説明

平面型画像表示装置

【課題】この発明は、十分に満足のいく高い耐衝撃性能を有する平面型画像表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】扁平な真空外囲器10の前面基板2の外面には、耐衝撃保護層20が設けられている。耐衝撃保護層20は、前面基板2の外面2aに貼着された衝撃吸収層22、および衝撃吸収層22の外面22aに貼着された衝撃拡散層24を含む。衝撃拡散層24の表面24aには、光反射防止層26が貼着されている。衝撃吸収層22の上に積層された衝撃拡散層24は、比較的硬い材料により形成されており、真空外囲器10の外側から1点に集中する応力が加えられたとき、その力を面方向に拡散して衝撃吸収層22の全面に均一に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偏平な平面型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偏平な平面パネル構造の平面型画像表示装置として、液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイ(PDP)等が知られている。また、FEDの一種として、表面伝導型の電子放出素子を備えた平面型画像表示装置(以下、SEDと称する)の開発が進められている。
【0003】
例えば、SEDは、一定の隙間を置いて対向配置された前面基板および背面基板を有する。これらの基板は、矩形枠状の側壁を介して周縁部を互いに接合され、内部を真空にされて偏平な平面パネル構造の真空外囲器を構成している。
【0004】
透明な前面基板の内面には3色の蛍光体層が形成され、背面基板の内面には、蛍光体層を励起発光させる電子の放出源として、画素毎に対応する多数の電子放出素子が整列配置されている。また、背面基板の内面上には、電子放出素子を駆動するための多数本の配線がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器の外部に引き出されている。
【0005】
前面基板と背面基板の間には、大気圧荷重を支えるための支持部材として、複数枚の板状のスペーサが配設されている。これら複数のスペーサは、前面基板および背面基板の内面に当接することで基板間の隙間を維持するよう機能する。
【0006】
このSEDを動作させる場合、基板間に10[kV]程度の高電圧を与え、配線に接続した駆動回路を介して各電子放出素子に選択的に駆動電圧を印加する。これにより、各電子放出素子から選択的に電子ビームが放出され、これら電子ビームが、対応する蛍光体層に照射され、蛍光体層が選択的に励起発光されてカラー画像が表示される。
【0007】
この種の平面型画像表示装置の分野において、製品出荷時における表示面の保護、および使用時における表示面の破損を防止する目的で、耐衝撃性に優れた透明な表面保護層の開発が進められている。この種の表面保護層として、例えば、動的貯蔵剪断弾性率G’が1×10[Pa]以下のガラス割れ防止層が知られている(特許文献1参照。)。このガラス割れ防止層は、パネルの表示面に直接装着することで、表示面との間の空気層を無くし、2重映りの問題を解消し、表示装置の軽量化および薄型化にも寄与している。
【0008】
しかし、このガラス割れ防止層は、上述した平面パネル構造の平面型画像表示装置に要求される程度の耐衝撃性能を十分に満足するものではなかった。
【特許文献1】特開2004−184672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、十分に満足のいく高い耐衝撃性能を有する平面型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明の平面型画像表示装置は、透光性のある前面基板を含む外囲器内部に画像形成手段を有する平面型画像表示装置において、上記前面基板の外面に貼着された透明な衝撃吸収層と、この衝撃吸収層のさらに外面に貼着された衝撃拡散層と、を有する。
【0011】
上記発明によると、衝撃吸収層の外側に硬い衝撃拡散層を貼着したため、前面基板の外側から一点に集中した応力が加えられた場合であっても、その力を衝撃拡散層で拡散して衝撃吸収層に広く伝えることができ、応力の集中を防止して耐衝撃性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の表示装置は、上記のような構成および作用を有しているので、十分に満足のいく高い耐衝撃性能を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態に係る平面型画像表示装置の一例として、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)1について説明する。なお、本発明は、ここで説明するSED1にだけ適用されるものではなく、例えば、液晶表示装置、プラズマ表示装置、電気流動を利用した表示装置としての電子ペーパーなどの他の平面型画像表示装置にも適用できる。つまり、真空外囲器を持たない平面型画像表示装置にも本発明を適用できる。
【0014】
図1は、前面基板2を部分的に切り欠いた状態のSED1の真空外囲器10を示す斜視図であり、図2は、図1の真空外囲器10を線分II-IIで切断した断面図であり、図3は、図2の断面を部分的に拡大した部分拡大断面図である。SED1は、図1に示す真空外囲器10に駆動回路や電源回路を接続して背面側に図示しない筐体を取り付けることによって構成される。
【0015】
図1乃至図3に示すように、真空外囲器10は、それぞれ矩形の透明なガラス板からなる前面基板2および背面基板4を備え、これらの基板は約1.0〜2.0mmの隙間をおいて互いに平行に対向配置されている。なお、背面基板4は、前面基板2より1回り大きいサイズを有する。また、前面基板2および背面基板4は、ガラスからなる矩形枠状の側壁6を介して周縁部同士が接合され、内部が真空の扁平な平面パネル構造の真空外囲器10を構成している。
【0016】
前面基板2の内面には画像表示面として機能する蛍光体スクリーン12が形成されている。この蛍光体スクリーン12は、赤、青、緑の蛍光体層R、G、B、および遮光層11を並べて構成され、これらの蛍光体層はストライプ状あるいはドット状に形成されている。また、蛍光体スクリーン12上には、アルミニウム等からなるメタルバック14が形成されている。
【0017】
背面基板4の内面には、蛍光体スクリーン12の蛍光体層R、G、Bを励起発光させるための電子を放出する電子放出源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子16が設けられている。これらの電子放出素子16は、画素毎、すなわち蛍光体層R、G、B毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子16は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板4の内面上には、各電子放出素子16に駆動電圧を与えるための多数本の配線18がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引き出されている。なお、上述した複数の蛍光体層R、G、B、および複数の電子放出素子16は、この発明の画像形成手段として機能する。
【0018】
接合部材として機能する側壁6は、例えば、低融点ガラス、低融点金属等の封着材19により、前面基板2の周縁部および背面基板4の周縁部に封着され、これらの基板同士を接合している。本実施の形態では、背面基板4と側壁6をフリットガラス19aを用いて接合し、前面基板2と側壁6をインジウム19bを用いて接合した。もし、配線18のある背面基板4と側壁6を低融点金属で封着する場合は、配線18と封着材19の電気ショートを避けるため、中間層として絶縁層を設ける必要がある。
【0019】
また、真空外囲器10は、前面基板2と背面基板4の間にガラスからなる複数の細長い板状のスペーサ8を備えている。本実施の形態において、スペーサ8は、複数の細長いガラス板としたが、矩形板状の金属板からなるグリッド(図示せず)と、グリッドの両面に一体的に立設された多数の柱状のスペーサ(図示せず)と、で構成しても良い。
【0020】
各スペーサ8は、上述したメタルバック14、および蛍光体スクリーン12の遮光層11を介して前面基板2の内面に当接する上端8a、および背面基板4の内面上に設けられた配線18上に当接する下端8bを有する。しかして、これら複数のスペーサ8は、前面基板2および背面基板4の外側から作用する大気圧荷重を支持し、基板間の間隔を所定値に維持している。
【0021】
さらに、SED1は、前面基板2のメタルバック14と背面基板4との間にアノード電圧を印加する図示しない電圧供給部を備えている。電圧供給部は、例えば、背面基板4の電位を0Vに設定し、メタルバック14の電位を10kV程度にするよう、両者の間にアノード電圧を印加する。
【0022】
そして、上記SED1において、画像を表示する場合、配線18に接続した図示しない駆動回路を介して電子放出素子16の素子電極間に電圧を与え、任意の電子放出素子16の電子放出部から電子ビームを放出するとともに、メタルバック14にアノード電圧を印加する。電子放出部から放出された電子ビームは、アノード電圧により加速され、蛍光体スクリーン12に衝突する。これにより、蛍光体スクリーン12の蛍光体層R、G、Bが励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0023】
また、上記構造のSED1の真空外囲器10を製造する場合、予め、蛍光体スクリーン12およびメタルバック14の設けられた前面基板2を用意し、電子放出素子16および配線18が設けられているとともに側壁6およびスペーサ8が接合された背面基板4を用意しておく。そして、前面基板2、および背面基板4を図示しない真空チャンバ内に配置し、真空チャンバ内を真空排気した後、側壁6を介して前面基板2を背面基板4に接合する。これにより、複数のスペーサ8を備えた真空外囲器10が製造される。
【0024】
ところで、上記SED1は、図1に示した真空外囲器10に各種回路を接続して背面側に筐体を取り付けて製造されるが、当然のことながら表示面側、すなわち前面基板2の外面側には筐体が取り付けられることはない。このため、製品の出荷時には、前面基板2の表示面が露出した状態となっており、SED1を出荷のため梱包する際には、表示面を破損しないように注意が必要となる。また、出荷した後、表示装置として使用する際にも、外部から前面基板2の表示面(外面)に強い衝撃が加わらないよう注意する必要がある。
【0025】
いずれにしても、この種の平面パネル構造の平面型画像表示装置では、その表示面に強い衝撃が加わった場合、パネルを壊してしまう危険性があるため、この種の平面型画像表示装置の表示面には、耐衝撃性能を高める目的で、耐衝撃保護層が設けられる。
【0026】
図4には、上述した真空外囲器10の前面基板2の外面に耐衝撃保護層20を設けた構造物の断面図を示してある。なお、ここでは、表示面の衝撃吸収構造について詳細に説明するため、真空外囲器10の構造については詳細な説明を省略する。特に、図4では、真空外囲器10の内部構造の図示を省略した。
【0027】
耐衝撃保護層20は、真空外囲器10の前面基板2の外面2aに貼着された衝撃吸収層22、およびこの衝撃吸収層22の外面22aに貼着された衝撃拡散層24を含む。また、衝撃拡散層24の外面24aには、光反射防止層26が貼着されている。
【0028】
衝撃吸収層22は、外部からの衝撃を効果的に吸収するため、20[℃]での動的貯蔵剪断弾性率G’が1×10[Pa]以下のポリマーを主体とする材料により形成されている。これに対し、動的貯蔵剪断弾性率G’が1×10[Pa]を超える材料を主体にして衝撃吸収層22を形成すると、衝撃吸収能力が不十分となり、SED1の真空外囲器10に要求される耐衝撃吸収能力を得ることができない。
【0029】
また、この衝撃吸収層22は、十分な表示輝度を確保するため、可視光の全光線透過率が90[%]以上の透明ポリマーを用いて形成することが望ましい。この全光線透過率とはJISK7361に準拠して測定したものである。これに対し、全光線透過率が90[%]未満のポリマーを衝撃吸収層22に使用した場合、後述するように色素を含ませた際に、蛍光体層R、G、Bから発光される蛍光の透過が不十分となり、SED1として輝度の低下を生じる。
【0030】
可視光の全光線透過率が90[%]以上の透明樹脂として、例えば、ゴム状またはゲル状のシリコーン硬化物であるシリコーン樹脂がある。この他に、可視光の全光線透過率が90[%]以上の透明樹脂として、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォンなどがある。本実施の形態では、この中でも比較的透明性の高いシリコーン樹脂を用いて衝撃吸収層2を形成するようにした。
【0031】
なお、この衝撃吸収層22の厚さは、0.2〜6[mm]とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜1[mm]とすることが好ましい。すなわち、SED1の衝撃吸収層22に要求される衝撃吸収能力に対して、衝撃吸収層22の厚さは、少なくとも0.2[mm]以上必要となる。また、衝撃吸収層22の厚さは、厚ければ厚いほど衝撃吸収力を大きくできるが、厚くなりすぎるとその分重量が重くなり、製造工程に負担がかかるため、衝撃吸収層22の厚さは6[mm]以下とすることが好ましい。
【0032】
ところで、このような衝撃吸収層22に、その透明性を損なわない範囲内で染料や顔料(有機顔料、無機顔料)などの色素を含有させることで、透過スペクトルを調整することができ、SED1の輝度コントラストを向上させることができることが分かっている。また、衝撃吸収層22は、後述する衝撃拡散層24と比較して柔らかく色素を含有し易いため、この衝撃吸収層22に色素を含有させる。このため、本実施の形態では、上述した表示輝度をある程度犠牲にして、衝撃吸収層22に色素を含有させて分光透過特性を調整するようにした。すなわち、全光線透過率が70[%]以上で、波長380〜780[nm]における最大吸収波長が560〜580[nm]で、最大吸収波長における透過率が80[%]以下の衝撃吸収層22を形成した。
【0033】
このように、SED1の輝度コントラストを向上させるためには、衝撃吸収層22に色素を含有させて全光線透過率を下げたほうがよいが、表示輝度の限界を考えると、全光線透過率は70[%]以上とすることが好ましい。また、波長380〜780[nm]の範囲内における最大吸収波長における透過率を80[%]以下とすることで、輝度低下の影響をできるだけ少なくしつつコントラストを上げることができる。
【0034】
言い換えると、衝撃吸収層22の透過率と最大吸収波長を上記の範囲に設定するため、色素の含有割合を、衝撃吸収層22の主成分である透明樹脂(例えばシリコーン樹脂)に対して0.0005〜0.005[重量%]にした。
【0035】
一方、上記衝撃吸収層22の上に積層する衝撃拡散層24は、外部からの衝撃を効果的に拡散するため、JISA6253硬度が60以上の透明な硬質材により形成されている。このように、比較的硬い材料によって形成した衝撃拡散層24を衝撃吸収層22の上に積層することで、外部から与えられる衝撃を面方向に拡散してその衝撃エネルギーを分散して衝撃吸収層22に伝えることができ、衝撃エネルギーの吸収を助けることができる。言い換えると、外部からの衝撃を効率よく拡散するためには、硬度が60以上ある硬質材を用いて衝撃拡散層24を形成することが望ましい。
【0036】
このように、表示パネルと衝撃拡散層24との間に衝撃吸収層22を挟むサンドイッチ構造を採用することにより、例えば、表示パネル(前面基板2)の外部から1点に集中する強い力が加えられたとき、表示パネルを破壊し得る強い力を衝撃拡散層24でパネルの面方向に拡散させることができ、前面基板2の全面に広がる弱い力に分散させることができる。そして、このように、集中した強い力が広い面積に均一にかかる弱い力に分散されて衝撃吸収層22に伝達され、前面基板2に1点に集中して加わる外部応力を効果的に吸収できる。
【0037】
なお、この衝撃拡散層24には、衝撃吸収層22と同様、可視光の全光線透過率が90[%]以上の透明な材料を用いることが望ましい。衝撃拡散層24に用いる透明な硬質材として、例えば、ガラス、強化ガラス、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、スチレン・アクリロニトリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル、ビニルエステル樹脂などがある。本実施の形態では、比較的透明性の高い、強化ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル等を衝撃拡散層24として使用した。
【0038】
また、衝撃拡散層24の厚さは、0.5〜5[mm]とすることが好ましい。すなわち、衝撃拡散層24の厚さが厚ければ厚いほど衝撃拡散力が大きくなるが、薄すぎると、SED1の耐衝撃保護層20に要求される十分な衝撃拡散効果が得られず、厚くなりすぎると、重量が重くなり製造工程に負担がかかるとともに、光の透過率も低下するため、衝撃拡散層24の厚さは、上記範囲とすることが望ましい。
【0039】
さらに、本実施の形態では、上述した衝撃拡散層24の上に光反射防止層26を貼着した。光反射防止層26は、例えば、可視光の反射率が1[%]以下、好ましくは0.5[%]以下となるように、反射防止処理を施す方法、または写り込み防止処理を施す方法などにより形成される。光反射防止層26の透明基材としては、PET、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン系ポリマーなどがある。
【0040】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
まず、付加重合型シリコーン樹脂の主剤と硬化剤を1対1で混合して、さらに上述した範囲内の色素を混合・分散し、得られたシリコーン組成物を撹拌した後真空脱泡した。そして、この真空脱泡したシリコーン組成物を専用の金型に注入して、100[℃]で1時間加熱硬化させ、金型からシリコーンを取り出して、衝撃吸収層22のシートを作製した。
【0041】
さらに、このシートをSED1のサイズに合わせて形状加工した衝撃吸収層22を、上述したSED1の真空外囲器10の前面基板2の外面2aに貼り付け、その上にポリカーボネート樹脂で形成した同じサイズの衝撃拡散層24を貼り付けた。さらに、この衝撃拡散層24の表面24aに、ウレタン系樹脂を基材とする接着剤付き光反射防止層26を貼り付けた。
【0042】
上記のように、衝撃吸収層22、衝撃拡散層24、光反射防止層26の順に積層した耐衝撃保護層20を有するSEDパネルをパネルAとし、衝撃拡散層24の無いSEDパネル(すなわち、衝撃吸収層22と光反射防止層26を積層した従来のSEDパネル)をパネルBとし、光反射防止層26だけを付けたSEDパネルをパネルCとし、各パネルに対して以下に説明する耐衝撃強度試験を実施した。
【0043】
すなわち、耐衝撃強度試験では、重量1[kg]の円柱状の落下物を用意し、この円柱状の落下物の側面に圧電式加速度計を取り付け、この落下物を軸方向に落下させるためのひとまわり大きい円筒状のガイドを設置した。そして、一定の高さから上記落下物をパネルA、パネルB、パネルCそれぞれの前面基板2に向けて落下させ、パネルに衝突したときの落下物の加速度を、落下物に取り付けた圧電式加速度計にて測定した。
【0044】
このとき、各パネルに与えられる衝撃エネルギーは、落下物の重量(kg)×重力加速度(9.8m/s)×落下高さ(m)となる。また、このとき、圧電式加速度計にて測定される衝撃加速度に基づいて、落下物への反発エネルギーとしての衝撃力は、落下物の重量(kg)×衝撃加速度計測値(m/s)で算出される。つまり、本実施例のように、各パネルに対する落下物の落下高さを一定にして各パネルに与える衝撃エネルギーを同じにした場合、パネルA、B、Cそれそれで得られる衝撃力の大きさは、衝撃加速度の計測値に比例することになる。
【0045】
本実施例における耐衝撃強度試験の結果、各パネルに与えられる衝撃力の大小関係は、パネルA<パネルB<パネルCとなった。つまり、前面基板2に衝撃吸収層22を貼着した場合、更には衝撃拡散層24を貼着した場合ほど、パネル自体に与えられる衝撃力が小さくなることが分かった。この試験結果から、本実施例の耐衝撃保護層20による衝撃吸収効果、および衝撃拡散効果が確認できた。
【0046】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0047】
例えば、上述した実施の形態では、SED1の真空外囲器10の前面基板2の外面2aに衝撃吸収層22を貼着し、その上に衝撃拡散層24を貼着し、さらにその上に光反射防止層26を貼着した場合について説明したが、これに限らず、光反射防止層26は発明に必須の構成要素ではない。
【0048】
また、上記した実施の形態では、平面型画像表示装置として、表面伝導型の電子放出素子を有するSEDについて代表して説明したが、これに限定されるものではなく、どのような構造の電子放出素子をもつものであっても本発明を適用することができる。例えば、pn型の冷陰極素子あるいは電界放出型の電子放出素子のような他の電子放出素子を用いた平面型画像表示装置に本発明を適用できる。
【0049】
また、衝撃吸収層22、および衝撃拡散層24の材質、硬さ、厚さなどは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲内で適宜変更できる。つまり、本発明の平面型画像表示装置は、表示パネルの表示面に衝撃吸収層22を貼着し、その上に比較的硬い衝撃拡散層24を貼着したことを特徴としており、外部から一点に集中して与えられる力を衝撃拡散層24で面方向に拡散し、この拡散された力を衝撃吸収層22で吸収するようにしたものであり、各層の材質、硬さ、厚さなどは、外部衝撃を効果的に吸収可能な範囲内で適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態に係るSEDの真空外囲器を示す外観斜視図。
【図2】図1の真空外囲器を線分II−IIに沿って切断した断面斜視図。
【図3】図2の断面を部分的に拡大して示す部分拡大断面図。
【図4】図1の前面基板の外面に設けた耐衝撃保護層について説明するための断面図。
【符号の説明】
【0051】
1…SED、2…前面基板、4…背面基板、6…側壁、8…スペーサ、10…真空外囲器、12…蛍光体スクリーン、14…メタルバック、16…電子放出素子、18…配線、20…耐衝撃保護層、22…衝撃吸収層、24…衝撃拡散層、26…光反射防止層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のある前面基板を含む外囲器内部に画像形成手段を有する平面型画像表示装置において、
上記前面基板の外面に貼着された透明な衝撃吸収層と、
この衝撃吸収層のさらに外面に貼着された衝撃拡散層と、
を有することを特徴とする平面型画像表示装置。
【請求項2】
上記衝撃吸収層および衝撃拡散層は、80[%]以上の全光線透過率を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型画像表示装置。
【請求項3】
上記衝撃吸収層は、20[℃]での動的貯蔵剪断弾性率G’が1×10[Pa]以下の材料により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の平面型画像表示装置。
【請求項4】
上記衝撃吸収層は、20[℃]での動的貯蔵剪断弾性率G’が1×10[Pa]以下のシリコーン樹脂により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の平面型画像表示装置。
【請求項5】
上記衝撃吸収層の厚さは、0.2〜6[mm]であることを特徴とする請求項3に記載の平面型画像表示装置。
【請求項6】
上記衝撃吸収層の厚さは、0.5〜1[mm]であることを特徴とする請求項5に記載の平面型画像表示装置。
【請求項7】
上記衝撃吸収層は、0.0005〜0.005[重量%]の色素を含有することを特徴とする請求項5に記載の平面型画像表示装置。
【請求項8】
上記衝撃吸収層は、70[%]以上の全光線透過率を有し、且つ波長380〜780[nm]における最大吸収波長が560〜580[nm]であり、この最大吸収波長における透過率が80[%]以下の材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型画像表示装置。
【請求項9】
上記衝撃拡散層の外面に透明な光反射防止層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平面型画像表示装置。
【請求項10】
上記衝撃拡散層は、JISA6253硬度が60以上の硬質材により形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の平面型画像表示装置。
【請求項11】
上記衝撃拡散層は、ポリカーボネート、アクリル、および強化ガラスのいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項10に記載の平面型画像表示装置。
【請求項12】
上記衝撃拡散層の厚さは、0.5〜5[mm]であることを特徴とする請求項9または請求項11に記載の平面型画像表示装置。
【請求項13】
上記衝撃拡散層の外面に透明な光反射防止層をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の平面型画像表示装置。
【請求項14】
上記外囲器は、上記前面基板に対向する背面基板を有し、
上記画像形成手段は、上記前面基板の内面に形成された複数の蛍光体層、およびこれら複数の蛍光体層に対応して上記背面基板の内面に形成された複数の電子放出素子を有することを特徴とする請求項1に記載の平面型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−191336(P2008−191336A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24591(P2007−24591)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】