説明

平形ガスケット

平形ガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエキゾーストフランジガスケットは、少なくとも1つの貫通孔(2)を備えた少なくとも1つの層(1)を有し、貫通孔(2)は、特定の断面形状を有する環状の線材として構成され、規定された材料厚さを備えた弾性変形可能な少なくとも1つの特定断面形状部材(3)を収容し、変形していない特定断面形状部材(3)の全高は、層(1)の厚さよりも大きく、層(1)の、特定断面形状部材(3)の領域と特定断面形状部材(3)の外側との少なくとも一方に、材料肉厚部(7,7’,8,8’)が少なくとも部分的に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平形ガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエキゾーストフランジガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の(金属の)層から構成可能なシリンダヘッドガスケットにおいて、必要に応じて異なる形態に構成された層を、適切な接合方法(例えば、クリンチ、溶接、リベット止め)で相互に結合することが知られている。追加的に装着あるいは導入された、リング、層、またはエンボスである、いわゆるストッパを用いて、平形ガスケットの周縁面領域に対する燃焼室周縁での必要な高低差が調整されている。
【0003】
特許文献1には、内燃機関のためのシール構造が記載されており、この内燃機関は、シリンダヘッドと、エンジンブロックと、エンジンブロックの孔に挿入されてこれに支持されたシリンダライナであって、中空の円筒形部分と、円筒形部分から半径方向外側に向かって延びる環状のシールカラーと、ピストンボアと、実質的にシリンダヘッドに向かって対向するカラーシール面とを有するシリンダライナと、カラーシール面とこれに対応するシリンダヘッドシール面とに係合して、ピストンボアからの燃焼ガスの流出を防ぐシール手段と、を備えている。2つのシール面の少なくとも一方は、円錐台形に構成され、半径方向内側の周囲領域から半径方向外側の周囲領域まで連続して延びており、半径方向内側の領域が、半径方向外側の領域と比べて、他方のシール面に対してより離れた位置にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0538628号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、平形ガスケットのための新たなシールの概念であって、シール部材として機能する特定断面形状部材(Profilkoerper)が使用されるシールの概念を提供することにある。
【0006】
さらに別の目的は、ねじ力によって通常引き起こされる力分布を、シールシステムの内側だけでなく、そこから離れた平形ガスケットの周辺(後背部(Hinterland))でも的確に調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、少なくとも1つの貫通孔を備えた少なくとも1つの層を有する平形ガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエキゾーストフランジガスケットであって、貫通孔が、特定の断面形状を有する環状の線材(ringfoermigen Profildraht)として構成され、規定された材料厚さを備えた弾性変形可能な少なくとも1つの特定断面形状部材を収容し、変形していない特定断面形状部材の全高が、層の厚さよりも大きく、層の、特定断面形状部材の領域と特定断面形状部材の外側との少なくとも一方に、材料肉厚部が少なくとも部分的に設けられている、平形ガスケットによって達成される。
【0008】
本発明の対象の有利な発展例は、対応する従属請求項に記載されている。
【0009】
材料肉厚部は、実施態様に応じて、エンボス加工や、コーティングの塗布によって生じさせることができる。複合型の材料肉厚部(エンボス+コーティング)も考えられ、ストッパカラープレート(Stopperbrille)の装着も同様に考えられる。
【0010】
材料肉厚部がコーティングによって形成されている場合、このコーティングが、ポリマー、特に熱可塑性材料または熱硬化性材料からなっていると有利である。
【0011】
コーティングが粒子および繊維の少なくとも一方を含んでいると有利な場合がある。その場合、金属粒子と鉱物粒子とをそれぞれ単独で構成したり、それらを組み合わせて構成したりすることができ、粒子および繊維の少なくとも一方は、規定された厚さを有している。
【0012】
本発明のさらに別の思想によれば、コーティングは、スクリーン印刷によって、層の相応の領域に塗布されていてよい。
【0013】
材料肉厚部は、層の貫通孔を取り囲む領域に沿った、規定された位置に装着されていてよく、あるいは、設定可能な(vorgebbar)壁厚の閉じた領域が形成されるように装着されていてよい。
【0014】
特定断面形状部材は、半径方向に見て、材料厚さの異なる領域を有するように構成されているのが特別に有利である。それは、例えばバナナの断面形状、すなわち、最大の材料厚さが特定断面形状部材の半径方向長さのほぼ中央領域に与えられ、この材料厚さが端部領域に向かって減少する形状を備えている。このような手段によって、中央の中心領域と外側の弾性変形可能な領域とが形成される。
【0015】
特定断面形状部材は、層と少なくとも部分的に結合されていてよく、あるいは、貫通孔の内側を半径方向に移動可能に位置決めされていてよい。
【0016】
材料肉厚部は、さらに特定断面形状部材の外側にも設けられているのが特別に有利である。そこは、平形ガスケットのいわゆる後背部と呼ばれており、平形ガスケットの周縁領域にまで延びている。それぞれの材料肉厚部は、部分的に、あるいはより広範囲の表面領域にわたって、後背部に設けられていてよく、必要に応じて、ねじ貫通孔を少なくとも部分的に取り囲んでいてよい。
【0017】
このような手段によって、平形ガスケット全体の内側で最適な力分布を実現することができ、それにより、シール性能に良い影響がもたらされる。
【0018】
力分布を制御しながら調整するという目的、特に、特定断面形状部材と、それに隣接する層の領域との間を分割するという目的は、例えば、燃焼室シールと中間シール(Mediendichtung)との間の高低差によって実現することができる。中間シールと燃焼室シールとが等しい高さを有していれば(追加の前提としては、使用するシールが等しい強度と剛性を有していることである)、等しい負荷分布が生じると考えることができる。中間シールと燃焼室シールとの高さが異なっていると、その割合に応じてより高い負荷が導入される。しかしながら、それによって、例えば燃焼室シールがより高い割合のねじ力を受けとめることができ、そのねじ力が燃焼室シールの突出部分と協働することになる。このことは、燃焼室シールが中間シールよりも若干高くなっている必要があることを意味している。
【0019】
本発明による平面的または部分的な材料肉厚部によって、燃焼室シールと中間シールとの間の高低差を正確に調整することができる。このようにして、(例えば異なる材料と異なる粒子サイズのコーティングによって)例えば後背部を的確に隆起あるいは降下させるために、必要な高低差だけでなく、表面形状的な(topographische)高低差をも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】材料肉厚部として片面にエンボス加工された層を備えたシリンダヘッドガスケットを暗示的に示す図である。
【図2】材料肉厚部として両面にエンボス加工された層を備えたシリンダヘッドガスケットを暗示的に示す図である。
【図3】材料肉厚部として層がポリマーコーティングされたシリンダヘッドガスケットを暗示的に示す図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】選択された領域に材料肉厚部を備え、平形ガスケットとして構成されたシリンダヘッドガスケットを示す平面図である。
【図6】図5のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の対象を、図に示し、以下に記載する。
【0022】
図1は、暗示的にのみ図示された、少なくとも1つの貫通孔2を含む層1を少なくとも有するシリンダヘッドガスケットを示している。ここでは金属層として構成された層1は、特定の断面形状を有する線材として構成され、半径方向に見て、ほぼバナナ形に構成された環状の特定断面形状部材3と協働している。特定断面形状部材3の中央領域は、最大の材料厚さの領域を形成し、それが(曲げ領域を形成する)端部4,5に向かって減少している。本例では、特定断面形状部材3の半径方向外側の端部4は、層1の対向する領域6と、(例えばかしめによって)嵌合で(formschluessig)結合されている。変形していない特定断面形状部材3の全高は、層1の厚さよりも大きい。ねじ力によって通常引き起こされる、規定された力分布をシリンダヘッドガスケットの内側で生じさせるために、層1の部分領域aには、材料肉厚部が設けられている。図1において、材料肉厚部は、片面をエンボス加工領域7とすることで形成されている。
【0023】
図1と同様に見えるが、図2では、層1の領域に、2つのエンボス加工領域7,7’が設けられている。エンボス加工領域7,7’を適宜構成することによって、高低差が非常に正確に調整可能になるという利点がもたらされる。このようにして、必要な高低差だけでなく、表面形状的な高低差をも実現することができる。このことは、高低差の調整がエンボス7,7’の高さ(または低さ)によって行われることを意味している。層1は、さまざまな種類にエンボス加工することができる。半球状のエンボス(くぼみ)や長方形のエンボスが考えられ、あるいは環状のエンボス(ビード)も考えられる。
【0024】
図3は、図1および図2に対する変形例を示しており、この場合も領域aは材料肉厚部を備えており、本実施形態では、この材料肉厚部は、規定された材料厚さで両面をコーティング8,8’することによって形成されている。コーティング8,8’は、ポリマー、特に熱可塑性材料または熱硬化性材料からなる。調整すべき高低差に正確に対応する比較的狭い粒度分布あるいは厚さ許容値を備えた、金属、セラミック、または鉱物などの粒子または繊維を添加することで、さまざまな高さを非常に正確に調整することが可能となる。ポリマーが温度作用によって劣化した場合であっても、スペーサ機能(Distanzfunktion)を担う粒子が依然として高低差を保証することは確実である。
【0025】
ポリマーは、粒子サイズに依存する特定の割合の、粒子または繊維を含んでいればよい(粒子が大きいほど、その割合も高くすればよい)。
【0026】
図1および図2と同様に、コーティング8,8’は、片面だけでなく両面に設けることもできる。
【0027】
図4は、図3の部分拡大図を示している。層1と、両面に塗布されたコーティング8,8’とを見ることができる。それぞれのコーティング8,8’は、スクリーン印刷法によって生成することができる。粒子または繊維9,9’が調整すべき高低差に対応していることによって、すべての粒子または繊維9,9’が1つの平面内にあることが保証されるだけでよい。
【0028】
図示してはいないが、請求の範囲に含まれることとして、各層は、片面または両面にめっきされた形態(例えばアルミニウム)を備えていてよく、材料肉厚部は、例えばエンボス加工によって、少なくとも1つのめっきされた領域(めっき部分のみ)に生成されていてよい。
【0029】
層またはめっき層のいずれかに材料肉厚部を設けることで、高さと幅のいずれに関しても、的確な表面形状(Topographien)を生じさせることができる。
【0030】
図5は、平形ガスケットとして構成されたシリンダヘッドガスケットを平面図として示している。図1から図4と同じ構成部品には、同じ参照番号が付されている。本例では、シリンダヘッドガスケットは、単一の金属層1によって形成され、燃焼室貫通孔として機能する複数の貫通孔2を有している。層1に固定接続された特定断面形状部材3を見ることができる。図1から図4について述べられたのと同じ条件が当てはまる。層1の斜線領域はすべて、材料肉厚部10で構成されている。各特定断面形状部材3の周囲の近接領域だけでなく、層1の周縁領域11まで延びる後背部にも、的確な方法で材料肉厚部10が設けられていることがわかる。
【0031】
図6は、図5のA−A線に沿った断面図を示している。バナナ形に構成された特定断面形状部材3と、本例では両面をエンボス加工することによって形成され、その位置に材料肉厚部10が設けられる領域bとを見ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの貫通孔(2)を備えた少なくとも1つの層(1)を有する平形ガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエキゾーストフランジガスケットであって、前記貫通孔(2)が、特定の断面形状を有する環状の線材として構成され、規定された材料厚さを備えた弾性変形可能な少なくとも1つの特定断面形状部材(3)を収容し、変形していない前記特定断面形状部材(3)の全高が、前記層(1)の厚さよりも大きく、前記層(1)の、前記特定断面形状部材(3)の領域と該特定断面形状部材(3)の外側との少なくとも一方に、材料肉厚部(7,7’,8,8’)が少なくとも部分的に設けられている、平形ガスケット。
【請求項2】
前記材料肉厚部(7,7’)が、前記層(1)の片面または両面をエンボス加工することで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の平形ガスケット。
【請求項3】
前記材料肉厚部(8,8’)が、前記層(1)をコーティングすることで形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の平形ガスケット。
【請求項4】
前記各材料肉厚部(7,7’,8,8’)が、前記特定断面形状部材(3)を取り囲んでいることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項5】
前記各材料肉厚部(10)が、さらに少なくとも前記層(1)の周縁領域(11)、特にねじ貫通孔の領域に設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項6】
前記コーティング(8,8’)がポリマーからなることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項7】
前記コーティング(8,8’)に、粒子(9,9’)または繊維が含まれていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項8】
前記コーティング(8,8’)に、設定可能な厚さの粒子(9,9’)または繊維であって、金属とセラミックと鉱物との少なくとも1つの粒子(9,9’)または繊維が含まれていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項9】
前記コーティング(8,8’)が、スクリーン印刷によって、前記層(1)の相応の領域(a)に塗布されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項10】
前記材料肉厚部が、ストッパカラープレートによって生成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項11】
前記材料肉厚部が、規定された表面形状を調整するために利用可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項12】
前記材料肉厚部(7,7’,8,8’)が、半径方向の規定された領域(a)で前記貫通孔(2)を実質的に全面的に取り囲んでいることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項13】
前記特定断面形状部材(3)が、半径方向に見て、材料厚さの異なる領域を有するように構成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項14】
前記特定断面形状部材(3)は、半径方向に見て、外形がバナナ状であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項15】
前記特定断面形状部材(3)が、開リングまたは閉リングとして構成されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項16】
前記特定断面形状部材(3)が、前記層(1)と少なくとも部分的に、特に嵌合で結合されていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項17】
前記特定断面形状部材(3)が、前記貫通孔(2)の内側を半径方向に移動可能に設けられていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項18】
前記層(1)が、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるめっきを片面または両面に備えた金属から形成されていることを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項に記載の平形ガスケット。
【請求項19】
前記エンボス(1)が、前記めっきされた領域の少なくとも1つに設けられていることを特徴とする、請求項1から18のいずれか1項に記載の平形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3−4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−525227(P2011−525227A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513868(P2011−513868)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000842
【国際公開番号】WO2009/152815
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(595157503)フェデラル−モーグル シーリング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Sealing Systems GmbH
【Fターム(参考)】