説明

帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート及び包装用成形体

【課題】 良好な寸法精度を有し、輸送中の振動又は落下等の衝撃に対する耐衝撃強度に優れ且つ優れた帯電防止性を有し、特に重量の大きな電子部品等の包装用成形体及びその基材となる発泡シートを提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂発泡層(A)の少なくとも片面に、帯電防止剤を配合した未発泡のポリプロピレン系樹脂層(B)を有した積層発泡シートで、比較的低発泡で且つデュポン衝撃強度が0.6J以上であり、更に表面抵抗率が1012Ω/□未満である帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。発泡層としては高溶融張力のポリプロピレン系樹脂を主成分としたもので気泡径を調整し、未発泡層と共押出法により積層するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリプロピレン系樹脂積層発泡シート及びそのシートを熱成形した包装用成形体に関する。更に詳しくは、緩衝性及び帯電防止性に優れ、特に電子部品の包装体として優れた保護性能を有する発泡容器等の成形体及びその基材となるポリプロピレン系樹脂積層発泡シートに関する。尚、本発明で「部」等の組成を表す単位は、特にことわらない限り樹脂成分の合計を100部としたときの質量基準で表す。
【0002】
【従来の技術】電子部品等を包装する際、振動や衝撃などから製品の損傷を防ぐため、緩衝性を備えるポリプロピレン系樹脂等の発泡体が使用されていて、中でもポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱成形した容器等の包装体は、ポリプロピレン系樹脂が耐熱性や耐溶剤性に優れていることや、そのシートを熱成形して複雑な形状を比較的容易に得られることから、前記の電子部品の包装体に適している。
【0003】しかし、通常のポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱成形した成形体では、大型の液晶パネルのような重量が大きい製品の包装体として用いると、搬送時の落下等により外部から衝撃が加わった時に、緩衝性は優れているので、内容物の保護機能を有するものの、成形体の耐衝撃強度が十分でなく、該成形体自体が割れてしまうという問題点があった。このような割れの問題を解消する方法としては、一般的には発泡倍率を高くした低密度で、比較的厚みの大きな成形体とすることが行われているが、この方法では、発泡シートを熱成形して包装用成形体にする際に、発泡シートの賦形性が悪く、所望の形状を有する成形体を得ることが困難となり、高い寸法精度が要求される電子部品等の包装には適さない。
【0004】一方で発泡倍率の低い包装用成形体では、寸法精度は比較的良好であるが、前記のように耐緩衝強度が十分でなく、特に重量の大きな電子部品の包装用としては、より高い耐衝撃性を有する発泡シートが求められていた。
【0005】また、ポリプロピレン系樹脂発泡シート及び熱成形した容器のようなプラスチックの発泡体は絶縁体であることから帯電性が高く、電子部品に対して静電気によりその機能を喪失させる問題が起きる。また、包装体表面に静電気が帯電すると、塵埃が付着し包装体として不適となるという問題点もある。
【0006】このような問題を解決するために、発泡シート及び熱成形した包装体の表面抵抗値を低減して帯電防止性を付与する方法が知られており、発泡シートの成形時にカーボンを混合することや、発泡体表面に帯電防止剤を塗布することが行われている。しかし、前者の方法では、発泡体表面の脆性が高くなり、電子部品等の内容物を収納して輸送する際の振動等で、発泡体と内容物の摩擦により発泡体自身やカーボンの粉が発生して、内容物に付着して電気的障害が起こす問題があり、又後者の方法では、輸送時に塗布された帯電防止剤が電子部品等の内容物に移行して、内容物を汚染するといった問題があり、これらの問題を改善した包装体が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、輸送中の振動又は落下等の衝撃に対する耐衝撃強度に優れ、且つ優れた帯電防止性を有し、表面平滑性及び寸法精度が良好で内容物等との摩擦による静電気のトラブルを防止する機能を有した、電子部品等の包装用成形体及びその基材となる発泡シートを提供することであり、特に重量の大きな電子部品の包装に適した発泡包装体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題の解決手段を鋭意検討した結果、大型の電子部品等の重量が大きい内容物の輸送用の包装体としては、単に帯電防止性能を持つ包装体の緩衝性を向上させただけでは不十分で、緩衝性に加えて衝撃が加わった時に、包装体自体の変形を最小限に抑えるだけの強度を持つことが必要であり、その手段として比較的低発泡倍率の発泡層と帯電防止性を有する非発泡層を積層することが有効であることを見出し本発明に至った。
【0009】即ち、ポリプロピレン系樹脂発泡層(A)の少なくとも片面に、帯電防止剤を配合してなる未発泡のポリプロピレン系樹脂層(B)を有した積層シートであって、該積層発泡シートの密度が180kgm-3以上850kgm-3未満であり且つデュポン衝撃強度が0.6J以上であり、更に表面抵抗率が1012Ω/□未満である帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートであり、該積層発泡シートは、共押出法により製造されたものが好ましい。又該積層発泡シートは、下記の1から4のいずれか一以上の要件を具備することが好ましい。
1.ポリプロピレン系樹脂発泡層が200℃における溶融張力が4.0g以上である高溶融張力ポリプロピレン系樹脂100〜60部と、直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂40〜0部を含有してなる。
2.帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの平均気泡径が押出し方向で300μm以下、押出し方向と直角方向で200μm以下、厚み方向で100μm以下である。
3.シート厚みが0.5mm以上2.5mm未満である。又、一方で本発明は、前記のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートからなる包装用成形体である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の積層発泡シートは、ポリプロピレン系樹脂発泡層(A)と帯電防止性の未発泡のポリプロピレン系樹脂層(B)から構成されるポリプロピレン系樹脂積層発泡シート(以下単に「積層発泡シート」と略す)である。本発明の積層発泡シートの一例の断面図を図1に示す。
【0011】本発明で、ポリプロピレン系樹脂発泡層(A)(以下単に「発泡層(A)」と略す)に用いるポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンモノマーを主成分として重合してなる単独重合体又は共重合体である。例えばプロピレン系単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、及びプロピレン−エチレン−ジエン共重合体等のポリプロピレンを主とする重合体等であり、好ましくは、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂単独もしくは、該樹脂を60部以上、直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂を40部以下含有する樹脂組成物である。
【0012】本発明でいう高溶融張力ポリプロピレン系樹脂とは、200℃における溶融張力が4.0g以上であるポリプロピレン系樹脂であって、メルトインデックス(MI)が10g/10分以下であることが好ましい。200℃のおける溶融張力が4.0g未満であると、発泡シートの製膜時に気泡の連通化及び発泡ガスの逸散が起こり良好な発泡シートを得ることが困難になることがある。また、メルトインデックス(MI)が10g/10分未満の場合も、同様の理由により発泡シートの製膜が困難になることがある。又、前記のように、このような問題を生じない範囲で、前記の他のポリプロピレン系樹脂を混合することができ、特に直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂は、気泡の連続化や発泡ガスの逸散が起こりにくく、好ましくは40部以下、更に好ましくは30部以下の範囲で混合できる。この直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂が40部を越えると、発泡シートの発泡セルが肥大化し外観が不良になる可能性があり、又この発泡シートを熱成形する際のいわゆるドローダウンも大きくなることがあり好ましくない。
【0013】直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂は市販されているものを使用することができるが、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂と同様に、メルトインデックス(MI)が10g/10分以下のものが好ましい。
【0014】本発明は、前記のように発泡層(A)の少なくとも片面に未発泡のポリプロピレン系樹脂層(B)(以下「未発泡層(B)」と略す)を有した積層シートであり、本発明の目的は片面に積層したものでも達成できるが、耐衝撃強度や、静電気トラブルの抑制という観点からは両面に積層したものが好ましい。この未発泡層に用いる樹脂としては、一般にポリプロピレンとして市販されているものを使用することができ、メルトインデックス(MI)が10g/10分以下のものが好ましい。例えばプロピレン系単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、さらにこれらの重合体が挙げられ、その中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム重合体、及びポリプロピレン成分及びプロピレン−エチレンランダム共重合体を含むブロック共重合体が好ましい。又、ポリプロピレン系樹脂を主成分として、少量であれば混和性の良好な他の樹脂を混合したものでも差し支えなく、このような樹脂の例としてポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等がある。
【0015】未発泡層(B)は、前記の樹脂に帯電防止剤を添加して形成される。この帯電防止剤としては、四級アンモニウム塩、脂肪酸多価アルコールエステル、ポリオキシエチレン付加物やポリエ−テルエステルアミド樹脂等が挙げられるが特に限定されるものではない。本発明においては、帯電防止剤の添加量は、後述する表面抵抗値によって規定されるが、一般的にはポリプロピレン系樹脂層(B)の樹脂成分に対して1.0〜4.0部である。1部未満では十分な表面抵抗値が得にくい場合があり、4.0部より多いと内容物の表面を汚染する可能性がある。又帯電防止剤は、未発泡層(B)にのみ添加すればいいので、本発明においては添加量が少なくて十分な効果が得られる。
【0016】本発明の積層発泡シートの密度は180kgm-3以上850kgm-3未満である。密度が180kgm-3より低い場合、発泡シートの熱成形時の所望の形状の成形型への賦形性が低下し、成形体の寸法精度が低下する。また、発泡セルの独立気泡率が低下し、容器等の包装体を成形した場合に成形体の表面外観性が低下する。密度が850kgm-3以上であると緩衝性及び軽量性が低下する。
【0017】本発明の積層発泡シートは、デュポン衝撃強度が0.6J以上であることが重要である。本発明でいうデュポン衝撃強度とは、JISで記載されているK−7211試験法に基づき、1/2インチ半球状衝撃新、荷重200g、環境温度23℃において測定した50%衝撃破壊エネルギー値である。積層発泡シートのデュポン衝撃強度が0.6J未満であると、シートを熱成形した容器等の成形体を電子部品の包装体として用いた場合に、搬送時の落下等により外部から衝撃が加わった時に包装体の割れが発生してしまい、特に大型の液晶パネルの搬送用として使用する場合には0.6J以上のデュポン衝撃強度を有する発泡シートでないと包装材料としての機能が不十分である。
【0018】デュポン衝撃強度は、発泡層(A)に未発泡層(B)を積層することで著しく向上し、未発泡層(B)に用いるポリプロピレン系樹脂の種類や、その厚さに大きく依存する。従って未発泡層(B)の層厚は、デュポン衝撃強度を0.6J以上になるように設定することが重要であるが、一般的には30μm以上が望ましい。
【0019】一方で、本発明の積層発泡シートの表面抵抗値は1012Ω/□未満である。表面抵抗値が1012Ω/□以上となると、発泡体表面の帯電により静電気が発生し、塵埃が付着することにより電子部品の包装体として不適となる。さらに帯電した静電気によって、これら部品や機器がその機能を喪失するという事態が起きてしまう。
【0020】本発明の積層発泡シートは、前記のポリプロピレン系樹脂と発泡剤からなる樹脂組成物と、帯電防止剤を配合してなるポリプロピレン系樹脂の樹脂組成物を共押出成形する方法により効率良く製造することができる。各種の樹脂成分及び帯電防止剤の混合方法は特に限定されないが、積層発泡シート成形時に押出機へ攪拌混合した原料を直接投入する方法、または攪拌混合した原料を単軸または二軸押出機にて溶融混合してペレット化し、発泡押出時に使用する方法等を用いることができる。
【0021】発泡剤としては化学発泡剤と物理発泡剤がある。化学発泡剤としては、重曹とクエン酸の混合物が好適に用いられ、発生する発泡ガスは炭酸ガスである。化学発泡剤の添加方法は特に限定されず、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂と直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂の樹脂組成物にドライブレンドする方法や、押出機のホッパー中で定量フィーダーを使用して添加する方法、或いはポリプロピレン系樹脂やポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂をベースとするマスターバッチを作成し添加する方法等を用いることができる。化学発泡剤の添加量は所望の発泡倍率を得られる範囲でありその具体的な量は発泡剤の種類によっても異なるが、樹脂成分100部に対して、0.1〜3.0部添加することが好ましい。添加量が0.1部未満では所望の発泡倍率を得ることが出来ず、3.0部を超えて添加した場合は、押出機中における発泡剤の均一分散及び十分な分解が進行せず、良好な発泡剤を得ることが出来ない場合がある。
【0022】物理発泡剤としては炭酸ガス、ブタン等が例示されるが、安全性の面で炭酸ガスが好適に用いられる。物理発泡剤の添加方法としては、二軸押出機の中央ゾーンまたはタンデム押出機の1段目押出機の中央ゾーンに供給する方法等が挙げられる。物理発泡剤の添加量は所望の発泡倍率を得られる範囲であり、1.2〜3.0部であることが好ましい。添加量が1.2部未満では所望の発泡倍率を得ることが出来ず、3.0部を超えて添加した場合は、独立気泡率が低下する場合がある。
【0023】該積層発泡シートを製造する際に、発泡層(A)及び未発泡層(B)には、物性を阻害しない範囲で、所望の気泡調整剤、架橋剤、発泡助剤、充填剤、安定剤、酸化防止剤、顔量等を混合することができる。
【0024】又、本発明の積層発泡シートの製造方法としては、公知の発泡成形方法及び通常の複数の押出成形機でフィードブロック法またはマルチマニホールド法を用いた共押出成形方法を適用することが出来る。
【0025】本発明の積層発泡シートの押出し方向の平均気泡径は好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下で、更に好ましくは200μm以下であり、押出し方向と直角方向の平均気泡径はこのましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下であり、厚み方向の平均気泡径は好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。気泡径が大きくなると、シート中の気泡がつながってしまういわゆる連続気泡化が起こり、連続気泡の割合が大きくなるとシートの外観が悪くなり好ましくない。
【0026】該積層発泡シートの厚みは、0.5mm以上2.5mm未満であることが好ましく、より好ましくは0.8mm以上2.0mm未満、更に好ましいのは1.0mm以上1.8mm未満である。厚みが薄いと、得られる発泡シートの剛性が低下し、厚いと熱成形の際の予備加熱時間が長くなり生産性が低下する。
【0027】本発明の積層発泡シートは、熱成形して成形体とし、特に電子部品の包装用のトレー、コンテナ及びその他の容器、もしくは支持枠等の包装体として好適に用いることができる。熱成形とは、一般的に言われているような成形シートを加熱軟化させて、軟らかい間に外力を加えて成形する方法である。熱成形には外力として空気を用いる方法として真空成形と圧空成形の二通りがある。またシートの加熱方法としてヒーターによる間接加熱方法と熱板にシートを接触させて加熱させる直接加熱方法と熱風により加熱する方法がある。また、成形型の凹凸の組み合わせやプラグ使用など、補助エアーの使用など多くの成形方法が知られている。例えば、ストレート真空成形、ストレート圧空成形、ドレープ真空成形、ドレープ圧空成形、プラグアシスト成形、ドレープアンドプラグアシスト成形、プラグアシスト圧空成形、プラグアシストリバースドロー成形、エアクション成形、プラグアシストエアストリップ成形、マッチモールド(プレス)成形などがあげられ、それらのいずれの方法を用いても良い。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0029】以下の実施例及び比較例において用いた測定方法は下記の方法にて行った。
【0030】(シート密度) ミラージュ貿易社製電子比重計(MD−200S)にて測定した。
【0031】(デュポン衝撃強度) 東洋精機社製デュポン衝撃試験機にて1/2インチ半球状衝撃芯、荷重200g、環境温度23℃において測定した。結果はJIS−K7211の50%衝撃破壊エネルギー値(単位:J)で結果を表示した。
【0032】(表面抵抗率) 三菱化学社製ハイレスタ−UP(MCP−HT450,JボックスUタイプ)を使用し、印加電圧500V、測定時間60秒、環境温度23℃、環境湿度55%にて測定を行った。
【0033】(気泡径) シート表面及び断面方向から拡大顕微鏡にて観察し、50個の気泡径の押出し方向(MD)および押出し方向と直角方向(TD)の平均値から平均気泡径を求めた。
【0034】(実用落下試験) 発泡シートを真空成形機にて図2、図3に示す形状(縦400mm、横300mm、深さ45mm)のトレーに成形し、その中に300mm×200mm×厚さ10mm、重量700gの金属板を入れ、それを10段重ねた状態で段ボールに入れた。トレイ10段を詰めた段ボール箱を、高さ900mmから段ボールの1角及び稜角3箇所、更に6面を一回ずつ落としトレイの破損状態を評価した。評価基準:○=破損なし、×破損有り。
【0035】(実施例1〜4、比較例1〜2)表1に示す基材発泡層及び表皮層の配合組成物を、各々東芝機械社製90mm単軸押出機(L/D=34)とプラコー社製40mm単軸押出機にて同時に押出、それぞれの溶融樹脂を三和精工社製2種3層フィードブロックにて合流させ、750mm巾Tダイスより押出を行い、シート厚み1.0mmの各発泡シートを製膜した。得られた積層発泡シートの各層の構成比及びシート密度の測定結果を表1に示す。なお、表1中の200℃における溶融張力の測定方法は、東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、装置のバレル内にてポリプロピレンを200℃で5分間加熱して溶融し、溶融したポリプロピレンを直径2.095mm、長さ8mm、L/D=3.8のキャピラリーから15mm/分の速度で大気中に押出してストランドとし、このストランドを2.0m/分の速度で引き取る際の張力を測定した値である。
【0036】
【表1】


【0037】高溶融張力PP:MI=3.0g/分結晶性PP:MI=4.0g/分発泡剤CF:重曹・クエン酸系の化学発泡剤帯電防止剤:花王社製TS−3BMI:230℃測定値(JIS−K6758法)
【0038】表2に各積層発泡シートのデュポン衝撃強度、表面抵抗率、気泡径、実用落下試験の測定結果を示す。
【0039】
【表2】


【0040】各実施例の積層発泡シートは、衝撃強度に優れ、シート表面の表面抵抗率が低いことから静電気の発生を防止することができ、実用落下試験における積層発泡シート成形品の破損がみられないことから、電子部品等の梱包剤として優れた性能を有している。
【0041】
【発明の効果】本発明の帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを熱成形した包装体は、衝撃強度が高く、表面の帯電防止性に優れ、特に電子部品の包装体として使用した際に、外部からの衝撃による破壊および静電気の発生による電気的な障害からの電子部品の保護性能に優れ、表面外観が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の一例のトレーの断面図である。
【図3】 本発明の一例のトレーの平面図である。
【符号の説明】
1. 発泡層
2. 帯電防止性未発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリプロピレン系樹脂発泡層(A)の少なくとも片面に、帯電防止剤を配合してなる未発泡のポリプロピレン系樹脂層(B)を有した積層発泡シートであって、該積層発泡シートの密度が180kgm-3以上850kgm-3未満であり、且つデュポン衝撃強度が0.6J以上であり、更に表面抵抗率が1012Ω/□未満である帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項2】 共押出法によりポリプロピレン系樹脂発泡層(A)と未発泡のポリプロピレン系樹脂層(B)を積層した請求項1に記載の帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】 下記の1から4のいずれか一以上の要件を具備する請求項1又は請求項2に記載の帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。1.ポリプロピレン系樹脂発泡層が200℃における溶融張力が4.0g以上である高溶融張力ポリプロピレン系樹脂100〜60部と、直鎖状の結晶性ポリプロピレン系樹脂40〜0部を含有してなる。2.帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの平均気泡径が押出し方向で300μm以下、押出し方向と直角方向で200μm以下、厚み方向で100μm以下である。3.シート厚みが0.5mm以上2.5mm未満である。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートからなる包装用成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−251769(P2003−251769A)
【公開日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−57017(P2002−57017)
【出願日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】