説明

幹細胞と前駆細胞のリクルートメントにおけるニコチン受容体アゴニスト

【課題】本発明は、ニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストを投与することによる骨髄由来幹細胞(例えば、内皮細胞前駆体、造血幹細胞)のリクルートメント方法を特徴とする。
【解決手段】本発明の方法は、例えば、骨髄由来幹細胞のリクルートメントによる治療に対して感受性がある病態(例えば好中球減少症)の治療に用いることができる。図は、食塩水対照動物とニコチン処置動物に関して、内皮前駆細胞を取り込んだ新しい血管の毛細血管密度(毛細血管/筋細胞)と百分率とを示すグラフである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に幹細胞と前駆細胞の可動化(mobilization)とリクルートメント(recruitment)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
幹細胞および/または前駆細胞のリクルートメントは多様な応用において重要である。内皮前駆細胞に由来する血管の増殖を伴う脈管形成は、そのような過程の例である。脈管形成は、それによって既に存在する毛細血管から新しい血管が形成される過程である血管新生、およびこれらの過程を調節する要因と共に、胚の発達、炎症、および創傷治癒において重要であり、同様に、腫瘍の増殖、糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎、および慢性炎症疾患のような病態に関与する(例えば、米国特許第5,318,957号;ヤンコポーロス(Yancopoulos)ら、(1998)Cell 93:661〜4;フォークマン(Folkman)ら、(1996)Cell 87:1153〜5;およびハナハン(Hanahan)ら、(1996)Cell 86:353〜64を参照のこと)。
【0003】
血管新生と脈管形成はいずれも、内皮細胞の増殖を伴う。内皮細胞は、血管壁の内側に並び;毛細血管は、ほぼ内皮細胞のみを含む。血管新生過程は、内皮細胞増殖の増加を伴うのみならず、内皮細胞によるプロテアーゼ分泌、基底膜の分解、周辺マトリクス内部を通しての移動、増殖、配置、管様構造への分化、および新規既定膜の合成を含むさらなる事象のカスケードを含む。脈管形成は、血管芽細胞への間葉細胞のリクルートメントと分化を伴い、これはその後内皮細胞に分化して、デノボで血管を形成する(例えば、フォークマン(Folkman)ら(1996)Cell 87:1153〜5を参照のこと)。
【0004】
異なる特性と作用機序を有するいくつかの血管新生および/または脈管形成物質が、当技術分野で周知である。例えば、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)およびベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子(TNF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、およびアンギオゲニンは、強力で、しかも特徴が十分に調べられた血管新生促進物質である。さらに、酸化窒素とプロスタグランジン(プロスタサイクリンアゴニスト)は、VEGFおよびbFGFのような様々な血管新生増殖因子のメディエータであることが示されている。しかし、これらの化合物のいくつか、特に全身投与物質としての治療応用性は、様々な細胞タイプに及ぼすその強力な多面的作用のために制限されている。
【0005】
血管新生と脈管形成は、これらの過程が治療的利点となるように利用できることから、強く関心が集まっている。血管新生および/または脈管形成の刺激は、創傷治癒、皮膚移植の血管形成、および血管の閉鎖または狭窄が存在する場合には側副循環の増強(例えば、冠動脈、頚動脈、または末梢動脈閉鎖疾患により閉塞部周辺に「生体バイパス」を形成するため)に役立ちうる。さらに、幹細胞および/または前駆細胞のリクルートメントを刺激することができる物質が同定されれば、細胞の損傷および/または細胞の枯渇(例えば、後天性または遺伝的免疫欠損)に関連した他の疾患の治療において有用となりうる。被験者による認容性が良好であり、しかも幹細胞および/または前駆細胞のリクルートメントの刺激を行うために高い有効性を有するそのような物質のような要因に強い関心が集まっている。
【0006】
関連技術
ビラブランカ(Villablanca、(1998)、「ニコチンはインビトロで血管内皮細胞のDNA合成および増殖を刺激する(Nicotine stimulates DNA synthesis and proliferation in vascular endothelial cells in vitro)」、J. Appl. Physiol. 84:2089〜98)は、インビトロでウシ肺動脈内皮細胞の培養を用いて、内皮のDNA合成、DNA修復、増殖および細胞障害性に及ぼすニコチンの影響を調べた。
【0007】
カーティら(Carty、(1996)、「ニコチンおよびコチニンは、培養ヒト平滑筋細胞において、塩基性線維芽細胞増殖因子の分泌を刺激し、マトリクスメタロプロテナーゼの発現に影響を及ぼす(Nicotine and cotinine stimulate secretion of basic fibroblast growth factor and affect expression of matrix metalloproteinases in cultured human smooth muscle cells)」、J. Vasc. Surg. 24:927〜35)の参考文献は、ニコチンが血管平滑筋細胞を刺激して線維芽細胞増殖因子を生じ、同様にいくつかのマトリクスメタロプロテナーゼの発現をアップレギュレートすることを証明している。研究者らは、これらのデータは、それによって喫煙がアテローム性動脈硬化症および動脈瘤を引き起こす可能性があるメカニズムを証明すると提唱している。
【0008】
ベルアードら(Belluardo、(1998)、「急性間欠性ニコチン投与は、ラットの終脳と間脳において塩基性線維芽細胞増殖因子mRNAおよびタンパク質の限局的な増加を引き起こす(Acute intermittent nicotine treatment produces regional increases of basic fibroblast growth factor messenger RNA and protein in the tel-and diencephalon of the rat)」、Neuroscience 83:723〜40)の参考文献は、ニコチンがラット脳において線維芽細胞増殖因子-2の発現を刺激することを報告し、研究者らの提案はラット脳におけるニコチンの神経保護作用を説明する可能性がある。
【0009】
モフェットら(Moffett、「チロシンの燐酸化の増加と新規シスアクチンエレメントは、ニコチンアセチルコリン受容体による線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)遺伝子の活性化を媒介する。細胞の発達と可塑性に関するシナプス間調節の新しいメカニズム(Increased tyrosine phosphorylation and novel cis-actin element mediate activation of the fibroblast growth factor-2(FGF-2)gene by nicotine acetylcholine receptor. New mechanism for trans-synaptic regulation of cellular development and plasticity)」、Mol. Brain Res. 55:293〜305)は、チロシンの燐酸化を必要とする独自の転写経路を利用して、神経堤に由来する副腎のクロム親和性細胞において線維芽細胞増殖因子-2の発現を刺激すると報告している。著者らは、これらの知見は、ニコチン受容体の活性化が神経の発達に関与する可能性があると提唱している。
【0010】
クシナら(Cucina、(1999)、「ニコチンは内皮細胞における塩基性線維芽細胞増殖因子とトランスフォーミング増殖因子β1産生を調節する(Nicotine regulates basic fibroblastic growth factor and transforming growth factor β1 production in endothelial cells)」、Biochem. Biophys. Res. Commun. 257:302〜12)は、ニコチンが、内皮細胞からのbFGFの放出を増加させ、TGFβ1の放出を減少させ、内皮の分裂を増加させることを報告している。著者らは、これらの作用がアテローム性動脈硬化症の発生と進行において重要な役割を有すると結論している。
【0011】
ボルムら(Volm、(1999)、「肺扁平上皮癌における血管新生と喫煙:28症例の免疫組織化学研究(Angiogenesis and cigarette smoking in squamous cell lung carcinomas:an immunohistochemical study of 28 cases)」、Anticancer Res. 19(1A):333〜6)は、肺の腫瘍における血管新生は患者の喫煙習慣に関係があると報告している。
【0012】
マックリンら(Macklin、(1998)、「ヒト血管内皮細胞は機能的ニコチンアセチルコリン受容体を発現する(Human endothelial cells express functional nicotinic acetylcholine receptors)」、J. Pharmacol. Exper. Therap. 287:435〜9)は、内皮細胞が機能的なニコチン様(神経型)およびムスカリン様アセチルコリン受容体の双方を発現することを報告している。
【0013】
米国特許第5,318,957号、同第5,866,561号、および同第5,869,037号は、血管新生を得るための様々な化合物(ハプトグロビンおよびエストロゲン)を用いることと方法(脂肪細胞のアデノウイルス媒介遺伝子治療)について記述している。
【0014】
血管新生と脈管形成の分野に関する最近の論評に関しては、例えば、ヤンコポーロスら(Yancopoulos、(1998)、Cell 93:661〜4);フォークマンら(Folkman、(1996)Cell 87:1153〜5);ハナハンら(Hanahan、(1996)Cell 86:353〜64)を参照のこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の1つの目的は、内皮前駆細胞をリクルートメントさせて血管新生を増強する方法を提供することである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、心筋梗塞および脳梗塞、腸間膜または脚虚血、創傷、および血管閉鎖または狭窄の場合のような組織の損傷を伴う疾患および病気を治療および予防する方法を提供することである。
【0017】
本発明のもう1つの目的は、皮膚移植片、粘膜皮弁、または他の外科的に移植された組織の創傷治癒、血管形成および定着を加速する方法を提供すること、または外科的に作製された吻合の治癒を促進することである。
【0018】
本発明のもう1つの目的は、骨髄由来幹細胞(例えば、免疫細胞、例えば好中球、好酸球、T細胞、B細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞等)から発生する細胞の枯渇に関連した病態または疾患を治療する方法を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要約
本発明は、ニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストを投与することによる骨髄由来幹細胞(例えば、内皮細胞前駆体、造血幹細胞)のリクルートメント方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法は、例えば、骨髄由来幹細胞のリクルートメントによる治療に対して感受性がある病態(例えば、好中球減少症)の治療に用いることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のこれらおよび他の目的、長所、および特徴は、下記により詳細に説明する本発明の方法および本明細書において用いられる組成物の詳細な説明を読むことによって、当業者に明らかとなるであろう。
好ましい態様の詳細な説明
本発明を説明する前に、本発明は、記載した特定の方法論(例えば、投与様式)または特定の組成物は、当然のこととして変化する可能性があるため、それらに限定されないと理解すべきである。また、本明細書において用いられる用語は、特定の態様を説明する目的に限られるのであって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、制限的に解釈されないと理解すべきである。特に明記していない限り、本明細書で用いた技術および科学用語は全て本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書の記述と類似または同等のいかなる方法および材料も、本発明の実践または試験において用いることができるが、好ましい態様および材料について記載する。本明細書において言及した出版物は全て、出版物が引用されていることに関連した方法および/または材料を開示および説明するために、参照として本明細書に組み入れられる。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「1つ(a)」「および(and)」、および「その(the)」は、本文が明らかにそうでないことを述べていない限り複数形が含まれる。このように、例えば、「1つのニコチン受容体アゴニスト(a nicotine receptor agonist)」という表現には、そのようなアゴニストの複数が含まれ、「そのニコチン受容体(the nicotine receptor)」という表現には、当業者に既知の1つまたは複数の受容体およびその同等物に対する言及が含まれる等である。
【0023】
本明細書において記載された刊行物は、本出願の出願日に先立って開示されたもののみが提供される。本明細書には、本発明は先行する発明により、そのような刊行物に先行する権利が与えられないことの容認として解釈されるべき内容は記載していない。さらに提供された公開の日付は、実際の公開日とは異なる可能性があり、それらは個別に確認する必要がある。
【0024】
定義
「ニコチン受容体アゴニスト」という用語は、ニコチン(ニコチン誘導体および類似の化合物が含まれると理解される)およびニコチン受容体に実質的に特異的に結合して、薬学的作用を提供する、例えば、血管新生の誘導の場合のように、幹細胞を治療部位にリクルートメントさせる他の化合物を含むことを意味する。「ニコチン受容体アゴニスト」とは、天然に存在する化合物(低分子、ポリペプチド、ペプチド等、特に天然に存在する植物アルカロイド等が含まれるが、これらに限定されない)、内因性リガンド(例えば、天然資源から精製された、組換えによって産生された、または合成、さらにそのような内因性リガンドの誘導体および変種を含む)、ならびに合成によって産生された化合物(例えば、低分子、ペプチド等)を含む。
【0025】
「ニコチン」という用語は、天然から単離および精製されてもよく、または如何なる方法で合成によって産生されてもよい、化学名S-3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジンを有するニコチンとして知られる天然に存在するアルカロイドを意味すると解釈される。この用語はまた、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸塩、硫酸塩または亜硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩または酸性クエン酸塩、酒石酸塩または酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、およびパモエート塩のような、薬学的に許容される陰イオンを含む一般的に存在する塩を含むと解釈される。ニコチンは、分子量162.23の無色から淡黄色で、強いアルカリ性、油性、揮発性、吸湿性の液体であり、式を図1に示す。
【0026】
特にそうでないと明記していない限り、「ニコチン」という用語にはさらに、ニコチンと類似の薬学的治療特性を示すニコチンの薬学的に許容される誘導体または代謝物も含まれる。そのような誘導体、代謝物、および代謝物の誘導体は、当技術分野で既知であり、コチニン、ノルコチニン、ノルニコチン、ニコチン-N-オキシド、コチニンN-オキシド、3-ヒドロキシコチニンおよび5-ヒドロキシコチニン、またはその薬学的に許容される塩が含まれるが必ずしもこれらに限定されない。ニコチンの多くの有用な誘導体は、医師用添付文書集と共にハリソンの内科学原理に開示されている。
【0027】
「ニコチン受容体アゴニスト」における「ニコチン受容体」という用語は、ニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニスト(例えば、ムスカリン様アセチルコリン受容体)に結合すると、幹細胞または前駆細胞(例えば、血管新生の場合のように)のリクルートメントを刺激するニコチン結合部位を含む任意のタンパク質と共にニコチン受容体の古典的な5量体タンパク質(中心のイオンチャンネル周辺に対称に配置されたサブユニットによって形成される)を含むことを意味する。「ニコチン受容体アゴニスト」という句において「ニコチン受容体」という用語を用いることは、それによってニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストが幹細胞/前駆細胞のリクルートメントを刺激する(例えば、ニコチン受容体に結合することによって)理論的なメカニズムに本発明を限定することを意味するのではなく、むしろ幹細胞/前駆細胞リクルートメントの刺激を促進するために用いることができる本発明によって意図される化合物のタイプを説明する手段である。
【0028】
「治療」、「治療する」等という用語は、本明細書において一般的に所望の薬学的作用および/または生理学的作用、例えば、血管新生および/または脈管形成の刺激を得ることを意味するために用いられる。この作用は、疾患またはその症状の完全または部分的な予防に関して予防的であってもよく、および/または疾患および/または疾患に帰因する副作用の部分的または完全な治癒に関して治療的であってもよい。本明細書において用いられる「治療」とは、哺乳類、特にヒトにおける疾患の如何なる治療も含み、以下のものが含まれる:(a)疾患または病態(例えば、不適当な脈管形成によって皮膚移植片または再結合した脚が失われることを予防する)が、疾患に対して素因を有するがまだその疾患を有すると診断されていない被験者に起こることを予防すること;(b)疾患を阻害する、例えばその発症を停止させること;または(c)疾患を緩和すること(例えば、臓器への血流を改善するために閉塞した血管周囲の「生体バイパス」の形成を増強する)。例えば、本発明の意味において、血管新生および/または脈管形成の刺激は、脈管分布の増加と血流の増加による治療に対して感受性がある疾患または病態を有する被験者のために用いられる。
【0029】
「ニコチン受容体アゴニストの治療的有効量」とは、所望の治療的効果、例えば血管新生および/または脈管形成刺激の所望のレベルを促進するために有効なニコチン受容体アゴニストの量を意味する。正確な所望の治療効果は、治療すべき病態に応じて変化するであろう。
【0030】
「単離された」とは、化合物が天然に伴う成分の全てまたはいくつかから化合物が分離されていることを意味する。
【0031】
「実質的に純粋なニコチン受容体アゴニスト」とは、ニコチン受容体アゴニストが、それが天然において伴う成分から分離されていることを意味する。典型的に、ニコチン受容体アゴニストは、それが天然で会合している天然に存在する有機分子を重量で少なくとも50%〜60%含まない場合に実質的に純粋である。一般的に、調製物は、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%のニコチン受容体アゴニストである。実質的に純粋なニコチン受容体アゴニストは、例えば、天然資源(例えば、タバコ)からの抽出によって、化合物を化学合成することによって、または精製および化学的改変の組み合わせによって得ることができる。実質的に純粋なニコチン受容体アゴニスト活性はまた、例えば、増加したニコチン受容体アゴニスト活性を有する分画を得ることによって、そのような活性を提供する因子または複数の因子に関して、ニコチン受容体アゴニスト活性を有する試料を濃縮することによって得ることができる。純度は、如何なる適当な方法、例えばクロマトグラフィー、質量分析法、HPLC分析等によっても測定することができる。
【0032】
例えば、ニコチン受容体アゴニストは、その自然の状態でそれが伴う混入物質から分離されている場合に、天然で会合している成分を実質的に含まない。このように、化学合成された、またはそれが天然で発端となる細胞とは異なる細胞系において産生されたニコチン受容体アゴニストは、それが天然で会合する成分を実質的に含まないであろう。
【0033】
「幹細胞」という用語は、本明細書において、自己再生能と分化した子孫の産生能の双方を有する哺乳類細胞を意味するように用いられる(モリソン(Morrison)ら、(1997)、Cell 88:287〜298)。一般的に、幹細胞はまた、以下の特性の1つまたは複数を有する:非同期性または対称な複製を受けることができること、すなわち、分裂後の2つの娘細胞が異なる表現型を有しうること;広い自己再生能;分裂静止型での存在能;およびそれらが存在する全ての組織のクローン再生、例えば、造血幹細胞が全ての造血細胞系列を再構成できること。「前駆細胞」は、それらが典型的に広い自己再生能を有しないという点、そしてしばしばそれらが由来する組織において系列細胞のサブセット、例えば、造血系の状況ではリンパ球または赤血球系列のみを再生できるに過ぎないという点において幹細胞とは異なる。全文を通じて用いられる「幹細胞/前駆細胞」という用語は、単純にするために用いられ、幹細胞、前駆細胞、および幹細胞と前駆細胞の双方を含むと解釈される。
【0034】
幹細胞は、抗体によって同定される特異的エピトープに関連したマーカーが存在することと、特異的抗体の結合がないことによって同定される特定のマーカーが存在しないことの双方を特徴とする。幹細胞はまた、インビトロとインビボの双方の機能的アッセイ法によって、特に、幹細胞の多数の分化子孫産生能に関連するアッセイ法によって同定してもよい。「幹細胞」とは、造血幹細胞とそれに由来する前駆細胞(米国特許第5,061,620号);神経堤幹細胞(モリソン(Morrison)ら、(1999)、Cell 96:737〜749);胚幹細胞;間葉幹細胞;中胚葉幹細胞;等を含むが必ずしもこれらに限定されないことを意味する。
【0035】
関係するその他の造血「前駆細胞」には、リンパ球系列、例えば未成熟なT細胞およびB細胞集団になることが決められている細胞が含まれる。本発明の方法は、これらの細胞の選択された集団を拡大するために有用である。
【0036】
「間葉前駆細胞」は、内皮前駆細胞、ならびに間葉細胞系列、例えば、結合組織、軟骨、軟骨細胞、骨(骨芽細胞)、脂肪細胞(脂肪細胞)、および血管の外層へと発達することが決められている他の細胞を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0037】
発明の概要
本発明は、ニコチンが内皮前駆細胞の血管へのリクルートメントを誘導して、血管新生の誘導を提供するという意外な発見に基づいている。本発明者らの最初の疑問は、喫煙者は、冠動脈または末梢動脈閉塞後の側副発達がしばしば不適当であるという臨床知見に基づいており、すなわち、本発明者らは当初、ニコチンが血管新生の阻害において何らかの役割を有するのではないかと疑った。したがって、本発明者らは、ディスク血管新生システム(DAS)においてニコチンの局所作用を調べることから始めた。意外にも、本発明者らは、ニコチンは、Del1(ペンタ(Penta)ら、(1999)、J. Biol. Chem. 274(16):11101〜9)およびbFGFを含む、このシステムにおいて調べた如何なる増殖因子とも血管新生物質として同じであるか、またはより強力であることを発見した。さらなる研究によって、ニコチンの強力な血管新生作用は、部分的にシクロオキシゲナーゼカスケードの産物によって、そして部分的にNO合成酵素経路によって媒介されることが判明した。ディスク血管新生システムを用いる研究から、ニコチンが治療的血管新生にとって有用となる可能性があることが示唆された。しかし、血管新生はそのような複雑な過程であることから、ある物質が治療的血管新生に対して有用であるという原理の証明を示す場合、その物質をその治療のために血管新生を必要とする疾患の動物モデルにおいて調べた。したがって、動脈閉鎖の動物モデル(マウス後肢虚血モデル)において研究を実施した。動脈閉鎖のこのモデルを用いて、本発明者らはニコチンが治療的血管新生を誘導するという動かぬ証拠を得た。
【0038】
さらに、本発明者らは、ニコチンによる血管新生の誘導が、損傷部位への内皮前駆細胞の可動化とリクルートメントを伴うことを発見した。この発見は、ニコチンが幹細胞と前駆細胞の可動化とリクルートメントを誘導しうること、そしてこのように、その中で細胞集団が例えば感染症、物理的損傷、自己免疫等によって枯渇している病態を治療するために用いることができることを示唆している。
【0039】
このように、本発明者らは、タバコの煙の成分であるニコチンが、冠動脈、末梢、またはその他の閉塞性動脈疾患の治療において血管新生を増強するため;創傷治癒を増強して、外科的に移植された組織または臓器の脈管形成(例えば、皮膚移植または後肢の再結合)を改善するため、および枯渇または損傷した成熟細胞集団の再増殖を提供するために、幹細胞と前駆細胞をリクルートメントおよび可動化するための新しい治療的アプローチの基礎を提供することを発見した。
【0040】
他の従来の血管新生物質と比較してその類似または比較的増強された有効性のために、ニコチンは、治療的血管新生の基礎として現行の候補物質に対して有意な長所を有する。その上、ニコチンの薬理学および薬物動態は、喫煙において(例えば、禁煙を促進する努力において)十分に特徴が調べられており、徐放性輸送と局所輸送方法は、既に広く調べられている。ニコチンとニコチンアゴニストの製造方法も同様に十分に特徴が調べられている。さらに、これらの低分子は、複雑な血管新生ペプチドより容易に合成および保存される。
【0041】
したがって、本発明は、ニコチン受容体アゴニストを投与することによって、幹細胞および/または前駆細胞を可動化およびリクルートメントさせる方法および組成物を含む。
【0042】
ニコチンとその他のニコチン受容体アゴニスト
本発明の方法は、ニコチン受容体アゴニスト、特にニコチン、ニコチン代謝物、またはニコチン誘導体の投与によって行われる。ニコチン誘導体および類似体を産生する方法は当技術分野で周知である。例えば、米国特許第4,590,278号;同第4,321,387号;同第4,452,984号;同第4,442,292号;および同第4,332,945号を参照のこと。
【0043】
関係するさらなるニコチン受容体アゴニストには、天然に存在する植物アルカロイド(例えば、ロベリン、ロベリン誘導体等)が含まれるが、必ずしもこれらに限定せず、植物由来化合物は、生薬調製物(例えば、乾燥タバコの葉の形で、湿布剤、植物調製物等)、単離型(例えば、天然でそれが伴う材料から分離されている、または部分的に分離されている)、または実質的に純粋な型で提供されうる。その他のニコチン受容体アゴニストには、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンの局所濃度を増加させる)、ニコチン受容体の神経型に特異的に結合して有害な副作用が少ないエピバチジン誘導体が含まれる(例えば、エピドキシジン、ABT-154、ABT-418、ABT-594;等しい効力であるが、ニコチン受容体の神経型に対して高い特異性を有するエピバチジンのいくつかの誘導体を記述するアボットラボラトリーズ(ダマイ(Damaj)ら(1998)、J. Pharmacol. Exp. Ther. 284:1058〜65)。関係するさらなるニコチン受容体アゴニストには、コリンのN-メチルカルバミルおよびN-メチルチオ-O-カルバミルエステル(例えば、トリメチルアミノエタノール)(アブード(Abood)ら、(1988)、Pharmacol. Biochem. Behav. 30:403〜8);アセチルコリン(ニコチン受容体の内因性リガンド)等が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0044】
ニコチン受容体アゴニストはまた、当技術分野で周知の方法を用いて容易に同定することができる。例えば、候補ニコチン受容体アゴニストが、インビトロでニコチン受容体と結合できるか否かに関してスクリーニングすることができ、候補物質が幹細胞および/または前駆細胞をリクルートメントできるか否かはインビボで評価することができる(例えば、ディスク血管新生システム(DAS)を用いて、後肢虚血モデル等において)。
【0045】
薬学的組成物
本明細書を読むことによって、当業者は、本明細書に記載のニコチン受容体アゴニストを含む薬学的組成物が広く多様な製剤において提供されうることを認識するであろう。より詳しく述べると、ニコチン受容体アゴニストは、適当な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて薬学的組成物に製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルのような固体、半固体(例えば、ゲル)、液体またはガス様剤形の調製物に製剤化することができる。ニコチン受容体アゴニストが天然に存在する化合物の場合、薬学的組成物もまた、生薬調製物として提供されうる(例えば、タバコの葉の形で、植物材料の湿布として、植物調製物として等)。
【0046】
用いられるニコチン受容体アゴニスト製剤は、治療すべき病態または疾患、投与経路、投与すべきニコチン受容体アゴニストの量、および当業者によって容易に認識されるその他の変数に応じて変化するであろう。一般的に、そして下記により詳細に考察するように、ニコチン受容体アゴニストの投与は、全身的または局所的のいずれかとなりえて、非経口、静脈内、動脈内、心膜内、筋肉内、腹腔内、経皮的(transdermal)、経表皮的(transcutaneous)、皮下、皮内、肺内等の経路による投与を含むが、必ずしもこれらに限定されない様々な方法で行うことができる。
【0047】
薬学的投与剤形において、ニコチン受容体アゴニストは、薬学的に許容される塩の形で投与してもよく、またはそれらは単独で、もしくは他の薬学的に活性な化合物と適当に結合させるのみならず、組み合わせて用いてもよい。以下の方法および賦形剤は、単なる説明に過ぎず、決して制限的でない。
【0048】
ニコチン受容体アゴニストは、植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはポリエチレングリコールのような、水性または非水性溶媒にそれらを溶解、懸濁、または乳化することによって、そして望ましければ、溶解剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤、および保存剤のような従来の添加剤と共に注射用製剤に製剤化することができる。
【0049】
局所、経表皮、および経皮投与に適した製剤、例えば、創傷部にニコチン受容体アゴニストを直接投与する場合、適当な懸濁剤、溶解剤、濃化剤、安定化剤、および保存剤を用いることによって同様に調製してもよい。局所製剤はまた、例えば、徐放性ペレットまたは放出制御パッチに組み入れることによって、ニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストの持続的投与を提供する手段と共に用いてもよい。
【0050】
ニコチン受容体アゴニストは、そのゲルが局所適用されうる(例えば、創傷治癒を促進するために)、または埋め込まれる(例えば、内部治療部位でニコチン受容体アゴニストの持続的な放出を提供するために)生体適合性のゲルとして製剤化することができる。適したゲルおよびゲルを用いて輸送するために所望の化合物を製剤化する方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第5,801,033号;同第5,827,937号;同第5,700,848号;およびMATRIGEL(商標)を参照のこと)。
【0051】
経口用製剤の場合、ニコチン受容体アゴニストは単独、または錠剤、粉剤、顆粒剤、もしくはカプセル剤を作製するために適当な添加剤、例えば乳糖、マンニトール、コーンスターチ、またはジャガイモデンプンのような従来の添加剤;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、またはカルボキシメチルセルロースのような崩壊剤;タルク、またはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ならびに望ましければ、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、および芳香剤と組み合わせて用いることができる。
【0052】
ニコチン受容体アゴニストは、吸入によって投与されるエアロゾル製剤において利用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような加圧式の許容される噴射剤に製剤化することができる。
【0053】
さらに、ニコチン受容体アゴニストは、乳化基剤、または水溶性基剤のような様々な基剤と混合することによって坐剤にすることができる。本発明の化合物は、坐剤によって直腸投与することができる。坐剤は、体温で溶解するが、室温では固化しているカカオバター、カルボワックス、およびポリエチレングリコールのような溶媒を含みうる。
【0054】
それぞれの用量単位が、例えば茶さじ1杯、大さじ1杯、錠剤、または坐剤が1つまたは複数の阻害剤を含む組成物の規定量を含む、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤のような経口または直腸投与のための単位投与剤形を提供してもよい。同様に、注射または静脈内投与のための単位投与剤形は、滅菌水、正常食塩水またはもう1つの薬学的に許容される担体における溶液としての組成物中に1つまたは複数の阻害剤を含んでもよい。
【0055】
本明細書において用いられる「単位投与剤形」という用語は、ヒトおよび/または動物被験者に対する単位用量として適している物理的に個別の単位を意味し、各単位は薬学的に許容される希釈剤、担体、または溶媒と組み合わせて所望の作用を生じるために十分な量となるように計算されたニコチン受容体アゴニストの規定量を含む。本発明の単位投与剤形の仕様は、用いる特定の化合物および得られる作用、ならびに宿主においてそれぞれの化合物に関連した薬物動態に依存する。
【0056】
溶媒、アジュバント、担体、または希釈剤のような薬学的に許容される賦形剤は、一般に容易に入手できる。その上、pH調節剤および緩衝剤、等張性調節剤、安定化剤、湿潤剤等のような薬学的に許容される補助物質も一般に容易に入手できる。
【0057】
1つまたは複数のニコチン受容体アゴニストの他に、本発明の薬学的製剤はさらなる活性物質を含んでもよく、または平行して投与してもよい。例えば、血管新生および/または脈管形成を促進するために薬学的製剤を投与する場合、製剤は酸化窒素(NO)レベル(例えば、NO合成酵素の活性を増強することによって、NOの放出を増強することによって等)、またはプロスタサイクリンレベル(例えば、プロスタサイクリン合成酵素の活性を増強することによって、プロスタサイクリンの放出を増強することによって等)を増強することによって、血管新生をさらに増強するためのさらなる物質を含みうる。例としてのNOレベル増強物質には、NOの基質として役立ちうるL-アルギニン、L-リジン、およびこれらのアミノ酸を濃縮したペプチド;抗酸化剤(例えば、トコフェロール、アスコルビン酸、ユビキノン)、または抗酸化酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ)のようなNO活性を保持する物質;NO合成酵素活性を増強しうる物質(例えば、テトラヒドロビオプテリン、またはテトラヒドロビオプテリンの前駆物質(例えば、セピアプテリン))等が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。例としてのプロスタサイクリンレベル増強物質には、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸のようなプロスタサイクリンの前駆物質、ならびにプロスタグランジンE1およびその類似体のようなプロスタノイド等が含まれるがこれらに限定されない。またはもしくはさらに、本発明の薬学的組成物は、ニコチン受容体以外の経路を通じて作用する、幹細胞および/または内皮細胞リクルートメントを刺激するためにさらなる物質を含みうる(例えば、血管新生または脈管形成において、VEGF、FGF(例えば、aFGF、bFGF)、Del1等)。
【0058】
特に、ニコチン受容体アゴニストが局所適用のために、例えば筋肉内経路によって輸送される場合、ニコチン受容体アゴニストをゲルまたはマトリクス中で提供することが望ましいかもしれない。ゲルまたはマトリクスは例えば、それに基づいて新しい組織を形成できる少なくとも最初の基質を提供しうる。例えば、ゲルまたはマトリクスを虚血領域に押し出して、その領域における閉塞を迂回するために新しい血管形成のための経路を形成することができる。
【0059】
幹細胞および前駆細胞のインビボでの可動化/リクルートメントのためのニコチン受容体アゴニストの投与
幹細胞および/または前駆細胞の可動化またはリクルートメントを得るために、ニコチンまたはその他のニコチン受容体アゴニストは、如何なる適した方法で、好ましくは薬学的に許容される担体と共に投与することができる。当業者は、本発明の意味においてニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストを投与する多様な適した方法を利用できること、そして特定の化合物を投与するために1つ以上の経路を用いることができるが、特定の経路は、もう1つの経路より即時型で、より有効、および/またはより少ない副作用に関連する作用を提供しうることを容易に認識するであろう。一般的に、ニコチン受容体アゴニストは、例えば、非経口、静脈内、動脈内、心膜内、筋肉内、腹腔内、経皮、経表皮、皮下、皮内、または肺内経路によって本発明の方法に従って投与することができる。
【0060】
ニコチンの全身投与に関連した副作用を回避するために、ニコチンを局所投与することが好ましい(単独または例えば、血管新生の刺激において、NO合成酵素もしくはプロスタサイクリン合成酵素経路の活性を増強するために;または幹細胞もしくは前駆細胞の所望の成熟細胞(例えば、内皮細胞)への発達を促進するために)。局所投与は、例えば、所望の治療部位での直接注射(例えば、筋肉内注射)、所望の治療部位の近傍部位で(例えば、治療部位に血液を供給する血管または毛細血管に)静脈内にニコチン受容体アゴニスト製剤を導入することによって、動脈内または心膜内導入によって、治療部位内または近傍での生体適合性ゲルまたはカプセルとしてのニコチン受容体アゴニストの導入によって(例えば、注射または他の埋め込み方法)、血流の増加および/または血管分布の増加が望ましい、および/または幹細胞または前駆細胞のリクルートメントが望ましい筋肉または他の組織に直接注射することによって、製剤を直腸内に導入することによって(例えば、坐剤の形で、例えば腸の一部の切除後の外科的に作製された吻合の血管形成を促進するために)等によって行うことができる。
【0061】
対象となる1つの特定の応用例において、ニコチン受容体アゴニスト製剤を「バイオバイパス」法で使用する。バイオバイパスでは、より侵襲的な治療(例えば、冠状動脈バイパス手術)を行う代わりに、ニコチン受容体アゴニスト製剤を投与して、閉塞領域周囲で新血管の成長を誘導する。この態様において、ニコチン受容体アゴニスト製剤を虚血組織部位に、および/または虚血組織の近くに投与して、血管新生を刺激することができる。
【0062】
ある態様において、ニコチン受容体アゴニストを血管壁に直接送達することが望ましいこともある。血管壁に投与する1つの例示的な方法は、薬物送達カテーテル(特に、血管壁への送達を容易にすることができる可膨張性バルーンを備える薬物送達カテーテル)を使用することを含む。従って、1つの態様において、本発明の方法は、バルーンの実質的な部分を覆うニコチン受容体アゴニスト製剤を含むバルーンカテーテルを膨張させることにより、ニコチン受容体アゴニストを血管壁に直接送達することを含む。ニコチン受容体アゴニスト製剤は血管壁の所定の位置に保持され、血管壁を通る吸着を促す。1つの実施例において、カテーテルは、血液をカテーテルに通して灌流しながら、より長い吸着時間でニコチン受容体アゴニストを血管壁に保持することができる灌流バルーンカテーテルである。ニコチン受容体アゴニストを塗布するのに適したカテーテルの例として、米国特許第5,558,642号;米国特許第5,554,119号;同第5,591,129号などに開示される薬物送達カテーテルが挙げられる。
【0063】
対象となる別の態様において、ニコチン受容体アゴニスト製剤を、(例えば、治療部位へ、または治療部位に隣接して注射することにより、治療しようとする組織へ、または治療しようとする組織に隣接して押し出すことにより)移植することができる生体適合性ゲルの形で送達する。ニコチン受容体アゴニストを含むゲル製剤は、持続的な(例えば、数時間、数日、数週間などにわたる)ニコチン受容体アゴニストおよび他の活性薬剤の局所放出を容易にするように設計することができる。このゲルを、例えば、針または他の送達装置を使用して治療部位へ、または治療部位の近くに注射することができる。1つの態様において、ゲルを器具内に、または器具上に配置し、この器具を組織に挿入し、次いでゆっくりと引き抜いて、器具が通った跡にゲルを残し、これにより器具が通った跡に沿って幹細胞および/または前駆細胞のリクルートメントが刺激される。この後者の送達方法は、例えば、バイオバイパスの進路を決めるのに特に望ましい場合がある。
【0064】
他の態様において、例えば、局所送達のために(例えば、創傷治癒を容易にするために)、ニコチン受容体アゴニスト製剤を局所的に送達することが望ましい場合がある。局所適用は、パッチの形で提供することができる生体適合性ゲルを使用することにより、またはクリーム、発泡体などを使用することにより達成することができる。創傷への適用に適した、いくつかのゲル、パッチ、クリーム、発泡体などは、本発明によるニコチン受容体アゴニスト製剤を送達するために改良することができる(例えば、米国特許第5,853,749号;同第5,844,013号;同第5,804,213号;同第5,770,229号などを参照のこと)。一般的に、親水性コロイドまたは湿った環境を提供する他の材料などの担体を使用して局所投与を行う。または、創傷治癒のために、創傷に適用することができるゲルまたはクリーム中に他の薬剤を含めて、または含めずに、ニコチンアゴニストを供給することができる。このような適用の例は、ニコチンアゴニストおよび他の活性成分と防腐剤および安定化剤を含む、汚染微生物数が少ないカルボキシメチルセルロースナトリウムベースの局所ゲルである。
【0065】
他の態様において、経皮パッチを使用して、ニコチン受容体アゴニスト製剤を局所送達または全身送達する。いくつかの経皮パッチは、ニコチンを全身送達して禁煙を容易にすることが当技術分野において周知であり、このようなパッチは、本発明による幹細胞および/または前駆細胞のリクルートメントを刺激するのに有効量のニコチン受容体アゴニストを送達するように改良することができる(例えば、米国特許第4,920,989号;および同第4,943,435号、NICOTROL(商標)パッチなどを参照のこと)。
【0066】
他の送達方法において、ニコチン受容体アゴニストを、イオン導入技術を使用して投与することができる。イオン導入で使用するための方法および組成物は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第5,415,629号;同第5,899,876号;同第5,807,306号などを参照のこと)。
【0067】
幹細胞/前駆細胞の可動化/リクルートメントの望ましい程度は、治療される特定の状態または疾患、ならびに患者の安定性および起こり得る副作用によって決定される。適切な用量および適切な投与で、本発明は、広範囲の血管発生(例えば、わずかな発生から本質的に完全な発生まで)、ならびに広範囲の幹細胞または前駆細胞の可動化および/またはリクルートメント(例えば、ある細胞型を完全に再増殖させるための(例えば、感染、放射線治療、化学療法などの後の宿主免疫無防備状態において免疫細胞を補充するための)、または幹細胞もしくは前駆細胞を局所損傷(例えば、創傷治癒、局所虚血など)の部位に局所的にリクルートメントするための)、十分な数の細胞の可動化)をもたらす。
【0068】
ニコチン受容体アゴニストが幹細胞/前駆細胞を可動化/リクルートメントする活性は、ニコチン受容体アゴニストにより媒介されるリクルートメントを妨げる化合物を投与することにより制御することができる。この意味で、本発明はまた、これらの過程におけるニコチン受容体アゴニストの役割を妨げることにより、ニコチン受容体アゴニストの活性を制御または阻害する手段を提供する。これは、例えば、ニコチン受容体により効果を媒介するニコチン受容体アゴニストの活性を阻害する薬剤を投与することにより(例えば、ニコチン受容体への結合を阻害することにより)達成することができる。例示的なニコチン受容体アンタゴニストとして、ヘキサメトニウムおよびメカミラミン(図1に示す式)が挙げられる。または、ニコチン受容体アゴニストにより媒介される活性は、ニコチン受容体シグナル伝達の下流にある過程の阻害剤を投与することにより制御または阻害することができる。例えば、酸化窒素合成酵素阻害剤および/またはプロスタサイクリンアンタゴニストを投与して、ニコチン受容体アゴニストが血管新生を刺激する活性を阻害することができる。阻害剤は、ニコチン受容体アゴニストに関して述べたのと同じ方法および投薬量で哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することができる。
【0069】
被験者がニコチン受容体アゴニストに暴露されたことがある(特に、長期間暴露されたことがある)場合(例えば、喫煙者であり、かつ以前に(特に、長期間)ニコチンに全身暴露されたことがある被験者)、幹細胞/前駆細胞の可動化/リクルートメントの刺激を媒介する、ニコチン受容体または他のニコチン受容体アゴニスト結合受容体は、ニコチン受容体アゴニストに以前に暴露されたことがない、または長期間暴露されたことがない被験者より低レベルで存在する可能性がある。従って、このような被験者において、初回コース(initial course)のニコチン受容体アンタゴニストを投与して、ニコチン結合受容体の増加を刺激することが望ましい場合もある。
【0070】
用量
本発明の状況で、被験者(例えば、ヒト)に投与されるニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストの用量は、適当な時間枠にわたって被験者において望ましい治療反応(例えば、治療的に有効な数の幹細胞/前駆細胞の可動化/リクルートメント、治療的血管新生反応など)をもたらすのに十分であるべきである。この用量は、使用される特定のニコチン受容体アゴニストの効力および被験者の状態、ならびに治療しようとする被験者の体重により決定される。例えば、ニコチン受容体に対するニコチン受容体アゴニストの量もしくは親和性またはその両方は、この化合物の活性の調節に役割を果たす場合がある。用量の大きさはまた、特定の化合物の投与に付随し得る任意の有害な副作用の存在、性質、および程度により決定される。
【0071】
幹細胞/前駆細胞のリクルートメントの刺激におけるニコチンまたはニコチン受容体アゴニストの有効量の決定において、最小限の有害な副作用で望ましい効果を上げるように、投与経路、放出システム(例えば、丸薬、ゲル、または他のマトリックス)の反応速度論、およびニコチンアゴニストの効力を考慮する。ニコチン受容体アゴニストを、一般的に、治療される被験者の臨床状態に合わせて1日〜数週間の期間、治療される被験者に投与する。
【0072】
以下の投薬量は、ニコチンまたはニコチンと同様の効力および効能を有するニコチン受容体アゴニストが投与されると考える。当業者に容易に明らかにように、ニコチン受容体アゴニストの投薬量は、ニコチンと比較した効力および/または効能に従って調節される。経口により、または吸入剤として与える場合、用量は、1日に1〜20回与えて約0.01mg〜10mgの範囲であり得、約0.1mg〜100mgの総1日量まであり得る。局所適用する場合、全身に作用するために、パッチまたはクリームを、約0.01mg〜10mgの範囲の用量を全身送達するように設計する。局所製剤(例えば、クリーム)の目的が局所的に作用することである場合、用量は、約0.001mg〜1mgの範囲である可能性が高い。全身に作用するために注射する場合、ニコチンアゴニストが投与されるマトリックスは、約0.001mg〜1mgの範囲の用量を全身送達するように設計される。局所的に作用するために注射する場合、マトリックスは、約0.003mg〜1mgの範囲の量のニコチンアゴニストを局所放出するように設計される。
【0073】
投与経路にかかわらず、前記の用量のニコチン受容体アゴニストを、任意の適切な期間(例えば、1〜24時間、1日〜数時間など)にわたって投与することができる。さらに、複数回用量を、選択された期間にわたって投与することができる。適切な用量を、特に、予防計画において適切な1日あたりの亜用量(subdose)で投与することができる。正確な治療レベルは、治療される被験者の反応によって決まる。ニコチン受容体アゴニストによる患者の治療において、「大量投与」計画を用いることが望ましい場合もある。このような治療において、多量のニコチン受容体アゴニストを患者に投与し、化合物を作用させ、次いで、活性化合物を無効にするために、または活性化合物の全身副作用を低減するために、適切な試薬(例えば、ニコチン受容体アンタゴニスト)を患者に投与する。
【0074】
ニコチン受容体アゴニストにより媒介される血管新生による治療の対象となる状態
本発明の方法およびニコチン受容体アゴニスト含有組成物を使用して、幹細胞/前駆細胞のリクルートメントから恩典を得る様々な状態を治療することができる。
【0075】
1つの態様において、ニコチン受容体アゴニストを使用して、内皮前駆細胞のリクルートメントを刺激し、血管新生の刺激、脈管形成の刺激、血流の増大、および/または血管分布の増大をもたらすことができる。この態様におけるニコチン受容体アゴニストの使用は、一般的に本明細書で「治療的血管新生」と呼ばれる。
【0076】
本発明の方法による治療的血管新生の対象となる状態および疾患の例として、血管の閉塞(例えば、動脈、静脈、または毛細血管系の閉塞)に関連する任意の状態が挙げられる。このような状態または疾患の特定の例として、冠状動脈閉塞症、頚動脈閉塞症、動脈閉塞症、末梢動脈閉塞症、アテローム性動脈硬化症、筋内膜(myointimal)過形成(例えば、血管手術またはバルーン血管形成術または血管ステント術による)、閉塞性血栓性血管炎、血栓障害、血管炎などが挙げられるが、これらに必ずしも限定されない。本発明の方法を使用して予防することができる状態または疾患の例として、心臓発作(心筋梗塞)または他の血管死、発作、血流減少に関連する四肢の死または損失などが挙げられるが、これに必ずしも限定されない。
【0077】
他の形態の治療的血管新生として、ニコチン受容体アゴニストを使用して、創傷または潰瘍の治癒を促進すること;機能および生存可能性を保つために皮膚移植片または再付着した四肢の血管新生を改善すること;外科的吻合(例えば、胃腸手術後の腸の再結合部分)の治癒を改善すること;ならびに皮膚または毛の成長を改善することが挙げられるが、これに必ずしも限定されない。
【0078】
ニコチン受容体アゴニストにより媒介される、幹細胞および/または前駆細胞の可動化および/またはリクルートメントの誘導による治療の対象となる状態
血管新生および/または脈管形成における内皮前駆細胞の刺激に加えて、ニコチンまたは他のニコチン受容体アゴニストを使用して、幹細胞および/または前駆細胞を可動化および/またはリクルートメントして、枯渇した成熟細胞を交換するか、または成熟細胞集団を補充することもできる。「可動化(mobilization)」とは、幹細胞および/または前駆細胞がそれらの起源部位(例えば、骨髄)から全身循環へ移動することを誘導することを意味する。「リクルートメント(recruitment)」とは、幹細胞および/または前駆細胞が全身循環から局所部位(例えば、創傷部位または他の物理的損傷部位、感染部位、器官など)へ移動することを意味する。可動化/リクルートメント過程に加えて、または可動化/リクルートメント過程の一部として、ニコチン受容体アゴニストはまた、幹細胞および前駆細胞の増殖および成熟を誘導することができる。
【0079】
幹細胞および/または前駆細胞の可動化による治療の対象となる状態として、免疫細胞(例えば、好中球、好酸球、T細胞、B細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞)、間葉由来細胞(例えば、結合組織細胞、軟骨細胞、軟骨細胞、骨(骨芽細胞)、脂肪細胞(脂肪細胞)、および血管細胞(例えば、内皮細胞))の数を増加させることによる治療の対象となる状態が挙げられるが、これに必ずしも限定されない。
【0080】
1つの態様において、可動化/リクルートメントされる細胞は間葉幹細胞である。間葉幹細胞は、骨、軟骨、筋肉、腱、および他の結合組織に分化することができる、骨髄にある前駆細胞集団である(ブルーダー(Bruder)ら(1998)Clin Orthop(355 Suppl):S247-56)。ヒト間葉幹細胞は、マーカーSH2、SH3、およびSH4が陽性である。
【0081】
別の態様において、可動化/リクルートメントされる細胞は造血幹細胞である。造血細胞には、HSC、赤血球、好中球、単球、血小板、マスト細胞、好酸球および好塩基球、Bリンパ球およびTリンパ球およびNK細胞、ならびにそれぞれの細胞系列の前駆細胞が含まれる。本明細書で使用される造血幹細胞(HSC)は、全ての定義された血液リンパ細胞系列の子孫を生じることができる、原始的なまたは多分化能性の造血幹細胞を意味する。少数の幹細胞は、致死線量まで照射したマウスを完全に再構成し、マウスを長期間生存させることができる。ヒトにおいて、CD34+Thy-l+Lin-造血幹細胞は、マウスc-kit+Thy-1lloLin-/loSca-1+(KTLS)造血幹細胞の等価物であり、多細胞系列の造血幹細胞の実質的に純粋な集団である。ヒト造血幹細胞は、その表面上にマーカーCD34、thy-1、SCAH-1、およびSCAH-2を示し、細胞系列特異的マーカー(グリコホリンA、CD3、CD24、CD16、CD14、CD38、CD45RA、CD36、CD2、CD19、CD56、CD66a、およびCD66bが挙げられ得る);T細胞特異的マーカー、腫瘍特異的マーカーなどが陰性である。中胚葉幹細胞の同定に有用なマーカーとして、FcγRII、FcγRIII、Thy-1、CD44、VLA-4α、LFA-1β、HSA、ICAM-1、CD45、Aa4.1、Sca-lなどが挙げられる。米国特許第5,035,994号;同第5,061,620号;同第5,061,620号;およびタースタペン(Terstappen)ら(1992)Blood 79:666-677もまた参照のこと。
【0082】
別の態様において、可動化/リクルートメントされる幹細胞は神経冠幹細胞である。神経冠幹細胞は、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)が陽性であり、マーカーであるスルファチド、神経膠線維酸性タンパク質(GFAP)、ミエリンタンパク質Po、ペリフェリン、ニューロフィラメントが陰性である。
【0083】
特に対象となる態様において、可動化およびリクルートメントされる細胞は内皮前駆細胞である。
【0084】
幹細胞/前駆細胞の可動化/リクルートメントによる治療の対象となる例示的な状態として、虚血、免疫不全症(例えば、好中球減少症、白血球減少症、後天性免疫不全症など)、および血友病(例えば、後天性血友病)が挙げられるが、これに必ずしも限定されない。本発明の方法は、損傷(例えば、機械的損傷、物理的損傷、化学的損傷、放射線損傷、核エネルギーによる損傷、自己免疫損傷、病原体による損傷など)から生じる障害の治療に使用することができる。
【0085】
幹細胞および/または前駆細胞の可動化/リクルートメントによる治療の対象となる状態は、様々な任意の原因から生じ得る。例えば、成熟細胞集団の減少は、疾患または損傷の直接的または二次的な結果であり得、疾患または損傷の治療(例えば、癌治療のための化学療法)の結果であり得る。例えば、好中球枯渇に関連する状態である好中球減少症は、ある種類の白血病、リンパ腫、もしくは転移性癌による骨髄障害;投薬(例えば、利尿薬もしくは抗生物質)に対する有害反応;免疫細胞を枯渇させ得る療法(例えば、放射線治療もしくは化学療法);例えば、EBVウイルス(例えば、感染性単球増加症)、HIVなどにより引き起こされるウイルス感染;細菌感染(例えば、結核);または自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス)の結果として生じ得る。
【実施例】
【0086】
実施例
以下の実施例は、当業者に本発明を作成および使用する方法を完全に開示および説明するために示されるが、本発明者らが本発明と考えるものの範囲を制限すると意図されず、以下の実験が実施される全てのまたは唯一の実験であることを示すものであると意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を保証するように努力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきであろう。特に既定されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるか、またはその近傍である。
【0087】
方法および材料
以下は、以下の特定の実施例に使用される方法および材料の説明である。
【0088】
動物
8〜10週齢の雌野生型C57BL/6Jマウスを使用した。マウスの体重は20〜25グラムであり(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME and Department of Comparative Medicine(DCM)、Stanford、CA)、以前に述べられたように飼育した(マクスウェル(Maxwell)ら(1998)Circulation 1998 98(4):369-374)。
【0089】
ディスク血管新生システム(disc angiogenesis system)(DAS)
ニコチンがインビボで血管新生を誘導するかどうかを研究するために、本発明者らは、ディスク血管新生システム(DAS)を使用した(コワルスキー(Kowalski)ら(1992)Exp Mol Pathol 56(1):1-19;ファジャルド(Fajardo)ら(1998)Lab Invest 58:718-7244)。
【0090】
ディスクの調製 DASは、ポリビニルアルコールスポンジ(Kanebo PVA、RippeyCo.、Santa Clara、CA)により製造されたディスク(直径11mmおよび厚さ1mm)を保持する。両側を、スポンジディスクと同じ直径のニトロセルロース細胞不透過性フィルター(Milliporeフィルター、孔径0.45μm、Millipore、SF、CA)で覆い、このフィルターをMillipore接着剤#1(xx70000.00、Millipore)を使用してスポンジに固定した。結果として、細胞(従って、血管)は、ディスクの縁を通してしか透過または出ることができない(コワルスキーら(1992)Exp Mol Pathol 56(1):1-19;ファジャルドら(1998)Lab Invest 58:718-7244)。
【0091】
血管新生に及ぼすニコチンの局所効果を研究するために、ニコチンをペレットに入れ、ペレットをディスクに直接加えた。簡単に述べると、1.5mmのコア(ペレット)をディスク中心部から切り出した。層流フード内で組み立てる前に、ペレットとディスクの両方を滅菌した。ペレットに20mclまでのニコチン溶液を加え、その後、ペレットを風乾させた。本発明者らは、局所投与されたニコチンの効果を研究するために、ディスクペレットに溶媒(PBS、Sigma、Chemical Co.、St Louis、MO、n=5)またはニコチン(10-6M、Aldrich Chemical Company、Milwaukee、WI、n=5)のいずれかを加えた。比較のために、場合によっては、ニコチンではなく塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;20mcg)またはDel-1タンパク質(0.2M)をペレットに添加した。bFGFおよびDel-1は血管新生を誘導することが知られている。次いで、ニコチンをペレットからディスクにゆっくりと放出させるエチレンビニルアセテートコポリマー(Elvax、Dupont、Chemcentral Corp.、Chicago、IL)でペレットをコーティングした。次いで、ペレットをディスクに再挿入し、その後、ディスクをミリポアフィルターで密封した。
【0092】
ニコチンの全身効果を研究するために、場合によっては、ニコチンを飲み水に入れて動物に投与した(以下を参照のこと)。
【0093】
ディスクの移植 4%抱水クロラールを使用してマウスに麻酔をかけた(腹腔内投与(i.p.)、0.1cc/10g体重)。側腹部および胸部後面の毛を剃り、飽和70%イソプロピルアルコールで拭いた。移植部位に対して反対側の側腹部皮膚に、2cmの切開をした。皮下組織を通した鈍切開により溝を作成し、これに食塩水で湿らせたディスクを挿入した。皮膚を5.0絹製縫合糸で閉じた(コワルスキーら(1992)Exp Mol Pathol 56(1):1-19;ファジャルドら(1998)Lab Invest 58:718-7244).
【0094】
ディスクの除去および調製 ディスク移植の2週間後、マウスを、過量の4%抱水クロラール(i.p.)および頚部脱臼で屠殺した。移植されたディスクを覆っている皮膚のすぐ隣で注意深く切開をし、ディスクを移植部位から丁寧に取り出した。付着組織を、ディスクから注意深く取り除いた。ディスクを取り出した後、ディスクから1枚のフィルターを切り離した。次いで、ディスクを10%ホルマリンで固定し、水平にしてパラフィンに包埋した。その後、ディスクの中心部を通り、ディスク表面に平行な面の5μm切片を作成した。
【0095】
結果の定量 ディスク切片を、半径方向成長の光学顕微鏡および組織形態計測のためにH&Eで染色し、血管結合組織成長の総面積の定量のためにトルイジンブルーで染色した。ビデオ顕微鏡およびコンピュータデジタル画像解析システム(NIH Image 1.59b9)を使用して、トルイジンブルー染色ディスクにおける血管結合組織成長の総面積を計算し、mm2で表した。以前の研究で説明されているように、血管結合組織成長の総面積は、血管がディスクに占める総面積に正比例している(コワルスキーら(1992)Exp Mol Pathol 56(1):1-19;ファジャルドら(1998)Lab Invest 58:718-7244)。従って、このような総面積の測定は血管新生の指標として用いられる(コワルスキーら(1992)、前記;ファジャルドら(1998)、前記)。
【0096】
血管連続性の評価 ディスク切片における微細血管を可視化し、全身脈管構造とディスク脈管構造との間に連続性があることを確かめるために、マウスを安楽死させる前に、ルコニルブルー(luconyl blue)色素を左頚動脈に注入した。4%抱水クロラールを使用して動物に麻酔をかけた(i.p.、0.1cc/10g体重)。頚部の腹側正中線に切開をした。頚動脈鞘を暴露した後、左頚動脈を神経血管束から切り離し、2本の4.0絹製縫合糸で固定した。頚動脈に切開をし、15cm長のPE10チューブ(Beckton Dickinson、Sparks MD)を頚動脈に導入し、大動脈弁のすぐ遠位側にある上行大動脈に進めた。次いで、約1.0mlのルコニルブルーを、1ml注射器からチューブを通して胸部大動脈にゆっくりと注入した。ディスクの血管結合組織網における青色色素の存在を光学顕微鏡で検出した。顕微鏡により、単層の内皮で裏打ちられた微細血管、およびその管腔内に含まれる赤血球が明らかになった。ルコニルブルー色素は、ディスクの血管全体にわたって観察された。
【0097】
末梢動脈疾患(PAD)のマウス虚血後肢モデル
4%抱水クロラールを使用してマウスに麻酔をかけた(腹腔内投与(i.p.)、0.1cc/10g体重)。両後肢の内側面の毛を剃り、次いで、ベタジン溶液で拭いた。膝から鼠径靭帯までの、1.5cmの縦方向の切開を行った。この切開により、浅大腿動脈をその長さに沿って解剖した。外腸骨動脈および浅大腿動脈の遠位端を7.0(Ethicon)で結紮した後、大腿動脈を完全に切開した。もう1組のマウスに擬似手術を行った。次いで、切開を、5.0絹製縫合糸(Ethicon)の不連続縫合で閉じた。外科治療後に、アンピシリン(1mg/10gm体重)腹腔内注射を施した。
【0098】
組織学的研究
組織調製 手術の3週間後、マウスを過量の4%抱水クロラール(i.p)および頚部脱臼で安楽死させ、内転筋および半膜様筋を毛細血管密度の評価のために収集した。簡単に述べると、腿内側において縦方向の切開を行って、後肢筋肉全体を暴露した。内転筋および半膜様筋を取り出し、OCTにおいて直ぐに凍結させた。その後に、5μm切片を、各筋肉の中央部分から横方向に採取した。切片を風乾させ、アセトンで固定した。
【0099】
毛細血管密度測定 内皮細胞を同定するためにアルカリホスファターゼアッセイ法を使用して、免疫化学を行った。エオシン対比染色を使用して筋細胞を識別した。毛細血管および筋細胞を同定し、光学顕微鏡(20×)を使用して計数した。それぞれの切片について、4つの異なる視野を選択し、視野1つあたりの毛細血管および筋細胞の総数を決定した。これらの値を平均して、各実験肢の毛細血管密度を決定した。毛細血管密度の値が筋肉萎縮により過大評価されなかった、または間質性浮腫により過小評価されたことを確かめるために、毛細血管密度を、同じ視野に存在する毛細血管と筋細胞との比として表した。
【0100】
データ解析
全てのデータを平均+/−SEMで表した。群間での比較のために、統計的有意性を対のない両側t検定を用いて試験した。p<0.05で統計的有意性が認められた。
【0101】
実施例1:インビボでの血管新生に及ぼすニコチンの全身効果
全身処理マウスにおけるニコチン効果を研究するために、ニコチン(60mcg/ml、n=5)を飲み水で希釈した。インドメタシン(20mcg/ml、Sigma、n=5)および/またはLNNA(6mg/ml Sigma、n=5)を、局所処理された(DAS内にニコチンを含む)DAS移植マウスおよび全身処理された(ニコチンを飲み水で希釈した)DAS移植マウスに経口的に補充投与することにより、ニコチンにより誘導される血管新生の機構を調べた。ニコチン、インドメタシン、およびLNNAの濃度を、マウスモデルにおいてこれらの薬剤の経口補充を使用した研究に従って決定した(マクスウェル(Maxwell)ら(1998)Circulation 1998 98(4):369-374;ファルトン(Fulton)ら(1980)Int J Cancer 26(5):669-73;Rowellら(1983)J Pharmacological Methods 9:249-261)。
【0102】
基本条件下(未処理水、溶媒処理ディスク)で、ディスクへの血管結合組織成長が起こった。血管がディスク内に成長しているのが見られた。色素の全身投与後に、ルコニル色素がディスク脈管構造に流入することにより明らかにされたように、これらの血管は全身循環とつながっている。基本条件下でのディスクへの血管結合組織成長の面積は、10mm2よりいくらか大きい(図2)。ニコチン全身投与では、血管結合組織成長は35mm2の面積で劇的に増大した(図2)。ニコチンの効果は、NO合成酵素阻害剤L-ニトロ−アルギニン(LNNA)ならびにインドメタシンによりブロックされた。このことから、酸化窒素およびプロスタサイクリンの合成がニコチンの血管新生効果に必要であったことが分かる。
【0103】
実施例2:インビボでの血管新生に及ぼすニコチンの局所効果
L-アルギニンの局所投与が動物における血管新生誘導に有効であり得るかどうかを確かめるために、ニコチンをペレットに入れ、このペレットをディスク血管新生システム(前記)に挿入した。ニコチンを(実施例1に記載のように動物の飲み水に溶かして投与するのではなく)ディスクに入れた場合、同様の効果が観察された。基本条件下での血管結合組織成長(約10mm2)が約20mm2に増大した(図3)。また、インドメタシンまたはLNNAによりニコチンの効果がブロックされた。これらの研究から、ニコチンの全身投与または局所投与が血管新生を誘導することが分かる。
【0104】
実施例3:ニコチンの効果と他の血管新生薬剤との比較
ニコチンの効果を、血管新生薬剤であるbFGFおよびDel1と比較した。bFGFとの比較は特に重要である。なぜなら、この薬剤は、治療的血管新生についてヒトにおいて既に臨床試験が行われているからである。溶媒、bFGF、Del1、およびニコチンとの比較において、それぞれが同程度まで血管新生を増大させた。全身投与されたニコチンは、局所投与されたbFGFおよびDel-1よりかなり大きな程度まで血管新生を増大させた(図4)。逆説的に、ニコチン全身投与の効果は局所ニコチン投与より大きかったが、ニコチン全身投与ではディスク中での局所濃度が明らかに低かった。この逆説により、研究者らは、ニコチン全身投与が脈管形成(骨髄からの内皮前駆細胞のリクルートメント)ならびに局所血管新生を誘導したと考えるに至った(以下の実施例5を参照のこと)。筋肉内投与された中間量のニコチンの効果が最も高かった。中間量より多い筋肉内用量のニコチンでは、中間量を超える血管新生は観察されない。
【0105】
実施例4:末梢動脈疾患のマウス後肢虚血モデルにおける血管新生の誘導
ニコチンの治療的血管新生効果の、さらに説得力のある証拠を示すために、ニコチンの血管新生効果を、動脈閉塞疾患モデルであるマウス虚血後肢(前記)において調べた。ニコチン溶液または溶媒の毎日の筋肉内注射(50μl)を3週間施した。5群の動物に、毎日筋肉内注射することにより、0、3、30、300、または3200ng/kgのニコチン(図6および図7に、1×(50μl食塩水中に0.0811ngのニコチン(=0.003pg/kg))、10×(50μl食塩水中に0.811ngのニコチン(=0.03μg/kg)、100×(50μl食塩水中に8.11ngのニコチン(=0.3μg/kg)、ならびに1000×(50μl食塩水中に81.1ngのニコチン(=3.2μg/kg)と示す)を与えた。図5に示すように、手術の3週間後、毛細血管密度(毛細血管/筋細胞)は、虚血に対する基礎血管新生反応と一致して、手術をしていない肢(非虚血)と比較して手術した肢(虚血)において増大した。
【0106】
図6および図7に示すように、ニコチンは、対照と比較して虚血に対する血管新生反応を増大させた。溶媒対照では、0.35毛細血管/筋細胞が虚血肢において検出された。中間量の0.03μg/kgでは、ニコチンは、血管新生反応をほぼ2倍にした(0.67の毛細血管/筋細胞)。最高量のニコチンでは血管新生は増大しなかった。実際に、この用量では、いくらかの毒性が観察され、間質性浮腫および筋細胞壊死の証拠があった。血管新生効果が非虚血後肢において検出されなかったことから、血管新生効果は依然としてニコチン注射部位の近くで見られた(図6)。従って、これらの用量のニコチンの局所筋肉内投与は全身血管新生効果をもたらさなかった。
【0107】
これらの研究により、ニコチンは、ヒト末梢動脈疾患のマウスモデルにおいて血管新生を増大させ、ニコチン受容体アゴニストは治療的血管新生に有用であることが示された。
【0108】
実施例5:ニコチンは、内皮前駆細胞のリクルートメントにより血管新生を誘導する
血管新生誘導におけるニコチンの役割をさらに調べるために、内皮前駆細胞のリクルートメントを研究した。交差循環が2つの個体間で確立されているマウス並体結合モデル(エイクワルド(Eichwald)ら(1963)J Natl Cancer Inst 30:783-94;ワイズマン(Weissman)ら(1984)Transplantation 37:3-6))は、内皮になる能力を有する循環細胞の血管新生部位への遊走をインビボで追跡するのに理想的なアッセイ法である。安定な遺伝マーカー(例えば、性染色体)により、またはレポータートランスジーン(例えば、LacZ)の存在により、一方のパートナーに由来する細胞を他方のパートナーに由来する細胞と区別することができる(図8)。この目的は、特定の細胞型を予め選択することを必要とするモデルに固有のバイアスを排除すること、および推定前駆細胞と実験宿主との免疫学的障壁または生理学的障壁を克服するために必要とされる操作(例えば、全身放射線照射)を避けることである。近交系実験マウスを使用すると、細胞系列追跡実験を実施するためのコンジェニックマーカーおよびトランスジェニックマーカーの用途がかなり広がる。並体結合マウスモデルは、内皮前駆細胞の生物学および遺伝プログラムを研究し、血管周囲支持構造の発生における循環前駆細胞の役割を確かめるのに優れたモデルである。
【0109】
並体結合マウス対を作成して、正常条件および血管新生の後肢虚血モデルを使用した虚血条件(前記)での前駆細胞の可動化および前駆細胞の血管新生への参加、ならびにニコチンの効果を調べた。並体結合対は、全ての主要組織適合抗原を共有するように選択され、従って、細胞遊走および血管新生に対する免疫学的障壁がなかった。対のうち一方の動物に独特の遺伝マーカー(例えば、対が雌マウスと雄マウスからなる場合、Y染色体)をアッセイすることにより、マウス間で細胞を確実に追跡することができる。このモデルは、個体を区別する第2の遺伝マーカー(例えば、一方のパートナーに存在するが、他方には存在しないトランスジーン)を使用し、1種類の細胞の起源を同定する感度および精度を高めることにより最適化される。
【0110】
各マウスの前肢関節と後肢関節の間に連続的な片側皮膚切開をすることにより、LacZトランスジーンを構成的に発現する10週齢の雄マウス(マウスA:C57/B16 ROSA 26マウス(Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)、または内皮特異的βガラクトシダーゼを発現するtie-2-LacZ(「Sato」)トランスジェニックマウス(シュラガー(Schlager)ら(1995)Development 121(4):1089-98;シュラガーら(1997)Proc Natl Acad Sci USA 94(7):3058-63))を、齢および系統が適合している雌マウス(マウスB:C57/B6(LacZ-)マウス(ROSA26マウスにつなぎ合わされる)またはC57B16マウス(tie-2-LacZマウスにつなぎ合わされる))に手術でつなぎ合わせた。次いで、マウスAとマウスBとの肢関節および付着皮下組織を有する皮膚の吻合をナイロン縫合糸で行い、マウスを回復させた。このモデルを使用した以前の研究から、交差循環が2週間以内で確実に確立されることが分かっている(エイクワルド(Eichwald)ら(1963)J Natl Cancer Inst 30:783-94;ワイズマン(Weissman)ら(1984)Transplantation 37:3-6)。これらの動物の交差循環は、エバンスブルー色素が静脈内注射後にマウスAからマウスBに流れることを追跡することにより確認された。さらに、細胞および血漿が自由に交換していることを保証するために、FACSゲル染色(フィエリング(Fiering)ら(1991)Cytometry 12:291-301)またはY染色体FISHにより、末梢血白血球(pbls)が各パートナーに由来するものであるかを試験した。ワイズマンらは、同系雄と同系雌との並体結合が検出可能な抗H-Y免疫反応を引き起こさないことを以前に示している(ワイズマンら(1984)Transplantation 37:3-6)。
【0111】
LacZ-雌を後肢虚血に暴露したが、LacZ+雄を暴露しなかった。ニコチンを飲み水に添加することにより(0.1g/L飲み水)、試験マウスをニコチンで全身処理した。対照マウスには、飲み水にニコチンを添加して与えなかった。5対の並体結合マウスを、試験群および対照群のそれぞれに含めた。
【0112】
虚血誘導後3週間で虚血後肢および非虚血後肢を雌マウスから取り出し、雄パートナーに由来する細胞の存在について調べた。後肢における細胞の表現型を、共焦点顕微鏡による組織学的方法を使用して評価した。CD31およびβガラクトシダーゼの二重染色により、トランスジェニックマウスに由来するEPCが同定された。EPCの頻度は、各切片で調べられたトランスジェニック内皮細胞を含む血管の数を血管の総数で割った数として定義した。
【0113】
結果
Sato/tie-2/LacZトランスジェニック雄とつなぎ合わされた対照およびニコチン処理雌パートナーの四肢に由来する虚血後肢を調べることにより、Satoマウスに由来するEPCは雌マウスの血管新生領域を横断し、新しい血管に入り込んでいることが分かった。これらのEPCは、CD31(内皮マーカー)およびβガラクトシダーゼ(Satoマウスでは内皮細胞特異的tie-2プロモーター制御下にある)について二重染色されたので容易に同定された。
【0114】
結果を図9に図示する。後肢虚血に反応した血管新生間に内皮前駆細胞(EPC)が入り込んだ血管の割合は、食塩水群において少なかった(1.6%)。しかしながら、ニコチンで天然血管新生反応を刺激すると、血管数およびEPCが入り込んだ血管の割合(7.3%;P<0.001)が著しく増加した。
【0115】
本発明を特定の実施態様に関して説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であり、等価物で代用できることが当業者に理解されるはずである。さらに、特定の状況、材料、組成物、過程、過程の1つまたは複数の段階を本発明の目的、精神、および範囲に適合するように、多くの改良を加えることができる。このような全ての改良は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】ニコチン受容体アゴニストであるニコチン、エピバチジン、およびABT-154、ならびにニコチン受容体アンタゴニストであるヘキサメトニウムおよびメカミラミンの化学構造を提供する。
【図2】動物モデルにおける線維血管増殖に及ぼすニコチン経口投与の影響を示すグラフである。
【図3】ディスク血管新生システムを用いる動物モデルにおける線維血管増殖に及ぼすニコチン局所投与の影響を示すグラフである。
【図4】局所または全身投与されたニコチンによる血管新生因子Del-1およびbFGFの相対的血管新生強度の比較を示すグラフである。
【図5】後肢虚血モデルにおける非虚血(対照;「非虚血」)、虚血肢における相対的毛細血管密度を示すグラフである。
【図6】虚血動物モデルにおける毛細血管密度に及ぼすニコチン筋肉内投与の影響を示すグラフである。
【図7】図6の動物の無処置非虚血肢における毛細血管密度に及ぼすニコチン筋肉内投与の影響を示すグラフである。
【図8】前駆細胞のような循環中の細胞の移動を追跡するアッセイ法において用いられるマウス並体結合の実験モデルを示す略図である。
【図9】食塩水対照動物とニコチン処置動物の内皮前駆細胞を組み入れた新しい血管の毛細血管密度(毛細血管/筋細胞)および百分率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の骨髄から哺乳類の治療部位への幹細胞または前駆細胞の可動化を刺激するために有効な量のニコチン受容体アゴニストを含む、骨髄由来前駆細胞のリクルートメントによる治療に対して感受性がある病態の治療のための組成物。
【請求項2】
哺乳類の骨髄から哺乳類の治療部位への幹細胞または前駆細胞の可動化を刺激するために有効な量のニコチン受容体アゴニストを含む、免疫不全症、血友病、自己免疫疾患、または免疫細胞損傷を治療するための組成物。
【請求項3】
免疫不全症が、好中球減少症、白血球減少症、または後天性免疫不全症である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
免疫細胞損傷が、放射線損傷、化学療法、またはウイルス感染に起因する、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ニコチン受容体アゴニストがS-3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項6】
ニコチン受容体アゴニストがS-3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジン、ニコチン誘導体、ニコチン代謝物、ニコチン代謝物の誘導体、またはニコチン類似体である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項7】
ニコチン受容体アゴニストが、コチニン、ノルコチニン、ノルニコチン、ニコチン-N-オキシド、コチニンN-オキシド、3-ヒドロキシコチニン、および5-ヒドロキシコチニンからなる群より選択される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項8】
ニコチン受容体アゴニストが局所部位で投与されるよう製剤化される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項9】
ニコチン受容体アゴニストが筋肉内投与として製剤化される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項10】
ニコチン受容体アゴニストが血管内投与として製剤化される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項11】
治療部位が哺乳類の血流である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項12】
治療部位が創傷または潰瘍である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項13】
幹細胞が造血細胞系列または間葉細胞系列である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項14】
アゴニストが循環中の幹細胞の治療部位への取り込みを刺激するために有効である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項15】
アゴニストが治療部位での創傷治癒を促進するために有効である、請求項1または2記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−291040(P2008−291040A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181465(P2008−181465)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【分割の表示】特願2001−513413(P2001−513413)の分割
【原出願日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願人】(501243030)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー (17)
【Fターム(参考)】