説明

帯電防止機能付き電源コード

【課題】耐摩耗性に優れ、またプラグ等の電気接続端子を特別に絶縁加工することなく、電気接続端子の絶縁性を確保でき、しかも端子やコードの表面が帯電することを極力抑えることができる帯電防止機能付き電源コードを提供する。
【解決手段】電気接続端子1付きの電源コードである。電気接続端子1の絶縁樹脂層1aを、10(Ω)の電気抵抗値に選定する。またコード2の絶縁樹脂層2aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層2bを押し出し成型法で形成する。この場合、帯電防止層2bを透明状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラグやコネクタ等の電気接続端子とコードとが一体化されている電源コードに関し、更に詳しくは、クリーンルームでの使用に適するよう形成した帯電防止機能付き電源コードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電気対策が施された電線としては、導体としての金属線を絶縁樹脂で被覆し、その外面に帯電防止剤が噴霧されて帯電防止層が形成されているものがある(例えば特許文献1参照)。
また従来、静電気対策が施されたコードとしては、例えば特許文献2に記載されているものが知られている。この従来品は、電線を被覆する絶縁樹脂層の外側に、半導電性の樹脂被膜が押し出し成型法により形成されているものである。
【0003】
而して、帯電防止剤を噴霧することにより、帯電防止層が形成される場合は、通常、耐摩耗性が低いため、帯電防止剤が剥がれて塵埃化するのを避けられないものである。従ってこの種のコードは、半導体製造工場や手術室等のクリーンルームでの使用には適さない。
【0004】
これに対し、帯電防止層を押し出し成型法で形成する場合は、耐磨耗性の問題については解消する。
しかしながら従来、この種のコードは、帯電防止層を、界面活性剤入りの樹脂で成型することが多かった。従ってこれによると、電気抵抗値が1010(Ω)〜1011(Ω)となり、帯電し易くなって静電気対策上、効果が小さいものであった。
【0005】
ところで、プラグ等の電気接続端子の刃間の絶縁抵抗は、規格として10(Ω)以上と決められている。これ以下の場合は、中子を絶縁物で作って規格の絶縁性を担保する必要があり、この場合はプラグ等の成型工程、加工工程が増加する、という問題が生じるものである。
【0006】
而して、通常、絶縁物の電気抵抗値は、1012(Ω)以上と言われているが、電気接続端子やコードの帯電防止層の電気抵抗値を、1010(Ω)以上に選定すると、絶縁性が高まり、それに応じて静電気も帯び易くなるものである。
従って本来、クリーンルーム等で使用する電源コードに静電気対策を施す場合は、表面の耐摩耗性を有し、プラグ等の電気接続端子の絶縁性を特別な部品を必要とすることなく確保でき、しかも帯電防止層が静電気を帯びることを極力抑えることができるよう形成されているのが望ましい。
【特許文献1】特開平8−235936号公報
【特許文献2】特開平7−288039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、耐摩耗性に優れ、またプラグ等の電気接続端子を特別に絶縁加工することなく、電気接続端子の絶縁性を確保でき、しかも端子やコードの表面が帯電することを極力抑えることができるよう形成した帯電防止機能付き電源コードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、次ぎのような技術的手段を採る。
即ち本発明の電源コードは、図1に示されるように、電気接続端子1付きの電源コードであって、上記の電気接続端子1の絶縁樹脂層1aが、10(Ω)の電気抵抗値に選定され、コード2の絶縁樹脂層2aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層2bが押し出し成型法で形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
また本発明の他の構成としては、次ぎのものがある。
即ち、この本発明は、図2に示されるように、電気接続端子1付きの電源コードであって、上記の電気接続端子1の絶縁樹脂層1aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層1bが射出成型法で形成され、コード2の絶縁樹脂層2aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層2bが押し出し成型法で形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0010】
またこれらの本発明の場合、帯電防止層1b、2bは、透明状に形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、コード2等の絶縁樹脂層2aの表面に印刷等の手段で施されている文字や記号等を判読でき、あらためて帯電防止層1b、2bの表面に、この種の文字等を表示する手間暇を一掃できるからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、このように電気接続端子の絶縁樹脂層を、10(Ω)の電気抵抗値に選定し、コードの絶縁樹脂層の表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層を押し出し成型法で形成しているものである。
従って本発明の場合は、押し出し成型により帯電防止層の耐摩耗性が高いため、静電気対策の被膜が剥がれて塵埃化する、という従来の問題を解消できる。
またこれによると、プラグ等の電気接続端子の絶縁性を特別な部品を必要とすることなく規格通りに確保でき、更には電気接続端子とコードの表面に静電気が帯びることを極力抑えることができる。
【0012】
また請求項2記載の本発明は、電気接続端子の絶縁樹脂層の表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層が射出成型法で形成され、コードの絶縁樹脂層の表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層が押し出し成型法で形成されているものである。
従ってこれによると、上記の耐摩耗性等の問題を解決できると共に、電気接続端子が、1010(Ω)以上の値に絶縁性が高く形成されている場合でも、電気接続端子の表面が帯電することを、コードと共に極力抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明は、図1等に示されるように、電気接続端子1付きの電源コードである。この実施形態では、コード2の一端に、電気接続端子1としてのプラグ11が、他端にコネクタ12が接続されている。
【0014】
本発明の場合、電気接続端子1の絶縁樹脂層1aは、10(Ω)の電気抵抗値に選定され、コード2の絶縁樹脂層2aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層2bが押し出し成型法で形成されている。帯電防止層2bの膜厚は、この実施形態では、0.2mmに選定されている。またこの実施形態の本発明品は、コード2の帯電防止層2bが、透明状に形成されている。なお、3は電線である。
【0015】
プラグ11等の電気接続端子1は、挿し込み時に強度が必要のため、絶縁樹脂層1aは、例えばポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系の硬質樹脂で形成されるのが良い。またコード2は、フレキシブル性が要求されるから、例えばポリウレタン系の軟質樹脂で成型されるのが良い。
【0016】
而して本発明品を製造する場合は、先ず、電気抵抗値が10(Ω)の軟質樹脂を押し出し成型してコード2に、帯電防止層2bを形成する。次ぎに、このコード2と、端子形成用の金属部品を、金型のキャビティにセットし、電気抵抗値が10(Ω)の硬質性の樹脂をキャビティに射出し、一体成型することにより、本発明品は形成されるものである。
【0017】
この実施形態に係る本発明品は、具体的には、ルーブリゾール アドバンスド マテリアルズ インコーポレイテッド(Lubrizol Advanced Materials Inc,米国法人)のポリウレタン系ポリマー導電樹脂(STAT−RITE(商標名)、品番X−5091)でコード2が成型され、電気接続端子1は、同社のポリオレフィン系ポリマー導電樹脂で成型されている。
【0018】
次ぎに、請求項2記載の本発明の実施形態を、図2に従って説明する。
この本発明品は、電気接続端子1の絶縁樹脂層1aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層1bが射出成型法により形成されている。
【0019】
またこの本発明の場合は、コード2の絶縁樹脂層2aの表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層2bが押し出し成型法で形成されている。電気接続端子1とコード2の帯電防止層1b、2bを形成する樹脂材は、上例と同様であり、また帯電防止層1b、2bは透明状に形成されているのが良い。
【0020】
この本発明の場合は、先ず、コード2の帯電防止層2bを押し出し成型で形成する。次ぎに、このコード2を端子形成用の金属部品と一緒に金型のキャビティにセットし、1010(Ω)以上の電気抵抗値の硬質樹脂で、電気接続端子1の絶縁樹脂層1aを射出成型する。その後、電気接続端子1の絶縁樹脂層1aの表面に、10(Ω)の電気抵抗値の硬質樹脂を射出し、帯電防止層1bを二次成型することにより、実現されるものである。
【0021】
以上の処において、本発明の場合、帯電防止層1b、2bの膜厚は、上例に限定されるものではない。この膜厚は、通常、厚くするほど電気抵抗が減り、静電気を逃し易くなるから、規格の範囲内(0.5(mm)厚まで許容)で、コストとの兼ね合いにより適宜選定されるので良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のコードの好適な一実施形態を示し、Aは平面図、BはAのB−B線拡大断面図である。
【図2】本発明の他のコードの一実施形態を示し、Aは平面図、BはAのB−B線要部拡大断面図、CはAのC−C線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 電気接続端子
1a 絶縁樹脂層
1b 帯電防止層
2 コード
2a 絶縁樹脂層
2b 帯電防止層
3 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続端子付きの電源コードであって、上記の電気接続端子の絶縁樹脂層が、10(Ω)の電気抵抗値に選定され、コードの絶縁樹脂層の表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層が押し出し成型法で形成されていることを特徴とする帯電防止機能付き電源コード。
【請求項2】
電気接続端子付きの電源コードであって、上記の電気接続端子の絶縁樹脂層の表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層が射出成型法で形成され、コードの絶縁樹脂層の表面に、電気抵抗値が10(Ω)の帯電防止層が押し出し成型法で形成されていることを特徴とする帯電防止機能付き電源コード。
【請求項3】
請求項1又は2記載の帯電防止機能付き電源コードであって、帯電防止層が、透明状に形成されていることを特徴とする帯電防止機能付き電源コード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−102923(P2010−102923A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272860(P2008−272860)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(394006037)株式会社松本技研 (4)
【Fターム(参考)】