説明

幾何形状構成ユニット

本発明は、車両のボディ(5)を受けるためのフレーム(2)と、車両の対称面に対して対称にフレーム(2)に固定されるようになっている2対の形状構成装置((12、14)、(13、15))とを備え、各形状構成装置(12、14、13、15)が、ボディの、前記形状構成装置(12、13、14、15)がそれに対面して固定される部分(7、8、9、10)を保持するための保持手段(16)を備え、各対の形状構成装置((12、14)、(13、15))が、ボディ(5)の前部を保持するフロント形状構成装置(12、13)と、ボディ(5)の後部を保持するリア形状構成装置(14、15)とを備える、車両の幾何形状構成ユニット(1)を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の幾何形状構成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディは通常、ボディアンダーストラクチャ、2つのボディシェルサイド、リアパネル、ラゲージカバリングシェルおよびクロスメンバーを備える。自動車生産ラインにおいては、プレアセンブリステーションにおいて締結具によりこれらの要素全体があらかじめ組み付けられる。このようにしてあらかじめ組み付けられたボディは次に溶接ステーションを通過するが、そこではボディを幾何的に形成するために、溶接時に幾何形状構成ユニットが種々の要素を保持する。
【0003】
文献EP−B−1084055(特許文献1)は、予備組み立てされたボディを搬送する台車が上に位置決めされるフレームと、複数の形状構成装置とを備える、幾何形状構成ユニットの例を開示している。形状構成装置の全体は、リアパネルを支承するリア形状構成装置と、それぞれがボディの1つのサイドを支承する2つのサイド形状構成装置と、ルーフパネルおよびクロスメンバーを支承するトップ形状構成装置とを備える。各形状構成装置は、ロボット用の把握・ハンドリング手段と、ボディの当該部分をそこに固定するためのファスナとを備える。各形状構成装置は、ロボットによりフレーム上に移動されそこで固定される。種々の形状構成装置が位置決めされると、その全体が、溶接すべきボディが内部にあるコックを形成する。そのようなユニットはスペースに余裕がないので、コック内部への溶接ロボットの接近が容易にならない。
【特許文献1】EP−B−1084055
【発明の概要】
【0004】
本発明は、実施がより容易な幾何形状構成ユニットを提供することにより、上述の欠点を解消することを目的とする。
【0005】
この目的で、本発明は、
− 車両のボディを受けるためのフレームと、
− 車両の対称面に対して対称にフレームに固定されるようになっている2対の形状構成装置であって、各形状構成装置が、ボディの、前記形状構成装置がそれに対面して固定される部分を保持するための保持手段を備え、各対の形状構成装置が、ボディの前部を保持するフロント形状構成装置と、ボディの後部を保持するリア形状構成装置とを備える形状構成装置と
を備える車両の幾何形状構成ユニットに関する。
【0006】
有利には、各形状構成装置は、フレームから垂直に延びる第1部分と、第1部分からボディの上方を水平にかつ対称面の方向に延びる第2部分とを備える。
【0007】
好ましくは、幾何形状構成ユニットは、フロント形状構成装置の第2部分同士をロックするようになっているロック手段、リア形状構成装置の第2部分同士をロックするようになっているロック手段、および/またはフレーム上の形状構成装置をロックするようになっているロック手段を備える。
【0008】
有利には、リア形状構成装置はボディの後部へのアクセスが自由になるように構成される。
【0009】
好ましい一実施形態によれば、各形状構成装置は、マテリアルハンドリングロボットによるこの形状構成装置の把握を容易にすることができるオートマチックツールチェンジャを備える。
【0010】
本発明の実施形態を図示する単なる例として示した添付の図面を参照して行う以下の説明において、本発明はよりよく理解され、本発明のその他の目的、特徴、詳細および長所がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による幾何形状構成ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による幾何形状構成ユニット1を図1に示す。
【0013】
車両の組み立てライン上で、車のボディ5は、そのボディを構成する種々の要素があらかじめ位置決めされ締結により保持される、予備組み立てステップを経る。
【0014】
ボディは、それをステーションから次のステーションに移動させるリュージュと呼ばれる運搬台上に位置決めされる。ボディがステーション上に到着した際、ボディを位置決めするにあたり2つの可能性が存在する。
− 1つは、クランプおよびパイロットを介してリュージュを位置決めするというものである。その場合、このリュージュの製造公差のために各車両が異なるリュージュ上に位置決めされるので、多重幾何形状と言う。
− もう1つは、昇降テーブルを介してリュージュの固定を解除することによりボディをパイロットおよびクランプ上に置くというものである。各ボディはステーションで単一幾何形状上に位置決めされるので、単一幾何形状と言う。
【0015】
本発明のこの例においては、車両のボディを受け入れるようになっているフレームは単一幾何形状を備える。
【0016】
図1に示すボディ5は、ボディアンダーストラクチャ11、2つのボディシェルサイド7および9、リアパネル8、ラゲージカバリングシェルおよびクロスメンバー10を備える。
【0017】
次いで、ボディ5は、ローラテーブルの形をとることができるマテリアルハンドリング手段3によって移動される台車4、TMT(チューブ方式モジュラーブルトランスファー)、自動またはその他の台車を介して、少なくとも1つの溶接ロボット6を備える溶接ステーションに移動する。
【0018】
幾何形状構成ユニット1は、溶接ステーションに位置し、フレーム2を備え、このフレーム2は、幾何的基準として働き、フレーム2上に正確に停止する台車4を介してボディ5を受ける。
【0019】
溶接ロボット6が作動を開始し、ボディ5を構成する種々の要素を溶接する前に、これらの要素はユニット1の形状構成装置12、13、14および15をフレーム2上で位置決めする。
【0020】
形状構成装置12、13、14および15は4つあり、2対の形状構成装置(12、14)および(13、15)に分けられている。
【0021】
各対の形状構成装置(12、14)、(13、15)は、車両の前後方向対称面の片側に配置される。
【0022】
したがって、2対の形状構成装置(12、14)および(13、15)は、フレーム2上で車両の対称面に対して対称に固定されるようになっている。
【0023】
形状構成装置がロックされているときには、形状構成装置によって剛性が高くフレーム2を幾何的基準とするコックが形成され、溶接中、ボディ5はコックの内部に保持される。
【0024】
ここでは、各形状構成装置は、チューブが相互に組み付けられた後に形成されるコックの軽量化をはかるチューブの骨組部で構成される。
【0025】
各形状構成装置12、13、14,15は、それが固定されるボディ5の単数/複数の部分を保持するために、たとえばクリップ型の保持手段を備え、これらの保持手段はボディ5の対応する単数/複数の部分に固定されるようになる。
【0026】
形状構成装置の各対(12、14)、(13、15)は、ボディ5の前部を保持するようになっているフロント形状構成装置12、13と、ボディ5の後部を保持するようになっているリア形状構成装置14、15とを備える。
【0027】
そのようなユニット1は実施がより容易であり、4つの形状構成装置に分割されているため、スペースをあけることができ、したがってコックの内部に溶接ヘッド6をより容易に挿入することができる。
【0028】
マテリアルハンドリングロボットによる各形状構成装置12、13、14、15の設置を容易にするために、各形状構成装置12、13、14、15上に自動ツールチェンジャが配置される。
【0029】
そうすると、各マテリアルハンドリングロボットは、自動ツールチェンジャにより形状構成装置を把握し位置決めすることもできる。形状構成装置(12、14)、(13、15)の各対ごとに、フロント形状構成装置12、13とリア形状構成装置14、15の間にあいたスペースが確保される。
【0030】
各フロント形状構成装置12、13は、ほぼフロントドアの開口部の長さを延びる。5ドア車の場合、各リア形状構成装置14、15は、ほぼリアドアの開口部の中央からボディ5の後部まで延びる。
【0031】
2つのフロント形状構成装置12および13と2つのリア形状構成装置14および15とに分かれているため、同一車種についてツーリングへの投資を減らすことができる。
【0032】
実際、フロント形状構成装置12および13はモデルラインナップ全体に共通である。リア形状構成装置14および15のみが、組み立てる車種のタイプ(5ドア、3ドア、ステーションワゴン)に応じて異なる。
【0033】
ユニット1の特別な構造により、ボディ5を構成する全ての要素をただ1つの形状構成ステーション内で組み付けることができる。
【0034】
各形状構成装置12、13、14、15は、たとえばクランプなどの固定手段18を介してフレーム2上に固定される。
【0035】
コックの作製を可能にする要素一式、ならびに、ブランク押し付けパイロットホルダ型締め付けアクチュエータなど、ボディサイド面の幾何形状を実現するアクチュエータ、クリップ、回転クランプ、多機能パイロット、保持手段、およびマテリアルハンドリング手段が形状構成装置12、13、14および15に搭載される。
【0036】
このように溶接後に形状構成ユニットを取り外すことによりフレーム2上にはいかなる要素も残らない。
【0037】
するとフレーム2の周囲のスペースが完全にあくのでフレキシビリティが向上する。
【0038】
ボディ5、特にルーフパネルおよびクロスメンバー10、をより良好にカバーするために、各形状構成装置12、13、14、15は、フレーム2から垂直に延びる第1部分と、第1部分からボディ5の上方を水平にかつ対称面の方向に延びる第2部分とを備える。
【0039】
コックの剛性をさらに高めるために、幾何形状構成ユニット1は、フロント形状構成装置12および13の第2部分同士をロックするようになっているロック手段19と、リア形状構成装置14および15の第2部分同士をロックするようになっているロック手段19とを備える。ロック手段19はクランプの形状をとることができる。きわめて適切なクランプ方法はZPSタイプ(AMF社の登録商標であるZero Point System)のものである。
【0040】
ボディ5の後部、特にリアパネル8およびラゲッジカバリングシェルへの接近を容易にするために、リア形状構成装置14および15は、ボディ5の後部への接近が自由にできるように設計されている。
【0041】
特定の一実施形態によれば、リア形状構成装置14、15の第1部分は、対称面に平行な面内をもっぱらボディサイド面7および9に沿って延び、リア形状構成装置14、15の第2部分はボディ5の後部からボディ5の前部に向かって斜め方向に向いており、その結果、上から見ると、開口部がボディ5の後部に向いたほぼV字形を形成する。
【0042】
本発明は上で説明した実施形態の例に限定されるものではなく、種々の改変を加えることができ、たとえば以下のような種々の長所を有する。
− 小型、軽量、安価、かつ専用ロボットによって設置されるように適合された車両形状構成ユニットが実現される。
− 同一のモデルラインナップ内の種々の車両に対し、同一のフロント形状構成ユニットが使用されている。
− 全アクチュエータが固定されるため、形状構成ユニット上で幾何形状が実現される。
− 形状構成ユニットが設置されたとき、車両後部への溶接のための接近性が向上するとともに、形状構成ユニットが取り外されたときでもこれらの形状構成ユニットがアクチュエータを有しているため車両への接近性が向上する。
− 同一のステーション上で、ボディの種々の部品(フロント、センタ、リアのクロスメンバー、パネル、ラゲージカバリングシェル)を組み付けることが可能。
− 形状構成ユニットを組み立てることにより剛性の高いコックが形成されるので、本発明のクランプによる溶接時に、ボディの幾何形状の分散が小さくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 車両のボディ(5)を受けるためのフレーム(2)と、
− 車両の対称面に対して対称にフレーム(2)に固定されるようになっている2対の形状構成装置((12、14)、(13、15))であって、各形状構成装置(12、14、13、15)が、ボディの、前記形状構成装置(12、13、14、15)がそれに対面して固定される部分(7、8、9、10)を保持するための保持手段(16、17)を備え、各対の形状構成装置((12、14)、(13、15))が、ボディ(5)の前部を保持するフロント形状構成装置(12、13)と、ボディ(5)の後部を保持するリア形状構成装置(14、15)とを備え、前記形状構成装置((12、14)、(13、15))が、内部にボディ(5)が保持される剛性のコックを形成する形状構成装置と
を備える車両の幾何形状構成ユニット(1)。
【請求項2】
各形状構成装置(12、13、14、15)が、フレーム(2)から垂直に延びる第1部分と、第1部分からボディ(5)の上方を水平にかつ対称面の方向に延びる第2部分とを備えることを特徴とする請求項1に記載の幾何形状構成ユニット(1)。
【請求項3】
フロント形状構成装置(12、13)の第2部分同士をロックするようになっているロック手段(19)、リア形状構成装置(14、15)の第2部分同士をロックするようになっているロック手段(19)、および/またはフレーム上の形状構成装置をロックするようになっているロック手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の幾何形状構成ユニット(1)。
【請求項4】
リア形状構成装置(14、15)がボディ(5)の後部へのアクセスを自由にするように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の幾何形状構成ユニット。
【請求項5】
各形状構成装置(12、14、13、15)が、マテリアルハンドリングロボットによるこの形状構成装置(12、14、13、15)の把握を容易にすることができるオートマチックツールチェンジャを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の幾何形状構成ユニット。

【図1】
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【公表番号】特表2010−523388(P2010−523388A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501557(P2010−501557)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050360
【国際公開番号】WO2008/122740
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(507274799)プジョー シトロエン オートモビル エス アー (72)
【Fターム(参考)】