説明

帯電防止性粘着剤組成物、粘着剤層、粘着シート、表面保護フィルム及び偏光板

【課題】粘着性の調整が容易であるとともに、ブリードアウトにより被着体を汚染したり、粘着性能が湿度の影響を受けることがなく、帯電防止性の安定性に優れる粘着性層を形成することができる帯電防止性粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】M−N(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している)一般式で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする複素環含有芳香族ポリマー、及び、粘着樹脂を含有する帯電防止性粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性粘着剤組成物、この帯電防止性粘着剤組成物を架橋して得られた粘着剤層、並びに、この粘着剤層を備えた粘着シート、表面保護フィルム及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ用の製造に使用される光拡散シート、レンズフィルムや偏光板などに代表される各種光学フィルムやシートのような光学部品、又は、これら光学部品の表面保護フィルムは、粘着剤層を介して被着部材に積層される。
例えば、偏光板の表面保護フィルムは、液晶パネル等の組み込みが完了した後に、表面保護の役割を終え、剥離除去される。しかし、一般的にこのような表面保護フィルムに使用されるPETフィルムは絶縁性が高く帯電しやすく、埃の付着を招いたり、また、表面保護フィルムの剥離時にさらなる静電気が発生(所謂剥離帯電)して、TFT素子などの電子回路を破壊する原因となるなどの問題があった。
【0003】
そこで、表面保護フィルムに帯電防止性を付与するために、表面保護フィルムを構成する基材フィルムと粘着剤層との間や、基材フィルムの粘着剤層が積層された側と反対側の面に、帯電防止性能を有する層を設けることが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、このような構成の表面保護フィルムでは、該帯電防止性能を有する層と粘着剤層とを別々に設ける必要があり、製造工程が複雑になり、生産性が悪いとの問題があった。
【0004】
そこで、粘着剤層そのものに帯電防止性を付与することが提案されている。
具体的には、帯電防止性能を有する樹脂を用いて粘着剤層を構成する方法(例えば、特許文献3参照)、帯電防止剤を粘着剤組成物に含有(練り込みなど)させ、粘着剤層を形成する方法(例えば、特許文献4、5参照)、これらを組み合わせた方法(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−325538号公報、
【特許文献2】特開平11−256116号公報
【特許文献3】特開2007−217660号公報
【特許文献4】特開2005−290357号公報
【特許文献5】特開2006−152235号公報
【特許文献6】特開2010−070678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、帯電防止性能を有する樹脂を用いて粘着剤層を構成する場合、粘着剤層に付与される帯電防止性能が不十分であった。
また、帯電防止剤を粘着剤組成物に含有させる場合は、帯電防止剤としては、各種界面活性剤、イオン液体や金属粉、カーボンブラック等の導電性粉末が使用されることとなる。しかし、界面活性剤やイオン液体を用いた場合は、これらのブリードアウトにより被着体が汚染されたり、帯電防止性能が湿度の影響を受けやすい傾向にあり、安定した帯電防止性能を確保することができないことがあった。また。金属粉やカーボンブラックを用いた場合は、表面保護フィルムの透明性が低下したり、フィルムが着色したりするとの不都合が発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、導電性ポリマーである特定の複素環含有芳香族ポリマーと、粘着樹脂とを含有する帯電防止性粘着剤組成物は、粘着性の調整が容易であるとともに、ブリードアウトにより被着体を汚染したり、粘着性能が湿度の影響を受けることがなく、帯電防止性の安定性に優れる粘着性層を形成することができることを見出し本発明を完成した。さらに、粘着樹脂として、透明な粘着樹脂を選択することにより、透明性が高い粘着剤層を形成することができることも見出した。
さらに、本発明の帯電防止性粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が粘着シート、保護フィルム及び偏光板に好適であることも見出した。
【0008】
すなわち、本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、
(A)下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする複素環含有芳香族ポリマー
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)、及び、
(B)粘着樹脂
を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物において、上記複素環含有芳香族化合物は、下記一般式(2′)で表される複素環含有芳香族化合物であることが好ましく、
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
下記構造式(2−1)〜(2−12)で表される複素環含有芳香族化合物のなかの少なくとも1つであることがより好ましい。
【0012】
【化2】

【0013】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物において、上記粘着樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂、及び、ポリウレタン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、更に、(C)架橋剤を含有することが望ましい。
【0015】
本発明の粘着剤層は、本発明の帯電防止性粘着剤組成物を架橋して得られたことを特徴とする。
【0016】
本発明の粘着シートは、シート状の支持体と、上記支持体の片面又は両面に形成された粘着剤層とを備え、上記粘着剤層が本発明の粘着剤層であることを特徴とする。
【0017】
本発明の表面保護フィルムは、樹脂フィルムと、上記樹脂フィルムの片面に形成された粘着剤層とを備え、上記粘着剤層が本発明の粘着剤層であることを特徴とする。
本発明の偏光板は、偏光フィルムと、上記偏光フィルムの片面又は両面に形成された粘着剤層とを備え、上記粘着剤層が本発明の粘着剤層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、導電性高分子として、チオフェン環基とピロール環基とが直接結合したカップリング体を単量体とする特定の複素環含有芳香族ポリマーを含有しており、この複素環含有芳香族ポリマーは、導電性に優れるとともに、粘着樹脂との相溶性に極めて優れるため、優れた帯電防止性を備えた粘着剤層を形成することができる。
また、本発明の帯電防止性粘着剤は、上記複素環含有芳香族ポリマーと粘着樹脂との相溶性が極めて優れるため、粘着剤層とした際に、上記複素環含有芳香族ポリマーがブリードアウトすることがない。
さらに、上記複素環含有芳香族ポリマーは、様々な粘着樹脂との相溶性が高いため、粘着樹脂や架橋剤の選択の自由度が高く、粘着力やガラス転移温度等を考慮した粘着剤設計が容易で、かつ、広範囲に渡って可能である。加えて、上記相溶性の高さに起因して、本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、長期間に渡って構成成分の沈殿や、ゲル化等がみられず、分散安定性に優れ、長期保存が可能である。
また、本発明の帯電防止性粘着剤は、上記複素環含有芳香族ポリマーと粘着樹脂との相溶性が高いため、複素環含有芳香族ポリマーの添加量が少量であっても、充分に機能を発揮することができ、そのため、粘着樹脂が透明樹脂である場合には、透明性に優れた粘着剤層を形成することができる。
【0019】
また、本発明の粘着シート、表面保護フィルム及び偏光板は、本発明の粘着剤層(本発明の帯電防止性粘着剤組成物を架橋させたもの)を備えるため、上述した特性を有し、優れた帯電防止性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の帯電防止性粘着剤組成物について説明する。
本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、
(A)下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする複素環含有芳香族ポリマー
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)、及び、
(B)粘着樹脂
を含有する。
以下、本発明の帯電防止性粘着剤組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0022】
(A)複素環含有芳香族ポリマー
上記複素環含有芳香族ポリマーは、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする。
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)
【0023】
ここで、チオフェン環基とは2−チエニル基のことをいい、炭素原子上に置換基を有してもよい。
また、ピロール環基とは2−ピロリル基のことをいい、炭素原子上又は窒素原子上に置換基を有してもよい。
【0024】
上記一般式(1)におけるMで表される置換チオフェン環基としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
(各式中、nは1から10の整数を示す。)
【0027】
上記一般式(1)におけるNで表される置換ピロール環基としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
(各式中、nは1から10の整数を示す。)
【0030】
【化5】

【0031】
(各式中、nは1から10の整数、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は炭素数1から10のアルキル基を示す。)
【0032】
上記チオフェン環基の置換基としては、例えば、後述の有機基等が挙げられるが、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。
上記ピロール環基の置換基としては、例えば、後述の有機基等が挙げられるが、炭素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましく、窒素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
ここで、チオフェン環基やピロール環基の置換基であるアルキル基又はアルコキシ基には、ハロゲン元素やカルボン酸基、スルホン酸基などの官能基が結合していてもよい。
【0033】
上記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物(以下、複素環含有芳香族化合物(1)ともいう)において、チオフェン環とピロール環とは、環構造に含まれない原子を介して結合することはなく、両環に含まれる原子間の結合によって、直接結合している。
複素環含有芳香族化合物(1)としては、溶剤溶解性や耐熱性、耐候性の観点から、チオフェン環基又はピロール環基の3位又は4位に結合している置換基の数の合計が、2個以上である化合物が好ましい。また、3位又は4位に結合している置換基の数の合計が4個である場合(すなわち、すべての3位及び4位に置換基が結合している場合)、立体障害を避けるために、M又はNの少なくとも一方において、3位の置換基と4位の置換基が結合して環構造を形成していることが好ましい。
【0034】
上記複素環含有芳香族化合物(1)は、Mで示されるチオフェン環上の炭素原子のうち少なくとも1つは無置換であり、かつ、Nで示されるピロール環上の炭素原子のうち少なくとも1つは無置換である。このような複素環含有芳香族化合物(1)を単量体として酸化重合すると、無置換の炭素原子間でカップリング反応が進行することで、複素環含有芳香族ポリマーとして、繰り返し単位が−M−N−で示される直鎖状重合体が得られる。
M、Nによって表されるチオフェン環及びピロール環は、一方の2位の炭素原子間で互いに結合し、他方の2位の炭素原子が無置換であることが好ましい。
【0035】
上記複素環含有芳香族化合物としては、下記一般式(2)又は(3)のいずれかによって表される複素環含有芳香族化合物が好ましい。
これらの複素環含有芳香族化合物を単量体として酸化重合を行うと、酸化重合は、チオフェン環上の2位の無置換の炭素原子や、ピロール環上の2位の無置換の炭素原子において進行する。
【0036】
下記一般式(2)で表される複素環含有芳香族化合物は、一般式(1)におけるMが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基であり、Nが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基である。
【0037】
【化6】

【0038】
一般式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)か、あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。
ここで、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよく、また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、例えば、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。
【0039】
一般式(2)で表される複素環含有芳香族化合物は、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物や、ケースiiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物が好ましく、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物がより好ましい。
【0040】
さらに好ましくは、ケースiにおいて、RとRが互いに結合してエチレンジオキシ基を表す下記一般式(2′)で表される複素環含有芳香族化合物である。
【0041】
【化7】

【0042】
特に好ましくは、高い導電性と安定性を両立する為には、バンドギャップが小さく、酸化電位が高い化合物であり、下記構造式(2−1)〜(2−12)で表される化合物である。
これらの化合物を単量体とする複素環含有芳香族ポリマーは、後述する粘着樹脂との相溶性に極めて優れるとともに、上記複素環含有芳香族ポリマーは、バンドギャップが小さく、酸化電位が高いことに起因して、本発明の帯電防止性粘着剤組成物に、優れた導電性を付与することができ、本発明の帯電防止性粘着剤組成物を架橋した粘着剤層では、上記複素環含有芳香族ポリマーがブリードアウトすることがない。
更に、これらの化合物を単量体とする複素環含有芳香族ポリマーは、粘着樹脂との相溶性が極めて高いため、粘着樹脂の配合適用範囲が極めて広い。
【0043】
【化8】

【0044】
下記一般式(3)で表される複素環含有芳香族化合物は、一般式(1)におけるMが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基であり、Nが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるN−置換ピロール環基である。
【0045】
【化9】

【0046】
一般式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)か、あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。
ここで、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよく、また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、例えば、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。また、一般式(3)中、Rnは有機基を表す。
【0047】
一般式(3)で表される複素環含有芳香族化合物は、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物や、ケースiiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物が好ましく、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物がより好ましい。
【0048】
さらに好ましくは、ケースiにおいて、RとRが互いに結合してエチレンジオキシ基を表す下記一般式(3′)で表される複素環含有芳香族化合物である。
【0049】
【化10】

【0050】
特に、一般式(3′)において、R及びRが水素原子を表し、Rnが置換基を有していてもよいフェニル基を表す下記式(3″)で示される化合物が好ましい。
【0051】
【化11】

【0052】
上記一般式(2)、(3)及び(3″)において、R〜R、Rn、Rxのそれぞれが表す有機基としては、例えば、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、シクロヘキセニル基等)、炭素数1から5のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)、置換基を有していてもよいフェニル基(例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
さらに、これらの有機基には、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基などの官能基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素等が結合していてもよい。
また、R〜Rは、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基、ハロゲン元素等であってもよい。
なお、以上の有機基はそれぞれ独立して選択される。
【0053】
〜Rが表す有機基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましく、Rnが表す有機基としては、炭素数1から10のアルキル基、又は、フェニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0054】
隣接するR〜R(RとR、RとR、RとR、RとR)の両方が有機基であり、これらが互いに結合して環構造を形成する場合、環構造としては、特に限定されないが、炭素数2から10の脂環式構造が好ましい。
脂環式構造には酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、窒素原子などを含んでいてもよく、なかでも、特に酸素原子を含んだアルキレンジオキシ基を有する環構造が好ましい。
さらに、脂環式構造が芳香族性を有していてもよく、この場合、複素環含有芳香族化合物(1)のM、Nは、縮環構造を有する(例えば、イソチアナフテン等)事を意味する。
【0055】
次に、上記複素環含有芳香族化合物(1)の製造方法を説明する。
上記複素環含有芳香族化合物(1)は、超原子価ヨウ素反応剤の存在下、2種類の複素環芳香族化合物をカップリングさせることで製造することができる。このようなカップリング反応が超原子価ヨウ素反応剤の存在下では、1:1の比率で効率よく進行する。超原子価ヨウ素反応剤としては後述と同様のものを使用することができる。
【0056】
上記カップリング反応において、超原子価ヨウ素反応剤の使用量は特に限定されず、1種類の原料1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、より好ましくは0.2〜3モルの割合で用い、更に好ましくは0.3〜2モルの割合で用いる。
【0057】
上記カップリング反応では、原料として、置換又は無置換のチオフェン化合物M−H、及び、置換又は無置換のピロール化合物N−Hを使用する。ここで、M及びNは上記と同様である。これら化合物は、所望の生成物を得るために適宜選択すればよい。
【0058】
上記カップリング反応は、通常、溶媒の存在下で実施する。
上記溶媒としては、原料、複素環含有芳香族化合物(1)、及び、超原子価ヨウ素反応剤を溶解または分散させる溶媒であればよく、このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、トルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)などの有機溶媒、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)等が挙げられる。これは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0059】
カップリング反応の系中には、添加剤を適宜添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤と添加剤とを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。
上記添加剤としては、例えば、ブロモトリメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフラート、三フッ化ホウ素、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸等が挙げられ、これらのなかではブロモトリメチルシランが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数で用いてもよい。
上記添加剤の使用量は、複素環含有芳香族化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、より好ましくは0.2〜3モルの割合であり、更に好ましくは0.5〜2モルの割合である。
【0060】
また、カップリング反応の系中には、フッ素系アルコールを添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤とフッ素系アルコールとを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。
上記フッ素系アルコールとしては、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロエタノール等が挙げられ、これらのなかでは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールが好ましい。
上記フッ素系アルコールの使用量は、特に特定されないが、用いる溶剤100重量部に対して1〜80重量部が好ましく、特に、10〜40重量部が好ましい。
【0061】
上記カップリング反応は、通常、各原料、超原子価ヨウ素反応剤、及び、溶剤や他の試薬等を混合して、−50℃〜100℃の温度範囲で、10分から48時間行うことによって、上記複素環含有芳香族化合物を製造することができる。
上記カップリング反応は、0〜50℃の温度範囲で30分〜8時間行うことが好ましく、10〜40℃の温度範囲で1〜4時間行うことがより好ましい。このとき、加える試薬の順序は問わない。
【0062】
次に、上記複素環含有芳香族化合物(1)を単量体として、複素環含有芳香族ポリマーを製造する方法について説明する。
上記複素環含有芳香族ポリマーの製造では、上記単量体(複素環含有芳香族化合物(1))を、各種酸化剤を用いた化学重合法により酸化重合する。
化学重合法は、簡便で大量生産が可能なため、従来の電解重合法と比べ工業的製法に適した方法である。
【0063】
上記化学重合法に用いる酸化剤としては特に限定されないが、例えば、スルホン酸化合物をアニオンとし、高価数の遷移金属をカチオンとする酸化剤等が挙げられる。この酸化剤を構成する高価数の遷移金属イオンとしては、Cu2+、Fe3+、Al3+、Ce4+、W6+、Mo6+、Cr6+、Mn7+及びSn4+が挙げられる。これらのなかでは、Fe3+およびCu2+が好ましい。
遷移金属をカチオンとする酸化剤の具体例としては、例えば、FeCl、Fe(ClO、KCrO、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム、四フッ化ホウ酸銅等が挙げられる。
また、遷移金属をカチオンとする酸化剤以外の酸化剤としては、過硫酸アルカリ、過硫酸アンモニウム、H等が挙げられる。さらに、超原子価ヨウ素反応剤に代表される超原子価化合物が挙げられる。
【0064】
特に好ましい実施形態は、酸化剤が超原子価ヨウ素反応剤である。
超原子価ヨウ素反応剤とは、3価または5価の超原子価状態にあるヨウ素原子を含む反応剤のことをいう。超原子価ヨウ素反応剤は、より安定なオクテット状態(1価のヨウ素)に戻ろうとする性質を有しているため、鉛(IV)、タリウム(III)、水銀(II)などの重金属酸化剤と類似の反応性を有する。さらに、超原子価ヨウ素反応剤は、このような重金属酸化剤に比べて低毒性であり、安全性に優れ、工業的な製法に適している。
【0065】
上記超原子価ヨウ素反応剤としては特に限定されず、3価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、フェニルイオジンビス(トリフルオロアセテート)または(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン(以下、PIFAという場合がある))、フェニルイオジンジアセテート(ヨードソベンゼンジアセテート(以下、PIDAという場合がある))、ヒドロキシ(トシロキシ)ヨードベンゼン、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0066】
【化12】

【0067】
5価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、デスマーチンペルヨージナン(Dess-Martin periodinane(DMP))、o−ヨードキシ安息香酸(o-iodoxybenzoic acid(IBX))等が挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0068】
【化13】

【0069】
これらのなかでは、3価の超原子価ヨウ素反応剤が好ましく、PIFAが、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する点でより好ましい。
【0070】
また、超原子価ヨウ素反応剤の中でも、アダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、テトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を選択すると回収再利用できることから好ましい。より具体的には、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン等の3価のアダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、または、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン等の3価のテトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤は、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する上に、脂溶性が高く回収再利用可能なので、さらに好ましい。
5価の超原子価ヨウ素反応剤を用いる場合は、デスマーチンペルヨージナン(DMP)が好ましい。
【0071】
このような超原子価ヨウ素反応剤は、合成により得られたものを用いてもよく、あるいは市販品を用いてもよい。例えば、PIFAは、PIDAにトリフルオロ酢酸を加えて反応させ、その結果、PIFAを反応生成物として析出させることにより得られる(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1985, 757を参照のこと)。PIDAは、ヨードベンゼンを酢酸中、ペルオキソほう酸ナトリウム(4水和物)(NaBO・4HO)を用い酸化することにより得られる(Tetrahedron, 1989, 45, 3299およびChem. Rev., 1996, 96, 1123を参照のこと)。さらに、PIDAは、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)を酸化剤としてヨードベンゼンから得られる(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3595を参照のこと)。1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンは、例えば特開2005−220122号公報に記載の方法で合成できる。
【0072】
上記酸化剤の使用量は特に限定されないが、上記単量体1モルあたり1〜5モルの範囲が好ましく、より好ましくは2〜4モルの範囲である。特に上記酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を使用する場合、上記単量体1モルに対して、好ましくは1〜4モル、より好ましくは1.5〜4モルの割合で用い、更に好ましくは2〜2.5モルの割合で用いる。
超原子価ヨウ素反応剤の量が少ない場合、酸化重合反応が進みにくくなることがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎる場合、過剰酸化が起こり溶媒に全く不溶な生成物が得られることがあり、所望のポリマーの収率が低下することがある。
【0073】
上記複素環含有芳香族ポリマーの製造方法では、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用してもよい。超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用することで、超原子価ヨウ素反応剤の使用量を減らすことができる。金属を含まない酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸等が挙げられる。
【0074】
上述したように上記超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合、上記超原子価ヨウ素反応剤は酸化触媒として作用し、上記単量体1モルに対して、好ましくは0.001〜0.3モル、より好ましくは0.01〜0.1モルの割合で用いる。一方、金属を含まない酸化剤は、上記単量体1モルに対して、好ましくは1〜4モル当量、より好ましくは1.5〜2.5モル当量の割合で用いる。
【0075】
また、金属を含まない酸化剤と超原子価ヨウ素反応剤とを併用する場合、超原子価ヨウ素反応剤の量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しないことがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎても、重合度は、ある一定の重合度より大きくならず、超原子価ヨウ素反応剤が無駄になることがある。
【0076】
なお、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合は、重合反応を始める際は、超原子価ヨウ素反応剤の前駆体を用いても良い。具体的には、例えば、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンの前駆体である1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタンを触媒量と、化学量論量のメタクロロ過安息香酸を加えることで、反応系中で超原子価ヨウ素反応剤を発生させればよい。
【0077】
上記複素環含有芳香族ポリマーの製造方法では、複素環含有芳香族ポリマーに、ドーパントをドープしてもよい。ドーパントをドープすることによって、得られる複素環含有芳香族ポリマーにより高い導電性が付与され得る。ドーパントは、重合反応前に原料として仕込んでもよく、重合反応中に添加してもよく、あるいは重合反応後に得られる複素環含有芳香族ポリマーに添加してもよい。
【0078】
ドーパントとしては特に限定されないが、例えば、Cl、Br、I、IClなどのハロゲン;PF、BF、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのルイス酸;HF、HCl、HNO、HSOなどのプロトン酸;p−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0079】
導電性の付与を目的として用いるドーパントは、上記単量体1モルに対して、好ましくは0.05〜6モルの割合で用い、より好ましくは0.2〜4モルの割合で用いる。
上記ドーパントの量が0.05モルよりも少ない場合、複素環含有芳香族ポリマーに、十分な導電性を付与し得ない場合がある。一方、ドーパントの量が6モルよりも多い場合、複素環含有芳香族ポリマーに添加したすべてのドーパントがドープされず、添加量に比例した効果を望めない。また、余剰のドーパントも無駄になる。
【0080】
なお、上記ルイス酸は、ドーパントとして作用するだけではなく、酸化重合反応を促進させる作用も有する。酸化重合反応を促進させる目的でルイス酸を用いる場合、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルが好ましく用いられる。
【0081】
上記酸化重合反応は、通常、溶媒の存在下で実施する。
上記溶媒としては、上記単量体、酸化剤、及び、ドーパントを溶解または分散させる溶媒であればよく、このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、トルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等の有機溶媒、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0082】
上記酸化重合反応の温度は、−100℃〜100℃が好ましい。溶媒として有機溶媒を用いる場合および水を用いる場合のいずれの場合も、より好ましくは0℃〜40℃である。反応温度が−100℃よりも低い場合、反応速度が遅くなったり、溶媒によっては凍結したりし、複素環含有芳香族ポリマーの収率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃よりも高い場合、副反応や過剰酸化が起こり、複素環含有芳香族ポリマーの収率が低下するおそれがある。
【0083】
上記酸化重合反応の反応時間は、特に制限されない。酸化重合反応を促進させるためにルイス酸を用いた場合は12時間程度が好ましく、ルイス酸を用いない場合は20時間程度が好ましい。
【0084】
このようにして得られた複素環含有芳香族ポリマーには、精製処理を施してもよい。
精製方法(精製工程)としては特に限定されないが、例えば、反応後、溶媒をグラスフィルターでろ過し、得られたポリマーを、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエンなどで洗浄する方法等が挙げられる。その他の精製方法としては、ソックスレー抽出などによる精製等が挙げられる。
【0085】
このような複素環含有芳香族ポリマーの製造方法では、洗浄後、得られた複素環含有芳香族ポリマーを、必要に応じて、通常の手段により乾燥する(乾燥工程)。
ここで、乾燥方法は、重合度、置換基、含まれるドーパントによって適宜決定可能であり、例えば、室温下(約25℃)での減圧(約0.5mmHg)乾燥、常圧下での加熱送風(約60℃)乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、100℃以下が好ましく、200℃を超えると、複素環含有芳香族ポリマーが分解する危険性が高くなる。
【0086】
上記酸化重合において、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を用いた場合、下記のような方法で回収することが好ましい。例えば、反応を終えた溶液を減圧濃縮し、残渣(ポリマー、アダマンタン構造もしくはテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤、未反応の単量体)にメタノールを加えて混合し、グラスフィルターを用いてろ過することにより、金属を含まない酸化剤及び未反応の単量体はメタノール溶液として除去できる。残渣として残ったポリマー及びアダマンタン構造又はテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤は、ジエチルエーテルを加えて混合しグラスフィルターを用いてろ過することにより、残渣のポリマーと、ジエチルエーテル溶液のアダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤とに分離することができる。そのジエチルエーテルを濃縮することで、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を回収することができる。アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤の回収方法は、上記の例に限定されないが、ポリマー、アダマンタン構造又はテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤および未反応の単量体の、溶媒種による溶解性の違いを利用し、適当な溶媒を選択することで、各々の成分を分離することができる。
【0087】
上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の配合量は、本発明の粘着剤組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。0.01重量部未満では、帯電防止性能が不十分となることがあり、10重量部を超えると粘着性能が低下したり、透明性が低下したりすることがある。
【0088】
(B)粘着樹脂
上記粘着樹脂とは、上記帯電防止性粘着剤組成物を粘着力を付与する機能を備えた樹脂であり、粘着剤組成物のベースポリマーとなるものである。
【0089】
上記粘着樹脂としては、従来公知のものを使用することでき、具体的には、例えば、各種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合又は共重合させて得られた(メタ)アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合系樹脂、ジメチルシロキサン骨格を有するシリコーンゴムなどのシリコン系樹脂、ポリオールとポリイソシアネートを重付加して得られるポリウレタン系樹脂、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム系樹脂等が挙げられる。
【0090】
これらの中では、特に化学的安定性に優れ、化学構造設計の自由度が高く、粘着力の調整が容易な、(メタ)アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。さらに、(メタ)アクリル系樹脂、及び、ポリウレタン樹脂は、特に透明性に優れる点でも好ましい。
【0091】
上記(メタ)アクリル系樹脂の製造に用いられるモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレートなどのアルキル基を有する(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ) アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ) アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ビニルアルコール、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらのモノマーは、必要とされる粘着特性に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【0092】
上記シリコン系樹脂としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのシリコーンゴム、M単位((CHSiO0.5)とQ単位(SiO)からなる3次元構造を含むシリコーンレジンなどから構成されるもの等が挙げられる。これらは、適宜、過酸化物によるメチル基からの水素引き抜きやSiH基を有する架橋剤を用いたヒドロシリル化などにより架橋でき、粘着特性を調整することができる。
【0093】
上記ウレタン系樹脂は、分子中に1つ以上のウレタン結合を含む、エラストマー、ポリマー、オリゴマーであり、例えば、2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールなどのジオール類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等などのジカルボン酸又はこれらの酸エステル、酸無水物とジオール類との脱水縮合で得られるポリエステルポリオールなどの分子内に2個以上の活性水素を有する化合物等と、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネートなどの分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物等とをジブチルスズジラウレート等の触媒存在下で重付加させて製造されたもの等が挙げられる。
【0094】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、(A)複素環含有芳香族ポリマー、及び、(B)粘着樹脂に加えて、必要に応じて、(C)架橋剤、(D)粘着付与剤、(E)添加剤等を含有していてもよい。
以下、上記(C)〜(E)の各成分について説明する。
【0095】
(C)架橋剤
上記架橋剤は、上記粘着樹脂を架橋することにより、粘着力、保持力、タック等の粘着剤の特性を調整をすることができるとともに、耐久性や耐熱性等を向上させることができる。
上記架橋剤は、上記粘着樹脂中(例えば、側鎖など)に存在する、活性水素等を有する官能基(例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)と反応し、粘着樹脂を架橋するものであり、例えば、イソシアネート類、多価イソシアナート化合物、多価エポキシ化合物、多価アジリジン化合物、キレート化合物等が挙げられる。
上記多価イソシアナート化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、これらのアダクトタイプのもの等が挙げられる。
上記多価エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等が挙げられる。
上記多価アジリジン化合物としては、例えば、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が挙げられる。
上記キレート化合物としては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0096】
上記架橋剤の配合量は、上記粘着樹脂の種類により適宜調整することができるが、上記粘着樹脂(B)100重量部に対して、0.1〜40重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましい。
【0097】
(D)粘着付与剤
上記粘着付与剤は、上記粘着樹脂として、天然ゴム等の粘着性が比較的低い粘着樹脂を用いた場合に、粘着性の向上、調整のために添加するものである。
上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン及びロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
【0098】
上記粘着付与剤の配合量は、上記粘着樹脂 (B)100重量部に対して、0.1〜70重量部が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。この範囲とすることにより、粘着力を有効に上昇させることができるからである。
【0099】
(E)添加剤
上記添加剤としては、従来公知の添加剤を使用することができ、その具体的としては、例えば、表面平滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、シランカップリング材、無機充填材、有機充填剤、金属粉、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、低分子量ポリマー等が挙げられる。
これらの添加剤は、帯電防止性粘着剤組成物の使用用途に応じて適宜配合すればよい。
【0100】
上記帯電防止性粘着剤組成物は、例えば、各成分を混合機で混合することにより製造することができる。
このとき、各成分の投入方法は特に限定されず、例えば、全成分を同時に投入すればよい。
【0101】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、その配合を調整することにより、種々のタイプの粘着剤層を形成することができる。
上記粘着剤層は、上記帯電防止性粘着剤組成物を架橋して得られたものであり、このような粘着剤層もまた本発明の1つである。
【0102】
上記粘着剤層のタイプとしては、具体的には、例えば、
(1)被着体同士を恒久的に接着する永久接着用粘着剤(強粘着タイプ)
(2)被着体同士を一時的に接着する再剥離が可能な再剥離用粘着剤(弱粘着タイプ)
等である。
そして、後述する表面保護フィルムはタイプ(2)の粘着剤層を備えており、偏光板は、タイプ(1)の粘着剤層を備えていることが多い。従って、本発明の粘着剤層は、表面保護フィルムや偏光板を構成する粘着剤層として好適である。
また、上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常、1〜400μm程度であり、接着性能を考慮すると、10〜100μm程度であることが好ましい。
【0103】
上記帯電防止性粘着剤組成物の架橋は、上記帯電防止性粘着剤組成物を被着体上や剥離紙上に塗布した後、加熱や、光照射等により行えばよく、例えば、50〜180℃で1分〜3時間の加熱、波長300〜400nmにおける照度が1〜200mW/cmである紫外線を、光量400〜4000mJ/cm程度照射する光照射等により行うことができる。
【0104】
また、上記粘着剤層は、その片面又は両面に剥離紙(セパレーター)を備えていてもよい。
上記粘着剤層の両面に剥離紙を備えている場合は、そのまま保管・搬送することができ、使用時に上記剥離紙を剥離することで被着体に粘着剤層を粘着させることができ、上記粘着剤層の片面に剥離紙を備えている場合は、ロール状に巻き取ることで保管・搬送することができ、使用時に上記剥離紙を剥離することで被着体に粘着剤層を粘着させることができる。
上記粘着剤層が両面に剥離紙を備える場合、各離型紙と粘着剤層との接着力はそれぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
また、粘着剤層が片面に剥離紙を備え、ロール状に巻き取られる場合は剥離紙の両面が粘着剤層と接することとなるが、この場合、剥離紙の各面と粘着剤層との接着力はそれぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
なお、剥離紙の粘着剤層との接着力は、離型剤処理や、剥離紙の表面粗さの変更等により調整することができる。
【0105】
上記剥離紙を構成する基材としては、例えば、紙やプラスチックフィルムが挙げられるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
このプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0106】
上記剥離紙(セパレーター)において、その粘着剤層と接する面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等の離型剤、シリカ粉等による離型剤処理が施されていてもよい。
【0107】
次に、本発明の粘着シートについて説明する。
本発明の粘着シートは、シート状の支持体と、上記支持体の片面又は両面に形成された粘着剤層とを備え、上記粘着剤層が、本発明の粘着剤層であることを特徴とする。
図1は、本発明の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、粘着シート1は、シート状の支持体10と、支持体10上に形成された粘着剤層20とからなる。
なお、図1では、支持体10の片面にのみ粘着剤層20が形成されているが、本発明の粘着シートは、上記支持体の両面に粘着剤層が形成されていてもよい。また、片面又は両面の一部にのみ形成されていてもよい。
また、図1には示していないが、本発明の粘着シートでは、粘着剤層の支持体側と反対側(図中、粘着剤層20の上面)には剥離紙(セパレーター)が積層されていてもよい。
上記剥離紙として、上述した本発明の粘着剤層の片面又は両面に設けられるものと同様のもの等が挙げられる。
【0108】
粘着剤層20は、既に説明した本発明の粘着剤層であり、本発明の帯電防止性粘着剤組成物を架橋したものである。
粘着剤層20の厚さは特に限定されないが、通常、1〜400μm程度であり,好ましくは10〜100μm程度である。この範囲であれば、充分な帯電防止能と、粘着性を確保するのに適するからである。
【0109】
支持体10の材質としては、樹脂、紙、不織布等が挙げられる。上記樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーポネート、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、等が挙げられる。
また、支持体の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理等の各種表面処理(易接着処理)が施されていてもよい。
【0110】
本発明の粘着シートを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
例えば、上記帯電防止性粘着剤組成物を支持体に塗布し、その後、上述した条件で架橋する方法、架橋させた帯電防止性粘着剤組成物を支持体に転写する方法等である。
上記帯電防止性粘着剤組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法を使用することができ、具体的には、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法等を用いることができる。
【0111】
また、上記粘着シートが剥離紙を備える場合は、剥離紙に上記帯電防止性粘着剤組成物を塗布した後、これを支持体と貼り合わせ、その後、帯電防止性粘着剤組成物を架橋して粘着シートを製造してもよい。
さらに、上記粘着シートが剥離紙を備える場合は、上述した両面に剥離紙を備えた粘着剤層を準備し、この粘着剤層の一方の剥離紙のみを剥離し、その剥離紙を剥離した面(粘着剤層の露出した面)を支持体と貼り合わせることで、剥離紙を備えた粘着シートを製造することもできる。
【0112】
また、支持体に帯電防止性粘着剤組成物を塗布又は転写した後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生を行っても良い。
なお、上記帯電防止性粘着剤組成物を塗布する際に、その塗布性を向上させるため、上記帯電防止性粘着剤組成物中には溶剤を配合してもよい。
【0113】
上記溶剤としては特に限定されず、本分野で汎用される溶剤(汎用溶剤)を使用することができ、具体例として、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。
【0114】
本発明の粘着シートは、後述する表面保護フィルムや偏光板をはじめ、マスキングテープ、再剥離型ラベル等に好適に使用することができる。
【0115】
次に、本発明の表面保護フィルムについて説明する。
本発明の表面保護フィルムは、樹脂フィルムと、上記樹脂フィルムの片面に形成された粘着剤層とを備え、上記粘着剤層が本発明の粘着剤層であることを特徴とする。
ここで、上記粘着剤層は、上述した弱粘着タイプの粘着剤層であることが好ましい。
【0116】
本発明の表面保護フィルムは、偏光板、導光板などの光学フィルムを傷や汚れから保護するためのフィルムである。例えば、液晶パネルの製造においては、偏光板、導光板などの光学部品(フィルム)は保護フィルムをつけたままの状態で、積層、組み立てられ、また、検査の工程においても、保護フィルムがついたままの状態で行われ、その後最終的には剥がされて、破棄されるものである。
【0117】
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテ共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等からなるポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなるポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミド等からなるポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
上記樹脂フィルムの厚さは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0118】
上記表面保護フィルムの粘着力は、被着体により好適な範囲は異なるが、例えば、被着体が無アルカリガラスのようなガラス基板である場合には、その粘着力は、0.05〜10N/25mmであることが好ましい。
【0119】
本発明の表面保護フィルムでは、必要に応じて、粘着剤層表面に剥離紙(セパレーター)を貼り合わせてもよい。
上記剥離紙として、上述した本発明の粘着剤層の片面又は両面に設けられるものと同様のもの等が挙げられる。
【0120】
上記表面保護フィルムの製造方法としては、上述した本発明の粘着シートの製造方法と同様の方法を用いることができる。
【0121】
本発明の表面保護フィルムは、例えば、液晶パネル、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、偏光板、光拡散シート、レンズフィルム等の表面保護フィルムとして好適に使用することができ、これらの被着体を機械的及び電気的に保護することができる。
【0122】
次に、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、偏光フィルムと、上記偏光フィルムの片面又は両面に形成された粘着剤層とを備え、上記粘着剤層が本発明の粘着剤層であることを特徴とする。
ここで、上記粘着剤層は、上述した強粘着タイプの粘着剤層であることが好ましい。
【0123】
偏光板は、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)等の画像表示装置に使用する部材であり、少なくとも、偏光フィルムと粘着剤層とを備えている。
【0124】
上記偏光フィルムとしては、従来公知の偏光フィルムを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フィルム等を使用することができる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等が挙げられる。
【0125】
上記偏光フィルムの粘着力は、被着体により好適な範囲は異なるが、例えば、被着体が無アルカリガラスからなるものである場合には、その粘着力は、0.1〜30N/25mmであることが好ましく、接着性及びリワーク(貼り直し)の容易性を考慮すると、1〜20N/25mmであることがより好ましい。
【0126】
上記偏光板の製造方法としては、上述した本発明の粘着シートの製造方法と同様の方法を用いることができる。
ここで、上記偏光板として、剥離紙を備えた偏光板を製造する場合は、下記の方法で製造することが望ましい。
即ち、両面に剥離紙を備えた粘着剤層であって、各剥離と粘着剤層との接着力が異なる粘着剤層を準備し、相対的に接着力が弱い剥離紙を剥離した後、相対的に接着力が強い剥離紙を残したまま、粘着剤層を偏光フィルムに貼り合わせることにより製造することが望ましい。
【実施例】
【0127】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0128】
(製造例1)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた200mLの三口丸底フラスコに、120gのメチルエチルケトン(MEK)、3.70gのp−トルエンスルホン酸鉄(III)(40%ブタノール溶液)、0.91g(2.6mmol)の上記構造式(2−11)で表される複素環含有芳香族化合物(以下、複素環含有芳香族化合物(2−11)ともいう)を加えた。
その後、室温下(内温20〜25℃)で4時間撹拌し、HPLCにて複素環含有芳香族化合物(2−11)の消失を確認した。これにより、p−トルエンスルホン酸ドープの複素環含有芳香族化合物(2−11)重合体MEK分散体120g(固形分1.9%)を得た。
【0129】
この複素環含有芳香族化合物(2−11)重合体MEK分散体については、GPC溶離液に溶解せず、GPC測定では、複素環含有芳香族化合物(2−11)重合体MEK分散体そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、複素環含有芳香族化合物(2−11)が完全に消失していることと、以下に示す導電性樹脂組成物の試験結果により本複素環含有芳香族化合物(2−11)重合体MEK分散体が導電性を示す結果が得られたことから、複素環含有芳香族化合物(2−11)重合体MEK分散体が生成していることが明らかである。
【0130】
(製造例2)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた200mLの三口丸底フラスコに、120gのトルエン、8.0gのメタノール、10.0gの硫酸鉄(III)(1%水溶液)、10.0gの過硫酸アンモニウム(10%水-メタノール水溶液)、13.91gのジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(DEHS)、1.3g(2.6mmol)の上記構造式(2−4)で表される複素環含有芳香族化合物(以下、複素環含有芳香族化合物(2−4)ともいう)を加えた。
その後、室温下(内温20〜25℃)で5時間強撹拌し、HPLCにて複素環含有芳香族化合物(2−4)の消失を確認した。反応終了後、反応に用いた硫酸鉄などの無機塩を除去するために、反応溶液を分液ロートに移し、更にトルエン150g、イオン交換水50gを加え、よく混合し、静置、分液させた後、水層を除去した。さらに、イオン交換水50gでトルエン層を水洗後、固形分が1.5%になるまでトルエン層を濃縮し、共沸脱水を行いながらトルエンを除去した。これにより、DEHSドープの複素環含有芳香族化合物(2−4)重合体トルエン分散体100g(固形分1.5%)を得た。
【0131】
この複素環含有芳香族化合物(2−4)重合体トルエン分散体については、GPC溶離液に溶解せず、GPC測定では、複素環含有芳香族化合物(2−4)重合体トルエン分散体そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、複素環含有芳香族化合物(2−4)が完全に消失していることと、以下に示す導電性樹脂組成物の試験結果により本複素環含有芳香族化合物(2−4)重合体トルエン分散体が導電性を示す結果が得られたことから、複素環含有芳香族化合物(2−4)重合体トルエン分散体が生成していることが明らかである。
【0132】
(製造例3)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた200mLの三口丸底フラスコに、120gの酢酸エチル、3.70gのp−トルエンスルホン酸鉄(III)(40%ブタノール溶液)、1.07g(2.6mmol)の上記構造式(2−3)で表される複素環含有芳香族化合物(以下、複素環含有芳香族化合物(2−3)ともいう)を加えた。
その後、室温下(内温20〜25℃)で5時間撹拌し、HPLCにて複素環含有芳香族化合物(2−3)の消失を確認した。これにより、p−トルエンスルホン酸ドープの複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体酢酸エチル分散体120g(固形分1.9%)を得た。
【0133】
この複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体酢酸エチル分散体については、GPC溶離液に溶解せず、GPC測定では、複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体酢酸エチル分散体そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、複素環含有芳香族化合物(2−3)が完全に消失していることと、以下に示す導電性樹脂組成物の試験結果により本複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体酢酸エチル分散体が導電性を示す結果が得られたことから、複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体酢酸エチル分散体が生成していることが明らかである。
【0134】
(製造例4)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた200mLの三口丸底フラスコに、120gのメチルイソブチルケトン(MIBK)、8.0gのメタノール、10.0gの硫酸鉄(III)(1%水溶液)、10.0gの過硫酸アンモニウム(10%水−メタノール水溶液)、13.91gのジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(DEHS)、0.84g(2.6mmol)の複素環含有芳香族化合物(2−12)を加えた。
その後、室温下(内温20〜25℃)で5時間強撹拌し、HPLCにて複素環含有芳香族化合物(2−12)の消失を確認した。反応終了後、反応に用いた硫酸鉄などの無機塩を除去するために、反応溶液を分液ロートに移し、更にMIBK150g、イオン交換水50gを加え、よく混合し、静置、分液させた後、水層を除去した。さらに、イオン交換水50gでMIBK層を水洗後、固形分が1.5%になるまでMIBK層を濃縮し、共沸脱水を行いながらMIBKを除去した。これにより、DEHSドープの複素環含有芳香族化合物(2−12)重合体MIBK分散体100g(固形分1.3%)を得た。
【0135】
この複素環含有芳香族化合物(2−12)重合体MIBK分散体については、GPC溶離液に溶解せず、GPC測定では、複素環含有芳香族化合物(2−12)重合体MIBK分散体そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、複素環含有芳香族化合物(2−12)が完全に消失していることと、以下に示す導電性樹脂組成物の試験結果により本複素環含有芳香族化合物(2−12)重合体MIBK分散体が導電性を示す結果が得られたことから、複素環含有芳香族化合物(2−12)重合体MIBK分散体が生成していることが明らかである。
【0136】
次に、下記の方法により、帯電防止性粘着剤組成物及び粘着シートを製造した(実施例1〜4、及び、比較例1、2)。なお、表1には、実施例及び比較例で製造した帯電防止性粘着剤組成物の配合を示した。
【0137】
(実施例1)
複素環含有芳香族ポリマーとして、製造例1で合成した複素環含有芳香族化合物(2−11)重合体MEK分散体(固形分1.9%)2.8重量部、粘着樹脂としてアクリル樹脂(ナガセケムテックス社製、テイサンレジンSG−790(固形分23%、理論ガラス転移点−32℃))200重量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートHL(固形分75%))9.5重量部を混合し、帯電防止性粘着剤組成物(T−1)を製造した。
さらに得られた帯電防止性粘着剤組成物(T−1)を50μmのPETフィルム(東レ社製 ルミラー T−60)にアプリケーターにて乾燥後の膜厚が25μmとなる様に塗布し、100℃で2分間乾燥し、粘着シート(S−1)を製造した。
【0138】
(実施例2)
複素環含有芳香族ポリマーとして、製造例2で合成した複素環含有芳香族化合物(2−4)重合体トルエン分散体(固形分1.5%)1.1重量部、粘着樹脂としてアクリル樹脂(ナガセケムテックス社製、テイサンレジンSG−280TEA(固形分15%、理論ガラス転移点−29℃))200重量部、架橋剤としてエポキシ化合物(ナガセケムテックス社製、デナコールEX−321L(固形分100%))2.3重量部を混合し、帯電防止性粘着剤組成物(T−2)を製造した。
さらに得られた帯電防止性粘着剤組成物(T−2)を50μmのPETフィルム(ルミラー T−60)にアプリケーターにて乾燥後の膜厚が15μmとなる様に塗布し、120℃で2分間乾燥し、粘着シート(S−2)を製造した。
【0139】
(実施例3)
複素環含有芳香族ポリマーとして、製造例3で合成した複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体酢酸エチル分散体(固形分1.9%)0.9重量部、粘着樹脂としてアクリル樹脂(ナガセケムテックス社製、テイサンレジンSG−600TEA(固形分15%。理論ガラス転移点−37℃))200重量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(コロネートHL(固形分75%))3.1重量部を混合し、帯電防止性粘着剤組成物(T−3)を製造した。
さらに得られた帯電防止性粘着剤組成物(T−3)を50μmのPETフィルム(ルミラー T−60)にアプリケーターにて乾燥後の膜厚が20μmとなる様に塗布し、100℃で2分間乾燥し、粘着シート(S−3)を製造した。
【0140】
(実施例4)
複素環含有芳香族ポリマーとして、製造例4で合成した複素環含有芳香族化合物(2−12)重合体MIBK分散体(固形分1.3%)0.4重量部、粘着樹脂としてアクリル樹脂(テイサンレジンSG−790(固形分23%、理論ガラス転移点−32℃))200重量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(コロネートHL(固形分75%))9.5重量部を混合し、帯電防止性粘着剤組成物(T−4)を製造した。
さらに得られた帯電防止性粘着剤組成物(T−4)を50μmのPETフィルム(ルミラー T−60)にアプリケーターにて乾燥後の膜厚が25μmとなる様に塗布し、100℃で2分間乾燥し、粘着シート(S−4)を製造した。
【0141】
(比較例1)
帯電防止剤として4級アンモニウム塩型界面活性剤(花王社製、コータミン86Pコンク)をエタノールで固形分20%とした溶液0.6重量部、粘着樹脂としてアクリル樹脂( テイサンレジンSG−790(固形分23%、理論ガラス転移点−32℃))200重量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(コロネートHL(固形分75%))9.5重量部を混合し、帯電防止性粘着剤組成物(Tx−1)を製造した。
さらに得られた帯電防止性粘着剤組成物(Tx−1)を50μmのPETフィルム(東レルミラー T−60)にアプリケーターにて乾燥後の膜厚が25μmとなる様に塗布し、100℃で2分間乾燥し、粘着シート(Sx−1)を製造した。
【0142】
(比較例2)
帯電防止剤としてピリジニウム塩系イオン液体 IL−P2(広栄化学工業社製(固形分100%))0.5重量部、粘着樹脂としてアクリル樹脂(テイサンレジンSG−280TEA(固形分15%、理論ガラス転移点−29℃))200重量部、架橋剤としてエポキシ化合物(デナコールEX−321L(固形分100%))2.3重量部を混合し、帯電防止性粘着剤組成物(Tx−2)を製造した。
さらに得られた帯電防止性粘着剤組成物(Tx−2)を50μmのPETフィルム(ルミラー T−60)にアプリケーターにて乾燥後の膜厚が15μmとなる様に塗布し、120℃で2分間乾燥し、粘着シート(Sx−2)を製造した。
【0143】
【表1】

【0144】
実施例及び比較例で製造した粘着シートについて、下記の方法により、粘着力(初期値及び加熱促進試験後の値)、表面抵抗率(SR)、汚染性、全光線透過率(Tt、ヘイズ値)を測定した。結果を表2に示した。
【0145】
粘着力(初期値及び加熱促進試験後の値)
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘着シートを幅25mm、長さ100mmに裁断し、無アルカリガラス(コーニング社製 #1737)に貼付け、0.5MPa、50℃、20分間の条件でオートクレーブ処理し、評価サンプルを作製した。
得られた評価サンプルを23℃、50%RHの環境下で24時間放置した後、23℃、50%RHの環境下のまま、万能引張試験機にて剥離速度300mm/分、剥離角度180°で剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定し、初期値とした。
さらに、評価用サンプルを60℃、90%RHの条件下で、1週間放置した後、上記と同様の方法にて粘着力を測定し、加熱促進試験後の値とした。
【0146】
表面抵抗値(SR)
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘着シートについて、JIS K 6911に従い、三菱化学社製、ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて測定した。
【0147】
全光線透過率(Tt)/ヘイズ値
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘着シートについて、JIS K 7150に従い、スガ試験機社製ヘイズコンピュータHGM−2Bを用いて測定した。
【0148】
汚染性
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘着シートを幅50mm、長さ100mmに裁断し、無アルカリガラス(コーニング社製 #1737)に貼付け、60℃、90%RHの条件下で1週間放置した後、粘着シートを剥離し、糊残りの有無を目視で確認し、下記の基準で汚染性を判定した。
○: ガラス基板上に汚れ(糊残り、曇り等)なし
△: ガラス基板上に汚れ(糊残り、曇り等)が僅かに観察される
×: ガラス基板上に汚れ(糊残り、曇り等)が顕著に観察される
【0149】
【表2】

【0150】
以上の結果より、本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、加熱促進試験において接着力の変化が小さく、汚染性試験において糊残りや曇の発生が少なく、帯電防止成分(複素環含有芳香族ポリマー)のブリードアウトによる性能劣化が小さく、安定した接着性能を示す粘着剤層(粘着シート)の形成に好適であることが明らかとなった。
また、粘着シートとして、高い透明性(全光線透過率、ヘイズ値)を得ることが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の帯電防止性粘着剤組成物は、粘着剤層を形成するための組成物として好適に使用することができる。また、上記帯電防止性粘着剤組成物を架橋させて形成した粘着剤層もまた本発明の一つである。
さらに、上記粘着剤層は、粘着シート、表面保護フィルム、偏光板を構成する粘着剤層として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 粘着シート
10 支持体
20 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする複素環含有芳香族ポリマー
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)、及び、
(B)粘着樹脂
を含有することを特徴とする帯電防止性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記複素環含有芳香族化合物は、下記一般式(2′)で表される複素環含有芳香族化合物である請求項1に記載の帯電防止性粘着剤組成物。
【化1】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項3】
前記複素環含有芳香族化合物は、下記構造式(2−1)〜(2−12)で表される複素環含有芳香族化合物のなかの少なくとも1つである請求項1又は2に記載の帯電防止性粘着剤組成物。
【化2】

【請求項4】
前記粘着樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂、及び、ポリウレタン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性粘着剤組成物。
【請求項5】
更に、(C)架橋剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止性粘着剤組成物を架橋して得られたことを特徴とする粘着剤層。
【請求項7】
シート状の支持体と、前記支持体の片面又は両面に形成された粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は、請求項6に記載の粘着剤層であることを特徴とする粘着シート。
【請求項8】
樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの片面に形成された粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は、請求項6に記載の粘着剤層であることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項9】
偏光フィルムと、前記偏光フィルムの片面又は両面に形成された粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は、請求項6に記載の粘着剤層であることを特徴とする偏光板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−17399(P2012−17399A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155235(P2010−155235)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】