平面導波路および光ファイバ結合
光伝送要素間で光を光学的に結合する装置が提供される。この装置は、第1の光伝送要素および第2の光伝送要素を含み、第1の光伝送要素は平面光導波路、回折格子結合器および透明基板を含み、第2の光伝送要素光ファイバを含む。平面光導波路はシリコンを含み、透明基板はガラスを含むのが好ましい。光伝送要素間において光を結合する方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本願は、2009年11月24日に出願された「Planar Waveguide And Optical Fiber Coupling」という名称の米国特許出願第12/624847号による優先権を主張する。本願は該文献の内容に依存し、その全体を参照して本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的に、平面光導波路と光ファイバとの間の光学的結合に関し、特に、透明基板上の平面光導波路と、角度をつけて劈開された光ファイバとの間の、回折格子結合器を用いた光学的結合であって、光ファイバの軸が基板平面に概ね平行な光学的結合に関する。
【背景技術】
【0003】
短距離(<1km)用途の低コストの光リンクでは、しばしば、光源および検出器に対する位置合わせの許容誤差が緩和されることを理由として、マルチモード光ファイバが用いられる。マルチモードファイバのコアの大きなサイズにより、一般的に用いられるファブリーペローまたはVCSELレーザ源及び広面積検出器に関する光学的相互接続の横方向、角度方向および軸方向の位置ずれに対する寛容度が高くなる。この手法は、単一の光学波長を用いてリンクシグナリングが行われる低速〜中速のデータ速度の用途によく適している。
【0004】
より高いリンク帯域幅性能が必要な場合には、WDM(波長分割多重)を用いて、複数の信号を単一の光ファイバ上に多重化するのが望ましい。この手法は、マルチモードファイバに固有の長さ−帯域幅の制限を回避するための短いリンクの用途、およびシングルモードファイバを用いるより長いリンクの用途の両方に適している。これらの場合には、一般的に、リンクのソース端および受信器端において、波長多重化(MUX)処理および波長多重分離(DEMUX)処理がそれぞれ必要である。
【0005】
平面光波回路(PLC)は、光学的MUXおよびDEMUX処理を行うのによく適している。屈折率のコントラストが高い導波路は、タイトな導波路の曲がりを低い光損失で実装可能にする。これにより、小さいチップ上にコンパクトなMUX装置およびDEMUX装置を作ることができ、チップコストが低減されると共に、パッケージ全体のサイズが低減される。例えば、MUXおよびDEMUX処理は、特定の波長で動作するよう容易に調整可能なIIR(Infinite Impulse Response)リング共振器フィルタ装置を用いて実行され得る。他のリンクおよびネットワーク用途へとプラットフォームを拡張するために、PLCを用いて、スイッチ、変調器およびパワースプリッタ等の他の装置も実装され得る。
【0006】
チップのエッジにおいて、マルチモードファイバを高屈折率コントラストPLC導波路にバットカップリングするのが比較的簡単であるが、この相互接続は、チップのエッジにおいて結合が生じることが必要なので、PLCのレイアウトに制約を生じると共にチップを気密シールする際の制限を生じ、必ずしも現実的ではなく、または望ましくない。この用途で一般的に用いられるレンズ付きマルチモードファイバおよび単一モードファイバは、PLC導波路への低損失結合のために精密な位置合わせを必要とする。
【0007】
PLC導波路へのファイバ結合のための1つの手法は、回折格子結合器素子を含む。回折格子結合器は、一般的に、光ファイバから結合器に入射する光を捕捉してPLC導波路に沿って導波するための広いテーパ形状に実装される。光ファイバは、一般的に、PLC基板に対して垂直に配置される。同じ素子を逆に動作させて、PLC導波路から光ファイバへと光を送り出すこともできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態は、光伝送要素間で光を光学的に結合する装置を含む。この装置は、第1の光伝送要素および第2の光伝送要素を含む。第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含む。透明基板は、平面光導波路および回折格子結合器の片側に配設される。第2の光伝送要素は、光ファイバを含む。光ファイバは縦軸に沿って延び、コアおよびクラッドを含み、角度のついた先端部を有する。光ファイバの縦軸は、平面光導波路の長手方向の経路に略平行である。
【0009】
別の実施形態は、光伝送要素間で光を光学的に結合する方法を含む。この方法は、第1の光伝送要素と第2の光伝送要素との間で光を伝送することを含む。第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含む。透明基板は、平面光導波路および回折格子結合器の片側に配設される。第2の光伝送要素は、光ファイバを含む。光ファイバは縦軸に沿って延び、コアおよびクラッドを含み、角度のついた先端部を有する。光ファイバの縦軸は、平面光導波路の長手方向の経路に略平行である。光は、平面光導波路と、回折格子結合器と、光ファイバのコアとの間で伝送される。
【0010】
更なる特徴および長所は、以下の詳細な説明で述べられ、その一部はその説明から当業者に自明であり、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識される。
【0011】
上記の概要説明および以下の詳細説明は共に例示的な実施形態を示すものであり、特許請求の範囲の性質および特徴の理解のための概観または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部をなすものである。図面は様々な実施形態を示し、記載と共に、様々な実施形態の原理および動作を説明する役割をするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に開示される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の一実施形態の側面を切り取った図
【図2】それぞれ異なる幅を有する光ビーム源についての空気中およびガラス中の光ビーム回折のグラフ
【図3】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図4】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図5】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図6】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図7】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図8】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図9】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図10】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図11】ガラス基板上にパターニングされたシリコン平面光導波路および回折格子結合器の斜視図
【図12A】図11に示されている回折格子結合器の有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを示す図
【図12B】図11に示されている回折格子結合器の有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを示す図
【図12C】図11に示されている回折格子結合器の有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを示す図
【図13】図11に示されている回折格子結合器の電界の平面図
【図14】図11に示されている回折格子結合器のシミュレーションされた出力パワーのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本好ましい実施形態を詳細に参照する。その例が添付の図面に示されている。
【0014】
図1は、光ファイバ120に光学的に結合された平面光導波路102の一実施形態の側面を切り取った図を示す。光ファイバ120は、シングルモードファイバまたはマルチモードファイバであり得る。平面光導波路102は、長手方向の経路に沿って、透明基板104の底面に沿って延びる。光は、矢印108によって示されるように、平面光導波路102に沿って伝搬されて、回折格子結合器106に到達する。次に、矢印112によって示されるように、回折格子結合器106は光の方向を変え、光は垂直方向に透明基板104を通り、光ファイバ120のクラッド122を通り、光ファイバ120のコア124に入る。図1に示されている実施形態では、平面光導波路102、回折格子結合器106および透明基板104が組み合わさって第1の光伝送要素110を構成する。図1に示されている実施形態では、光ファイバ120は第2の光伝送要素として作用する。光ファイバ120は縦軸に沿って延び、コア124と、クラッド122と、角度のついた先端部126を有する端部とを含む。角度のついた先端部126を有する端部は、角度のついた面128を含む。114によって示されるように、光112は角度のついた面128によって反射され、矢印116によって示されるように、光ファイバ120のコア124に沿うよう方向を変えられる。図1からわかるように、光ファイバ120の縦軸は、平面光導波路102の長手方向の経路に略平行である。
【0015】
光ファイバ120は、マルチモード光ファイバであるのが好ましい。光ファイバ120のコアの直径は少なくとも40μmであるのが好ましく(例えば少なくとも50μm)、50〜62.5μmのコア直径を有する光ファイバを含む。
【0016】
角度のついた面128を含む角度のついた先端部126は、例えば、当業者に周知のレーザ劈開法によって、精密な機械的ファイバ劈開法によって、または機械的研磨法によって作られ得る。
【0017】
本明細書で用いる「透明」という用語は、固体材料を透過する動作波長の放射の少なくとも70%が、材料によって吸収または散乱されるのではなく、材料を通って伝送されることを意味する。特に好ましい透明材料は、材料を透過する動作波長の放射の少なくとも90%が、材料によって吸収または散乱されるのではなく、材料を通って伝送されるものを含む。
【0018】
本発明を限定するものではないが、透明基板の好ましい材料は、例えば、実質的に純粋なSiO2ガラスまたはホウケイ酸塩ガラス(例えばコーニング(登録商標コード1737ガラス)等のガラスである。透明基板の他の好ましい材料としては、可視波長から近赤外波長までの範囲内(例えば、約400nm〜約1700nmの波長)において(上記の定義のように)透明なガラスセラミックおよび他のセラミックが挙げられる。
【0019】
本発明を限定するものではないが、平面光導波路の好ましい材料はシリコン(Si)である。他の好ましい材料としては、ゲルマニウム(Ge)、シリコン−ゲルマニウム(SiGe)および炭化シリコン(SiC)が挙げられる。
【0020】
本明細書で用いる「反射(性)」という用語は、固体材料表面に当たる動作波長の光パワーの少なくとも25%が表面によって反射されることを意味する。
【0021】
本明細書で用いる「部分反射(性)」という用語は、固体材料表面に当たる動作波長の放射の少なくとも1%が表面によって反射されることを意味する。
【0022】
平面光導波路102は、当業者に周知の技術を用いて透明基板104上にパターニングまたは形成され得る。例えば、平面光導波路102は、当業者に周知のフォトリソグラフィ法を用いて、透明基板104上にパターニングされ得る。そのようなフォトリソグラフィ法は、回折格子結合器106の形成にも用いられ得る。図1の側面を切り取った図は、1つの平面光導波路102および1つの回折格子結合器106を示しているが、単一の透明基板104上に複数の平面光導波路および回折格子結合器がパターニングまたは形成され得ることを理解されたい。そして、図1に示されているのと同様の方法で、各平面光導波路に1つの光ファイバを光学的に結合できる。このようにして、一列の光ファイバを一列の平面光導波路に光学的に結合できる。
【0023】
図1に示されるように、透明基板104は、平面光導波路102と光ファイバ120との間に配設され、光が回折格子結合器106から透明基板104を通って光ファイバ120のコア124に至るよう向けられる。換言すれば、平面光導波路102は透明基板104の片側であって光ファイバ120とは反対側に配設される。この構成により、例えば光ファイバ120との位置合わせ中に、透明基板104が回折格子結合器106を損傷から保護できる。更に、透明基板は、光ファイバ120の角度のついた先端部126の機械的支持を提供でき、これにより、回折格子結合器106に対する光ファイバ120のより正確で安定した配置も可能になる。更に、光学的相互接続の設計に応じて、光ファイバ120に近接した透明基板104の表面は、平面光導波路102または回折格子結合器106に損傷を生じずに、クリーニングされるかまたは別様で処理される。また、透明基板104は、透明基板の平面光導波路102と同じ側にある任意の能動素子(例えば平面光導波路102に相互接続される素子等)を保護する気密バリアの役割をし得る。
【0024】
図1には示されていないが、透明基板104は、光ファイバ120の縦軸と位置合わせされる溝等の位置合わせ要素を有するようパターニングされ得る。溝は、位置合わせ要素として作用する他に、光学的機能を提供し得る。即ち、光が透明基板104の(溝が無ければ)平坦な面から光ファイバ120のクラッド122の湾曲したまたは円筒状の面を通る際の光の屈折によって生じる非点収差を最小化する。光ファイバ120のクラッド122の外面の外側の曲率と一致する曲面を有する溝が作られる場合には、(溝が無い場合に)平坦な面と曲面との間の屈折によって生じる非点収差を大きく軽減できる。例えば、そのような曲面を有する溝は、フッ化水素中でのエッチングによって透明基板104に設けることができる。更に、溝の断面が光ファイバ120のクラッド122の外半径の曲率と完全には一致せず、透明基板104と光ファイバ120の外半径との間に空隙が残る場合には、屈折率が一致するゲル等の材料で溝を埋めることにより、上述の屈折の影響を最小化できる。
【0025】
更に、透明基板104の表面、好ましくは光ファイバに近接した表面を、当業者に周知の技術に従って、光学ビームを集束、コリメート、または別様で整形する等の1以上の光学的機能を実行するよう加工または構成することが可能である。例えば、平面光導波路102と光ファイバ120との間の結合効率を向上させるために、透明基板104の表面にレンズまたは回折格子が形成され得る。更に、透明基板104の表面に反射防止コーティングを塗布することにより、ガラス‐空気界面におけるフレネル反射に起因する光パワーの損失を低減してもよい。
【0026】
回折格子結合器106の設計は、以下に記載する実施形態で示されるどの特定の設計にも限定されず、矢印108によって示される平面光導波路102を通る伝搬方向に対して90°以外の角度で光の方向を変える回折格子結合器を含み得る。例えば図5および図6に示されるように、90°以外の角度で光の方向を変える回折格子結合器は、角度のついた面128による全内部反射によって光の方向が変えられるのを可能にするよう構成され得る。例えば、格子は、二次格子(二次格子は、その平面において反射または光を伝送することに加えて、主に、平面光導波路102を通る伝搬方向に対して約90°の角度で光を垂直方向に反射する)に限定される必要はなく、三次格子、四次格子、五次格子等のより高次の格子を含み得る。そのようなより高次の格子は、二次格子と比較してピッチサイズ即ち周期が大きく、その結果、平面光導波路102を通る光の伝搬に対して約90°以外の角度で光を反射できる。例えば、三次格子は、平面光導波路102を通る光の伝搬に対して上に向かってまたは下に向かって約60°および120°の角度で光の方向を変えることができる。格子は、偏光の影響を受けるものを含んでもよく、従って、回折格子結合器106は、平面光導波路102と光ファイバ120との間で伝送される光を偏光するために用いられてもよい。
【0027】
図1に示されている実施形態では、第1の光伝送要素110は、平面光導波路102の光ファイバ120とは反対側には、基板(または固体の材料)を持たない。図1に示されている実施形態では、回折格子結合器106は透明基板104中には延びていない。
【0028】
好ましい実施形態では、透明基板104は、上述の機械的支持、ファイバの配置、および保護を提供するのに十分な厚さを有する。透明基板104は、少なくとも100μmの厚さ(例えば、100μm〜5000μmの厚さ)を有するのが好ましい。透明基板104は、少なくとも200μmの厚さ(例えば、200μm〜2000μmの厚さ、更には500μm〜1000μmの厚さ等)を有するのがより好ましい。
【0029】
この点に関して、透明基板104としてガラスを用いることは、空気中の伝搬と比較して、伝搬中のビーム回折を低減する一助となり、それにより、回折格子結合器106と光ファイバ120との間の距離をより大きくすることが可能になり、ひいては、より良好な機械的特性を有するより厚い透明基板104の使用が可能になる。図2は、回折格子結合器から派生した、それぞれ異なる幅を有しそれぞれの波長λが1.55μmである光学ビームが、空気(屈折率n=1.0)を通って伝搬する際にどのように回折するかを、ガラス基板材料(屈折率n=1.45)と比較して示している。具体的には、図2は、空気を通って伝搬される8μmのウエスト部を有するビーム(10)と、ガラスを通って伝搬される8μmのウエスト部を有するビーム(12)と、空気を通って伝搬される25μmのウエスト部を有するビーム(14)と、ガラスを通って伝搬される25μmのウエスト部を有するビーム(16)と、空気を通って伝搬される50μmのウエスト部を有するビーム(18)と、ガラスを通って伝搬される50μmのウエスト部を有するビーム(20)とを示している。図2からわかるように、ガラス中のビームの伝搬は、空気中のビームの伝搬と比較して、所与の回折量に対する、回折格子結合器と光ファイバの外面との間の離間をより大きくする余裕がある。これにより、機械的強度が向上したより厚い透明基板の処理および使用が可能になる。
【0030】
本明細書に開示される実施形態(例えば図1に示されている実施形態)は、平面光導波路と光ファイバとの間の比較的低い結合損失を依然として達成しつつ、上述の機械的支持、ファイバ配置、および保護を有する、平面光導波路と光ファイバとの間の光学的結合に備えることができる。例えば、本明細書に開示される実施形態は、第1の光伝送要素110(平面光導波路102を含む)と第2の光伝送要素(光ファイバ120を含む)との間の光学的結合であって、第1の光伝送要素と第2の光伝送要素との間の光学放射の結合損失は75%未満(例えば80%未満、更には例えば85%未満、更には例えば90%未満)である光学的結合を提供できる。
【0031】
図3は、第1の光伝送要素110がバッファ層130および反射面を有する層140を更に含むこと以外は、図1に示されている実施形態と類似の実施形態の側面を切り取った図を示す。図3からわかるように、反射面を有する層140は、平面光導波路102の光ファイバ120とは反対側にある。反射面はバッファ層130に面しており、回折格子結合器106によってまず反射面に向けられた光の方向を変えて、矢印118によって示されるように透明基板104および光ファイバ120に向かわせる反射器として作用する。反射面を有する層140の好ましい材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、Ta2O5、MgF2、LaF3およびAlF3等の誘電体スタックを作るのに用いられる材料が挙げられる。これら以外の材料も、動作波長によっては適している場合がある。反射面を有する層140は、金、銀、アルミニウム等の金属材料または所望の動作波長において高いパワー反射係数を有する他の任意の表面も含み得る。
【0032】
バッファ層130の好ましい材料は、動作波長において比較的透明な任意のガラス材料、ガラス‐セラミック材料、結晶質材料またはポリマー材料を含み得る。バッファ層130の好ましい材料の例としては、シリカ、ドープされたシリカガラス、カルコゲナイトガラス、フッ化カルシウムガラス、フッ化マグネシウムガラス、および他の特殊な透明ガラスが挙げられる。バッファ層130の好ましい材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、およびSu−8、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、またはポリイミド等のポリマーも含み得る。
【0033】
図4は、回折格子結合器106が、非ガウスビーム形状で光の方向を変えて光ファイバ120に向けるようパターニングされること以外は、図1に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。図4に示されている実施形態では、光ファイバ120はマルチモードファイバであるのが好ましく、回折格子結合器106は、第1の光伝送要素110と第2の光伝送要素として作用する光ファイバ120との間で少なくとも1つのモードをフィルタアウトするよう構成される。特に好ましい実施形態では、回折格子結合器106は、マルチモードファイバによって支持されるモードのサブセットを優先的に励起するようパターニングされる。このモードのサブセットは、より小さい差動モード遅延を有し、その結果、リンク帯域幅性能が向上する。そのような回折格子結合器の一例は、環状のビームパターンで光の方向を変えるものである。
【0034】
図5は、回折格子結合器106が光の方向を変えて、矢印112によって示されるように、角度のついた面128を介して光ファイバ120を結合させる、別の実施形態の側面を切り取った図である。図5に示されている実施形態では、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。そのようなより大きい鋭角により、光ビームが(矢印112によって示されるように)角度のついた面128に入るよう屈折されて、(矢印116によって示されるように)ファイバに入るようガイドされることが可能になる。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112によって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0035】
更に、45°より大きい鋭角Aにより、より耐久性が高いファイバ端面が可能になり、これは、45°以下の端面角度を有する類似のファイバよりも、コネクタアセンブリへの挿入の際の破損に対する耐性が高いはずである。角度のついた面128を含む角度のついた先端部126は、例えば、当業者に周知のレーザ劈開法によってまたは精密な機械的ファイバ劈開法によって作られ得る。
【0036】
図5に対応する好ましい実施形態では、角度のついた面128には、角度のついた面128における後方反射および散乱損失を最小化するために反射を軽減するよう設計された誘電体スタックまたはコーティング層等の反射防止材料がコーティングされ得る。或いは、反射損失は、回折格子結合器106および角度Aを、(矢印112によって示されるように)角度のついた面128に当たるビームがブルースター角度またはそれに近い角度となるよう構成することによって、最小化され得る。特に、ブルースター角度で入射すると、反射損失が最小化され、(矢印112によって示されるように)角度のついた面128に当たるビームは、図5の平面内の電界によって偏光されるはずであり、これは、光が第1の光伝送要素110における横磁界(TM)偏光に似ているモードに対応する。
【0037】
図5に示されている実施形態では、必要な格子周期がより低い回折格子結合器設計が可能である。そのような結合構成は、光ファイバ120と透明基板104との間の軸方向の位置ずれに対する許容誤差を大きくすることもできる。例えば、結合構成の許容誤差の範囲内において、角度のついた先端部126を、光ファイバ120の移動を制限するファイバストップ(図示せず)に対して押し上げてもよい。
【0038】
図6は、光が、回折格子結合器106から(矢印112Aによって示されるように)第1の角度で透明基板104を通るよう向けられ、次に、透明基板104の光ファイバ120に近接した表面から(矢印112Bによって示されるように)第2の角度で角度のついた面128を通るよう向けられる、別の実施形態の側面を切り取った図である。図5に示されている実施形態と同様に、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112Aによって示されるように)透明基板を通るよう向けられた光との間の角度は、少なくとも100°であるのが好ましい(例えば少なくとも110°であり、100°〜120°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路と(矢印112Bによって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0039】
図3に示されている実施形態と同様に、第1の光伝送要素110は、バッファ層130および反射面を有する層140を更に含む。図6からわかるように、反射面を有する層140は、平面光導波路102の光ファイバ120とは反対側にある。反射面はバッファ層130に面しており、回折格子結合器106によってまず反射面に向けられた光の方向を変えて、矢印118’によって示されるように透明基板104および光ファイバ120に向かわせる反射器として作用する。反射面を有する層140の好ましい材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、Ta2O5、MgF2、LaF3およびAlF3等の誘電体スタックを作るのに用いられる材料が挙げられる。これら以外の材料も、動作波長によっては適している場合がある。反射面を有する層140は、金、銀、アルミニウム等の金属材料または所望の動作波長において高いパワー反射係数を有する他の任意の表面も含み得る。
【0040】
バッファ層130の好ましい材料は、動作波長において比較的透明な任意のガラス材料、ガラス‐セラミック材料、結晶質材料またはポリマー材料を含み得る。バッファ層130の好ましい材料の例としては、シリカ、ドープされたシリカガラス、カルコゲナイトガラス、フッ化カルシウムガラス、フッ化マグネシウムガラス、および他の特殊な透明ガラスが挙げられる。バッファ層130の好ましい材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、およびSu−8、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、またはポリイミド等のポリマーも含み得る。
【0041】
図7は、回折格子結合器106が、非ガウスビーム形状で光の方向を変えて光ファイバ120に向けるようパターニングされること以外は、図5に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。図7に示されている実施形態では、光ファイバ120はマルチモードファイバであるのが好ましく、回折格子結合器106は、マルチモードファイバによって支持されるモードのサブセットのみを優先的に励起するようパターニングされる。特に好ましい実施形態では、リンク帯域幅性能を向上させるために、回折格子結合器106は、より高次のモードのみの方向を優先的に変えるようパターニングされる。そのような回折格子結合器の一例は、環状のビームパターンで光の方向を変えるものである。或いは、回折格子結合器106は、光の方向を逆方向に変える(即ち、光ファイバ120からの光を平面光導波路102に結合する)よう構成され得る。回折格子結合器106が光ファイバ120からの光を平面光導波路102に結合するよう構成された好ましい実施形態では、回折格子結合器106は、光ファイバによって支持されるモードのサブセットのみを優先的に導波路に結合するようパターニングされる。
【0042】
図8は、(矢印119によって示されるように)角度のついた先端部126の角度のついた面128から反射された光を検出する検出器150が設けられること以外は、図5に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。検出器は、動作波長に基づいて選択されたフォトダイオードを含むのが好ましい。フォトダイオードの好ましい例としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素またはインジウムガリウムヒ素から選択されるものが挙げられる。図8に示されている実施形態は、光ファイバ120内へと送り出されるパワーを積極的にモニタリングするために用いられ得るものであり、光ファイバの目に対する安全性のためのパワー制限およびレーザ源の寿命の劣化の影響により、ファイバ内へと送り出される光パワーのモニタリングが必要な構成では望ましいものであり得る。
【0043】
図9は、光ファイバ120の角度のついた面128に反射材料160が設けられた別の実施形態の側面を切り取った図である。光は、回折格子結合器106から、透明基板104を通るよう向けられ、角度のついた面128で反射され、矢印116によって示されるように、光ファイバ120のコア124に沿うよう方向を変えられる。図5に示されている実施形態と同様に、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112によって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0044】
反射材料160の好ましい材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、Ta2O5、MgF2、LaF3およびAlF3が挙げられる。これら以外の材料も、動作波長によっては適している場合がある。反射材料160の好ましい材料は、金、銀、アルミニウム等の金属材料または所望の動作波長において高いパワー反射係数を有する他の任意の表面も含み得る。
【0045】
図10は、光ファイバ120の角度のついた面128に部分反射材料160’が設けられ、(矢印119’によって示されるように)角度のついた先端部126の角度のついた面128で屈折した光を検出する検出器150が設けられること以外は、図9に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。図9に示されている実施形態と同様に、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112によって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0046】
部分反射材料160’の好ましい材料としては、反射材料160について上述した材料を含む材料が挙げられ、これらの材料は、例えば、より薄いコーティングとして塗布される。任意に、角度のついた面128はどのような材料でもコーティングされずに、依然として部分反射面を提供し得る。
【0047】
図1および図3〜図10は、平面光導波路102から回折格子結合器106を介して光ファイバ120のコア124に伝搬する光を示しているが、本明細書に開示される実施形態は、光が反対方向に伝搬される(即ち、光ファイバ120のコア124から回折格子結合器106を介して平面光導波路102に伝搬される)ものも含む。
【実施例】
【0048】
本明細書に開示される実施形態を、本発明を限定するものではない以下の実施例によって更に明確にする。
【0049】
実施例1
図11に示されるように、193nmまたは245nmの波長で動作するフォトリソグラフィツールを用いた深紫外(UV)リソグラフィを用いて、ガラス(SiO2)基板上にシリコン平面光導波路および回折格子結合器をパターニングした。図11の丸で囲まれた領域Aは、図の右上に拡大表示されており、丸で囲まれた領域Bは、図の右下に拡大表示されている(図11に示されているパターンは、電子線に感度のあるフォトレジストを用いた電子線描画システムまたは収束イオンビームシステムによって設けられてもよい)。図11に示されている回折格子結合器のアクセス部(即ち、広くなるテーパを有して示されている導波路の部分)は、9μmの長さにわたって400nmの幅から3μmの幅に広がっている。各回折格子結合器のピッチは約1μmであり、各シリコン平面光導波路の実効屈折率は約1.551である。ガラス基板の厚さは約625μmであり、シリコン層の厚さは約200nmであった。
【0050】
図11に示されているガラス上シリコン回折格子結合器を用いて、三次元有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを行った。シミュレーションは、図12A〜図12Cにそれぞれ示されるように、3つの異なる波長、λ=1.40μm、λ=1.50μmおよびλ=1.60μmについて行われた。図12A〜図12Cの各々には、回折格子結合器の電界(Ex)の側面図が示されており、図示されている光は図の左側から入り、回折格子結合器によって垂直方向に回折される(即ち、Z軸はガラス上シリコン導波路に沿った伝搬方向に対応し、Y軸は面外方向に対応する)。図12A〜図12Cの各々に示されるように、回折格子結合器によって生じる横電界(TE)モードの全長は約12μmであった。更に、図12A〜図12Cに示されるように、回折格子結合器によるガラス上シリコン導波路光の垂直方向の回折は、波長に強く依存しない。
【0051】
図13は、図11に示されている波長λ=1.50μmで動作する回折格子結合器の電界(Ex)の平面図を示す(即ち、ガラス基板上のシリコン回折格子結合器の表面の面が、グラフのX−Z平面内にある)。図13に示されるように、電界Exの広くなるテーパは、回折格子結合器の広くなるテーパと概ね一致する。
【0052】
図14は、図11に示されている回折格子結合器のシミュレーションされた出力パワーのグラフである。図14に示されるように、二次格子によって反射されるパワー(24)と比較して、かなりの量のパワーが垂直方向に(即ち、上に向かっておよび下に向かって)(22)回折されることが予想される。更に、性能はかなりの広帯域になることが予想される。
【0053】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および変形がなされ得ることは、当業者に自明である。
【符号の説明】
【0054】
102 平面光導波路
104 透明基板
106 回折格子結合器
110 第1の光伝送要素
112 光
120 光ファイバ(第2の光伝送要素)
122 クラッド
124 コア
126 角度のついた先端部
128 角度のついた面
130 バッファ層
140 反射面を有する層
150 検出器
160 反射材料
160’ 部分反射材料
【関連出願への相互参照】
【0001】
本願は、2009年11月24日に出願された「Planar Waveguide And Optical Fiber Coupling」という名称の米国特許出願第12/624847号による優先権を主張する。本願は該文献の内容に依存し、その全体を参照して本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的に、平面光導波路と光ファイバとの間の光学的結合に関し、特に、透明基板上の平面光導波路と、角度をつけて劈開された光ファイバとの間の、回折格子結合器を用いた光学的結合であって、光ファイバの軸が基板平面に概ね平行な光学的結合に関する。
【背景技術】
【0003】
短距離(<1km)用途の低コストの光リンクでは、しばしば、光源および検出器に対する位置合わせの許容誤差が緩和されることを理由として、マルチモード光ファイバが用いられる。マルチモードファイバのコアの大きなサイズにより、一般的に用いられるファブリーペローまたはVCSELレーザ源及び広面積検出器に関する光学的相互接続の横方向、角度方向および軸方向の位置ずれに対する寛容度が高くなる。この手法は、単一の光学波長を用いてリンクシグナリングが行われる低速〜中速のデータ速度の用途によく適している。
【0004】
より高いリンク帯域幅性能が必要な場合には、WDM(波長分割多重)を用いて、複数の信号を単一の光ファイバ上に多重化するのが望ましい。この手法は、マルチモードファイバに固有の長さ−帯域幅の制限を回避するための短いリンクの用途、およびシングルモードファイバを用いるより長いリンクの用途の両方に適している。これらの場合には、一般的に、リンクのソース端および受信器端において、波長多重化(MUX)処理および波長多重分離(DEMUX)処理がそれぞれ必要である。
【0005】
平面光波回路(PLC)は、光学的MUXおよびDEMUX処理を行うのによく適している。屈折率のコントラストが高い導波路は、タイトな導波路の曲がりを低い光損失で実装可能にする。これにより、小さいチップ上にコンパクトなMUX装置およびDEMUX装置を作ることができ、チップコストが低減されると共に、パッケージ全体のサイズが低減される。例えば、MUXおよびDEMUX処理は、特定の波長で動作するよう容易に調整可能なIIR(Infinite Impulse Response)リング共振器フィルタ装置を用いて実行され得る。他のリンクおよびネットワーク用途へとプラットフォームを拡張するために、PLCを用いて、スイッチ、変調器およびパワースプリッタ等の他の装置も実装され得る。
【0006】
チップのエッジにおいて、マルチモードファイバを高屈折率コントラストPLC導波路にバットカップリングするのが比較的簡単であるが、この相互接続は、チップのエッジにおいて結合が生じることが必要なので、PLCのレイアウトに制約を生じると共にチップを気密シールする際の制限を生じ、必ずしも現実的ではなく、または望ましくない。この用途で一般的に用いられるレンズ付きマルチモードファイバおよび単一モードファイバは、PLC導波路への低損失結合のために精密な位置合わせを必要とする。
【0007】
PLC導波路へのファイバ結合のための1つの手法は、回折格子結合器素子を含む。回折格子結合器は、一般的に、光ファイバから結合器に入射する光を捕捉してPLC導波路に沿って導波するための広いテーパ形状に実装される。光ファイバは、一般的に、PLC基板に対して垂直に配置される。同じ素子を逆に動作させて、PLC導波路から光ファイバへと光を送り出すこともできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態は、光伝送要素間で光を光学的に結合する装置を含む。この装置は、第1の光伝送要素および第2の光伝送要素を含む。第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含む。透明基板は、平面光導波路および回折格子結合器の片側に配設される。第2の光伝送要素は、光ファイバを含む。光ファイバは縦軸に沿って延び、コアおよびクラッドを含み、角度のついた先端部を有する。光ファイバの縦軸は、平面光導波路の長手方向の経路に略平行である。
【0009】
別の実施形態は、光伝送要素間で光を光学的に結合する方法を含む。この方法は、第1の光伝送要素と第2の光伝送要素との間で光を伝送することを含む。第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含む。透明基板は、平面光導波路および回折格子結合器の片側に配設される。第2の光伝送要素は、光ファイバを含む。光ファイバは縦軸に沿って延び、コアおよびクラッドを含み、角度のついた先端部を有する。光ファイバの縦軸は、平面光導波路の長手方向の経路に略平行である。光は、平面光導波路と、回折格子結合器と、光ファイバのコアとの間で伝送される。
【0010】
更なる特徴および長所は、以下の詳細な説明で述べられ、その一部はその説明から当業者に自明であり、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識される。
【0011】
上記の概要説明および以下の詳細説明は共に例示的な実施形態を示すものであり、特許請求の範囲の性質および特徴の理解のための概観または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部をなすものである。図面は様々な実施形態を示し、記載と共に、様々な実施形態の原理および動作を説明する役割をするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に開示される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の一実施形態の側面を切り取った図
【図2】それぞれ異なる幅を有する光ビーム源についての空気中およびガラス中の光ビーム回折のグラフ
【図3】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図4】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図5】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図6】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図7】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図8】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図9】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図10】本明細書に記載される、光ファイバに光学的に結合された平面光導波路の別の実施形態の側面を切り取った図
【図11】ガラス基板上にパターニングされたシリコン平面光導波路および回折格子結合器の斜視図
【図12A】図11に示されている回折格子結合器の有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを示す図
【図12B】図11に示されている回折格子結合器の有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを示す図
【図12C】図11に示されている回折格子結合器の有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを示す図
【図13】図11に示されている回折格子結合器の電界の平面図
【図14】図11に示されている回折格子結合器のシミュレーションされた出力パワーのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本好ましい実施形態を詳細に参照する。その例が添付の図面に示されている。
【0014】
図1は、光ファイバ120に光学的に結合された平面光導波路102の一実施形態の側面を切り取った図を示す。光ファイバ120は、シングルモードファイバまたはマルチモードファイバであり得る。平面光導波路102は、長手方向の経路に沿って、透明基板104の底面に沿って延びる。光は、矢印108によって示されるように、平面光導波路102に沿って伝搬されて、回折格子結合器106に到達する。次に、矢印112によって示されるように、回折格子結合器106は光の方向を変え、光は垂直方向に透明基板104を通り、光ファイバ120のクラッド122を通り、光ファイバ120のコア124に入る。図1に示されている実施形態では、平面光導波路102、回折格子結合器106および透明基板104が組み合わさって第1の光伝送要素110を構成する。図1に示されている実施形態では、光ファイバ120は第2の光伝送要素として作用する。光ファイバ120は縦軸に沿って延び、コア124と、クラッド122と、角度のついた先端部126を有する端部とを含む。角度のついた先端部126を有する端部は、角度のついた面128を含む。114によって示されるように、光112は角度のついた面128によって反射され、矢印116によって示されるように、光ファイバ120のコア124に沿うよう方向を変えられる。図1からわかるように、光ファイバ120の縦軸は、平面光導波路102の長手方向の経路に略平行である。
【0015】
光ファイバ120は、マルチモード光ファイバであるのが好ましい。光ファイバ120のコアの直径は少なくとも40μmであるのが好ましく(例えば少なくとも50μm)、50〜62.5μmのコア直径を有する光ファイバを含む。
【0016】
角度のついた面128を含む角度のついた先端部126は、例えば、当業者に周知のレーザ劈開法によって、精密な機械的ファイバ劈開法によって、または機械的研磨法によって作られ得る。
【0017】
本明細書で用いる「透明」という用語は、固体材料を透過する動作波長の放射の少なくとも70%が、材料によって吸収または散乱されるのではなく、材料を通って伝送されることを意味する。特に好ましい透明材料は、材料を透過する動作波長の放射の少なくとも90%が、材料によって吸収または散乱されるのではなく、材料を通って伝送されるものを含む。
【0018】
本発明を限定するものではないが、透明基板の好ましい材料は、例えば、実質的に純粋なSiO2ガラスまたはホウケイ酸塩ガラス(例えばコーニング(登録商標コード1737ガラス)等のガラスである。透明基板の他の好ましい材料としては、可視波長から近赤外波長までの範囲内(例えば、約400nm〜約1700nmの波長)において(上記の定義のように)透明なガラスセラミックおよび他のセラミックが挙げられる。
【0019】
本発明を限定するものではないが、平面光導波路の好ましい材料はシリコン(Si)である。他の好ましい材料としては、ゲルマニウム(Ge)、シリコン−ゲルマニウム(SiGe)および炭化シリコン(SiC)が挙げられる。
【0020】
本明細書で用いる「反射(性)」という用語は、固体材料表面に当たる動作波長の光パワーの少なくとも25%が表面によって反射されることを意味する。
【0021】
本明細書で用いる「部分反射(性)」という用語は、固体材料表面に当たる動作波長の放射の少なくとも1%が表面によって反射されることを意味する。
【0022】
平面光導波路102は、当業者に周知の技術を用いて透明基板104上にパターニングまたは形成され得る。例えば、平面光導波路102は、当業者に周知のフォトリソグラフィ法を用いて、透明基板104上にパターニングされ得る。そのようなフォトリソグラフィ法は、回折格子結合器106の形成にも用いられ得る。図1の側面を切り取った図は、1つの平面光導波路102および1つの回折格子結合器106を示しているが、単一の透明基板104上に複数の平面光導波路および回折格子結合器がパターニングまたは形成され得ることを理解されたい。そして、図1に示されているのと同様の方法で、各平面光導波路に1つの光ファイバを光学的に結合できる。このようにして、一列の光ファイバを一列の平面光導波路に光学的に結合できる。
【0023】
図1に示されるように、透明基板104は、平面光導波路102と光ファイバ120との間に配設され、光が回折格子結合器106から透明基板104を通って光ファイバ120のコア124に至るよう向けられる。換言すれば、平面光導波路102は透明基板104の片側であって光ファイバ120とは反対側に配設される。この構成により、例えば光ファイバ120との位置合わせ中に、透明基板104が回折格子結合器106を損傷から保護できる。更に、透明基板は、光ファイバ120の角度のついた先端部126の機械的支持を提供でき、これにより、回折格子結合器106に対する光ファイバ120のより正確で安定した配置も可能になる。更に、光学的相互接続の設計に応じて、光ファイバ120に近接した透明基板104の表面は、平面光導波路102または回折格子結合器106に損傷を生じずに、クリーニングされるかまたは別様で処理される。また、透明基板104は、透明基板の平面光導波路102と同じ側にある任意の能動素子(例えば平面光導波路102に相互接続される素子等)を保護する気密バリアの役割をし得る。
【0024】
図1には示されていないが、透明基板104は、光ファイバ120の縦軸と位置合わせされる溝等の位置合わせ要素を有するようパターニングされ得る。溝は、位置合わせ要素として作用する他に、光学的機能を提供し得る。即ち、光が透明基板104の(溝が無ければ)平坦な面から光ファイバ120のクラッド122の湾曲したまたは円筒状の面を通る際の光の屈折によって生じる非点収差を最小化する。光ファイバ120のクラッド122の外面の外側の曲率と一致する曲面を有する溝が作られる場合には、(溝が無い場合に)平坦な面と曲面との間の屈折によって生じる非点収差を大きく軽減できる。例えば、そのような曲面を有する溝は、フッ化水素中でのエッチングによって透明基板104に設けることができる。更に、溝の断面が光ファイバ120のクラッド122の外半径の曲率と完全には一致せず、透明基板104と光ファイバ120の外半径との間に空隙が残る場合には、屈折率が一致するゲル等の材料で溝を埋めることにより、上述の屈折の影響を最小化できる。
【0025】
更に、透明基板104の表面、好ましくは光ファイバに近接した表面を、当業者に周知の技術に従って、光学ビームを集束、コリメート、または別様で整形する等の1以上の光学的機能を実行するよう加工または構成することが可能である。例えば、平面光導波路102と光ファイバ120との間の結合効率を向上させるために、透明基板104の表面にレンズまたは回折格子が形成され得る。更に、透明基板104の表面に反射防止コーティングを塗布することにより、ガラス‐空気界面におけるフレネル反射に起因する光パワーの損失を低減してもよい。
【0026】
回折格子結合器106の設計は、以下に記載する実施形態で示されるどの特定の設計にも限定されず、矢印108によって示される平面光導波路102を通る伝搬方向に対して90°以外の角度で光の方向を変える回折格子結合器を含み得る。例えば図5および図6に示されるように、90°以外の角度で光の方向を変える回折格子結合器は、角度のついた面128による全内部反射によって光の方向が変えられるのを可能にするよう構成され得る。例えば、格子は、二次格子(二次格子は、その平面において反射または光を伝送することに加えて、主に、平面光導波路102を通る伝搬方向に対して約90°の角度で光を垂直方向に反射する)に限定される必要はなく、三次格子、四次格子、五次格子等のより高次の格子を含み得る。そのようなより高次の格子は、二次格子と比較してピッチサイズ即ち周期が大きく、その結果、平面光導波路102を通る光の伝搬に対して約90°以外の角度で光を反射できる。例えば、三次格子は、平面光導波路102を通る光の伝搬に対して上に向かってまたは下に向かって約60°および120°の角度で光の方向を変えることができる。格子は、偏光の影響を受けるものを含んでもよく、従って、回折格子結合器106は、平面光導波路102と光ファイバ120との間で伝送される光を偏光するために用いられてもよい。
【0027】
図1に示されている実施形態では、第1の光伝送要素110は、平面光導波路102の光ファイバ120とは反対側には、基板(または固体の材料)を持たない。図1に示されている実施形態では、回折格子結合器106は透明基板104中には延びていない。
【0028】
好ましい実施形態では、透明基板104は、上述の機械的支持、ファイバの配置、および保護を提供するのに十分な厚さを有する。透明基板104は、少なくとも100μmの厚さ(例えば、100μm〜5000μmの厚さ)を有するのが好ましい。透明基板104は、少なくとも200μmの厚さ(例えば、200μm〜2000μmの厚さ、更には500μm〜1000μmの厚さ等)を有するのがより好ましい。
【0029】
この点に関して、透明基板104としてガラスを用いることは、空気中の伝搬と比較して、伝搬中のビーム回折を低減する一助となり、それにより、回折格子結合器106と光ファイバ120との間の距離をより大きくすることが可能になり、ひいては、より良好な機械的特性を有するより厚い透明基板104の使用が可能になる。図2は、回折格子結合器から派生した、それぞれ異なる幅を有しそれぞれの波長λが1.55μmである光学ビームが、空気(屈折率n=1.0)を通って伝搬する際にどのように回折するかを、ガラス基板材料(屈折率n=1.45)と比較して示している。具体的には、図2は、空気を通って伝搬される8μmのウエスト部を有するビーム(10)と、ガラスを通って伝搬される8μmのウエスト部を有するビーム(12)と、空気を通って伝搬される25μmのウエスト部を有するビーム(14)と、ガラスを通って伝搬される25μmのウエスト部を有するビーム(16)と、空気を通って伝搬される50μmのウエスト部を有するビーム(18)と、ガラスを通って伝搬される50μmのウエスト部を有するビーム(20)とを示している。図2からわかるように、ガラス中のビームの伝搬は、空気中のビームの伝搬と比較して、所与の回折量に対する、回折格子結合器と光ファイバの外面との間の離間をより大きくする余裕がある。これにより、機械的強度が向上したより厚い透明基板の処理および使用が可能になる。
【0030】
本明細書に開示される実施形態(例えば図1に示されている実施形態)は、平面光導波路と光ファイバとの間の比較的低い結合損失を依然として達成しつつ、上述の機械的支持、ファイバ配置、および保護を有する、平面光導波路と光ファイバとの間の光学的結合に備えることができる。例えば、本明細書に開示される実施形態は、第1の光伝送要素110(平面光導波路102を含む)と第2の光伝送要素(光ファイバ120を含む)との間の光学的結合であって、第1の光伝送要素と第2の光伝送要素との間の光学放射の結合損失は75%未満(例えば80%未満、更には例えば85%未満、更には例えば90%未満)である光学的結合を提供できる。
【0031】
図3は、第1の光伝送要素110がバッファ層130および反射面を有する層140を更に含むこと以外は、図1に示されている実施形態と類似の実施形態の側面を切り取った図を示す。図3からわかるように、反射面を有する層140は、平面光導波路102の光ファイバ120とは反対側にある。反射面はバッファ層130に面しており、回折格子結合器106によってまず反射面に向けられた光の方向を変えて、矢印118によって示されるように透明基板104および光ファイバ120に向かわせる反射器として作用する。反射面を有する層140の好ましい材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、Ta2O5、MgF2、LaF3およびAlF3等の誘電体スタックを作るのに用いられる材料が挙げられる。これら以外の材料も、動作波長によっては適している場合がある。反射面を有する層140は、金、銀、アルミニウム等の金属材料または所望の動作波長において高いパワー反射係数を有する他の任意の表面も含み得る。
【0032】
バッファ層130の好ましい材料は、動作波長において比較的透明な任意のガラス材料、ガラス‐セラミック材料、結晶質材料またはポリマー材料を含み得る。バッファ層130の好ましい材料の例としては、シリカ、ドープされたシリカガラス、カルコゲナイトガラス、フッ化カルシウムガラス、フッ化マグネシウムガラス、および他の特殊な透明ガラスが挙げられる。バッファ層130の好ましい材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、およびSu−8、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、またはポリイミド等のポリマーも含み得る。
【0033】
図4は、回折格子結合器106が、非ガウスビーム形状で光の方向を変えて光ファイバ120に向けるようパターニングされること以外は、図1に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。図4に示されている実施形態では、光ファイバ120はマルチモードファイバであるのが好ましく、回折格子結合器106は、第1の光伝送要素110と第2の光伝送要素として作用する光ファイバ120との間で少なくとも1つのモードをフィルタアウトするよう構成される。特に好ましい実施形態では、回折格子結合器106は、マルチモードファイバによって支持されるモードのサブセットを優先的に励起するようパターニングされる。このモードのサブセットは、より小さい差動モード遅延を有し、その結果、リンク帯域幅性能が向上する。そのような回折格子結合器の一例は、環状のビームパターンで光の方向を変えるものである。
【0034】
図5は、回折格子結合器106が光の方向を変えて、矢印112によって示されるように、角度のついた面128を介して光ファイバ120を結合させる、別の実施形態の側面を切り取った図である。図5に示されている実施形態では、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。そのようなより大きい鋭角により、光ビームが(矢印112によって示されるように)角度のついた面128に入るよう屈折されて、(矢印116によって示されるように)ファイバに入るようガイドされることが可能になる。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112によって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0035】
更に、45°より大きい鋭角Aにより、より耐久性が高いファイバ端面が可能になり、これは、45°以下の端面角度を有する類似のファイバよりも、コネクタアセンブリへの挿入の際の破損に対する耐性が高いはずである。角度のついた面128を含む角度のついた先端部126は、例えば、当業者に周知のレーザ劈開法によってまたは精密な機械的ファイバ劈開法によって作られ得る。
【0036】
図5に対応する好ましい実施形態では、角度のついた面128には、角度のついた面128における後方反射および散乱損失を最小化するために反射を軽減するよう設計された誘電体スタックまたはコーティング層等の反射防止材料がコーティングされ得る。或いは、反射損失は、回折格子結合器106および角度Aを、(矢印112によって示されるように)角度のついた面128に当たるビームがブルースター角度またはそれに近い角度となるよう構成することによって、最小化され得る。特に、ブルースター角度で入射すると、反射損失が最小化され、(矢印112によって示されるように)角度のついた面128に当たるビームは、図5の平面内の電界によって偏光されるはずであり、これは、光が第1の光伝送要素110における横磁界(TM)偏光に似ているモードに対応する。
【0037】
図5に示されている実施形態では、必要な格子周期がより低い回折格子結合器設計が可能である。そのような結合構成は、光ファイバ120と透明基板104との間の軸方向の位置ずれに対する許容誤差を大きくすることもできる。例えば、結合構成の許容誤差の範囲内において、角度のついた先端部126を、光ファイバ120の移動を制限するファイバストップ(図示せず)に対して押し上げてもよい。
【0038】
図6は、光が、回折格子結合器106から(矢印112Aによって示されるように)第1の角度で透明基板104を通るよう向けられ、次に、透明基板104の光ファイバ120に近接した表面から(矢印112Bによって示されるように)第2の角度で角度のついた面128を通るよう向けられる、別の実施形態の側面を切り取った図である。図5に示されている実施形態と同様に、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112Aによって示されるように)透明基板を通るよう向けられた光との間の角度は、少なくとも100°であるのが好ましい(例えば少なくとも110°であり、100°〜120°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路と(矢印112Bによって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0039】
図3に示されている実施形態と同様に、第1の光伝送要素110は、バッファ層130および反射面を有する層140を更に含む。図6からわかるように、反射面を有する層140は、平面光導波路102の光ファイバ120とは反対側にある。反射面はバッファ層130に面しており、回折格子結合器106によってまず反射面に向けられた光の方向を変えて、矢印118’によって示されるように透明基板104および光ファイバ120に向かわせる反射器として作用する。反射面を有する層140の好ましい材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、Ta2O5、MgF2、LaF3およびAlF3等の誘電体スタックを作るのに用いられる材料が挙げられる。これら以外の材料も、動作波長によっては適している場合がある。反射面を有する層140は、金、銀、アルミニウム等の金属材料または所望の動作波長において高いパワー反射係数を有する他の任意の表面も含み得る。
【0040】
バッファ層130の好ましい材料は、動作波長において比較的透明な任意のガラス材料、ガラス‐セラミック材料、結晶質材料またはポリマー材料を含み得る。バッファ層130の好ましい材料の例としては、シリカ、ドープされたシリカガラス、カルコゲナイトガラス、フッ化カルシウムガラス、フッ化マグネシウムガラス、および他の特殊な透明ガラスが挙げられる。バッファ層130の好ましい材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、およびSu−8、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、またはポリイミド等のポリマーも含み得る。
【0041】
図7は、回折格子結合器106が、非ガウスビーム形状で光の方向を変えて光ファイバ120に向けるようパターニングされること以外は、図5に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。図7に示されている実施形態では、光ファイバ120はマルチモードファイバであるのが好ましく、回折格子結合器106は、マルチモードファイバによって支持されるモードのサブセットのみを優先的に励起するようパターニングされる。特に好ましい実施形態では、リンク帯域幅性能を向上させるために、回折格子結合器106は、より高次のモードのみの方向を優先的に変えるようパターニングされる。そのような回折格子結合器の一例は、環状のビームパターンで光の方向を変えるものである。或いは、回折格子結合器106は、光の方向を逆方向に変える(即ち、光ファイバ120からの光を平面光導波路102に結合する)よう構成され得る。回折格子結合器106が光ファイバ120からの光を平面光導波路102に結合するよう構成された好ましい実施形態では、回折格子結合器106は、光ファイバによって支持されるモードのサブセットのみを優先的に導波路に結合するようパターニングされる。
【0042】
図8は、(矢印119によって示されるように)角度のついた先端部126の角度のついた面128から反射された光を検出する検出器150が設けられること以外は、図5に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。検出器は、動作波長に基づいて選択されたフォトダイオードを含むのが好ましい。フォトダイオードの好ましい例としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素またはインジウムガリウムヒ素から選択されるものが挙げられる。図8に示されている実施形態は、光ファイバ120内へと送り出されるパワーを積極的にモニタリングするために用いられ得るものであり、光ファイバの目に対する安全性のためのパワー制限およびレーザ源の寿命の劣化の影響により、ファイバ内へと送り出される光パワーのモニタリングが必要な構成では望ましいものであり得る。
【0043】
図9は、光ファイバ120の角度のついた面128に反射材料160が設けられた別の実施形態の側面を切り取った図である。光は、回折格子結合器106から、透明基板104を通るよう向けられ、角度のついた面128で反射され、矢印116によって示されるように、光ファイバ120のコア124に沿うよう方向を変えられる。図5に示されている実施形態と同様に、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112によって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0044】
反射材料160の好ましい材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、Ta2O5、MgF2、LaF3およびAlF3が挙げられる。これら以外の材料も、動作波長によっては適している場合がある。反射材料160の好ましい材料は、金、銀、アルミニウム等の金属材料または所望の動作波長において高いパワー反射係数を有する他の任意の表面も含み得る。
【0045】
図10は、光ファイバ120の角度のついた面128に部分反射材料160’が設けられ、(矢印119’によって示されるように)角度のついた先端部126の角度のついた面128で屈折した光を検出する検出器150が設けられること以外は、図9に示されている実施形態と類似の別の実施形態の側面を切り取った図である。図9に示されている実施形態と同様に、角度のついた先端部126の角度のついた面128に対する法線と光ファイバ120の縦軸との間の角度Aは、45°より大きい(例えば少なくとも50°、更には例えば少なくとも60°、更には例えば少なくとも70°であり、50°〜75°を含む)。平面光導波路102の長手方向の経路(矢印108によって示されるように、それに沿って光が移動し得る)と(矢印112によって示されるように)第1の光伝送要素110と光ファイバ120として作用する第2の光伝送要素との間で伝送される光との間の角度は、少なくとも120°であるのが好ましい(例えば少なくとも130°、更には例えば少なくとも140°であり、120°〜150°を含む)。
【0046】
部分反射材料160’の好ましい材料としては、反射材料160について上述した材料を含む材料が挙げられ、これらの材料は、例えば、より薄いコーティングとして塗布される。任意に、角度のついた面128はどのような材料でもコーティングされずに、依然として部分反射面を提供し得る。
【0047】
図1および図3〜図10は、平面光導波路102から回折格子結合器106を介して光ファイバ120のコア124に伝搬する光を示しているが、本明細書に開示される実施形態は、光が反対方向に伝搬される(即ち、光ファイバ120のコア124から回折格子結合器106を介して平面光導波路102に伝搬される)ものも含む。
【実施例】
【0048】
本明細書に開示される実施形態を、本発明を限定するものではない以下の実施例によって更に明確にする。
【0049】
実施例1
図11に示されるように、193nmまたは245nmの波長で動作するフォトリソグラフィツールを用いた深紫外(UV)リソグラフィを用いて、ガラス(SiO2)基板上にシリコン平面光導波路および回折格子結合器をパターニングした。図11の丸で囲まれた領域Aは、図の右上に拡大表示されており、丸で囲まれた領域Bは、図の右下に拡大表示されている(図11に示されているパターンは、電子線に感度のあるフォトレジストを用いた電子線描画システムまたは収束イオンビームシステムによって設けられてもよい)。図11に示されている回折格子結合器のアクセス部(即ち、広くなるテーパを有して示されている導波路の部分)は、9μmの長さにわたって400nmの幅から3μmの幅に広がっている。各回折格子結合器のピッチは約1μmであり、各シリコン平面光導波路の実効屈折率は約1.551である。ガラス基板の厚さは約625μmであり、シリコン層の厚さは約200nmであった。
【0050】
図11に示されているガラス上シリコン回折格子結合器を用いて、三次元有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを行った。シミュレーションは、図12A〜図12Cにそれぞれ示されるように、3つの異なる波長、λ=1.40μm、λ=1.50μmおよびλ=1.60μmについて行われた。図12A〜図12Cの各々には、回折格子結合器の電界(Ex)の側面図が示されており、図示されている光は図の左側から入り、回折格子結合器によって垂直方向に回折される(即ち、Z軸はガラス上シリコン導波路に沿った伝搬方向に対応し、Y軸は面外方向に対応する)。図12A〜図12Cの各々に示されるように、回折格子結合器によって生じる横電界(TE)モードの全長は約12μmであった。更に、図12A〜図12Cに示されるように、回折格子結合器によるガラス上シリコン導波路光の垂直方向の回折は、波長に強く依存しない。
【0051】
図13は、図11に示されている波長λ=1.50μmで動作する回折格子結合器の電界(Ex)の平面図を示す(即ち、ガラス基板上のシリコン回折格子結合器の表面の面が、グラフのX−Z平面内にある)。図13に示されるように、電界Exの広くなるテーパは、回折格子結合器の広くなるテーパと概ね一致する。
【0052】
図14は、図11に示されている回折格子結合器のシミュレーションされた出力パワーのグラフである。図14に示されるように、二次格子によって反射されるパワー(24)と比較して、かなりの量のパワーが垂直方向に(即ち、上に向かっておよび下に向かって)(22)回折されることが予想される。更に、性能はかなりの広帯域になることが予想される。
【0053】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および変形がなされ得ることは、当業者に自明である。
【符号の説明】
【0054】
102 平面光導波路
104 透明基板
106 回折格子結合器
110 第1の光伝送要素
112 光
120 光ファイバ(第2の光伝送要素)
122 クラッド
124 コア
126 角度のついた先端部
128 角度のついた面
130 バッファ層
140 反射面を有する層
150 検出器
160 反射材料
160’ 部分反射材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送要素間で光を光学的に結合する装置であって、
第1の光伝送要素と、
第2の光伝送要素と、
を備え、
前記第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含み、前記透明基板は前記平面光導波路および前記回折格子結合器の片側に配設され、
前記第2の光伝送要素は、縦軸に沿って延びる光ファイバを含み、該光ファイバは、コアおよびクラッドを含むと共に角度のついた先端部を有し、前記光ファイバの前記縦軸は前記平面光導波路の前記長手方向の経路に略平行である
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記透明基板がガラスを含み、前記平面光導波路がシリコンを含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記透明基板が、前記平面光導波路と前記光ファイバとの間に配設されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記透明基板が、少なくとも100μmの厚さを有することを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
光伝送要素間で光を光学的に結合する方法であって、該方法が
第1の光伝送要素と第2の光伝送要素との間で光を伝送する工程を有してなり、
前記第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含み、前記透明基板は前記平面光導波路および前記回折格子結合器の片側に配設され、
前記第2の光伝送要素は、縦軸に沿って延びる光ファイバを含み、該光ファイバは、コアおよびクラッドを含むと共に角度のついた先端部を有し、前記光ファイバの前記縦軸は前記平面光導波路の前記長手方向の経路に略平行であり、
前記平面光導波路と、前記回折格子結合器と、前記光ファイバの前記コアとの間で光が伝送されることを特徴とする方法。
【請求項1】
光伝送要素間で光を光学的に結合する装置であって、
第1の光伝送要素と、
第2の光伝送要素と、
を備え、
前記第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含み、前記透明基板は前記平面光導波路および前記回折格子結合器の片側に配設され、
前記第2の光伝送要素は、縦軸に沿って延びる光ファイバを含み、該光ファイバは、コアおよびクラッドを含むと共に角度のついた先端部を有し、前記光ファイバの前記縦軸は前記平面光導波路の前記長手方向の経路に略平行である
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記透明基板がガラスを含み、前記平面光導波路がシリコンを含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記透明基板が、前記平面光導波路と前記光ファイバとの間に配設されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記透明基板が、少なくとも100μmの厚さを有することを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
光伝送要素間で光を光学的に結合する方法であって、該方法が
第1の光伝送要素と第2の光伝送要素との間で光を伝送する工程を有してなり、
前記第1の光伝送要素は、長手方向の経路に沿って延びる平面光導波路と、回折格子結合器と、透明基板とを含み、前記透明基板は前記平面光導波路および前記回折格子結合器の片側に配設され、
前記第2の光伝送要素は、縦軸に沿って延びる光ファイバを含み、該光ファイバは、コアおよびクラッドを含むと共に角度のついた先端部を有し、前記光ファイバの前記縦軸は前記平面光導波路の前記長手方向の経路に略平行であり、
前記平面光導波路と、前記回折格子結合器と、前記光ファイバの前記コアとの間で光が伝送されることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【公表番号】特表2013−512464(P2013−512464A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541100(P2012−541100)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056670
【国際公開番号】WO2011/066122
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056670
【国際公開番号】WO2011/066122
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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