説明

帯電中和制御方法、及びそれを用いた荷電粒子線装置

【課題】
絶縁物を含む試料表面での帯電を抑制するための経験や熟練技能工程を排除した、信頼性の高い帯電制御技術を提供し、総合的に分析や試料作製効率の良い荷電粒子線装置を提供する
【解決手段】
荷電粒子源(1)と、前記荷電粒子源から放出される荷電粒子線(11)を集束し偏向せしめるための荷電粒子光学系(5、6)と、荷電粒子線を試料(8)に照射して試料からの2次粒子を検出するための検出器(9)と、試料を搭載する試料台(7)とを備えた荷電粒子線装置において、試料台の表面に対して移動可能に設けた中和用電極(20)と、中和用電極に印加する電圧および移動を制御する中和用電極制御装置(10)とを有し、荷電粒子線を照射して帯電した試料上の照射領域と中和用電極との間で電荷交換または電流を発生せしめて、帯電を中和制御するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を試料に照射して観察・分析・加工する荷電粒子線技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線を試料に照射して、試料の観察、分析、加工を行う荷電粒子線装置は、広く使用されている。試料が絶縁物質を含む場合に、荷電粒子を走査して試料表面に照射すると、試料表面に帯電を生じることがある。帯電は、照射ビームのドリフトと、2次粒子の放出量の減少により、観察・分析・加工の妨げとなる。そのため、この帯電を防止する方法が重要になる。
【0003】
従来の帯電防止法には、荷電粒子を試料表面に照射することにより帯電を中和する方法、紫外線又は荷電粒子線の照射により試料表面に導電層を形成し帯電電荷を逃がす方法、導電性膜で試料表面を覆うことにより帯電電荷を逃がす方法、導電性の箔又はペースト又は端子により帯電電荷を逃がす方法がある。
【0004】
荷電粒子の照射により帯電を中和する方法に、従来技術1として「荷電ビーム処理装置およびその方法(特開平8−138617号公報)」がある。従来技術1は、イオンビームによる試料の帯電を電子ビームで中和する際に、中和電子銃の先端をノズル状にして試料の表面近くに設置することにより2次電子検出器が中和電子銃からの電子を引き込むこと無く試料表面からの2次電子を検出する装置及び方法を開示している。
【0005】
紫外線又は荷電粒子線の照射により試料表面に導電層を形成し帯電を逃がす方法に、従来技術2として「2次電子画像検出法及びその装置並びに集束荷電粒子ビームによる処理方法及びその装置(特開平11−154479号公報)」、「荷電ビーム処理装置およびその方法(特開平8−138617号公報)」がある。従来技術2は、試料表面の集束荷電粒子ビーム照射領域を含めた領域への正イオンビーム照射により、導電層を誘起し電荷を逃がす方法により、試料の状態、種類によらず安定して帯電を回避し、リアルタイムで試料の2次電子画像を高解像で検出して試料のパターン観察や集束荷電粒子ビームの位置決めなどを高精度に実現し、1.0μm以下の加工処理を実現する装置及び方法を開示している。
【0006】
導電性膜で試料表面を覆う方法に、従来技術3として「導電性レジスト膜及び半導体装置の製造方法(特開平7−74076号公報)」がある。従来技術3は、荷電粒子に感応する樹脂膜の下層に導電性の膜を形成する方法により、帯電を極力抑制する方法と、荷電粒子ビームの屈曲照射現象を低減して精度良いパターン露光を行う方法を開示している。
【0007】
導電性の端子により帯電を逃がす方法に、従来技術4として「試料帯電除去装置(特開2000−173525号公報)」がある。従来技術4は、端子を遠隔操作により観察・分析・加工領域近傍の少なくとも180度以上の周囲を囲むように接触させ、観察・分析・加工の過程で生じる電荷をアース線を通して逃がすことにより、帯電現象に起因する観察・分析・加工上の支障を排し、高感度・高分解能・高精密作業を実現する装置を開示する。
【0008】
導電性のプローブにより帯電電荷を捕らえる方法に、従来技術5として「微細パターンの測定装置(特開平7−94562号公報)」がある。従来技術5は、電子線による負の帯電を、微細パターンに直接接触させるか又は、微細パターンから30μm離し、5000Vの正の電圧をプローブに与えて帯電電荷をとらえることによりチャージアップ現象を未然に防止する微細パターンの測定装置を開示している。
【0009】
【特許文献1】特開平8−138617号公報
【特許文献2】特開平11−154479号公報
【特許文献3】特開平8−138617号公報
【特許文献4】特開平7−74076号公報
【特許文献5】特開2000−173525号公報
【特許文献6】特開平7−94562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の従来技術は、試料表面に導電性物質を被覆又は接触する方法又は荷電粒子を照射する方法などにより、荷電粒子線を照射時に発生する帯電を除去する。
【0011】
従来技術1または従来技術2で示した帯電防止法では、観察・分析・加工に用いる荷電粒子線に対して、帯電防止に用いる電子又はイオンビームの照射量が一致しないと、帯電を発生する。この際、荷電粒子線の照射位置精度の向上による観察像の解像度向上と、荷電粒子線の照射により発生する2次電子の放出量増大による観察像コントラストの向上を基準にかかる帯電の中和条件を検出する手段により、電子又はイオンビームの照射量を制御する必要がある。さらに、中和条件の検出手段による照射量制御は、操作者の経験を必要とする。
【0012】
さらに、電子又はイオンビームの照射により放出される2次電子は、2次電子検出器に引き込まれる。この時、荷電粒子線により試料表面から放出した2次電子と重なるために、電子又はイオンビームの照射による2次電子は、観察像を著しく劣化する。そこで、電子又はイオンビームの照射による2次電子放出量を抑えるためには照射量の制限が必要となり、試料表面の帯電量が多い時、電子又はイオンビームの照射による帯電防止法は有効ではない。
【0013】
一般に、荷電粒子線の照射により発生する2次電子は、2次イオンに比較して10〜100倍多く放出される。そのため、2次電子信号をもとにした観察像は、2次イオンのものよりも解像度がよい。しかし、帯電を中和するために電子又はイオンビームを照射する場合は、2次電子発生のために、2次電子信号をもとにした観察像は、2次イオンのものより解像度が劣化してしまう。したがって、荷電粒子線装置では2次イオン検出器が広く用いられている。
【0014】
従来技術3で示した帯電防止法では、試料表面に帯電防止膜を作製する。試料表面を覆ってしまうと、荷電粒子線で表面の構造を観察できなくなり、荷電粒子線による観察・分析・加工の位置決定に不都合を生じる。さらに、試料汚染を回避するためには、該試料表面に形成した帯電防止膜は荷電粒子線による観察・分析・加工後に除去しなければならない。
【0015】
従来技術4で示した導電性の端子により帯電を逃がす方法は、観察・分析・加工領域の少なくとも180度以上の周囲を囲むように、端子を遠隔操作により接触させなければならない。該観察・分析・加工領域の180度以上の周囲を囲むように端子を接触させることにより、端子接触の確認が難しくなり、同時に、端子の接触時の位置精度が低下する。さらに、荷電粒子線を照射する観察・分析・加工領域より、広い領域を端子の接触により汚染する。
【0016】
従来技術5で示した導電性のプローブにより帯電電荷を捕らえる方法は、プローブ接触時は、プローブが微細パターンの一部を隠してしまうことにより観察できなくなり、プローブ非接触時は、帯電電子をプローブでとらえるときの強力な電界で観察像が歪んでしまう。
【0017】
帯電防止法を用いずに荷電粒子線を用いて試料作製をする場合、操作者はドリフトする観察像を頼りに、観察・分析・加工をしなければならない。これらの操作や設定を目測で確認するために、帯電防止法を用いない観察・分析・加工は熟練を要する作業であった。この際に、操作者は、加工を失敗すると試料を破壊し、プローブ操作を失敗すると試料破壊又はプローブ先端破損を起こす。
【0018】
これらの方法では、試料に対する汚染低減、導電物質の表面への被覆又は接触の作業軽減、荷電粒子線の試料表面への照射により新たに発生する帯電と、2次電子を用いた観察・分析・加工への端子の影響低減、試料から直接試料片を摘出時の熟練技術の排除などの課題を有する。
【0019】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、試料表面での帯電を抑制するための経験や熟練技能工程を排除した、信頼性の高い帯電中和制御方法を提供し、総合的に分析や試料作製効率の良い荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する手段として、本発明は、荷電粒子線(イオンビーム、電子線、等)を試料に照射した際に発生する帯電を、照射領域に隣接または接触する中和用電極により制御するという新しい知見に基づく方法を提供する。
【0021】
中和用電極と照射領域間が電気的絶縁状態であっても、荷電粒子線の照射をきっかけにして、帯電している照射領域と中和用電極との間に荷電粒子の授受が成立する。この原因は、荷電粒子線の照射により帯電した試料表面から発生する2次粒子を中和用電極に効率良く引き込むことにより、中和用電極と照射領域の間で近接電荷交換が発生する。中和用電極が、照射領域から例えば300μm以内に隣接または接触していると、荷電粒子線の照射をきっかけにして、帯電している照射領域と中和用電極との間に近接電流が流れる。
【0022】
操作者が高精度の観察・分析・加工・プローブ操作をする場合は、中和用電極と照射領域の間隔をさらに近づける必要がある。前記間隔を狭くするにつれて、照射領域との近接電荷交換又は近接電流により帯電電位が低下すると同時に、帯電による照射領域近傍の電界をより狭い空間に閉じ込めることができる。その結果、絶縁物試料表面上で荷電粒子線の照射位置は、前記間隔の約1/50倍の位置精度で制御ができるようになる。同時に、2次粒子検出器での2次粒子の検出量が帯電の影響を受けなくなり、鮮明な観察像を得ることができるようになる。
【0023】
上述した帯電を制御する方法を用いて、高精度な観察・分析・加工・プローブ操作を実現する本発明の帯電中和制御方法及びそれを用いた荷電粒子線装置として代表的な構成例を、以下に挙げる。
【0024】
先ず、帯電中和制御方法として、本発明は、試料台に搭載された試料に荷電粒子源から放出された荷電粒子線を照射して、前記試料の照射領域に発生する帯電を、試料台の表面近くに設置された中和用電極に所定の電圧を印加し、試料とは無接触で、帯電した前記照射領域との間で電荷交換を発生せしめることにより、前記帯電の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、試料台に搭載された試料に荷電粒子源から放出された荷電粒子線を照射して、前記試料の照射領域に発生する帯電を、前記試料台の表面近くに設置された中和用電極に所定の電圧を印加し、前記試料と接触させて、帯電した前記照射領域との間で電流を発生せしめることにより、前記帯電の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする。
【0026】
次に、荷電粒子線装置として、本発明は、荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出される荷電粒子線を集束し偏向せしめるための荷電粒子光学系と、前記荷電粒子線を試料に照射して試料からの2次粒子を検出するための検出器と、前記試料を搭載する試料台とを備えた荷電粒子線装置において、前記試料台の表面に対して移動可能に設けた中和用電極と、前記中和用電極に印加する電圧および前記移動を制御する中和用電極制御装置とを有し、前記荷電粒子線を照射して帯電した前記試料上の照射領域と前記中和用電極との間で電荷交換または電流を発生せしめて、前記帯電を中和制御するよう構成したことを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出する荷電粒子線を集束するレンズと、偏向器と、前記荷電粒子線を試料に照射して2次粒子を検出するための検出器と、前記試料を保持する試料台と、前記試料台の位置を制御する試料位置制御装置とを備えた荷電粒子線装置において、前記試料上の荷電粒子線照射領域と前記レンズとの間にあって前記試料に対し移動可能に設けられ、前記荷電粒子線照射領域との間で電荷交換または電流を発生する第1の電極と、前記第1の電極を制御し、前記試料台位置制御装置とは独立に駆動する電極制御装置と、前記試料台位置制御装置とは独立に駆動し、前記荷電粒子線照射領域との間で電流を発生する第2の電極とを有し、前記第1および前記第2の電極を用いて、帯電した前記荷電粒子線照射領域の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、荷電粒子線装置での帯電防止技術での経験や熟練技能工程を排除して、荷電粒子線とプローブの制御の信頼性を向上し、総合的に分析や試料作製効率の良い荷電粒子線装置を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施例1)
図1は、本発明による荷電粒子線装置の第1の実施例の基本構成を示す。
【0030】
本発明の荷電粒子線装置は、イオン源1から引き出し電極2によりイオンビーム11を引き出し、コンデンサレンズ3によりイオンビームを集束した後、ビーム制限アパーチャー4によりイオンビームを絞り、対物レンズ6により試料8の表面にイオンビーム11を集束する荷電粒子光学系と、試料を載置する可動の試料台7と、2次粒子検出器9と、偏向器5と、制御装置10と、中和用電極20とにより構成される。
【0031】
中和用電極20は、導電性物質の電極で構成される。中和用電極20の先端部は、イオンビームの走査により観察する面内位置測定手段と、この際の対物レンズ6の設定値による高さ位置測定手段により、試料8のイオンビーム照射位置近傍に接近する。
【0032】
イオンビームの試料照射の際に、イオンビームは弾性散乱又は非弾性散乱される。非弾性散乱では試料から2次電子を発生する。2次電子の多くはエネルギーがわずか数eVしかなく、イオンビーム照射領域表面の電位が周囲に対して数V正に帯電すると、低速の2次電子は試料を離脱できず試料にもどる。イオンビーム照射電流と試料から流出する全電流とが等しくなると、試料の表面電位が平衡に達する。
【0033】
図2は、試料の電位分布の偏りにより、イオンビームが矢印の方向にビームドリフトする様子を示す。図中、31は等電位線を示す。イオンビーム11の照射位置や試料8の表面での誘電率分布などの結果、表面電位はイオンビームに対して偏って分布している。帯電した電荷は、試料台に対して絶縁抵抗を介して流出する。この絶縁抵抗は、試料の体積抵抗と表面抵抗に関係すると考えられる。絶縁体では、表面抵抗が体積抵抗より小さくなることが多い。
【0034】
イオンビーム照射領域での正電荷の帯電電位Vcの時間変化dVc/dtは、試料表面の実効的な静電容量C、絶縁抵抗R、ビーム電流Ipとすると、次式で表される。
【0035】
dVc/dt=Ip/C−Vc/RC
図3は、イオンビーム照射量(ビーム電流)10nA、試料表面の実効的な静電容量1nF、および絶縁抵抗5GΩを仮定したときの、イオンビーム照射位置での帯電電位の時間依存性である。時間の経過につれて、帯電電位は増大して約10秒後にはほぼ平衡状態になる。
【0036】
帯電して平衡状態になるのであればイオンビーム成形加工への影響は、ほとんど無い。イオンビーム照射時に表面電位の時間変化が生じると、ビームドリフトが生じる。ビームドリフトは、試料表面の構造や物性値による表面電位分布の偏りにより生じる。例えば、カバーガラス(30mm×20mm厚さ0.1mm)表面に走査イオンビームを照射して、2次粒子を検出する方法により観察像の時間変化を評価したところ、SIM像観察をすると、SIM像の観察領域は繰り返し移動をしていた。イオンビーム照射一定時間後、試料の電位が平衡状態になっていれば、観察領域移動は無いはずである。しかし、実際には観察領域移動を繰り返すことから、放電と帯電の繰り返しにより、試料表面電位に時間変化が生じていると言える。
【0037】
図4は、観察領域移動の振動数のビーム電流依存性を示す。放電の振動数fは、ビーム電流Ipとともに増大する。ビーム電流が増大すると、帯電による振動が増えるにつれてビームドリフトも増大してしまうのである。
【0038】
図5は、中和用電極20によりイオンビーム照射による帯電33を制御する方法を示す回路図である。イオンビーム照射により帯電を生じている試料表面に中和用電極20の先端を近づけることにより、近接電荷交換32をすることができる。中和用電極20の先端は、導電性物質で形成した針状の電極である。中和用電極20による近接電荷交換32で流れる電流は、照射領域から試料表面に水平方向30μm、垂直方向30μmの位置に中和用電極20の先端を固定すると、イオンビームの電流の6割以上になる。
【0039】
中和用電極20は、イオンビーム照射で帯電したプラスの電荷を中和するために常に電子を供給している。図6は、カバーガラスの帯電制御を行ったときの中和用電極20に流れる電流(以下、供給電流)のビーム電流依存性を示す。
【0040】
イオンビーム照射位置から約16μmの位置に中和用電極20の先端を隣接し、ビーム電流を20pA〜8nAの範囲で変更して供給電流を測定した。図中、その測定結果を■印で示す。供給電流Iがビーム電流Ipと等しい時の直線を細線で示した。図6の2本の直線からビーム電流Ipのほとんどは中和用電極20に流れ、その量がビーム電流Ipに比例しており、中和用電極20以外の経路で絶縁抵抗を通して試料から流出する電流も、Ipにほぼ比例していることが確認できた。このとき絶縁抵抗はビーム電流に依存しないようである。
【0041】
図7は、中和用電極先端と試料間の高さを示す。ビーム電流8.0nAを32×32μm領域に照射したときに、中和用電極20の先端は、高さ2μmで照射位置中心から横方向に16μmに設定し、高さ40のみを変更した。中和用電極20の高さを変更する時、制御装置の影響を受けるために、横方向にずれる量は最大で約100μmになる。
【0042】
図8は、中和用電極に流れる電流の高さ依存性測定結果を示す。中和用電極に流れる電流は4.4〜5.1nAの範囲で変化しているが、100μmまで高さ依存が無い。
【0043】
一方、イオンビーム11の照射により試料表面から放出された2次電子の多くは、エネルギーがわずか数eVしかない。この際、帯電と中和用電極20が作る電場により低速の2次電子は試料を離脱できず試料にもどるために、2次粒子検出器9は、試料からの2次電子を検出できなくなってしまう。さらに、イオンビーム11は、中和用電極20と帯電が作る電場によりシフトしてしまう。
【0044】
上記問題を解決するために、中和用電極自身に電圧をかけるための電圧源、先端を細長い導電性針形状とした中和用電極20を備えた。図5に示すように、試料表面が正に帯電している時に、中和用電極20に負の電位を印加すると、帯電領域との電荷交換以外に2次電子34の放出量を増大させる。そこで、中和用電極20は正の電位約+2Vを印加して2次電子の帯電による引き戻しを緩和すると、イオンビーム走査の精度向上と、試料表面から放出された2次電子の2次粒子検出器9での集率向上により、中和用電極20に0Vを印加した場合と比較して、観察像の解像度は2倍に向上した。
【0045】
(実施例2)
図9は、本発明による荷電粒子線装置の第2の実施例の基本構成を示す。本実施例では、メカニカルプローブ21を組み合わせて、数〜サブμmオーダの試料を作製する荷電粒子線装置を構成する。
【0046】
イオン源1から引き出し電極2によりイオンビームを引き出し、コンデンサレンズ3によりイオンビームを集束した後、ビーム制限アパーチャー4によりイオンビームを絞り、対物レンズ6により試料8の表面にイオンビームを集束する荷電粒子光学系と、試料を載置する可動の試料台7と、2次粒子検出器9と、偏向器5と、制御装置10と、中和用電極20と、メカニカルプローブ21とにより構成される。
【0047】
中和用電極20の先端部は、曲率半径が約100μmの導電性針で構成され、試料8の表面に接近させる。中和用電極20をイオンビーム照射領域から試料表面水平方向に約30μm、垂直方向に約30μmの位置に固定する。試料が絶縁物を含むことにより照射領域で正に帯電する場合は、中和用電極20が帯電した照射領域との間で電荷交換をし帯電を抑制する。30μAのイオンビームを走査するときは、2次粒子検出器9の信号から鮮明な観察像を得ることができる。
【0048】
しかし、試料を加工するために10nAのイオンビームを照射すると、帯電が増大することによりイオンビームの照射位置が制御できなくなってしまう。そこで、30μAのイオンビームを走査して観察像をたよりに、試料表面にメカニカルプローブ21の先端を接触させる。このとき、10nAのイオンビームを照射しても、メカニカルプローブ21は帯電した照射領域との間で近接電流が流れ込むことにより帯電を抑制し、イオンビームの照射位置を正確に制御することができる。
【0049】
図10は、絶縁物から高精度分析試料を作製する方法を示す。
【0050】
試料表面にメカニカルプローブ21の先端を接触させた状態で、試料基板51の表面に対しイオンビーム52が直角に照射するように基板51の姿勢を保ち、メカニカルプローブ21に重ならないように基板51上でイオンビーム52を矩形に走査させ、試料表面に所要の深さの角穴53を形成する(図10−a)。この時に、プローブ11に電圧を+1V印加したところ、観察像中の所望の試料位置を鮮明に観察し、成形加工を正確に設定し、高精度に試料片を作製することができた。
【0051】
次に、垂直溝54を形成する(図10−b)。メカニカルプローブ21の先端を基板51から離した後、基板51の表面に対するイオンビーム52の軸が約30°傾斜するように基板51を傾斜させ、傾斜溝55を形成する。基板51の傾斜角の姿勢変更は、試料台によって行われる(図10-c)。再び、基板51の姿勢を表面がイオンビーム52に対して垂直になる状態のままに基板51を設置した後、メカニカルプローブ21の先端を基板51の試料となる部分に接触させる(図10−d)。図9の装置で中和電極20の先端部は、曲率半径が約100μmの導電性針で構成され、中和電極20は同時に堆積性ガスを供給するガスノズルを構成し、試料8の表面に接近させる。ガスノズルから堆積性ガスを供給し、イオンビーム52をメカニカルプローブ21の先端部を含む領域に局所的に照射し、イオンビームアシストデポジション(以下、IBADと略す)膜56を形成する。接触状態にある基板51の分離部分である試料片57とメカニカルプローブ21の先端は、IBAD膜56で接続される(図10−e)。
【0052】
イオンビーム52で残りの部分を切り欠き加工し、基板51から分離試料片57を切り出す。切り出された分離試料片57は、接続されたメカニカルプローブ21で支持された状態になる(図10−f)。分離試料片57をサンプルメッシュ58に移動させる(図10−g)。ガスノズルから堆積性ガスを供給し、イオンビーム52を分離試料片とサンプルメッシュが接触する境界領域に局所的に照射し、IBAD膜59を形成する(図10−h)。イオンビーム52をIBAD膜56に隣接した領域に局所的に照射し、メカニカルプローブ21を分離試料片57から切り離す(図10−i)。この分離試料片57の中の観察領域を、厚さ100nm程度に残すようにイオンビーム52を用いて薄膜化し、透過電子顕微鏡でこの試料はサブnmの分解能で観察・分析をすることができる(図10−j)。
【0053】
(実施例3)
図11は、本発明の荷電粒子線装置の第3の実施例の基本構成を示す。
【0054】
本発明の荷電粒子線装置は、電子源80から引き出し電極81により電子線82を引き出し、コンデンサレンズ83により電子線を集束した後、対物レンズ84により試料85の表面に電子線を集束する荷電粒子光学系は、試料85を載置する可動の試料台86と、2次電子検出器87と、偏向器88と、制御装置89と、中和用電極90とにより構成される。
【0055】
試料85は絶縁物を含むと、電子線82の照射領域に帯電を生じる場合がある。電子線82の照射により試料表面から放出される2次電子の多くは、エネルギーがわずか数eVしかないが、この2次電子が正帯電のときは試料を離脱できず試料にもどり、負帯電のときは加速されるために、2次電子検出器87は、試料85からの2次電子を検出できない。さらに、電子線82は、帯電が作る電場によるシフトのために照射位置を制御することができない。
【0056】
絶縁物試料(SiO)での観察像は、加速電圧2kVの電子線82(700pA)の走査では著しく解像度が低下していた。この理由は、照射領域の負帯電である。
【0057】
図12は、中和用電極90と帯電した照射領域間の電荷交換により流れる電流を示す。この際、照射領域3×3μmから水平方向に9μmに離して、中和用電極90の先端を垂直方向に距離0〜約360μmに移動した。この際に、試料の絶縁物表面に接触させると、中和用電極90と帯電した照射領域の間で約200pAの電流が流れた。中和用電極90に100pA以上の電流が流れる場合、観察像の解像度は1nmに達していた。
【0058】
さらに、中和用電極90に+5Vの電圧を印加すると、中和用電極90の先端が試料面の位置で500pA、垂直方向に距離360μmの位置で約300pAの電流が流れた。照射領域が負帯電した時に、正の電圧を印加した場合、電子線82の照射により試料表面から放出された2次電子を中和用電極がとり込む。その結果、2次電子検出器87は、この2次電子を検出できないために観察像のS/Nが低下する。中和用電極90が2次電子のとり込みと加速を回避するためには、中和用電極90に0Vから−5Vの負電圧を印加すればよかった。これにより、観察像のS/Nが改善し、解像度は1nmに達していた。
【0059】
(実施例4)
図13は、実施例1、実施例2および実施例3において、試料8の表面が試料台7に対して平行ではない場合の帯電制御方法を示す。この場合、試料台7を右方向に移動すると、中和用電極20の先端が試料表面に干渉する。中和用電極20の先端は試料8との衝突により破壊されたり、試料8の表面は中和用電極20の衝突により破壊される。この干渉を回避しなければ、中和用電極20による帯電制御は有効に働かない。そこで、試料8の照射領域と中和用電極20の間での電荷交換と干渉を両立する方法について、以下に示す。
【0060】
まず、試料8の照射領域と中和用電極20の間での電荷交換と干渉を両立する方法の第1の例を、図13に示す。荷電粒子線を照射する前に、試料8の表面全体の高さ分布を制御装置10の記録部61に記録する。例えば、中和用電極20の先端距離62を100μmにする場合は、高さ分布の精度は、±50μmを必要とする。先端距離62を短くするためには、高さ分布の精度をよくしなければならない。試料台7を移動するときに発生する高さ変化を記録部61で計算し、変化分だけ中和用電極20を移動させることにより、先端距離62を一定にする。例えば、先端距離62が100μmの場合は、荷電粒子線の照射領域は100×100μmであり、観察精度は1μmになる。観察精度を向上するためには、先端距離62を短く設定して中和用電極20による帯電制御をする必要があった。
【0061】
試料8の照射領域と中和用電極20の間での電荷交換と干渉を両立する方法の第2の例を、図14に示す。前述の例とは異なり、2つ目の方法は、帯電制御中に照射領域と中和用電極20間に流れる電流を電流計63により測定する。該電流は、先端距離62に依存する。試料8に近づき先端距離62が短くなると、中和用電極20に流れる電流は増大する。そこで、試料を移動する途中あるいは移動後に、中和用電極20の先端が試料表面と干渉しないように該電流をモニタし計算部64により先端距離62を算出し、先端距離62を一定になるように中和用電極20を制御値する。例えば、先端距離62が1μmの場合は、荷電粒子線の照射領域は1×1μmであり、観察精度は10nmになる。観察精度を向上するためには、先端距離62を短くするかまたは、照射領域の周辺に接触する方法により中和用電極20による帯電制御をする必要があった。
【0062】
試料8の照射領域と中和用電極20の間での電荷交換と干渉を両立する方法の第3の例を、図15に示す。前述の2つの例とは異なり、3つ目の方法は、対物レンズ6の設定値を利用するものである。中和用電極20が退避位置(例えば先端距離62が100μm)にあるときに対物レンズ6の設定値を変化させて試料8の表面に荷電粒子線の集束点を合わせる。この際、制御装置10は、この対物レンズ6の設定値の変化量より、計算部65にて先端距離62を算出し、中和用電極20を試料表面に近づける。対物レンズ6の設定値による先端距離62の制御精度は30μmであった。
【0063】
試料8の照射領域と中和用電極20の間での電荷交換と干渉を両立する方法の第4の例を、図16に示す。中和用電極20は、荷電粒子線の照射角度に対して20〜80度の方向に1軸可動機構を保持する。制御装置10は、荷電粒子線の走査範囲を偏向器5に設定すると同時に、走査範囲に対応した先端距離62を計算部65で算出して、中和用電極を制御する。例えば、先端距離62を30μmに設定した場合、走査範囲を30×30μmでは観察精度は0.3μmであり、加工精度は0.5μmであった。
【0064】
走査範囲を狭くして高精度な観察、さらに観察像を参照しながら高精度な加工をする場合は、走査範囲を変更する際に、観察と加工の精度を向上するために自動的に先端距離62を短くする。例えば、先端距離62を1μmにした場合、試料8を移動すると中和用電極20と試料8が干渉してしまうので、試料台7で試料8を移動できる範囲を横方向に10μm以下に設定した。
【0065】
本手法は、図13、図14及び図15で示した試料8の照射領域と中和用電極20の間での電荷交換と干渉を両立する方法と組合わせることができる。走査範囲が狭い(例えば30×30μmよりも狭い)場合、図16で示す方法で中和用電極20を制御し、走査範囲が広い場合、図13、図14及び図15で示す方法で中和用電極20を制御する。これにより、飛躍的に荷電粒子線の観察・加工の精度が向上した。
【0066】
図17は、従来技術2を示す(a)と、本発明の実施例を示す(b)とを比較する説明図である。従来技術2の「特開平8−138617号公報」では、イオンビームが試料の絶縁層に照射されると、試料表面の照射領域付近に非常に薄い導電層70を形成し、この導電層に接触させたプローブ71を通してチャージをアースに流してチャージアップを回避する方法を開示している。
【0067】
この方法では、イオンビームの照射領域がプローブの先端半径に比較して狭い時にイオンビームで形成した導電層に直接接触すると、(a)に示すように、プローブ71はイオンビーム11の照射領域に重なる。しかし、本実施例では、(b)に示すように、直接導電層70に接触する必要が無く、プローブ(中和用電極20)はイオンビームの照射領域に重なることはない。
【0068】
以上のように、本発明になる荷電粒子線装置によれば、帯電を該試料の表面に隣接又は接触した中和用電極で制御することにより、高精度に荷電粒子線を制御し、その結果、試料表面での帯電を抑制するための経験や熟練技能工程の排除と、2次イオン検出器と電子銃又はイオン銃を排除により、帯電制御技術の信頼性の向上、装置価格の低減、高精度な観察・分析・加工・プローブ操作を実現し得る。
【0069】
以上、本発明を整理すると、次のようになる。
(1)試料台に搭載された試料に荷電粒子源から放出された荷電粒子線を照射して、前記試料の照射領域に発生する帯電を、前記試料台の表面近くに設置された中和用電極に所定の電圧を印加し、前記試料とは無接触で帯電した前記照射領域との間で電荷交換を発生せしめることにより、前記帯電の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする帯電中和制御方法。
(2)試料台に搭載された試料に荷電粒子源から放出された荷電粒子線を照射して、前記試料の照射領域に発生する帯電を、前記試料台の表面近くに設置された中和用電極に所定の電圧を印加し、前記試料とは接触させて帯電した前記照射領域との間で電流を発生せしめることにより、前記帯電の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする帯電中和制御方法。
(3)前記(1)または(2)の構成において、前記荷電粒子線により前記試料の表面を観察することにより、前記中和用電極を前記照射領域の近傍に接触させ、前記帯電の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする帯電中和制御方法。
(4)前記(1)または(2)の構成において、前記中和用電極を前記試料の表面に対して移動可能に構成したことを特徴とする帯電中和制御方法。
(5)前記(1)または(2)の構成において、前記中和用電極に、−5Vから+5Vの電圧を印加してなることを特徴とする帯電中和制御方法。
(6)前記(1)または(2)または(3)の構成において、前記試料が、絶縁物を含むことを特徴とする帯電中和制御方法。
(7)試料台に搭載された絶縁物を含む試料に荷電粒子源から放出された荷電粒子線を照射して、前記試料の照射領域に発生する帯電を、前記試料台の表面近くに設置された中和用電極に所定の電圧を印加し、前記試料とは無接触で、前記帯電の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする帯電中和制御方法。
(8)荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出される荷電粒子線を集束し偏向せしめるための荷電粒子光学系と、前記荷電粒子線を試料に照射して試料からの2次粒子を検出するための検出器と、前記試料を搭載する試料台とを備えた荷電粒子線装置において、前記試料台の表面に対して移動可能に設けた中和用電極と、前記中和用電極に印加する電圧および前記移動を制御する中和用電極制御装置とを有し、前記荷電粒子線を照射して帯電した前記試料上の照射領域と前記中和用電極との間で電荷交換または電流を発生せしめて、前記帯電を中和制御するよう構成したことを特徴とする荷電粒子線装置。
(9)前記(8)の構成において、前記中和用電極が、前記荷電粒子光学系と前記試料台との間にあって、前記試料台の表面に対して移動可能に設けてなることを特徴とする荷電粒子線装置。
(10)前記(8)の構成において、前記中和用電極は、導電性物質を曲率100μm以下の先端を有する針状に成形された電極で構成されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
(11)前記(8)の構成において、前記中和用電極に、−5Vから+5Vの電圧を印加してなることを特徴とする荷電粒子線装置。
(12)前記(8)の構成において、前記中和用電極制御装置が、前記帯電の中和制御中に前記照射領域と前記中和用電極との間に流れる電流の変化から、前記中和用電極の位置又は電圧の制御値を計算する計算部を具備することを特徴とする荷電粒子線装置。
(13)前記(8)の構成において、前記中和用電極制御装置が、前記レンズ又は前記偏向器の設定値より、前記中和用電極と前記試料間の距離又は電圧を計算する計算部を具備することを特徴とする荷電粒子線装置。
(14)荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出する荷電粒子線を集束するレンズと、偏向器と、前記荷電粒子線を試料に照射して2次粒子を検出するための検出器と、前記試料を保持する試料台と、前記試料台の位置を制御する試料位置制御装置とを備えた荷電粒子線装置において、前記試料上の荷電粒子線照射領域と前記レンズとの間にあって前記試料に対し移動可能に設けられ、前記荷電粒子線照射領域との間で電荷交換または電流を発生する第1の電極(例えば、中和用電極)と、前記第1の電極を制御し、前記試料台位置制御装置とは独立に駆動する電極制御装置と、前記試料台位置制御装置とは独立に駆動し、前記荷電粒子線照射領域との間で電流を発生する第2の電極(例えば、メカニカルプローブ)とを有し、前記第1および前記第2の電極を用いて、帯電した前記荷電粒子線照射領域の中和制御を行なうよう構成したことを特徴とする荷電粒子線装置。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による荷電粒子線装置の第1の実施例を示す図。
【図2】イオンビーム照射時の試料帯電とビームドリフトを示す図。
【図3】試料表面の帯電電位のイオンビーム照射時間依存性を示す図。
【図4】帯電振動によるビーム振動周期のビーム電流依存性を示す図。
【図5】中和用電極により帯電を制御する方法を示す回路図。
【図6】中和用電極に流れる電流の照射電流依存性を示す図。
【図7】中和用電極先端と試料間の高さを示す図。
【図8】イオンビームでの中和用電極に流れる電流の先端高さ依存性を示す図。
【図9】本発明による荷電粒子線装置の第2の実施例を説明する図。
【図10】絶縁物から高精度分析試料を作製する方法を示す図。
【図11】本発明による荷電粒子線装置の第3の実施例を説明する図。
【図12】電子線での中和用電極に流れる電流の先端高さ依存性を示す図。
【図13】試料高さ記録部による中和用電極の制御方法を示す図。
【図14】中和用電極に流れる電流による中和用電極の制御方法を示す図。
【図15】対物レンズの設定値による中和用電極の制御方法を示す図。
【図16】偏向器の設定値による中和用電極の制御方法を示す図。
【図17】従来技術2と本発明の実施例とを比較する説明図。
【符号の説明】
【0071】
1…イオン源、2…引き出し電極、3…コンデンサレンズ、4…ビーム制限絞り、5…偏向器、6…対物レンズ、7…試料位置制御装置、8…試料、9…2次粒子検出器、10…制御装置、11…イオンビーム、20…中和用電極、21…メカニカルプローブ、31…等電位線、32…近接電荷交換、33…帯電、34…2次電子、35…リーク電流、40…中和用電極と試料間の高さ、50…保護膜、51…基板、52…イオンビーム、53…角穴、54…底穴、55…溝、56…IBAD膜、57…試料片、58…サンプルメッシュ、59…IBAD膜、60…薄膜、61…計算部、62…先端距離、63…電流計、64…計算部、65…計算部、70…導電層、71…プローブ、80…電子源、81…引き出し電極、82…電子線、83…コンデンサレンズ、84…対物レンズ、85…試料、86…試料台、87…2次電子検出器、88…偏向器、89…制御装置、90…中和用電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源と、前記イオン源から放出されるイオンビームを集束し偏向せしめるためのイオンビーム照射光学系と、前記イオンビームを試料に照射して該試料からの2次粒子を検出する検出器と、前記試料を搭載する試料片台と、前記試料に前記イオンビームを照射して加工された試料片を摘出するプロープと、該プローブに印加する電圧及び位置を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記プローブを前記試料を加工する前に接触させ、前記イオンビームにより前記試料から前記試料片を作製する途中で前記プローブに所定の電圧を印加し、
該所定の電圧を印加した後に前記プローブを試料片上に移動させるように制御することを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンビーム装置において、
前記試料片と前記プローブの近傍に堆積ガスを供給するガス供給手段を備えることを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイオンビーム装置において、
前記ガス供給手段は、ガスノズルを備え、
前記ガスノズルに対して電圧を供給する電圧供給手段を有することを特徴とするイオンビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−4569(P2008−4569A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249310(P2007−249310)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【分割の表示】特願2001−349723(P2001−349723)の分割
【原出願日】平成13年11月15日(2001.11.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】