説明

平均温度検出装置と車両用空調装置

【課題】空調ゾーンの平均温度を簡単に検出することができる平均温度検出装置と、その平均温度検出装置を用いてコストを抑えて快適なゾーン空調を行うことのできる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】一端を閉塞した吸気管27と、吸気管27の側面に開設した複数の吸気孔271と、吸気管27の他端側に設けて、内部を流通する空気の温度を検出する温度センサ21と、吸気管27の他端から空気を吸引するアスピレータ構造29Aとを有している。
そして、吸気管27A〜27Fを各空調ゾーン31〜36に配設し、アスピレータ構造29Aによって複数の吸気孔271から各空調ゾーン31〜36内の空気を複数箇所から吸気管27内に吸い込み、このときに温度センサ21A〜21Fで検出される温度を各空調ゾーン31〜36の平均温度としている。これにより、空調ゾーンの正しい平均温度を、簡単に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計測空間の平均温度を検出する平均温度検出装置と、この平均温度検出装置を複数の空調ゾーンごとの平均温度検出に用いたバス車両などの大型車両の車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バスなどの大型車両の車両用空調装置において、車室内を複数の空調ゾーンに分け、その空調ゾーンごとに空調状態を調節するというゾーン空調がある。下記特許文献1は、このゾーン空調に係る一例である。従来、このようなゾーン空調において、各空調ゾーンの室温は、空調ゾーンごとに1つのサーミスタを設け、このサーミスタでの検出温度をその空調ゾーンの代表室温とみなして、各空調ゾーンの室温制御をしている。
【特許文献1】特開2006−335117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、空調ゾーンごとに1点の代表温度のみを利用した制御では、空調ゾーン内の熱負荷の偏りや一時的な温度分布の不均一が生じた場合に、対応が鈍かったり、過度に対応したりするという問題点がある。バス車両のように大きな空調ゾーンの制御では、多点で温度を計測して平均温度で制御するのが好ましいが、単純に温度計測点を増やすのはコストアップになるうえ制御を複雑にするという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、空調ゾーンの平均温度を簡単に検出することができる平均温度検出装置と、その平均温度検出装置を用いてコストを抑えて快適なゾーン空調を行うことのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、空調制御されている温度計測空間に配設され、一端が閉塞された管状部材(27)と、管状部材(27)の側面に形成された複数の吸気孔(271)と、管状部材(27)の他端に設けられ、管状部材(27)内部の空気を吸引する吸引手段(29)と、管状部材(27)の他端近傍に設けられ、複数の吸気孔(271)から吸引された温度計測空間の空調空気の温度を検出する温度検出手段(21)とを有することを特徴としている。
【0006】
この請求項1に記載の発明によれば、温度計測空間の正しい平均温度を、簡単に検出することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の平均温度検出装置において、複数の吸気孔(271)は、略等間隔に配設され、かつ管状部材(27)内の空気流れ方向において、上流側の吸気孔(271)の開口面積を下流側の吸気孔(271)の開口面積よりも大きくしていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、複数の吸気孔(271)は、相互にほぼ同じ開口面積を有しているとともに、管状部材(27)内の空気流れ方向において、上流側になるほど吸気孔(271)間のピッチを狭くして開設されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の平均温度検出装置において、複数の吸気孔(271)は、管状部材(27)内の空気流れ方向において、上流側の吸気孔(271)の数が下流側の吸気孔(271)の数よりも多くなっていることを特徴としている。
【0010】
これら請求項2〜4に記載の発明によれば、各吸気孔(271)からの吸入量を等しくすることができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれかに記載の平均温度検出装置において、吸気孔(271)の大きさを3〜6mmとしていることを特徴としている。この請求項5に記載の発明によれば、指が入らない大きさの吸気孔(271)とすることで、人がこの吸気孔(271)でけがすることを防止することができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれかに記載の平均温度検出装置において、吸引手段(29)として、温度計測空間に吹き出される空気流路(8)に生じる負圧を利用したアスピレータ方式としていることを特徴としている。この請求項6に記載の発明によれば、吸引手段(29)に動力を用いる必要がなくなり、コストを抑えることができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれかに記載の平均温度検出装置において、吸引手段(29)として、モータファンを用いて強制的に吸い込むモータファン方式としていることを特徴としている。この請求項7に記載の発明によれば、温度計測空間に吹き出される空気流路(8)からの吹出量に関係なく、温度計測空間の平均温度を計測することができる。
【0014】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれかに記載の平均温度検出装置において、複数の温度計測空間に配設した複数の管状部材(27)のそれぞれの他端側を切替手段(28)に接続し、その切替手段(28)の空気流れ下流側に1つの温度検出手段(21)と1つの吸引手段(29)とを接続していることを特徴としている。
【0015】
この請求項8に記載の発明によれば、複数の温度計測空間の平均温度を検出する場合、複数の温度計測空間に配設した複数の管状部材(27)を、切替手段(28)で切り替えながら、1つの温度検出手段(21)で順次平均温度を検出する構成とすることで、コストを抑えることができる。
【0016】
また、請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の平均温度検出装置において、切替手段(28)にて接続する管状部材(27)を切り替えた場合、所定の時間が経過した後に平均温度を検出することを特徴としている。この請求項9に記載の発明によれば、切り替えた管状部材(27)の先端の吸気孔(271)から吸い込んだ空気が、温度検出手段(21)に届くまでの時間を見込んでから平均温度を検出することで、平均温度を正確に検出することができる。
【0017】
また、請求項10に記載の発明では、車両の前後方向および左右方向に形成される複数の車室内の空調ゾーン(31〜36)に対して、それぞれ独立して温度制御する空調ユニット(1、2)と、複数の空調ゾーン(31〜36)にそれぞれ配設され、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の平均温度検出装置と、平均温度検出装置の検出結果に応じて、複数の空調ゾーン(31〜36)の温度を制御する空調制御手段(20)とを有することを特徴としている。
【0018】
この請求項10に記載の発明によれば、各空調ゾーン(31〜36)ごとに1つの平均温度検出装置(21A〜21F)を配設することで、ゾーンエリア内の熱負荷の偏りや一時的な温度分布の不均一が生じた場合であっても、ゾーンエリア内の平均温度として検出するため、誤動作しにくくすることができる。
【0019】
また、請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の車両用空調装置において、平均温度検出装置の管状部材(27)として、車室内に敷設された吊り革の保持パイプを利用していることを特徴としている。この請求項11に記載の発明によれば、吊り革の保持パイプに組み込むことで、むだにスペースを使うことなくすっきりと構成できるうえ、コストを抑えることができる。
【0020】
また、請求項12に記載の発明では、請求項10に記載の車両用空調装置において、平均温度検出装置の管状部材(27)として、車室内に敷設された荷棚(26)の一部を利用していることを特徴としている。この請求項12に記載の発明によれば、荷棚(26)の一部に組み込むことで、むだにスペースを使うことなくすっきりと構成できるうえ、コストを抑えることができる。
【0021】
また、請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の車両用空調装置において、荷棚(26)の通路側下方に吸気孔(271)を開設していることを特徴としている。この請求項13に記載の発明によれば、日射の影響も受けないうえ、通路の妨げともならない。
【0022】
また、請求項14に記載の発明では、車室内の車両前後方向および車両左右方向に並ぶ複数の空調ゾーン(31〜36)ごとに空調状態を調節することのできる空調ユニット(1、2)と、車室内に敷設された荷棚(26)と、複数の空調ゾーン(31〜36)ごとで荷棚(26)の表面温度を検出する表面温度検出手段(30)と、いずれか1つの空調ゾーン(31〜36)で、荷棚(26)近傍の空気温度を検出する温度検出手段(21)と、空調ユニット(1、2)の作動を制御する空調制御手段(20)とを備え、
空調制御手段(20)は、いずれか1つの空調ゾーン(31〜36)の表面温度検出手段(30)で検出される荷棚(26)の表面温度と、温度検出手段(21)で検出される荷棚(26)近傍の空気温度との相関を複数の空調ゾーン(31〜36)にも当てはめ、複数の空調ゾーン(31〜36)ごとで検出される荷棚(26)の表面温度から各空調ゾーン(31〜36)での空気温度を推定し、その各推定空気温度の結果に応じて空調ユニット(1、2)の作動を制御することを特徴としている。
【0023】
この請求項14に記載の発明によれば、各空調ゾーン(31〜36)ごとの表面温度検出手段(30)と、1つの空気温度検出手段(21)とを組み合せることで、各空調ゾーン(31〜36)での空気温度を推定することができ、この推定温度を各空調ゾーン(31〜36)での代表空気温度としてゾーン空調の制御を行うことができる。ちなみに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について添付した図1〜6を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置1の実装状態における構成概要を示すバス車両の斜視図である。また、図2は、図1の車両用空調装置1の構成概要を示す平面模式図であり、図3は、2コンプレッサ冷凍サイクルの構成模式図である。
【0025】
まず、図1中の暖房ユニット(空調ユニット)2は、図示しない走行用エンジンの冷却水を熱源とするヒータコア3と、そのヒータコア3にて加熱された空気の流路を成す温風ダクト4L、4Rとからなり、バス車両の床上に配置されている。そして、温風ダクト4L、4Rは車両の左右それぞれに配置されて車両の前後方向に延びるとともに、この温風ダクト4L、4Rの前後端部にそれぞれヒータコア3が配置されている。
【0026】
更に、温風ダクト4L、4Rには複数個の温風吹出口5が形成されており、そこから車室内の乗員足元に向けて温風が吹き出される。次に、図2および図3に示すように、コンデンサ(凝縮器)15L、15R、外気ファン14L、14R、エバポレータ(冷却用熱交換器)11L、11Rおよびブロワ(送風手段)19L、19Rなどからなる周知の冷房ユニット(空調ユニット)1が、バス車両の屋根10の上に装着されている。
【0027】
冷房ユニット1を構成する冷凍サイクルは、車両用空調装置に使用される周知のものであり、図3に示すように、コンプレッサ(圧縮機)6L、6R、コンデンサ15L、15R、レシーバ16L、16R、膨張弁(減圧手段)18L、18R、エバポレータ11L、11Rなどの各冷凍機器を冷媒配管によって環状に接続して構成され、本実施形態では図3に示すように、それぞれ独立した2系統を有している。
【0028】
コンプレッサ6L、6Rは、バス車両の後部床下に配置され(図1参照)、図示しない走行用エンジンから電磁クラッチを介して駆動される。コンデンサ15L、15Rは、コンプレッサ6L、6Rにて圧縮された高温高圧の冷媒を、外気ファン14L、14Rで送られる外気で冷却して凝縮させるものである。
【0029】
レシーバ16L、16Rは、コンデンサ15L、15Rの冷媒流出側に配置され、コンデンサ15L、15Rから流出した冷媒の気液分離を行い、液相冷媒だけを膨張弁18L、18Rに向けて流出すると共に、レシーバ16L、16R内に所定量の液冷媒を蓄えることにより、冷凍サイクル内を循環する冷媒量を調節している。
【0030】
ちなみに図3では、レシーバ16L、16Rと膨張弁18L、18Rとの間にスーパークーラ(過冷却用熱交換器)17L、17Rを構成しているが、このスーパークーラ17L、17Rを有さない冷凍サイクルであっても良い。このスーパークーラ17L、17Rの液相冷媒流出側には、冷媒の減圧手段を成す膨張弁18L、18Rが配設されている。
【0031】
尚、この膨張弁18L、18Rは温度式となっており、エバポレータ11L、11Rの冷媒流出側の冷媒温度に応じて、その弁開度を調節している。具体的には、エバポレータ11L、11Rの冷媒流出側に冷媒温度を感知する図示しない感温筒を配設して、冷媒温度(冷房負荷)が高い時には弁開度を増し、冷媒温度(冷房負荷)が低い時には弁開度を絞るようにしている。
【0032】
その膨張弁18L、18Rの冷媒流出側には、減圧されて低温低圧となった液相冷媒を蒸発させて空調用空気を冷却するエバポレータ11L、11Rが配設されており、ブロワ19L、19Rにて通風される空調用空気を冷却する。なお、冷房ユニット1は、図1に示すように、コンデンシングユニット部12とクーリングユニット部13とを一体に構成したものとなっている。
【0033】
コンデンシングユニット部12は、コンデンサ15L、15Rと、このコンデンサ15L、15Rに外気を送風する外気ファン14L、14Rなどより構成されている。また、クーリングユニット部13は、空調ケース内に、エバポレータ11L、11Rと、このエバポレータ11L、11Rに車室内の空気(内気)もしくは車室外の空気(外気)を通風するためのブロワ19L、19Rなどより構成されている。
【0034】
なお、図2中に内気吸込口9を示しているが、吸込口としては図示しない外気吸込口も有しており、エバポレータ11L、11Rの空気流れ上流側の図示しない内外気切り替え手段にて、内気と外気とが切り替え導入されるようになっている。ブロワ19L、19Rによってエバポレータ11L、11Rに通風された空気は、エバポレータ11L、11Rを通過する際に低温冷媒との熱交換により冷却されて、車室内の冷風ダクト7L、7R(図1および図2参照)へ供給される。
【0035】
冷風ダクト7L、7Rは車両の左右それぞれに配置されて車両の前後方向に延びている。また、冷風ダクト7L、7Rには、複数個の吹出口8L、8Rが形成されており、そこから車室内の乗員頭部に向けて冷風が吹き出される。つまり、一端に吸込口9、他端に車室内への左側吹出口8Lと右側吹出口8Rを有し、内部に空気通路を形成した空調ユニット13内に、空気通路の途中に配設されて吸込口9から先の左側吹出口8Lへと向かう空気流を発生させる左側のブロワ19Lと、同じくその空気通路の途中に配設されて空気通路を通過する空気を冷却する左側蒸発器11Lとを備えている。
【0036】
また同様に、空気通路の途中に配設されて吸込口9から先の右側吹出口8Rへと向かう空気流を発生させる右側のブロワ19Rと、同じくその空気通路の途中に配設されて空気通路を通過する空気を冷却する右側蒸発器11Rとを備えている。そして、図2に示すように、車室内を6つの空調ゾーン(温度計測空間)31〜36に区画している。
【0037】
つまり、車室の左側前方区域である左前ゾーン31、左側中央区域である左中ゾーン32、左側後方区域である左後ゾーン33、右側前方区域である右前ゾーン34、右側中央区域である右中ゾーン35および右側後方区域である右後ゾーン36に区画している。そして、これら複数の空調ゾーン31〜36ごとに空調状態を調節するため、左右冷風ダクト7L、7Rには、各ゾーンの境目に風量調整ドア25を設けている。
【0038】
このような構成の空調装置における空調制御として、車室内空気温度が設定温度に近づくにつれてブロワ風量を減少させるとともに、ほぼ設定温度になるとコンプレッサをオン、オフさせて車室内温度の保持を行う。この保温時の制御としてコンプレッサのオン、オフ制御に入ると、左右冷風ダクト7L、7Rの一方(例えば左側)から冷却された風を吹き出し、他方(この場合右側)からは送風のみとし、この片側冷却を所定時間毎(例えば1分間隔)で左右交互に運転させて低負荷時の冷房能力を調整している。
【0039】
図3中の空調制御装置(空調制御手段)20へは、例えば運転手などの乗員が空調装置の運転、停止および設定温度などを設定する図示しない空調操作パネルからの操作信号などが入力され、それに応じて上述の暖房ユニット2、およびコンプレッサ6L、6R、冷房ユニット1の外気ファン14L、14R、ブロワ19L、19Rなどの各冷凍機器が、この空調制御装置20によって制御されるようになっている。
【0040】
次に、本発明の要部である平均温度検出装置と、それを用いた車両用空調装置について、図4〜6を加えて説明する。まず図4は、本発明の平均温度検出装置を示す模式図であり、(a)〜(c)は、吸気管27における吸気孔271の開設方法のバリエーションを示す。平均温度検出装置は、一端を閉塞した吸気管(管状部材)27から成り、この吸気管27の側面に複数の吸気孔271を開設している。
【0041】
そして、吸気管27の他端側には、複数の吸気孔271から吸気管27の内部に空気を吸引する吸引手段29が設けられている。吸気管27に吸引された空気は、吸気管27内を流れるとともに、吸引されたそれぞれの空気は混合される。混合された空気流の下流側には、混合空気の温度を検出するサーミスタなどの温度センサ(温度検出手段)21が設けられている。
【0042】
なお、吸気管27は、熱容量の小さい材質や板厚を使用している。そして、この吸気管27を温度計測空間に配設し、吸引手段29によって複数の吸気孔271から温度計測空間内の空気を複数箇所から吸気管27内に吸い込み、このときに温度センサ21で検出される温度を温度計測空間の平均温度とするものである。
【0043】
なお、図4(a)の例では、吸引手段29として、吸気管27の他端側を冷風ダクト7の吹出口(空気流路)8中に置き、周りの空気流によって生じる負圧を利用して吸気管27内の空気を吸引するアスピレータ構造29Aを構成している。さらに、図4(a)の例において、複数の吸気孔271は、吸気管27内の空気流れ方向において、略等間隔に配設され、かつ上流側の吸気孔271の開口面積を下流側の吸気孔271の開口面積よりも大きくしている。
【0044】
また、図4(b)の例において、複数の吸気孔271は、相互にほぼ同じ開口面積を有しているとともに、吸気管27内の空気流れ方向において、上流側になるほど吸気孔271間のピッチを狭くして開設されている。また、図4(c)の例において、複数の吸気孔271は、吸気管27内の空気流れ方向において、上流側の吸気孔271の数が下流側の吸気孔271の数よりも多くなっている。
【0045】
これら(図4(a)〜(c))はいずれの場合も、各吸気孔271からの吸入量を等しくするための実施形態である。なお、いずれの吸気孔271も、大きさを3〜6mmとしている。これは、指が入らない大きさとすることで、人がこの吸気孔271でけがするのを防止するためである。
【0046】
図5は、本発明の第1実施形態における吸気管27と温度センサ21の配設状態を示すバス車両の側面図である。車室内の複数の空調ゾーン31〜36ごとに、上述した平均温度検出装置27A〜27Fおよび温度センサ21A〜21Fを配置している。図6は、本発明に係る荷棚26の斜視部分断面図である。本実施形態では、平均温度検出装置27A〜27Fを、車室内に敷設された荷棚26の一部を利用している。
【0047】
より具体的には、温度計測空間である空調ゾーンの中央部分で、日射の影響を受けず、車内スペースを無駄にしない場所として、荷棚26の通路側の管状空間を吸気管27として利用し、その下方側に吸気孔271を開設している。なお、荷棚26の管状空間内に吸気管27を挿入する構成であっても良い。そして、このような平均温度検出装置27A〜27Fの各温度センサ21A〜21Fが検出する空調ゾーン31〜36ごとの平均温度が、空調用制御装置20へ入力され、これらの平均温度に応じて空調ユニット1、2の作動が制御されるようになっている。
【0048】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、一端を閉塞した吸気管27の側面に、複数の吸気孔271が開設され、吸気管27の他端には、吸気管27内の空気を吸引するアスピレータ構造29Aが形成されている。そして、前述のように構成された各吸気管27A〜27Fを各空調ゾーン31〜36に配設し、アスピレータ構造29Aによって複数の吸気孔271から各空調ゾーン31〜36内の空気を複数箇所から吸気管27A〜27F内に吸い込む。このとき、温度センサ21A〜21Fで検出される温度を、各空調ゾーン31〜36の平均温度としている。これによれば、空調ゾーンにおける実際の平均温度により近い温度を、簡単に検出することができる。
【0049】
また、複数の吸気孔271を、吸気管27内の空気流れ方向において略等間隔に配設されるとともに、上流側の吸気孔271の開口面積を下流側の吸気孔271の開口面積よりも大きくしている。また、複数の吸気孔271は、吸気管27内の空気流れ方向において、上流側になるほど吸気孔271間のピッチを狭くして開設することも可能である。また、複数の吸気孔271を、吸気管27内の空気流れ方向において、上流側の吸気孔271の数が下流側の吸気孔271の数よりも多くすることも可能である。これらによれば、各吸気孔271からの吸入量を等しくすることができる。
【0050】
また、吸気孔271の大きさを3〜6mmとしている。これによれば、乗員の指が入らない大きさの吸気孔271とすることで、人がこの吸気孔271でけがすることを防止することができる。また、吸引手段29として、温度計測空間に吹き出される空気流路8に生じる負圧を利用したアスピレータ方式としている。これによれば、吸引手段29に動力を用いる必要がなくなり、コストを抑えることができる。もちろん、ブロワなどの吸引手段により、空気を吸気管27に吸入することも可能である。
【0051】
また、車室内の車両前後方向および車両左右方向に並ぶ複数の空調ゾーン31〜36ごとに、空調状態を調節することのできる空調ユニット1、2と、複数の空調ゾーン31〜36ごとに配置された平均温度検出装置27A〜27Fと、平均温度検出装置27A〜27Fの検出結果に応じて空調ユニット1、2の作動を制御する空調制御装置20とを備えている。
【0052】
これによれば、各空調ゾーン31〜36ごとに1つの平均温度検出装置27A〜27Fを配設することで、ゾーンエリア内の熱負荷の偏りや一時的な温度分布の不均一が生じた場合であっても、ゾーンエリア内の平均温度として検出するため、誤動作しにくくすることができる。
【0053】
また、平均温度検出装置の吸気管27として、車室内に敷設された荷棚26の一部を利用している。これによれば、荷棚26の一部に組み込むことで、むだにスペースを使うことなくすっきりと構成できるうえ、コストを抑えることができる。また、荷棚26の通路側下方に吸気孔271を開設している。これによれば、日射の影響も受けないうえ、通路の妨げともならない。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図7は、本発明の第2実施形態における吸気管27と温度センサ21との配設状態を示すバス車室内のゾーン模式図である。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0055】
本実施形態では、複数の空調ゾーン31〜36(ただし、空調ゾーン33、36は図示省略)に配設した複数の吸気管27A〜27F(ただし、吸気管27C、27Fは図示省略)のそれぞれの他端側を、切替弁(切替手段)28に接続し、その切替弁28の空気流れ下流側に1つの温度センサ21と、1つの吸引手段29とを接続している。
【0056】
これによれば、複数の空調ゾーンの平均温度を検出する場合、複数の空調ゾーンに配設した複数の吸気管27を、切替弁28で切り替えながら、1つの温度センサ21で順次平均温度を検出する構成とすることで、コストを抑えることができる。また、吸引手段29として、モータファン29Bを用いて強制的に吸い込むモータファン方式としている。なお、この切替弁28およびモータファン29Bは、空調制御装置20によって制御される。これによれば、温度計測空間に吹き出される空気流路8からの吹出量に関係なく、温度計測空間の平均温度を計測することができる。
【0057】
また、切替弁28にて接続する吸気管27を切り替えた場合、所定の時間が経過した後に平均温度を検出するようにしている。これによれば、切り替えた吸気管27の先端の吸気孔271から吸い込んだ空気が、温度センサ21に届くまでの時間(30〜60秒)を見込んでから平均温度を検出することで、平均温度を正確に検出することができる。なお、各平均温度の検出の周期は、5分以内としている。これは、検出の周期が長くなると室温の変化量が大きくなってモード飛びなどが発生する可能性が増すためである。
【0058】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態におけるゾーン温度検出方法を示すバス車両の側面図である。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、複数の空調ゾーン31〜36に存在するそれぞれの荷棚26の表面温度を検出する表面温度センサ(表面温度検出手段)30と、いずれか1つの空調ゾーン31〜36(例えば、空調ゾーン31)で、荷棚26近傍の空気温度を検出する温度センサ21とを備えている。なお、表面温度センサ30としては、具体的にサーミスタや熱電対およびIR(赤外線)センサなどを用いている。
【0059】
そして、各表面温度センサ30および温度センサ21の検出値は、空調制御装置20に入力される。そして、空調制御装置20は、温度センサ21が設けられかつ荷棚26近傍の空気温度が検出される空調ゾーン31の空気を、検出された空気温度に応じて制御する。また、空調制御装置20は、温度センサ21が設けられる空調ゾーン31において検出される空気温度と表面温度との相関関係を、温度センサ21が設けられていない空調ゾーン32〜36に適用することにより、温度センサ21が設けられていない空調ゾーン32〜36における空気の空気温度を推定する。
【0060】
更に、空調制御装置20は、このように推定された空気温度に応じて、温度センサ21が設けられていない空調ゾーン32〜36における空気温度を制御するようにしている。これによれば、各空調ゾーン31〜36ごとの表面温度センサ30と、1つの空気温度センサ21とを組み合せることで、各空調ゾーン31〜36での空気温度を推定することができ、この推定温度を各空調ゾーン31〜36での代表空気温度としてゾーン空調の制御を行うことができる。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はバス車両に適用したものであるが、本発明はこれに限るものではなく、列車などの車両や船舶の屋上装着型空調装置に適用しても良い。また、上述の実施形態では、ゾーン空調を行う空調装置に本平均温度検出装置を適用しているが、ゾーン空調に限らず全体空調などに適用しても良い。
【0062】
また、上述の第1実施形態では、平均温度検出装置の吸気管27として、車室内に敷設された荷棚26の一部を利用しているが、平均温度検出装置の吸気管27として、車室内に敷設された吊り革の保持パイプを利用しても良い。これによれば、吊り革の保持パイプに組み込むことで、むだにスペースを使うことなくすっきりと構成できるうえ、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置1の実装状態における構成概要を示すバス車両の斜視図である。
【図2】図1の車両用空調装置1の構成概要を示す平面模式図である。
【図3】2コンプレッサ冷凍サイクルの構成模式図である。
【図4】本発明の平均温度検出装置を示す模式図であり、(a)〜(c)は、吸気管27における吸気孔271の開設方法のバリエーションを示す。
【図5】本発明の第1実施形態における吸気管27と温度センサ21の配設状態を示すバス車両の側面図である。
【図6】本発明に係る荷棚26の斜視部分断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態における吸気管27と温度センサ21との配設状態を示すバス車室内のゾーン模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態におけるゾーン温度検出方法を示すバス車両の側面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…冷房ユニット(空調ユニット)
2…暖房ユニット(空調ユニット)
8…吹出口(空気流路)
20…空調制御装置(空調制御手段)
21…温度センサ(温度検出手段)
26…荷棚
27…吸気管(管状部材)
28…切替弁(切替手段)
29…吸引手段
30…表面温度センサ(表面温度検出手段)
31〜36…空調ゾーン(温度計測空間)
271…吸気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御されている温度計測空間に配設され、一端が閉塞された管状部材(27)と、
前記管状部材(27)の側面に形成された複数の吸気孔(271)と、
前記管状部材(27)の他端に設けられ、前記管状部材(27)内部の空気を吸引する吸引手段(29)と、
前記管状部材(27)の他端近傍に設けられ、前記複数の吸気孔(271)から吸引された前記温度計測空間の空調空気の温度を検出する温度検出手段(21)とを有することを特徴とする平均温度検出装置。
【請求項2】
前記複数の吸気孔(271)は、前記管状部材(27)内の空気流れ方向において略等間隔に配設され、かつ上流側の前記吸気孔(271)の開口面積を下流側の前記吸気孔(271)の開口面積よりも大きくしていることを特徴とする請求項1に記載の平均温度検出装置。
【請求項3】
前記複数の吸気孔(271)は、相互にほぼ同じ開口面積を有しているとともに、前記管状部材(27)内の空気流れ方向において、上流側になるほど前記吸気孔(271)間のピッチを狭くして開設されていることを特徴とする請求項1に記載の平均温度検出装置。
【請求項4】
前記複数の吸気孔(271)は、前記管状部材(27)内の空気流れ方向において、上流側の前記吸気孔(271)の数が下流側の前記吸気孔(271)の数よりも多くなっていることを特徴とする請求項1に記載の平均温度検出装置。
【請求項5】
前記吸気孔(271)の大きさを3〜6mmとしていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の平均温度検出装置。
【請求項6】
前記吸引手段(29)として、前記温度計測空間に吹き出される空気流路(8)に生じる負圧を利用したアスピレータ方式としていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の平均温度検出装置。
【請求項7】
前記吸引手段(29)として、モータファンを用いて強制的に吸い込むモータファン方式としていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の平均温度検出装置。
【請求項8】
複数の前記温度計測空間に配設した複数の前記管状部材(27)のそれぞれの前記他端側を切替手段(28)に接続し、その切替手段(28)の空気流れ下流側に1つの前記温度検出手段(21)と1つの前記吸引手段(29)とを接続していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の平均温度検出装置。
【請求項9】
前記切替手段(28)にて接続する前記管状部材(27)を切り替えた場合、所定の時間が経過した後に平均温度を検出することを特徴とする請求項8に記載の平均温度検出装置。
【請求項10】
車両の前後方向および左右方向に形成される複数の車室内の空調ゾーン(31〜36)に対して、それぞれ独立して温度制御する空調ユニット(1、2)と、
前記複数の空調ゾーン(31〜36)にそれぞれ配設され、前記請求項1ないし9のいずれか1つに記載の平均温度検出装置と、
前記平均温度検出装置の検出結果に応じて、前記複数の空調ゾーン(31〜36)の温度を制御する空調制御手段(20)とを有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項11】
前記平均温度検出装置の前記管状部材(27)として、車室内に敷設された吊り革の保持パイプを利用していることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記平均温度検出装置の前記管状部材(27)として、車室内に敷設された荷棚(26)の一部を利用していることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記荷棚(26)の通路側下方に前記吸気孔(271)を開設していることを特徴とする請求項12に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
車両の前後方向および左右方向に形成される複数の車室内の空調ゾーン(31〜36)に対して、それぞれ独立して温度制御する空調ユニット(1、2)と、
前記複数の空調ゾーン(31〜36)に対応する位置において、車室内に敷設された荷棚(26)と、
それぞれの空調ゾーン(31〜36)における前記荷棚(26)の表面温度を検出する表面温度検出手段(30)と、
いずれか一つの空調ゾーン(31)における前記荷棚(26)近傍の空気温度を検出する温度検出手段(21)と、
前記空調ユニット(1、2)の作動を制御する空調制御手段(20)とを備える車両用空調装置において、
前記空調制御手段(20)は、前記温度検出手段(21)が設けられかつ前記荷棚(26)近傍の空気温度が検出される空調ゾーン(31)の空気を、検出された空気温度に応じて制御し、
また、前記空調制御手段(20)は、前記温度検出手段(21)が設けられる空調ゾーン(31)において検出される空気温度と表面温度との相関関係を、前記温度検出手段(21)が設けられていない空調ゾーン(32〜36)に適用することにより、前記温度検出手段(21)が設けられていない空調ゾーン(32〜36)における空気の空気温度を推定し、
更に、前記空調制御手段(20)は、このように推定された空気温度に応じて、前記温度検出手段(21)が設けられていない空調ゾーン(32〜36)における空気温度を制御することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−35232(P2009−35232A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203487(P2007−203487)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】