説明

平面ランプ及びその作製法

【課題】 発光制御し易い平面ランプ、及び工程の簡略化、低コスト化を達成できる平面ランプ作製法の提供。
【解決手段】 エミッタ付カソード電極43、ゲート電極42、アノード電極45を持つフィールドエミッションディスプレイの構造において、ゲート電極42とカソード電極43とを、同一平面上に、かつ、これらの電極の表示部領域がお互いに平行になるように配置する。また、エミッタ付カソード電極43とゲート電極42との間隔が、100μm以下となるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面ランプ及びその作製法に関し、特に液晶ディスプレイパネルのバックライト用平面ランプ及びその作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界電子放出素子を、カソード電極、ゲート電極、アノード電極を持つ3極構造型で作製する場合、従来、下部基板上に形成したカソード電極上に絶縁層を設け、その上にゲート電極を設けて3極構造とすることが多い(例えば、特許文献1参照)。この場合、例えば、図1に示すように、下部基板11上にカソード電極12を設け、その上に絶縁層13を設け、この絶縁層に孔をあけて、その孔の底にエミッタ14を設け、絶縁層13の上にゲート電極15を設けるような構造や、又は下部基板21上にカソード電極22を設け、その上に絶縁層23を設け、この絶縁層に孔をあけ、その孔を導電性物質24で埋め込み、その導電性物質の上にエミッタ25を設け、また、絶縁層23上にゲート電極26を設けるような構造(サイドゲート構造)がとられており、これらの構造を用いて、表示素子を作製している。なお、図1における16及び図2における27は、上部基板上に設けるアノード電極を模式的に示すものであり、このアノード電極部と上記カソード電極部とを張り合わせて、電界電子放出素子を作製する。
【0003】
また、平面ランプを作製する場合は、カソード電極、アノード電極のみの2極構造型を作製し、アノード電圧の数kVでエミッタから電子放出を起こさせる機構をとることが知られている。この場合の2極構造の電子放出素子の構造を、模式的に図3に示す。図3に示すように、下部基板31上にカソード電極32を設け、このカソード電極上にエミッタ33を設けてなり、上部基板上にはアノード電極33が設けられる。このカソード電極部とアノード電極部とを張り合わせて、電界電子放出素子を作製する。
【特許文献1】特開2005−63965号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術を利用して平面ランプを作製する場合、従来の3極構造やサイドゲート構造といった複雑な構造にすると、絶縁層作製工程等が必要となるので作製工程が複雑になって、作製コストが高くなり、好ましくない。また、2極構造の場合は、作製工程は簡易であるが、電子放出を発生させるのが、アノード電極であるため、放出電子の制御が困難であり、面発光のムラが発生し易く、かつ、発光のON/OFFを制御するために、高電圧で行わなければならないという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、絶縁層を設けず、また、電子放出をアノード電極で行わないような構造とした平面ランプ、及び絶縁層作製工程等を省き、工程の簡略化、低コスト化を図った平面ランプの作製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の平面ランプは、基板上にエミッタ付カソード電極、ゲート電極、及びアノード電極を持つフィールドエミッションディスプレイの構造において、カソード電極とゲート電極とが同一平面上に配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記したように、ゲート電極とカソード電極とが同一平面上に配置されるように両電極を形成することで、発光制御し易い平面ランプを、簡単な工程で、低コストで提供することができる。
【0008】
また、本発明の平面ランプの作製方法は、基板上の所定の位置にゲート電極を形成する工程と、このゲート電極の隣りにカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程とを含み、又は基板上の所定の位置にカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程と、基板上に形成されたカソード電極の隣りにゲート電極を形成する工程とを含み、又は基板上の所定の位置にカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の隣りにゲート電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程とを含み、カソード電極とゲート電極とが同一平面上に配置されるようにこれらの電極を形成して、基板上にエミッタ付カソード電極、ゲート電極、及びアノード電極を持つフィールドエミッションディスプレイの構造における平面ランプを作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁層を設けず、また、電子放出をアノード電極で行わないような構造としたので、発光制御し易い平面ランプを、簡単な工程で、低コストで提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によれば、基板上にエミッタ付カソード電極、ゲート電極、及びアノード電極を持つフィールドエミッションディスプレイの構造において、ゲート電極とカソード電極とが同一平面上に配置されるように構成することにより、簡単な工程で、低コストで、発光制御し易い平面ランプを提供することができる。以下、本発明に係る平面ランプ及びその作製法の実施の形態を説明する。
【0011】
上記平面ランプにおいては、絶縁層を設けることなく、エミッタ付カソード電極とゲート電極との各表示部領域がお互いに平行に配置されて、ライン発光ができるようにされていることが好ましい。換言すれば、本発明の平面ランプにおいては、エミッタ付カソード電極及びゲート電極が、ストライプ状に配置されているので、絶縁層がなくとも、カソード電極とゲート電極との間が接触することはない。従って、液晶ディスプレイパネルのバックライトや照明用平面光源等として有用である。
【0012】
エミッタ付カソード電極とゲート電極との間隔が100μm以下となるように、これらの電極を配置することが好ましい。距離が100μmを超えると、電子放出電界が高くなってしまう。また、この距離の下限は、エミッタを構成するカーボンナノ材料によるカソード電極とアノード電極間の短絡を防止するという観点から、1μm程度が望ましい。
【0013】
エミッタ付カソード電極は、既知のプロセス条件に従い、スパッタ法、CVD法、又は印刷法により、基板上にカソード電極を形成し、次いでこのカソード電極の上にエミッタを印刷等で形成することにより作製されたものであり得る。
【0014】
カソード電極上に設ける電子放出用のエミッタは、電子放出源として知られているカーボンナノ材料から作製されたものであれば良い。このカーボンナノ材料としては、特に制限があるわけではなく、例えば、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー等のカーボンナノ材料を使用できる。
【0015】
エミッタ付カソード電極はまた、既知のプロセス条件に従い、スパッタ法、CVD法、又は印刷法により、基板上にカソード電極を形成し、次いでこのカソード電極の上に、上記カーボンナノ材料からなるエミッタをCVD法により既知のプロセス条件で直接形成することにより作製されたものでもあり得る。
【0016】
また、本発明によれば、基板上の所定の位置にゲート電極を形成する工程と、このゲート電極の隣りにカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程とを含み、ゲート電極とカソード電極とが同一平面上に配置されるようにこれらの電極を形成して、基板上にエミッタ付カソード電極、ゲート電極、及びアノード電極を持つフィールドエミッションディスプレイの構造における平面ランプを作製することができる。この場合、上記工程は、任意の順序で良く、例えば、基板上の所定の位置にカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程と、基板上に形成されたカソード電極の隣りにゲート電極を形成する工程とからなっていても、又は基板上の所定の位置にカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の隣りにゲート電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程とからなっていても良い。
【0017】
この平面ランプの作製法においても、上記平面ランプの構造について述べたと同様に、カソード電極とゲート電極との各表示部領域をお互いに平行に配置するように形成すること、カソード電極とゲート電極との間隔が100μm以下となるように、ゲート電極とカソード電極とを配置・形成すること、カソード電極を、スパッタ法、CVD法、又は印刷法で基板上に成膜・加工し、このカソード電極の上にエミッタを印刷等により形成すること、エミッタをカーボンナノ材料、例えばカーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー等から形成すること、また、カソード電極を、スパッタ法、CVD法、印刷法で基板上に成膜・加工し、次いでこのカソード電極の上に、上記カーボンナノ材料からなるエミッタをCVD法により直接作製することができる。
【0018】
電界電子放出ディスプレイ素子である本発明の平面ランプは、上記カソード基板と、別の上部基板上に、例えばITO膜等からなるアノード電極と公知の蛍光体とを成膜したアノード基板とを、スペーサを介して、所定の間隔で張り合わせて作製する。このアノード基板は、ガラス等の透明基板からなる上部基板上にアノード電極を形成し、この電極上に蛍光体を形成したものである。この素子は次のように動作する。
【0019】
すなわち、上記カソード電極及びゲート電極に駆動電圧を印加すると、カソード電極とゲート電極との間に電界が発生する。この発生した電界によりエミッタから電子が放出され、放出された電子は、アノード電極に印加された高電圧によりアノード電極方向に誘導されて電子ビームを形成する。この誘導された電子は、上部基板の蛍光体に衝突し、衝突により励起された電子を有する蛍光体は可視光をライン状に発光する。
【0020】
本発明で用いる基板としては、電界電子放出ディスプレイ素子で通常用いる基板であれば良く、例えばガラス基板等を用いることができる。
【0021】
本発明におけるカソード電極、ゲート電極、アノード電極、及び蛍光体は、公知の電界電子放出ディスプレイ素子に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、Cr膜、Al膜、W膜、Mo膜等からなるカソード電極、Cr膜、Al膜、W膜、Mo膜等からなるゲート電極、ITO膜等からなるアノード電極、CRT用の蛍光体を使用できる。また、エミッタを形成する際に、触媒を使用する場合、その触媒としては、カーボンナノ材料を成長させることができる公知の触媒金属であれば特に制限はなく、例えばFe、Co、Ni及びこれら金属の少なくとも1種を含む合金を挙げることができる。
【0022】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
ガラス基板上に、スパッタ法により、Crを200nm成膜した。このCr膜を、カソード電極とゲート電極とが50μmのギャップを持ち、平行になるようにパターニングした。カソード電極の表示部領域にFeからなる触媒層10nmを成膜した。この基板を用い、成長温度:550℃、成長時間:20分、プロセスガス比:CO/H=1.0の条件で、グラファイトナノファイバーを触媒層上に成長させ、下部基板としてのカソード基板を作製した。
【0024】
一方、別のガラス基板上に、公知のプロセス条件でITOと蛍光体とを成膜した上部基板としてのアノード基板を用意し、このアノード基板と上記のようにして作製したカソード基板とを、スペーサを介して3mmのギャップで張り合わて、パネルを作製した。
【0025】
かくして得られたパネル内を排気し、チップオフを行い、平面パネルを作製した。この平面パネルに対し、アノード電圧:5kVを印加し、ゲート電圧を100V印加したところ、面発光を確認できた。
【実施例2】
【0026】
ガラス基板上に、Agペーストを用いた印刷法により、カソード電極とゲート電極とが50μmのギャップを持ち、お互いに平行になるように、Agを3μm厚さに印刷した。カソード電極の表示部領域にダブルウォールカーボンナノチューブを含んだペーストを用いてエミッタを2μm厚さで印刷した。この基板を200℃で焼成し、ペースト内の不要な成分を除去した。
【0027】
一方、別のガラス基板上に、公知のプロセス条件でITOと蛍光体とを成膜した上部基板としてのアノード基板を用意し、このアノード基板と上記のようにして作製したカソード基板とを、スペーサを介して3mmのギャップで張り合わせ、パネルを作製した。
【0028】
かくして得られたパネル内を排気し、チップオフを行い、平面パネルを作製した。この平面パネルに対し、アノード電圧:5kVを印加し、ゲート電圧を100V印加したところ、面発光を確認できた。
【実施例3】
【0029】
実施例1におけるカソード電極とゲート電極との間のギャップを5、25、75、100、及び125μmとした以外は、全てのプロセス条件を同一にして、実施例1のプロセスを繰り返し、平面パネルを作製した。その結果、100μm以下で適切な電子放出電界が得られ、面発光を確認できたが、ギャップが125μmの場合は、電子放出電界が高くなるという問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、絶縁層を設けず、また、電子放出をアノード電極で行わないような構造とした発光制御し易い平面ランプを、簡単な作製工程で、低コストで作製することができるので、本発明は、電界電子放出素子を適用するディスプレイ分野で工業的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】3極構造の電子放出素子の構造を模式的に示す断面図。
【図2】サイドゲート構造の電子放出素子の構造を模式的に示す断面図。
【図3】2極構造の電子放出素子の構造を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の3極構造の電子放出素子の構造を模式的に示す断面図。
【図5】本発明の3極構造の電子放出素子の構造におけるカソード基板を俯瞰的にに示す平面図。
【符号の説明】
【0032】
41 下部基板 42 ゲート電極
43 カソード電極 44 エミッタ
45 アノード電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にエミッタ付カソード電極、ゲート電極、及びアノード電極を持つフィールドエミッションディスプレイの構造において、該カソード電極とゲート電極とが同一平面上に配置されていることを特徴とする平面ランプ。
【請求項2】
前記エミッタ付カソード電極とゲート電極との表示部領域が、お互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1記載の平面ランプ。
【請求項3】
前記エミッタ付カソード電極とゲート電極とが、100μm以下の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の平面ランプ。
【請求項4】
前記エミッタ付カソード電極が、スパッタ法、CVD法、又は印刷法により、基板上にカソード電極を形成し、次いでこのカソード電極の上にエミッタを印刷するか、又はCVD法により直接形成することにより作製されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平面ランプ。
【請求項5】
前記エミッタが、カーボンナノ材料からなるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の平面ランプ。
【請求項6】
基板上の所定の位置にゲート電極を形成する工程と、このゲート電極の隣りにカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程とを含み、又は基板上の所定の位置にカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程と、基板上に形成されたカソード電極の隣りにゲート電極を形成する工程とを含み、又は基板上の所定の位置にカソード電極を形成する工程と、このカソード電極の隣りにゲート電極を形成する工程と、このカソード電極の上にエミッタを形成する工程とを含み、該カソード電極とゲート電極とが同一平面上に配置されるようにこれらの電極を形成して、基板上にエミッタ付カソード電極、ゲート電極、及びアノード電極を持つフィールドエミッションディスプレイの構造における平面ランプを作製することを特徴とする平面ランプの作製法。
【請求項7】
前記カソード電極とゲート電極との表示部領域を、お互いに平行に配置するように形成することを特徴とする請求項6記載の平面ランプの作製法。
【請求項8】
前記カソード電極とゲート電極とを、100μm以下の間隔で配置するように形成することを特徴とする請求項6又は7記載の平面ランプの作製法。
【請求項9】
前記カソード電極を、スパッタ法、CVD法、又は印刷法により、基板上に形成し、次いでこのカソード電極の上にエミッタを印刷するか、又はCVD法により直接作製することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の平面ランプの作製法。
【請求項10】
前記エミッタをカーボンナノ材料で形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の平面ランプの作製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−73480(P2007−73480A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262430(P2005−262430)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【Fターム(参考)】