説明

平版印刷版包装箱用段ボール及び平版印刷版包装構造

【課題】 段ボールの中しんの方向による強度の相対的低下が少なく、且つ低コストで平版印刷版を包装可能な平版印刷版包装用段ボールと、この平版印刷版包装用段ボールを使用した平版印刷版包装構造を得る。
【解決手段】 段ボール製の箱本体部材34の底板部40に、底板部40と中しんが直交する方向の中板36が貼着されており、底板部40の中しんに沿った方向の屈曲や変形が防止される。中板36を挟み込んで構成される底板部側保護部50と天板部側保護部52の総体での厚さ(高さ)H1が、版束12と中板36を合わせた高さHと等しくされており、従来と同様の包装工程で包装できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の版束を包装するために使用される平版印刷版包装箱用段ボールと、この平版印刷版包装箱用段ボールを使用した平版印刷版包装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の製版法(電子写真製版法を含む)では、製版工程の自動化を容易にすべく、感光性印刷版や感熱性印刷板等の平版印刷版が広く用いられている。平版印刷版は、一枚の薄い板状とされているため、角や辺、内部等に傷や変形があると、感光や感熱によって現像した際に像がぼけたり、印刷した際にインクが不均一になる等の問題が生じやすい。
【0003】
たとえば、特許文献1には、底面板及び上面板にそれぞれ隣接された底面積層板及び上面積層板を折り込んで積層部を構成する段ボール外装体が記載されている。また、特許文献2には、底部に突縁部を形成し、この突縁部を折曲して角管状とする段ボール箱が記載されている。さらに、特許文献3には、底部だけでなく、この底部の上面に被包する蓋部にも突縁部を形成した段ボール箱が記載されている。
【0004】
しかし、これらの段ボール外装体や段ボール箱は、いずれも1枚の段ボールで構成されているため、段ボールの中しんの方向に応じて、強度に方向性が生じる。すなわち、中しんと平行な方向の強度が相対的に低い。このような強度低下を防止するためには、あらかじめ強度の高い段ボールを使用することも考えられるが、コスト高を招くことになる。
【特許文献1】特開昭54−12996号公報
【特許文献2】特開昭64−45245号公報
【特許文献3】特開昭64−45246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、段ボールの中しんの方向による強度の相対的低下が少なく、且つ低コストで平版印刷版を包装可能な平版印刷版包装用段ボールと、この平版印刷版包装用段ボールを使用した平版印刷版包装構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、厚み方向に積層された複数枚の平版印刷版で構成される版束に対し、この版束の積層方向の一方の端面に対応して配置可能な底板部と、前記底板部の対向する2辺からこれら2辺を第1折曲線として延出され、この第1折曲線で底板部に対して直角に折り曲げられることで前記版束の側面に接触可能な側板部と、前記側板部の前記第1折曲線と対向する辺を第2折曲線として延出され、この第2折曲線で側板部に対して直角に折り曲げられることで版束の積層方向の他方の端面に接触可能な天板部と、前記底板部の前記第1折曲線と直交する辺を第3折曲線として底板部から延出され、この第3折曲線及び、第3折曲線と平行な1又は複数の第4折曲線で前記中板を部分的に挟み込んで折り込まれることで、前記版束の前記側板部が接触していない側面に接触配置可能な底板側保護部を構成する底板部側折込部と、前記天板部の前記第2折曲線と直交する辺を第5折曲線として天板部から延出され、この第5折曲線及び、第5折曲線と平行な1又は複数の第6折曲線で折り込まれることで、前記版束の前記側板部が接触していない側面に接触配置可能な天板側保護部を構成する天板部側折込部と、を有する段ボール製の箱本体部材と、前記底板部と前記版束との間に位置し、且つ底板部と中しんの方向が直交するように底板部に貼着された段ボール製の中板と、を備え、前記底板側保護部と前記天板側保護部の総体での高さが前記版束と前記中板とを合わせた高さと等しくなるように底板側折込部又は天板側折込部の形状が決められていることを特徴とする。
【0007】
すなわち、この平版印刷版包装用段ボールを使用して平版印刷版の版束を包装する場合には、底板部に貼着された中板に版束の一方の端面を接触配置させ、側板部を第1折曲線で折り曲げて版束の側面に接触させる。さらに、天板部を第2折曲線で折り曲げて版束の積層方向の他方の端面に接触させる。
【0008】
さらに、底板部側折込部を第3折曲線及び第4折曲線で折り曲げて底板側保護部を構成し、この底板側保護部を、版束の側面のうち側板部が接触していない側面に接触配置する。同様に、天板側折込部を第5折曲線及び第6折曲線で折り曲げて天板側保護部を構成し、この天板側保護部を、底板側保護部と同様に、版束の側面のうち側板部が接触していない側面に接触配置する。これにより、版束の側面のうち側板部が接触していない側面は、底板側保護部が底板側から、天板側保護部が天板側からそれぞれ接触して、外力に対する緩衝作用を発揮する。
【0009】
ここで、底板部と中板とは、中しんの方向が直交するように配置されている。したがって、中板がない箱本体部材のみの構成と比較して、中しんの方向による強度の相対的な低下が防止され、底板部の中しんと平行な方向への屈曲や変形が防止されている。箱本体に中板を貼着するだけであり、しかも、いずれも一般的な段ボールを使用できるので、低コストで構成できる。
【0010】
また、底板側折込部又は天板側折込部の形状は、底板側保護部と天板側保護部の総体での高さが版束の高さと等しくなるように決められている。換言すれば、底板部側折込部が中板を挟み込んでいても、底板側保護部と天板側保護部の総体での高さが中板の分だけ高く(厚く)なることはない。すなわち、底板側保護部と前記天板側保護部の総体での高さが、中板を有さない構成のものと同一となる。したがって、本発明の平版印刷版包装用段ボールで平版印刷版の版束を包装する場合、従来と同一の工程によって包装できる。たとえば、従来と同様の包装ライン(自動包装装置)を用いて、本発明の平版印刷版包装用段ボールで包装できる。
【0011】
なお、底板側保護部と天板側保護部の総体での高さを版束の高さと等しくする具体的構成としては、たとえば、請求項2に記載のように、天板部側折込部の折込回数を底板部側折込部の折込回数よりも少なくすればよい。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版包装箱用段ボールと、前記平版印刷版包装箱用段ボールで包装された平版印刷版の版束と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版包装用段ボールで平版印刷版の版束を包装しているので、低コストで、中しんの方向による強度の相対的な低下が防止され、底板部の中しんと平行な方向への屈曲や変形が防止される。包装された平版印刷版の変形も防止できる。
【0014】
また、従来と同一の工程(包装ライン)を用いて、この平版印刷版包装構造を構成できる。
【0015】
なお、本発明において、底板部と中板とで中しんの方向が「直交」しているとは、厳密に直交している(成す角が90度になっている)場合を含むのはもちろんであるが、上記にように底板部の中しんに沿った方向の強度低下を防止できればよく、たとえば、成す角が90±45度程度の範囲で斜めに交差しているものも含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、段ボールの中しんの方向による強度の相対的低下が少なく、且つ低コストで平版印刷版を包装できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図3には、本発明の第1実施形態の平版印刷版包装構造32が示されている。また、図1には、この平版印刷版包装構造32において、平版印刷版包装用段ボール30を構成する箱本体部材34及び中板36が示されている。平版印刷版包装構造32は、平版印刷版10が厚み方向に積層された版束12を、箱本体部材34及び中板36で形成される外装箱38で包装したものである。
【0018】
平版印刷版10は、長方形の板状に形成された薄いアルミニウム製の支持体上に、塗布膜(感光性印刷版の場合には感光層、感熱性印刷版の場合には感熱層、さらに必要に応じて、オーバーコート層やマット層等)を塗布して形成されている。この塗布膜に、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされ、インクが塗布されることで、紙面に文字、画像等が印刷される。なお、本実施形態の平版印刷版10は、印刷に必要な処理(露光や現像等)が施される前段階のものであり、場合によっては平版印刷版原版あるいは平版印刷版材と称されることもある。
【0019】
なお、このような構成とされていれば、平版印刷版10の具体的構成は特に限定されないが、例えば、ヒートモード方式およびフォトン方式のレーザ刷版用の平版印刷版とすることによって、デジタルデータから直接製版可能な平版印刷版とすることができる。
【0020】
また、平版印刷版10は、感光層又は感熱層中の成分を種々選択することによって、種々の製版方法に対応した平版印刷版とすることができる。本発明に係る平版印刷版10の具体的態様の例としては、下記(1)〜(11)の態様が挙げられる。
(1) 感光層が赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、および酸によって架橋する化合物を含有する態様。
(2) 感光層が赤外線吸収剤、および熱によってアルカリ溶解性となる化合物を含有する態様。
(3) 感光層が、レーザ光照射によってラジカルを発生する化合物、アルカリに可溶のバインダー、および多官能性のモノマーあるいはプレポリマーを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む態様。
(4) 感光層が、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との2層からなる態様。
(5) 感光層が、多官能性モノマーおよび多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤を含有する層と、酸素遮断層との3層を含む態様。
(6) 感光層が、ノボラック樹脂およびナフトキノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む態様。
(7) 感光層が、有機光導電体を含む態様。
(8) 感光層が、レーザー光照射によって除去されるレーザー光吸収層と、親油性層および/または親水性層とからなる2〜3層を含む態様。
(9) 感光層が、エネルギーを吸収して酸を発生する化合物、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物、および可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有する態様。
(10) 感光層が、キノンジアジド化合物と、ノボラック樹脂とを含有する態様。
(11) 感光層が、光又は紫外線により分解して自己もしくは層内の他の分子との架橋構造を形成する化合物とアルカリに可溶のバインダーとを含有する態様。
【0021】
特に、近年では、レーザーで露光する高感度感光タイプの塗布膜を塗布した平版印刷版や、感熱タイプの平版印刷版が使用されることもある(例えば上記した(1)〜(3)の態様等)。
【0022】
なお、ここでいうレーザー光の波長は特に限定されず、例えば、
(A) 波長域350〜450nmのレーザー(具体例としては、波長405±5nmのレーザーダイオード)。
(B) 波長域480〜540nmのレーザー(具体例としては、波長488nmのアルゴンレーザー、波長532nmの(FD)YAGレーザー、波長532nmの固体レーザー、波長532nmの(グリーン)He−Neレーザー)。
(C) 波長域630〜680nmのレーザー(具体例としては、波長630〜670nmのHe−Neレーザー、波長630〜670nmの赤色半導体レーザー)。
(D) 波長域800〜830nmのレーザー(具体例としては、波長830nmの赤外線(半導体)レーザー)。
(E) 波長1064〜1080nmのレーザー(具体例としては、波長1064nmのYAGレーザー)。
【0023】
等を挙げることができる。これらのうち、例えば、(B)及び(C)の波長域のレーザー光はいずれも、上記した(3)又は(4)の態様の感光層又は感熱層を有する平版印刷版の双方に適用可能である。また、(D)及び(E)の波長域のレーザー光はいずれも、上記した(1)又は(2)の態様の感光層又は感熱層を有する平版印刷版の双方に適用可能である。もちろん、レーザー光の波長域と感光層又は感熱層との関係はこれらに限定されない。
【0024】
また、本実施形態の平版印刷版10(上記した(1)〜(11)の全ての態様の平版印刷版)は、版束12を構成した状態で自動給版機能を持った自動製版機やいわゆるプレートセッター等にセットされ、製版工程への供給(給版)されることがある平版印刷版とされている。但し、実際の使用状況において、平版印刷版の使用者が平版印刷版10を自動給版機構によって給版するか、手動で給版するか等の使い方に左右されない。もちろん、(1)〜(11)以外の態様の平版印刷版であっても、自動給版機能を持った自動製版機やいわゆるプレートセッター等にセットされ、製版工程への供給(給版)される可能性がある平版印刷版は、全て本実施形態に係る平版印刷版10に含まれる。
【0025】
さらに、平版印刷版のなかには、使用される印刷機によって紙面の都合上、インクを塗布しない位置(すなわち印刷されない領域)にセットされて使用される、いわゆる「捨て版」あるいは「空版」と称されるものもある。このようは捨て版あるいは空版も、本実施形態に係る平版印刷版10に含まれる。
【0026】
平版印刷版10の形状等は特に限定されず、例えば、厚み0.1〜0.5mm、長辺(幅)300〜2050mm、短辺(長さ)200〜1500mmのアルミニウム板の片面又は両面に塗布膜(感光層あるいは感熱層等)が塗布されたもの等とすることができる。
【0027】
そして、図1から分かるように、塗布膜を保護する合紙14と、平版印刷版10と、を交互に厚み方向に重ね合わせて、さらに重ね合わせ方向の両端面、あるいは平版印刷版10の所定枚数ごとに保護用厚紙22を配置する。そして、これら全体を、遮光性、防湿性を有する図示しない内装紙で内装して、平版印刷版10の版束12が構成されている。1つの版束12を構成する平版印刷版10の数は特に限定されないが、運搬や保管の効率化の観点等から、例えば10枚〜200枚とすることができる。平版印刷版10を10枚以上とすることで、荷扱いの効率化を図ることができる。また、200枚以下とすることで、版束12自体の重量が制限されることになるので、荷扱いにおける作業負荷が軽減される。また、さらに多くの平版印刷版10によって版束12を構成し、より効率的に(少ない荷扱いの回数で)運搬や保管をできるようにすることも可能である。平版印刷版10の種類によっては、合紙14及び保護用厚紙22のいずれか一方若しくは双方を省略して、平版印刷版10の版束12を構成してもよい。
【0028】
なお、平版印刷版の種類によっては、支持体の片面だけでなく、両面に塗布膜が設けられたもの(いわゆる「両面品」)がある。このような両面品の平版印刷版によって版束12を構成する場合には、図1において最も下側の平版印刷版10のさらに下(平版印刷版10と保護用厚紙22の間)にも合紙14を1枚配置する(従って、合紙14は平版印刷版10よりも1枚多くなる)。これにより、平版印刷版10の塗布膜が保護用厚紙22に直接接触しなくなるので、塗布膜と保護用厚紙22とが直接接触することによる塗布膜の損傷が防止される。
【0029】
合紙14としては、平版印刷版10の塗布膜(画像形成面)を保護できれば、具体的構成は特に限定されないが、例えば、木材パルプを100%使用した紙や、木材パルプを100%使用せず合成パルプを使用した紙、及びこれらの紙の表面に低密度ポリエチレン層を設けた紙等を使用できる。特に、合成パルプを使用しない紙では、材料コストが低くなるので、低コストで合紙14を製造することができる。より具体的には、漂白クラフトパルプから抄造した坪量30〜60g/m2 、密度0.7〜0.85g/cm3 、水分4〜8%、PH4〜6の合紙が挙げられるが、もちろんこれに限定されない。
【0030】
また、保護用厚紙22としては、故紙から抄造した坪量200〜1500g/m2、密度0.7〜0.85g/cm3、水分4〜8%、ベック平滑度3〜20秒、PH4〜6の保護用厚紙22を使用することができる。なお、例えば10枚〜100枚の平版印刷版10によって版束12を構成した場合には、平版印刷版10と保護用厚紙22とがずれないように、粘着テープ等の固定手段でこれらを固定してもよい。
【0031】
平版印刷版10を厚み方向に積層して版束12を構成する工程も特に限定されないが、例えば、ウエブ状の平版印刷版を長手方向に搬送しつつ所定のサイズに裁断する平版印刷版の加工ラインでは、平版印刷版10を順次集積する集積装置が設けられることが一般的であるので、この集積装置で集積することで、版束12を構成すればよい。また、この加工ラインでは、裁断前のウエブ状の平版印刷版に、同じくウエブ状の合紙が接触配置され、その後にウエブ状の平版印刷版と合紙とが一体で裁断されて所定サイズとされることが多いので、この場合には、集積装置での集積時に、平版印刷版10と合紙14とが交互に積層された状態で版束12が構成される。もちろん、平版印刷版10と合紙14とを交互に積層したのち、さらにカッタ等によって平版印刷版10の端部を切りそろえて、版束12を構成してもよい。
【0032】
図1及び図2に示すように、箱本体部材34は1枚の段ボールで構成されており、版束12を構成する平版印刷版10の積層方向の一方の端面(底面12B)と略同形とされた底板部40を有している。図1から分かるように、箱本体部材34は、底板部40の長辺(すなわち平版印刷版10の長辺)と中しんとが平行となるようにその向きが決められている。この2本の長辺はいずれも第1折込線L1となっており、第1折込線L1を境界として底板部40から側板部42が延出されている。側板部42は、版束12の側面に接触する形状とされている。
【0033】
それぞれの側板部42からは、第1折込線L1と対向する辺を第2折込線L2として、天板部44が延出されている。2枚の天板部44は、それぞれの先端44Tをつき合わせることで、版束12の他方の端面(天面12T)に、天面12Tを覆うことができる形状とされている。
【0034】
底板部40の、側板部42が延出されていない2つの辺は第3折込線L3とされており、第3折込線L3を境界として、底板部側折込部46が延出されている。底板部側折込部46には、第3折込線L3と平行な1又は複数本(本実施形態では1本)の第4折込線L4が所定位置に形成されており、第3折込線L3及び第4折込線L4で順に直角に折り曲げることができる。
【0035】
また、底板部40には、図4にも示すように、版束12を包装した状態で、版束12の底面12Bと底板部40との間に位置する中板36が貼着されている。そして、中板36の長手方向の端部近傍36Eを挟み込むようにして底板部側折込部46を第3折込線L3及び第4折込線L4で略直角に折り込むことで、底板部側保護部50が構成される。底板部側保護部50は、版束12の、側板部42が接触していない側面に底面12B側から部分的に接触している。
【0036】
これに対し、2つの天板部44では、第2折込線L2とされていないそれぞれ2本、合計4本の辺が第5折込線L5とされており、第5折込線L5を境界として、天板部側折込部48が延出されている。天板部側折込部48には、第5折込線L5と平行な複数本(本実施形態では2本)の第6折込線L6が所定位置に形成されており、第5折込線L5及び第6折込線L6で順に直角に折り込むことで、図4にも示すように、天板部側保護部52が構成される。底板部側保護部50も、版束12の、側板部42が接触していない側面に底面側から部分的に接触している。すなわち、版束12の、側板部42が接触していない側面には、底板部側保護部50と天板部側保護部52とがそれぞれ上下から突き合せれるようにして接触している。そして底板部側保護部50と天板部側保護部52とによって、外力に対する緩衝作用を発揮している。したがって、外力が底板部側保護部50又は天板部側保護部52によって吸収され、版束12の平版印刷版10に作用しないので、平版印刷版10の損傷や変形が防止される。
【0037】
ここで、図2に示すように、底板部側折込部46の底板部40からの延出長E1は、天板部側折込部48の天板部44からの延出長E2よりも短くされている。さらに、第4折込線L4の数も、第6折込線L6の数よりも1本少なくされて、折込回数が1回少なくなっている。そしてこれにより、中板36の端部近傍36Eを挟み込んで構成される底板部側保護部50の厚みが、中板36をはさみこまない天板部側保護部52と同一の厚みT1を有するようになっている(これに対し、底板部側折込部46の延出長E1を天板部側折込部48の延出長E2と同一とし、さらに折込回数も同一としてしまった構成では、中板36の分だけ底板部側保護部50が厚くなってしまう)。そして、底板部側保護部50と天板部側保護部52の総体での厚さ(高さ)H1が、版束12と中板36を合わせた高さHと等しくされている。
【0038】
以上の構成とされた本願の平版印刷版包装用段ボール30を使用して平版印刷版10の版束12を包装する場合には、まず、中板36の端部近傍36Eを挟み込むようにして底板部側折込部46を第3折込線L3及び第4折込線L4で略直角に折り込み、底板部側保護部50を構成する。同様に、天板部側折込部48を第5折込線L5及び第6折込線L6で順に直角に折り込んで、天板部側保護部52を構成する。
【0039】
そして、中板36上に版束12を載置した後、第1折込線L1で側板部42を底板部40に対し直角に折り込むと共に、第2折込線L2で天板部44を側板部42に対し直角に折り込む。これにより、側板部42は版束12の側面に接触し、天板部44は、版束12の天面に接触すると共に、互いの先端44Tが線状に接触する。この状態で、図3に示すように、外装箱38が構成されるので、必要に応じて、図示しない粘着テープ等を使用して、箱形状を維持する。版束12は、底板部40(中板36を含む)、側板部42、天板部44、底板部側保護部50及び天板部側保護部52によって周囲を覆われて、本発明の平版印刷版包装構造32が得られている。
【0040】
ここで、図4に示すように、版束12の底面12B側には、中板36及び底板部40が位置しているが、それぞれの中しんの方向は直交している。一般に段ボールは中しんと平行な方向の強度が低く、中しんに沿って直線状に屈曲しやすい。しかし、本実施形態のように中しんが直交していると、中板36がない構成と比較して、底板部40の中しんに沿った方向の強度低下が、中板36によって補われる。これにより、底板部40の中しんに沿った方向の屈曲や変形が防止されるので、包装された版束12の平版印刷版10に関しても、屈曲や変形が防止される。このように、本発明では中板36を追加するのみで、上記の屈曲や変形を防止されるため、コスト高を招くことははく、低コストで平版印刷版10の版束12を包装できる。
【0041】
また、平版印刷版10を外装箱38から取り出す場合には、図5に示すように、平版印刷版10の長辺10Lが床面FLと平行になるようにして、外装箱38を壁面WO等に斜めに立てかけることがある。このとき、中板36が貼着されていない外装箱では、天板部44を開放した状態で、二点鎖線で示すように底板部が湾曲あるいは屈曲してしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、中板36の中しんの方向が床面FLと直交する方向(略鉛直方向)となっているので、このような底板部の湾曲や屈曲も防止できる。
【0042】
しかも、本実施形態では、上記したように、中板36を含んで底板部側保護部50を構成しても、その厚さ、ひいては底板部側保護部50と天板部側保護部52をの総体での厚さを、版束12の高さHと等しくしている。これにより、従来と同様の包装工程によって外装箱38を組み立てて版束12を包装できる。たとえば、従来と同様の包装ライン(自動包装装置)を用いての包装や取り扱いも可能となる。
【0043】
なお、底板部側保護部50を構成するために底板部側折込部46を折り込む回数は特に制限されないが、本実施形態では、2つの折込線で折り込むようにしている。実質的には、図4からも分かるように、底板部側折込部46の先端部分を底板部40に向かって折り返すのみでよく、1回の折り込みで簡単に底板部側保護部50が構成できる。
【0044】
同様に、天板部側保護部52を構成するために天板部側折込部48を折り込む回数も特に制限されないが、天板部側保護部52が中板36を挟み込んでいないことを考えると、中板36に相当する厚みを得るために、底板部側折込部46よりも1回多い折り込み回数で折り込めばよいだけなので、簡単に天板部側保護部52も構成できる。特に、自動包装機等を使用する場合には、折り込み回数が制限されることがあるが、本実施形態の平版印刷版包装用段ボール30を使用すると、このような制限があっても問題なく包装できる。
【0045】
また、本発明において、中板36に加えて、箱本体部材34と中しんの方向が直交する新たな段ボールを配置してもよいが、このような新たな段ボールを追加しなくても、本発明では底板部40に中板36を貼着することのみで十分な強度が得られる。すなわち本発明では実質的に、補強が必要とされる箇所にのみ、中板36によって十分な強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の平版印刷版包装用段ボールを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の平版印刷版包装用段ボールの箱本体部材を示す展開図である。
【図3】本発明の第1実施形態の平版印刷版包装用段ボールで平版印刷版の版束を包装(外装)した平版印刷版包装構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の平版印刷版包装構造の内部を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態の平版印刷版包装構造において斜めに立てかけた外装箱を開封した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 平版印刷版
10L 長辺
12 版束
14 合紙
22 保護用厚紙
30 平版印刷版包装用段ボール
32 平版印刷版包装構造
34 箱本体部材
36 中板
38 外装箱
40 底板部
42 側板部
44T 先端
44 天板部
46 底板部側折込部
48 天板部側折込部
50 底板部側保護部
52 天板部側保護部
L1 第1折込線
L2 第2折込線
L3 第3折込線
L4 第4折込線
L5 第5折込線
L6 第6折込線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に積層された複数枚の平版印刷版で構成される版束に対し、この版束の積層方向の一方の端面に対応して配置可能な底板部と、
前記底板部の対向する2辺からこれら2辺を第1折曲線として延出され、この第1折曲線で底板部に対して直角に折り曲げられることで前記版束の側面に接触可能な側板部と、
前記側板部の前記第1折曲線と対向する辺を第2折曲線として延出され、この第2折曲線で側板部に対して直角に折り曲げられることで版束の積層方向の他方の端面に接触可能な天板部と、
前記底板部の前記第1折曲線と直交する辺を第3折曲線として底板部から延出され、この第3折曲線及び、第3折曲線と平行な1又は複数の第4折曲線で前記中板を部分的に挟み込んで折り込まれることで、前記版束の前記側板部が接触していない側面に接触配置可能な底板側保護部を構成する底板部側折込部と、
前記天板部の前記第2折曲線と直交する辺を第5折曲線として天板部から延出され、この第5折曲線及び、第5折曲線と平行な1又は複数の第6折曲線で折り込まれることで、前記版束の前記側板部が接触していない側面に接触配置可能な天板側保護部を構成する天板部側折込部と、
を有する段ボール製の箱本体部材と、
前記底板部と前記版束との間に位置し、且つ底板部と中しんの方向が直交するように底板部に貼着された段ボール製の中板と、
を備え、
前記底板側保護部と前記天板側保護部の総体での高さが前記版束と前記中板とを合わせた高さと等しくなるように底板側折込部又は天板側折込部の形状が決められていることを特徴とする平版印刷版包装箱用段ボール。
【請求項2】
前記天板部側折込部の折込回数を前記底板部側折込部の折込回数よりも少なくすることで、前記底板側保護部と前記天板側保護部の総体での高さを前記版束の高さと等しくされていることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版包装箱用段ボール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版包装箱用段ボールと、
前記平版印刷版包装箱用段ボールで包装された平版印刷版の版束と、
を有することを特徴とする平版印刷版包装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−36228(P2006−36228A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214655(P2004−214655)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】