説明

平版印刷版材料および平版印刷方法

【課題】本発明の目的は、印刷時の刷り出し性に優れ、異物耐性に優れ、かつ耐刷性に優れた機上現像可能な平版印刷版材料を提供することにある。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上に、印刷機上現像可能な感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層がポリビニルピロリドンを含有し、該感熱画像形成層または該感熱画像形成層に隣接する層に光熱変換剤を含有することを特徴とする平版印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版材料に関し、詳しくは感熱画像形成層を有し、コンピューター・トゥ・プレート(CTP)方式に用いられる平版印刷版材料に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機に適用可能であり、又、PS版と同等の使い勝手を有する汎用タイプのサーマルプロセスレス印刷版への期待が高まっている。
【0003】
近年、印刷版材料は、現像処理が必要ない所謂プロセスレス印刷版が実用化され始めている。例えば、特開平7−1849号公報、同7−164773号公報、同9−123387号公報、同10−193823号公報にプロセスレス印刷版が開示されている。
【0004】
これらプロセスレス印刷版は自動現像処理機を必要とせず、プレートセッターで露光した後、直接、印刷機に設置して印刷することが可能である。しかしながら、この様な印刷版材料は、画像形成層を硬化させるのに十分なエネルギーを与えることが難しく、そのため画像形成層の硬度が弱くなってしまい、従来使用されて来たPS版やサーマルプレート等に比べて、耐刷性が低下し、また衝撃や異物に対して版面が傷付き易くなり、取り扱い時における傷に対して弱いことが指摘されていた。
【0005】
この点を改善するために、支持体上に、レーザー光を熱に変換する化合物を含有する光熱変換層、及び、金属キレート化合物により架橋された親水性ポリマーを含有する親水性層を順次、積層する技術(特許文献1参照)、親水性画像形成層の上に水溶性のセルロース類を含有するオーバーコート層を有する技術(特許文献2参照)、疎水性化前駆体を含有する親水性感熱層及び疎水性オーバーコート層を有する技術(特許文献3参照)などが開示されるが、これらの傷改良方法では未だ十分ではなく、従来の印刷版同等の作業性、耐刷性には及ばないという問題があった。
【特許文献1】特開2001−92115号公報
【特許文献2】特開2002−19318号公報
【特許文献3】特開2004−237605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、印刷時の刷り出し性に優れ、異物耐性に優れ、かつ耐刷性に優れた機上現像可能な平版印刷版材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的は、以下の構成により達成された。
1.親水性表面を有する支持体上に、印刷機上現像可能な感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層がポリビニルピロリドンを含有し、該感熱画像形成層または該感熱画像形成層に隣接する層に光熱変換剤を含有することを特徴とする平版印刷版材料。
2.前記光熱変換剤が黒色顔料であることを特徴とする1に記載の平版印刷版材料。
3.前記黒色顔料の主成分が金属酸化物であることを特徴とする2に記載の平版印刷版材料。
4.前記感熱画像形成層が水溶性の重合性化合物を含有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版材料。
5.1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版材料を画像露光し、機上現像を行い、印刷することを特徴とする平版印刷方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記構成により、刷り出し時の損紙が少なく刷り出し性に優れ、異物からの衝撃、取り扱いによる傷、擦過に対して、現像不良や白抜け等の印刷故障が起こりにくく異物耐性に優れ、かつ耐刷性に優れた平版印刷版材料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について説明する。
【0010】
本発明は、親水性表面を有する支持体上に、印刷機上現像可能な感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層がポリビニルピロリドンを含有し、該感熱画像形成層または該感熱画像形成層に隣接する層に光熱変換剤を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明は特に、感熱画像形成層にポリビニルピロリドンを含有させることにより、印刷時刷り出し時の損紙が少なく刷り出し性に優れ、異物からの衝撃、取り扱いによる傷、擦過に対して、現像不良や白抜け等の印刷故障が起こりにくく異物耐性に優れ、かつ耐刷性に優れた平版印刷版材料が提供できる。
【0012】
(支持体)
本発明に係る親水性表面を有する支持体とは、印刷時、感熱画像形成層が除去された部分が水受容性となり非画像部となり得る表面を有する支持体であり、支持体表面を親水化処理し、親水性の表面層を有する支持体、親水性物質を含む親水性層を設けた支持体を用いることができる。
【0013】
本発明に係る支持体としては、表面形状が本発明で規定する範囲にあれば、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができ、例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合支持体等が挙げられる。
【0014】
支持体の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0015】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、本発明においては、比重と剛性との関係から、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下両者含めてアルミニウム板と称する)が好ましく、加えて、公知の粗面化処理、陽極酸化処理、表面親水化処理のいずれかの処理がなされたもの(所謂アルミ砂目板)がより好ましい。
【0016】
本発明に係る支持体として用いるアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0017】
本発明に係る支持体として用いられるアルミニウム板は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0018】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0019】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0020】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号公報、英国特許第896,563号公報、特開昭53−67507号公報に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることが出来るが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることが出来るが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
【0021】
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0022】
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000C/dm2、更には200〜1000C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0023】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
【0024】
これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0025】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0026】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことが好ましい。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0027】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0028】
更に、これらの処理を行った後に、親水化処理として、水溶性の樹脂、例えば、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0029】
支持体として用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等のフィルムを挙げることができる。
【0030】
本発明では、これらのプラスチックフィルムのうち、特にポリエチレンテレフタレート(以降、略してPETという場合がある)、ポリエチレンナフタレート(以降、PENと略すことがある)などのポリエステルフィルムが支持体として好ましく用いらる。
【0031】
さらに特開平10−10676号に記載の方法で得られた120℃30秒での熱寸法変化率が0.001%以上0.04%以下の支持体を用いることが好ましい。
【0032】
好ましいポリエステルフィルムとしては、未延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムである。
【0033】
このうちフィルムの押出し方向(縦方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0034】
(支持体への下引き層塗布)
ポリエステルフィルム支持体においては、各種の機能を持たせるために易接着処理や下引き層塗布を行うことができる。
【0035】
易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0036】
下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等をポリエステルフィルム支持体上に設けること等が好ましい。その中でも特開平7−191433号段落番号0044〜0116に記載の帯電防止下塗り層が好ましく用いられる。又特開平7−20596号公報段落番号0031〜0073に記載の導電性ポリマー含有層や特開平7−20596号公報段落番号0074〜0081に記載の金属酸化物含有層のような導電性層を設けることが好ましい。導電性層はポリエステルフィルム支持体上であればいずれの側に塗設されてもよいが、好ましくは支持体に対し画像形成機能層の反対側に塗設するのが好ましい。この導電性層を設けると帯電性が改良されてゴミなどの付着が減少し、印刷時の白抜け故障などが大幅に減少する。
【0037】
(親水性層)
本発明においては、支持体として上記のようなプラスチックフィルムを用いる場合には、支持体上に親水性層を設けて親水性表面を有する支持体とする。
【0038】
この場合、親水性層は、多孔質構造を有することが好ましい。
【0039】
多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0040】
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。
【0041】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0042】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0043】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0044】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0045】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0046】
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。
【0047】
(多孔質金属酸化物粒子)
多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子又は、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0048】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法又は、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0049】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0050】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0051】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0052】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。
【0053】
又、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0054】
又、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0055】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。又、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0056】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0057】
親水性層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0058】
又、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0059】
又、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0060】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0061】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0062】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0063】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。又、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0064】
又、親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系又は、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0065】
又、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0066】
(機上現像可能な感熱画像形成層)
本発明に係る機上現像可能な感熱画像形成層とは、画像露光後特に現像工程を経ることなく、印刷工程に供した時点で、即ち印刷準備段階で湿し水、または湿し水と印刷インクにより、印刷時に非画像部となる部分の画像形成層が除去されて、印刷可能な画像が形成され得る感熱画像形成層のことをいう。
【0067】
本発明に係る感熱画像形成層(以下単に画像形成層と略記する場合もある)は、画像露光により画像形成可能な層であり、画像露光光を熱に変換する光熱変換剤を含む層の発熱により画像形成可能な感熱画像形成層である。
【0068】
光熱変換剤を含む層は、本発明に係る感熱画像形成層か、または感熱画像形成層に隣接する層である。
【0069】
隣接する層としては、感熱画像形成層の支持体側に設けられた親水性層あるいは感熱画像層の支持体と反対側に設けられた保護層などがある。本発明においては、隣接する層が親水性層である場合が特に好ましい。
【0070】
感熱画像形成層としては、特に露光部の画像形成層が熱によって親水性層上に固着される方向へと変化する、いわゆるネガ型画像形成層が好ましく用いられる。
【0071】
本発明に係る感熱画像形成層にはポリビニルピロリドン(以下PVPと表記する)を含有することが必要である。
【0072】
本発明はPVPを画像形成の手段として用いることに特徴がある。同時に、PVPは画像形成層に含有される他の素材を保持する役割も担う。PVPは冷水に容易に溶け、150℃まで加熱されると自己架橋する性質を持つが、この特性が、機上現像が可能であり、かつ耐刷性、刷りだし性、耐傷性が良好な要因と推測される。
【0073】
即ち、本発明においては、画像露光での加熱により、架橋しうるPVPを含む態様が好ましく、上記の本発明の構成1から4に記載の平版印刷版材料を画像露光して、PVPを自己架橋させる画像形成方法が好ましい態様である。
【0074】
本発明に係るPVPのとしては、刷りだし性、耐刷性の面から重量平均分子量(Mw)が2,500〜3,000,000が好ましく、6,000〜2,000,000がより好ましい。
【0075】
PVPの感熱画像形成層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%であることが好ましく、特に50質量%〜90質量%であることが好ましい。
【0076】
また、感熱画像形成層には以下のような素材を含有させてもよい。
【0077】
軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下のワックス、水溶性素材である糖類、ポリアクリル酸、及びその塩類である。ワックスは水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0078】
糖類としては、印刷適正の面から、オリゴ糖が好ましく用いられる。
【0079】
オリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいい、層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。ポリアクリル酸、及びその塩類も同様の効果を発揮し、親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。
【0080】
また、本発明の感熱画像形成層は水溶性の重合性化合物を含有することが好ましい。
【0081】
重合性化合物は、画像露光による光、あるいは熱で重合し得るものであり、耐刷性の面から特に水溶性の重合性単量体が好ましい。
【0082】
本発明で用いられる水溶性の重合性単量体(モノマー)としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えばカルボキシル基含有モノマー、スルホン基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩などであって、得られる重合体の側鎖に極性基を導入しうるモノマーを好ましく用いることができる。
【0083】
例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステルマレイン酸モノオクチルエステル、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドプロピルスルホン酸、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、オキシアルキレン変性グリセリンアクリレート類などが挙げられる。
【0084】
(光熱変換剤)
上記のように本発明に係る光熱変換剤は、感熱画像形成層あるいは親水性層などの感熱画像形成層に隣接する層に含有される。
【0085】
光熱変換素材としては赤外吸収色素または顔料を用いることができるが顔料が好ましく用いられる。
【0086】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられが特に、カーボンブラック、黒色金属酸化物などの黒色顔料が好ましい。
【0087】
カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0088】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0089】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でもよい。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0090】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0091】
本発明においては、黒色顔料が主成分として金属酸化物を含有することが特に好ましい態様である。
【0092】
可視光域で黒色を呈している素材としては、黒色酸化鉄(Fe34)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号の各公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0093】
本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。但し、添加量に対する光熱変換能は粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると、分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0094】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0095】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素及び金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0096】
これらの光熱変換素材の添加量としては、これを含む層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0097】
(赤外吸収色素)
赤外吸収色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。
【0098】
具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号、同7−43851号、同7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
親水性は複数層から構成されていてもよい。
【0100】
例えば、親水性層下層(支持体に、より近い親水性層)を設ける場合には、親水性層下層に用いる素材としては、上記親水性層と同様の素材を用いることができる。
【0101】
ただし、下層は多孔質であることの利点が少なく、また、より無孔質である方が塗膜強度が向上するといった理由から、親水性マトリクスの多孔質化材の含有量は親水性層よりも少ないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0102】
粒径が1μm以上の粒子を含有する場合、粒子の添加量としては、下層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0103】
下層全体としても親水性層と同様に、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0104】
(画像形成)
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるが、特に赤外線レーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0105】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0106】
走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0107】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0108】
(機上現像方法および印刷方法)
本発明の平版印刷方法では、本発明の平版印刷版材料画像し、機上現像を行い、印刷する。
【0109】
本発明に係る感熱画像形成層の露光部は、親油性の画像部となり、未露光部が除去されて親水性の非画像部となる。
【0110】
未露光部の除去は、水洗によっても可能であるが、印刷機上で湿し水およびまたはインキを用いて除去する、いわゆる機上現像することが好ましい。
【0111】
印刷機上での画像形成層の未露光部の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインキローラーを接触させて行うことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行うことができる。また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、インキローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
(2) 印刷開始のシークエンスとして、インキローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
(3) 印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインキローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0112】
本発明にの平版印刷方法に用いられる印刷機としては、湿し水供給装置を備えた、従来の平版印刷機を使用することができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0114】
《ポリエステル支持体の作製》
(支持体1の作製)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0115】
これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
【0116】
これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。次いで、テンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。
【0117】
この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後47.1N/mで巻き取った。このようにして厚さ190μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体1)を得た。
【0118】
この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのガラス転移温度(Tg)は79℃であった。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0119】
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体のフィルムの両面に、8W/m2/minのコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記の下引き塗布液aをWet膜厚10μmになるように塗設後に180℃、4分間乾燥させた。ついでその上にコロナ放電処理(8W/m2/min)を行いながら下記の下引き塗布液bをWet膜厚11μmになるように塗布し、180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記の下引き塗布液cをWet膜厚8μmになるように塗設後180℃、4分間乾燥させ、ついでその上にコロナ放電処理(8W/m2/min)を行いながら下記の下引き塗布液dをWet膜厚5μmになるように塗布し、180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。
【0120】
(下引き塗布液a)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系共重合ラテックス 固形分30質量% Tg=75℃ 21.00質量部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス固形分30質量% Tg=75℃ 5.60質量部
アニオン系界面活性剤S−1 0.6質量部
純水 73.00質量部
(下引き塗布液b)
ポリビニルアルコール 固形分5質量% 平均分子量1700 5.76質量部
水溶性コポリエステル/アクリル成分=64/36のアクリル変性ポリエステル固形分21.7質量% 3.10質量部
アニオン系界面活性剤S−1 0.011質量部
マット剤(シリカ平均粒径0.5μ) 0.004質量部
硬膜剤H−2 0.058質量部
純水 91.06質量部
(下引き塗布液c)
酸化スズゾル 固形分8.3質量% 10.95質量部
n−ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート=40/20/40の3元系共重合ラテックス 固形分30質量% 1.51質量部
n−ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート、スチレン、ヒドロキシメチルメタアクリレート=10/35/27/28の4元系共重合ラテックス 固形分30質量%
0.38質量部
アニオン系界面活性剤S−1 0.05質量部
純水 87.11質量部
(下引き塗布液d)
水溶性コポリエステル/アクリル成分=80/20のアクリル変性ポリエステル 固形分17.8質量% 14.34質量部
アニオン系界面活性剤S−1 0.11質量部
マット剤(シリカ平均粒径0.5μ) 0.20質量部
純水 85.35質量部
(バックコーティング層の調液)
コロイダルシリカ: スノーテックス−XS(日産化学社製、固形分20質量%)
33.60質量部
アクリルエマルション:DK−05(岐阜セラック社製、固形分48質量%)
14.00質量部
マット剤(PMMA平均粒径5.5μ) 0.56質量部
純水 51.84質量部
固形分濃度 14質量%
これらの組成をホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、濾過してバックコーティング層塗布液を作製した。
【0121】
【化1】

【0122】
バックコーティング層の塗布
バックコーティング層の塗布液を上記支持体下引き面B側に、8W/m2/minのコロナ放電処理を施しにワイヤーバー#6を用いて下引き済みサンプルに塗布し15mの長さの100℃に設定押された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させた。バックコーティング層の付量は2.0g/m2であった。
【0123】
(支持体2の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0124】
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に5秒間の休止時間を設けた。
【0125】
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマット含めた溶解量が1.2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0126】
次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0127】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた1質量%のリン酸二水素ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、支持体を得た。支持体のRaは460nmであった(WYKO社製RST Plusを使用し、40倍で測定した)。
【0128】
(親水性層(上層)塗布液の調液)
コロイダルシリカ(アルカリ系):スノーッテックス−XS(日産化学社製、固形分20質量%) 51.94質量部
多孔質金属酸化物:シルトンJC−40(水沢化学社製、多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径4μm) 2.22質量部
層状粘土鉱物モンモリロナイト:ミネラルコロイドMO(Southerm Clay Products社製、平均粒径0.1μm)をホモジナイザで強攪拌して5質量%の水膨潤ゲルとしたもの 4.44質量部
Cu−Fe−Mn系金属酸化物黒色顔料:TM−3550ブラック粉体(大日精化工業社製、粒径0.1μm程度)の固形分40%(うち0.2%質量%は分散材)水分散物
10.00質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学社製試薬)の4質量%の水溶液
2.80質量部
リン酸三ナトリウム・12水和物(関東化学社製)の10質量%の水溶液
0.56質量部
純水 25.04質量部
固形分濃度 20質量%
これらの組成をホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、濾過して親水性層(上層)塗布液を作製した。
【0129】
(下層親水性層塗布液の調液)
(A−1)
コロイダルシリカ(アルカリ系):スノーテックス−S(日産化学社製、固形分30質量%) 5.2質量部
ネックレス状コロイダルシリカ(アルカリ系):スノーテックス−PSM(日産化学社製、固形分20質量%) 11.7質量部
コロイダルシリカ(アルカリ系):MP−4540(平均粒径0.4μm日産化学社製、固形分30質量%) 4.5質量部
多孔質金属酸化物粒子 シルトンJC−20(水澤化学社製、多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径2μm) 1.2質量部
多孔質金属酸化物粒子シルトンAMT08(水澤化学社製、多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径0.6μm) 3.6質量部
表面シリカ被覆粒子:STM−6500S(日産化学社製、平均粒径6.5μm)
10.00質量部
層状鉱物粒子 モンモリロナイト: ミネラルコロイドMO(Southern Clay Products社製,平均粒径0.1μm程度)をホモジナイザで強攪拌して5質量%の水膨潤ゲルとしたもの 4.8質量部
Cu−Fe−Mn系金属酸化物黒色顔料:TM−3550ブラック粉体(大日精化工業社製、粒径0.1μm程度)の固形分40質量%(うち0.2質量%は分散材)水分散物 2.7質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学社製試薬)の4質量%水溶液
3.0質量部
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学社製試薬)の10質量%の水溶液
0.6質量部
純水 62.7質量部
固形分濃度 12質量%
これらの組成をホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、濾過して下層親水性層塗布液を調製した。
【0130】
下層親水性層、親水性層(上層)の塗布
下層親水性層塗布液を上記バックコーティング層を塗布済みの支持体の裏面(下引き塗布面A)にワイヤーバー#5を用いて塗布し15mの長さの100℃に設定押された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させた。引き続き親水層(上層)の塗布液をワイヤーバー#3を用いて塗布し30mの長さの100℃に設定された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させた。下層親水性層、親水性層(上層)それぞれの付量は3.0g/m2、0.55g/m2であった。塗布後のサンプルは60℃で1日間のエイジングを行なった。
【0131】
(画像形成層塗布液の調液)
下記の組成の画像形成層塗布液を上記で作製した親水性層(上層)の上にワイヤーバー#4を用いて塗布し、30mの長さの70℃に設定された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させ、画像形成層を形成した。画像形成層の付量は0.5g/m2であった。塗布後のサンプルは50℃で24時間のエイジングを行なった。
【0132】
(画像形成層1)
ポリビニルアルコール(クラレ社製KL−506、固形分15質量%)
58.7質量部
二糖類トレハロース(林原商事社製商品名トレハ、融点97℃)の20質量%水溶液
1.0質量部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 10.0質量部
純水 30.3質量部
固形分濃度 10質量%
(画像形成層2)
ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製K−30、30質量%)
29.3質量部
二糖類トレハロース(林原商事社製商品名トレハ、融点97℃)の20質量%水溶液
1.0質量部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 10.0質量部
純水 59.7質量部
固形分濃度 10質量%
(画像形成層3)
ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製K−30、30質量%)
19.3質量部
水溶性モノマー(新中村化学社製、A−GLY−3E) 3質量部
二糖類ロレハロース(林原商事社製商品名トレハ、融点97℃)の20質量%水溶液
1.0質量部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 10.0質量部
純水 66.7質量部
固形分濃度 10質量%
(画像形成層4)
ポリビニルアルコール(クラレ社製KL−506、固形分15質量%)
55.3質量部
二糖類トレハロース(林原商事社製商品名トレハ、融点97℃)の20質量%水溶液
1.0質量部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 10.0質量部
赤外吸収染料(American Dye Source社製、ADS830AT)の
3質量%IPA溶液 16.7質量部
純水 17.0質量部
固形分濃度 10質量%
(画像形成層5)
ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製K−30、30質量%)
27.7質量部
二糖類トレハロース(林原商事社製商品名トレハ、融点97℃)の20質量%水溶液
1.0質量部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 10.0質量部
赤外吸収染料(American Dye Source社製、ADS830AT)の
3質量%IPA溶液 16.7質量部
純水 44.7質量部
固形分濃度 10質量%
(画像形成層6)
ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製K−30、30質量%)
17.7質量部
水溶性モノマー(新中村化学社製、A−GLY−3E) 3質量部
二糖類トレハロース(林原商事社製商品名トレハ、融点97℃)の20質量%水溶液
1.0質量部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 10.0質量部
赤外吸収染料(American Dye Source社製、ADS830AT)の
3質量%IPA溶液 16.7質量部
純水 51.7質量部
固形分濃度 10質量%
上記平版印刷版材料を660mm幅に断裁し、外径76mmの紙コアに30m巻回し、ロール状平版印刷版材料を得た。
【0133】
(画像形成)
印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径が約20μmのレーザービームものを用い、露光エネルギーを250mJ/cm2として、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。露光した画像は印刷版材料全面を50%の網点画像としたものである。
【0134】
(印刷方法)
次に示す条件で印刷を行なった。印刷版材料は露光後そのままの状態で版胴に取り付け、PS版と同じ刷り出しシークエンスを用いて印刷した。
【0135】
印刷機:三菱重工工業(株)製DAIYA F−1
印刷用紙:OKトップコート、キンマリSW
印刷速度:6、000枚/時
湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%
インキ:(東洋インキ社製TKハイユニティ紅)
(刷り出し枚数の評価方法)
作製した印刷版を前述の画像形成方法で2インチ毎に非画像、50%網点、ベタ画像を露光する。次に前述の印刷方法の条件で印刷を開始し、100枚印刷した時点で停止する。インキが画像様に綺麗にオン、オフが付き、インキの絡みが無くなった枚数を測定し、刷り出し性評価の指標とした。30枚以下であれば実用的である。
【0136】
(異物耐性の評価方法)
作製した印刷版を前述の画像形成方法で印刷版全面を50%網点で露光する。次に前述の印刷方法の条件で印刷を開始し、50枚ほど印刷した時点で一旦停止する。印刷機のブランケットにインキが付いた状態で、ゴミや異物の代用として、5mmほどに切った太さの違うナイロン製の釣り糸(74、104、117、148、235μm)をブランケットに貼り付けていく。その後印刷を開始し、そのまま1000枚印刷したのち停止し、ブランケットと印刷版の版面の洗浄を実施する。そして再度印刷を行い、50枚目をサンプリングして印刷物へのダメージの度合いを評価し、傷の出なかった最大の太さの値を異物耐性の指標とした。148μmまで傷の出なかったものが実用的である。
【0137】
(耐刷性の評価方法)
印刷用紙として、キンマリSWを使用し、印刷を行なう。作製した印刷版を前述の画像形成方法で2インチ毎に非画像、50%網点、ベタ画像を露光する。次に前述の印刷方法の条件で印刷を開始し、50%網点又はベタ画像部にカスレが始まったところを終点として評価した。結果を表1に示す。
【0138】
表1より、本発明の印刷版材料は、耐刷性に優れ、また印刷版の現像前の取り扱いにおいて、異物からの衝撃、取り扱いによる傷などに対して、現像不良や白抜け等の印刷故障を起こさず、従来と同等の作業性を有していることがわかる。
【0139】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面を有する支持体上に、印刷機上現像可能な感熱画像形成層を有する印刷版材料において、該感熱画像形成層がポリビニルピロリドンを含有し、該感熱画像形成層または該感熱画像形成層に隣接する層に光熱変換剤を含有することを特徴とする平版印刷版材料。
【請求項2】
前記光熱変換剤が黒色顔料であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版材料。
【請求項3】
前記黒色顔料の主成分が金属酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版材料。
【請求項4】
前記感熱画像形成層が水溶性の重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版材料を画像露光し、機上現像を行い、印刷することを特徴とする平版印刷方法。

【公開番号】特開2007−185779(P2007−185779A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3410(P2006−3410)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】