説明

平織りファブリックの超音波ギャップ溶着によるファブリック縫い目の形成方法

本発明は、平織りファブリックの超音波ギャップ溶着に関する。特に、本発明は、制御されたギャップを用いてファブリックの末端縫い目編み糸端部を超音波溶着する方法に関する。溶着の深さと溶着エネルギの量とに基づいてホーン(26)と金敷きの間の距離又はギャップを所定レベルに制御するために機械式ストップ(15)を用いることができる。制御の他の程度を加えることにより、本発明の超音波ギャップ溶着は、従来の縫い目より、更には接着によって強化されたそれらよりも強いファブリック縫い目を達成することができ、かつ、スポット溶接によって、或いはファブリックの末端編み糸端部に沿って、ファブリック縫い目を形成するのみ貢献する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波ギャップ溶着として知られている特有な超音波溶着を用いた平織りファブリック用ファブリック縫い目の形成に関する。
関係法規の導入
【0002】
[参照による引用]
本願明細書において参照される全ての特許、特許出願、文書及び/又は参考文献は、参照により引用されたものとし、かつ、本発明の実施において使用することができる。
【背景技術】
【0003】
製紙プロセスの間、抄紙機の成形区分において移動する成形ファブリック上に繊維スラリー、すなわち、セルロース繊維の水分散液を堆積させることにより、セルロース繊維織布が形成される。成形ファブリックの表面上にセルロース繊維織布を残しつつ、スラリーからは成形ファブリックを通して大量の水が排出される。
【0004】
新たに成形されたセルロース繊維織布は成形区分から、一連のプレスニップを含むプレス区分へ進む。セルロース繊維織布は、プレスファブリックにより、或いは、大抵の場合、この種の2枚のプレスファブリックの間に支持されてプレスニップを通過する。プレスニップの中で、セルロース繊維織布は圧縮力を受け、これによりそこから水が絞り出され、また、織布中のセルロース繊維が互いに凝着してセルロース繊維織布が紙シートに変わる。上記の水は、一のプレスファブリック或いは複数のプレスファブリックによって受け入れられ、理想的には、紙シートに戻らない。
【0005】
紙シートは、最後に、蒸気によって内部が加熱されている少なくとも一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダーを含む乾燥区分に進む。新たに成形された紙シートは、ドラムの表面に対して密接に紙シートを保つ乾燥ファブリックによって、蛇行通路の中で、一連のドラムの各々の周囲に連続的に導かれる。加熱ドラムは、蒸発により、紙シートの含水量を望ましいレベルにまで減少させる。
【0006】
成型、プレス及び乾燥ファブリックは、時として抄紙機布(PMC)と呼ばれ、それらは全て抄紙機上で無端ループの形をとり、かつ、コンベヤーの方法で機能することは理解されるべきである。更に、製紙が、相当なスピードで進行する連続工程であることも認識されるべきである。換言すれば、新たに製造された紙シートが乾燥区分から出た後にロール上で連続的に巻取られる一方で、成形区画では成形ファブリックの上に連続的に繊維スラリーが堆積される。
【0007】
平織りファブリックは、工業(engineered)ファブリックにも成形され得る。平織りファブリックが、成形、プレス、乾燥、空気による乾燥(TAD)であるか、これに限定されるものではないが、スパンボンド法又は水流交絡法のようなプロセスにより不織布を製造するため、或いは、DNTベルト又はスラッジフィルタベルト等、又は繊維加工仕上げベルトのようなウェットプロセスのために用いられることを含む工業ファブリックであるかに関わらず、縫い目の均一性及び完全性の特性は決定的である。
【0008】
ファブリック縫い目の末端、又は縫い目を形成するために組み合わされ、或いは縫い合わされた編み糸の端部は、ファブリックが縦方向(MD)の緊張を受けている場合、紙、TAD、或いは他の工業的機械の上で走行する際に引き戻されやすい。この縫い目の「引き戻し」を最小化するために、縫い目の編み糸の終端は、時として接着剤で隣接する編み糸に固定される。しかしながら、接着剤は、機械走行状態に完全には抵抗せず、時間の経過と共に引き戻しや編み糸ずれの発生が未だ許容される。同様に、PMC、TAD又は工業ファブリックの終端を縫い合わせるような他の補強手段と共に接着剤を使用した場合所望の縫い目の統一性又は完全性が生成されない。
【0009】
加えて、従来の技術を用いて成型された縫い目の幅は、縦方向の測定で、例えば、どこでも3と1/2から20インチ或いはより大きな値の間に典型的には分布している。多くの理由のため、その縫い目領域は減じられることが望ましい。
【0010】
図1(a)乃至図1(d)は、従来の縫い目成型技術と関連した課題を示しており、そこでは、2つのファブリック端の終端が縫い目領域において「重ねられ」、そして、それらの端部が縦方向に「引き戻される」ことがあり、かつ、それら端部自身が紙の側面に突出することのある臨界点12が識別されている(図1(a))。結局、重なった領域のずれは、ファブリック中の増加した局所的応力のために矢印で示すように増加し(図1(b))、ファブリックの縫い目領域には完全なずれと穴16が現れる(図1(c))。従って、縫い目の重なり合った領域は、その強度を高めるために、典型的には手作業による接着18(図1(d))により補強されるのだが、接着は、骨が折れ時間がかかる方法である。その低い精度のため、接着を重なり合った編み糸だけに制限することも困難である。加えて、接着は、結局、ファブリックの折れ、及び/又は摩耗の双方に起因して故障する。
【0011】
従って、縫い目編み糸終端、及びその結果である縫い目強度を強化するための異なる改良された手段が必要である。
【0012】
ファブリックのための縫い目編み糸終端を強化する可能な技術の一つは、超音波溶着のような溶着である。超音波とは、人間の可聴範囲を超える、すなわち、20,000Hz超の音のことであり、また、超音波溶着とは音波による素材の融着のことである。しかしながら、編み糸の過剰溶融、縫い目の透過性の減少、及び局所的収縮に起因するファブリックの歪曲のような容認できない縫い目成形結果はしばしば超音波溶着により引き起こされる。
【0013】
他の縫い合わせ方法は以下の参照文献において見つけることができる。
熱可塑性モノラルフィラメント材料を継ぐための方法と装置に関する米国特許番号4,032,382。2つのフィラメントは、装置のチャネルにおいて結合される。それらは、フィラメントの最初の直径に対応する寸法のチャネルの中で横圧力を受けながら高周波数振動に晒される。結果は、当初の材質に近い直径を持つ接合部である。
【0014】
米国特許番号4,401,137は、縫い目の強度を高めるために、次いで超音波で溶着されることのある整えられた「尾部」を有する無印ループピン縫い目を伴う成形ファブリックに関する。
【0015】
米国特許番号4,501,782は、縁取りのあるファブリック縦糸端を完全固定の方法で結合するための代替方法に関する。縦糸端は、互いに噛み合う位置に置かれ、ファブリック全体に亘って連続的な方法で超音波により結合される。縫い目の結合は、この処理の後にファブリック本体と同じ厚さを有することを要求する。
【0016】
しかしながら、この縫い目は、紙に印を付けてしまい、及び/又は、平坦でない排水路を形成してしまうため、製紙における要求に対して受け入れることができない。ティシュー織布は非常に薄いためこの種の縫い目がTADファブリックに用いられた場合、紙織布の破損リスクは高いものとなる。
【0017】
米国特許番号5,464,488は、超音波溶着装置の制御された使用を要求し、2枚のプラスチックファブリック層間に強く柔軟な結合を形成するための方法に関する。このプロセスの間に、編み糸は、溶融するのではなく軟化して互いに結合すると言われている。その結合は、もろくないために柔軟かつ有用であり、従って、従来技術に存在する結合における割れや破損を生じさせ難い。
【0018】
しかしながら、この縫い目は、TADファブリックのような開放構造には有用でない。ファブリックの本体に近い特性を伴う伝統的な縫い目のそれにより似た縫い目がパフォーマンスにとっては重要である。ここで提案する縫い目は、その改良された種類のものである。
【0019】
米国特許番号5,571,590は、共通の方向に端部から延びる端部部分を伴い、同時に、端部は端部部分からサーブされ、かつ、端部部分は共通の切断線に沿って融解固定されている平織り基盤要素の端部部分の重ね合わせによって形成された横方向(「CD」)縫い目を有する製紙ファブリックを提供する。
【0020】
米国特許番号5,713,399は、ファブリックの意図した幅よりも狭い織物ファブリックストリップを螺旋状に巻くことにより製造されるPMCを提供する。ストリップは、少なくとも一つの外側端部上に、横方向編み糸の固定されていない端部の横方向縁を有している。この縁は、ストリップの隣接する巻の端の下或いは上に横たわる。そのようにして得られた螺旋状の連続縫い目は、超音波溶着によって閉じられる。
【0021】
米国特許番号5,731,063は、共通の方向に端部から延びる端部部分を伴う平織り基盤要素の端部部分の重ね合わせによって形成された横方向縫い目を有する製紙フェルトを提供する。同時に、米国特許番号5,571,590と同様、端部は端部部分からサーブされ、かつ、端部部分は共通の切断線に沿って融解固定されている。
【0022】
米国特許番号6,162,518は、特許5,713,399に類似する螺旋状に巻かれたPMCに関する。熱接着が開始される前に少なくとも一つの接続糸が突出した糸の区分に亘って配置されている。
【0023】
米国特許番号6,702,927は、PMCの意図した幅よりも狭い織物ファブリックストリップを螺旋状に巻くことにより製造されるPMCに関する。ファブリックストリップは、それぞれ第1及び第2リップに沿った第1及び第2の外側縁部を有する。各リップは、横方向編み糸と共に、少なくとも一本の縦の編み糸を有する。第1及び第2リップに隣接する内側は、それぞれ、縦の編み糸を欠き、その横方向編み糸がストリップの本体にリップを結合させる第1及び第2の隙間である。螺旋状に巻かれると、リップは、超音波固定又は他の手段により閉じることのできる縫い目を形成するために、隣接する巻の隙間を覆う。
【0024】
発行された米国特許出願番号2003/0221739は、無端ベルトを形成するためにファブリックの端部を連結するピン縫い目の中に予め形成された、少なくとも一つのループ又はコイルを用いたPMCに関する。ベースファブリックの端部は、端部を安定化させるために、圧縮、事前絞り、及びシーリングによって、事前及び/又は事後処理してもよい。超音波溶着、又は他の手段は、補強のために、更には、ステッチ領域において平滑面を提供するために用いることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
超音波溶着は、裁縫や接着といった従来の縫い目成形技術に対して幾つかの利点を有する一方、上記した以前の超音波溶着技術の特定の欠点は、一つには従来の超音波溶着が、時間、エネルギ及び距離の複数パラメータを修正することに基づくという事実から生じている。従って、使い易く、かつ、広いレンジのファブリックタイプに適応することができる、受け入れ可能な平坦性と強度を伴うファブリック縫い目を生成する手段はこの分野において未だ必要とされている。
【0026】
尚、この出願中の如何なる文書の引用及び同定も、この種の文書が本発明に対する従来技術として使用可能であるということを承認するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、PMCファブリック、通気空気乾燥(TAD)ファブリック、工業ファブリック、搬送又は製革ベルトのような繊維加工仕上げプロセスに用いるためのファブリック/ベルトのような平織り産業ファブリックにおける縫い目形成の方法に関する。その方法は、ホーンと金敷きの間の距離を設定するステップと、溶着されるべき材質をホーンと金敷きの間に配置するステップと、上記ストップに達するまで超音波エネルギを用いてその材質の一部を溶着し、次いで所定の時間長だけ、或いは所定量のエネルギが吸収されるまで、厚さを更に損なうことなく、そのギャップにて溶着を継続するステップと、を備える超音波ギャップ溶着として本明細書に記載されている超音波溶着を含む。
【0028】
本発明の目的は、単なる従来の縫い閉じ方法より強い編み糸間の着実な結合を形成することである。本発明の他の目的は、接着によって強化されたものであっても、対応する従来の縫い目より縦方向に狭く溶着された縫い目領域を伴って、ファブリック内により良い縫い目の完全性を形成することにある。
【0029】
本発明の別の目的は、縦方向の同じ長さに対して、より強く、及び/又はより耐久性のある縫い目を有するファブリックを形成することである。好ましくは、縦方向に測定された縫い目の幅は、通常の縫い目、或いは従来の技術を用いて形成された同じ強度の縫い目の幅のごく一部でしかない。この一部は、0.7以下であり得、好ましくは0.5以下であり得、更に好ましくは0.3以下であり得る。例えば、「X」が従来の実務、或いは従来の縫い閉じ方法に従う縦方向縫い目幅であるとすれば、本発明に従って形成される縫い目の幅は、同じ強度でありながら、例えば、0.7X以下、好ましくは0.5X以下、最も好ましくは0.3X以下である。
【0030】
本発明の更に他の目的は、本発明の超音波ギャップ溶着技術を用いて、製紙布、特に感想ファブリックのような産業ファブリックにおいて用いられるようなピン縫い目及びインライン螺旋縫い目を強化することである。縦方向編み糸のファブリック本体への編み入れ直しを要求し、それにより編み糸のずれと引き出しに起因する不具合の可能性を有するピン縫い目もまた、本明細書に記載される超音波溶着技術により改善することができる。この種の縫い目において、縫い目ループ自身を形成する縦方向編み糸は、実用における動作テンションの下で引き出されないように横方向編み糸に溶着または融合されることができる。
【0031】
従来の超音波溶着に関係する欠点を取り除くことにより、本発明の超音波ギャップ溶着技術は、十分な強度を伴う滑らかなファブリック縫い目を成し遂げることができ、かつ、スポット溶着によって、或いは、ファブリックの終端に沿って、ファブリック縫い目の形成に貢献する。
【0032】
本発明は、また、ホーンの先端と金敷きとの間の距離を制御するために機械式ストップを設定するステップと、平織り縫い付け接合ファブリックの末端編み糸端部を整列配置するステップと、縫い目内の整列配置された末端編み糸端部をホーンと金敷きの間に配置するステップと、ホーンと金敷きの間の距離を固定された所定のギャップに調整するステップと、所定の時間長だけ、或いは編み糸によって所定量のエネルギが吸収されるまで、編み糸又はファブリックの厚さの更なるロスを伴うことなしき、あのギャップ距離において超音波エネルギによりファブリックの末端編み糸端部を溶着するステップと、を備える超音波ギャップ溶着によるファブリック縫い目の形成に関する。
【0033】
本発明は、ファブリックの縫い目終端の超音波溶着を備え、ファブリックにおける末端編み糸端部の引き出しと、縫い目端の末端擦り切れを最小化する方法を含む。
【0034】
本発明は、また、ファブリックの隣り合う縦糸の2つの端部を一緒に、互いに、及び/又はそれらと交差する横方向編み糸に、本明細書に記載されている通り縦糸のオーバーラップが最小から皆無となる方法を用いて、溶着するプロセスにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、以下に識別される同様の要素及び部分に対して同様の参照番号を付した図面を参照して、ここにより詳細に説明される。
【図1】従来の縫い目構造と関連した課題を表す。
【図2A】本発明の一実施形態に係る超音波ギャップ溶着の方法を例示する。
【図2B】本発明の一実施形態に係る超音波ギャップ溶着の方法を例示する。
【図3】本発明の一態様に係る超音波ギャップ溶着を使用して準備されたファブリックの一例である。
【図4】本発明の一実施形態に係るファブリックの横断面図である。
【図5】縫い目及び連結位置の原則を表す線図である。
【図6】従来の接着ファブリックと、本発明の一実施形態に係る超音波ギャップ溶着により形成された結合長さの異なるファブリック縫い目との間での破壊強度の比較である。
【図7A】本発明の一実施形態を用いた際の縫い目厚さの保持と改善された縫い目強度を示す。
【図7B】本発明の一実施形態を用いた際の縫い目厚さの保持と改善された縫い目強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、例えば機械式ストップを設定することにより、又はホーンと金敷きの間の距離を制御する他の手段を利用することにより溶着深さを制御するステップと、溶着されるべき材質をホーンと金敷きの間に配置するステップと、ホーンが所定の深さ又はギャップに達するまで超音波エネルギを用いてその材質の一部を溶着し、次いで所定の時間長だけ、或いは所定量のエネルギが吸収されるまで、編み糸の厚さを更に損なうことなく、そのギャップ距離にて溶着を継続するステップと、を備える超音波ギャップ溶着として本明細書に記載されている超音波溶着に関する。
【0037】
ギャップ溶着の間、機械式ストップ(図示せず)は、ホーンが金敷きに寄ることのできる最も近い距離を制御するために用いることができる。換言すれば、機械式ストップは、溶着されているファブリックに超音波ホーンが入り込むことができる深さを左右する。ホーンと金敷きの間のこの距離がギャップである。ホーンは、一旦機械式ストップに達すると、編み糸又はファブリックの厚さを更に損なうことなく特定された如何なる時間又はエネルギ分だけそのギャップで溶着を継続する。その材質は超音波エネルギが印加されると圧力の下に保持される。その結果、編み糸の崩壊が防止され、また、過剰溶着、厚さの減少、過熱を伴わずにより多くのエネルギを溶着につぎ込むことが可能となり、かつ、分子配向のような編み糸の材質特性の損失が起こり難くなる。例えば、ファブリックの厚さが1.0mmである場合、機械式ストップは、ホーン先端と金敷きの間に0.4mmのギャップが残るように設定することができる。ホーンは、その後、ファブリックの内部を0.6mm溶着することになる。この場合、時間及びエネルギの何れのモードを用いた溶着においてもエネルギ量を増やすことが可能となる。しかしながら、成すべきことは、ホーンの侵入深さ或いは金敷きの侵入深さを制御することである。何れの場合でも、金敷きとホーン先端の間のギャップは溶着の深さ、及びこのようにして形成された溶着の強度を決定する。ギャップは、また、ホーン動作の振幅(振動)を考慮して計算されなければならない。
【0038】
図2Aは、本発明の一実施形態に係る超音波ギャップ溶着を示す。本件については、ファブリックを溶着するために高周波超音波エネルギを用いるホーンが適用される。金敷き20は、溶着されるファブリック30がその上に載置される支持手段として用いられる。超音波ホーン10は、溶着されるファブリックの厚さ及び溶着が要求されている深さに基づいて所定レベルまで降ろされる。図2Bは、本発明の超音波溶着において用いられる装置の更なる描写である。その装置は、超音波ウェルダ又はこの分野で超音波スタック14(または音響スタック)と一般に呼ばれるものを備えている。スタック14は、3つのパーツ、すなわち、コンバータ22、ブースタ24及びホーン26で構成されている。スタック14は、ブースタ周りのリング28においてスタックホルダ25の内部に固定される。スタック又はブースタのリングの中立点を保持するスタックホルダ25又はクランプが所望の位置から更に下降するのを防ぐように、機械式ストップ15が設定される。超音波ウェルダがオンのときは、ホーンの先端がこの設定点の上下に特定の振幅で振動する。しかしながら、超音波ウェルダがオフのときは、機械式ストップ15がホーン10と金敷き20の間に固定された距離を設定するものとなる。例えば、パーツ1及び2が溶着されるものであるとすると、ストップ15はそれらのパーツの厚さ及び所望の溶着深さに基づいて所定の高さにセットされる。スタック14が下降を始める際超音波の先端はオフであり、そして、ホーンがサンプルと接触したすぐ後、所定の負荷値が達成される。この負荷は、スタックハウジングに載置された、例えばロードセルのようなプレッシャセンサにより測定される。この時点で、超音波エネルギがオンとされる。尚、スタックハウジング(ここでは、その中にブースタ24が固定されているリング28が該当する)は、この時点でストップ15に接触していない。溶着が続行されるのに伴い、溶着により生成された熱は、パーツ上のホーンの下降圧力と共同して、スタックハウジング25がストップ15に当接し、これにより編み糸又はファブリックの厚さの、如何なる更なる減少も防止されるようになるまで、溶着領域内の材質の厚さを減少させる。超音波エネルギは、しかしながら、オンのまま維持され、溶着を継続する。超音波エネルギがオフされた後、溶着部分は、それらが冷却されて一緒に固化できるように、所定時間だけ圧力がかけられた状態に保たれるのが通常であり、これにより溶着領域に、強度のような改善された物理的特性が与えられる。次いでスタック14が引き込まれ、ギャップ溶着が完了する。
【0039】
標準の溶着は、時間、エネルギ又は距離を用いて制御される。例えば、一旦特定のトリガ力が達成されると、機械は設定された時間量の間、又は設定されたエネルギに向けて溶着し、或いは、ファブリックの中へ特定の距離だけ降下する。溶接のための全てのパラメータが、受け入れ可能な処理条件に関するより大きなウインドウを伴うより一層頑強なプロセスに役立つ制御の追加的な程度を加えると共に固定されているため、超音波ギャップ溶着技術は、許容可能な編み糸歪み量を伴ってより強い結合を生じさせ、かつ、ファブリックの幅全体に亘る一貫した溶着を可能とする。
【0040】
本発明は、PMC、TADファブリック、工業ファブリック、或いはカレンダー加工又は皮革なめしベルトのような繊維加工仕上げプロセスに用いるためのファブリック/ベルトのような平織り産業ファブリックにおける縫い目作成において特定の応用を有している。他の応用も、しかしながら、可能である。この点に関しては、図3には、本発明に係る超音波ギャップ溶着技術を使用して溶着されたファブリック30の例を示す。溶着は、末端編み糸端部がファブリックの編み込み縫い目の中に位置する箇所で行われる。幾つかのファブリックは、この種の末端編み糸端部を10,000以上有している。ファブリック30の横断面図は、横方向編み糸に対する溶着と共に、溶着された末端編み糸端部を示す図4に示されている。内部で溶着されているファブリック30は0.9mmの厚さを有しており、金敷きと超音波ホーンとの間のギャップは0.4mmにセットされている。図3及び図4より、本技術が、溶着プロセスに精度と厚さの均一性を提供することが観測できる。
【0041】
ホーンと金敷きの間のギャップは、溶着される材料によっても決定される。本発明の一実施形態では、溶着される材料はファブリックであり、ホーンと金敷きの間のギャップはファブリックの厚さの約30%から約55%である。本発明の更なる実施形態では、ホーンと金敷きの間のギャップは、ファブリックの最初の厚み又は厚さの約40%である。目的に適した他のギャップ距離は想定されている。
【0042】
尚、抄紙機の布において、最初のファブリック厚は、約0.5から3.5mmに分布することができる。工業ファブリックについては、最初の厚さは約0.8mmから6.0mm以上に分布することができる。
【0043】
各溶着の縦方向における実際の長さは、図5における例に示す通り、各インターロック領域における平行したナックルの数に、また、縦糸及び横糸の寸法及びそれらの密度(数及び間隔)にも依存している。これは、しかしながら、縫い目とインターロック位置の原則の単なる例である。実際のパターンは布本体の織りパターンに依存しており、そして、終端点の可能な分布はそれに相関している。各溶着の幅は、繊維の直径及び縦糸又は縦方向編み糸の間隔にも依存している。溶接は、ファブリックの、そして、従って紙又は生産される製品の特性を維持するために可能な限り小さく形成されることができる。
【0044】
TADファブリックの性質のため、TADファブリックの使用は、本願明細書に開示される方法によるファブリック縫い目の形成に関して好ましい実施形態である。ファブリック縫い目は、それ自体に沿って折り返されることはなく、むしろ、ファブリック縫い目は、例えばピン縫い目ファブリックと対照的に、ファブリックの編み糸の終端がファブリックの他端に織り込まれる伝統的な平織り縫い付けファブリックに類似している。
【0045】
平織りファブリックがTADであるか工業ファブリックであるかに関わらず、それらが意図された目的のために用いられる際には、縫い目の強度及び均一性の特性、及び裏側又は機械動作側の末端編み糸端部の位置は多くの製品にとって重要である。
【0046】
本発明に従って形成されるファブリック縫い目の終端は、ホーンの寸法に応じて如何なる長さ及び/又は幅にもなり得る。終端のサイズは、新製品に伴って変化することができ、また、現実には、終端をより短くして縦方向における縫い目領域自身を可能な限り短くすることが目標である。本発明の超音波溶着方法の使用の結果は、ファブリックの縦方向の従来縫い目の同じ長さに対して、より強く、及び/又はより耐久性のある縫い目である。好ましくは、縦方向に測定された縫い目幅は、通常の縫い目、或いは従来の技術を用いて形成された同等強度の縫い目の幅の一部である。この一部は0.7以下、好ましくは0.5以下、そして、最も好ましくは0.3以下である。例えば、「X」が従来の実務、或いは従来の縫い閉じ方法に従う縦方向縫い目幅であるとすれば、本発明に従って形成される縫い目の幅は、同じ強度でありながら、例えば、0.7X以下、好ましくは0.5X以下、最も好ましくは0.3X以下である。
【0047】
本発明の一実施形態において、溶着は、各インターロックにおける2つの編み糸終端と、そのインターロック領域における横方向編み糸に対する局所化された結合のみからなっている。
【0048】
尚、TADファブリック及び工業ファブリックのような平織りファブリックは、通常、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)及びポリ弗化ビニリデン(PVDF)の単繊維索又は編み糸を備える。
【0049】
平織りファブリックでは、縫い目編み糸端の終端は、先に述べた通り、機械の動作条件の下で引き戻しの影響を受けやすい。縫い目編み糸端の終端を結合させるのに用いられる標準の接着剤は、ある程度の編み糸の引き戻しが繰り返されるのを許容している。超音波溶着は、標準の接着方法に比して2又は3培ほどの強度で縫い目端をロックする。受け入れ可能な超音波溶着は、結果として、55%に達するファブリック厚の低減と強固な結合とを実現する。しかしながら、大きすぎる領域の溶接、編み糸の過剰な溶融、及びファブリックの全体的な歪曲からは容認できない結果が起こり得るため、適切なパラメータが必要である。
【0050】
本願明細書に記載された超音波ギャップ溶着技術が、受け入れ可能な歪曲量でより強いファブリック縫い目を生み出すことに注意を要する。例えば、図7Aは、時間に基づいた通常の超音波溶着技術及び本発明に係る0.4mm超音波ギャップ溶着技術を用いたホーン運動の80%振幅での、ある時間に対するTADファブリックの厚さ又は厚み保持を示す。図7Bは、それぞれ2つの技術によって形成された2つのファブリックの引張強度を比較する。図7A及び図7Bは、本超音波ギャップ溶着技術を用いることで縫い目強度が改善されることを示しており、それにより、ファブリックの厚さ又は厚みが保持され、かつ、縫い目強度が改善される。
【0051】
本発明が、編み糸終端の摩耗を低減させる点に更なる注意が必要である。縫い目の終端は、ファブリックの面より高く突き出る傾向があるため、しばしばファブリック本体より早く摩耗する。ファブリックの面の下にその終端を持ち込んで保持することにより、本願明細書に記載された超音波ギャップ溶着方法は、ファブリック本体に先立つ編み糸終端の摩耗し易さを効果的に低減させる。
【0052】
加えて、本発明は、超音波ギャップ溶着を備え、ファブリックにおける縫い目終端の末端縫い目端部引き戻しを最小化する方法を包含する。
【0053】
本発明は、また、本願明細書に記載された方法を用いて縫い目の強度を高めることにも関する。本超音波ギャップ溶着方法によって形成された縫い目は、短くて(縦方向の測定による)強い縫い目を生じさせ、これにより、例えば紙シートへのマーキングの可能性が減少し、或いは、ティシュー/タオルのシートに穴を空けることのある末端編み糸端の移動が防止される。
【0054】
本発明は、また、縫い目の完全性を改善することにも関する。例えば、ファブリックが使用される際には、ファブリックが、例えば紙ティシューやタオル装置上を走行する間に縫い目領域がその完全性を維持することが重要である。あらゆる編み糸端末端は極めて重要であり、提案したプロセスは、所定パターンにおける特定位置の特定編み糸に適用することができる。その方法の結果は、接着された編み糸終端に比して縫い目編み糸終端を欠陥が生じ難いものとする可能性である。例えば、縫い目編み糸終端領域は、要求に応じてオリジナルのファブリックより低い厚さにすることができる。ファブリック縫い目の完全性を維持することで、ファブリックの有用なランニング寿命は増長される。平織りファブリックの縫い目について説明してきたが、本超音波溶着技術は、例えば、それら自身が縫い目ループを形成する縦方向編み糸が、実用上の動作テンションの下で引き抜かれることがないように横方向編み糸に溶着又は融着され、これにより、縫い目強度、及び応力又は負荷歪曲下での均一性を改善するピン縫い目のような他のタイプの縫い目に適用することができる。
【0055】
本発明は、ここで、以下の非限定的な実施例により更に記述されている。
【0056】
[実施例]
実施例1
40kHzの超音波ギャップウェルダを使用して、TADファブリックは、40μmの振幅で、500msの溶接時間及び1秒の保持時間(すなわち、溶接の後、ホーンを上げる前に1秒間ホーンを溶接位置に滞在させる)に晒される。縫い目領域上のゲージ圧力は144kpaであり、トリガ用(TRS)は111Nである。
【0057】
その方法の結果は、強化された縫い目編み糸終端を伴うTADファブリック(図3参照であり、それは、抄紙機上の試運転の間に、最小の末端縫い目編み糸の引き出しを生じさせた。加えて、加えて、その結果のTADファブリックの縫い目終端は、縫い目接着に対して相当な強さを生じさせた。
【0058】
図6は、縫い目を伴う接着された及び超音波ギャップ溶着されたファブリックの双方について長さの異なるインターロックに対するファブリック縫い目の破壊強度を比較する。明らかに、本発明の超音波ギャップ溶着を使用して溶着されたファブリックは、従来の接着ファブリック縫い目のそれより、特に同上におけるインターロックの接着縦方向長さが中又は短の場合、高い強度を有している。
【0059】
このように、本発明、その目的及び効果が理解され、また、好ましい実施形態を本明細書中で詳細に開示し、かつ記述してきたが、その範囲及び目的は、これにより限定されるべきではなく、むしろその範囲は、添付の請求の範囲のそれにより決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫い目領域を有する工業ファブリックを溶接する方法であって、
溶接の間にホーンと金敷きの間の所定ギャップを決定するステップと、
溶接されるべきファブリック縫い目領域終端をホーンと金敷きの間に配置するステップと、
ホーンと金敷きの間の距離を上記所定ギャップに調整するステップと、
所定の時間長の間、或いは縫い目領域終端により所定量のエネルギが吸収されるまで、エネルギを印加することにより上記所定ギャップにてファブリックの前記縫い目領域を溶着するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
ファブリックが、PMCファブリック、TAD、工業ファブリック、カレンダー加工及び皮革なめしに用いるためのファブリックからなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホーンと金敷きの間のギャップが、溶接されるファブリックの最初の厚さの30%から55%の間である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ファブリックが平織りである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定ギャップが機械式ストップによって制御される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶接された縫い目領域が、ファブリックの縦方向長さが等しい通常縫い目又は従来技術を用いて形成された縫い目より、強度が高く、及び/又は耐久性が優れている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
縦方向に計測した前記縫い目領域の幅が、強度が等しい通常縫い目又は従来技術を用いて形成された縫い目の幅の一部であり、前記一部は0.7以下であり、好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.3以下である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ファブリックにおける縫い目終端領域摩耗を減少させる方法であって、
ファブリックの末端編み糸端部を超音波で溶着するステップを備え、前記溶接は、ホーンの進出を所定ギャップに制限することによりホーンと金敷きの間の所定ギャップに制御され、末端編み糸端部はファブリック面の下にあることが確実にされている方法。
【請求項9】
ファブリックの末端編み糸端部が最小の縦編み糸のオーバーラップで溶着される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ファブリックが、PMCファブリック、TAD、工業ファブリック、カレンダー加工及び皮革なめしに用いるためのファブリックからなるグループから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
溶接されるファブリックの厚さ又は厚みの30%から55%の間でホーンが進出する請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ファブリックが平織りである請求項8に記載の方法。
【請求項13】
溶接された縫い目領域が、ファブリックの縦方向長さが等しい通常縫い目又は従来技術を用いて形成された縫い目より、強度が高く、及び/又は耐久性が優れている請求項8に記載の方法。
【請求項14】
縦方向に計測した前記縫い目領域の幅が、強度が等しい通常縫い目又は従来技術を用いて形成された縫い目の幅の一部であり、前記一部は0.7以下であり、好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.3以下である請求項8に記載の方法。
【請求項15】
溶接の間にホーンと金敷きの間の所定ギャップを決定するステップと、
溶接されるべきファブリック縫い目領域終端をホーンと金敷きの間に配置するステップと、
ホーンと金敷きの間の距離を上記所定ギャップに調整するステップと、
所定の時間長の間、或いは縫い目領域終端により所定量のエネルギが吸収されるまで、エネルギを印加することにより上記所定ギャップにてファブリックの前記縫い目領域を溶着するステップと、
を備える方法に従って形成される産業ファブリックにおける縫い目。
【請求項16】
ファブリックが、PMCファブリック、TAD、工業ファブリック、カレンダー加工及び皮革なめしに用いるためのファブリックからなるグループから選択される請求項15に記載の縫い目。
【請求項17】
ホーンと金敷きの間のギャップが、溶接されるファブリックの最初の厚さの30%から55%の間である請求項15に記載の縫い目。
【請求項18】
ファブリックが平織りである請求項15に記載の縫い目。
【請求項19】
所定ギャップが機械式ストップによって制御される請求項15に記載の縫い目。
【請求項20】
ファブリックの終端が最小の縦編み糸のオーバーラップで溶着される請求項15に記載の縫い目。
【請求項21】
溶接された縫い目領域が、ファブリックの縦方向長さが等しい通常縫い目又は従来技術を用いて形成された縫い目より、強度が高く、及び/又は耐久性が優れている請求項15に記載の縫い目。
【請求項22】
縦方向に計測した前記縫い目領域の幅が、通常縫い目又は従来技術を用いて形成された縫い目の幅の一部であり、前記一部は0.7以下であり、好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.3以下である請求項15に記載の縫い目。
【請求項23】
上記終端がファブリック面の下にある請求項15に記載の縫い目。
【請求項24】
前記縫い目はピン縫い目又はインライン螺旋縫い目である請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記縫い目はピン縫い目又はインライン螺旋縫い目である請求項15に記載の縫い目。
【請求項26】
前記縫い目はピン縫い目又はインライン螺旋縫い目である請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2010−538179(P2010−538179A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524094(P2010−524094)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/074388
【国際公開番号】WO2009/032666
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】