説明

帯電ローラおよびこれを備える画像形成装置

【課題】帯電ローラの抵抗を安定させつつ、低コスト化を図る。
【解決手段】帯電ローラ3aは絶縁性基材3bを備えており、この絶縁性基材3bは絶縁性樹脂から構成されている。絶縁性基材3bの外周面および両端面には、導電性樹脂からなる導電部3cが形成されている。また、導電部3cの外周面には、テープ状のフィルム部材を巻き付けることにより、帯電ギャップGを設定する第1および第2ギャップ部材3d,3eが固定されている。更に、絶縁性基材3bの両端部には、この絶縁性基材3bの両端の導電部3cを貫通して導電軸3f,3gが同一軸線上に取り付けられている。これらの導電軸3f,3gと導電部3cとは電気的に導通している。コストの安い絶縁性基材3bを用いることで、低コスト化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ部材で像担持体に対して所定の帯電ギャップが設定されて像担持体を非接触帯電する帯電ローラと、この帯電ローラを備えた、静電複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置からなる画像形成装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、両端部に設けられたギャップ部材を像担持体に当接させることで、像担持体に対して所定の帯電ギャップを設定して、この像担持体を非接触帯電する帯電ローラを備える画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。この特許文献1に記載の帯電ローラでは、基材である金属シャフトの外周面に導電性樹脂を射出成形することにより電気抵抗調整層が設けられているとともに、この電気抵抗調整層の外周面に電気抵抗樹脂組成物からなる表面層が設けられている。この特許文献1に記載の帯電ローラでは、電気抵抗調整層が設けられることで、絶縁破壊が起き難く、リークの問題が少ない。
【特許文献1】特開2006−330483号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の帯電ローラでは3層構造であり、電気抵抗調整層を構成するコストの高い導電性樹脂を用いているため、製造上低コスト化を図ることが難しいという問題がある。また、電気抵抗調整層が射出成形により金属シャフトに設けられることも、低コスト化を妨げている。更に、金属シャフトの基材から電気抵抗調整層を通して電圧が印加されるため、環境変動等による電気抵抗調整層の抵抗変動により電圧降下率が変動する。したがって、感光体の表面電位の調整に複雑な制御機構を必要とするという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、抵抗が安定しつつ、低コスト化を図ることのできる帯電ローラおよびこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題を解決するために、本発明に係る帯電ローラでは、その基材としてコストの安い絶縁性基材を用いている。したがって、従来のように導電性樹脂を用いた基材に比べて低コスト化が効果的に可能となる。特に、絶縁性基材に絶縁性樹脂を用いることで、より一層の低コスト化を図ることができる。
また、帯電ローラの基材に絶縁性基材を用いることで、表面抵抗を低くできるようになる。これにより、帯電ローラの抵抗安定性を向上させることができる。
【0006】
更に、従来の帯電ローラのように、基材の主な材料として金属シャフトを用いると重量が大きくなる。このため、金属シャフトはその自重で撓みを生じてしまい、軸方向に均一な帯電ギャップを得ることができなくなる。そして、均一な帯電ギャップが得られないと、均一な帯電を行うことが難しくなり、帯電均一性に弊害を招く。これに対して、本発明の帯電ローラでは、基材の主な材料として絶縁性基材を用いているので、軽量化が可能となる。したがって、絶縁性基材の撓みの発生が抑制されて、より均一な帯電ギャップを得ることができる。これにより、均一な帯電を行うことができる。
【0007】
更に、帯電ローラの基材に絶縁性基材を用いているので、従来のような環境の影響を受けやすい導電性樹脂層を用いる場合に比べて基材を環境の影響を受け難くできる。したがって、環境変動にかかわらず、帯電ローラの抵抗安定性を更に向上させることができる。
更に、帯電ローラの基材に絶縁性基材を用いているので、リークを発生し難くできる。したがって、像担持体にピンホール等が存在した場合などのように、仮にリークが発生しても、その傷が広がることを阻止できる。
【0008】
更に、導電性表層のみに電荷を発生させているので、電流が導電性表層から絶縁性基材側に流れることを防止できる。したがって、従来のような導電性基材に導電性樹脂を塗布して帯電ローラを形成した場合に起こる次のような問題を解決することができる。すなわち、帯電は帯電ローラの基材と像担持体との間に高電界を形成して放電を起こすことにより行われるため、電流が基材から基材上の樹脂塗装面に流れるようになる。しかも、交流電界を印加すると、電流の向きがその周波数によって瞬時に変化する。したがって、基材上の樹脂塗装面は過度の電気的ストレスを受けるため、塗装の剥げ、あるいは塗装の浮き等の問題があるが、本発明の帯電ローラによれば、これらの問題を解決することができる。
【0009】
更に、本発明に係る画像形成装置ではこのような本発明の帯電ローラを用いているので、帯電ローラにより像担持体を安定して帯電することができる。したがって、良好な画像を長期にわたって形成することができる。
【0010】
更に、帯電ローラに直流電圧と交流電圧とを重畳した帯電電圧を印加することで、像担持体と帯電ローラとの間の帯電ギャップが不均一であったり、急激な環境変動があったりしても、像担持体を良好にかつ安定して帯電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図、図2は図1に示す例の感光体および帯電装置を模式的に示す図、図3(a)はこの例の金属ローラの軸方向断面を模式的に示す図、図3(b)は図3(a)におけるIIIB−IIIB線に沿う横断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、この例の画像形成装置1は静電潜像およびトナー像(現像剤像)が形成される像担持体である感光体2を備えているとともに、この感光体2の周囲に感光体2の回転方向(図1では、時計回り)上流側から、順次、感光体2を非接触帯電する帯電装置3、感光体2に静電潜像を書き込む光書込み装置4、感光体2の静電潜像をトナーで現像する現像装置5、感光体2のトナー像を転写する転写装置6、および感光体2をクリーニングするクリーニング装置7を備えている。
【0013】
この例の感光体2は感光体ドラムからなり、従来公知の感光体ドラムと同様に円筒状の金属素管の外周面に所定膜厚の感光層が形成されている。この感光体2における金属素管には、例えばアルミニウム等の導電性の管が用いられるとともに、感光層には、従来公知の有機感光体が使用される。
【0014】
帯電装置3は感光体2に対して非接触の帯電を行う帯電ローラ3aを備えており、この帯電ローラ3aは感光体2の回転方向と逆方向α(図1において、反時計回り)に回転される。図2および図3(a),(b)に示すように、帯電ローラ3aは絶縁性基材3bを備えており、この絶縁性基材3bは絶縁性樹脂から構成されている。絶縁性基材3bの絶縁性樹脂には、例えば、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂などが用いられる。
【0015】
絶縁性基材3bの外周面および両端面には、導電性樹脂からなる導電部(導電性表層)3cが形成されている。導電部3cの導電性樹脂には、例えば、ポリウレタン(PU)またはポリアセタール(POM)などの樹脂に、導電性酸化錫または導電性カーボンブラック(CB)等の導電性物質を混入して得られたものが用いられる。その場合、ポリウレタン(PU)またはポリアセタール(POM)などの樹脂と、導電性酸化錫または導電性カーボンブラック(CB)等の導電性物質とは、所定の重量(wt)%の割合で混合される。
【0016】
導電部3cの外周面には、所定幅で一定膜厚の、例えば粘着テープからなるフィルム部材を巻き付けることにより、第1および第2ギャップ部材3d,3eが固定されている。これらの第1および第2ギャップ部材3d,3eは感光体2の外周面に所定の力で当接することで、非接触帯電を行うための帯電ギャップGを設定する。第1および第2ギャップ部材3d,3eには、例えば、帯電ギャップに対応した所定の膜厚のポリエステルテープ(住友スリーエム社製)などの絶縁性テープが用いられる。もちろん、他の絶縁部材で第1および第2ギャップ部材3d,3eを構成することもできる。
【0017】
更に、絶縁性基材3bの両端部には、この絶縁性基材3bの両端の導電部3cを貫通して導電軸3f,3gが同一軸線上に取り付けられている。これらの導電軸3f,3gには、例えばSUS等の導電性の金属が用いられる。これらの導電軸3f,3gと導電部3cとは電気的に導通している。また、各導電軸3f,3gは帯電ローラ3aの回転軸にもなっている。
【0018】
図4(a)および(b)に示すように、導電軸3f,3gの少なくとも一方には、板ばねからなる帯板状の電圧印加部材8が弾性的に当接されている。そして、感光体2の帯電時に、帯電電圧がこの電圧印加部材8を通して導電軸7に印加されるようになっている。その場合、帯電電圧は直流電圧(DC)と交流電圧(AC)との重畳電圧である。
【0019】
このように構成されたこの例の帯電ローラ3aは、まず絶縁性基材3bの両端に導電軸3f,3gを取り付ける。次に、これらの導電軸3f,3gを支持した状態で絶縁性基材3bを回転させながら、絶縁性基材3bの外周面および両端面に導電性樹脂を塗装をして所定膜厚の導電部3cを形成する。次に、形成された導電部3cの外周面の所定位置に絶縁性テープを貼着して、第1および第2ギャップ部材3d,3eを形成する。
【0020】
光書込み装置4は、例えばレーザ光等により感光体2に静電潜像を書き込む。また、現像装置5は、現像ローラ5a、トナー供給ローラ5bおよびトナー層厚規制部材5cを有している。そして、トナー供給ローラ5bによって現像ローラ5a上に現像剤であるトナーTが供給されるとともに、この現像ローラ5a上のトナーTがトナー層厚規制部材5cによりその厚みを規制されて感光体2の方へ搬送され、搬送されたトナーTで感光体2上の静電潜像が現像されて感光体2上にトナー像が形成される。
【0021】
転写装置6は転写ローラ6aを有し、この転写ローラ6aにより感光体2上にトナー像が転写紙や中間転写媒体等の転写媒体9に転写される。そして、トナー像が転写媒体9である転写紙に転写された場合には、転写紙上のトナー像が図示しない定着装置によって定着され、転写紙に画像が形成され、また、トナー像が転写媒体9である中間転写媒体に転写された場合には、中間転写媒体上のトナー像が更に転写紙に転写された後、転写紙上のトナー像が図示しない定着装置によって定着され、転写紙に画像が形成される。
【0022】
クリーニング装置7は例えばクリーニングブレード等のクリーニング部材7aを有し、このクリーニング部材7aにより感光体2がクリーニングされて、感光体2上の転写残りトナーが除去されかつ回収される。
【0023】
この例の帯電ローラ3aによれば、帯電ローラ3aの基材にコストの安い絶縁性樹脂からなる絶縁性基材3bを用いているので、従来のように導電性樹脂を用いた基材に比べて低コスト化が効果的に可能となる。また、帯電ローラ3aの基材に絶縁性基材3bを用いることで、表面抵抗を低くできるようになる。これにより、帯電ローラ3aの抵抗安定性を向上させることができる。
【0024】
更に、基材の主な材料として金属シャフトを用いると重量が大きくなる。このため、金属シャフトはその自重で撓みを生じてしまい、軸方向に均一な帯電ギャップGを得ることができなくなる。そして、均一な帯電ギャップGが得られないと、均一な帯電を行うことが難しくなり、帯電均一性に弊害を招く。これに対して、この例の帯電ローラ3aでは、基材の主な材料として絶縁性基材3bを用いているので、軽量化が可能となる。したがって、絶縁性基材3bの撓みの発生が抑制されて、より均一な帯電ギャップGを得ることができる。これにより、均一な帯電を行うことができる。
【0025】
更に、基材に絶縁性基材3bを用いているので、従来のような環境の影響を受けやすい導電性樹脂層を用いる場合に比べて基材を環境の影響を受け難くできる。したがって、環境変動にかかわらず、帯電ローラ3aの抵抗安定性を更に向上させることができる。
更に、基材に絶縁性基材3bを用いているので、リークを発生し難くできる。したがって、感光体2にピンホール等が存在した場合などのように、仮にリークが発生しても、その傷が広がることを阻止できる。
【0026】
更に、導電部3cが表層のみであるので、電荷の発生をこの導電部3cのみにすることができる。これにより、電流を表層の導電部3cから絶縁性基材3b側に流れることを防止できる。したがって、従来のような導電性基材に導電性樹脂を塗布して帯電ローラを形成した場合に起こる次のような問題を解決することができる。すなわち、帯電は帯電ローラ3aの基材と感光体2との間に高電界を形成して放電を起こすことにより行われるため、電流が基材から基材上の樹脂塗装面に流れるようになる。しかも、交流電界を印加するため、電流の向きがその周波数によって瞬時に変化する。したがって、基材上の樹脂塗装面は過度の電気的ストレスを受けるため、塗装の剥げ、あるいは塗装の浮き等の問題があるが、この例の帯電ローラ3aによれば、これらの問題を解決することができる。
【0027】
更に、この例の画像形成装置1では、このような帯電ローラ3aを用いているので、帯電ローラ3aにより感光体2を安定して帯電することができる。したがって、この例の画像形成装置1により、良好な画像を長期にわたって形成することができる。
【0028】
更に、帯電ローラ3aに直流電圧と交流電圧とを重畳した帯電電圧を印加しているので、絶縁性基材3bを用いた帯電ローラ3aであっても、感光体2と帯電ローラ3aとの間の帯電ギャップGが不均一であったり、急激な環境変動があったりした場合に、感光体2のを良好にかつ安定して帯電することができる。
【0029】
図5(a)は、本発明の帯電ローラの実施の形態の他の例を模式的に示す軸方向に沿った断面図、図5(b)は、図5(a)におけるVB−VB線に沿う断面図である。なお、前述の例と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0030】
前述の図3に示す例の帯電ローラ3aでは、両端部の導電軸3f,3gが別体にされて設けられている。これに対して、図5(a)および(b)に示すようにこの例の帯電ローラ3aでは、1本の導電軸3hが設けられている。この導電軸3hは絶縁性基材3bの中心を軸方向に貫通して、絶縁性基材3bの両端から軸方向に突出して設けられる。
この例の帯電ローラ3aの他の構成は、前述の例の帯電ローラ3aと同じである。
この例の帯電ローラ3aによれば、導電軸3hが絶縁性基材3bを軸方向に貫通しているため、前述の例より若干重量が増大する。しかし、電流が導電軸3hから表層の導電部3cに流れて放電が行われるだけであって、この電流は表層の導電部3cから絶縁性基材3bには流れない。したがって、この例の帯電ローラ3aの作用効果は、前述の作用効果と実質的に同じである。
【0031】
次に、本発明により得られる効果を確認する実験を行った。
(実験装置)
実験装置はセイコーエプソン社(株)製のカラープリンタLP9000Cを、帯電部分のみを前述の各実施例および各比較例の帯電ローラを装着可能に改造して使用した。実験は、室温25℃、相対湿度60%の環境下で行った。
【0032】
帯電ローラ3aに印加する電圧VCR(V)は、直流電圧VDC(V)に交流電圧VAC(V)重畳した電圧である(VCR = VDC+VAC)。具体的には、VDC = −600(V)、VAC = (VPP/2)×sin2πft(周波数f=1.3Hz、時間t(sec)、振幅VPP(V))に設定した。振幅VPP(V)は、帯電時の印加電流の実効値IRMS(mA)が1.2mAとなるように各実施例および各比較例毎に変えて設定した。各実施例および各比較例毎の振幅VPP(V)を後述する表1および表2に示す。
【0033】
また、各帯電ローラの表面抵抗は、ハイレスタUP MCP−HT450型(株式会社ダイアインスツルメンツ社製)を用いて測定した。その場合、表面抵抗の測定は20×20mm2□のアルミプレートに、表1に示す導電部3cの塗装膜と同じ材料でかつ同じ膜厚で塗装膜を作製して行った。
【0034】
実験は、各実施例および各比較例の帯電ローラ3aに対して、前述の帯電電圧VCR(V)を印加して、A3相当の全面ベタ印字(25%ハーフトーンの印字)を1000(1k)枚行い、均一帯電ができているか否かを目視観察して画像が良好に得られるか否かを確認した。その場合、画像全体に斑点の帯電斑が出現した場合、または帯電が行われず、トナーが濃すぎる画像が出力された場合に、帯電不良であると判断して、画像評価を不良とした。また、それ以外では、帯電良好であると判断して、画像評価を良とした。
【0035】
なお、帯電ローラ3aに対する帯電電圧VCR(V)の印加方法は、図4(a)および(b)に示す板ばねからなる帯板状の電圧印加部材8を用いて帯電電圧VCR(V)を各導電軸3f,3h,3iに印加する方法を用いた。
また、以下の各実施例および各比較例の絶縁性基材3bおよび導電部3cに用いられるPUおよびPOMは、いずれも市販のものを用いた。また、CBは三菱化学(株)製ケッチェンブラックEC−600JDを用いた。更に、導電性酸化錫は、株式会社ジェムコの商品名「T−1」の導電性酸化を用い、この「T−1」はスズ−アンチモン系酸化物である。
【0036】
(実施例1ないし28の帯電ローラ)
実験に用いた実施例1ないし28の帯電ローラ3aは前述の製造方法で製造した。第1および第2ギャップ部材3d,3eは、住友スリーエム社製のポリエステルテープ(膜厚20μm;幅5mm)を導電部3cの両端からそれぞれ約2mm離して導電部3cの外周面に貼着した。各実施例の帯電ローラ3aを表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1ないし16の帯電ローラ3aは、図3(a)および(b)に示すタイプの帯電ローラ3aである。各実施例の帯電ローラ3aの導電軸3f,3gには、φ6mmのSUS304製の軸を用い、前述の実験装置のカラープリンタに搭載可能にした。
【0039】
また、実施例1ないし9の帯電ローラ3aの絶縁性基材3bには、外径φ12mm、長さ340mmの絶縁性樹脂であるPUを用いた。更に、実施例1の導電部3cは、PU20wt%に導電剤であるCB80wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.2×103Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1800(V)に設定した。実施例2の導電部3cは、PU30wt%に導電剤であるCB70wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.5×103Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1800(V)に設定した。実施例3の導電部3cは、PU50wt%に導電剤であるCB50wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、5.5×104Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1820(V)に設定した。実施例4の導電部3cは、PU75wt%に導電剤である導電性酸化錫25wt%を混合して、膜厚7μmに形成した。このときの表面抵抗率は、9.8×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1860(V)に設定した。実施例5の導電部3cは、PU75wt%に導電剤であるCB25wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、8.5×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1850(V)に設定した。実施例6の導電部3cは、PU80wt%に導電剤であるCB20wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、2.0×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1880(V)に設定した。実施例7の導電部3cは、PU80wt%に導電剤である導電性酸化錫20wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.8×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1900(V)に設定した。実施例8の導電部3cは、PU85wt%に導電剤である導電性酸化錫15wt%を混合して、膜厚15μmに形成した。このときの表面抵抗率は、7.8×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1960(V)に設定した。実施例9の導電部3cは、PU90wt%に導電剤であるCB19wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、4.8×108Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1960(V)に設定した。
【0040】
実施例10ないし16の帯電ローラ3aの絶縁性基材3bには、外径φ12mm、長さ340mmの絶縁性樹脂であるPOMを用いた。更に、実施例10の導電部3cは、POM50wt%に導電剤であるCB50wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、6.5×104Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1820(V)に設定した。実施例11の導電部3cは、POM75wt%に導電剤である導電性酸化錫25wt%を混合して、膜厚7μmに形成した。このときの表面抵抗率は、8.5×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1840(V)に設定した。実施例12の導電部3cは、POM75wt%に導電剤であるCB25wt%を混合して、膜厚55μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.0×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1800(V)に設定した。実施例13の導電部3cは、POM80wt%に導電剤であるCB20wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、2.4×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1860(V)に設定した。実施例14の導電部3cは、POM80wt%に導電剤である導電性酸化錫20wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、2.8×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1930(V)に設定した。実施例15の導電部3cは、POM85wt%に導電剤であるCB15wt%を混合して、膜厚15μmに形成した。このときの表面抵抗率は、7.4×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1950(V)に設定した。実施例16の導電部3cは、POM90wt%に導電剤である導電性酸化錫10wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.3×108Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1990(V)に設定した。
【0041】
実施例17ないし28の帯電ローラ3aは、図5(a)および(b)に示すタイプの帯電ローラ3aである。各実施例の帯電ローラ3aの導電軸3hには、φ6mmのSUS304製の軸を用い、この軸を絶縁性基材3bを軸方向に貫通させて、前述の実験装置のカラープリンタに搭載可能にした。また、実施例17いし21の帯電ローラ3aの絶縁性基材3bには、外径φ12mm、長さ340mmm内径φ6mmの円筒状の絶縁性樹脂であるPUを用いた。更に、実施例17の導電部3cは、PU50wt%に導電剤であるCB50wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、5.5×104Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1810(V)に設定した。実施例18の導電部3cは、PU75wt%に導電剤である導電性酸化錫25wt%を混合して、膜厚120μmに形成した。このときの表面抵抗率は、8.8×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1810(V)に設定した。実施例19の導電部3cは、PU75wt%に導電剤であるCB25wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.1×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1800(V)に設定した。実施例20の導電部3cは、PU80wt%に導電剤であるCB20wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、2.9×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1990(V)に設定した。実施例21の導電部3cは、PU80wt%に導電剤である導電性酸化錫20wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、3.8×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は2010(V)に設定した。実施例22の導電部3cは、POM50wt%に導電剤であるCB50wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、6.4×104Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1815(V)に設定した。実施例23の導電部3cは、P〜M75wt%に導電剤である導電性酸化錫25wt%を混合して、膜厚190μmに形成した。このときの表面抵抗率は、8.8×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1840(V)に設定した。実施例24の導電部3cは、POM75wt%に導電剤であるCB25wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.2×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1840(V)に設定した。実施例25の導電部3cは、POM80wt%に導電剤であるCB20wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、3.4×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1960(V)に設定した。実施例26の導電部3cは、POM80wt%に導電剤である導電性酸化錫20wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、2.9×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1990(V)に設定した。実施例27の導電部3cは、POM85wt%に導電剤であるCB15wt%を混合して、膜厚15μmに形成した。このときの表面抵抗率は、7.6×107Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1970(V)に設定した。実施例28の導電部3cは、POM90wt%に導電剤である導電性酸化錫10wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.9×108Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は2200(V)に設定した。
【0042】
(比較例1ないし5の帯電ローラ)
実験に用いた比較例1ないし5の帯電ローラ3aは、図6(a)および(b)に示すタイプの帯電ローラ3aである。図6(a)および(b)に示すように、このタイプの帯電ローラ3aには絶縁性基材3bは用いられていない。代わりに、金属シャフト3iが用いられている。この金属シャフト3iはSUS304から製造され、外径φ12mm、長さ340mmの金属シャフト部分とその両端にφ6mmの導電軸とを形成して、前述の実験装置のカラープリンタに搭載可能にした。そして、これらの比較例1ないし5の帯電ローラ3aは前述の製造方法で製造した。第1および第2ギャップ部材3d,3eは、住友スリーエム社製のポリエステルテープ(膜厚20μm;幅5mm)を導電部3cの両端からそれぞれ約2mm離して導電部3cの外周面に貼着した。各比較例の帯電ローラ3aを表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
比較例1の導電部3cは、PU20wt%に導電剤であるCB80wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.2×103Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1700(V)に設定した。比較例2の導電部3cは、PU30wt%に導電剤である導電性酸化錫70wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、1.5×103Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1700(V)に設定した。比較例3の導電部3cは、PU50wt%に導電剤であるCB50wt%を混合して、膜厚5μmに形成した。このときの表面抵抗率は、5.5×104Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1780(V)に設定した。比較例4の導電部3cは、PU75wt%に導電剤である導電性酸化錫25wt%を混合して、膜厚7μmに形成した。このときの表面抵抗率は、9.8×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1870(V)に設定した。比較例5の導電部3cは、PU75wt%に導電剤であるCB25wt%を混合して、膜厚25μmに形成した。このときの表面抵抗率は、8.5×106Ω/cm2であった。更に、印加する交流電圧の振幅VPP(V)は1850(V)に設定した。
【0045】
(実験結果)
それぞれの実験結果を表1および表2に示す。
表1に示すように、絶縁性基材を用いた実施例では、表面抵抗率が1.8×107Ω/cm2を超える高抵抗である実施例6ないし9、13ないし16、20,21、および25ないし28においては、不良であった。また、表面抵抗率が9.8×106Ω/cm2以下の低抵抗である実施例1ないし5、10ないし12、17ないし19、および22ないし24においては、良であった。これにより、本発明のように絶縁性基材3bを用いても、表面抵抗率を例えば103Ω/cm2のオーダー等の低い表面抵抗に設定することで、抵抗を安定させて均一な帯電を行うことができることが確認された。したがって、本発明の帯電ローラを備えた画像形成装置1では、コストの安価な絶縁性基材3bを用いることで良好な画像形成を安価にできる。
【0046】
一方、表2に示すように導電性基材を用いた比較例では、表面抵抗率が5.5×104Ω/cm2を超える低抵抗である比較例1ないし3においては、不良であった。このように画像評価した理由は、帯電ローラ3aと感光体2との間で絶縁破壊が起きて感光体が損傷し、リークを生じたことが確認されたためである。また、表面抵抗率が8.5×106Ω/cm2を超える高抵抗である比較例4および5においては、良であった。これにより、従来のように導電性基材を用いた場合でも、表面抵抗率を低く設定すると、リークが生じて良好な帯電が行われないことが分かった。
以上の実験結果から、本発明のように帯電ローラ3aに絶縁性樹脂からなる絶縁性基材3bを用いた場合でも、良好な帯電を実現することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】図1に示す例の画像形成装置に用いられる感光体および帯電ローラを模式的に示す図である。
【図3】(a)は帯電ローラの実施の形態の一例を模式的に示す断面図、(b)は(a)におけるIIIB−IIIB線に沿う断面図である。
【図4】(a)は帯電ローラへの帯電電圧の印加を説明する図、(b)は(a)におけるIVB−IVB線に沿う断面図である。
【図5】(a)は帯電ローラの実施の形態の他の例を模式的に示す断面図、(b)は(a)におけるVB−VB線に沿う断面図である。
【図6】(a)は比較例の帯電ローラを模式的に示す断面図、(b)は(a)におけるVIB−VBI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…画像形成装置、2…感光体、3…帯電装置、3a…帯電ローラ、3b…絶縁性基材、3c…導電部(導電性表層)、3d…第1ギャップ部材、3e…第2ギャップ部材、3f,3g,3h,3i…導電軸、4…光書込み装置、5…現像装置、6…転写装置、8…電圧印加部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材と、この絶縁性基材の外周面および両端面を覆う導電性表層と、前記絶縁性基材の両端部にそれぞれ軸方向に突出しかつ前記導電性表層に電気的に導通する導電軸と、前記導電性表層の外周面に設けられかつ帯電ギャップを設定するギャップ部材とを少なくとも備えることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記絶縁性基材は絶縁性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記導電性表層は導電性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載の帯電ローラ。
【請求項4】
前記導電軸は、前記絶縁性基材の両端部にそれぞれ個別に設けられる一対の導電軸であるか、または前記絶縁性基材を軸方向の貫通しかつ前記絶縁性基材の両端部からそれぞれ軸方向に突出する1つの導電軸であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の帯電ローラ。
【請求項5】
静電潜像が形成される像担持体と、ギャップ部材が前記像担持体に当接して所定の帯電ギャップを設定することで前記像担持体を非接触帯電する請求項1ないし4のいずれか1記載の帯電ローラを有する帯電装置と、前記像担持体上の静電潜像をトナーで現像して前記像担持体上にトナー像を形成する現像装置と、前記像担持体上のトナー像を転写する転写装置とを少なくとも備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記帯電ローラに印加する帯電電圧は、直流電圧と交流電圧との重畳電圧であることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−242141(P2008−242141A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83506(P2007−83506)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】