説明

平版印刷材料

【課題】高い耐刷性と耐印刷汚れ性を有し、実質的にホルムアルデヒドを含有しない銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷材料を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料において、該平版印刷材料の少なくとも1層がカルボキシル基を有するポリマーラテックス、尿素及びビニルスルホン系架橋剤を含有する事を特徴とする平版印刷材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版は、油脂性のインキを受理する親油性の画線部分と、インキを受理しない撥油性の非画線部分とからなり、一般に該非画線部は水を受け付ける親水性部分から構成されている。通常の平版印刷では、水とインキの両方を版面に供給し、画線部は着色性のインキを、非画線部は水を選択的に受け入れ、該画線上のインキを、例えば紙等の被印刷体に転写させる事によって印刷がなされている。
【0003】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版 、特にハロゲン化銀乳剤層の上に物理現像核層を有する平版印刷版は、例えば、米国特許第3,728,114号明細書、米国特許第4,134,769号明細書、米国特許第4,160,670号明細書、米国特許第4,336,321号明細書、米国特許第4,501,811号明細書、米国特許第4,510,228号明細書、米国特許第4,621,041号明細書等に記載されており、露光されたハロゲン化銀結晶は、DTR現像により化学現像を生起し黒色の銀となり親水性の非画線部を形成し、一方、未露光のハロゲン化銀結晶は現像液中の銀塩錯化剤により銀塩錯体となって表面の物理現像核層まで拡散し、核の存在により物理現像を生起してインキ受容性の物理現像銀を主体とする画線部を形成する。従って、良い印刷物を得るためには、画線部と非画線部の親油性及び親水性の差が十分に大きくて、水及びインキを版面に供給した時に、画線部は十分量のインキを受け付け、非画線部は全くインキを受け付けない事が必要である。
【0004】
DTR法を用いた平版印刷版において非画線部は親水性バインダーによって形成される。かかる親水性バインダーとしては、主にゼラチンが好適に用いられるが、特に高い耐印刷汚れ性を得るためにはゼラチンの親水性では不十分である。そこで、例えば、特開昭53−21602号公報、特開昭54−103104号公報、特開平8−211614号公報(特許文献1)には物理現像核を含む層中に親水性のポリマーを含有させる事が提案されている。
【0005】
一方、DTR法を用いた平版印刷版において特に高い耐刷性を得るためには紙、フィルム、アルミ等の基材部分とインキ受容性の物理現像銀とが強固に結着されている必要がある。このような理由から基材と物理現像銀との間に存在する層には、主にゼラチンが好適に用いられ、且つゼラチンを含有する層は種々の架橋剤により架橋される。その中でもホルムアルデヒドが最も架橋効率が良く繁用される。しかしながら、ホルムアルデヒドは周知のようにアレルギー誘起性があり、又発ガン性をも含む毒性が知られるようになってきた。これらの代替の架橋剤は例えば特開2004−334167号公報(特許文献2)、特開2005−202341号公報に提案されている。又、特開2007−256921号公報(特許文献3)では特定の官能基を持つ水溶性ポリマーとビニルスルホニル基を持つ化合物を使用する方法が提案されている。しかしながら、昨今の印刷品質に対する高い要求から、耐刷、耐印刷汚れ性において更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−211614号公報
【特許文献2】特開2004−334167号公報
【特許文献3】特開2007−256921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高い耐刷性と耐印刷汚れ性を有し、実質的にホルムアルデヒドを含有しない銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷材料を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料において、該平版印刷材料の少なくとも1層がカルボキシル基を有するポリマーラテックス、尿素及びビニルスルホン系架橋剤を含有する事を特徴とする平版印刷材料によって達成された。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い耐刷性と耐印刷汚れ性を有し、実質的にホルムアルデヒドを含有しない銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷材料を提供する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の平版印刷材料では支持体上に塗設する層の少なくとも1層が、カルボキシル基を有するポリマーラテックス、尿素及びビニルスルホン系架橋剤を含有する。本発明においてビニルスルホン系架橋剤とは分子中に少なくとも2個のビニルスルホニル基を有する化合物のことを言い、例えば下記一般式Iもしくは下記一般式IIで示される化合物が挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、L、Lはそれぞれ存在してもしなくても良い2価の連結基を示す。L、Lが存在する場合、好ましくは炭素数1〜5の置換されていても良いアルキレン基、アリーレン基、カルバモイル基、スルファモイル基、酸素、硫黄、イミノ基等を示し、これらは組み合わさっていても良い。Rは水素原子、炭素数1〜5の置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いベンゼン、ナフタレン等のアリール基を示し、中でも水素原子が好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
式中、Lは少なくとも一個の水酸基を有するm価の基であり、mは2〜4である。一般式IIにおいて、Lとしては、2〜4価の炭素数1〜10の非環状炭化水素基、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を含有する5又は6員の複素環基、5又は6員での環状炭化水素基、又は炭素数7〜10のシクロアルキレン基が挙げられる。非環状炭化水素基としては、好ましくは1〜8の炭素数を有するアルキレン基である。Lで表されるそれぞれの基は、置換基を有していてもよく、又は、ヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子)、カルボニル基又はカルバミド基を介し相互に結合してもよい。Lは例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4を有する1種以上のアルキコキシ基、また塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アセトキシ基等で置換されていてもよい。
【0015】
上記一般式Iの化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化3】

【0017】
上記一般式IIの化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化4】

【0019】
これら本発明で用いる架橋剤は、支持体上に塗設される層の何れか1層もしくは2層以上もしくは全ての層に添加する事が可能である。これら架橋剤の添加量としては、支持体上の片側に塗設される塗層が含有するバインダーに対して0.005〜20質量%である事が好ましく、更に好ましくは1〜15質量%である事が好ましい。層の中では特にハロゲン化銀乳剤層及び下塗り層に含有させる事が好ましい。添加方法は各層の塗布液を製造時に添加したり、塗布時にインラインで添加する事も出来る。
【0020】
本発明には上記のようなビニルスルホニル基を持つ架橋剤と尿素を用いるが、他の架橋剤を併用する事が出来る。他の架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、エチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に2個以上有する化合物類、高分子架橋剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の1種もしくは二種以上を用いる事が出来る。
【0021】
本発明ではビニルスルホニル基を持つ架橋剤と尿素を使用する。尿素の添加量としては、ビニルスルホニル基を持つ架橋剤に対して好ましくは10〜500質量%、より好ましくは50〜300質量%含有させる。
【0022】
本発明に用いるビニルスルホニル基を有する架橋剤と尿素は、別々の層に含む事も出来るが、同一の層に含まれる事が好ましく、更に本発明のカルボキシル基を有するポリマーラテックス及びゼラチン等のバインダーを含む層に含まれる事がより好ましい。
【0023】
本発明に用いるカルボキシル基を有するポリマーラテックスとは、水中にポリマー微粒子が安定に分散したエマルションである。本発明で用いるカルボキシル基を有するポリマーラテックスとしては例えば、DIC(株)製ラックスターシリーズ(カルボキシル変性ブタジエン系樹脂ラテックス)、日本ゼオン(株)製NipolLX430、NipolLX433C、NipolLX422及びNipolLX2570XS(カルボキシル化SBラテックス)、同社製Nipol1571H(カルボキシル変性アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス)、日本エイアンドエル(株)製ナルスターSBR系シリーズ(カルボキシ変性SB、カルボキシ変性SNB、カルボキシ変性SMB、カルボキシ変性SMNB)、同社製ナルスターMBRシリーズ(カルボキシ変性MB)、JSR(株)製0695、0696、0533、0545、0548、0568、0569、0573、0597C(カルボキシ変性SBラテックス)等が挙げられる。
【0024】
本発明に使用するカルボキシル基を有するポリマーラテックスの添加量は、好ましくは単一層中に含まれるバインダーの総質量の1〜100質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0025】
本発明では上記のカルボキシル基を有するポリマーラテックスと併せて他のバインダーを使用する事が出来る。他のバインダーとしては、例えば、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子化合物及びカルボキシル基を有さない他のポリマーラテックスが挙げられる。
【0026】
本発明の平版印刷材料の好ましい構成は、支持体上にハレーション防止、マット化を兼ねた下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層をこの順に有する。又、これらの層が設けられる支持体の面とは反対側の面に、マット化剤を含む裏塗り層を設ける事が好ましい。
【0027】
本発明で使用するカルボキシル基を有するポリマーラテックスが含有される層としては下塗り層が最も好ましく、また下塗り層は前記カルボキシル基を有するポリマーラテックスと共にゼラチンを併用する事が特に好ましい。また下塗り層はハレーション防止層を兼ねるために、カーボンブラックあるいは着色顔料を含有する事が好ましい。下塗り層には、更に平均粒径が0.1〜10μmの固形粉末(例えば、シリカ粒子)を含有するのが好ましく、また現像主薬を含有してもよい。下塗り層の総バインダー質量は0.5〜8g/mの範囲である事が好ましく、より好ましくは1〜5g/mである。
【0028】
ハロゲン化銀乳剤層は当分野で公知のものを全て用いる事が出来るが、好ましくは高感度ハロゲン化銀感光材料、高温迅速処理用ハロゲン化銀感光材料に用いられる乳剤層等が挙げられる。ハロゲン化銀乳剤層は、バインダーとしてゼラチンを0.5〜1.5g/m含有するのが好ましい。
【0029】
ハロゲン化銀乳剤層は、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及びこれらに沃化銀を含むものからなる。ハロゲン化銀結晶はロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいても良く、またハロゲン化銀の結晶形態に特に制限はなく、立方体ないし14面体粒子、更にはコアシェル型、平板状粒子でも良い。ハロゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶のどちらであっても良く、その平均粒径は0.2〜0.8μmの範囲である事が好ましい。好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩又は両方を含む、塩化銀が70モル%以上の単分散もしくは多分散結晶が使用出来る。
【0030】
ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時又は塗布される時に種々の方法で増感する事が出来る。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、又は金化合物、例えばロダン金、塩化金によって、又はこれらの両者の併用等当該技術分野において良く知られた方法により化学的に増感する事が好ましい。ハロゲン化銀乳剤は、又、例えばシアニン、メロシアニン等の色素によって増感され得る。特に、青色半導体レーザー、赤色LED、ヘリウム−ネオンレーザー等の各種波長のレーザーに高感度で対応出来るように、分光増感させるのが好ましい。
【0031】
ハロゲン化銀乳剤層の上部の物理現像核層は物理現像核を含有する。物理現像核としては銀、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物、混晶であっても良い。物理現像核層は、親水性バインダーとして、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含む事が出来、その含有量は0.5g/m以下である事が好ましい。更に物理現像核層には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬を含んでも良い。また、物理現像核層には本発明で使用するビニルスルホニル基を有する架橋剤と尿素を含む事が出来る。
【0032】
本発明に用いられる支持体としては、セルロースナイトレートフィルム、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチック樹脂フィルム、あるいは紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等が挙げられる。これらの支持体の中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく用いられる。これらの支持体の表面を塗布層との接着を良くするために表面処理する事も可能である。これらの支持体の厚みとしては70〜300μm程度が好ましく用いられる。又、各層と支持体との接着性を高めるために特開昭60−213942号公報に記載されているようなポリマーを下引き層として塗布しておく事が好ましい。
【0033】
本発明の平版印刷材料の製版に用いられる現像処理液には、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム等、保恒剤としての亜硫酸塩、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、2−メルカプト安息香酸、アミン等、粘稠剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、更に現像剤としてハイドロキノン類、カテコール、1−フェニル−3−ピラゾリドン等、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、オニウム化合物等を含む事が出来る。更に現像処理液には、物理現像銀のインキ乗りを良くする化合物等も使用する事が出来る。
【0034】
本発明において、銀錯塩拡散転写法を実施するに当たっては、ハロゲン化銀乳剤層及び/又は物理現像核層又はそれに隣接する他の水透過性層中に現像剤を混入する事も行われている。従って、このような材料においては、現像段階で使用される処理液は、現像剤を含まない、いわゆる「アルカリ性活性化液」を使用し得る。
【0035】
本発明の平版印刷材料の現像後の物理現像銀は、任意の公知の表面処理剤でインキ受容性に変換ないしは受容性を改善させる事も出来る。印刷方法、あるいは使用する不感脂化液、給湿液等は普通に良く知られた方法により施す事も出来る。
【0036】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例】
【0037】
<裏塗り層>
厚さ175μmの両面下引き済みポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に平均粒子サイズ3.5μm(富士シリシア化学(株)製SY435)のシリカ粒子を1.5g/m、ゼラチンを3.0g/m及びVS−3を0.1g/m含有する裏塗り層を塗布した。
【0038】
<下塗り層>
上記裏塗り層の反対側の面にコロナ放電加工後、下塗り層を塗布した。下塗り層はカーボンブラック及び上記シリカ粒子を各々0.3g/m、ゼラチンを3.5g/m含有する下塗り層を塗布した。なお実施例のこの下塗り層中に含むポリマーラテックスは表1の市販品を固形分で2.0g/m含有し、含まれるビニルスルホニル基を有する架橋剤VS−3及び尿素の添加量は表1に記載した。
【0039】
<ハロゲン化銀乳剤層>
上記下塗り層の上に、1−フェニル−3−ピラゾリドン0.1g/mを含有する赤色増感色素にて増感された高感度塩化銀乳剤を硝酸銀として1.2g/m、ゼラチンを0.8g/m含有するハロゲン化銀乳剤層を塗布した。かかるハロゲン化銀乳剤層に含まれるビニルスルホニル基を有する架橋剤VS−3及び尿素の添加量は表1に記載した。
【0040】
<物理現像核層>
上記各層を塗布、乾燥後、50℃で2日間加温し、物理現像核層として特開平8−211614号公報の実施例1に準じて硫化パラジウムゾルを調整し、調整した硫化パラジウムゾルに対してハイドロキノンを添加し、硫化パラジウムが1mg/m、ハイドロキノンが0.5g/mとなるよう、ハロゲン化銀乳剤層上に物理現像核層を塗布した。なお物理現像核層に含まれるビニルスルホニル基を有する架橋剤VS−3及び尿素の添加量は表1に記載した。
【0041】
このようにして得られた8種類の平版印刷材料をそれぞれ赤色LDを光源とするプレートセッターFT−R3050(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて像露光を行い、下記の銀錯塩拡散転写現像液により30℃で1分間現像処理を行った。
【0042】
<転写現像液>
水 700ml
水酸化カリウム 20g
無水亜硫酸ナトリウム 50g
2−メルカプト安息香酸 1.5g
2−(メチルアミノ)エタノール 15g
水を加えて1リットルとする。
現像処理後、平版印刷材料を2本の絞りローラー間に通し、余分の現像液を除去し、直ちに下記組成を有する中和液で25℃20秒間処理し、絞りローラーで余分の液を除去し室温で乾燥した。
【0043】
<中和液>
水 600ml
クエン酸 10g
クエン酸ナトリウム 35g
コロイダルシリカ(20質量%液) 5ml
エチレングリコール 5ml
水を加えて1リットルとする。
【0044】
以上の操作により製版処理を行った平版印刷材料の印刷試験を実施した。印刷汚れ性の評価はオフセット印刷機リョービ3200CD(リョービ(株)製オフセット印刷機)に印刷版を装着し、下記の不感脂化液を版面にくまなく与え、インキとしてDIC(株)製Fグロス紫68Sを使用し、給湿液としてEu−3,0.5%液(PS版用湿し水/エッチ液 富士フイルム(株)製)を使用して10,000枚印刷を実施した。
【0045】
<不感脂化液>
水 600ml
イソプロピルアルコール 400ml
エチレングリコール 50g
3−メルカプト−4−アセトアミド−5−n−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール
1g
【0046】
印刷物を目視により、印刷汚れが発生した印刷枚数を下記基準にて評価した。
◎ :8,000枚以上〜10,000枚で印刷汚れ発生
○ :6,000枚以上〜8,000枚未満で印刷汚れ発生
△ :4,000枚以上〜6,000枚未満で印刷汚れ発生
△×:2,000枚以上〜4,000枚未満で印刷汚れ発生
× :2,000枚未満で印刷汚れ発生
【0047】
耐刷性の評価は上記の印刷機と不感脂化液とインキとしてDIC(株)製Fグロス墨85Hを用い、更に下記の給湿液を使用し、銀画像部の欠落による画線飛びが生じて正常な印刷物が得られなくなるまで印刷を行った。
【0048】
<給湿液>
リン酸 10g
硝酸ニッケル 5g
亜硝酸ナトリウム 5g
エチレングリコール 100g
コロイダルシリカ(20質量%液) 28g
水を加えて2リットルとする。
【0049】
上記の条件で正常な印刷物が得られなくなるまで印刷した印刷枚数より、耐刷性を次の評価基準で評価した。
◎ :16,000枚以上〜20,000枚で画像飛び発生
○ :12,000枚以上〜16,000枚未満で画像飛び発生
△ :8,000枚以上〜12,000枚未満で画像飛び発生
△×:4,000枚以上〜8,000枚未満で画像飛び発生
× :4,000枚未満で画像飛び発生
印刷結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に記載の平版印刷材料3の作製において、下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層が含有するビニルスルホニル基を有する架橋剤VS−3に代えて、VS−2、VS−8及びVS−12を用いて平版印刷材料9〜11を作製した。この平版印刷材料9〜11を平版印刷材料3と同様にして、耐刷性及び耐印刷汚れ性を評価した。この結果、平版印刷材料9〜11は平版印刷材料3とほぼ同等の結果が得られた。
【0052】
以上の結果から本発明によって良好な耐刷性と耐印刷汚れ性を有し、実質的にホルムアルデヒドを含有しない平版印刷材料が得られる事が分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料において、該平版印刷材料の少なくとも1層がカルボキシル基を有するポリマーラテックス、尿素及びビニルスルホン系架橋剤を含有する事を特徴とする平版印刷材料。