。同図に示すように、アンコイラー2により払い出された帯状鋼板3は、巻取り時の撓みの発生を防止するためのプレッシャーロール4を押し付けられながら斜め上方向へ送られ、一対のピンチロール5、5を通過して搬送方向を水平方向へ変更され、レベラー6により平坦度を矯正され、その後にリンガーロール7により脱水される。この後、この帯状鋼板3の先端部は、図示しない溶接機により、この帯状鋼板3に先行する他の帯状鋼板(図示しない)の後端部に溶接されてから、図示しない酸洗槽に連続的に送られて酸洗される。なお、アンコイラー2において実線で示す円は最大径のコイルを意味し、一点鎖線で示す円は最小径のコイルを意味する。
【0003】
このとき、払い出された帯状鋼板3の表面には、払い出しに伴って剥離したスケール粉その他の異物(以下、単に「異物」という)が付着する。この異物が表面に付着したままで帯状鋼板3を通板すると、異物がレベラー6で押し込まれて押し込み疵となり、帯状鋼板3の表面性状が劣化する。
【0004】
この異物を除去するために、ノズルから洗浄水を吹き付けて払い出された帯状鋼板3の表面を洗浄する。しかし、洗浄後に洗浄水が表面に多量に残存したままで帯状鋼板3がレベラー6に達するとレベラー6を腐食させるため、レベラー6に到達する時点における帯状鋼板3の表面の濡れ方は小さいことが要求される。さらに、溶接機としてレーザー溶接機を用いる場合には、溶接位置に水が存在すると所望の溶接強度を確保できなくなるため、帯状鋼板3の先端部及び後端部である溶接部の表面は、ほとんど濡れていないことも要求される。
【0005】
従来より、アンコイラー2と一対のピンチロール5と間であって帯状鋼板3が斜め上方向(ライン構成によってはほぼ垂直方向)に搬送される部分に、帯状鋼板3の表面に洗浄水を吹き付けるためのノズル8が設置されている。この位置にノズル8を設置して帯状鋼板3を洗浄すれば、吹き付けられた洗浄水は、帯状鋼板3の進行方向側(ピンチロール5側)にはあまり随伴せず、異物を巻き込んで吹き付けられた付近の帯状鋼板3の幅方向の両端部をつたって流出する。このため、ピンチロール5を通過する帯状鋼板3の表面は若干濡れている程度となり、ピンチロール5を通過することにより洗浄水が十分に除去されることが期待される。
【0006】
図7に白抜き矢印で示すように、アンコイラー2からの帯状鋼板3の払い出しの進行に伴って帯状鋼板3が通過する位置が不可避的に変動する。このため、この洗浄方法を実施するためには、払い出しの開始時から終了時までの全期間においてノズル8が帯状鋼板3に干渉することを防ぐ必要から、ノズル8を帯状鋼板3から相当程度離して配置せざるを得ない。このため、十分な異物の除去効果を確保することが難しくなり、帯状鋼板3の表面に押し込み疵が生じ易くなる。
【0007】
そこで、図8に示すように、帯状鋼板3がピンチロール5を通過した以降の、アンコイラー2からの帯状鋼板3の払い出しの進行に関わらず、帯状鋼板3の進行方向を含む垂直面内における帯状鋼板の位置が一定である位置で洗浄を行えば、ノズル8を鋼板3に近接して設置することができ、十分な洗浄効果が得られると、一見考えられる。特に酸洗設備によっては、その装置構成や設置スペースの制約により、ピンチロール5の下流側の、帯状鋼板3が水平方向へ搬送される位置にノズルを設置せざるを得ないこともある。
【0008】
しかしながら、図8に示すように酸洗ライン入側の水平通板部分にノズル8を設置して帯状鋼板3を洗浄すると、洗浄された帯状鋼板3の表面から洗浄水が十分に排出されないうちに、帯状鋼板3がレベラー6に達してしまい、レベラー6の腐食やレーザー溶接部の溶接強度不足といった問題を生じる。
【0009】
帯状鋼板の表面を十分に洗浄するため、特許文献1には、鋼板のコイルを巻き戻すときに、コイルの内部において鋼板が互いに擦れ合う部分に十分な潤滑液を噴射して、コイルの緩み部分を潤滑液で十分に満たすことにより、スケール粉等の異物も同時に洗い流す発明が開示されている。
【0010】
特許文献2には、ブラシロールと、ブラシロールの後段に高圧高温水スプレーとを設け、ブラシロールの回転によりゴミ類を金属帯板の表面に浮かせ、金属帯板の表面に浮いたゴミ類を高圧高温水スプレーにより吹き飛ばして金属帯板を洗浄する発明が開示されている。
【0011】
さらに、特許文献3には、冷却水の噴射ノズルと空気噴射ノズルとを併設し、冷却水を排出するための空気を鋼板の端面へ向けて噴射することにより、高温の鋼板の上面に滞留する冷却水を排出する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平11−277136号公報
【特許文献2】特開2000−336494号公報
【特許文献3】特開2001−353515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これらの従来の発明によっても、帯状鋼板の表面に残存する洗浄水に起因した上述した問題を生じることなく、帯状鋼板の表面に存在する異物を確実に除去することはできない。
【0013】
特許文献1に記載された発明では、大量の潤滑液を帯状鋼板に噴射して供給することになるので、巻き戻された帯状鋼板は、その表面に異物が混入した潤滑液が付着したまま搬送されてしまい、ピンチロールやレベラーにより異物が咬み込んで表面に押し込み疵が発生する。また、帯状鋼板は、潤滑液が表面に付着したまま搬送されるので、溶接機による溶接の際にも潤滑液が残存し、溶接不良を生じ易くなる。
【0014】
特許文献2に記載された発明では、高圧高温水スプレーの衝突域の上流側に滞留水ができ、ここに吹き飛ばされたゴミ類の一部が溜まり、ゴミ類が混入した滞留水が表面に残存する金属帯板が下流に移動するため、ゴミ類を完全に洗浄することが難しくなる。また、高温高圧水を噴射する必要があるので設備コストや運転コストが嵩んでしまう。
【0015】
さらに、特許文献3に記載された発明では、水と空気の両方を噴射する必要があるので、配管等の設備が煩雑化して設備コストが嵩むとともに、また圧縮空気も併用するため操業コストも上昇する。
【0016】
このように、特許文献1〜3に記載された発明に基づいて、図8に示すように酸洗ライン入側の水平通板部分にノズル8を設置して帯状鋼板3を洗浄すると、洗浄水が水平に移動する帯状鋼板3の上面に残存したまま帯状鋼板3とともに移動するため、レベラー6に多くの洗浄水が持ち込まれ易い。残存する洗浄水を除去するためにリンガーロール7やエアワイパーを設ける必要が生じ、その分設置スペースが大きくなるとともに装置も複雑化する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、表面に異物が存在する帯状体に衝突して反射した洗浄液がこの異物を巻き込みながら帯状体に接触することなく帯状体の幅方向の端部よりも外側へ飛散するように、帯状体の幅方向を含むとともに帯状体の表面に直交する面内で、噴射される洗浄水の中心が指向する方向が帯状体の表面に対して斜めになるように、洗浄液を噴射することにより、帯状体の表面に付着する異物を、飛散させて除去することが可能となり、これにより、上述した課題を解決できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0018】
本発明は、異物が存在する金属製の帯状体の表面に向けて、帯状体の略幅方向を含むとともにこの帯状体の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに、より具体的には噴射される洗浄水の中心が指向する方向が帯状体の表面に対して斜めになるように、洗浄液を噴射することにより、異物を飛散させて、帯状体から異物を除去することを特徴とする帯状体の洗浄方法である。
【0019】
別の観点からは、本発明は、異物が存在する金属製の帯状体の表面に向けて洗浄液を噴射するノズルを備える帯状体の洗浄装置であって、このノズルが、帯状体の略幅方向を含むとともに帯状体の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに、より具体的には噴射される洗浄水の中心が指向する方向が帯状体の表面に対して斜めになるように、洗浄液を噴射することにより、異物を飛散させて、帯状体から異物を除去することを特徴とする帯状体の洗浄装置である。
【0020】
これらの本発明では、異物を、帯状体の幅方向の端部よりも外側へ、飛散させることが望ましい。
これらの本発明では、帯状体の表面に対して斜めに噴射された洗浄液が、この表面に衝突して表面から離れる方向に反射した後に帯状体から離れたまま帯状体の幅方向の端部よりも外側へ飛散する際に、異物を飛散する洗浄液に随伴させることによって、異物の飛散が行われることが、望ましい。
【0021】
これらの本発明では、洗浄液が、帯状体の長手方向と略同じ方向へ相対的に移動するノズルから噴射されることが望ましい。例えば、帯状体がその長手方向へ移動するとともに、ノズルが固定して配置されてもよい。
【0022】
これらの本発明では、後述する図3に示すように、洗浄液(12)が、帯状体(16)の幅方向を含むとともにこの帯状体(16)の表面に直交する面内で扇形に噴射されることが望ましい。この場合に、帯状体(16)の幅方向、及び帯状体(16)の表面に直交する方向を含む断面内において、扇形に噴射される洗浄液(12)の広がり角度(θn)、及び、洗浄液の中心線(L)と帯状体(16)の表面とがなす角度(θj)が、下記(1)式により規定される関係を満足することが望ましい。
【0023】
0°<θj<90°かつθn<2θj ・・・・・・・・・(1)
この場合、さらに、扇形に噴射される洗浄液(12)の二本の輪郭線(L、L)のうち帯状体(16)に近い側の輪郭線(L)と帯状体(16)の表面とがなす角度(θ)が、広がり角度(θn)以上90°未満であることが望ましい。
【0024】
これらの本発明では、洗浄液が、帯状体の幅方向の複数の位置それぞれから噴射されることが望ましく、この場合に、複数の位置それぞれから噴射される洗浄液が帯状体に衝突する領域の総和が、帯状体の幅方向の全ての領域であることがさらに望ましい。
【0025】
これらの本発明では、金属製の帯状体が帯状鋼板であるとともに洗浄液が水であることが例示され、この場合に、扇形に噴射される洗浄液の、帯状体の幅方向と平行な方向の最大動圧が70kPa以上であることが望ましい。
【0026】
別の観点からは、本発明は、上述した本発明に係る帯状体の洗浄方法により洗浄する工程を含むことを特徴とする帯状体の製造方法である。
さらに別の観点からは、本発明は、帯状鋼板を払い出すアンコイラーと、このアンコイラーから払い出された帯状鋼板の搬送方向を略水平方向に変更する一対のピンチロールと、このアンコイラーから払いだされた帯状鋼板の表面を洗浄する上述した本発明に係る洗浄装置と、この洗浄装置および一対のピンチロールの下流に設けられて帯状鋼板の先端部、及びこの帯状鋼板に先行する他の帯状鋼板の後端部を溶接するレーザー溶接機とを備えることを特徴とする連続鋼板製造設備である。
【0027】
この本発明に係る連続鋼板製造設備では、洗浄装置が、帯状鋼板の搬送方向を含む垂直断面内における不変の通過位置、例えば、ピンチロールとレーザー溶接機との間に存在する帯状鋼板の表面に洗浄水を噴射することができる位置に、配置されることが、望ましい。
【0028】
これらの本発明において、「異物」として、熱延コイルの払い出し等の際にその表面から剥離して、払い出された帯状鋼板の表面に付着することにより存在する黒皮(ミルスケール)の剥離片や、アルカリ脱脂後の帯状鋼板の表面に残存するアルカリ液、さらには、酸洗後の帯状鋼板の表面に残存する酸洗液等がある。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る帯状体の洗浄方法、製造方法及び洗浄装置と、この洗浄装置を備える連続鋼板製造設備によれば、帯状鋼板等の帯状体の表面に存在する異物を洗浄する際に、帯状体が水平方向へ搬送される位置において洗浄を行う場合であっても、洗浄不良や下流側への洗浄液の持ち込み、あるいはこれら両者に起因した押し込み疵の発生や溶接不良を、低コストで確実に事実上解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では、金属製の帯状体が帯状鋼板であるとともに洗浄液が常温の水である場合を例にとるが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0031】
本実施の形態においても、従来の技術と同様に、異物が付着する帯状鋼板の表面に向けて、洗浄水を噴射するノズルを備える洗浄装置から、この帯状鋼板の表面に向けて洗浄水を噴射することにより、帯状鋼板の表面から異物を除去する。
【0032】
このようにして異物を除去する際、本実施の形態では、帯状鋼板の略幅方向を含むとともにこの帯状鋼板の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに洗浄水を噴射することにより、異物を飛散させる。具体的には、このように帯状鋼板の表面に対して、噴射される洗浄水の中心が指向する方向が帯状体の表面に対して斜めになるように、斜めに洗浄水を噴射することにより、異物を、洗浄水を噴射する側とは反対側へ吹き飛ばすことによって、帯状鋼板の幅方向の端部よりも外側へ、飛散させる。以下、本実施の形態においてこのように斜めに洗浄水を噴射する理由を、本発明者らが行った基礎試験1〜4を参照しながら、説明する。
【0033】
図1は、この基礎試験1の状況を示す説明図であり、図1(a)はノズル13からの洗浄水12の噴射状況を示す説明図であり、図1(b)は、この基礎試験1の概要を示す説明図である。
【0034】
実際の連続鋼板製造ラインでは、高速で走行する帯状鋼板に対して、固定配置されたノズルから洗浄水を噴射する。しかし、高速で走行する帯状鋼板と、固定配置されたノズルとの相対速度が同じであれば、洗浄に関しては同じ現象が再現されるとの前提に立ち、図1(b)に示すように、水平な床面10に直線状に撒かれた酸化鉄粉末11によって高速で走行する帯状鋼板の表面に付着する異物を模擬し、酸化鉄粉末11が撒かれた方向に対して垂直な方向(図1(b)における矢印方向)へ、ノズル13を高速で移動させながら、酸化鉄粉末11が撒かれた床面10に向けてこのノズル13から常温の洗浄水12を扇形に噴射し、噴射後の床面10の濡れ状況と、酸化鉄粉末11の除去状況とを調べた。なお、図1(b)に示すように、衝突域14に関してノズル13が配置された側と反対側に白布15を垂直に配置して、洗浄水12の外部へ飛散することを防いだ。
【0035】
この基礎実験1では、ノズル13には、図1(a)に示すように、広がり角θnが40°であるフラットノズルを用い、スタンドオフ距離dを200mmとし、ノズル圧は1.5MPa又は0.8MPaとした。また、洗浄水12の衝突域の巾wは約500mmであった。また、ノズル13の移動速度は約400m/分とした。
【0036】
この基礎実験1では、ノズル圧が1.5MPaである場合、及び0.8MPaである場合のいずれにおいても、衝突域14のみが濡れ、それ以外の部分は全く濡れなかった。また、衝突域14の巾wは1.5MPaである場合のほうがやや広かった。さらに、ノズル圧が0.8MPaである場合には、酸化鉄粉末11は床面10にほぼそのまま残存したものの、1.5MPaである場合には洗浄水12が衝突している部分の酸化鉄粉末11が除去され、白布15の高さ方向の中程(床面10から約100〜200mmの高さの位置)に酸化鉄粉末11が付着していた。
【0037】
基礎実験1の結果は以下のように考えられる。図2は、この基礎実験1の結果を示すための説明図である。
図2に示すように、床面10に斜めに衝突した洗浄水12は、床面10に沿って流下するのではなく、衝突位置で上方に反射して床面10から離れ、酸化鉄粉末11の設置位置に関してノズル13の設置位置と反対の方向へ飛散する。
【0038】
このとき、ノズル圧が1.5MPaと高いと、洗浄水12が衝突域14に存在する異物である酸化鉄粉末11に衝突すると、酸化鉄粉末11は、洗浄水12によって床面10上を衝突域外に押し流されるのではなくて、床面10に衝突して床面10から離れる方向に反射した後に床面10から離れたまま空中を飛翔して外側へ飛散する洗浄水12に取り込まれて随伴し、洗浄水12とともに飛散する。
【0039】
このように、この基礎実験1によれば、帯状鋼板の長手方向と略同じ方向へ相対的に移動するノズルから、帯状鋼板の幅方向を含むとともにこの帯状鋼板の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに、すなわち噴射される洗浄水の中心が指向する方向が帯状体の表面に対して斜めになるように、洗浄水を噴射すれば、異物を飛散させること、具体的には、このように帯状鋼板の表面に対して斜めに洗浄水を噴射することにより、異物を、帯状鋼板の幅方向の端部よりも外側へ、飛散させることが可能になるため、帯状鋼板の表面に付着する異物を除去できることが、分かる。また、これにより、洗浄水が衝突して洗浄された部分に残存する洗浄水の量も極僅かである。このため、洗浄後の帯状鋼板の表面に残存する洗浄水を除去するための装置を設ける必要がなくなり、洗浄装置をコンパクト化できる。
【0040】
さらに、帯状鋼板の表面に略垂直に洗浄水を噴射して異物を除去していた従来の方法では、帯状鋼板の表面に供給された洗浄水が液溜まりを形成したまま帯状鋼板の表面をつたって板幅方向の端部から下方へ流下しており、帯状鋼板の表面に存在していた異物は、このようにして流下する水に取り込まれることによって除去されていた。このため、この従来の方法では、帯状鋼板の表面に供給された洗浄水が液溜まりを形成することができる程度に大量(例えば1m/min)の洗浄水を供給する必要があった。これに対し、この基礎実験1に示すように、帯状鋼板の幅方向を含むとともにこの帯状鋼板の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに洗浄水を噴射して、異物を、帯状鋼板の幅方向の端部よりも外側へ飛散させて除去する場合には、所定の衝突圧を得られるだけの洗浄水を噴射すればよいので、従来の方法に比較して、異物の除去に必要となる洗浄水の量を大幅に削減でき、効率的な洗浄を行うことができるようになる。
【0041】
図1及び図2を参照しながら説明した基礎実験1においても用いたように、洗浄水12は、帯状鋼板の幅方向を含むとともにこの帯状鋼板の表面に直交する面内で扇形に噴射することが、洗浄する領域を十分に確保するためには、望ましい。
【0042】
図3は、ノズル13から帯状鋼板16の表面に洗浄水12を扇状に噴射する状況を模式的に示す説明図である。
図3において、帯状鋼板16の表面に存在する異物を確実に飛散させるためには、帯状鋼板16の幅方向(図3における左右方向)、及び帯状鋼板16の表面に直交する方向を含む断面内において、扇形に噴射される洗浄水12の広がり角度(θn)、及び、一点鎖線で示す洗浄水12の中心線(L)と、帯状鋼板16の表面とがなす角度(θj)が、0°<θj<90°かつθn<2θjの関係を満足すること、すなわち洗浄水12を垂直ではなく傾けるとともに上方を指向しないことが望ましく、さらに、扇形に噴射される洗浄水12の二本の輪郭線(L、L)のうち帯状鋼板16に近い側の輪郭線(L)と、帯状鋼板16の表面とがなす角度(θ)が、広がり角度(θn)以上90°未満であることがさらに望ましい。
【0043】
さらに好ましくは、θj:30°以上60°以下であり、θn:30°以上50°以下、θ:45°以上75°以下である。
さらに、扇形に噴射される洗浄水12の、帯状鋼板16の幅方向と平行な方向の最大動圧が70kPa以上であることが望ましい。この理由を説明する。
【0044】
本発明者らは、基礎実験2として、図3におけるスタンドオフ距離d、衝突角θ及びノズル圧を変更して、帯状鋼板16の表面に沿って流れる洗浄水12の水平方向動圧の幅方向の分布を測定した。ノズル13は固定した状態とし、水平方向動圧はピトー管で測定した。その結果、いずれの場合にも、洗浄水12の水平方向動圧は、帯状鋼板16の幅方向について、定性的に図4にグラフで示すように分布した。
【0045】
ここで、水平方向動圧の最大値を最大水平方向動圧とする。スタンドオフ距離dが一定である場合には、当然ながら、ノズル圧が大きいほうが、最大水平方向動圧が高くなる。また、図4にグラフで示すように、スタンドオフ距離dが異なる場合であっても、水平方向動圧Pが最大水平方向動圧Pmの1/2となる巾方向距離Bで巾方向距離Xを除することにより無次元化した値である無次元巾方向距離X/Bにより整理した巾方向の無次元動圧分布は、スタンドオフ距離dに関わらず、同じになることがわかった。つまり、スタンドオフ間距離dに関係なく、この無次元巾方向距離と無次元水平方向動圧との関係を求めることにより、最大水平方向動圧を求めることができる。
【0046】
なお、この基礎実験2では、最大水平方向動圧は、帯状鋼板16に対してノズル13((株)共立合金製作所製3/8KSH2540−0Ro型)から斜め噴射した洗浄水12が帯状鋼板16の表面に沿って流れる動圧を、帯状鋼板16の表面に接触させて配置したピトー管(内径1.06mm、外径1.42mmのステンレス細管)と圧力計(大倉電気製PT−3000型)とを用いて電気信号を収集して測定することにより、求めた。この際、ノズル圧は0.5MPa以上1.5MPa以下とし、スタンドオフ距離は150mm以上500mm以下とした。
【0047】
そこで、本発明者らは、基礎実験3として、図1(a)及び図1(b)に示す条件で、スタンドオフ距離d、衝突角θ及びノズル圧を変更して、酸化鉄粉末11の除去状態を調査した。結果を図5にグラフで示す。
【0048】
図5のグラフにおける最大水平方向動圧は、上述した基礎実験2により測定又は推定した値である。また、図5のグラフにおける洗浄巾とは、床面10から酸化物粉末11が除去されている巾を示し、衝突域の巾にほぼ等しい。洗浄巾がゼロであるとは、酸化物粉末が除去できないこと、すなわち洗浄不能であることを意味する。
【0049】
図5にグラフで示すように、最大水平方向動圧が70kPa以上、好ましくは90kPa以上あれば、洗浄可能であることがわかる。また、スタンドオフ距離dを大きくすれば洗浄巾を拡大することはできるものの、大きくし過ぎると最大水平方向動圧が低下してしまい、洗浄できなくなることが分かる。
【0050】
なお、ノズル13における洗浄水の流量(以下、「ノズル流量」という)は、一般的に大流量になるほど洗浄性は向上するものの、洗浄水の使用量が増加してコストが嵩む。一方、小流量になるほど洗浄性が低下するので、洗浄性を維持するためにノズル圧を上げる必要を生じ、逆にコストが嵩む。このような観点から、ノズル流量は30L/min以上60L/min以下とすることが望ましい。
【0051】
さらに、噴射時のノズル13のノズル圧は、0.6MPa以上1.6MPa以下であることが望ましい。この理由を、基礎実験4を参照しながら、説明する。
本発明者らは、基礎実験4として、図1(a)及び図1(b)に示す条件で、スタンドオフ距離d及びノズル圧を種々変更したときの洗浄性を調査した。基礎実験4では、ノズル13にはノズル圧1.0MPaで46L/minの流量の広がり角40°のフラットノズルを用い、洗浄水12には常温の水を用いた。また、衝突角(θ)は45°とし、ノズル13の移動速度、つまり通板速度は600m/minとした。結果を表1にまとめて示す。表1では、酸化鉄粉末11を洗浄できた場合を○で示し、洗浄できない場合を×で示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示すように、ノズル圧が低いほどノズル13を帯状鋼板に接近させてスタンドオフ距離dを小さくする必要がある。ただし、実際の帯状鋼板の洗浄ラインではノズルを帯状鋼板に接近させ過ぎると、搬送時の帯状鋼板が上下方向にばたついて変位することによりノズルが損傷するおそれがあるので、スタンドオフ距離dは50mm以上とすることが望ましく、100mm以上とすることがさらに望ましい。一方、スタンドオフ距離dが250mm以下である場合には、ノズル13から噴射された洗浄水12は、扇状に均一な膜として形成されるので、気中での減速は比較的小さい。しかし、スタンドオフ距離dが250mを超えると、形成される洗浄水12の膜が振動により切れて液滴状を呈するようになるので、空気抵抗により洗浄水12の気中での減速が大きくなり、流速が低下する。この場合、ノズル圧を例えば1.4MPa超に高めてもそれに応じた衝突速度の増加を得ることはできなくなり、洗浄性が低下する。また、衝突速度はスタンドオフ距離dのべき乗に比例するため、スタンドオフ距離dが250mm超である場合にはノズル圧を高めても洗浄性の向上は望めなくなる。このため、スタンドオフ距離dは、250mm以下であることが望ましい。
【0054】
また、表1に示すように、ノズル圧は、スタンドオフ距離dとの関係により、0.6MPa以上1.6MPa以下であることが望ましく、0.8MPa以上1.2MPa以下であることがさらに望ましい。
【0055】
ノズル圧およびスタンドオフ距離に関する以上の説明は、異物として酸化鉄粉末を用いた場合を例にとって行ったが、酸化鉄以外の異物についてノズル圧およびスタンドオフ距離も同様にして求めることができることは、いうまでもない。
【0056】
なお、帯状鋼板の幅方向を含むとともにこの帯状鋼板の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに洗浄水を噴射することから、飛散した洗浄水により周辺が汚染されることを防止するために、洗浄する帯状鋼板の両側方に、適宜カバーを配置することが望ましい。
【0057】
以上の実施の形態の説明では、一つのノズルから噴射される洗浄水により帯状鋼板の表面に存在する異物を除去する場合を例にとったが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、複数のノズルを帯状鋼板の幅方向に配置し、洗浄液が、帯状鋼板の幅方向の複数の位置それぞれから噴射されるように構成してもよく、この場合には、複数のノズルそれぞれから噴射される洗浄液が帯状体に衝突する領域の総和が、帯状体の幅方向の全ての領域と一致するようにすることが望ましい。
【0058】
図6は、酸洗ラインの入側20に配置された本実施の形態の洗浄装置21の構成例を示す説明図である。
図6に示す洗浄装置21は、図8に示すように、アンコイラー2から払いだされてピンチロール5を通過して水平方向に白抜き矢印の向きに搬送される帯状鋼板22の表面を洗浄するものである。すなわち、この洗浄装置21は、図8におけるピンチロール5とレベラー6との間の帯状鋼板3が略水平方向へ走行する位置(帯状鋼板3の搬送方向を含む垂直断面内における不変の通過位置)に、配置される。これにより、アンコイラー2からの帯状鋼板22の払い出しの過程には関係なく、各ノズルスタンドオフ距離dを一定に維持することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、帯状鋼板22の水切りを行う必要がないため、レベラー6の下流に配置されるリンガーロール7はそのロール間距離を大きく設定することにより、作動させないこととしている。
【0060】
また、レベラー6の下流には、この帯状鋼板22の先端部、及びこの帯状鋼板22に先行する他の帯状鋼板の後端部を溶接するレーザー溶接機と、酸洗槽とが設けられており、上述した本実施の形態の洗浄装置21とともに、連続鋼板製造設備を構成している。
【0061】
このように、本実施の形態の連続鋼板製造設備では、レーザー溶接機を用いることが可能となっているので、この理由を説明する。すなわち、高炭素鋼板、高Si鋼板さらには高張力鋼板といった合金元素を多く含む特殊な鋼種からなる鋼板の溶接強度を確保するためには、レーザー溶接を行うことが本来望ましい。しかし、従来の洗浄方法により表面に洗浄水が残存している鋼板にレーザー溶接を行うと、レーザー溶接の際に水蒸気が発生して溶接欠陥が発生し易くなるため、これまでは、フラッシュバット溶接を行わざるを得ない状況にあり、溶接強度の不足が懸念される状況にあった。これに対し、本実施の形態の洗浄方法を用いれば、上述したように鋼板の表面に残存する水分量を最小限に抑制できるため、その後にレーザー溶接を行っても水蒸気の発生に起因した溶接欠陥を生じなくなるため、レーザー溶接を行うことができるのである。
【0062】
この洗浄装置21は、帯状鋼板22の略幅方向を含むとともに帯状鋼板22の表面に直交する面内でこの表面に対して斜めに洗浄液23を噴射するためのノズル24−1、24−2、24−3、24−4を備える。
【0063】
ノズル24−1〜24−4は、図示しない架台により支持されており、帯状鋼板22の上方の所定の位置に、帯状鋼板22の幅方向に並列して配置される。ノズル24−1〜24−4には、図示しない洗浄水供給装置が接続されており、ノズル圧や供給量が調整自在に構成されている。
【0064】
各ノズル24−1〜24−4それぞれから噴射される洗浄水23が帯状鋼板22に衝突する衝突域w1,2,3,の総和(w+w+w+w)が、帯状鋼板22の幅方向の全ての領域と一致するように、構成されている。
【0065】
帯状鋼板22の側方には、支持枠25を介して、洗浄水23の飛散を防止するための飛散防止壁26、26を配置してある。
この洗浄装置21において各ノズル24−1〜24−4それぞれから噴射される洗浄水23は、図8に矢印で模式的に示すように、帯状鋼板22の表面に衝突してこの表面から離れる方向(上方)へ反射した後に帯状鋼板22から離れたまま帯状鋼板22の幅方向の端部よりも外側へ飛散し、飛散防止壁26に衝突して付着する。
【0066】
そして、洗浄水23は、帯状鋼板22の表面に衝突した際に、この表面に存在する異物を巻き込んで随伴させるので、異物は洗浄水23とともに帯状鋼板体22の幅方向の端部よりも外側へ飛散する。このようにして、帯状鋼板22の幅方向の全域から異物が除去される。
【0067】
また、洗浄水23は、図6に模式的に示すように帯状鋼板22の表面に衝突してこの表面から離れる方向へ反射した後に帯状鋼板22から離れたまま帯状鋼板22の幅方向の端部よりも外側へ飛散するので、洗浄後の帯状鋼板22の表面には、リンガーロール等を用いた水切りが不要になる程度の極少量しか洗浄水が残存せず、実質的に帯状鋼板22には洗浄後に洗浄水が残存しないこととなる。
【0068】
本実施の形態によれば、帯状鋼板22は、熱間圧延終了後におけるコイルからの払い出し、本実施の形態の洗浄装置による洗浄、先端又は後端の溶接、及び酸洗槽による酸洗を経て製造されるので、これらの工程における溶接不良や押し込み疵の発生を解消しながら、帯状鋼板22を製造することができる。
【0069】
なお、以上の説明では、図8におけるピンチロール5とレベラー6との間に本実施の形態の洗浄装置を配置した場合を例にとったが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、レベラー6の下流側等といったピンチロール5とレベラー6との間以外の部位に配置してもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、
(a)帯状鋼板の表面に付着して存在する、例えばスケール粉等の異物を、洗浄後に帯状鋼板の表面に洗浄水を実質的に残存させることなく、確実に除去することができるため、この異物が存在することに起因した品質不良(例えばレベラーに依る押し込み疵の発生等)を確実に解消できるので、帯状鋼板の製品歩留まり及び表面性状を向上することができ、
(b)洗浄後の工程への洗浄水の持ち込みを抑制できるので、洗浄後に溶接を行う場合には溶接不良を抑制でき、帯状鋼板の製造コストを低減することができ、
(c)図6に示すように、帯状鋼板の走行方向について小さな設置スペースでも実施することができるので、既存の帯状鋼板の搬送工程で確実に実施することができ、
(d)洗浄水として、従来の技術のように高温高圧水スプレーではなく常温の水を用いることができるので、低コストで実施することができ、
(e)従来の技術のように水と空気とを併用する必要無く、水を噴射するだけで良いので、廉価な設備コストで実施することができ、さらには
(f)帯状鋼板の表面に略垂直に洗浄水を噴射していた従来の方法よりも、異物の除去に必要となる洗浄水の量を大幅に削減して効率的な洗浄を行うことができる。
【実施例】
【0071】
さらに、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
図6に示す洗浄装置21を用いて、酸洗ラインの入側を600m/minの搬送速度で走行する帯状鋼板22(板幅1600mm)の表面の洗浄を行った。
【0072】
ノズル24−1〜24−4には、ノズル圧1.0MPaで46L/minの流量を有するとともに広がり角θnが40°であるフラットノズルを用い、スタンドオフ距離dを200mmとし、ノズル圧を1.0MPaとした。必要水量は46L/minが4本で、0.184m/minである。
【0073】
帯状鋼板22は、図6の白抜き矢印の方向へ移動し、まずノズル24−1、24−2が、帯状鋼板22の板幅方向の中心部800mmの領域w、wを外向きに洗浄してからノズル24−3、24−4により残りの両端部800mmの領域w、wを外向きに洗浄するようにした。これにより、帯状鋼板22の板幅方向の中心側からエッジ側へ向けて、異物であるスケールを吹き飛ばすことになるので、板幅方向の両エッジの洗浄部分が中心側に存在する異物により再汚染されることが防止でき、洗浄効率を高めることができる。
【0074】
なお、この帯状鋼板22よりも板幅がさらに広い帯状鋼板の洗浄を行う場合には、ノズル24−4の下流の最エッジ部に、ノズルをさらに1本ずつ増設すればよい。
その結果、異物は、ノズル24−1〜24−4から噴出される洗浄水23により帯状鋼板22から完全に除去された。このため、後続する工程におけるレベラーによる押し込み疵の発生を抑制でき、また洗浄後の帯状鋼板22の表面には洗浄水23も残存しなかった。
【0075】
これに対し、図7に示す従来の洗浄方法では、アンコイラー2からピンチロール5へ斜めに立ち上がっている部分で洗浄するため、洗浄水の流量は1.0m/minも必要であったが、本発明における洗浄水の流量は0.184m/minと、従来の洗浄方法の約1/5に低減することができた。
【0076】
また、図8に示すように、従来の洗浄方法を用いて帯状鋼板3が水平方向へ走行している部分へ洗浄水を供給すると、下流のレベラー6への洗浄水の持ち込みが避けられなかったが、本発明によれば、帯状鋼板22に衝突した洗浄水23は反射して空中を飛散するため、レベラー6への洗浄水23の持ち込みが殆ど発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、基礎試験1の状況を示す説明図であり、図1(a)はノズルからの洗浄水の噴射状況を示す説明図であり、図1(b)は、基礎試験1の概要を示す説明図である。
【図2】図2は、基礎実験1の結果を示すための説明図である。
【図3】図3は、ノズルから帯状鋼板の表面に洗浄水を扇状に噴射する状況を模式的に示す説明図である。
【図4】無次元水平方向動圧と無次元幅方向距離との関係を示すグラフである。
【図5】洗浄幅と最大水平方向動圧との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、酸洗ラインの入側に配置された本実施の形態の洗浄装置の構成例を示す説明図である。
【図7】図7は、酸洗ライン入側の構成の一例を模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、酸洗ライン入側の構成の変形例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
10 床面
11 酸化鉄粉末
12 洗浄水
13 ノズル
14 衝突域
15 白布
16 帯状鋼板
20 酸洗ラインの入側
21 洗浄装置
22 帯状鋼板
23 洗浄液
24−1、24−2、24−3、24−4 ノズル
25 支持枠
26 飛散防止壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物が存在する金属製の帯状体の表面に向けて、前記帯状体の略幅方向を含むとともに前記表面に直交する面内で該表面に対して斜めに洗浄液を噴射することにより、前記異物を飛散させて、前記帯状体から前記異物を除去することを特徴とする帯状体の洗浄方法。
【請求項2】
前記異物を、前記帯状体の幅方向の端部よりも外側へ、飛散させる請求項1に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項3】
前記異物の飛散は、前記表面に対して斜めに噴射された洗浄液が、該表面に衝突して該表面から離れる方向へ反射した後に前記帯状体から離れたまま前記帯状体の幅方向の端部よりも外側へ飛散する際に、前記異物を該飛散する洗浄液に随伴させることによって、行われる請求項1又は請求項2に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液は、帯状体の長手方向と略同じ方向へ相対的に移動するノズルから噴射される請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項5】
前記帯条体は前記長手方向へ移動するとともに、前記ノズルは固定して配置される請求項4に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄液は、前記直交する面内で扇形に噴射される請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項7】
前記帯状体の幅方向、及び該帯状体の表面に直交する方向を含む断面内において、前記扇形に噴射される洗浄液の広がり角度(θn)、及び、該洗浄液の中心線と前記帯状体とがなす角度(θj)が、下記(1)式により規定される関係を満足する請求項6に記載された帯状体の洗浄方法。
0°<θj<90°かつθn<2θj ・・・・・・・・・(1)
【請求項8】
前記帯状体の幅方向、及び該帯状体の表面に直交する方向を含む断面内において、前記扇形に噴射される洗浄液の二本の輪郭線のうち前記帯状体に近い側の輪郭線と、前記帯状体とがなす角度(θ)が、前記広がり角度(θn)以上90°未満である請求項7に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄液は、前記帯状体の幅方向の複数の位置それぞれから噴射される請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項10】
前記複数の位置それぞれから噴射される洗浄液が前記帯状体に衝突する領域の総和は、前記帯状体の幅方向の全ての領域である請求項9に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項11】
前記金属製の帯状体は帯状鋼板であるとともに前記洗浄液は水である請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項12】
扇形に噴射される前記洗浄液の、前記帯状体の幅方向と平行な方向の最大動圧は、70kPa以上である請求項11に記載された帯状体の洗浄方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載された帯状体の洗浄方法により洗浄する工程を含むことを特徴とする帯状体の製造方法。
【請求項14】
異物が存在する金属製の帯状体の表面に向けて洗浄液を噴射するノズルを備える帯状体の洗浄装置であって、
該ノズルは、前記帯状体の略幅方向を含むとともに前記表面に直交する面内で前記表面に対して斜めに洗浄液を噴射することにより、前記異物を飛散させて、前記帯状体から前記異物を除去すること
を特徴とする帯状体の洗浄装置。
【請求項15】
前記ノズルは、前記異物を、前記帯状体の幅方向の端部よりも外側へ、飛散させる請求項14に記載された帯状体の洗浄装置。
【請求項16】
前記異物の飛散は、前記表面に対して斜めに噴射された洗浄液が、該表面に衝突して該表面から離れる方向に反射した後に前記帯状体から離れたまま前記帯状体の幅方向の端部よりも外側へ飛散する際に、前記異物を該飛散する洗浄液に随伴させることによって、行われる請求項14又は請求項15に記載された帯状体の洗浄装置。
【請求項17】
帯状鋼板を払い出すアンコイラーと、
該アンコイラーから払い出された帯状鋼板の搬送方向を略水平方向に変更する一対のピンチロールと、
前記アンコイラーから払いだされた帯状鋼板の表面を洗浄する請求項14から請求項16までのいずれか1項に記載された洗浄装置と、
該洗浄装置および前記一対のピンチロールの下流に設けられて前記帯状鋼板の先端部、及び該帯状鋼板に先行する他の帯状鋼板の後端部を溶接するレーザー溶接機と
を備えることを特徴とする連続鋼板製造設備。
【請求項18】
前記洗浄装置は、前記帯状鋼板の搬送方向を含む垂直断面内における不変の通過位置に存在する帯状鋼板の表面に洗浄水を噴射することができる位置に、配置される請求項17に記載された連続鋼板製造設備。
【請求項19】
前記不変の通過位置は、前記ピンチロールと前記レーザー溶接機との間である請求項18に記載された連続鋼板製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−1509(P2010−1509A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159329(P2008−159329)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】