干渉判定方法、通信装置、通信システム
【課題】2通信装置間での無線通信における干渉の有無を適切に判定することができるようにした干渉判定方法、通信装置、通信システムを提供すること。
【解決手段】送信ノードから受信ノードへ無線信号を送信するときに、受信ノードが信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法を以下のとおり行う。先ず、送信ノードと受信ノードの距離を推定する。次に、無線信号の距離に対する減衰度合いを示す関係式に基づき、推定された距離によって送信ノードから受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する。そして、受信された信号の受信電力と上記参照値を比較して、その比較結果に基づいて無線信号の干渉の有無を判定する。
【解決手段】送信ノードから受信ノードへ無線信号を送信するときに、受信ノードが信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法を以下のとおり行う。先ず、送信ノードと受信ノードの距離を推定する。次に、無線信号の距離に対する減衰度合いを示す関係式に基づき、推定された距離によって送信ノードから受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する。そして、受信された信号の受信電力と上記参照値を比較して、その比較結果に基づいて無線信号の干渉の有無を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置間における無線通信の干渉の有無を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサに無線通信機能を有する小型の電子回路を付加したノード(通信装置)によってネットワークを構成する無線センサネットワークに関する開発が進められている。無線センサネットワークでは、複数のノードの各々が外界の温度、湿度、速度、映像等の情報を収集し、マルチホップ・アドホック通信によって情報を伝達する。無線センサネットワークは、例えば、ヘルスケア、エンタテインメント、遠隔医療等のアプリケーションに利用することが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−233142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線センサネットワークでは、ノードの増加によって、頻繁に使用される周波数帯においてノード間通信の干渉の可能性が高まっているが、各ノードが干渉の有無を直接的に判定することができないという問題がある。つまり、ノード間の通信で干渉が生じた場合には、各ノードではその干渉の発生を、S/N(Signal to Noise)の低下、あるいはデータ伝送レートの低下として間接的に認識できるに過ぎない。そのため、従来のノードは、本来であれば使用周波数を切り替えるべきところを、干渉対策として必ずしも適切でない方法、例えば、受信ダイバーシチの設定の切り替えやパケットの再送等の方法を採る場合があった。受信ノードにおいて干渉が発生しているときには、送信ノード側で送信データに対するacknowledgementが受信できないことから、何回も再送を試みることとなり、無駄な送信のための電力消費が発生し、かつ無駄なトラフィックが生じることになる。
【0005】
よって、発明の1つの側面では、2通信装置間での無線通信における干渉の有無を適切に判定することができるようにした干渉判定方法、通信装置、通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、第1通信装置から第2通信装置へ無線信号を送信するときに、第2通信装置が受信信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法が提供される。
この干渉判定方法は、
第1通信装置と第2通信装置の距離を推定し、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出し、
受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて第2通信装置の受信信号の干渉の有無を判定する、
ことを含む。
【0007】
第2の観点では、通信装置が提供される。
この通信装置は、
他の通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と前記他の通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、
を備える。
【0008】
第3の観点では、第1通信装置と第2通信装置を備え、通信装置間で無線通信が可能な通信システムが提供される。
この通信システムにおいて、
第1通信装置は、第2通信装置宛に無線信号を送信する送信部を備える。
第2通信装置は、
第1通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と第1通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示の干渉判定方法、通信装置、通信システムによれば、2通信装置間での無線通信における干渉の有無を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のノードを含む無線センサネットワークの構成例を示す図。
【図2】第1の実施形態のノードの構成の主要部を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態において送受ノード間の距離推定方法の一例を説明する図。
【図4】第1の実施形態において送受ノード間の距離推定方法の一例を説明するフローチャート。
【図5】第1の実施形態において送受ノード間の距離推定方法の一例を説明するフロー図。
【図6】第1の実施形態においてルーティングテーブルの情報を用いた送受ノード間の距離推定方法の一例を説明するフロー図。
【図7】第1の実施形態のノードで実行される干渉有無の判定処理のフローチャート。
【図8】第1の実施形態のノードで実行される干渉有無の判定処理の変形例に係るフローチャート。
【図9】第2の実施形態のノードで実行される干渉有無の判定処理のフローチャート。
【図10】第2の実施形態において減衰定数の更新処理の詳細を示すフローチャート。
【図11】第2の実施形態のノードにおいて異なる時刻においてサンプリングされた、ノードの受信電力のCDFの一例を示す図。
【図12】図11におけるそれぞれの受信電力のCDF50%値をプロットした一例を示す図。
【図13】図12のプロットを複数回繰り返して得られたデータに対して最小二乗近似曲線を生成したものを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、ノードが無線信号を送信するときにはそのノードを「送信ノード」と表記し、ノードが無線信号を受信するときにはそのノードを「受信ノード」と表記することとする。いずれのノードも送信ノードあるいは受信ノードとなり得る。なお、ノードは、通信装置の一例である。
【0012】
(1)第1の実施形態
(1−1)無線センサネットワーク
図1に、本実施形態のノードを含む無線センサネットワークの構成例を示す。図1に示すように、無線センサネットワークにおける各ノードは、各種のセンサと接続されている。送信ノードのセンサによって得られた情報は、送信ノードから受信ノードに対して無線信号により送られる。ノード間の通信プロトコルとしては例えば、PHY層(物理層)およびMAC(Media Access Controller)層としてIEEE 802.15.4を使用するZigBee(登録商標)等の短距離無線通信が知られているが、ここでは通信プロトコルは問わない。
【0013】
(1−2)ノードの構成
次に、図2を参照して、本実施形態のノードの構成について説明する。図2は、本実施形態のノードの構成の主要部を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態のノードは、アンテナ11、無線受信部12、復調・復号部13、受信電力測定部14、距離推定部15、干渉判定部16、パケット生成部17、符号化・変調部18、無線送信部19およびデュプレクサ(DPX)20を備える。デュプレクサ20は、送信および受信でアンテナ11を共用するために設けられている。
なお、無線受信部は、受信部の一例である。干渉判定部16は、算出部および判定部の一例である。無線送信部は、送信部の一例である。
【0014】
無線受信部12は、アンテナ11で受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換する。無線受信部12は、帯域制限フィルタ、LNA(Low Noise Amplifier)、ローカル周波数発信器、直交復調器、AGC(Automatic Gain Control)アンプ、A/D(Analog to Digital)変換器などを含む。受信電力測定部14は、無線受信部12の受信電力を測定し、測定した受信電力の情報を干渉判定部16へ送る。
復調・復号部13は、無線受信部12の受信信号を復調し、かつ復号してデータパケットを得る。データパケットには、送信元ノードのアドレスおよび宛先ノードのアドレスを含むヘッダと、センサデータを含むデータと、FCS(Frame Check Sequence)とを備えうる。
【0015】
パケット生成部17は、自ノードで取得したセンサデータを含むデータパケットを生成する。符号化・変調部18は、データパケットの誤り訂正符号化及び変調を行う。
無線送信部19は、D/A(Digital to Analog)変換器、ローカル周波数発信器、ミキサ、パワーアンプ、フィルタ等を備える。無線送信部19は、符号化・変調部18からのベースバンド信号を、ベースバンド周波数から無線周波数へアップコンバート等した後に、アンテナ11から空間へ放射する。
【0016】
距離推定部15は、自ノードと通信対象のノードとの間の距離を推定する。この距離の推定方法については後述する。
干渉判定部16は、距離推定部15で推定された通信対象ノードとの間の距離を基に、干渉の有無を判定する。干渉判定部16は、干渉有りと判定した場合には、干渉を回避するために、無線送信部19を制御して送信周波数を変化させる。なお、干渉判定の方法については後述する。
【0017】
本実施形態のノードには、無線センサネットワークにおけるルーティング(経路探索)プロトコルが実装されてよい。実装されるルーティングプロトコルの種類は問わないが、例えば、IETF(International Engineering Task Force)のRFC(Request For Comments)3561で規定されるAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)を適用しうる。AODVはReactive型(受動型)のプロトコルであり、データを送受信しようとしてから初めて経路探索を開始する。経路探索が開始されると、送信元ノードは、近接のノードに対して問い合わせを行うためのRREQ(Route Request)パケットをブロードキャストで送信する。近接のノードはまたその近接のノードにRREQパケットを送信し、RREQパケットが最終的に宛先ノードに到着する。RREQパケットを中継するノードは、複数の経路からRREQパケットを受信した場合には、先に到着したRREQパケットを採用する。宛先ノードは、RREQパケットが到着すると、その逆の経路によりユニキャストで送信元ノード宛にRREP(Route Reply)パケットを送信することで、送信元ノードに経路情報を伝える。結果として、送信元ノードは、ホップ数が最も少ない経路を選択することになる。
【0018】
(1−3)送受ノード間距離の推定処理
次に、主として距離推定部15にて行われる、送受ノード間距離の推定処理について説明する。ここでは、送受ノード間距離の推定方法として以下の(a)〜(c)の3通りの方法について開示するが、いずれの方法を採用してもよい。
【0019】
(a)GPS(Global Positioning System)を用いた方法
この方法について、図3を参照して説明する。この方法では、送受ノードがGPS信号をGPS衛星から受信するための受信回路を備え、GPS信号によって得られる位置測位データを基に、送受ノード間距離を推定する。この場合、仮に送受ノードが共に水平面に在るとして、受信ノードで得られる位置測位データが示す座標が(x1, y1)であり、送信ノードで得られる位置測位データが示す座標が(x2, y2)であるとする。このとき、送受ノード間距離dは、d=((x2−x1)2+(y2−y1)2)1/2によって算出される。
この方法では、送信ノードは受信ノードに対して位置測位データを含むデータパケットを送信するが、このときの使用周波数は、干渉を回避する観点から送受ノード間の通信で通常用いる周波数とは異なることが好ましい。
【0020】
(b)電波の伝搬時間を用いた方法
この方法について、図4および図5を参照して説明する。図4は、この推定方法の処理を示すフローチャートである。図5は、この推定方法においてノード間で送受信されるパケットの時系列上のフローを示す図である。この方法では、ノード間でパケットの送受信を行い、送受ノード間距離に応じたパケットの往復時間によって送受ノード間距離を推定する。以下、図4および図5を参照して電波の伝搬時間を用いた送受ノード間距離の推定処理を説明する。
先ず、他ノードとの距離を測定する距離測定ノードは、自ノードとの距離の測定対象とする他ノードに対して距離測定用パケットの送信を行う基準時刻(T0)を記録する(ステップS1)。そして、距離測定ノードは、距離測定用パケットを他のノード宛に送信する(ステップS2)。他のノードは、距離測定用パケットを受信すると所定の時間ΔTp_r経過した後に距離測定用パケットを返信する。距離測定ノードは、返信されてきた距離測定用パケットを受信する(ステップS3)。距離測定用ノードは、距離測定用パケットの受信処理を行った時刻(T1)を記録する(ステップS4)。ここで、ステップS1からステップS2に要する時間、およびステップS3からステップS4に要する時間(内部の信号処理に要する時間)をΔTp_tとする。このとき、ΔTp_rおよびΔTp_tは概ね固定値と考えてよい。そこで、この方法では、距離測定ノードは、他ノードとの距離dをd=(T1−T0−ΔTp_r−ΔTp_t)/2・C(C:光速)に従って算出することができる。なお、距離測定用パケットのノード間の送受信の使用周波数は、(a)と同様に、干渉を回避する観点から送受ノード間の通信で通常用いる周波数とは異なることが好ましい。
【0021】
(c)ルーティングテーブルの情報を用いる方法
例えば上述したルーティングプロトコルで決定される送受ノード間のコストが送受ノード間距離と概ね比例するという推定の下、送受ノード間距離を推定するようにしてもよい。既に2ノード間でデータ通信が行われたことがある場合、つまり以前にルーティングがなされたことがある場合には、そのときに作成されたルーティングテーブルおよびルート発見テーブルを用いて距離を推定することができる。
例えば、図6に示す例を参照すると、ノードN1からノードN4へのルーティング(ノードN1→N2→N3→N4の経路)が以前になされたことがある場合が示される。ここで、例えば前述したAODV等のルーティングプロトコルが適用される場合には、各ノードには、ルーティングテーブルと、目的ノード(この場合、ノードN4)までの残留コストが記述されたルート発見テーブルとが保持されている。なお、ルーティングにおけるコストは、ホップ数、ノード間における参照信号等の受信電力の値、データレートや遅延時間を意味する。図6に示す例では、ノードN2とN3の間の残留コストの差が3であり、ノードN4とN4の間の残留コストの差が6である。この方法によれば、これらの残留コストの差がノード間の物理的な距離として推定される。
【0022】
(1−4)干渉有無の判定処理
次に、図7を参照して、主として干渉判定部16にて行われる、干渉有無の判定処理について説明する。図7は、干渉有無の判定処理のフローチャートである。
先ず、受信ノードの干渉判定部16は、送信ノードとの距離dを距離推定部15が推定した値d0とし(d=d0)、このときに同時に受信電力測定部14によって測定された受信電力PrをPr0として記録する(ステップS10)。干渉判定部16は、このd0およびPr0を後述する式(1)の基準値として使用する。なお、d0とPr0は、自由空間における理論値、あるいは予め測定されて取得しておいた既定値としてよい。
次に干渉判定部16は、送信ノードとの距離dとして距離推定部15が新たに推定した値dnを取得し、このときに同時に受信電力測定部14によって測定された受信電力Prnを記録する(ステップS20)。そして、干渉判定部16は、送受ノード間の伝搬環境がステップS10で想定する理論値に従うものと仮定した、距離dnにおける受信電力値Pr_tを以下の式(1)に従って算出(推定)する(ステップS30)。ステップS30における減衰定数γは、式(1)に示すようにγ=2の固定値とすることができる。なお、式(1)は所定の関係式の一例である。
【0023】
【数1】
【0024】
さらに、干渉判定部16は、式(1)によって算出される受信電力Pr_tの推定誤差およびフェージング等による受信電力変動の平均値ΔPnと、干渉の許容値ΔInとをPr_tに足し合わせて、干渉判定のための閾値となる電力Pthを算出する(ステップS40)。すなわち、閾値となる電力Pthは、以下の式(2)のとおりとなる。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、干渉判定部16は、式(1)で推定された受信電力値Pr_tが上記閾値電力Pthよりも大きいときには(ステップS50のYES)、送信ノードからの受信電力以外の他ノードからの干渉電力を受けている(つまり、干渉有)と判断する(ステップS60)。このとき、受信ノードでは、送信ノードに対して使用周波数を変更することを通知するとともに自ノードの無線送信部19を制御して受信周波数を変更する。逆に、式(1)で推定された受信電力値Pr_tが上記閾値電力Pth以下であるときには(ステップS50のNO)、干渉無しと判断してステップS20へ戻り、干渉有無の監視を継続する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のノードによれば、送受ノード間距離を推定し、その送受ノード間距離から推定される受信電力と実際の受信電力とを比較するため、干渉の有無を適切に判定することができる。そのため、ノードは、干渉の有無の判定に応じた適切な措置を講じることができる。つまり、ノードは、自ら干渉の有無を判定できるため、受信ダイバーシチの設定の切り替えやパケットの再送等の、干渉に対して不適切となりうる策を講じる必要がない。その代わりに、ノードは、干渉が収まるまでのスリープモードの設定、あるいは使用周波数の変更等の、干渉に対して有効な策を直ちに採ることが可能となる。また、干渉を受けていることが分かれば、受信ノードは、周辺のノードに対し、干渉を受けていることの通知をブロードキャストすることができるため、無線センサネットワーク内において、その受信ノードに対する無駄なトラフィックを抑制することができる。さらに、無線センサネットワーク内で、パケットの再送等に消費されていた電力が抑制される。
【0028】
なお、図7に示した処理のフローチャートを図8に示すフローチャートに変更することで、受信電力Pr_tの推定精度を高めることができる。すなわち、図8のフローチャートでは、図7のものに対して、ステップS22およびステップS24が追加される。この追加されたステップでは、送信ノード間距離の基準値であるd0とそのときの受信電力の基準値であるPr0を、より小さな値のサンプルが得られたときには更新していく。つまり、ステップS20で得られた距離の推定値dnがそれ以前の基準値d0よりも小さい場合には(ステップS22のYES)、その推定値dnを新たな基準値d0にするとともに、ステップS20で得られた受信電力Prnを、新たな受信電力の基準値Pr0とする(ステップS24)。送受ノード間の距離dが小さいほど、より高い精度で送受ノード間を自由空間と推定できるため、両者の間の距離と受信電力の実際の関係が理論的な関係に近付くことになる。そこで、上記更新処理では、得られた送受ノード間の距離が小さいほど、その距離とそのときの受信電力の値を基準値とし、それにより、ステップS30で得られる受信電力Pr_tの推定精度を高めることができる。
【0029】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態のノードについて説明する。
第1の実施形態のノードでは減衰定数γを固定値としたが、本実施形態のノードは、減衰定数γを無線の伝搬環境に応じて動的に設定する。これにより、本実施形態のノードでは、第1の実施形態のノードよりも干渉の有無の判定精度が向上する。
なお、本実施形態のノードの構成は概略図2と同一の構成でよいが、干渉判定部16における処理が第1の実施形態のノードとは異なる。本実施形態では、干渉判定部16において、減衰定数γを逐次更新するためのルックアップテーブル(LUT)が設けられる。
【0030】
図9は、本実施形態のノードの干渉判定部16における処理のフローチャートの一例である。図9に示すように、本実施形態では、図8に示したフローチャートに対して、Pr_tを算出する前に減衰定数γの更新処理(ステップS26)が追加されうる。これに限られず、図7のフローチャートに対してステップS26を追加してもよいことは勿論である。
【0031】
図10は、減衰定数γの更新処理(図9のステップS26)の詳細を示すフローチャートである。以下、図10〜13を参照して、減衰定数γの更新処理の詳細を説明する。
なお、図11は、異なる時刻においてサンプリングされた、ノードの受信電力PrnのCDF(Cumulative Distribution Function)の一例である。図12は、図11におけるそれぞれの受信電力のCDF50%値をプロットした一例である。図13は、図12のプロットを複数回繰り返して得られたデータに対して最小二乗近似曲線を生成したものである。図11〜13はすべて、本実施形態のノードの干渉判定部16が図10の処理を実行することによって得られるデータである。
なお、各図および以下の説明において、Kは、仲上−ライス分布あるいは仲上m分布のファクタであり、例えば「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎、コロナ社、特に24〜27頁」等の公知文献を参照されたい。
【0032】
減衰定数γを推定するには、ノードの受信電力と送受信ノード間距離(Prn-dn)の関係をプロットし、得られたプロットと、理論的な減衰定数γによる曲線との2乗誤差が最も小さくなるようなγの値を選択する方法が考えられる。ところが、無線センサネットワークでは、送信ノードをユーザが保持している場合が想定される。その場合、上記プロットを得るための送受信ノード間距離を、受信ノード側で変化させることはできない。そこで、本実施形態では図10に示した方法を用いる。
【0033】
図10を参照すると先ず、干渉判定部16は、減衰定数γの更新用ルックアップテーブルが作成済みでなければ(ステップS100のNO)、ステップS110へ進む。ステップS110、S170およびS180は、ステップS190で減衰定数γを算出するために必要な量のプロットが得られるように、ステップS120〜S160の処理を所定の回数(N回)繰り返すために設けられている。
【0034】
ステップS120およびS130は、サンプリング条件としてサンプル間隔を適切に設定するための処理である。複数の受信電力の測定(つまり、サンプリング)を、コヒーレンス時間より短い時間内で行ってしまうと、それぞれの時刻における伝搬路が独立と見なせないため、CDFをプロットしたときに誤差が生じうる。その結果、受信電力のサンプル値が実際の伝搬環境で得られるべき適切なKの範囲に含まれない可能性が生ずる。そこで、受信電力のサンプル間隔は、コヒーレンス時間より長い間隔で行うことが好ましい。伝搬環境における移動体が歩行者のみの場合、コヒーレンス時間は一定と考えて良いが、歩行者だけでない場合は、コヒーレンス時間をリアルタイムで測定し、適応的にサンプル間隔を変化させることが好ましい。 コヒーレンス時間の測定に当たって、干渉判定部16は先ず受信信号波形をフーリエ変換することにより周波数領域に変換し、最大ドップラ周波数fDを測定する(ステップS120)。そして、干渉判定部16は、最大ドップラ周波数fDからコヒーレンス時間Tcを算出する(ステップS130)。コヒーレンス時間Tcは、最大ドップラ周波数fDの逆数によって近似される。
【0035】
次に干渉判定部16は、ステップS130で算出したコヒーレンス時間Tcよりも長いサンプル間隔を設定し、そのサンプル間隔で受信電力Prnを測定し、図11に例示すように、CDFをプロットする(ステップS140)。さらに干渉判定部16は、受信電力のCDFのプロット値をKの範囲ごとに分類する。
ステップS140では、例えば異なる3時刻において、送受信ノード間距離dnのときの受信電力Prnをそれぞれ数100〜1000サンプル取得する。これらのサンプルによって得られたCDFのプロットを、仲上−ライス分布あるいは仲上m分布のKごとの理論曲線と比較する。ここでは、図11に示すように、その比較の結果、各時刻における受信電力値のCDFが、●:0<K<1の範囲, ▲:3<K<4の範囲, ×:10<K<20の範囲のそれぞれの範囲に含まれている場合を想定する。
【0036】
次に干渉判定部16は、それぞれの受信電力のCDF50%値を、それぞれの時刻における受信電力のKの範囲(0<K<1,3<K<4,10<K<20)を示すポイントを、Prn-dnのグラフ上にプロットする。このプロットの処理結果を、図12に示す。この時点では、それぞれのKの範囲からPrn-dnグラフ上には1つのポイントのみがプロットされる。そして、ステップS120〜S160の処理を数回(図10ではN回)繰り返すことにより、図13に示すように、各Kの範囲毎に数個のポイントを得ることができる。
【0037】
次に干渉判定部16は、同じく図13に示すように、このKの範囲毎の受信電力のポイントと以下の式(3)との間の2乗誤差を計算し、2乗誤差が最も小さくなるようなγの値を算出する(最小2乗誤差近似)。図13により、送受ノード間距離dnと受信電力Prnが既知であるとしたときの、ファクタKごとの減衰定数γの更新用ルックアップテーブルが作成されたことになる。なお、以上のステップS140〜160に相当する処理は、説明の分かりやすさから図を参照して説明したが、実際には干渉判定部16によるディジタル演算処理により実行される。
上述して算出される減衰定数γの値は、伝搬環境がレイリー分布に近い場合にはその程度に応じて3〜4程度の値となり、仲上−ライス分布に近い場合(つまり、見通し通信である度合いが強い場合)にはその程度に応じて2〜3程度の値となる。
【0038】
本実施形態のノードの干渉判定部16は、図13に示すようなルックアップテーブルが作成されると、それ以降は定期的にサンプルが取得される。そして、サンプルによって得られるCDFが属するKの範囲(例えば、上述した0<K<1,3<K<4,10<K<20のいずれか)を特定し、その特定したKの範囲に基づき、ルックアップテーブルを参照して一意に減衰定数γが得られることになる。
以上のようにして、定期的なサンプルに基づいて、逐次減衰定数γが更新される。ノードの干渉判定部16は、更新された減衰定数γを基に、図9のステップS26において以下の式(3)の演算を実行し、受信電力Pr_tを算出する。
【0039】
【数3】
【0040】
なお、上述した例では、ファクタKの範囲を3通りとしたが、これは一例に過ぎず、3以上の任意のKの範囲を設定することができる。しかしながら、Kの範囲の刻み幅をあまりに狭くした場合、それぞれのKの範囲において取得されるサンプル数が十分ではない場合が生じ、減衰定数γの推定の精度が低下する虞がある。そのため、Kの各範囲の数に応じて十分な数のサンプルを採ることが好ましい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の干渉判定方法、通信装置、通信システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0042】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0043】
(付記1)
第1通信装置から第2通信装置へ無線信号を送信するときに、第2通信装置が受信信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法であって、
第1通信装置と第2通信装置の距離を推定し、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出し、
受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて第2通信装置の受信信号の干渉の有無を判定する、
ことを含む、干渉判定方法。
【0044】
(付記2)
前記関係式は、第1通信装置からの所定の基準距離だけ離間した第2通信装置における受信電力を基準受信電力としたときに、前記基準距離と、推定された第1通信装置と第2通信装置の距離との比のγ乗(γ:正の値)の値に対して前記基準受信電力を乗じた値を前記参照値として算出するものであって、
第1通信装置と第2通信装置の間の伝搬環境の変化に応じて前記γの値を更新することをさらに含む、
付記1に記載された干渉判定方法。
【0045】
(付記3)
第1通信装置と第2通信装置の通信が見通し通信である場合には、見通し通信でない場合と比較して、前記γの値を小さい値とすること、を含む、
付記2に記載された干渉判定方法。
【0046】
(付記4)
第1通信装置から受信した信号の受信電力が前記基準受信電力よりも小さい場合には、受信した信号の受信電力を新たな基準受信電力にするとともに、当該信号を第1通信装置から受信したときに推定された、第1通信装置と第2通信装置の距離を、新たな基準距離とすることをさらに含む、
付記2または3に記載された干渉判定方法。
【0047】
(付記5)
他の通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と前記他の通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、
を備えた通信装置。
【0048】
(付記6)
前記関係式は、第1通信装置からの所定の基準距離だけ離間した第2通信装置における受信電力を基準受信電力としたときに、前記基準距離と、推定された第1通信装置と第2通信装置の距離との比のγ乗(γ:正の値)の値に対して前記基準受信電力を乗じた値を前記参照値として算出するものであって、
前記算出部は、
前記他の通信装置と自装置の伝搬環境の変化に応じて前記γの値を更新する、
付記5に記載された通信装置。
【0049】
(付記7)
前記他の通信装置と自装置の通信が見通し通信である場合には、見通し通信でない場合と比較して、前記γの値を小さい値とする、
付記6に記載された通信装置。
【0050】
(付記8)
前記算出部は、
前記他の通信装置から受信した信号の受信電力が前記基準受信電力よりも小さい場合には、受信した信号の受信電力を新たな基準受信電力にするとともに、当該信号を前記他の通信装置から受信したときに推定された、前記他の通信装置と自装置の距離を、新たな基準距離とすることをさらに含む、
付記6または7に記載された通信装置。
【0051】
(付記9)
第1通信装置と第2通信装置を備え、通信装置間で無線通信が可能な通信システムにおいて、
第1通信装置は、
第2通信装置宛に無線信号を送信する送信部を備え、
第2通信装置は、
第1通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と第1通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、を備えた、
通信システム。
【符号の説明】
【0052】
11…アンテナ
12…無線受信部
13…復調・復号部
14…受信電力測定部
15…距離推定部
16…干渉判定部
17…パケット生成部
18…符号化・変調部
19…無線送信部
20…デュプレクサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置間における無線通信の干渉の有無を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサに無線通信機能を有する小型の電子回路を付加したノード(通信装置)によってネットワークを構成する無線センサネットワークに関する開発が進められている。無線センサネットワークでは、複数のノードの各々が外界の温度、湿度、速度、映像等の情報を収集し、マルチホップ・アドホック通信によって情報を伝達する。無線センサネットワークは、例えば、ヘルスケア、エンタテインメント、遠隔医療等のアプリケーションに利用することが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−233142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線センサネットワークでは、ノードの増加によって、頻繁に使用される周波数帯においてノード間通信の干渉の可能性が高まっているが、各ノードが干渉の有無を直接的に判定することができないという問題がある。つまり、ノード間の通信で干渉が生じた場合には、各ノードではその干渉の発生を、S/N(Signal to Noise)の低下、あるいはデータ伝送レートの低下として間接的に認識できるに過ぎない。そのため、従来のノードは、本来であれば使用周波数を切り替えるべきところを、干渉対策として必ずしも適切でない方法、例えば、受信ダイバーシチの設定の切り替えやパケットの再送等の方法を採る場合があった。受信ノードにおいて干渉が発生しているときには、送信ノード側で送信データに対するacknowledgementが受信できないことから、何回も再送を試みることとなり、無駄な送信のための電力消費が発生し、かつ無駄なトラフィックが生じることになる。
【0005】
よって、発明の1つの側面では、2通信装置間での無線通信における干渉の有無を適切に判定することができるようにした干渉判定方法、通信装置、通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、第1通信装置から第2通信装置へ無線信号を送信するときに、第2通信装置が受信信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法が提供される。
この干渉判定方法は、
第1通信装置と第2通信装置の距離を推定し、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出し、
受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて第2通信装置の受信信号の干渉の有無を判定する、
ことを含む。
【0007】
第2の観点では、通信装置が提供される。
この通信装置は、
他の通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と前記他の通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、
を備える。
【0008】
第3の観点では、第1通信装置と第2通信装置を備え、通信装置間で無線通信が可能な通信システムが提供される。
この通信システムにおいて、
第1通信装置は、第2通信装置宛に無線信号を送信する送信部を備える。
第2通信装置は、
第1通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と第1通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示の干渉判定方法、通信装置、通信システムによれば、2通信装置間での無線通信における干渉の有無を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のノードを含む無線センサネットワークの構成例を示す図。
【図2】第1の実施形態のノードの構成の主要部を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態において送受ノード間の距離推定方法の一例を説明する図。
【図4】第1の実施形態において送受ノード間の距離推定方法の一例を説明するフローチャート。
【図5】第1の実施形態において送受ノード間の距離推定方法の一例を説明するフロー図。
【図6】第1の実施形態においてルーティングテーブルの情報を用いた送受ノード間の距離推定方法の一例を説明するフロー図。
【図7】第1の実施形態のノードで実行される干渉有無の判定処理のフローチャート。
【図8】第1の実施形態のノードで実行される干渉有無の判定処理の変形例に係るフローチャート。
【図9】第2の実施形態のノードで実行される干渉有無の判定処理のフローチャート。
【図10】第2の実施形態において減衰定数の更新処理の詳細を示すフローチャート。
【図11】第2の実施形態のノードにおいて異なる時刻においてサンプリングされた、ノードの受信電力のCDFの一例を示す図。
【図12】図11におけるそれぞれの受信電力のCDF50%値をプロットした一例を示す図。
【図13】図12のプロットを複数回繰り返して得られたデータに対して最小二乗近似曲線を生成したものを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、ノードが無線信号を送信するときにはそのノードを「送信ノード」と表記し、ノードが無線信号を受信するときにはそのノードを「受信ノード」と表記することとする。いずれのノードも送信ノードあるいは受信ノードとなり得る。なお、ノードは、通信装置の一例である。
【0012】
(1)第1の実施形態
(1−1)無線センサネットワーク
図1に、本実施形態のノードを含む無線センサネットワークの構成例を示す。図1に示すように、無線センサネットワークにおける各ノードは、各種のセンサと接続されている。送信ノードのセンサによって得られた情報は、送信ノードから受信ノードに対して無線信号により送られる。ノード間の通信プロトコルとしては例えば、PHY層(物理層)およびMAC(Media Access Controller)層としてIEEE 802.15.4を使用するZigBee(登録商標)等の短距離無線通信が知られているが、ここでは通信プロトコルは問わない。
【0013】
(1−2)ノードの構成
次に、図2を参照して、本実施形態のノードの構成について説明する。図2は、本実施形態のノードの構成の主要部を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態のノードは、アンテナ11、無線受信部12、復調・復号部13、受信電力測定部14、距離推定部15、干渉判定部16、パケット生成部17、符号化・変調部18、無線送信部19およびデュプレクサ(DPX)20を備える。デュプレクサ20は、送信および受信でアンテナ11を共用するために設けられている。
なお、無線受信部は、受信部の一例である。干渉判定部16は、算出部および判定部の一例である。無線送信部は、送信部の一例である。
【0014】
無線受信部12は、アンテナ11で受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換する。無線受信部12は、帯域制限フィルタ、LNA(Low Noise Amplifier)、ローカル周波数発信器、直交復調器、AGC(Automatic Gain Control)アンプ、A/D(Analog to Digital)変換器などを含む。受信電力測定部14は、無線受信部12の受信電力を測定し、測定した受信電力の情報を干渉判定部16へ送る。
復調・復号部13は、無線受信部12の受信信号を復調し、かつ復号してデータパケットを得る。データパケットには、送信元ノードのアドレスおよび宛先ノードのアドレスを含むヘッダと、センサデータを含むデータと、FCS(Frame Check Sequence)とを備えうる。
【0015】
パケット生成部17は、自ノードで取得したセンサデータを含むデータパケットを生成する。符号化・変調部18は、データパケットの誤り訂正符号化及び変調を行う。
無線送信部19は、D/A(Digital to Analog)変換器、ローカル周波数発信器、ミキサ、パワーアンプ、フィルタ等を備える。無線送信部19は、符号化・変調部18からのベースバンド信号を、ベースバンド周波数から無線周波数へアップコンバート等した後に、アンテナ11から空間へ放射する。
【0016】
距離推定部15は、自ノードと通信対象のノードとの間の距離を推定する。この距離の推定方法については後述する。
干渉判定部16は、距離推定部15で推定された通信対象ノードとの間の距離を基に、干渉の有無を判定する。干渉判定部16は、干渉有りと判定した場合には、干渉を回避するために、無線送信部19を制御して送信周波数を変化させる。なお、干渉判定の方法については後述する。
【0017】
本実施形態のノードには、無線センサネットワークにおけるルーティング(経路探索)プロトコルが実装されてよい。実装されるルーティングプロトコルの種類は問わないが、例えば、IETF(International Engineering Task Force)のRFC(Request For Comments)3561で規定されるAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)を適用しうる。AODVはReactive型(受動型)のプロトコルであり、データを送受信しようとしてから初めて経路探索を開始する。経路探索が開始されると、送信元ノードは、近接のノードに対して問い合わせを行うためのRREQ(Route Request)パケットをブロードキャストで送信する。近接のノードはまたその近接のノードにRREQパケットを送信し、RREQパケットが最終的に宛先ノードに到着する。RREQパケットを中継するノードは、複数の経路からRREQパケットを受信した場合には、先に到着したRREQパケットを採用する。宛先ノードは、RREQパケットが到着すると、その逆の経路によりユニキャストで送信元ノード宛にRREP(Route Reply)パケットを送信することで、送信元ノードに経路情報を伝える。結果として、送信元ノードは、ホップ数が最も少ない経路を選択することになる。
【0018】
(1−3)送受ノード間距離の推定処理
次に、主として距離推定部15にて行われる、送受ノード間距離の推定処理について説明する。ここでは、送受ノード間距離の推定方法として以下の(a)〜(c)の3通りの方法について開示するが、いずれの方法を採用してもよい。
【0019】
(a)GPS(Global Positioning System)を用いた方法
この方法について、図3を参照して説明する。この方法では、送受ノードがGPS信号をGPS衛星から受信するための受信回路を備え、GPS信号によって得られる位置測位データを基に、送受ノード間距離を推定する。この場合、仮に送受ノードが共に水平面に在るとして、受信ノードで得られる位置測位データが示す座標が(x1, y1)であり、送信ノードで得られる位置測位データが示す座標が(x2, y2)であるとする。このとき、送受ノード間距離dは、d=((x2−x1)2+(y2−y1)2)1/2によって算出される。
この方法では、送信ノードは受信ノードに対して位置測位データを含むデータパケットを送信するが、このときの使用周波数は、干渉を回避する観点から送受ノード間の通信で通常用いる周波数とは異なることが好ましい。
【0020】
(b)電波の伝搬時間を用いた方法
この方法について、図4および図5を参照して説明する。図4は、この推定方法の処理を示すフローチャートである。図5は、この推定方法においてノード間で送受信されるパケットの時系列上のフローを示す図である。この方法では、ノード間でパケットの送受信を行い、送受ノード間距離に応じたパケットの往復時間によって送受ノード間距離を推定する。以下、図4および図5を参照して電波の伝搬時間を用いた送受ノード間距離の推定処理を説明する。
先ず、他ノードとの距離を測定する距離測定ノードは、自ノードとの距離の測定対象とする他ノードに対して距離測定用パケットの送信を行う基準時刻(T0)を記録する(ステップS1)。そして、距離測定ノードは、距離測定用パケットを他のノード宛に送信する(ステップS2)。他のノードは、距離測定用パケットを受信すると所定の時間ΔTp_r経過した後に距離測定用パケットを返信する。距離測定ノードは、返信されてきた距離測定用パケットを受信する(ステップS3)。距離測定用ノードは、距離測定用パケットの受信処理を行った時刻(T1)を記録する(ステップS4)。ここで、ステップS1からステップS2に要する時間、およびステップS3からステップS4に要する時間(内部の信号処理に要する時間)をΔTp_tとする。このとき、ΔTp_rおよびΔTp_tは概ね固定値と考えてよい。そこで、この方法では、距離測定ノードは、他ノードとの距離dをd=(T1−T0−ΔTp_r−ΔTp_t)/2・C(C:光速)に従って算出することができる。なお、距離測定用パケットのノード間の送受信の使用周波数は、(a)と同様に、干渉を回避する観点から送受ノード間の通信で通常用いる周波数とは異なることが好ましい。
【0021】
(c)ルーティングテーブルの情報を用いる方法
例えば上述したルーティングプロトコルで決定される送受ノード間のコストが送受ノード間距離と概ね比例するという推定の下、送受ノード間距離を推定するようにしてもよい。既に2ノード間でデータ通信が行われたことがある場合、つまり以前にルーティングがなされたことがある場合には、そのときに作成されたルーティングテーブルおよびルート発見テーブルを用いて距離を推定することができる。
例えば、図6に示す例を参照すると、ノードN1からノードN4へのルーティング(ノードN1→N2→N3→N4の経路)が以前になされたことがある場合が示される。ここで、例えば前述したAODV等のルーティングプロトコルが適用される場合には、各ノードには、ルーティングテーブルと、目的ノード(この場合、ノードN4)までの残留コストが記述されたルート発見テーブルとが保持されている。なお、ルーティングにおけるコストは、ホップ数、ノード間における参照信号等の受信電力の値、データレートや遅延時間を意味する。図6に示す例では、ノードN2とN3の間の残留コストの差が3であり、ノードN4とN4の間の残留コストの差が6である。この方法によれば、これらの残留コストの差がノード間の物理的な距離として推定される。
【0022】
(1−4)干渉有無の判定処理
次に、図7を参照して、主として干渉判定部16にて行われる、干渉有無の判定処理について説明する。図7は、干渉有無の判定処理のフローチャートである。
先ず、受信ノードの干渉判定部16は、送信ノードとの距離dを距離推定部15が推定した値d0とし(d=d0)、このときに同時に受信電力測定部14によって測定された受信電力PrをPr0として記録する(ステップS10)。干渉判定部16は、このd0およびPr0を後述する式(1)の基準値として使用する。なお、d0とPr0は、自由空間における理論値、あるいは予め測定されて取得しておいた既定値としてよい。
次に干渉判定部16は、送信ノードとの距離dとして距離推定部15が新たに推定した値dnを取得し、このときに同時に受信電力測定部14によって測定された受信電力Prnを記録する(ステップS20)。そして、干渉判定部16は、送受ノード間の伝搬環境がステップS10で想定する理論値に従うものと仮定した、距離dnにおける受信電力値Pr_tを以下の式(1)に従って算出(推定)する(ステップS30)。ステップS30における減衰定数γは、式(1)に示すようにγ=2の固定値とすることができる。なお、式(1)は所定の関係式の一例である。
【0023】
【数1】
【0024】
さらに、干渉判定部16は、式(1)によって算出される受信電力Pr_tの推定誤差およびフェージング等による受信電力変動の平均値ΔPnと、干渉の許容値ΔInとをPr_tに足し合わせて、干渉判定のための閾値となる電力Pthを算出する(ステップS40)。すなわち、閾値となる電力Pthは、以下の式(2)のとおりとなる。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、干渉判定部16は、式(1)で推定された受信電力値Pr_tが上記閾値電力Pthよりも大きいときには(ステップS50のYES)、送信ノードからの受信電力以外の他ノードからの干渉電力を受けている(つまり、干渉有)と判断する(ステップS60)。このとき、受信ノードでは、送信ノードに対して使用周波数を変更することを通知するとともに自ノードの無線送信部19を制御して受信周波数を変更する。逆に、式(1)で推定された受信電力値Pr_tが上記閾値電力Pth以下であるときには(ステップS50のNO)、干渉無しと判断してステップS20へ戻り、干渉有無の監視を継続する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のノードによれば、送受ノード間距離を推定し、その送受ノード間距離から推定される受信電力と実際の受信電力とを比較するため、干渉の有無を適切に判定することができる。そのため、ノードは、干渉の有無の判定に応じた適切な措置を講じることができる。つまり、ノードは、自ら干渉の有無を判定できるため、受信ダイバーシチの設定の切り替えやパケットの再送等の、干渉に対して不適切となりうる策を講じる必要がない。その代わりに、ノードは、干渉が収まるまでのスリープモードの設定、あるいは使用周波数の変更等の、干渉に対して有効な策を直ちに採ることが可能となる。また、干渉を受けていることが分かれば、受信ノードは、周辺のノードに対し、干渉を受けていることの通知をブロードキャストすることができるため、無線センサネットワーク内において、その受信ノードに対する無駄なトラフィックを抑制することができる。さらに、無線センサネットワーク内で、パケットの再送等に消費されていた電力が抑制される。
【0028】
なお、図7に示した処理のフローチャートを図8に示すフローチャートに変更することで、受信電力Pr_tの推定精度を高めることができる。すなわち、図8のフローチャートでは、図7のものに対して、ステップS22およびステップS24が追加される。この追加されたステップでは、送信ノード間距離の基準値であるd0とそのときの受信電力の基準値であるPr0を、より小さな値のサンプルが得られたときには更新していく。つまり、ステップS20で得られた距離の推定値dnがそれ以前の基準値d0よりも小さい場合には(ステップS22のYES)、その推定値dnを新たな基準値d0にするとともに、ステップS20で得られた受信電力Prnを、新たな受信電力の基準値Pr0とする(ステップS24)。送受ノード間の距離dが小さいほど、より高い精度で送受ノード間を自由空間と推定できるため、両者の間の距離と受信電力の実際の関係が理論的な関係に近付くことになる。そこで、上記更新処理では、得られた送受ノード間の距離が小さいほど、その距離とそのときの受信電力の値を基準値とし、それにより、ステップS30で得られる受信電力Pr_tの推定精度を高めることができる。
【0029】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態のノードについて説明する。
第1の実施形態のノードでは減衰定数γを固定値としたが、本実施形態のノードは、減衰定数γを無線の伝搬環境に応じて動的に設定する。これにより、本実施形態のノードでは、第1の実施形態のノードよりも干渉の有無の判定精度が向上する。
なお、本実施形態のノードの構成は概略図2と同一の構成でよいが、干渉判定部16における処理が第1の実施形態のノードとは異なる。本実施形態では、干渉判定部16において、減衰定数γを逐次更新するためのルックアップテーブル(LUT)が設けられる。
【0030】
図9は、本実施形態のノードの干渉判定部16における処理のフローチャートの一例である。図9に示すように、本実施形態では、図8に示したフローチャートに対して、Pr_tを算出する前に減衰定数γの更新処理(ステップS26)が追加されうる。これに限られず、図7のフローチャートに対してステップS26を追加してもよいことは勿論である。
【0031】
図10は、減衰定数γの更新処理(図9のステップS26)の詳細を示すフローチャートである。以下、図10〜13を参照して、減衰定数γの更新処理の詳細を説明する。
なお、図11は、異なる時刻においてサンプリングされた、ノードの受信電力PrnのCDF(Cumulative Distribution Function)の一例である。図12は、図11におけるそれぞれの受信電力のCDF50%値をプロットした一例である。図13は、図12のプロットを複数回繰り返して得られたデータに対して最小二乗近似曲線を生成したものである。図11〜13はすべて、本実施形態のノードの干渉判定部16が図10の処理を実行することによって得られるデータである。
なお、各図および以下の説明において、Kは、仲上−ライス分布あるいは仲上m分布のファクタであり、例えば「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎、コロナ社、特に24〜27頁」等の公知文献を参照されたい。
【0032】
減衰定数γを推定するには、ノードの受信電力と送受信ノード間距離(Prn-dn)の関係をプロットし、得られたプロットと、理論的な減衰定数γによる曲線との2乗誤差が最も小さくなるようなγの値を選択する方法が考えられる。ところが、無線センサネットワークでは、送信ノードをユーザが保持している場合が想定される。その場合、上記プロットを得るための送受信ノード間距離を、受信ノード側で変化させることはできない。そこで、本実施形態では図10に示した方法を用いる。
【0033】
図10を参照すると先ず、干渉判定部16は、減衰定数γの更新用ルックアップテーブルが作成済みでなければ(ステップS100のNO)、ステップS110へ進む。ステップS110、S170およびS180は、ステップS190で減衰定数γを算出するために必要な量のプロットが得られるように、ステップS120〜S160の処理を所定の回数(N回)繰り返すために設けられている。
【0034】
ステップS120およびS130は、サンプリング条件としてサンプル間隔を適切に設定するための処理である。複数の受信電力の測定(つまり、サンプリング)を、コヒーレンス時間より短い時間内で行ってしまうと、それぞれの時刻における伝搬路が独立と見なせないため、CDFをプロットしたときに誤差が生じうる。その結果、受信電力のサンプル値が実際の伝搬環境で得られるべき適切なKの範囲に含まれない可能性が生ずる。そこで、受信電力のサンプル間隔は、コヒーレンス時間より長い間隔で行うことが好ましい。伝搬環境における移動体が歩行者のみの場合、コヒーレンス時間は一定と考えて良いが、歩行者だけでない場合は、コヒーレンス時間をリアルタイムで測定し、適応的にサンプル間隔を変化させることが好ましい。 コヒーレンス時間の測定に当たって、干渉判定部16は先ず受信信号波形をフーリエ変換することにより周波数領域に変換し、最大ドップラ周波数fDを測定する(ステップS120)。そして、干渉判定部16は、最大ドップラ周波数fDからコヒーレンス時間Tcを算出する(ステップS130)。コヒーレンス時間Tcは、最大ドップラ周波数fDの逆数によって近似される。
【0035】
次に干渉判定部16は、ステップS130で算出したコヒーレンス時間Tcよりも長いサンプル間隔を設定し、そのサンプル間隔で受信電力Prnを測定し、図11に例示すように、CDFをプロットする(ステップS140)。さらに干渉判定部16は、受信電力のCDFのプロット値をKの範囲ごとに分類する。
ステップS140では、例えば異なる3時刻において、送受信ノード間距離dnのときの受信電力Prnをそれぞれ数100〜1000サンプル取得する。これらのサンプルによって得られたCDFのプロットを、仲上−ライス分布あるいは仲上m分布のKごとの理論曲線と比較する。ここでは、図11に示すように、その比較の結果、各時刻における受信電力値のCDFが、●:0<K<1の範囲, ▲:3<K<4の範囲, ×:10<K<20の範囲のそれぞれの範囲に含まれている場合を想定する。
【0036】
次に干渉判定部16は、それぞれの受信電力のCDF50%値を、それぞれの時刻における受信電力のKの範囲(0<K<1,3<K<4,10<K<20)を示すポイントを、Prn-dnのグラフ上にプロットする。このプロットの処理結果を、図12に示す。この時点では、それぞれのKの範囲からPrn-dnグラフ上には1つのポイントのみがプロットされる。そして、ステップS120〜S160の処理を数回(図10ではN回)繰り返すことにより、図13に示すように、各Kの範囲毎に数個のポイントを得ることができる。
【0037】
次に干渉判定部16は、同じく図13に示すように、このKの範囲毎の受信電力のポイントと以下の式(3)との間の2乗誤差を計算し、2乗誤差が最も小さくなるようなγの値を算出する(最小2乗誤差近似)。図13により、送受ノード間距離dnと受信電力Prnが既知であるとしたときの、ファクタKごとの減衰定数γの更新用ルックアップテーブルが作成されたことになる。なお、以上のステップS140〜160に相当する処理は、説明の分かりやすさから図を参照して説明したが、実際には干渉判定部16によるディジタル演算処理により実行される。
上述して算出される減衰定数γの値は、伝搬環境がレイリー分布に近い場合にはその程度に応じて3〜4程度の値となり、仲上−ライス分布に近い場合(つまり、見通し通信である度合いが強い場合)にはその程度に応じて2〜3程度の値となる。
【0038】
本実施形態のノードの干渉判定部16は、図13に示すようなルックアップテーブルが作成されると、それ以降は定期的にサンプルが取得される。そして、サンプルによって得られるCDFが属するKの範囲(例えば、上述した0<K<1,3<K<4,10<K<20のいずれか)を特定し、その特定したKの範囲に基づき、ルックアップテーブルを参照して一意に減衰定数γが得られることになる。
以上のようにして、定期的なサンプルに基づいて、逐次減衰定数γが更新される。ノードの干渉判定部16は、更新された減衰定数γを基に、図9のステップS26において以下の式(3)の演算を実行し、受信電力Pr_tを算出する。
【0039】
【数3】
【0040】
なお、上述した例では、ファクタKの範囲を3通りとしたが、これは一例に過ぎず、3以上の任意のKの範囲を設定することができる。しかしながら、Kの範囲の刻み幅をあまりに狭くした場合、それぞれのKの範囲において取得されるサンプル数が十分ではない場合が生じ、減衰定数γの推定の精度が低下する虞がある。そのため、Kの各範囲の数に応じて十分な数のサンプルを採ることが好ましい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の干渉判定方法、通信装置、通信システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0042】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0043】
(付記1)
第1通信装置から第2通信装置へ無線信号を送信するときに、第2通信装置が受信信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法であって、
第1通信装置と第2通信装置の距離を推定し、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出し、
受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて第2通信装置の受信信号の干渉の有無を判定する、
ことを含む、干渉判定方法。
【0044】
(付記2)
前記関係式は、第1通信装置からの所定の基準距離だけ離間した第2通信装置における受信電力を基準受信電力としたときに、前記基準距離と、推定された第1通信装置と第2通信装置の距離との比のγ乗(γ:正の値)の値に対して前記基準受信電力を乗じた値を前記参照値として算出するものであって、
第1通信装置と第2通信装置の間の伝搬環境の変化に応じて前記γの値を更新することをさらに含む、
付記1に記載された干渉判定方法。
【0045】
(付記3)
第1通信装置と第2通信装置の通信が見通し通信である場合には、見通し通信でない場合と比較して、前記γの値を小さい値とすること、を含む、
付記2に記載された干渉判定方法。
【0046】
(付記4)
第1通信装置から受信した信号の受信電力が前記基準受信電力よりも小さい場合には、受信した信号の受信電力を新たな基準受信電力にするとともに、当該信号を第1通信装置から受信したときに推定された、第1通信装置と第2通信装置の距離を、新たな基準距離とすることをさらに含む、
付記2または3に記載された干渉判定方法。
【0047】
(付記5)
他の通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と前記他の通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、
を備えた通信装置。
【0048】
(付記6)
前記関係式は、第1通信装置からの所定の基準距離だけ離間した第2通信装置における受信電力を基準受信電力としたときに、前記基準距離と、推定された第1通信装置と第2通信装置の距離との比のγ乗(γ:正の値)の値に対して前記基準受信電力を乗じた値を前記参照値として算出するものであって、
前記算出部は、
前記他の通信装置と自装置の伝搬環境の変化に応じて前記γの値を更新する、
付記5に記載された通信装置。
【0049】
(付記7)
前記他の通信装置と自装置の通信が見通し通信である場合には、見通し通信でない場合と比較して、前記γの値を小さい値とする、
付記6に記載された通信装置。
【0050】
(付記8)
前記算出部は、
前記他の通信装置から受信した信号の受信電力が前記基準受信電力よりも小さい場合には、受信した信号の受信電力を新たな基準受信電力にするとともに、当該信号を前記他の通信装置から受信したときに推定された、前記他の通信装置と自装置の距離を、新たな基準距離とすることをさらに含む、
付記6または7に記載された通信装置。
【0051】
(付記9)
第1通信装置と第2通信装置を備え、通信装置間で無線通信が可能な通信システムにおいて、
第1通信装置は、
第2通信装置宛に無線信号を送信する送信部を備え、
第2通信装置は、
第1通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と第1通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、を備えた、
通信システム。
【符号の説明】
【0052】
11…アンテナ
12…無線受信部
13…復調・復号部
14…受信電力測定部
15…距離推定部
16…干渉判定部
17…パケット生成部
18…符号化・変調部
19…無線送信部
20…デュプレクサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置から第2通信装置へ無線信号を送信するときに、第2通信装置が受信信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法であって、
第1通信装置と第2通信装置の距離を推定し、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出し、
受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて第2通信装置の受信信号の干渉の有無を判定する、
ことを含む、干渉判定方法。
【請求項2】
前記関係式は、第1通信装置からの所定の基準距離だけ離間した第2通信装置における受信電力を基準受信電力としたときに、前記基準距離と、推定された第1通信装置と第2通信装置の距離との比のγ乗(γ:正の値)の値に対して前記基準受信電力を乗じた値を前記参照値として算出するものであって、
第1通信装置と第2通信装置の間の伝搬環境の変化に応じて前記γの値を更新することをさらに含む、
請求項1に記載された干渉判定方法。
【請求項3】
第1通信装置から受信した信号の受信電力が前記基準受信電力よりも小さい場合には、受信した信号の受信電力を新たな基準受信電力にするとともに、当該信号を第1通信装置から受信したときに推定された、第1通信装置と第2通信装置の距離を、新たな基準距離とすることをさらに含む、
請求項2に記載された干渉判定方法。
【請求項4】
他の通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と前記他の通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、
を備えた通信装置。
【請求項5】
第1通信装置と第2通信装置を備え、通信装置間で無線通信が可能な通信システムにおいて、
第1通信装置は、
第2通信装置宛に無線信号を送信する送信部を備え、
第2通信装置は、
第1通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と第1通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、を備えた、
通信システム。
【請求項1】
第1通信装置から第2通信装置へ無線信号を送信するときに、第2通信装置が受信信号の干渉の有無を判定するための干渉判定方法であって、
第1通信装置と第2通信装置の距離を推定し、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出し、
受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて第2通信装置の受信信号の干渉の有無を判定する、
ことを含む、干渉判定方法。
【請求項2】
前記関係式は、第1通信装置からの所定の基準距離だけ離間した第2通信装置における受信電力を基準受信電力としたときに、前記基準距離と、推定された第1通信装置と第2通信装置の距離との比のγ乗(γ:正の値)の値に対して前記基準受信電力を乗じた値を前記参照値として算出するものであって、
第1通信装置と第2通信装置の間の伝搬環境の変化に応じて前記γの値を更新することをさらに含む、
請求項1に記載された干渉判定方法。
【請求項3】
第1通信装置から受信した信号の受信電力が前記基準受信電力よりも小さい場合には、受信した信号の受信電力を新たな基準受信電力にするとともに、当該信号を第1通信装置から受信したときに推定された、第1通信装置と第2通信装置の距離を、新たな基準距離とすることをさらに含む、
請求項2に記載された干渉判定方法。
【請求項4】
他の通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と前記他の通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって前記第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、
を備えた通信装置。
【請求項5】
第1通信装置と第2通信装置を備え、通信装置間で無線通信が可能な通信システムにおいて、
第1通信装置は、
第2通信装置宛に無線信号を送信する送信部を備え、
第2通信装置は、
第1通信装置から無線信号を受信する受信部と、
自装置と第1通信装置の距離を推定する距離推定部と、
無線信号の距離に対する減衰度合いを示す所定の関係式に基づき、前記距離推定部で推定された前記距離によって第1通信装置から受信すべき信号の受信電力の参照値を算出する算出部と、
前記受信部により受信された信号の受信電力と前記参照値を比較して、その比較結果に基づいて自装置の受信信号の干渉の有無を判定する判定部と、を備えた、
通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−182698(P2012−182698A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44668(P2011−44668)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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