説明

常温収縮チューブの装着方法

【課題】スパイラルコアを用いて常温収縮チューブを装着対象物に取り付ける際に、スパイラルコアに発生する座屈を防止し、円滑にスパイラルコアを引き抜くこと。
【解決手段】常温収縮性を有する筒状の常温収縮チューブ100内に、常温収縮チューブ100を拡径保持するスパイラルコア150を挿入する。常温収縮チューブ100を拡径保持したスパイラルコア150を電力ケーブルの中間接続部分上に配置する。スパイラルコア150の一端部154内には、スパイラルコア150に内接してスパイラルコア150の筒状を維持する筒状の形状維持治具200が配置されている。スパイラルコア150を解体する際には、スパイラルコア150の一端部154側から導出される帯状体152を、形状維持治具200内に挿通させてスパイラルコア150の他端部156側へ引き抜いてスパイラルコア150を解体する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラルコア等のインナーコアにより拡径状態で支持された常温収縮チューブの装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(CVケーブル)等の高電圧ケーブル(電力ケーブル)の中間接続部分、終端接続部分、または通信ケーブル等の端末等における接続部、或いは、パイプ接続部等の装着対象物を絶縁補強、防水、防護、防食、または遮水保護するために常温収縮チューブが用いられている。
【0003】
この常温収縮チューブは、ゴム弾性体で作られ、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(Ethylene Propylene Diene Monomer :EPDM、EPM)等の材料で作られた筒状体であり、常温で収縮状態となる。
【0004】
この常温収縮チューブを使用する際には、予め常温収縮チューブを押し広げる必要があり、この押し広げた状態(以下「拡径」という)を維持するために常温収縮チューブ内に配置する拡径保持材として、例えば、特許文献1に示すスパイラルコアが用いられる。
【0005】
このスパイラルコアは、PP(PolyproPylene)等の合成樹脂で作られた帯状あるいは紐状の中実のリボンを、幅方向で剥離可能に連結して、螺旋状の筒体にすることによって形成される。これに拡径された常温収縮チューブを被せることにより、常温収縮チューブを所定の径で維持することができる。常温収縮チューブは、通常スパイラルコアにより予め拡径された状態のスパイラルコア付き常温収縮チューブとして現場などに搬送されて使用される。
【0006】
このようにスパイラルコア付き常温収縮チューブを目標対象物に装着する方法は、まず、スパイラルコア付きの常温収縮チューブを装着する目的の箇所に配置する。そして、スパイラルコアの一端側のリボンをスパイラルコア内を挿通させて他端側に導き、他端側から引くことによって幅方向で連結するリボン同士が引き剥がされてスパイラルコアは解体される。これにより、スパイラルコアは被覆目的物上から取り除かれ、常温収縮チューブが収縮して目的物を被覆する。
【0007】
具体的に、常温収縮チューブを、電力ケーブルの中間接続部を構成する絶縁チューブとして用いる場合、一対の電力ケーブルの端部で露出する導体同士が導体接続管によって接続された接続部分上に配置する。そして、スパイラルコアの一端部側のリボンを他端部側に引き抜くことによって、接続部分に、収縮する絶縁チューブとしての常温収縮チューブが被覆するように装着される。
【特許文献1】特開2002−27627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スパイラルコアは常時、常温収縮チューブの弾性収縮力により締め付けられている。このため、装着対象物上に配置してリボンを引き抜くと、引き抜かれる前のリボンにより拡径保持されていた常温収縮チューブの部位の収縮力による締め付け圧力が、スパイラルコアにおいてまだ引き抜かれていない部位に作用することによって、スパイラルコアが引き抜き途上で座屈して、常温収縮チューブと装着対象物、例えば、ケーブルの直線接続部分(中間接続部分)の外面との間に一部が挟まり、リボンを引き抜けなくなる。
【0009】
特に、常温収縮チューブの被覆目的物を電力ケーブルの中間接続部分とした際に、スパイラルコアで座屈が発生する場合、リボンを無理に引き抜くと、絶縁チューブとしての常温収縮チューブとの界面を形成する電力ケーブルの接続部分の外面に傷が生じる恐れがある。
【0010】
このように、スパイラルコアの引き抜き途上で座屈が発生した場合、常温収縮チューブを切り裂いて取り外し、別のスパイラルコア付き常温収縮チューブを用いる必要が生じ、常温収縮チューブの装着作業時間が嵩むとともに、作業コストもかかるという問題がある。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、スパイラルコアを用いて常温収縮チューブを装着対象物に取り付ける際に、スパイラルコアに発生する座屈を防止し、円滑にスパイラルコアを引き抜くことができる常温収縮チューブの装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の常温収縮チューブの装着方法は、常温収縮性を有する筒状の常温収縮チューブ内に、前記常温収縮チューブを拡径保持する筒状の拡径保持材を挿入し、この拡径保持材を前記常温収縮チューブの装着箇所上に配置して、前記拡径保持材の一端部側から導出される帯状体を、前記拡径保持材内に挿通させて他端部側へ引き抜くことによって前記拡径保持材を一端部側から解体して、前記常温収縮チューブを装着対象物に装着させる常温収縮チューブの装着方法において、前記拡径保持材の一端部内に、前記拡径保持材に内接して前記拡径保持材の筒形状を維持する筒状の支持治具を配置し、前記常温収縮チューブを拡径保持する前記拡径保持材を解体する際に、前記拡径保持材の一端部側から導出される前記帯状体を、前記支持治具内に挿通させて前記拡径保持材の他端部側へ引き抜くようにした。
【0013】
この方法によれば、常温収縮チューブを拡径保持する拡径保持材を解体する際に、拡径保持材の一端部側から導出される帯状体を、一端部内に配置された支持治具内を挿通させて拡径保持材の他端部側へ引き抜く。このため、拡径保持材の一端部側では、解体に伴い、引き抜かれた帯状体が支持していた常温収縮チューブの部位が収縮して所定箇所に装着されるとともに、引き抜かれた帯状体が支持治具内を挿通していることから、引き抜かれる帯状体によって支持治具自体も引き抜き方向に移動する。つまり、拡径保持材において常に帯状体が導出されている一端部はその内側から支持治具により筒状を維持された状態となっている。これにより、拡径保持材の解体した部分が支持していた常温収縮チューブの部位の収縮に伴い、常温収縮チューブの締め付け力が増加して、拡径保持材の一端部に作用しても拡径保持材の筒形状を維持することができる。つまり、常温収縮チューブの収縮による拡径保持材の座屈を防止することができる。
【0014】
したがって、拡径保持材に発生する座屈を防止し、円滑に拡径保持材を引き抜いて、常温収縮チューブを装着することができる。
【0015】
本発明の常温収縮チューブの装着方法は、上記方法において、前記支持治具は、弾性変形して、その外径が拡縮自在に構成され、前記拡径保持材内において前記拡径保持材の内面を押圧しているようにした。
【0016】
この方法によれば、拡径保持材の一端部内において、支持治具は、拡径保持材の内面を押圧している。このため、帯状体を引き抜くことにより拡径保持材の解体が進むにつれて、常温収縮チューブの締め付け力が不均一になることにより、引き抜き方向に押圧されて移動する支持治具の移動を抑制することができる。
【0017】
本発明の常温収縮チューブの装着方法は、上記方法において、前記支持治具は、筒状部材において軸方向にスリットを形成した断面C字状の筒状弾性体からなるようにした。
【0018】
この方法によれば、支持治具は筒状部材において軸方向にスリットを形成した断面C字状の筒状弾性体であるため、スリットを開いて常温収縮チューブの装着箇所に容易に取り付けることができると共に、スリットを閉じて縮径して拡径保持材の内部に設置して縮径状態を開放することによって、拡径保持材の一端部の内周面を容易に押圧させることができる。
【0019】
本発明の常温収縮チューブの装着方法は、上記方法において、前記支持治具は、軸方向に延びて前記スリットを規定する対向辺部を有し、前記対向辺部には、前記対向辺部が互いに接近した際に、互いに係合して前記対向辺部の軸方向への移動を規制する係合部と被係合部とがそれぞれ設けられているようにした。
【0020】
この方法によれば、断面C字状に形成された支持治具の軸方向へのねじれを防止することができる。
【0021】
本発明の常温収縮チューブの装着方法は、上記方法において、前記支持治具は、前記常温収縮チューブにおける軸方向の長さの半分以上の長さを有するようにした。
【0022】
この方法によれば、拡径保持材の解体途上において、支持治具が拡径保持材の他端部から突出する。このため、この突出した拡径保持材の部位を引き抜き方向とは逆の方向に押圧することによって、拡径保持材の解体速度を調整することができる。
【0023】
本発明の常温収縮体は、常温収縮性を有する筒状の常温収縮チューブと、前記常温収縮チューブ内に挿入され、前記常温収縮チューブを拡径保持する筒状体をなし、一端部側から導出される帯状体を、前記筒状体内に挿通させて他端部側へ引き抜くことにより前記一端部側から解体される拡径保持材と、前記拡径保持材の一端部内に配置され、前記拡径保持材に内接して前記拡径保持材の筒状を維持する筒状の支持治具とを備え、前記支持治具内には、前記拡径保持材の一端部側導出される前記帯状体が挿通されて前記拡径保持材の他端部側から露出している構成を採る。
【0024】
この構成によれば、常温収縮体を装着箇所上に配置して、拡径保持材の一端部側から導出される帯状体を拡径保持材内の筒状の支持治具内を挿通させて、拡径保持材の他端部側に引き抜くことで拡径保持材を解体できる。この帯状体の引き抜きの際に、拡径保持材の一端部側では、解体に伴い、引き抜かれた帯状体が支持していた常温収縮チューブの部位が収縮して所定箇所に装着されるとともに、引き抜かれた帯状体が支持治具内を挿通していることから、引き抜かれる帯状体によって支持治具自体も引き抜き方向に移動する。つまり、拡径保持材において、常に帯状体が導出されている一端部はその内側から支持治具により筒状を維持された状態となっている。これにより、拡径保持材の解体した部分が支持していた常温収縮チューブの部位の収縮に伴い、常温収縮チューブの締め付け力が増加して、拡径保持材の一端部に作用しても拡径保持材の筒形状を維持することができる。つまり、常温収縮チューブの収縮による拡径保持材の座屈を防止することができる。
【0025】
したがって、拡径保持材に発生する座屈を防止し、円滑に拡径保持材を引き抜いて、常温収縮チューブを装着することができる。
【0026】
本発明の常温収縮体の装着方法は、上記構成の常温収縮体を装着する装着方法であって、前記常温収縮体を装着箇所上に配置するステップと、前記装着箇所上に配置された前記常温収縮体の拡径保持材の他端部側から露出されている前記帯状体を引いて、前記拡径保持材を解体するステップとを有するようにした。
【0027】
この方法によれば、拡径保持材を解体して常温収縮チューブを装着箇所に取り付ける際に、支持治具内に挿通された拡径部材の帯状体を引くことによって、拡径保持材に発生する座屈を防止し、拡径保持材を円滑に解体して常温収縮チューブを装着することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、スパイラルコアを用いて常温収縮チューブを装着対象物に装着する際に、スパイラルコアに発生する座屈を防止し、円滑にスパイラルコアを引き抜くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、常温収縮チューブを架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(CVケーブル)等の高電圧ケーブル(電力ケーブル)の中間接続部として用いられる筒状のゴムブロック補強絶縁体として説明する。なお常温収縮チューブが装着される装着対象物は、電力ケーブルの中間接続部に限らず、終端接続部に用いられてもよく、通信ケーブル等の端末等における接続部分、或いは、パイプ接続部分等を被覆して絶縁補強、防水、防護、防食、または遮水保護するために用いられてもよい。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る常温収縮チューブ100の装着方法により装着される拡径保持された常温収縮チューブ100の構成を示す断面図である。
【0031】
図1では、モールドされた筒状の常温収縮チューブ100は、内部に挿入された筒状の拡径保持材としてのスパイラルコア(インナーコア)150によって拡径保持されている。なお、拡径保持材をスパイラルコア150としたが、拡径保持材の一端部側から導出される帯状体を、拡径保持材内に挿通させて他端部側へ引き抜くことにより拡径保持材自体が一端部側から解体されるものであれば、これに限らない。このスパイラルコア150の一端部154側の内部には、スパイラルコア150を分解して常温収縮チューブ100を装着対象物に装着する際にスパイラルコア150の形状を維持する形状維持治具(支持治具)200が配置されている。
【0032】
先ず、常温収縮チューブ100について説明する。
【0033】
常温収縮チューブ100は、電力ケーブルの中間接続部を構成する電力ケーブル1a,1b(図3参照)の端部で露出するケーブル導体2a、2b(図3(a)参照)同士を接続した導体接続管6(図3(c)参照)の上に被せて電気絶縁性能を維持するものである。
【0034】
具体的に、常温収縮チューブ100は、図1に示すように、導電性を有するととともに導体接続管6(図3(c)参照)に接する内部電極110と、導電性を有するベルマウス部120a,120bと、絶縁性を有する補強絶縁層130と、導電性を有する外部半導電層140とを有する。
【0035】
これら内部電極110、ベルマウス部120a,120b、補強絶縁層130及び外部半導電層140は、一体的な筒状部材としてモールドされている。
【0036】
内部電極110は、軸方向で導体接続管6(図3(c)参照)よりも長くなるように形成され、ゴムプラスチック製の導電性を有する材料、例えば、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴム、あるいはエチレンビニルアセテイト等にカーボンなどの導電性物質を混合したもので作られている。
【0037】
内部電極110は、常温収縮チューブ100が、電力ケーブルの露出するケーブル導体2a,2b端部同士を接続する導体接続管6(図3(c)参照)に被せられた際に、最も電界が集中して高電圧側の電界集中箇所となる導体接続管6(図3(c)参照)の表面および角部近傍の電界を緩和する。
【0038】
ベルマウス部120a,120bは、それぞれ基端部121a,121bから先端側に向かってラッパ状に開口する開口部122a,122bを有し、内部電極110の両端部からそれぞれ所定間隔離間した位置に、開口部122a,122bとが互いに対向するように配置されている。
【0039】
すなわち、ベルマウス部120a,120bでは、立ち上がり部分124a,124bが鋭利な突起にならないように、ベルマウス部120a,120bの開口部122a,122bの内周面125a,125bに緩やかな傾斜(ここでは曲面)を持たせた形状となっている。
【0040】
この構成により、常温収縮チューブ100が、電力ケーブル1a,1bの露出する外部半導電層端部同士を接続するために被せられた際、ベルマウス部120a,120bは、低電圧側の電界集中箇所(ベルマウス部120a,120bの立ち上がり部分124a,124b近傍)の電界を緩和する。
【0041】
これらベルマウス部120a,120bは、ゴムプラスチック製の導電性を有する材料、たとえば、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴム、あるいはエチレンビニルアセテイトなどにカーボンなどの導電性物質を混合したもので作られている。
【0042】
補強絶縁層130は、内部電極110、ベルマウス部120a,120bの上に、内部電極110、ベルマウス部120a,120bを覆うように一体的に設けられている。
【0043】
この補強絶縁層130の両端部は、ベルマウス部120a,120bの基端部121a,121bの外周から立ち上がる側壁面を有し、ベルマウス部120a,120bを覆うとともに外部半導電層140の両端部に隣接する端部覆い部132、134となっている。なお、これら端部覆い部132,134は、常温収縮チューブ100の外方に露出するものであり、常温収縮チューブ100における両端部の角部を形成する。また、補強絶縁層130は、絶縁性を有する所定の材料、好ましくは絶縁性を有するゴムプラスチック材料、たとえば、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴムなどのエラストマーで作られている。
【0044】
外部半導電層140は円筒状をなし、内部電極110、ベルマウス部120a,120bの周囲に設けられている。詳細には、外部半導電層140では、中央部分は、内部電極110の上方に設けられ、両端部141、142は、ベルマウス部120a,120bの開口部122a,122bの上方にそれぞれ配置されている。また、外部半導電層140は、ゴムプラスチック製の導電性を有する材料、たとえば、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴム、あるいはエチレンビニルアセテイトなどにカーボンなどの導電性物質を混合したもので作られている。
【0045】
このように構成された筒状弾性体である常温収縮チューブ100は、内部に常温収縮チューブ100の内径よりも大きい径のスパイラルコア150が挿入されることにより、拡径した状態で保持されている。
【0046】
スパイラルコア150は、所定の材料からなる長尺の帯状体152を螺旋状に巻いて筒状に形成され、螺旋状に巻かれた帯状体152の隣接部分を互いに剥離可能に連結することによりなる。例えば、帯状体152の両側部にそれぞれ互いに嵌合する鈎状の嵌合部及び被嵌合部を有し、幅方向で隣接する帯状体152同士を、互いの隣接部分で対峙する嵌合部及び被嵌合部とを嵌合させることによって連結させている。なお、帯状体152は、安価で、取り扱いが容易な材料、例えば合成樹脂等により構成されることが望ましい。
【0047】
スパイラルコア150は、常温収縮チューブ100よりも軸方向の長さが長いものである。このため、スパイラルコア150の両端部は、常温収縮チューブ100内に、その両端部から外方に突出するようにして挿入されている。また、このスパイラルコア150の内径は、取り付けられる電力ケーブルの接続部分の外径よりも大きいものである。なお、スパイラルコア150において常温収縮チューブ100の両端部から両側方に突出する部分は帯状体のとめしろとして用いられてもよい。
【0048】
このスパイラルコア150では、一端部154側にあった帯状体152の一端部152aが、筒状のスパイラルコア150内を通してスパイラルコア150の他端部156側に導かれている。
【0049】
この一端部152aを他端部156側、つまり引き抜き方向であるA方向、に引き抜くことで、スパイラルコア150の一端部154側で、互いに連結した状態で隣接する帯状体152が、スパイラルコア150の一端側から順に剥離する。これによりスパイラルコア150は分解除去可能となっている。なお、スパイラルコア150は、他端部156側の帯状体の他端部を筒状のスパイラルコア150内を通して一端部152側に導き、一端部152側に引き抜くことでも分解除去可能である。
【0050】
図1に示すスパイラルコア150には、一端部154、詳細には、帯状体152が引き抜かれる側の引き抜き端を有する端部内に、スパイラルコア150を分解除去する際に、スパイラルコア150の形状を維持する形状維持治具200が配されている。
【0051】
ここでスパイラルコア150の形状を維持することとは、スパイラルコア150においてまだ解体されていない部分、つまり、隣接する帯状体152同士の一方が引っ張られておらず、互いの嵌合状態が解除されていない部分を維持することである。言い換えれば、スパイラルコア150において帯状体152が引き抜き端側から螺旋状に順に解かれ、スパイラルコア150を一本の帯状体152として引き抜かれるように解体されていない筒状部分を維持することである。
【0052】
形状維持治具200は、筒状をなし、スパイラルコア150内に、当該スパイラルコア150に内接した状態、詳細には、形状維持治具200の外面が、スパイラルコア150の内周面に当接した状態で、配置されている。
【0053】
図2は、図1に示す形状維持治具200の一例を示す図である。なお、図2(a)は、通常状態の形状維持治具200の正面図及び側面図、図2(b)は、外周面側から軸心方向に向かって押圧して変形させた状態の形状維持治具200の正面図及び側面図を示す。
【0054】
図2(a)に示す形状維持治具200は、塩化ビニルなど弾性変形する筒状部材を軸方向と平行なスリット201を形成した断面C字状の筒状体として形成されている。つまり、形状維持治具200は、図2(a)に示すように、軸方向と平行で離間して配置され、互いに対向する辺部203、204を有し、この辺部203、204の離間度合によってスリット201は規定されている。
【0055】
形状維持治具200は、半径方向において外周面側から軸心方向に向かって外周面が変位し、径の小さい外径時において断面略環状となり、放射方向に拡がろうとする。
【0056】
ここでは、形状維持治具200は、図2(a)に示す状態で、半径方向において外周面側から軸心方向に向かって押圧して、図2(b)に示すように辺部203、204を接近させることによって、外径がスパイラルコア150の内径より小さく、内径が電力ケーブルの外径よりも大きい断面略円形状に変形する。
【0057】
なお、形状維持治具200がスパイラルコア150と中間接続部分との間に、スパイラルコア150の内周面を押圧している状態で配置された場合、形状維持治具200の内周面と中間接続部分の外面との間隔は、帯状体152の幅と略同じ長さ程度の間隔とする。つまり、帯状体152の引き抜きの際に、帯状体152にねじれが生じる場合でも、形状維持治具200と中間接続部分(直線接続部分)と間を通して円滑に引き抜くことができる。
【0058】
次に、図1に示すスパイラルコア150により拡径された常温収縮チューブ100を形状維持治具200を用いて、装着対象物に装着する方法を説明する。
【0059】
図3は、本発明の実施の形態1における常温収縮チューブの装着方法を説明するための工程図である。
【0060】
ここでは、常温収縮チューブをゴムブロック補強絶縁体とし、装着対象を、電力ケーブル1a,1bが直線的に接続された電力ケーブルの中間接続部分(直線接続部分)として説明する。
【0061】
互いに接続される一対の電力ケーブル1a,1bは、それぞれ、ケーブル導体2a、2bの周囲を内側から順に内部半導電層(図示せず)、ケーブル絶縁体3a、3b、外部半導電層4a、4b、遮蔽層5a、5b及びシース6a、6bで被覆して構成されている。
【0062】
ケーブル絶縁体3a、3bは、ゴムプラスチック絶縁体、たとえば、エチレンプロピレンゴムやポリエチレン、架橋ポリエチレンなどで作られている。
【0063】
このため、ゴムプラスチック絶縁体を用いる電力ケーブル(一般に「ゴムプラスチック絶縁電力ケーブル」と呼ばれる)1a,1b同士を接続するに当たっては、当該電力ケーブル1a,1bを、それぞれ所定の接続長さに切断した後、この切断面からケーブル導体2a、2bを先端にして順にケーブル絶縁体3a、3b、外部半導電層4a、4b、遮蔽層5a、5bが露出するようにそれぞれ所定の長さだけ剥ぎ取る。
【0064】
このように加工されて端部で露出するケーブル導体2a,2b同士を、図3(a)に示すように対向させて同軸方向に並べて配置する。
【0065】
次いで、図3(b)に示すように、対向配置される電力ケーブル(図3(b)では電力ケーブル1b)に、図1に示すスパイラルコア150により拡径保持された常温収縮チューブ100を挿入する。
【0066】
なお、本実施の形態では、この段階においては、形状維持治具200はまだ配置されていないが、形状維持治具200をスリット201の無い筒状体とした場合は、常温収縮チューブ100を支持するスパイラルコア150とともに電力ケーブル1bを挿通させる。
【0067】
次いで、図3(c)に示すように、常温収縮チューブ100を保持するスパイラルコア150内に、電力ケーブル(図3では、電力ケーブル1b)を挿通させた状態で、電力ケーブル1a,1bのケーブル導体2a,2b同士を導体接続管6を介して接続する。
【0068】
導体接続管6は、半径方向を軸心に向かって押圧して潰すことにより、ケーブル導体2a,2b同士に圧着される。その際、導体接続管6の外周には、スリップカバーを被せたり、導電性テープを巻回したりすることによって、導体接続管6部分の外径がケーブル絶縁体3a,3bの外径と略同じ外径となるようにする。
【0069】
次いで、図3(d)に示すように、常温収縮チューブ100をスパイラルコア150ごと移動して、装着する位置、つまり、導体接続管6により接続される電力ケーブル1a,1bのケーブル導体2a,2b同士の接続部分上に配置する。また、形状維持治具200を電力ケーブル(図3(d)では電力ケーブル1b)上に配置する。このとき、形状維持治具200は、スリット201を有する断面C字状の弾性変形可能な筒体であるため、軸方向で平行な互いに対向する辺部203、204を離間させることによって、スリット201を開いて、電力ケーブル1bを囲むように被せて容易に取り付けることができる。
【0070】
このように形状維持治具200には、スリット201が形成されているため、形状維持治具200を電力ケーブル1b上に容易に外嵌して配置することができる。また、スリット201を閉じて縮径させてスパイラルコア150の内部に設置して縮径状態を開放することによって、スパイラルコア150の一端部の内周面を容易に押圧させることができる。
【0071】
次いで、図3(e)に示すように、形状維持治具200をスパイラルコア150内に挿入して、スパイラルコア150の一端部154内、詳細には、帯状体152が引き抜かれる側の引き抜き端を有する端部内に配置する。なお、図3(e)に示す状態の常温収縮チューブ内における形状維持治具200の配置位置は、図1に示す配置位置となっている。
【0072】
また、形状維持治具200内に、スパイラルコア150において引き抜かれる帯状体152を挿通させる。この実施の形態では、形状維持治具200のスリット201を介して、スパイラルコア150の一端部154側の帯状体152が引き抜かれる側の端の引き抜き端から導出される部分を形状維持治具200内に配置させる。
【0073】
このように形状維持治具200をスパイラルコア150内に配置する場合には、形状維持治具200に外周側から軸心に向かって押圧して弾性変形させて、形状維持治具200自体を断面環状(図2(b)で示す形状維持治具200の状態)にする。つまり、形状維持治具200を、その外径が縮径された状態にして、電力ケーブル1bと形状維持治具200との間に挿入する。
【0074】
挿入後、形状維持治具200への押圧力を開放する。形状維持治具200が押圧力から開放されると、形状維持治具200の外径は、放射方向に変位して、形状維持治具200自体は、放射方向に拡がることとなり、その外周面がスパイラルコア150の内周面に当接し、内周面を押圧する。
【0075】
このように形状維持治具200は、スパイラルコア150内に、スパイラルコア150の内周面を押圧した状態で内接配置されることとなる。
【0076】
この形状維持治具200は、スパイラルコア150内において、スパイラルコア150内部を挿通して、引き抜き端を有する一端部154から、他端部156側に延在する帯状体152を形状維持治具200内を挿通するように配置する。これら、形状維持治具200のスリット201を広く開け、その内部に帯状体152を配置する。
【0077】
そして、引き抜かれる端を有するスパイラルコア150の一端部154側から、形状維持治具200と電力ケーブル1a,1bの接続部分との間を通されてスパイラルコア150の他端部156側に導出された帯状体152の一端部152aを他端部156方向、つまり引き抜き方向Aに引っ張る。
【0078】
すると、図3(f)に示すように、スパイラルコア150を構成する帯状体152は、引き抜き端側から、互いの嵌合が解除され、解けた帯状体152により支持されていた常温収縮チューブ100の部分は、順に縮径して電力ケーブル上に被覆されていく。
【0079】
図4は、図3(f)の常温収縮チューブ100の要部断面図である。なお、図4では、電力ケーブル自体と、これら電力ケーブルの端部同士を接続する導体接続管の構成は便宜上省略している。
【0080】
図3(f)及び図4に示すように、帯状体152の一端部152aを引き抜き方向(A方向)に引っ張ることにより、形状維持治具200は、筒状体を構成する帯状体152の分解に伴い引き抜き方向(A方向)に移動する。
【0081】
これは、引き抜き端側でスパイラルコア150から形状維持治具200内に導出される帯状体152が引き抜き方向(A方向)に引っ張られることに伴い、収縮する常温収縮チューブ100の部位100aが、形状維持治具200における引き抜き端側の開口縁を引き抜き方向に押圧するためである。
【0082】
また、スパイラルコア150を分解する際の形状維持治具200の引き抜き方向(A方向)への移動は、スパイラルコア150の分解に伴い、分解されて引き抜き方向に変位する一端部154側に、収縮する常温収縮チューブ100の軸心側への押圧力が作用して、スパイラルコア150及び形状維持治具200が引き抜き方向に押圧されることに起因する。
【0083】
この形状維持治具200は、スパイラルコア150の分解中において、引き抜き方向に移動しつつ、外周面で、スパイラルコア150を放射方向に押圧している。
【0084】
このため、スパイラルコア150では、引き抜き方向に移動する引き抜き端を有する一端部154において、外周面側から常温収縮チューブ100の収縮力、つまり締め付け圧力を受けた場合でも、変形して断面環状となる形状維持治具200によって、その締め付け圧力に抗することができ、スパイラルコア150の筒状は維持される。
【0085】
つまり、スパイラルコア150は、形状維持治具200により形状が維持されつつ、分解される。また、帯状体152を引き抜くことによりスパイラルコア150の解体が進むにつれて、増加する常温収縮チューブ100の締め付け力が不均一になる。これに対し形状維持治具200は、スパイラルコア150内においてスパイラルコア150の内面を押圧しているため、引き抜き方向に押圧されて移動させられることを抑制している。
【0086】
そして、図3(g)に示すように、スパイラルコア150が全て取り除かれて、常温収縮チューブ100が電力ケーブル1a,1bのケーブル導体2a、2b(図3(c)参照)どうしの接続部分に正確に且つ円滑に装着される。
【0087】
これにより、常温収縮チューブ100は、ケーブル導体2a,2b及び導体接続管6とともに中間接続部を形成し、中間接続部の電気絶縁性能は維持されることとなる。なお、常温収縮チューブ100の装着後では、中間接続部における遮蔽処理、必要箇所への保護管を外嵌するように組み立てる処理、防水処理が施される。
【0088】
このように本実施の形態1によれば、常温収縮チューブ100を拡径保持するスパイラルコア150を解体する際に、スパイラルコア150の一端部154側では、解体に伴い、引き抜かれた帯状体152が支持していた常温収縮チューブ100の部位が収縮して所定箇所に装着されるとともに、引き抜かれた帯状体152が形状維持治具200内を挿通していることから、引き抜かれる帯状体152によって形状維持治具200自体も引き抜き方向に移動する。つまり、スパイラルコア150において常に帯状体152が導出されている一端部はその内側から形状維持治具200により筒状を維持された状態となっている。
【0089】
これにより、スパイラルコア150の解体した部分が支持していた常温収縮チューブ100の部位の収縮に伴い、常温収縮チューブ100の締め付け力が増加して、スパイラルコア150の一端部154に作用してもスパイラルコア150の筒形状を維持することができる。つまり、常温収縮チューブの収縮によるスパイラルコア150の座屈を防止することができる。
【0090】
したがって、スパイラルコア150に発生する座屈を防止し、円滑にスパイラルコア150を引き抜いて、常温収縮チューブ100を装着することができる。
【0091】
本実施の形態1では、形状維持治具200を断面C字状の筒状体としたが、これに限らず、スパイラルコア150を分解する場合においてスパイラルコア150の形状を維持するものであれば、どのような構成としてもよい。
【0092】
図5は、本実施の形態1における形状維持治具200の変形例1である形状維持治具300の斜視図である。
【0093】
形状維持治具300は、スパイラルコア150内において、筒状をなし、外面が、スパイラルコア150の内周面に当接する。
【0094】
形状維持治具300は、塩化ビニルなど弾性変形する筒状部材に軸方向と平行なスリット301が形成された断面C字状の筒状本体302を有し、弾性変形して縮径可能に形成されている。詳細には、筒状本体302は、軸方向に延び互いに離間して対向する辺部304,305を備える。
【0095】
互いに対向する辺部304,305は、形状維持治具300をスパイラルコア150内に配置した際に、周方向に移動自在に係合して、互いの軸方向への移動を規制する規制手段としての係合部及び被係合部を備える。
【0096】
係合部及び被係合部は互いに係合する形状を有し、この形状維持治具300では、辺部304から周方向に突出する凸部306と、辺部305に形成され凸部306に対して周方向で対向する位置に配置される凹部307とから構成されている。
【0097】
ここでは、形状維持治具300は、半径方向において外周面側から軸心方向に向かって押圧されることにより、辺部304、305が接近して凸部306が周方向に移動して凹部307内に挿入される。
【0098】
これにより形状維持治具300は、外径がスパイラルコア150の内径より小さく、且つ、内径が電力ケーブルの外径よりも大きい断面略環状に変形する。この断面略環状時では、形状維持治具300は、その外周面で放射方向に拡がる構成となっている。
【0099】
このように形状維持治具300では、凸部306が凹部307に挿入された状態である場合、軸方向への押圧力が作用しても、凸部306の突出する部位の両側辺部が、凹部307において互いに対向する内壁部に当接し、辺部304,305はそれぞれ軸方向への移動が規制されることとなる。これにより、断面C字状に形成された形状維持治具300の軸方向へのねじれを防止することができる。
【0100】
このように構成された形状維持治具300を用いて、スパイラルコア付き常温収縮チューブ装着する場合には、実施の形態1において、形状維持治具200に代えて、形状維持治具300に常温収縮チューブ100を装着して常温収縮体とする。なお、形状維持治具300の使用方法は、形状維持治具200と同様であるため説明は省略する。
【0101】
なお、形状維持治具300がスパイラルコア150の一端部と中間接続部分との間に、スパイラルコア150の内周面を押圧している状態で配置された場合、形状維持治具200の内周面と中間接続部分との間隔は、帯状体152の幅と略同じ長さ程度の間隔とする。つまり、帯状体152の引き抜きの際に、帯状体152にねじれが生じる場合でも、形状維持治具300と中間接続部分と間を通して円滑引き抜くことができる。
【0102】
このように形状維持治具300を用いて、スパイラルコア150付き常温収縮チューブ100を、電力ケーブルの中間接続部に装着する方法によれば、形状維持治具200を用いた場合と同様の効果を有する。
【0103】
加えて、帯状体152を引き抜き端側から引き抜くことで発生する常温収縮チューブ100の締め付け圧力が、形状維持治具300に作用しても、凸部306が凹部307に挿入されることで互いに係合しているため、形状維持治具300自体が軸方向を中心によじれることがない。
【0104】
これにより、さらに円滑に帯状体152を引き抜き端側から引き抜くことができ、スパイラルコア150を分解して、常温収縮チューブ100の装着箇所から引き抜いて取り除くことができる。
【0105】
図6は、本実施の形態1における形状維持治具の変形例2である形状維持治具400の斜視図である。
【0106】
この形状維持治具400は、スパイラルコア150内に配置されて、スパイラルコア150を分解して常温収縮チューブ100を装着対象物に装着する際にスパイラルコア150の形状を維持する。
【0107】
形状維持治具400は、ここでは、スパイラルコア150の内径に外径が略等しい筒状体を、軸方向で分割した筒割形の第1及び第2筒割片410,420よりなる。
【0108】
第1及び第2筒割片410,420により形成される筒状体は、外径がスパイラルコア150の内径より小さく、内径が電力ケーブルの外径よりも大きいものである。そして、第1及び第2筒割片410,420は、筒状を形成する際に当接させるそれぞれの辺部411,421には、互いに嵌合する凸部413及び凹部423が形成されている。
【0109】
これら凸部413及び凹部423は、変形例1の凹部307及び凸部306と同様の作用効果を有するものである。
【0110】
形状維持治具400を用いて、常温収縮チューブ100を電力ケーブルの中間接続部分に装着する場合、スパイラルコア150内に、第1及び第2筒割片410,420を挿入して、これら第1及び第2筒割片410,420で、内部に電力ケーブルが内挿された状態の筒状体を形成する。
【0111】
その際、引き抜き端から導出される帯状体152は、形状維持治具200と同様に、形状維持治具400内を一端部側から挿通させる。
【0112】
このようにスパイラルコア150では、引き抜き端を有する一端部は、内方から形状維持治具400によって形状が維持させることとなる。つまり、引き抜き端から帯状体を引くことで、引かれた帯状体以外の帯状体により形成されるスパイラルコア150の筒状部分の形状が崩れることがなく、円滑に帯状体を引き抜くことでスパイラルコア150を解体することができる。
【0113】
上述したように、本実施の形態1の常温収縮チューブ100の装着方法においては、縮径させると放射方向に拡がろうとする形状維持治具200、300を用いることで、スパイラルコア150に対して、スパイラルコア150の内面側から放射方向に付勢している。これにより、スパイラルコア150において解体された部分が支持していた常温収縮チューブ100の部位が収縮して装着対象箇所へ装着する際に、スパイラルコア150及び形状維持治具200、300に対して発生する引き抜き方向側へ押圧力を減少させることができる。
【0114】
詳細には、引き抜き端側から帯状体152を引き抜くことによって、スパイラルコア150は一端部側から解体され、これに伴い、一端部側から常温収縮チューブ100が電力ケーブルの中間接続部分に縮径しながら装着する。このとき、中間接続部分への常温収縮チューブ100の装着部分が増加するに伴い、収縮力(締め付け圧力)によって生じるスパイラルコア150への引き抜き側への押圧力が増大していき、帯状体152の引き抜きスピードは必然的に増加する。言い換えれば、スパイラルコア150を引き抜く速度は一定にはできず、常温収縮チューブ100が所定長解体されると、解体時の締め付け圧力によって帯状体152は引き抜き方向に押圧され自動的に解ける。
【0115】
本実施の形態では、スパイラルコア150において解体される側の端部、つまり引き抜き端部側が形状維持治具200、300の付勢力により放射方向に付勢されているため、常温収縮チューブ100の収縮力による引き抜き方向への押圧力に抗したものとなっている。
【0116】
この引き抜き方向への押圧力に抗する力を一層高めるために、形状維持治具200、300自体のスパイラルコア150に対する放射方向の付勢力を更に増加、つまり、スパイラルコア150に対する形状維持治具200、300の放射方向に拡がろうとする力を更に増加させてもよい。言い換えれば、形状維持治具200、300においてスパイラルコア150との摩擦力を更に増加させてもよい。この一例を形状維持治具200の変形例3として説明する。
【0117】
図7は、本実施の形態1における形状維持治具200の変形例3である形状維持治具500を示す図であり、図7(a)は通常状態の形状維持治具500の側面図、図7(b)は縮径した状態の形状維持治具500の側面図である。
【0118】
図7に示す形状維持治具500は、半径方向において外周面側から軸心方向に向かって外周面が変位し、外径がスパイラルコア150の内径より小さく、内径が電力ケーブルの外径よりも大きい断面略環状となる(図7(b)参照)。この断面略環状の形状維持治具500では、筒状本体502は放射方向に付勢する付勢力を有する。
【0119】
つまり、形状維持治具500は、形状維持治具200と同様の形状を有し、塩化ビニルなど弾性変形する筒状部材を軸方向と平行なスリット501を有する断面C字状の筒状本体502と、筒状本体502の外周面を被覆する被覆部505とを有する。
【0120】
詳細には、形状維持治具500は、筒状本体502に、図7(a)に示すように、軸方向と平行で離間して配置され、互いに対向する辺部503、504を有する。
【0121】
このように形成された筒状本体502は、その外周面を被覆部505により覆われており、被覆部505により被覆されていない状態と比較して、スパイラルコア150に当接し、スパイラルコア150に対する接触摩擦を増加させている。
【0122】
ここでは、被覆部505は、ゴムライニングとしているが、これに限らず、形状維持治具500の外周面がスパイラルコア150の内周面との接触摩擦を増加させるものであれば、どのような材料によってライニングされてもよい。例えば、接触摩擦を向上させる手段としては、ゴムライニング以外に外周面に突出部を設けたり、形状維持治具500自体の厚みや素材を変更して反発力を増加させる方法が挙げられる。また、被覆部505は、スパイラルコア150の内周面に当接して摩擦力を増加させるものであれば、筒状本体502と同一の材料により一体的に形成してもよいことは勿論である。
【0123】
このように構成された形状維持治具500を用いた常温収縮チューブの装着方法は、実施の形態1において、形状維持治具200に代えて常温収縮チューブ100を装着する方法である。なお、形状維持治具500の装着方法は形状維持治具200と同様であるので、説明は省略する。
【0124】
形状維持治具500を用いた常温収縮チューブの装着方法によれば、形状維持治具500では、表面がゴムライニングされている。このため、形状維持治具500を、スパイラルコア150内の引き抜き端側の一端部154内に配置(図1及び図4参照)することにより、スパイラルコア150の引き抜き作業が行われる際に生じる常温収縮チューブ100の引き抜き方向側に作用する押圧力に抗することができる。
【0125】
よって、スパイラルコア150を引き抜く際におけるスパイラルコア150の解体速度を遅くできる。
【0126】
なお、形状維持治具500がスパイラルコア150と中間接続部分との間に、スパイラルコア150の内周面を押圧している状態で配置された場合、形状維持治具500の内周面と中間接続部分との間隔は、帯状体152の幅と略同じ長さ程度の間隔とする。つまり、帯状体152の引き抜きの際に、帯状体152にねじれが生じる場合でも、形状維持治具500と中間接続部分と間を通して円滑に引き抜くことができる。
【0127】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る常温収縮チューブの装着方法で用いられる形状維持治具600の一例を示す図である。なお、図8(a)は、通常状態の形状維持治具600の正面図及び側面図、図8(b)は、外周面側から軸心方向に向かって押圧して変形させた状態の形状維持治具600の正面図及び側面図を示す。
【0128】
なお、本実施の形態2に係る常温収縮チューブの装着方法では、実施の形態1において用いられる形状維持治具200に代えて、形状維持治具600を用いて行うものである。
【0129】
形状維持治具600は、形状維持治具200と同様に構成された断面C字状の筒状体からなり、形状維持治具200と比較して軸方向の長さを長くして長尺に形成されている点のみ異なる。ここでは、形状維持治具600は、装着される常温収縮チューブ100の軸方向の長さの半分以上の長さを有するものとして構成されており、形状維持治具200と同様の構成による作用効果を有する点についての説明は省略する。
【0130】
すなわち、形状維持治具600は、図8(a)に示すように、塩化ビニルなど弾性変形する筒状部材を軸方向と平行なスリット601を形成した断面C字状の筒状体として形成され、軸方向と平行で離間して配置され、互いに対向する辺部603、604を有する。
これら辺部603、604の離間度合によってスリット601の幅を規定している。
【0131】
また、形状維持治具600は、半径方向において外周面側から軸心方向に向かって外周面が変位し、径の小さい外径時において断面略環状となり、放射方向に付勢する付勢力を有する。
【0132】
詳細には、形状維持治具600は、図8(a)及び図8(b)に示すように、半径方向において外周面側から軸心方向に向かって押圧して辺部603、604を接近させることによって、外径がスパイラルコア150の内径より小さく、内径が電力ケーブルの外径よりも大きい断面略円形状に変形する。
【0133】
図9は、本発明の実施の形態2に係る常温収縮チューブ100の装着方法を説明するためものであり、常温収縮チューブ100を拡径保持するスパイラルコア150内に形状維持治具600を配置した構成を示す断面図である。
【0134】
この形状維持治具600を用いた常温収縮チューブ100の装着方法では、装着対象物、ここでは中間接続部上に配置した常温収縮チューブ100を拡径保持するスパイラルコア150内に、形状維持治具600を挿入して配置する。
【0135】
そして、実施の形態1と同様に、形状維持治具600と、形状維持治具600の内側に配置される中間接続部分の外面との間に帯状体152を一端部154側から他端部156側に挿通させて、他端部156側で露出する帯状体152の一端部152aを引く。
【0136】
すると、スパイラルコア150は、一端部154側の引き抜き端から解体され、それに伴い、解体された部位により拡径保持されていた常温収縮チューブ100の部位は収縮して縮径し、所定の箇所を被覆する。
【0137】
図10は、本発明に係る実施の形態2の常温収縮チューブの装着方法の工程を示す図である。
【0138】
スパイラルコア150の解体作業が進み、常温収縮チューブ100はスパイラルコア150の他端部156側に向かって収縮し、所定箇所を被覆していくに伴い、形状維持治具600も、引き抜き方向に移動する。
【0139】
すると、図10に示すように、スパイラルコア150が完全に解体される前に、形状維持治具600の一端部610が、スパイラルコア150の他端部156側から突出する。
【0140】
ここでは、常温収縮チューブ100内においてスパイラルコア150の半分以上がまだ、解体されていない。
【0141】
このとき、スパイラルコア150及び形状維持治具600には、拡径保持状態が解除された常温収縮チューブ100の部位が増加するにつれて、常温収縮チューブ100の部位の締め付け圧力に起因する引き抜き方向への押圧力が増加しながら加っている。
【0142】
このため、一端部610をスパイラルコア150内方向に押圧することが可能となり、この押圧によって、中央部及び他端部側でスパイラルコア150の形状を維持しながら、形状維持治具600の引き抜き方向への移動速度を調整できる。この形状維持治具600の引き抜き方向への速度を調整することにより、帯状体152の引き抜き速度も調整することができ、スパイラルコア150の解体速度を調整することができる。
【0143】
このように、形状維持治具600を用いてスパイラルコア150付きの常温収縮チューブ100を装着すれば、スパイラルコア150において座屈が多い中央部分から他端部までの解体作業において、スパイラルコア150の形状を維持することができる。
【0144】
なお、スパイラルコア150により拡径保持された常温収縮チューブ100を、拡径状態のまま保管する場合、例えば、常温収縮チューブ100を拡径状態のまま現場まで搬送する場合等、スパイラルコア150の両端部に形状維持治具200、300、500を挿入する。
【0145】
このように、常温収縮チューブ100を拡径保持するスパイラルコア150の両端部内に形状維持治具200、300、500が配置されることによって、形状維持治具200により、スパイラルコア150の両端部において常温収縮チューブ100の締め付け力に抗することができ、両端部から発生する座屈を防止することができる。
【0146】
また、形状維持治具500,600の互いに対向する辺部に、形状維持治具500、600をスパイラルコア150内に配置した際に、周方向に移動自在に係合して互いの軸方向への移動を規制する規制手段としての係合部及び被係合部を備える構成としてもよい。
【0147】
これら係合部及び被係合部は互いに係合する形状を有し、形状維持治具300の凸部306と凹部307と同様に形成されたものにしてもよい。形状維持治具500,600に形状維持治具300の凸部306と凹部307と同様の凸部と凹部を設けた場合、形状維持治具300の凸部306と凹部307による作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係る常温収縮チューブの装着方法は、を有し、特に電力ケーブルの端部の接続部において常温収縮チューブの装着に用いられるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の実施の形態1に係る常温収縮チューブの装着方法により装着されるスパイラルコア付き常温収縮チューブの構成を示す断面図
【図2】図1に示す形状維持治具の一例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における常温収縮チューブの装着方法を説明するための工程図
【図4】図3(f)の常温収縮チューブ100の要部断面図
【図5】本実施の形態1における形状維持治具の変形例1である形状維持治具の斜視図
【図6】本実施の形態1における形状維持治具の変形例2である形状維持治具の斜視図
【図7】本実施の形態1における形状維持治具の変形例3である形状維持治具を示す図
【図8】本発明の実施の形態2に係る常温収縮チューブの装着方法で用いられる形状維持治具の一例を示す図
【図9】本発明の実施の形態2に係る常温収縮チューブの装着方法を説明するための断面図
【図10】本発明の実施の形態2に係る常温収縮チューブの装着方法の工程を示す図
【符号の説明】
【0150】
1a、1b 電力ケーブル
2a、2b ケーブル導体
100 常温収縮チューブ
150 スパイラルコア(インナーコア:拡径保持材)
152 帯状体
152a 帯状体の一端部
154 スパイラルコアの一端部
156 スパイラルコアの他端部
200 形状維持治具(支持治具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温収縮性を有する筒状の常温収縮チューブ内に、前記常温収縮チューブを拡径保持する筒状の拡径保持材を挿入し、この拡径保持材を前記常温収縮チューブの装着箇所上に配置して、前記拡径保持材の一端部側から導出される帯状体を、前記拡径保持材内に挿通させて他端部側へ引き抜くことによって前記拡径保持材を一端部側から解体して、前記常温収縮チューブを装着対象物に装着させる常温収縮チューブの装着方法において、
前記拡径保持材の一端部内に、前記拡径保持材に内接して前記拡径保持材の筒形状を維持する筒状の支持治具を配置し、
前記常温収縮チューブを拡径保持する前記拡径保持材を解体する際に、前記拡径保持材の一端部側から導出される前記帯状体を、前記支持治具内に挿通させて前記拡径保持材の他端部側へ引き抜くことを特徴とする常温収縮チューブの装着方法。
【請求項2】
前記支持治具は、弾性変形して、その外径が拡縮自在に構成され、前記拡径保持材内において前記拡径保持材の内面を押圧していることを特徴とする請求項1記載の常温収縮チューブの装着方法。
【請求項3】
前記支持治具は、筒状部材において軸方向にスリットを形成した断面C字状の筒状弾性体からなることを特徴とする請求項2記載の常温収縮チューブの装着方法。
【請求項4】
前記支持治具は、軸方向に延びて前記スリットを規定する対向辺部を有し、
前記対向辺部には、前記対向辺部が互いに接近した際に、互いに係合して前記対向辺部の軸方向への移動を規制する係合部と被係合部とがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3記載の常温収縮チューブの装着方法。
【請求項5】
前記支持治具は、前記常温収縮チューブにおける軸方向の長さの半分以上の長さを有することを特徴とする請求項1記載の常温収縮チューブの装着方法。
【請求項6】
常温収縮性を有する筒状の常温収縮チューブと、
前記常温収縮チューブ内に挿入され、前記常温収縮チューブを拡径保持する筒状体をなし、一端部側から導出される帯状体を、前記筒状体内に挿通させて他端部側へ引き抜くことにより前記一端部側から解体される拡径保持材と、
前記拡径保持材の一端部内に配置され、前記拡径保持材に内接して前記拡径保持材の筒状を維持する筒状の支持治具とを備え、
前記支持治具内には、前記拡径保持材の一端部側から導出される前記帯状体が挿通されて前記拡径保持材の他端部側から露出していることを特徴とする常温収縮体。
【請求項7】
請求項6記載の常温収縮体を装着する装着方法であって、
前記常温収縮体を装着箇所上に配置するステップと、
前記装着箇所上に配置された前記常温収縮体の拡径保持材の他端部側から露出されている前記帯状体を引いて前記拡径保持材を解体するステップとを有することを特徴とする常温収縮体の装着方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−61416(P2008−61416A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236573(P2006−236573)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502122521)株式会社エクシム (25)
【Fターム(参考)】