説明

平版印刷版の製造装置

【課題】連続走行する帯状のアルミニウムウエブを交互に巻き掛けて蓄積する複数のローラを相対移動させることによりウエブ長さを蓄積するリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置において、簡単かつ応答性の優れた手段により、リザーバ装置が破損したり、ウエブが破断してしまうことを防止する平版印刷版用の製造装置を提供する。
【解決手段】予め決められた一定以上の圧力で開く安全弁84が備えられたシリンダー78でスイングアーム74を動作させるダンサーローラ76を備え、該ダンサーローラ76では、常時ウエブW1を蓄えておき、リザーバ装置26、54内においてウエブW1に異常張力が発生する時、シリンダー内部の圧力変化により安全弁84が動作しシリンダー内部のエアが抜けてスイングアーム74が下がることでダンサーローラ76において蓄えたウエブW1を全て放出し、ウエブW1の異常張力を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の製造装置に係り、特に、連続走行する帯状のアルミニウムウエブを交互に巻き掛けて蓄積する複数のローラを相対移動させることによりウエブ長さを蓄積するリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版(以下「PS版」という)は、一般にコイル状のアルミニウム版(以下「ウエブ」ともいう)に、例えば、ブラッシング、陽極酸化、化成処理等の表面処理を単独又は適宜組み合わせて行い、次いで、塗布液を塗布する塗布工程を経て、乾燥工程へ回される。
【0003】
このようなPS版の製造装置(以下「設備ライン」ともいう)の最上流部には、長尺状のウエブ(説明の便宜上、「オールドウエブ」という)を巻芯に巻き取ったコイルと、次に送り出されるニューウエブが巻芯に巻き取られたコイルとが装填された2軸式の送出し機が設けられている。
【0004】
そして、PS版の設備ラインを停止させることなく、ウエブを連続して送り出すため、オールドウエブがなくなる前に、設備ラインへ送り出しているオールドウエブを切断し、オールドウエブの終端部に新しいコイルから巻き出されたニューウエブの先端部を接合装置で接合して、ウエブの連続性を保っている。
【0005】
ウエブ同士を接合装置で接合するためには、ウエブを停止し張力を解除して弛みを作る必要がある。このため、PS版の設備ラインには、ウエブ長さを蓄積するリザーバ装置が設けられている。
【0006】
なお、リザーバ装置1は、図3に示すように、複数の上側ローラ2、複数の下側ローラ3、可動台4、調整ワイヤ5、滑車6a、6b、6c、リール7、及びモータ8を備え、上側ローラ2は可動台4と共に昇降可能とされており、ウエブWは、上側ローラ2と下側ローラ3とに順に巻き掛けられている。
【0007】
調整ワイヤ5がリール7に巻き取られることにより、可動台4が上昇して、リザーバ装置1に蓄積されるウエブWが長くなる。また、調整ワイヤ5がリール7に巻き出されることにより、可動台4が下降して、リザーバ装置1に蓄積されたウエブWが送り出される。これにより、上流側のウエブWの走行が停止しても、下流側ではウエブWを停止させることなく各種の処理を行うことができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−244148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、引用文献1のような平版印刷版の製造装置では、図3に示した通り、ウエブがローラに巻き掛けられているため、ウエブに過大な張力が発生してしまうことがあり、この場合、リザーバ装置が破損したり、ウエブが破断してしまうという問題があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、連続走行する帯状のアルミニウムウエブを交互に巻き掛けて蓄積する複数のローラを相対移動させることによりウエブ長さを蓄積するリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置において、簡単かつ応答性の優れた手段により、リザーバ装置が破損したり、ウエブが破断してしまうことを防止する平版印刷版用の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、連続走行する帯状のアルミニウムウエブを交互に巻き掛けて蓄積する複数のローラを相対移動させることによりウエブ長さを蓄積するリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置において、予め決められた一定以上の圧力で開く安全弁が備えられたシリンダーでスイングアームを動作させるダンサーローラを備え、該ダンサーローラでは、常時前記アルミニウムウエブを蓄えておき、前記リザーバ装置内においてアルミニウムウエブに異常張力が発生する時、前記シリンダー内部の圧力変化により前記安全弁が動作し該シリンダー内部のエアが抜けてスイングアームが下がることでダンサーローラにおいて蓄えたアルミニウムウエブを全て放出し、アルミニウムウエブの異常張力を吸収することを特徴とする。
【0012】
本発明により、異常張力発生時、スイングアームが引っ張られシリンダー内部の圧力が上昇するが、シリンダーと繋がっている安全弁が予め決められた一定以上の圧力(基準圧力以上)になると自動的に開放するので、シリンダーが下降してウエブのリザーバ装置内にある長さが短くなり、蓄えたウエブを放出し、ウエブを弛ませて張力を低減させる。これによって、異常張力を吸収する。
【0013】
したがって、本発明によれば、簡単かつ応答性の優れた手段により、リザーバ装置が破損したり、ウエブが破断してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連続走行する帯状のアルミニウムウエブを交互に巻き掛けて蓄積する複数のローラを相対移動させることによりウエブ長さを蓄積するリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置において、簡単かつ応答性の優れた手段により、リザーバ装置が破損したり、ウエブが破断してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】平版印刷版の製造装置の全体概略図
【図2】本発明に係るダンサーローラを示す概略図
【図3】本発明に係るリザーバ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
【0017】
図1は、リザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置の全体の概略図を示したものである。
【0018】
図1に示すように、平版印刷版の製造装置10の最上流部には、2軸の送出し機12が配置されている。送出し機12の回動アーム66の一方には、ウエブ(説明の便宜上、「オールドウエブW1」という:先行して送り出されているウエブという意味)が巻芯16にロール状に巻き取ったコイル20が装填され、回動アーム66の他方には、ウエブ(説明の便宜上、「ニューウエブW2」という:次に送り出されているウエブという意味)が巻芯18にロール状に巻き取ったコイル22が装填されている。
【0019】
そして、回動アーム62を軸部68を中心に回動させ、コイル20とコイル22の位置を入れ替えることで、新しいコイル22からニューウエブW2が送り出されると共に、コイル20が抜き取られ、次の新しいコイルが装填される構成である。
【0020】
送出し機12から送り出されたオールドウエブW1は、接合装置24を通過して、リザーバ装置26に至る。リザーバ装置26は、接合装置24でオールドウエブW1とニューウエブW2を一旦停止して接合するとき、上下のローラ26Aが接近して、蓄積したオールドウエブW1を送り出して設備ラインが停止しないようにするものである。
【0021】
また、リザーバ装置26から送り出されたオールドウエブW1は、一例として、ブラッシング・水洗処理工程28、アルカリエッチング・水洗処理工程30、デスマット処理工程32、電解粗面化処理工程34、アルカリエッチング処理工程36、陽極酸化処理工程38、封孔処理工程40、親水処理工程42、乾燥工程44、第1感光層塗布工程46、乾燥工程48、第2感光層塗布工程50、乾燥工程52を経て、巻取側の巻芯の入れ替え作業のために設けられたリザーバ装置54に蓄積され、平版印刷版のウエブとして巻芯56に巻き取られる。
【0022】
さらに、各工程の間には、ブライドルローラ58(図1では、1カ所にしか図示しているない)が設けられており、オールドウエブW1を所定の速度で搬送すると共に、ウエブの張力をカットして、各々の工程に必要とされる張力をオールドウエブW1に与えている。
【0023】
ここで、図1のリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置10において、リザーバ装置26、54にはウエブがローラに巻き掛けられているため、ウエブに過大な張力が発生してしまうことがあり、この場合、リザーバ装置26、54が破損したり、ウエブが破断してしまうという問題があった。
【0024】
そこで、本願は、図2に示すように、予め決められた一定以上の圧力で開く安全弁が備えられたシリンダーでスイングアームを動作させるダンサーローラを備えるようにし、該ダンサーローラでは、常時ウエブを蓄えておき、リザーバ装置内においてウエブに異常張力が発生する時、シリンダー内部の圧力変化により安全弁が動作しシリンダー内部のエアが抜けてスイングアームが下がることでダンサーローラにおいて蓄えたアルミニウムウエブを全て放出し、アルミニウムウエブの異常張力を吸収することにした。なお、図2のダンサーローラは、上記のブライドルローラ(不図示)よりもリザーバ装置26、54側に設けるようにする。また、ダンサーローラを設ける位置は、リザーバ装置の上流側であっても下流側であっても良い。リザーバ装置からウエブ長で10m以内の上流側あるいは下流側に、本発明に関わるダンサー装置を設けることで、異常時の応答速度を速くすることができる。より好ましくは5m以内である。
【0025】
図2に示すように、ダンサー装置70は、支持軸72で揺動可能に支持されたスイングアーム74を備えている。このスイングアーム74の先端部には、ダンサーローラ76が取付けられている。また、スイングアーム74は、シリンダー78のピストンロッド78aに吊下されており、ピストンロッド78aを縮めることで、ダンサーローラ76を上限まで移動させている。
【0026】
ダンサーローラ76の下方には、左右に2つのパスローラ80、82が設けられており、パスローラ80に下方から巻掛けられたオールドウエブW1は、ダンサーローラ76に上方から巻掛けられ、さらに、パスローラ82へ下方から巻掛けられている。また、シリンダー78の給気側ポートには、安全弁84が設けられており、安全弁84は、予め決められた一定以上の圧力で開くものを用いている。
【0027】
シリンダー78内部のエアが抜けると、ピストンロッド78aが伸び、ダンサーローラ76を下限まで下降させることができる。
【0028】
ここで、ダンサー装置70では、ダンサーローラ76が上限の位置でウエブを蓄えた状態として平版印刷版の製造を行う。
【0029】
そして、リザーバ装置26、54内においてウエブW1に異常張力が発生する時、シリンダー78には大きな力が掛かり、シリンダー内部の圧力変化により安全弁84が動作し、シリンダー内部のエアが抜けてスイングアーム74が下限まで下がることでダンサー装置70において蓄えたウエブW1を全て放出し、ウエブの異常張力を吸収する。
【0030】
このように、異常張力発生時には、スイングアーム74が引っ張られシリンダー78内部の圧力が上昇するが、シリンダー78と繋がっている安全弁84が予め決められた一定以上の圧力(基準圧力以上)になると自動的に開放するので、シリンダーが下降してウエブの装置内にある長さが短くなり、蓄えたウエブを放出し、ウエブを弛ませて張力を低減させる。これによって、異常張力を吸収する。これにより、リザーバ装置26、54が破損したり、ウエブW1が破断してしまうことを防止することができる。
【0031】
ここで、安全弁84の予め決められた圧力(基準圧力)は、通常の平版印刷版の製造の際に掛かる圧力の1.5倍程度の圧力(概ね4000N程度)をいう。したがって、通常時にダンサーローラ76に掛かっている力の1.5倍程度以上の異常になったとき、安全弁84は自動的に開放し、シリンダー内部のエアが抜けてスイングアーム74が下限まで下がる。これにより、ダンサー装置70において蓄えたウエブW1を全て放出し、ウエブの異常張力を吸収するので、リザーバ装置26、54が破損したり、ウエブW1が破断してしまうことを防止することができる。
【0032】
なお、本発明に係るダンサー装置70は、リザーバ装置26とリザーバ装置54の両方に設けることが好ましいが、リザーバ装置26とリザーバ装置54の何れか一方だけに設けても良い。
【符号の説明】
【0033】
1…リザーバ装置、10…平版印刷版の製造装置、12…送出し機、16…巻芯、18…巻芯、20…コイル、22…コイル、24…接合装置、26…リザーバ装置、54…リザーバ装置、56…巻芯、70…ダンサー装置、72…支持軸、74…スイングアーム、76…ダンサーローラ、78…シリンダー、80…パスローラ、82…パスローラ、84…安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行する帯状のアルミニウムウエブを交互に巻き掛けて蓄積する複数のローラを相対移動させることによりウエブ長さを蓄積するリザーバ装置を備えた平版印刷版の製造装置において、
予め決められた一定以上の圧力で開く安全弁が備えられたシリンダーでスイングアームを動作させるダンサーローラを備え、
該ダンサーローラでは、常時前記アルミニウムウエブを蓄えておき、前記リザーバ装置内においてアルミニウムウエブに異常張力が発生する時、前記シリンダー内部の圧力変化により前記安全弁が動作し該シリンダー内部のエアが抜けてスイングアームが下がることでダンサーローラにおいて蓄えたアルミニウムウエブを全て放出し、アルミニウムウエブの異常張力を吸収することを特徴とする平版印刷版の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−46334(P2012−46334A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190931(P2010−190931)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】