説明

平版印刷版の処理方法および自動現像装置

【課題】画像露光において高精細スクリーンを用いる光重合性感光層を有する平版印刷版を長期間に亙って処理むら等の画像欠陥を生ずることなく現像処理できる自動現像装置を提供する。
【解決手段】支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザーにより走査露光した後、現像処理部10へ搬送して現像する平版印刷版の処理方法及び自動現像装置であって、現像処理を行わない間は、擦り部材である現像ブラシローラ141、142を現像処理する方向とは逆方向に回転させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザーにより走査露光した後、現像処理部に搬送して現像する平版印刷版の処理方法及び自動現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるレーザーの発展は目覚ましく、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになった。これらのレーザーは、コンピュータ等のデジタルデータにより直接印刷版を製版する際の記録光源として非常に有用である。
【0003】
記録光源としてはArイオンレーザー(488nm)やFD−YAGレーザー(532nm)が使用され、これらの光源に適合した光重合性感光層を有する感光性平版印刷版が開発され、実用に供されている。また最近、InGaN系半導体レーザー(バイオレットレーザー、350nm〜450nm)が開発され、明室化、露光機の低コスト化、高生産性が期待されるため、この光源に感光性を有する高感度な光重合性感光層を有する平版印刷版の開発が急速化している。
【0004】
更に、製版・印刷業界では、データから直接製版へ網点が出力される上記技術の進展とスクリーニング処理ソフトの組み合わせにより、高精細化を伴った各種のスクリーニング印刷が比較的容易に実用化できる状況になり、市場の高級印刷指向と相まって、高精細スクリーンが広く用いられるようになってきた。高精細スクリーンとして、従来のAMスクリーンでは250線を超えるスクリーニング方式とFM型及びAM/FMハイブリッド型がある(非特許文献1参照)。
【0005】
また、平版印刷版を形成するには、レーザー露光によって印刷版に記録を行った後に現像処理を行う。一般に、印刷版の現像処理には自動現像装置が用いられている。自動現像装置としては、加熱、前水洗、現像、水洗、フィニッシングからなる工程を含むものが広く用いられている(特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】日本印刷学会誌、第40巻第2号(2003)
【特許文献1】特開2003−107728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、高精細スクリーンを用いてレーザー露光によって画像記録された印刷版を現像処理した場合、現像ブラシに起因する処理むらが発生し、画像欠陥を生じてしまうことがあった。
【0008】
本発明は、以上のような背景に基づいてなされたもので、画像露光において高精細スクリーンを用いる光重合性感光層を有する平版印刷版を長期間にわたって処理ムラ等の画像欠陥を生ずることなく現像処理できる、平版印刷版の処理方法および自動現像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、次の事項を見出だした。画像露光において高精細スクリーンを用いる光重合性感光層を有する平版印刷版の網点部分は、従来使用されていた175線程度のAMスクリーンの網点部分に比べ、網点個数が多く又小さい。そのため単位面積当たりの網点の周囲長(画像部と非画像部の境界長さ)が長いためフリンジと称される部分が多い。そのフリンジ部分は、現像される部分と残る部分の境界であるため、現像液に溶解、分散されない不溶解物が若干含まれている。そのために従来の網点サイズのAMスクリーンでは問題にならなかった境界部分の不溶解部分が、高精細スクリーンでは処理むらになりやすく、画像欠陥を生じることになることが分った。
【0010】
また、図14に示すように、小サイズ(小版)の平版印刷版を多数枚現像処理した後、それより大きいサイズの平版印刷版を処理した場合、小サイズの平版印刷版を処理した部分に相当する場所がその回りより網点濃度が高くなり処理むらが生じることが分った。例えば、幅方向650mm、縦方向550mmサイズの平版印刷版を連続処理した後、幅方向1030mm、縦方向800mmの平版印刷版を処理した場合には、最初に処理した幅方向650mmに相当する場所に処理むらが生じる。
【0011】
また、本発明者は、同じサイズの印刷版を多数枚処理し続けると、図15に示すように、その部分のブラシの毛材に一方方向の癖(いわゆる、寝癖)がつき、擦り強度が若干弱めるため処理むらが発生することを突き止めた。
【0012】
そして本発明者は、更に鋭意検討を重ねた結果、現像処理を行わない間は、擦り部材を現像処理する方向と反対方向に回転させておくと、処理むらが少なく長期間にわたって画像欠陥のない安定した処理ができることを見出だした。
【0013】
すなわち、本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1)支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザー露光した後、前記感光性平版印刷版を現像処理する平版印刷版の処理方法であって、露光後の前記感光性平版印刷版の露光面を、擦り部材を押し当てて回転させることによって、未露光部の前記光重合性感光層を擦り除去する際に、前記感光性平版印刷版の現像処理を終了してから次の感光性平版印刷版を現像開始するまでの現像休止期間内に、前記擦り部材を現像処理期間中に回転する方向とは逆方向に回転させる逆回転処理を行うことを特徴とする平版印刷版の処理方法。
(2)前記露光に際し、AMスクリーンとしては250線以上、FMスクリーンとしては網点を構成する最小画素のサイズが50μm以下に相当する高精細スクリーンを用いることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の処理方法。
(3)前記感光性平版印刷版の現像休止期間は、前記逆回転処理を常時連続して行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版の処理方法。
(4)前記感光性平版印刷版の現像休止期間は、直前に現像処理した感光性平版印刷版の現像処理期間と略同じ期間、前記逆回転処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版の処理方法。
(5)前記逆回転処理を、所定の一定期間毎に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版の処理方法。
(6)支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザー露光した後、前記感光性平版印刷版を現像処理する平版印刷版の自動現像装置であって、
露光後の前記感光性平版印刷版の版面に押し当てながら回転して前記版面の未露光部の前記光重合性感光層を擦り取る擦り部材と、前記擦り部材を、前記感光性平版印刷版の現像処理期間に回転させ、前記感光性平版印刷版の現像処理を終了してから次の感光性平版印刷版を現像開始するまでの現像休止期間内に、前記現像処理期間中に回転する方向とは逆方向に回転させる擦り部材回転制御手段と、を備えたことを特徴とする平版印刷版の自動現像装置。
(7)前記擦り部材が、ブラシ材であることを特徴とする請求項6記載の平版印刷版の自動現像装置。
(8)前記擦り部材が、複数本並設されて、少なくとも一つを逆転させることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の平版印刷版の自動現像装置。
【0014】
上記の高精細スクリーンとしては、AM高精細スクリーンとFMスクリーン等あるが、AM高精細スクリーンとしては、250線以上が相当し、富士写真フイルム(株)社製Co-Reスクリーンが好適に使用できる。
【0015】
FMスクリーンとしては、富士写真フイルム社製FMスクリーンTAFFETA(20)、CREO社製のStaccato(10、20、25、35、36)、大日本スクリーン社製のRandot、RandotX(10、15、20)、Heidelbelg社製Stain Screening、Agfa社製のCristal Rasterを使用することができる。
ハイブリッドスクリーンとしては、大日本スクリーン社製Fairdot、Agfa社製Sublimaが知られている。
【0016】
上記の250線以上のAMスクリーン、前述したFMスクリーン、ハイブリッドスクリーンにおいては、網点を構成する最小画素のサイズが50μm以下のものでは、画像ムラが生じやすく、本発明が有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザーにより走査露光した後、現像処理部に搬送して現像する平版印刷版の処理方法及び処理装置であって、感光性平版印刷版を現像処理していない間は、擦り部材を現像処理する方向と反対方向に回転させておくことにより、部分的な処理ムラの発生を防止できる。処理ムラとは、小サイズ(小版)の平版印刷版を多数枚現像処理した後に、それより大きいサイズの平版印刷版を処理した場合に、処理版サイズが小さい版のエッジで擦られたブラシ部分の跡がそれより大きい版を処理した時に筋状のむら(いわゆる、小版あと)になって発生するもので、小サイズの平版印刷版を処理した部分に相当する場所がその回りより網点濃度が高くなるものである。このような処理むらの発生を防止することができ、ブラシの寝癖も無くなり寿命も伸びるので、長期間に亙って画像欠陥のない安定した処理ができる。
特に、感光性平版印刷版として、AMスクリーンとしては250線以上、FMスクリーンとしては網点を構成する最小画素のサイズが50μm以下に相当する高精細スクリーンを用いた場合に顕著な効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に使用される自動現像装置としては、加熱、前水洗、現像、水洗、フィニッシング工程が具備されていれば如何なるものも使用できる。以下に図面を参照しながら本発明にかかる平版印刷版の処理方法及び自動現像装置の形態を説明する。
【0019】
図1及び図2には、本実施形態に係る自動現像装置の基本構成を示している。自動現像装置1は、図1に示す前処理部200と、図2に示す現像処理部10とで構成されている。
【0020】
前処理部200を説明する。
前処理部200では、平版印刷版(以下、印刷版ともいう。)12に対し、現像処理に先立って前加熱処理及び前水洗処理を施す。なお、前処理装置200によって前処理された印刷版12は、現像処理部10によって現像処理されるが、この現像処理部10は、印刷版12に対する現像処理が可能な任意の構成を用いることができる。また、本実施の形態に適用した前処理部200は、現像処理部10と別に単独で使用されるものであってもよく、この現像処理部10に連結して使用してもよい。
また、前処理部を無くして現像部だけで処理してもよい。
【0021】
前処理装置200には、機枠202内に、前加熱部204が印刷版12の搬送方向上流側に設けられ、前水洗工程としての前水洗部206が下流側に設けられている。
【0022】
前加熱部204には、加熱室208内に複数本(図1においては3本とした。)の串型ローラ210が配置されている。また、加熱室208内には、入り口212側にヒータ214が設けられ、ヒータ214の上流側に循環ファン216が設けられている。
【0023】
前加熱部204では、印刷版12が加熱室208内を通過するときに、所定の温度及び所定の加熱時間となるようにして、印刷版12の光重合性感光層を的確に硬化させて、印刷版12の印刷力の増加を図っている。
【0024】
一方、加熱室208内を通過した印刷版12は、出口218から前水洗部206へ送られる。
【0025】
前水洗部206には、水洗タンク220が設けられており、この水洗タンク220内に洗浄水を貯溜する洗浄槽222が形成されている。
【0026】
前水洗部206において、前加熱部204側に、搬送ローラ224、226、228が印刷版12の搬送方向に沿って千鳥状に配置されている。搬送ローラ224、228は、印刷版12の上面に対向するように設けられ、搬送ローラ226は、搬送ローラ224、228の間で、印刷版12の下面に対向するように配置されている。
【0027】
これにより、前水洗部206へ送り込まれた印刷版12は、搬送ローラ224、228と搬送ローラ226の間を搬送される。
【0028】
前水洗部206には、搬送ローラ228の下流側に、ブラシローラ230とバックアップローラ232が、上下に対で設けられている。ブラシローラ230とバックアップローラ232の接触位置は、搬送ローラ228の下端よりも低くなっている。これにより、印刷版12は、搬送ローラ226、228の間から傾斜されてブラシローラ230とバックアップローラ232の間へ送り込まれる。
【0029】
また、前水洗部206には、搬送ローラ228とブラシローラ230の間にスプレーパイプ234が設けられ、ブラシローラ230の上方にスプレーパイプ236が設けられている。
【0030】
スプレーパイプ236から噴出される洗浄水が、ブラシローラ230の軸線方向に沿った全域に供給され、該洗浄水がブラシ素材に略均一に供給される。そして、印刷版12は、洗浄水が供給されたブラシローラ230によってブラッシングされる。
【0031】
これにより、印刷版12は、表面に洗浄水が供給されると共に、さらに、洗浄水が溜められた状態で、ブラシローラ230とバックアップローラ232の間に送り込まれる。
【0032】
印刷版12に設けている保護層は、洗浄水によって膨潤して剥がれ易くなる。従って、印刷版12は、表面に洗浄水が溜った状態で、ブラシローラ230によってブラッシングされ、保護層が確実に除去され、部分的に保護層が残ることにより、現像処理を行った時に、現像むらを生じさせてしまうことがない。
【0033】
なお、ブラシローラは230は、バックアップローラ232との間で印刷版12を挟んだ時に、所定のブラシ圧が得られるように構成されている。これにより、所定方向に回転した状態で、印刷版12がブラシローラ230とバックアップローラ232の間を通過すると、ブラシローラ230によって該印刷版12の表面がブラッシングされる。
【0034】
一方、前水洗部206には、ブラシローラ230の下流側に、串型ローラ238が設けられている。この串型ローラ238は、印刷版12の搬送路の上方側に配置されており、ブラシローラ230とバックアップローラ232の間を通過した印刷版12が、ブラシローラ230によってブラッシングされることにより浮き上がって、搬送路から外れてしまうのを防止する。
【0035】
また、前処理部200が現像処理部10と連結されている場合には、前水洗部206の最下流に、平版印刷版12を搬送可能な状態で、現像処理部10の搬送ローラ対42が設けられている。
【0036】
次に、自動現像装置1の現像処理部10を説明する。
図2に示すように、自動現像装置1の現像処理部10は、印刷版12を現像液によって処理するための現像部14と、現像液によって処理された印刷版12の水洗水を供給して水洗する水洗部16と、水洗後の印刷版12に版面保護用のガム液を塗布して不感脂化処理及び版面をブラッシング処理するフィニッシング処理部18と、印刷版12を乾燥させる乾燥部20と、が配設されている。即ち、自動現像装置1には、印刷版12の搬送方向(図2の矢印A)方向に沿って、現像工程、水洗工程、フィニッシング処理工程及び乾燥工程が順に配置されている。
【0037】
現像処理部10内には、処理タンク22が設けられている。この処理タンク22には、処理槽として現像部14となる位置に現像槽24が形成され、水洗部16及びフィニッシング処理部18となる位置に水洗槽26及びフィニッシング槽28が形成されている。また、処理タンク22には、現像槽24の上流側(印刷版12の搬送方向の上流側)に挿入部34のスペースが設けられ、フィニッシング処理槽28の下流側に乾燥部20のスペースが形成されている。
【0038】
処理タンク22の周囲を覆う外板パネル30には、現像処理部10への印刷版12の挿入側(図1の紙面左側)にスリット状の挿入口32が形成され、処理タンク22には、現像部14の挿入口32側に挿入部34が形成されている。
【0039】
現像処理部10には、処理タンク22の上部及び乾燥部20の上部を覆うカバー36、38が設けられている。挿入口32側のカバー36は、処理タンク22の挿入部34から水洗部16の上部を覆い、カバー38は、水洗部16の上部から乾燥部20の上部の間を覆うように配置される。
【0040】
また、カバー36には、現像部14と水洗部16の間に印刷版12を挿入するためのエントリー用の挿入口(副挿入口)40が設けられている。副挿入口40は、現像部14での処理を除くPS版プロセッサーでの処理を行うための印刷版12の挿入用となっている。
【0041】
挿入口40に隣接する挿入部34には、ゴム製の搬送ローラ42が配設されている。画像が焼き付けられた印刷版12は、挿入口32から矢印A方向に沿って挿入されることにより、搬送ローラ対42の間に送り込まれる。
【0042】
搬送ローラ42は、回転駆動されることにより、この印刷版12を挿入口32から引き入れながら、水平方向に対して約15°から31°の範囲の角度で現像部14へ送り込む。このとき、印刷版12の搬送方向先端側は、搬送方向に直交する方向に対して所定角度傾斜されている。即ち、印刷版12の走査露光時の副走査方向と印刷版12の搬送方向とのなす角が、30度から60度の範囲で傾斜されている。
なお、印刷版12の処理に用いる現像処理部10では、感光層(感光面)が上方へ向けられた状態で現像処理部10によって処理される。
【0043】
処理タンク22に形成されている現像槽24は、底部中央が下方へ向けて突出された略山形状となっており、印刷版12の現像処理を行うための現像液を貯溜する。浸漬時間は2秒から60秒、好ましくは5秒から30秒が好ましい。浸漬温度は15〜50°Cが好ましく、15〜50°Cがより好ましい、20°C〜45°Cとすることが更に好ましい。
【0044】
この現像槽24内には、印刷版12の搬送路の上流部となる挿入部34側に搬送ローラ48が配置されている。また、現像槽24内には、印刷版の搬送路の中央部に搬送ローラ対50が配置され、下流部となる水洗部16側に搬送ローラ対52が配置されている。
【0045】
現像処理部10の現像槽24には、搬送ローラ48と搬送ローラ対50の間にガイド116が設けられる。このガイド116は、一端部が搬送ローラ48に対向し、他端部が搬送ローラ対50の間へ向けられている。
【0046】
搬送ローラ対42によって現像処理部10内に引き入れられた印刷版12は、搬送ローラ48とガイド116の間に送り込まれ、ガイド116上を搬送ローラ対50の間へ案内搬送される。
【0047】
また、現像槽24内には、搬送ローラ対50の近傍に、ガイド116に対向してブラシローラ141が配置される。ブラシローラ141は、長尺の円柱状部材であって、回転軸を中心に所定回転方向及び所定の回転速度で回転駆動して、ガイド116上を搬送される印刷版12における露光面の表面に接触することにより、印刷版12の上面を擦ることによってブラッシングする。なお、ガイド116は、ブラシローラ141が所定のブラシ圧で印刷版12の上面に接触するように配置される。
【0048】
また、ブラシローラ141は、現像液の液面から突出するようになっており、遮蔽蓋100の凹部100Bには、搬送ローラ対50と共に、ブラシローラ141の液面から突出した上部が入り込むようになっている。
【0049】
また、現像槽24内には、搬送ローラ対50、52の間に、ブラシローラ142が配置されている。ブラシローラ142は、ブラシローラ141と同様の構成とすることができ、搬送ローラ対50、52の間を搬送される印刷版12の上面側に対向するように取り付けられている。ブラシローラ142は、所定方向及び所定の回転方向に回転しながら印刷版12の上面に接触することにより、印刷版12の上面側の感光層を擦ることによってブラッシングして、現像液によって不要な感光層の除去を促進するようになっている。ブラシローラ142に対して印刷版12の搬送方向の下流側近傍に搬送ローラ60が配置されている。搬送ローラ60は、搬送ローラ50、52の間を搬送される印刷版12の上面側に対向するように取り付けられている。
【0050】
搬送ローラ42によって挿入口32から引き入れられた印刷版12は、搬送ローラ48の下方を通過してブラシローラ141に擦られてブラッシングされた後に、搬送ローラ対50の間に送り込まれる。そして、印刷版12は、搬送ローラ50によって現像槽24の底面に沿うように搬送ローラ対52へ向けて斜め上方へ案内される。このとき、印刷版12の上面側がブラシローラ142に擦られてブラッシングされる。
【0051】
本実施の形態において、ブラシローラ141及びブラシローラ142は、図3の斜視図に示すような形状で表面に毛等のブラシbを有して、露光後において平版印刷版12の露光面の表面を擦ることで、未露光部の光重合性感光層を除去する擦り部材として機能する。
ブラシローラ141の印刷版12を挟む反対側にはバックアッローラ45が設けられており、ブラシローラ142の印刷版12を挟む反対側には、バックアッププレート46が配置されている。なお、バックアップローラ45とバックアッププレート46は、本実施形態においては双方を設けてあるが、いずれか一方のみ各ブラシローラ141、142に対応させて設ける構成であってもよい。つまり、バックアップローラがある態様でも、ない態様でも構わない。
【0052】
本発明に使用される擦り部材は、平版印刷版原版の画像記録面を擦ることができる部材であれば何でもよいが、回転軸を中心に回転することで光重合性感光層を擦ることが可能な部材(例えば、公知のチヤンネルブラシ、ねじりブラシ、植え込みブラシ、絨毯ブラシ、およびモルトンローラなど)を使用することが特に好ましい。
【0053】
チャンネルブラシとしては、実開昭62−167253号、実開平4−63447号、実開平4−64128号、特開平6−186751号の各公報に開示されているような、長尺のいわゆるチャンネルブラシ(帯状ブラシ)を、ローラ本体表面に螺旋状に巻き付けたものが用いられる。
【0054】
ねじりブラシとしては、特開平3−87832号の各公報に開示されているようなシャフトに設けられた螺旋状の溝内にねじりブラシを挿入してシャフトへ螺旋状に巻き付けたものが用いられている。
【0055】
植え込みブラシとしては、シャフトローラに小穴をあけ、ブラシ材料を植え込む方法で作成されるものが用いられる。
【0056】
絨毯ブラシとしては、特開2001−5193号、特開2001−66788号の各公報に開示されているようなシャフトローラの周面に織物に毛材が織り込まれた細長の帯体を巻き付けたものが用いられる。
【0057】
モルトンローラとしては、特開平10−198044号の公報に開示されているようなローラ部に繊維製の編成物からなる筒状の摺接材を被せて装着側の端部を緊締したものが使用できる。
【0058】
擦り部材として回転する部材を用いる場合、その擦り部材の回転数は、光重合性感光層の除去性を向上させるために、なるべく速いことが好ましいが、自動現像処理機の耐久性、製造コスト、現像液の飛散及び平版印刷版原版の露光部の損傷等の観点から、30〜500rpm、より好ましくは50〜300rpmが好ましい。
【0059】
擦り部材としてブラシを用いる場合、そのブラシの本数は、一本以上あればよく、複数本あってもよい。
【0060】
擦り部材に用いるブラシ材質は、馬の毛、豚の毛等の天然繊維、人造繊維、金属繊維などが知られているが、耐薬品性より人造繊維が好ましい。人造繊維としては、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン12等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル類、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル類、ポリチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ピニリデン等のポリオレフィン類、アセチルセルロース等のセルロース類、ポリウレタン等のポリウレタン類、ポリフェニレンサルファイト、エチレン・4弗化エチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン等の弗素樹脂類が用いられるが、弾性、剛性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、給水性、吸湿性等を考慮すると、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン12、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、より好ましくはナイロン6・6、ナイロン6・10、6・12、ナイロン12、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンが用いられる。ポリエステル類ではとくにポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。ポリオレフィン類では特にポリプロピレンが好ましい。
【0061】
ブラシの太さは特に限定はされないが、0.01mmから1.0mmが好ましく、より好ましくは、0.2mmから0.5mmが好ましい。ブラシの太さが0.01mmより細いと擦り性が劣り、1.0mmより太いと、版面に擦り傷を付けやすくなるためである。
また、ブラシの毛の長さは特に限定はされないが、通常3mmから50mmの範囲で用いられる。3mmより短くすると平版印刷版原版へのあたりが不均一になって版面に擦り傷を付けやすくなるためである。又、50mmより長い場合は、長くすることによる現像処理上のメリットが見出されなくなり、経済的にも不利である。モルトンローラの場合は、編成物からなる筒状の摺接材を被せるため、毛材の太さ長さの規程は不要である。
【0062】
本実施の形態の自動現像装置1において、擦り部材であるブラシローラ141、142は、図6(バックアップローラ型)、図7(バックアッププレート型)に示すように、印刷版12をブラッシングする際に、回転軸を中心として正転と逆転との回転方向の切替えが可能であり、一方のブラシローラを正転としたとき、他方のブラシローラを逆転させることができる。さらに、3つ以上のブラシローラを擦り部材として適用する場合には、ブラシローラのうち少なくとも一つを逆転させる。
【0063】
これらブラシローラは、擦り部材回転制御手段である、図8に概念的に示すようなシステムによって駆動制御される。図8において、ブラシローラ141と142を、例えば、正転動作および逆転動作でそれぞれ回転駆動させる場合を考える。この場合、現像処理部における処理内容、あるいはタイマ31からの現像処理の経過時間等の情報に応じて、モータ駆動を反転させるタイミング信号をタイミング発生部33で発生させる。このタイミング信号を制御部35が受けて、制御部35におけるCPUの指令に基づき、モータMの駆動信号を生成し、この駆動信号をモータドライバ37に出力する。これによりモータMが回転駆動され、ブラシローラ軸Rを所望の回転方向、回転速度となるよう制御が行われる。
【0064】
なお、印刷版12の搬送位置を光学位置センサなどで検出し、印刷版12がブラシローラ141,142の直下にないときに、図6,図7に示すように、ブラシローラ141,142を適宜な駆動手段により上下動制御することで、逆回転駆動時にブラシ圧の調整を行うことができる。図6においては、ブラシローラ141はバックアップローラ45に当接させた状態で逆回転駆動され、図7においては、ブラシローラ142はバックアッププレート46に当接させた状態で逆回転駆動される。このブラシ圧の調整により、ブラシ先端の寝癖が確実に戻される。
【0065】
再び図2に戻り、現像部24において搬送方向下流側に設けられた搬送ローラ対52は、例えば、外周部がゴム製のローラによって形成されている。
【0066】
現像槽24内には、搬送ローラ対50と搬送ローラ対52の間の底面近傍にスプレーパイプ56が設けられている。このスプレーパイプ56からこの現像液を噴出する。これにより、現像槽24内の現像液が撹拌されて、印刷版12の均一な処理が可能となる。
【0067】
印刷版12は、ブラシローラ141、142によって光重合性感光層が除去された後で、搬送ローラ対52によって挟持されつつ現像槽24から引出される。搬送ローラ対52によって現像槽24から引出された印刷版12は、この搬送ローラ対52によって表面に付着している現像液が絞り落とされながら水洗部16へ送り込まれる。
【0068】
水洗部16には、水洗槽26の上方に配設された搬送ローラ対62、64によって印刷版12を略水平状態で搬送する搬送路が形成されており、印刷版12は、搬送ローラ62、64に挟持されて水洗槽26の上方を水平搬送される。
【0069】
水洗部16には、搬送ローラ対62、64の間に、印刷版12の搬送路を挟んで上下に対で、スプレーパイプ66、68が設けられている。スプレーパイプ66、68は軸線方向が印刷版12の幅方向(搬送方向と直交する方向)に沿って配置され、印刷版12の搬送路に対向する複数の吐出孔(図示省略)が軸線方向に沿って形成されている。
【0070】
水洗槽26には、例えば、洗浄剤として水(以下、「水洗水」とする)が貯溜されており、自動現像装置10では、図示しない給水ポンプによって、印刷版12の搬送に同期させて、スプレーパイプ66、68に水洗槽26内の水洗水を供給する。これにより、水洗水がスプレーパイプ66、68から印刷版12へ向けて噴出されて、印刷版12の表面に付着している現像液を洗い流す。
【0071】
印刷版12に供給された水洗水は、印刷版12が搬送ローラ対64に挟持されて送り出されることにより、印刷版12表裏面に付着していた現像液等と共に印刷版12の表裏面から絞り落とされ、水洗槽26内に回収される。なお、スプレーパイプ66、68からの水洗水の噴出方向は、スプレーパイプ66が印刷版12の搬送方向上流側で、スプレーパイプ68が印刷版12の搬送方向下流側としているが、これに限定されず他の方向であってもよい。又、水洗水の新液は、印刷版12の処理量に応じて図示しない手段により水洗槽26に供給される。
【0072】
水洗部16には、搬送ローラ対62、64の間に、印刷版12の版面をブラッシングするブラシが配置されていてもよい。
【0073】
フィニッシング処理部18には、フィニッシング処理槽28の上方に搬送ローラ対70が設けられ、印刷版12は搬送ローラ対64によって搬送ローラ対70へ向けて搬送されることにより、フィニッシング処理部18内を搬送された後に、搬送ローラ対70によって挟持されて乾燥部20へ向けて送られる。
【0074】
フィニッシング処理部18には、印刷版12の搬送路の上方側にスプレーパイプ72が設けられ、搬送路の下方側にスプレーパイプ74が設けられている。スプレーパイプ72、74は、長手方向(軸線方向)が印刷版12の幅方向に沿い、印刷版12の搬送路を挟んで上下に配置されている。又、スプレーパイプ72、74には、印刷版12の幅方向に沿って複数の吐出孔が形成されている。
【0075】
フィニッシング処理槽28には、印刷版12の版面保護に用いるガム液が貯溜されており、このガム液が印刷版12の搬送に同期してスプレーパイプ72、74に供給される。スプレーパイプ72は、このガム液を印刷版12へ向けて滴下して印刷版12の表面に広げて塗布する。また、スプレーパイプ74は、吐出孔から印刷版12の裏面に向けてガム液を吐出して、印刷版12の裏面にガム液を塗布する。
【0076】
印刷版12は、表裏面に塗布されるガム液によって保護膜が形成される。なお、スプレーパイプ72からのガム液の吐出方向は、印刷版12の搬送方向下流側に限らず、他の方向であってもよく、また、整流板を設け、この整流板へ向けて噴出したガム液を、整流板で印刷板12の幅方向に沿って均一に拡散させながら、印刷版12の表面に流し落として塗布するようにしてもよい。また、スプレーパイプ74に換えて、吐出したガム液に印刷版12が接触しながら移動することにより印刷版12の裏面にガム液を塗布する吐出ユニット等を用いてもよい。
【0077】
なお、フィッニッシング処理部18には、搬送ローラ対70の上方に洗浄スプレー76が設けられ、搬送ローラ対70の上方のローラに接触しながら回転する洗浄ローラ78が設けられており、予め設定されている所定のタイミングで、この洗浄スプレー76から搬送ローラ対70の上方のローラと洗浄ローラ78の接触位置に、整流板80を介して洗浄水を滴下することにより、洗浄水を搬送ローラ対70の上方のローラの周面に均一に拡散させて、搬送ローラ対70の上下のローラの周面からガム液を洗い流し、ローラの周面にガム液が固着してフォトポリマー版12を損傷させてしまうのを防止する。
【0078】
フィニッシング処理部18でガム液が塗布され印刷版12は、搬送ローラ対70に挟持されて、表裏面にガム液が若干残った状態(ガム液が薄膜として残った状態)で乾燥部20へ送られる。
【0079】
現像処理部10には、フィニッシング処理部18と乾燥部20の間に、仕切り板82が設けられている。この仕切り板82は、印刷版12の搬送路の上方に、処理タンク22の上端と対向するように配置されており、これにより、フィニッシンク゛処理部18と乾燥部20の間にスリット状の挿通口84が形成されている。なお、仕切板82は、二重構造となっており、これにより挿入口84の乾燥部20側に溝状の通気路が形成され、乾燥部20内の空気がこの通路内に入り込むことにより、乾燥部20内の空気が挿通口84からフィニッシング処理部18内に入り込んでしまうのを防止している。
【0080】
乾燥部20内には、挿通口84の近傍に、印刷版12を支持する支持ローラ86が配設され、また、印刷版12の搬送方向の中央部及び、排出口88の近傍には、搬送ローラ対90及び搬送ローラ対92が配設されている。印刷版12は、支持ローラ86及び搬送ローラ対90、92によって乾燥部20内を搬送される。
【0081】
支持ローラ86と搬送ローラ90との間、及び搬送ローラ対90と搬送ローラ対92との間には、印刷版12の搬送路を挟んで対でダクト94、96が配設されている。ダクト94、96は、長手方向が印刷版12の幅方向に沿って配設されており、印刷版12の搬送路に対向する面にスリット孔98が設けられている。
【0082】
ダクト94、96は、図示しない乾燥風発生手段によって発生された乾燥風が、長手方向の一端側から供給されると、この乾燥風をスリット孔98から印刷版12の搬送路へ向けて吐出し、印刷版12に吹き付ける。これにより、印刷版12は、表裏面に塗布されているガム液が乾燥され、保護膜が形成される。
【0083】
保護膜の形成された印刷版12は、搬送ローラ対92にニップされて、現像処理部10から搬出される。
【0084】
ここで前述した現像処理部10を更に説明すると、現像処理部10では、現像槽24内に液面蓋100を配置することにより、現像槽24内の現像液が空気中の炭酸ガス等と接触してしまうことによる劣化や水分の蒸発を防止するようにしている。なお、遮蔽蓋100及び処理タンク22と搬送ローラ48や搬送ローラ52等の間にシリコンゴム等によって形成したブレード状の遮蔽部材(図示省略)を設けて、現像槽24内の現像液が新鮮な外気と接触したり、現像液中の水分が蒸発したりしてしまうのを防止することが、より好ましい。
【0085】
更に、前水洗水及び水洗水に、水垢、カビなどの繁殖を抑制するために防腐剤を自動添加してもよい、水垢防止剤としては、富士写真フイルム(株)社製BK−3が好適に用いられる。添加量としては50〜5000ppm、好ましくは100〜3000ppmである。
【0086】
AM高精細スクリーンとしては、250線以上が相当するが、富士写真フイルム(株)社製 Co-Reスクリーンが好適に使用できる。
【0087】
FMスクリーンとしては、例えば、富士写真フイルム社製FMスクリーンTAFFETA(20)、CREO社製のStaccato(10、20、25、35、36)、大日本スクリーン社製のRandot、Randot X(10、15、20)、Heidelbelg社製Stain Screening、Agfa社製Cristal Rasterを用いることができる。
【0088】
ハイブリットスクリーンとしては、大日本スクリーン社製Fairdot、Agfa社製Sublimaが知られている。具体的には、250線以上、更に好ましくは300線以上のAMスクリーン、前述したFMスクリーン、ハイブリッドスクリーンがある。FMスクリーン、ハイブリッドスクリーンでは、網点を構成する最小画素のサイズが50μm以下のものでは、画像ムラが生じやすく、特に30μm以下のものでは、画像ムラが生じやすく、本発明が有効である。
【0089】
ここでいう最小画素のサイズとは、画像を構成する最小画素の一辺の長さを表している。図4はFMスクリーンのハイライト部を示している。図5は、FMスクリーンの中間調を示している。図4、図5に示すように最小画素は、ハイライト側で見られるほか、中間調やシャドー側でもその一部を視認できる。
【0090】
このように、本発明に係る平版印刷版の処理方法及び自動現像装置は、支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザーにより走査露光した後、現像処理部10に搬送して現像する際、印刷版12として、AMスクリーンでは250線以上、FMスクリーンとしては網点を構成する最小画素のサイズが50μm以下に相当する高精細スクリーンを用いている。そして、感光性平版印刷版を現像処理していない間は、前記擦り部材を現像処理する方向とは逆の反対方向に回転させる。これにより、図14のように、小サイズの平版印刷版を多数枚現像処理した後、それより大きいサイズの平版印刷版を処理した場合、小サイズの平版印刷版を処理した部分に相当する場所が、その周りよりも網点濃度が高くなる処理むらを生ずることが無く、長期間に亙って画像欠陥の無い安定した処理が行えるようになる。
【0091】
つまり、印刷版12の未処理時に、現像擦り部材を、現像処理する方向とは逆方向に回転させると、図15に示すような、現像ブラシの寝癖が解消され、これにより、画像欠陥のない安定した処理が可能となる。また、ブラシの毛材の寿命も延長する効果も得られる。
【0092】
なお、ここで、逆回転駆動の方法としては、以下のタイミング(1)〜(5)が一例として挙げられる。これらのタイミングの制御は、図8に示した擦り部材回転制御手段によるものである。
(1)未処理中は常時逆回転処理を実施
図9のタイムチャートに示すように、2つのブラシA(ブラシ141)、ブラシB(フラシ142)の回転方向が、現像処理時にはブラシAが正転ならブラシBは逆転となり、非現像処理時には夫々を常時連続して反対方向へ回転させるように制御する。つまり、感光性平版印刷版の現像休止期間は、逆回転処理を常時連続して行う。この場合には、逆回転処理を現像休止時間で常時行うことで、制御が容易になり、かつ、ブラシ先の寝癖が確実に戻される。
【0093】
(2)処理時間と同じ時間、逆回転処理を実施
図10のタイムチャートに示すように、現像処理時間をt1、t3、非現像処理時間をt2、t4とすると、t1=t2、t3=t4とするものである。つまり、感光性平版印刷版の現像休止期間は、直前に現像処理した感光性平版印刷版の現像処理期間と略同じ期間、前記逆回転処理を行う。この場合には、ブラシ先が現像処理と同じ時間だけ逆回転されるため、無駄なく確実に元の状態に戻すことができる。
【0094】
(3)現像処理終了時に逆回転処理して自動終了
図11のタイムチャートに示すように、逆回転処理は現像処理終了時、例えば、装置停止の際のストップスイッチの押下に同期して逆回転処理を実施する。この場合は、次回の装置立ち上げ時までブラシ先が元の状態に戻ったままとなり、ブラシの寿命を延ばすことができる。
【0095】
(4)自動現像装置の立ち上げ時に逆回転処理を実施
図12のタイムチャートに示すように、装置立ち上げ時のウォーミングアップ時に逆回転処理を実施する。この場合、逆回転処理がウォーミングアップ時の待ち時間内に行えるため、現像処理の時間を無駄にすることなく、効率よく実施できる。
【0096】
(5)定期的に逆回転を実施
図13のタイムチャートに示すように、一定周期T毎に行う。逆回転処理を所定の一定期間毎に行うことで、制御が簡単になり、現像処理内容に応じた時間を選択することで、最適なブラシの寝癖戻しを行うことができる。
【0097】
次に、本発明に用いられる感光性平版印刷版の製版について、以下に補足する。
本発明に用いられる感光性平版印刷版は、支持体上に光重合性感光層を有する。また、支持体と光重合性感光層の間に、必要に応じて、下塗り層を設けてもよく、光重合性感光層上には保護層(酸素遮断層)を設けてもよい。感光性平版印刷版としては、特開2004−4145号、特開2005−84303号などに記載されているような光重合感光層を有する感光性平版印刷版が挙げられる。
【0098】
本発明の感光性平版印刷版は、通常、画像露光したのち、現像液で感光層の未露光部を除去し、画像を得る。
【0099】
その他、本発明の感光性平版印刷版の製版プロセスとしては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。このような加熱より、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や、感度の安定化と言った利点が生じ得る。更に、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行うことも有効である。通常現像前の加熱は150°C以下の温和な条件で行うことが好ましい。温度が高すぎると、非画像部までがかぶってしまう等の問題を生ずる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は200〜500°Cの範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題が生ずる。
【0100】
本発明による走査露光平版印刷版の露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。望ましい光源の波長は350nmから450nmであり、具体的にはInGaN系半導体レーザーが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等のいずれでもよい。これらの露光機構の中で内面ドラム方式が特に有効である。
【0101】
レーザーとして、Arイオンレーザー(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザー(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザー(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr;LiSAFとSHG結晶の組合せ(430nm、10mW)、半導体レーザー系として、KNbOリング共振器(430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAIGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAIGaInP、AIGaAs半導体の組合わせ(300nm〜350nm、5mw〜100w)、AIGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)その他、パルスレーザーとして、Nレーザー(337nm、パルス0.1〜10mj)、XeF(351nm、パルス10〜250mj)が挙げられる。特に、この中でAIGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mw)が波長特性、コストの面で好適である。
【0102】
また、従来公知の活性光線で画像露光後、現像までの間に、光重合型感光層の硬化率を高める目的で50°C〜150°Cの温度で1秒から5分の時間の加熱プロセスを設けることにより、非画像部の硬化性を高め、耐刷性の更なる向上を図ることができ、より好ましい。
【0103】
上述の感光性平版印刷版を従来公知の現像液を用いて現像し、画像形成することが可能であるが、これらの従来公知の現像液としては、特公昭57−7427号に記載されているような現像液が挙げられる。
【0104】
また、現像処理された感光性平版印刷版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明の感光性平版印刷版の後処理には、これらの処理を種々組合わせて用いることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0105】
[実施例1]
以下、実施例に基づいて、本発明の顕著な効果を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0106】
(実施例1〜3及び比較例1)
【0107】
(FMスクリーンにおける画像むらの評価)
富士写真フイルム(株)社製バイオレットレーザー用高感度感光性平版印刷版PN−Vを下記の方法により製版し、FMスクリーンでの画像むらの評価を行った。FujiFILM Electronic Imaging LTD製 Violet半導体レーザセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー405nm±10nm発光/出力30mw)に装填して、90μJ/cmの露光量で、解像度2438dpiで、富士写真フイルム製FMスクリーン、TAFFETA20で50%の平網を描画した。
【0108】
処理する印刷版サイズは、小サイズとしては幅方向650mm、縦方向550mmの平版印刷版を使用した。大サイズは、幅方向1030mm、縦方向800mmの平版印刷版を使用した。処理方法及び現像ブラシの処理方向に対して逆方向に回転させるタイミングを表1に示した。このタイミングは前述の逆転方法(1)〜(4)に相当するものである。
露光した印刷版は自動現像装置に送られ、100°C−10秒間加熱後、PVA保護層を水洗除去し、引き続いて現像温度28°C、現像時間20秒とした。図3にも示した、現像ブラシローラb(141,142)は、外径4.8mmのチャンネルブラシを2本装着した。毛材の材質はナイロン610を使用し、毛材の径は0.07mm、毛材の長さは16mmとした。前側のブラシローラは搬送方向と同じ回転方向で110rpmの回転速度とした。また、後側のブラシローラは搬送方向とは逆方向の回転方向で110rpmの回転速度とした。
現像液は富士写真フイルム(株)製現像液DV−2を水で5倍に希釈したものを仕込んだ。現像後の版はリンス浴で水洗後、フィニッシング処理部へ送られ、富士写真フイルム(株)ガム液FP−2Wを水で2倍に希釈したものを用いた。フィニッシング後の版は、熱風乾燥後排出され、FMスクリーンの50%平網を描画した平版印刷版を得た。この得られた平版印刷版の平網のむらを評価した。以上の結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示すように、前述の逆転処理のタイミング例(1)〜(4)に相当する実施例1〜4は、いずれも版上の平網むらも無く安定に処理できた。一方、逆転処理を行わない比較例1は、版上の平網むらがひどく発生した。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係る平版印刷版の自動現像装置の前処理部の構成を示す図である。
【図2】図1に示す自動現像装置の現像処理部の構成を示す図である。
【図3】図2に示す現像処理部の現像ブラシローラの斜視図である。
【図4】FMスクリーンのハイライト部を示す図である。
【図5】FMスクリーンの中間調を示す図である。
【図6】図2に示す現像ブラシローラの回転方向の説明図である。
【図7】図2に示すバックアッププレート型の現像ブラシローラの回転方向の説明図である。
【図8】図1に示すブラシローラの回転制御系を示す図である。
【図9】図2に示す現像ブラシローラを未処理中は常時逆回転させる場合のタイムチャートである。
【図10】図2に示す現像ブラシローラを処理時間と同じ時間逆回転させる場合のタイムチャートである。
【図11】図2に示す現像ブラシローラを処理終了時に逆回転させる場合のタイムチャートである。
【図12】図2に示す現像ブラシローラを朝立上げ時に逆回転させる場合のタイムチャートである。
【図13】図2に示す現像ブラシローラを定期的に逆回転させる場合のタイムチャートである。
【図14】従来の自動現像装置の処理ムラの説明図である。
【図15】従来の自動現像装置のブラシ毛材の寝癖の説明図である。
【符号の説明】
【0112】
1 自動現像装置
10 現像処理部
12 印刷版
14 現像部
16 水洗部
18 フィニッシング処理部
20 乾燥部
24 現像槽
141、142 現像ブラシローラ
200 前処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザー露光した後、前記感光性平版印刷版を現像処理する平版印刷版の処理方法であって、
露光後の前記感光性平版印刷版の露光面を、擦り部材を押し当てて回転させることによって、未露光部の前記光重合性感光層を擦り除去する際に、前記感光性平版印刷版の現像処理を終了してから次の感光性平版印刷版を現像開始するまでの現像休止期間内に、前記擦り部材を現像処理期間中に回転する方向とは逆方向に回転させる逆回転処理を行うことを特徴とする平版印刷版の処理方法。
【請求項2】
前記露光に際し、AMスクリーンとしては250線以上、FMスクリーンとしては網点を構成する最小画素のサイズが50μm以下に相当する高精細スクリーンを用いることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の処理方法。
【請求項3】
前記感光性平版印刷版の現像休止期間は、前記逆回転処理を常時連続して行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版の処理方法。
【請求項4】
前記感光性平版印刷版の現像休止期間は、直前に現像処理した感光性平版印刷版の現像処理期間と略同じ期間、前記逆回転処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版の処理方法。
【請求項5】
前記逆回転処理を、所定の一定期間毎に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版の処理方法。
【請求項6】
支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版をレーザー露光した後、前記感光性平版印刷版を現像処理する平版印刷版の自動現像装置であって、
露光後の前記感光性平版印刷版の版面に押し当てながら回転して前記版面の未露光部の前記光重合性感光層を擦り取る擦り部材と、
前記擦り部材を、前記感光性平版印刷版の現像処理期間に回転させ、前記感光性平版印刷版の現像処理を終了してから次の感光性平版印刷版を現像開始するまでの現像休止期間内に、前記現像処理期間中に回転する方向とは逆方向に回転させる擦り部材回転制御手段と、
を備えたことを特徴とする平版印刷版の自動現像装置。
【請求項7】
前記擦り部材が、ブラシ材であることを特徴とする請求項6記載の平版印刷版の自動現像装置。
【請求項8】
前記擦り部材が、複数本並設されて、少なくとも一つを逆転させることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の平版印刷版の自動現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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