説明

帯電防止性離型フィルム

【課題】離型性、クッション性、及び帯電防止性に優れ、例えば、フレキシブルプリント基板とカバーレイフィルムとを熱プレス接着する際に好適に使用できる簡易な構成の離型フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】最外層としてフッ素樹脂層、及び中間層として帯電防止剤を含有してなる樹脂層を備えて構成され、前記フッ素樹脂層は該樹脂層の層厚が1μm以上10μm以下であることを特徴とする帯電防止性離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関し、詳細には、フッ素樹脂層及び帯電防止剤を含有してなる樹脂層を備えて構成される帯電防止性離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムとは、そのフィルムの上に各種粘着材、塗料などを塗布して硬化させることにより、該フィルムの上に塗膜を形成し、使用するときにその塗膜を前記フィルムから剥離して使用できるようにしたり、プリント基板やセラミックス電子部品、熱硬化性樹脂製品、化粧板等を製造する際、工程中に金属板同士や樹脂同士が接着してしまわないように、金属板の間、あるいは樹脂の間に挟み込まれて使用されるフィルムのことをいう。
【0003】
例えば、特許文献1において、離型性、耐食性、非粘着性、機械的特性、及びリサイクル性に優れる積層フィルムとして、あらかじめ加熱加圧接着されてなる積層体を少なくとも一軸方向に2倍以上延伸して得られる積層フィルムであって、該積層フィルムは含フッ素重合体の層と含フッ素重合体以外の熱可塑性樹脂の層をそれぞれ1層以上有し、かつ少なくとも片面は含フッ素重合体の層であり、該積層フィルムの厚さが10〜200μmであり、該積層フィルムにおける含フッ素重合体の層の厚さが0.4μm以上3μm未満であることを特徴とする積層フィルムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、被離型面の剥離帯電減少効果を有し、離型フィルム剥離後の被離型面への塵埃付着防止の有効な離型フィルムとして、プラスチックフィルムの少なくとも片面にシリコーン系組成物を主体とする離型層が設けられた離型フィルムにおいて、該離型層中にカチオン性帯電防止剤を含有させてなる離型フィルムについて記載されている。
【0005】
その他にも、一般的な離型フィルムとしては、他に種々のものが開示されている(特許文献3〜5参照)
【0006】
さらに、離型用フィルムは、多層プリント基板製造における離型用フィルムとして、粘着又は接着シートの粘着・接着面を汚れから保護し、使用直前に粘着・接着面から剥離されるフィルムとして、また、合成皮革表面に皮革模様を付す工程におけるエンボスロール離型用フィルムとしても使用されてきた。
【0007】
多層プリント基板は、複数枚のプリント基板の間にプリプレグを挟んで積層し、該積層された一組のプリント基板の上下に離型用フィルムを置き、加圧加熱してプリプレグを溶融させた後、硬化させて一体化することによって作られる。多層プリント基板用の離型フィルムとしては、加熱温度175℃以下ではポリフッ化ビニルフィルムを、それより高い温度ではテトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフロロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂フィルムが主として使用されてきた。
【0008】
例えば、特許文献6において、離型性に優れ、ハンドリング性が良好で、再使用が容易な、多層プリント配線板用離型フィルムとして、A層、B層、C層がこの順で積層された3層構造を有し、A層がプレス成形の温度より高い融点を有するフッ素樹脂からなり、B層が熱可塑性エラストマー又はプレス成形の温度で溶融状態となる熱可塑性樹脂からなり、C層がプレス成形の温度より高い融点を有する熱可塑性非フッ素樹脂からなることを特徴とする離型フィルムが提案されている。
【0009】
また、カバーレイフィルム及び回路パターンの凹凸を吸収するためのクッッション材としてポリエチレン製の樹脂フィルムが使用できることが知られている(例えば、特許文献7)。
【0010】
【特許文献1】特開2004−142305号公報
【特許文献2】特開平10−044336号公報
【特許文献3】特開平9−11348号公報
【特許文献4】特開2005−254810号公報
【特許文献5】特開2006−297843号公報
【特許文献6】特開2002−208782号公報
【特許文献7】特開2003−327655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1記載の発明では、離型性、耐食性、非粘着性、機械的特性、及びリサイクル性には優れるものの、フッ素樹脂系の離型フィルムは一般に帯電しやすく、セット時に1枚のみ取り出したいのに静電気により2枚密着してしまい1枚のみ取り出せない、セット時に所定位置でない箇所で密着してしまいセットしにくい、静電気により作業環境中のゴミが離型フィルムに付着し、プレス時に不良品発生の原因になってしまう等の問題があった。
【0012】
特許文献2記載の離型フィルムは、被離型面の剥離帯電減少効果を有し、離型フィルム剥離後の被離型面への塵埃付着防止の有効な離型フィルムであるが、クッション性が不十分であって、例えば、フレキシブルプリント基板等の分野において使用した場合に、回路パターンの凹凸にそって十分に変形が起こらないため、熱プレス時において、回路パターン表面が離型フィルムによって、十分に保護されずに、回路パターンの銅箔が酸化され、いわゆる赤やけが生じてしまう等の問題があった。
【0013】
また特許文献3〜5の離型フィルムは、いずれも帯電防止性に優れるものではなく、上述したような問題があった。
【0014】
さらに、特許文献6記載の離型フィルムは、ハンドリング性に優れ、接着用プリプレグのはみ出しを防止でき、かつ多層プリント配線板の離型性に優れ、また多層プリント配線板のスルーホール部の表面平滑性にも優れ、さらに離型フィルムのフッ素樹脂層が容易に剥離でき、フッ素樹脂層の再使用ができるものであるが、帯電防止性やクッション性を備えてはおらず、上述のような問題があった。
【0015】
特許文献7記載の離型フィルムは、所定の弾性率を有する結晶性芳香族ポリエステルからなるシートであって、離型性が十分なものではなかった。また、厚い結晶性芳香族ポリエステルからなるシートを介して、樹脂フィルム40により回路パターンの凹凸を吸収する構成なので、クッション性が不十分であり、さらに、帯電防止性を考慮したものではなかった。
【0016】
そこで、本発明は、離型性、クッション性、帯電防止性に優れ、例えば、フレキシブルプリント基板とカバーレイフィルムとを熱プレス接着する際に好適に使用できる簡易な構成の帯電防止性離型フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、最外層としてフッ素樹脂層、及び中間層として帯電防止剤を含有してなる樹脂層を備えて構成され、前記フッ素樹脂層の層厚が1μm以上10μm以下であることを特徴とする帯電防止性離型フィルムにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0019】
第1の本発明は、最外層としてフッ素樹脂層(32)、及び中間層として帯電防止剤を含有してなる樹脂層(34)を備えて構成され、前記フッ素樹脂層の層厚が1μm以上10μm以下であることを特徴とする帯電防止性離型フィルム(100)である。なお、図番100は、離型フィルム(100A〜100C)を含む上位概念として用いている。
【0020】
第1の本発明の帯電防止性離型フィルム(100)は、フッ素樹脂層(32)を備え、帯電防止性離型フィルム(100)の離型性を良好にしている。また、帯電防止剤を含有してなる層(34)が基材層として帯電防止性離型フィルムに厚みを付与し、帯電防止性離型フィルム(100)を低コストなものとすると共に、帯電防止性離型フィルム(100)に良好なハンドリング性、帯電防止性能を付与している。
【0021】
さらに、帯電防止剤を含有してなる層(34)は、例えば、フレキシブルプリント基板(10)とカバーレイフィルム(20)とを熱プレス接着する際において、クッション材として働く。そして、薄層のフッ素樹脂層(32)を介してカバーレイフィルム(20)及び回路パターン(12)の凹凸を十分に吸収することができる。そのため、熱プレス接着時において回路パターン(12)を保護することができ、いわゆる赤やけを防止することができる。
【0022】
また、本発明の帯電防止性離型フィルム(100)は、離型性、クッション性、及び帯電防止性を兼ね備えている。このため、例えば、フレキシブルプリント基板(10)とカバーレイフィルム(20)との熱プレス接着において、カバーレイフィルム(20)上に本発明の帯電防止性離型フィルム(100)のみを配置すればよく、作業性を良好にすることができる。
【0023】
第1の本発明においては、最外層としてフッ素樹脂層、及び中間層として帯電防止剤を含有してなる樹脂層を備えて構成され、フッ素樹脂層の層厚が1μm以上10μm以下であることを必要とする。一般的に、フッ素樹脂層に帯電防止剤を混合させることはできず、これまでフッ素樹脂系のフィルムに帯電防止機能を付与することは困難であったが、本発明者は、最外層に、上記特定の厚み範囲のフッ素樹脂層を形成することで、フィルム全体として帯電防止機能を発揮できることを見出した。このように、フッ素樹脂層(32)の厚みを所定範囲とすることが重要であり、フッ素樹脂層(32)の厚さが薄すぎると、帯電防止性離型フィルム(100)として用いる際の強度が劣ってしまい、厚すぎると、帯電防止の性能が出にくくなり、また例えば、フレキシブル基板用として用いた場合には、カバーレイフィルム(20)及び回路パターン(12)の凹凸を十分に吸収できない。
【0024】
また、第1の発明において、帯電防止性離型フィルム(100)は、帯電防止性の観点から、帯電減衰時間(JIS−L1094−5−1、半減期測定方法に準拠して測定)が180秒以下であることが好ましく、150秒以下であることがさらに好ましく、130秒以下であることが最も好ましい。一般的に、樹脂フィルムに帯電防止性を付与するためには、樹脂フィルムを構成する樹脂組成物に帯電防止剤を混合させ、表面抵抗率や体積低効率を低減させることにより達成されるが、本発明によれば、帯電防止剤を混合してなる樹脂フィルムを使用するにも関わらず、表面低効率や体積低効率の減少が少なく、帯電減衰時間を短くすることで、帯電防止機能を発揮するという性質を有するため、電気は通すことはないが、静電気を効果的に防ぐという優れた効果を奏することができる。なお、帯電防止性を付与しつつ、表面抵抗率や体積抵抗率(いずれもJIS−C2151に準拠して測定)の値を、1.0×1011〜1.0×1016の範囲に、さらには1.0×1012〜1.0×1015の範囲(表面抵抗率の単位Ω/□、体積抵抗率の単位Ω・cm)とすることができる。上記帯電減衰時間、表面抵抗率、及び体積抵抗率は、帯電防止剤の含有量や、該帯電防止剤を含有してなる樹脂の種類等にもよるが、フッ素樹脂層を積層した構成や、各層の厚みに左右されるため、これらを調整することで、上記範囲内とすることが可能になる。
【0025】
第1の本発明の帯電防止性離型フィルム(100)は、フッ素樹脂層(32)のさらに外側に保護用のポリオレフィン樹脂層(36)を備えている構成(100B)とすることができる。このポリオレフィン樹脂層(36)は保護フィルムとして働き、フッ素樹脂層(32)に汚れや傷が付くのを防止する。なお、帯電防止性離型フィルム(100)として実際に使用する際には、ポリオレフィン樹脂層(36)は剥離される。ポリオレフィン樹脂層(36)とフッ素樹脂層(32)とは仮密着状態となっており、容易に剥離することができる。ポリオレフィン樹脂層(36)を形成するためには、帯電防止性離型フィルム(100)の表面に対しポリオレフィン樹脂層(36)を圧着したり、押出しラミネートしたり、あるいは帯電防止性離型フィルム(100)の製造時にフッ素樹脂層(32)のさらに外側にポリオレフィン樹脂層(36)を備えた形態で共押出積層することができる。
【0026】
第1の本発明の帯電防止性離型フィルム(100)の各層は共押出により積層することができる。この場合、フッ素樹脂層(32)は接着性フッ素樹脂からなる層(以下、接着性フッ素樹脂層(32)という場合がある。)とする必要がある。接着性フッ素樹脂を用いて、共押出により帯電防止剤を含有してなる樹脂層(34)と接着性フッ素樹脂層(32)とを良好に接着させることができる。また、共押出を採用することにより、表裏層のフッ素樹脂層(32)を薄層フィルムとすることができ、効率的かつ低コストで、帯電防止性離型フィルム(100)を作製することができる。
【0027】
第1の本発明の帯電防止性離型フィルム(100)は、フッ素樹脂層(32)と帯電防止剤を含有してなる樹脂層(34)との間に接着剤層(38)を備えた構成(100C)であってもよく、この場合帯電防止性離型フィルム(100C)は、ドライラミネートにより製造される。この場合のフッ素樹脂層(32)を形成するフッ素樹脂は特に限定されず、接着性フッ素樹脂であっても、他の一般的なフッ素樹脂であってもよい。薄層のフッ素樹脂層(32)のラミネートは、他の基材にフッ素樹脂層(32)を一旦形成し、これを、帯電防止剤を含有してなる樹脂層(34)に転写させることにより好適に行うことができる。
【0028】
第2の本発明は、第1の本発明の帯電防止性離型フィルム(100)からなるフレキシブルプリント基板用帯電防止性離型フィルムであって、フレキシブルプリント基板(10)とカバーレイフィルム(20)とを熱プレス接着する際において、該カバーレイフィルム(20)上に、前記帯電防止性離型フィルム(100)を配置して使用することを特徴とするフレキシブルプリント基板用帯電防止性離型フィルムである。
【0029】
第2の発明は、熱プレス機の熱プレス板60、60の間に、フレキシブルプリント基板(10)を配置し、その上にカバーレイフィルム(20)を配置する工程、カバーレイフィルム(20)上に第1の本発明の帯電防止性離型フィルム(100)を配置する工程、帯電防止性離型フィルム(100)を介して、フレキシブルプリント基板(10)とカバーレイフィルム(20)とを熱プレス接着する工程、を備えたカバーレイフィルム(20)で被覆されたフレキシブルプリント基板(10)の製造に好適に使用することができる。なお、帯電防止性離型フィルム(100)が保護フィルムであるポリオレフィン樹脂層(36)を備えている場合は、これを剥がしてから使用される。
【0030】
従来、カバーレイフィルム(20)上に離型フィルム(30)、クッション性樹脂フィルム(40)等の複数のフィルムを配置する必要があったが、本発明においては、第1の本発明の帯電防止性離型離型フィルム(100)のみを配置するだけでよい。そして、熱プレス接着の際には、カバーレイフィルム(20)及び回路パターン(12)の凹凸を十分に吸収して変形し、回路パターン(12)を保護し、回路パターン(12)のいわゆる赤やけを防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、優れた帯電防止性を発揮するフッ素樹脂系の帯電防止性離型フィルムを提供することができ、この帯電防止性離型フィルムは、帯電防止性のみならず、離型性、クッション性を兼ね備えているため、例えば、フレキシブルプリント基板用の離型フィルムとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
<帯電防止性離型フィルム100>
本発明の帯電防止性離型フィルム100は、帯電防止剤を含有してなる樹脂層34を備え、該樹脂層の外側にフッ素樹脂層32を備えている。フッ素樹脂層32と帯電防止剤を含有してなる樹脂層34との間に接着層38を備えていてもよく、また、フッ素樹脂層32の表面に保護用のポリオレフィン樹脂層36を備えていてもよい。なお、保護用のポリオレフィン樹脂層36は、実際に帯電防止性離型フィルム100を使用する際には剥離される。
【0033】
(フッ素樹脂層32)
フッ素樹脂層32を構成するフッ素樹脂としては、炭化水素骨格の少なくとも一部の水素をフッ素に置き換えた高分子であれば特に限定されず、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン−ポリビニリデンフルオロエチレン(PVdF)、フッ化エチレンプロピレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフロライド共重合体(THV)等が挙げられる。中でも、ETFEが、離型性、加工性等の点から好ましい。ETFEは、市販品として容易に入手でき、例えば、アフロンCOP(旭硝子社製)、Tefzel(デュポン社製)、ネオフロンETFE(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
【0034】
上記の一般的なフッ素樹脂は、帯電防止剤を含有してなる樹脂層との接着性が悪い。よって、上記の一般的なフッ素樹脂を使用する場合は、フッ素樹脂層32と、帯電防止剤を含有してなる樹脂層34とをドライラミネートにより接着層38を介して積層する必要がある。接着層38を形成する接着剤としては、樹脂材料のドライラミネートに使用する一般的な接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の接着剤を挙げることができる。上記ドライラミネートの方法については、後述する。
【0035】
接着剤を介さずに、フッ素樹脂層32及び帯電防止剤を含有してなる樹脂層34とを共押出積層により直接接着するには、フッ素樹脂層32を構成するフッ素樹脂として、接着性フッ素樹脂を使用する必要がある。
【0036】
「接着性フッ素樹脂」とは、融点が150℃〜250℃であって、変性ポリオレフィン樹脂の一種であるレクスパールRA3150(日本ポリエチレン社製)とフッ素樹脂とを、4×10〜5×10Paの試料圧で、240℃で、10分間プレスして、積層シートを作製し、幅2.5cm、長さ25cmに切断して採取したサンプルを、JIS Z0237に準じた方法にて、剥離速度5mm/分、温度23℃で、180度剥離強度の測定を行った時の180度剥離強度が4N/cm以上であるフッ素樹脂のことをいう。
【0037】
また、本発明における「接着性フッ素樹脂」のIRスペクトルは、1780cm−1〜1880cm−1の間に吸収ピークを有している。好ましくは、「接着性フッ素樹脂」のIRスペクトルは、1790cm−1〜1800cm−1の間及び1845cm−1〜1855cm−1の間に、無水マレイン酸基等の無水物に起因する吸収ピークを有し、あるいは、1800cm−1〜1815cm−1の間に末端カーボネート基に起因する吸収ピークを有し、あるいは、1790cm−1〜1800cm−1の間、1845cm−1〜1855cm−1の間及び1800cm−1〜1815cm−1の間に、無水マレイン酸基等の無水物及び末端カーボネート基の混合物に起因する吸収ピークを有している。
【0038】
さらに好ましくは、「接着性フッ素樹脂」のIRスペクトルは、1790cm−1〜1800cm−1の間及び1845cm−1〜1855cm−1の間に、無水マレイン酸基等の無水物に起因する吸収ピークを有し、あるいは、1800cm−1〜1815cm−1の間に末端カーボネート基に起因する吸収ピークを有している。
【0039】
また、主鎖のCH基に起因する2881cm−1付近における吸収ピークの高さに対する、無水マレイン酸基等の無水物に起因する1790cm−1〜1800cm−1の間の吸収ピークの高さの比は、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.2、さらに好ましくは0.8〜1.0である。
【0040】
また、主鎖のCH基に起因する2881cm−1付近における吸収ピークの高さに対する、末端カーボネート基に起因する1800cm−1〜1815cm−1の間の吸収ピークの高さの比は、1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.8、さらに好ましくは1.5〜1.7である。
【0041】
このような接着強度を有するフッ素樹脂として、例えば、テトラフルオロエチレン単位を有するホモポリマーやコポリマーであって、末端あるいは側鎖に、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有する樹脂が挙げられる。上記融点と接着強度を発現するのであれば、複数の樹脂を混合してもよい。市販品で上記のような接着強度を有するフッ素樹脂としては、例えば、ネオフロンEFEP(ダイキン工業社製)、フルオンLM−ETFE AH2000(旭硝子社製)が挙げられる。
【0042】
フッ素樹脂層32の層厚は、下限が好ましくは3μm以上であって、上限が好ましくは5μm以下である。フッ素樹脂層32の厚みが薄すぎると、帯電防止性離型フィルム100の強度が劣るおそれがある。また、フッ素樹脂層32の厚みが厚すぎると、帯電防止性能が得られなくなる虞がある。
【0043】
(帯電防止剤を含有してなる樹脂層34)
帯電防止剤を含有してなる樹脂層としては、帯電防止剤を混合することができる樹脂であれば、特に制限することなく用いることができる。例えば、離型性や帯電防止性に加えて、クッション性を付与させる観点においては、下記に示す理由から脂肪族ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂を用いれば、例えば、フレキシブルプリントプリント基板とカバーレイフィルムとの熱プレス接着において、クッション材として働き、薄層のフッ素樹脂層(32)を介してカバーレイフィルム(20)及び回路パターン(12)の凹凸を十分に吸収することができる。そのため、熱プレス接着時において回路パターン(12)を保護することができ、いわゆる赤やけを防止することができる。
【0044】
(クッション性について)
以下、帯電防止剤を含有してなる樹脂層34がクッション性を発揮する理由について、帯電防止剤を含有してなる樹脂層として、ポリアミド樹脂を使用した場合を例とし、本発明者が想定している事項を説明する。図5に6ナイロン及びエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)の弾性率を示した。一般的に、常温からプレス温度(160℃付近)において、絶乾状態の脂肪族ポリアミド樹脂の弾性率は、フッ素樹脂の弾性率よりも高い。このため、これまでの技術常識からすると、ポリアミド樹脂により離型フィルムにクッション性を付与することは考えられなかった。
【0045】
クッション性材料について鋭意検討している中、本発明者は、ポリアミド樹脂の弾性率が、含水条件下において低下することを見出した。表1に室温(20℃)における層厚3μmのフッ素樹脂(ETFE)及び実施例2で製造した離型フィルムの弾性率を示す。実施例2で製造した離型フィルムは、真空乾燥によりナイロンの含水分を0.4%としたもの(サンプル1)、室温保管によりナイロンの含水分を2.5%としたもの(サンプル2)、40℃湿度90%条件下で保管してナイロンの含水分を4.8%としたもの(サンプル3)の三種類について20℃における弾性率を測定した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示したように、絶乾状態(含水分0.4%)のサンプル1では、ETFEよりも弾性率が高かったが、それ以外は、ETFEよりも弾性率が低くなっていた。この結果より、含水条件下ではポリアミド樹脂をクッション材として使用できる可能性があることが示唆された。本発明者は、さらに、以下の熱プレス試験を試みた。
【0048】
(試験例1)
熱プレス試験の概要を図6に示す。熱プレス板60、60の間に、厚さ100μmの260℃以上の結晶融解ピーク温度(Tm)を有するポリアリールケトン樹脂及び非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合組成物からなる樹脂フィルム(IBUKI、三菱樹脂社製)16、及び、厚さ50μmの同様の樹脂フィルム18に厚さ12μmの銅箔の回路パターン12を形成したフレキシブルプリント基板10を配置し、これらとプレス熱板60、60との間に実施例1で製造した帯電防止性離型フィルム100(保護フィルムを剥離した状態で使用)を配置して、160℃、5MPa、30分間、熱プレスした。なお、試験例1では、離型フィルムとして、ナイロンの含水分が0.4%の絶乾品を用いた。
【0049】
熱プレス後、帯電防止性離型フィルム100を剥がして、回路パターン12側の表面状態を観察し、帯電防止性離型フィルム100表面に転写された凹凸の高さを電子線三次元粗さ解析装置ERA‐4000エリオニクス社製により測定した。
【0050】
(試験例2)
帯電防止性離型フィルム100として、ナイロンの含水分が2.5%の室温保管品を用いた以外は試験例1と同様にして熱プレス試験を行い、離型フィルム100に転写された凹凸の高さを測定した。
【0051】
(試験例3)
帯電防止性離型フィルムとして、ナイロンの含水分が4.8%の40℃、湿度90%保管品を用いた以外は試験例1と同様にして熱プレス試験を行い、離型フィルム100に転写された凹凸の高さを測定した。
【0052】
試験例1〜試験例3の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2より、ナイロンの含水分が2.5%以上で、離型フィルム100に転写された凹凸が高くなっていることが分かる。これより、本発明者は、脂肪族ポリアミド樹脂は含水状態において弾性率を低下させるため、カバーレイフィルムとフレキシブルプリント基板との熱プレス接着におけるクッション材として好ましいことを見出した。
【0055】
前記脂肪族ポリアミド樹脂としては、特に限定されず、ジアミンとジカルボ酸の重縮合で得られる(−CORCONHR´NH−)形、ラクタムの開環重合またはアミノカルボン酸の重縮合などで得られる(−CORNH−)形のいずれであってもよい。例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の縮合単位の重合体又はこれら2種以上との共重合体、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。
【0056】
前記帯電防止剤としては、前記樹脂層に混合して使用できるものであれば、特に制限されず、例えば、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体、ポリエーテルエステルアミド等の高分子、酸化錫インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロ−ル、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾ−ル等の導電性高分子、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、鉛、チタン、モリブデン、タンタル、ニオブ、金、白金等の金属フィラーの他、界面活性剤、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの中でも、透明性を維持することができるうえ、帯電防止機能が長期に亘って保たれ経済性に優れており、さらに樹脂層に添加することで樹脂層の弾性率を低下させることができるなどの理由から、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体、ポリエーテルエステルアミド等の高分子が好ましい。中でもポリエーテルエステルアミドブロックコポリマーが脂肪族ポリアミドとの混合性に優れており特に好ましい。
【0057】
前記帯電防止剤の配合量としては、配合される樹脂の種類や帯電防止剤の種類に応じて設定すれば良く、必ずしも制限されるものではないが、帯電防止性(制電性)を付与する作用や成形性を考慮すると、配合される樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜25質量部、より好ましくは15〜22質量部、さらに好ましくは18〜20質量部である。
【0058】
帯電防止剤を樹脂層に混合する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、
タンブラー、V型ブレンダー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などの混合機により混合したり、押出機の供給口に計量した各成分を直接供給したり、更には2ケ所以上の供給口を有する押出機の各供給口に別々に計量した成分を供給して混合してもよい。
【0059】
帯電防止剤を含有してなる樹脂層34の層厚は、帯電防止性離型フィルム100のクッション性、使用樹脂量が増大によるコスト面、及び帯電防止性能の観点から、下限が好ましくは10μm以上であり、より好ましくは40μm以上である。また、上限は好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。
【0060】
(ポリオレフィン樹脂層36)
保護用のポリオレフィン樹脂層36を構成するポリオレフィン樹脂としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチレンアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチル−メチルアクリレート共重合体、エチレンーメチルメタクリレート共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を挙げることができる。また、ポリプロピレンとしては、ポリプロピレンのホモポリマーやエチレン等とのランダムコポリマーなどを挙げることができる。
【0061】
保護用のポリオレフィン樹脂層36の層厚は、下限が好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、上限が好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。ポリオレフィン樹脂層36の層厚が薄すぎると、フッ素樹脂層32の保護が不十分となる場合がある。また、ポリオレフィン樹脂層36の層厚が厚すぎると、保護効果が飽和し廃棄物が増加するという問題がある。
【0062】
ポリオレフィン樹脂層36は、シリカ、タルク等の粒径5μm〜15μmの微粒子を含有させて構成することができる。これによりポリオレフィン樹脂層36の表面に凹凸を付与し、この凹凸をフッ素樹脂層32に転写させることができる。この場合、保護フィルムであるポリオレフィン樹脂層36を取り去った後、離型シート100のすべりが良く、取扱易くなるという効果がある。
【0063】
(添加剤等)
上記したフッ素樹脂層32、帯電防止剤を含有してなる樹脂層34、ポリオレフィン樹脂層36には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、燐系、フェノール系等の各種酸化防止剤、ラクトン系、フェノールアクリレート系等のプロセス安定剤、熱安定剤、等の樹脂材料に一般的に添加される添加剤を挙げることができる。
【0064】
(帯電防止性離型フィルム100の製造方法)
帯電防止性離型フィルム100は、共押出、ドライラミネートにより製造することができる。具体的には、図2に示した実施形態100A及び実施形態100Bは共押出により製造することができる。実施形態100Cはドライラミネートにより製造することができる。
【0065】
実施形態100Cのドライラミネートは、薄層のフッ素樹脂層32を単層で取り扱うのが難しいため転写によりドライラミネートされる。例えば、二軸延伸したPETフィルムに低融点EVA接着剤をコートした支持基材に、フッ素樹脂層32及びポリエチレン樹脂層を共押出ラミネートしておいて、その後、ポリエチレン樹脂層を剥離し、フッ素樹脂層32側をアクリル系等の接着剤を介して帯電防止剤を含有してなる樹脂層34にドライラミネートし、最後に支持基材を剥離することで製造される。
【0066】
<離型フィルム100の用途>
次に、本発明の帯電防止性離型フィルム100の用途について、具体的に説明する。図1に、従来における、フレキシブルプリント基板10とカバーレイフィルム20とを熱プレス接着する際において、離型フィルム30及びクッション性樹脂シート40が使用される形態を示した。
【0067】
この形態を改良したものとして、図3に示すような形態も従来行われていた。図3の形態では、離型フィルム30として、フッ素樹脂からなる単層フィルムが使用され、離型性が向上されている。また、クッション性樹脂シート40として、複数枚(図示の形態では2枚)のポリエチレンシート42を離型フィルム44で挟んで配置したものが使用されている。複数枚のポリエチレンシート42がクッション性を向上させることを目的として使用されており、熱プレス接着時の高温条件下でポリエチレンシート42が溶融し、他の部材に付着してしまうのを防止するため、離型フィルム44が使用されている。なお、図示の形態においては、プレス熱板60の表面にクッション性を付与するためのシリコーンゴムシートあるいはクラフト紙50が配置されている。このシリコーンゴムシート等50の配置は任意である。
【0068】
この改良した形態においても、単層のフッ素樹脂を離型フィルム30として使用しており、フィルムの取扱性の点から、離型フィルムは少なくとも25μm程度の厚みを有している必要がある。このような層厚の離型フィルムでは、クッション性樹脂シート40がカバーレイフィルム20及び回路パターン12の凹凸を十分に吸収できず、やはり、クッション性が不十分なものとなっていた。そのため、熱プレス接着した際に、回路パターン12の銅箔に赤やけが生じるという問題が生じていた。
【0069】
また、カバーレイフィルム20の上に、まず離型フィルム30を配置し、その上に離型フィルム44、ポリエチレンフィルム42を二枚、さらに、離型フィルム44を配置する必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【0070】
図4に本発明の帯電防止性離型フィルム100の一使用形態を示した。本発明の一使用形態によれば、フレキシブルプリント基板10の上に、カバーレイフィルム20を重ね、その上に離型フィルム100を配置するだけでよい。従来に比べ作業性が大幅に向上している。
【0071】
また、帯電防止性離型フィルム100のコシを、帯電防止剤を含有してなる樹脂層34が担っているので、帯電防止性離型フィルム100に良好なハンドリング性を付与しつつフッ素樹脂層32を薄くすることができる。このため、本発明の帯電防止性離型フィルム100においては、薄いフッ素樹脂層32を介して帯電防止剤を含有してなる樹脂層34がカバーレイフィルム20及び回路パターン12の凹凸を十分に吸収することができ、熱プレス接着時において、回路パターン12表面を十分に保護し、銅箔の赤やけを防止することができる。また、優れた帯電防止性により、セット時に1枚のみ取り出したいのに静電気により2枚密着してしまい1枚のみ取り出せない、セット時に所定位置でない箇所で密着してしまいセットしにくい、静電気により作業環境中のゴミが離型フィルムに付着し、プレス時に不良品発生の原因になってしまう等の問題が生じることがない。
【0072】
<フレキシブルプリント基板用帯電防止性離型フィルム>
本発明のフレキシブルプリント基板用帯電防止性離型フィルムは、フレキシブルプリント基板とカバーレイフィルムとを熱プレス接着する際において、該カバーレイフィルム上に、前記帯電防止性離型フィルムを配置して使用するものであって、以下に示すフレキシブル基板の製造方法において用いることができる。
【0073】
カバーレイフィルムによる被覆されたフレキシブルプリント基板の製造方法は、以下の三つの工程を備えて構成される。第1工程は、熱プレス板60、60の間に、フレキシブルプリント基板10を配置し、その上にカバーレイフィルム20を配置する工程である。カバーレイフィルムは、基材樹脂層22及び接着層24により構成されており、接着層24側をフレキシブルプリント基板10側にして配置される。熱プレス板60、60の表面には、クッション性を付与するために、シリコーンゴム製のシートあるいはクラフト紙50、50を配置してもよい。
【0074】
第2工程は、カバーレイフィルム20上に本発明の帯電防止性離型フィルム100を配置する工程である。従来は離型フィルム及びクッション性樹脂シート等の複数のシートを配置する必要があったが、本発明では、帯電防止性離型フィルム100のみを配置すればよく、作業工程を大幅に簡略化できる。
【0075】
第3工程は、離型フィルム100を介してフレキシブルプリント基板10及びカバーレイフィルム20を熱プレス接着する工程である。熱プレスの温度は140℃〜180℃とすることが好ましく、プレス圧力は3MPa〜7MPaとすることが好ましい。また、熱プレスの時間は特に限定されないが10分以上とするのが好ましく1時間程度プレスすれば十分である。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
下記の構成となるように、280℃マルチマニホールドダイより共押出し、5層積層フィルムを得た。
第1層:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、日本ポリエチレン社製)15μm
第2層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)3μ

第3層:6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)に、ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタット6500、三洋化成(株)社製)20重量%をペレット混合したものを、同方向2軸押出機で混合し、他の層と共押出した。44μm
第4層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)3μm
第5層:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、日本ポリエチレン社製)15μm
【0077】
(実施例2)
下記の構成となるように、280℃マルチマニホールドダイより共押出し、3層積層フィルムを得た。
第1層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製) 5μm
第2層:6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)に、ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタット6500、三洋化成(株)社製)20重量%をペレット混合したものを、同方向2軸押出機で混合、他の層と共押出した。90μm
第3層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)5μm
【0078】
(実施例3)
下記の構成となるように、280℃マルチマニホールドダイより共押出し、2層積層フィルムを得た。
第1層:ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)3μm
第2層:ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製)15μm
この2層積層フィルムを押出直後に、あらかじめ用意した厚さ25μmの2軸延伸したPETフィルムに低融点EVA系接着剤を厚さ約1μmにコートした支持基材フィルムと、75℃に加熱したニップロールを用いて熱圧着によって貼り合わせを行い、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムからポリエチレン樹脂層を剥離し、ETFE側にアミノアクリル系接着剤を1μmコートした。
【0079】
上記の積層フィルムとは別に、6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)に、ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタット6500、三洋化成(株)社製)20重量%とをペレット混合したものを、同方向2軸押出機で混合、Tダイを使用し44μmのフィルムに押出成形した。このフィルムの両側に、上記の積層フィルムの接着剤をコートした面を貼り合わせて、以下の層構成を有する積層フィルムを得た。
第1層:ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)3μm
第2層:接着層(アミノアクリル系接着剤)1μm
第3層:6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)に、ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタット6500、三洋化成(株)社製)20重量%をペレット混合した層44μm
第4層:接着層(アミノアクリル系接着剤)1μm
第5層:ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)3μm
【0080】
(比較例1)
下記の構成となるように、280℃マルチマニホールドダイより共押出し、5層積層フィルムを得た。
第1層:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、日本ポリエチレン社製)15μm
第2層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)3μm
第3層:6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)44μm
第4層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)3μm
第5層:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、日本ポリエチレン社製)15μm
【0081】
(比較例2)
下記の構成となるように、280℃マルチマニホールドダイより共押出し、3層積層フィルムを得た。
第1層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)5μm
第2層:6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)90μm
第3層:接着性ETFE(フルオンLM−ETFE AH2000、旭硝子社製)5μm
【0082】
(比較例3)
下記の構成となるように、280℃マルチマニホールドダイより共押出し、2層積層フィルムを得た。
第1層:ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)3μm
第2層:ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製)15μm
この2層積層フィルムを押出直後にあらかじめ用意した厚さ25μmの2軸延伸したPETフィルムに低融点EVA系接着剤を厚さ約1μmにコートした支持基材フィルムと、75℃に加熱したニップロールを用いて熱圧着によって貼り合わせを行い、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムからポリエチレン樹脂層を剥離し、ETFE側にアミノアクリル系接着剤を1μmコートした。
【0083】
上記の積層フィルムとは別に、押出機より6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を厚さ44μmのフィルムに押出成形した。この6ナイロンのフィルムの両側に、上記の積層フィルムの接着剤をコートした面を貼り合わせて、以下の層構成を有する積層フィルムを得た。
第1層:ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)3μm
第2層:接着層(アミノアクリル系接着剤)1μm
第3層:6ナイロン(1030、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)44μm
第4層:接着層(アミノアクリル系接着剤)1μm
第5層:ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)3μm
【0084】
(比較例4)
ETFE(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)を押出機により厚さ50μmのフィルムに押出成形して単層フィルムを作製した。
【0085】
(評価方法)
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた離型フィルムを用いて、必要に応じて保護フィルムを剥離してから、上記した試験例1と同様にして熱プレス試験を行った。
【0086】
(剥離した帯電防止性離型フィルムの表面凹凸の高さ)
上記した試験例1と同様にして、熱プレス後、離型フィルムを剥離し、離型フィルムの表面の凹凸の高さを測定した。結果を表3に示す。
【0087】
(帯電防止性)
作業のハンドリングのしやすさ、ゴミの付着有無、帯電減衰時間(JIS−L1094−5−1 半減期測定方法に準拠、シシド静電気社製 H−0110使用)、帯電量(試料を2枚重ねて、試料から10mm離れた位置でKASUGA KSD−0103にて測定)を評価した。結果を表3に示す。
【0088】
(表面抵抗率及び体積抵抗率)
表面抵抗率及び体積抵抗率は、JIS−C2151に準拠して測定した。なお、測定には、アドバンテスト社製の微小電流計(8340A)及びレジスティビティ・チェンバー(R12702A)を用いた。結果を表3に示す。
【0089】
(回路パターンの状態)
熱プレス試験後、離型フィルムを剥がして、回路パターンの表面の状態を目視により以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:銅箔に酸化が全くみられなかった。
△:銅箔の一部に酸化(赤やけ)がみられた。
×:銅箔の大部分が酸化(赤やけ)していた。
【0090】
(評価結果)
【表3】

【0091】
表3より、本発明の帯電防止性離型フィルム(実施例1〜3)は、帯電減衰時間が極めて短く、帯電防止性が付与されていることが分かった。加えて、表面の凹凸の高さが高く、回路パターンの凹凸にそって変形していることが明らかにされた。また、本発明の帯電防止性離型フィルム(実施例1〜3)を用いた場合は、回路パターンの状態が良好であり、帯電防止性離型フィルムが回路パターンを十分に保護できていることが示された。
【0092】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う帯電防止性離型フィルム、カバーレイフィルムによる被覆されたフレキシブルプリント基板の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】従来のカバーレイフィルムとフレキシブルプリント基板との熱プレス接着の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の帯電防止性離型フィルムの層構成を示す概念図である。
【図3】従来のカバーレイフィルムとフレキシブルプリント基板との熱プレス接着の概要を示す説明図である。
【図4】本発明の帯電防止性離型フィルムを用いた場合における、カバーレイフィルムとフレキシブルプリント基板との熱プレス接着の概要を示す説明図である。
【図5】6ナイロン及びETFEの弾性率を示す説明図である。
【図6】熱プレス試験の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
10 フレキシブルプリント基板
20 カバーレイフィルム
30 離型フィルム
32 フッ素樹脂層
34 帯電防止剤を含有してなる樹脂層
36 ポリオレフィン樹脂層
38 接着層
100A〜100C 帯電防止性離型フィルム
40 クッション性樹脂シート
50 シリコーンゴムシート、クラフト紙
60 プレス熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層としてフッ素樹脂層、及び中間層として帯電防止剤を含有してなる樹脂層を備えて構成され、前記フッ素樹脂層の層厚が1μm以上10μm以下であることを特徴とする帯電防止性離型フィルム。
【請求項2】
帯電減衰時間が180秒以下であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止剤が、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項4】
前記帯電防止剤を含有してなる樹脂層が、脂肪族ポリアミド樹脂層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項5】
前記フッ素樹脂層のさらに外側に保護用のポリオレフィン樹脂層を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項6】
各層が共押出積層され、前記フッ素樹脂層が接着性フッ素樹脂からなる層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項7】
前記フッ素樹脂層と、前記樹脂層との間に接着剤層を備え、ドライラミネートにより積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の帯電防止性離型フィルムからなるフレキシブルプリント基板用帯電防止性離型フィルムであって、フレキシブルプリント基板とカバーレイフィルムとを熱プレス接着する際において、該カバーレイフィルム上に、前記帯電防止性離型フィルムを配置して使用することを特徴とするフレキシブルプリント基板用帯電防止性離型フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241388(P2009−241388A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90277(P2008−90277)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】