説明

広帯域光タンデム式OLEDディスプレイ

互いに離れた少なくとも2つの電極を備える、広帯域光を発生させるためのタンデム式OLEDディスプレイは、電極間に配置された2つ以上の広帯域発光ユニットと、隣り合った発光ユニットの間に配置された中間接続層とを備えていて、広帯域発光ユニットのうちの少なくとも2つは、発光スペクトルの異なる光を発生させ、そのような広帯域発光ユニットのうちの少なくとも1つは白色光を発生させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域光を発生させるOLEDディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード・デバイス(OLEDとも呼ばれる)は、一般に、アノードと、カソードと、アノードとカソードに挟まれた有機発光(EL)ユニットを備えている。有機ELユニットは、少なくとも、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送層(ETL)を備えている。OLEDが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視野角が広く、フル・カラー・ディスプレイなどの用途で利用できるからである。Tangらは、この多層OLEDをアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
【0003】
OLEDは、LELの発光特性に応じていろいろな色の光(例えば赤、緑、青、白)を発生させることができる。最近、さまざまな用途(例えば固体発光源、カラー・ディスプレイ、フル・カラー・ディスプレイ)に広帯域OLEDを組み込むことがますます要求されている。広帯域発光とは、OLEDが可視スペクトル全体を通じて十分に広い範囲の光を発生させることを意味する。そのためそのような光をフィルタまたは色変更モジュールと組み合わせて利用すると、少なくとも2つの異なった色を持つディスプレイ、またはフル・カラー・ディスプレイが製造される。特に、スペクトルの赤、緑、青の部分に大きな発光がある広帯域光OLED(または広帯域OLED)が必要とされている。その場合には、広帯域発光EL層をフィルタまたは色変更モジュールと組み合わせて利用するとマルチカラー・デバイスが形成される。
【0004】
白色OLEDデバイスは広帯域OLEDデバイスの1つのタイプであり、その発光は、一般に、1931国際照明委員会(CIE)色度座標(CIEx, CIEy)が約(0.31, 0.33)である。白色OLEDは従来から報告されており、例えば、Kido他、Applied Physics Leters、第64巻、815ページ、1994年、J. Shi他、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、Sato他、日本国特開07-142169、Deshpande他、Applied Physics Leters、第75巻、888ページ、1999年、Tokito他、Applied Physics Leters、第83巻、2459ページ、2003年に報告がある。
【0005】
OLEDからの広帯域発光を実現するには、2種類以上の分子を励起させる必要がある。なぜならそれぞれのタイプの分子は、通常の条件下では比較的狭いスペクトルの光しか発生させないからである。1種類のホスト材料と1種類以上の発光ドーパントを含むLELは、ホストとドーパントの両方からの発光を実現できるため、ホスト材料からドーパントへのエネルギー輸送が不十分であれば可視スペクトルの広帯域発光となる。しかしLELが1つだけの広帯域OLEDは、可視スペクトル全体をカバーするのに十分な広い範囲の発光も、大きな輝度効率も持たないであろう。2つのLELを有する広帯域OLEDは、LELが1つのデバイスよりも色と輝度効率が優れたものになる。しかし3色以上でバランスの取れた広い範囲の発光を実現することは難しい。なぜなら2つのLELを有する広帯域OLEDは、一般に、強い発光ピークを2つしか持っていないからである。例えば2つのLELを有する一般に使用されている広帯域OLEDでは、LELの色が黄色と緑青色だと、このデバイスでは赤色、緑色、青色いずれかの発光が弱いであろう。2つのLELの色が赤色と緑青色だと、このデバイスでは緑色、黄色、青色いずれかの発光が弱いであろう。LELの色が緑色と赤色だと、このデバイスでは青色、青緑色、黄色いずれかの発光が弱いであろう。異なる3色のLELを有する広帯域OLEDも提案されたが、そのデバイスから広帯域発光を実現することはやはり難しい。その理由として、最も強い光は、一般に、ドーパントが最も狭い光学的バンド・ギャップを持つドーパントを含むLELから発生することと、デバイスの条件が異なると発光スペクトルがシフトすることが挙げられる。
【0006】
広帯域OLEDを画素として用いるフル・カラー・ディスプレイでは、人間の目が赤色、緑色、青色と認識する色は、それぞれ、画素の上に赤色、緑色、青色いずれかのフィルタを取り付けた画素から来る。ディスプレイのそれぞれの広帯域OLED画素が、原色である赤色、緑色、青色の成分をバランスよく含む光を出すのであれば、カラー・フィルタを通過する光の強度は、広帯域発光の強度の約1/3である。しかし広帯域OLED画素が赤色、緑色、青色の成分をバランスよく含む光を出さないのであれば、その原色成分の1つは、カラー・フィルタを通過した後は、広帯域発光の強度の1/3よりも小さくなるであろう。その結果、その特定の原色の発光強度を同程度にするため、対応する広帯域OLED画素をより大きな電流密度で駆動する必要がある。すると電力消費がより多くなるため、寿命がより短くなる。したがって従来の広帯域OLEDでは、赤色、緑色、青色の光をバランスよく発生させるのに色補償が必要になる。
【0007】
同様の問題が、広帯域OLEDを画素として用い、赤色と緑色の色変更モジュールを備えていて、赤色、緑色、青色のカラー・フィルタを備えるか、備えていないフル・カラー・ディスプレイで発生する。ディスプレイに含まれる広帯域OLED画素が、色変更モジュールまたはカラー・フィルタを使用した後にバランスの取れた赤、緑、青の原色成分になるのであれば、それぞれのカラー画素の光強度は、全光強度の約1/3である。しかし広帯域OLED画素が、色変更モジュールまたはカラー・フィルタを使用した後にバランスの取れた赤、緑、青の光を出さないのであれば、特定の原色の発光強度を同程度にするため、対応する広帯域OLED画素をより大きな電流密度で駆動する必要がある。すると電力消費が増大し、寿命が短くなる。したがってバランスの取れた赤、緑、青の発光を実現するには、色変更モジュールを備えていてカラー・フィルタを備えるか備えていない従来の広帯域OLEDで色補償をやはり行なう必要がある。
【0008】
Forrestらがアメリカ合衆国特許第5,703,436号に開示しているように、OLEDのフル・カラー発光を改善するため積層式OLEDが製造されている。この積層式OLEDは、個別にアドレスできてそれぞれが異なる色の光を出すOLEDユニットを鉛直方向に積層させることによって製造される。この積層式OLEDでは、OLEDデバイス内の個々のOLEDユニットからの発光を独立に制御するため、内部電極が、鉛直方向に積層されたそれぞれのOLEDユニットの間に設けられる。その結果、フル・カラーの発光と、バランスの取れた白色発光が、容易に実現される。こうすることによって従来のフル・カラーOLEDと比べて色の発光を改善し、より大きな発光面積にすることができるが、OLEDの全体的な構造が複雑であるため、透明な電極と、電力を供給するための追加のバス線と、積層されたそれぞれのOLEDユニットのための独立した電源が必要になる。
【0009】
最近、ELの改善に使用される新しいタイプの積層式OLED(またはタンデム式OLED、またはカスケード式OLED)構造が、Jonesら(アメリカ合衆国特許第6,337,492号)、Tanakaら(アメリカ合衆国特許第6,107,734号)、Kidoら(日本国特開2003/045676A、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0189401 A1)、Liaoら(アメリカ合衆国特許第6,717,358号とアメリカ合衆国特許出願公開2003/0170491 A1)によって製造されている(これらの開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。この積層式OLEDは、個別のOLEDを鉛直方向にいくつか積層させることによって製造され、1つの電源だけで駆動される。MatsumotoとKidoらは、SID 03 Digest、979ページ、2003年において、デバイスの中で緑青ELユニットとオレンジ色ELユニットを接続することによってタンデム式白色OLEDを構成し、そのデバイスを単一の電源で駆動することによって白色発光を実現できることを報告した。このタンデム式白色OLEDデバイスでは輝度効率は大きくなるが、スペクトルの緑色と赤色の成分が弱い。Liaoらは、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0170491 A1において、デバイスの中で赤色ELユニットと緑色ELユニットと青色ELユニットを直列に接続することによって構成したタンデム式白色OLEDを記載している。このタンデム式白色OLEDを単一の電源で駆動すると、赤色ELユニットと緑色ELユニットと青色ELユニットからのスペクトルの組み合わせによって白色発光が形成される。着色光の発光と輝度効率は改善されるが、3種類よりも少ないELユニットを用いてこのタンデム式白色OLEDを作ることはできない。これは、従来のOLEDと比べて少なくとも3倍大きな駆動電圧が必要であることを意味する。デバイスの中で赤色ELユニットと緑色ELユニットと青色ELユニットを直列に接続することによって構成した白色OLEDの別の問題は、個々のELユニットが異なる速度で劣化するため動作時間が長くなるとこの白色OLEDの色がシフトすることである。狭い帯域のOLEDデバイス、特に青色デバイスと緑色デバイスは、一般に、広帯域OLEDデバイスよりも動作安定性が悪い。したがって積層式広帯域OLEDデバイスの安定性を向上させる必要がある。
【0010】
マルチカラー・デバイスを形成するのに広帯域発光エレクトロルミネッセンス(EL)層が使用される。各画素は、カラー・フィルタ・アレイ(CFA)の一部としてのカラー・フィルタ素子、または色変更モジュール・アレイの一部としての色変更モジュール素子と組み合わされ、画素化されたマルチカラー・ディスプレイが実現される。有機EL層はすべての画素に共通であり、見る人が認識する最終的な色は、その画素の対応するカラー・フィルタまたは色変更モジュール素子によって決まる。したがってマルチカラー・デバイスまたはRGBデバイスを作るのに有機EL層をパターニングする必要がない。白色CFAトップ・エミッション型デバイスの一例がアメリカ合衆国特許第6,392,340号に示してある。白色発光OLEDデバイスの別の例は、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、日本国特開07-142169、アメリカ合衆国特許第5,405,709号に開示されている。
【0011】
広帯域発光OLEDデバイスをカラー・フィルタまたは色変更モジュールとともに使用する場合のこの広帯域発光OLEDデバイスの応用における1つの問題は、発光スペクトルの1つ以上の色成分の強度がしばしば望むより小さいことである。したがってOLEDからの広帯域光をカラー・フィルタを通過させると、1つ以上の色の光が望むより低効率になる。その結果、赤色、緑色、青色の光を混合することによってディスプレイで白色を発生させるのに必要な電力も望むより大きくなる可能性がある。したがって広帯域発光OLEDデバイスを用いたマルチカラーOLEDを改良することが、相変わらず必要とされている。
【0012】
ELユニット内にLELを1つしか含まない1つ以上のELユニットを用いる広帯域発光OLEDデバイスにも問題がある。少なくとも1つの色成分の強度が望むよりも小さい広帯域OLEDデバイスの色補償は、強度が望むよりも小さい色成分の波長範囲で発光するELユニットを付加することによって実現される。この色補償の目的は、広帯域OLEDディスプレイの効率と色純度を改善することである。しかしLELを1つしか持たない帯域の狭いELユニットは、2つ以上のLELを備える広帯域ELユニットほど安定ではないことが観察されている。したがって広帯域OLEDデバイスの色、効率、安定性を改善することが必要とされている。
【0013】
タンデム式広帯域OLEDデバイスには、多層OLED構造の内部における光の干渉効果に起因するの別の問題が存在している。反射層(一般には電極のうちの1つ)に対するLELの相対位置と、光学定数が一致していない他の界面とによってデバイスから出る光の量が決まることが従来技術で知られている。特定のLELの好ましい位置は、波長に依存する。タンデム式OLEDでは、すべてのLELを好ましい位置に配置することは困難である。したがってタンデム式広帯域OLEDデバイスを改善して出てくる光の量を増やす必要がある。
【0014】
広帯域発光OLEDデバイスには、マルチカラー・ディスプレイまたはフル・カラー・ディスプレイを製造するために使用したとき、望ましくない波長範囲の発光が含まれるという問題もある。このような波長範囲の一部は、一般に、望むカラー画素の製造に用いるカラー・フィルタによって吸収されるため、電力が浪費される。さらに、吸収されない望ましくない波長範囲の部分があるため、カラー画素の色純度が低下する。その一例は、フル・カラー・ディスプレイを製造するのにシアン色、黄色、マゼンタ色の波長範囲の発光を含む広帯域OLEDデバイスを用いる場合である。赤色画素、緑色画素、青色画素を作るのに使用されるカラー・フィルタによってこれらの波長領域の部分が一般に吸収されるために電力が浪費される。さらに、吸収されないシアン色、黄色、マゼンタ色の波長範囲の部分があるため、赤色画素、緑色画素、青色画素の色純度が低下する。したがって広帯域発光OLEDデバイスを改善し、マルチカラー・ディスプレイまたはフル・カラー・ディスプレイのこれら望ましくない波長範囲における発光レベルをより低くする必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明の1つの目的は、より効果的な広帯域発光OLEDディスプレイを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、互いに離れた少なくとも2つの電極を備える、広帯域光を発生させるためのタンデム式OLEDディスプレイであって、
a)上記電極間に配置された2つ以上の広帯域発光ユニットと;
b)隣り合った発光ユニットの間に配置された中間接続層とを備えていて、
上記広帯域発光ユニットのうちの少なくとも2つが、発光スペクトルの異なる光を発生させ、そのような広帯域発光ユニットのうちの少なくとも1つが白色光を発生させない、タンデム式OLEDディスプレイによって達成される。
【発明の効果】
【0017】
2つ以上の広帯域発光ユニットを備えていて、そのような広帯域発光ユニットのうちの少なくとも1つが白色ではないタンデム式OLEDデバイスを用いることにより、その広帯域発光ユニット群が発生させる光を選択して有効なマルチカラーOLEDディスプレイ、フル・カラーOLEDディスプレイ、広帯域発光OLEDディスプレイのいずれかにできることが見いだされた。本発明の別の利点は、OLEDデバイスの中における広帯域発光ユニットの位置を選択することで、そのOLEDデバイスから取り出される光の量が増大することである。本発明の別の利点は、OLEDデバイスの寿命が延びることである。本発明の別の利点は、色純度、効率、寿命が改善されたデバイスが提供されることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
デバイスの特徴的なサイズ(例えば層の厚さ)はミクロン以下の範囲のことがしばしばあるため、図面は、サイズを正確にというよりは見やすいような縮尺にしてある。
【0019】
“OLEDディスプレイ”、“OLEDデバイス”、“有機発光ディスプレイ”という用語は、従来技術におけるように、画素として有機発光ダイオードを備えるディスプレイ装置の意味で用いる。カラーOLEDディスプレイは、少なくとも1つの色の光を発生させる。“マルチカラー”という用語は、異なる領域で異なる色相の光を発生させることのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。この用語は特に、いろいろな色の画像を表示することのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。領域は互いに連続している必要はない。“フル・カラー”という用語は、可視スペクトルの少なくとも赤、緑、青の領域で光を発生させ、色相の任意の組み合わせで画像を表示できるルチカラー・ディスプレイ・パネルを記述するのに一般に用いる。赤、緑、青は三原色を構成し、その三原色を適切に混合することによって他のあらゆる色が作り出される。しかしデバイスの色域を広げるために追加の色を用いること、またはデバイスの色域内の追加の色を用いることが可能である。“色相”という用語は、可視スペクトルに含まれていて、色の違いを目で識別できる異なる色相を持つ発光の強度プロファイルを意味する。“画素”という用語は、従来技術で使用されているように、一般に、ディスプレイ・パネルの1つの領域であって、他の領域とは独立に刺激して光を出させることのできる領域を指すのに用いる。フル・カラー・システムでは、色の異なるいくつかの画素を合わせて用いて広い範囲の色を作り出すことが知られており、見る人は、そのようなグループを単一の画素と呼ぶことができる。この明細書における説明では、そのようなグループを、色の異なるいくつかの画素と見なすことにする。
【0020】
この明細書では、広帯域光または広帯域発光は、可視スペクトルの複数の部分(例えば青と緑)に大きな成分を有する光である。広帯域発光には、白色光を作り出すためにスペクトルの赤、緑、青の部分で発光する場合も含まれる。白色光は、ユーザーが白色を持つと認識する光、または色変更媒体(例えば赤色、緑色、青色のフィルタまたは色変更モジュール)を組み合わせて使用して実用的なフル・カラー・ディスプレイを作るのに十分な発光スペクトルを持つ光である。CIEx、CIEy座標は約0.33、約0.33であることが理想だが、実際の座標は大きく異なっている場合があり、それでも非常に有用である。
【0021】
本発明はたいていの構成のOLEDデバイスで利用される。その中には、単一のアノードとカソードを備える非常に簡単な構造から、より複雑なデバイス(直交したアノードとカソードのアレイが画素を形成しているパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。本発明のOLEDデバイスは順バイアスで動作させることができるため、DCモードで機能することができる。例えば交流モードでは、逆バイアスを印加すると好ましい場合がある。OLEDデバイスは一般に逆バイアスでは光を出さないが、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されているように、安定性が顕著に増大することがわかっている。
【0022】
ここで図1を参照すると、広帯域光を発生させるための本発明によるタンデム式OLEDディスプレイ100の一実施態様の断面図が示してある。広帯域光の性質は以下に詳しく説明する。タンデム式OLEDディスプレイとは、少なくとも2つの発光ユニットが積層配置されたOLEDディスプレイを意味する。このタンデム式OLEDディスプレイは、互いに離した少なくとも2つの電極を備えている。それは、ここでは、アノード・アレイ(アノード110a、110b、110c、110dで表わす)とカソード170である。カソードとアノード・アレイの少なくとも一方は透明である。アノードは、タンデム式OLEDディスプレイ100の画素アレイに対応している(例えば赤色発光画素115a、緑色発光画素115b、青色発光画素115c、広帯域発光画素115d)。アノードとカソードの間にはN個の有機広帯域発光ユニット120.x(“広帯域ELユニット”と表記)が配置されている。ただしNは2以上であり、2つ以上の有機広帯域発光ユニットが、発光スペクトルの異なる光を発生させ、その有機広帯域発光ユニットうちの少なくとも1つは白色光を出さない。タンデム式OLEDディスプレイ100は(N-1)個の中間接続層130.xも備えていて、それぞれ、隣り合った広帯域発光ユニットの間に配置されている。xは、120.xに関しては1〜Nの整数であり、130.xに関しては1〜(N-1)の整数である。積層されて直列に接続された広帯域発光ユニット120.xを120.1〜120.Nで示してある。ただし120.1は(アノードに隣接した)1番目の広帯域発光ユニットであり、120.2は2番目の広帯域発光ユニットであり、120.Nは(カソードに最も近い)N番目の広帯域発光ユニットである。120.xは、本発明で120.1〜120.Nと名づけた任意の広帯域発光ユニットを表わす。中間接続層130.xは、それぞれの広帯域発光ユニットの間に配置されていて、130.1〜130.(N-1)で示してある。ただし130.1は、広帯域発光ユニット120.1と120.2の間に配置された1番目の中間接続層であり、130.(N-1)は、広帯域発光ユニット120.(N-1)と120.Nの間に配置された最後の中間接続層である。130.xは、本発明で130.1〜130.(N-1)と名づけた任意の中間接続層を表わす。合計で(N-1)個の中間接続層がN個の広帯域発光ユニットに付随している。
【0023】
タンデム式OLEDディスプレイ100は、導電線(図示せず)を通じて外部の電圧/電流源に接続されており、電圧/電流源が発生させる電位を一対の接触電極(例えばアノード110aとカソード170)の間に印加することによって動作する。順バイアス下では、外部から印加されたこの電位は、N個の広帯域発光ユニットと(N-1)個の中間接続層に、これらのユニットと層のそれぞれの電気抵抗に比例して分配される。このタンデム式白色OLEDに印加される電位によって正孔(正に帯電したキャリア)がアノード110aから1番目の広帯域発光ユニット120.1に注入され、電子(負に帯電したキャリア)がカソード170からN番目の広帯域発光ユニット120.Nに注入される。それと同時に電子と正孔がそれぞれの中間接続層(130.1〜130.(N-1))の中で発生し、その中間接続層から離れていく。例えば中間接続層130.1でこのようにして発生した電子はアノードに向かって移動し、隣にある広帯域発光ユニット120.1に注入される。同様に、中間接続層130.1で発生した正孔はカソードに向かって移動し、隣にある広帯域発光ユニット120.2に注入される。その後、これらの電子と正孔は対応する発光ユニットの中で再結合して光を発生させる。
【0024】
タンデム式OLED100に含まれる各広帯域発光ユニットは、光を発生させるための正孔の注入、正孔の輸送、電子-正孔再結合をサポートすることができる。各発光ユニットは複数の層を含むことができる。本発明の広帯域ELユニットで使用される従来技術で公知の有機発光多層構造が多数ある。その例として、正孔輸送層(HTL)/1つ以上の発光層(LEL)/電子輸送層(ETL)、正孔注入層(HIL)/HTL/1つまたは複数のLEL/ETL、HIL/HTL/(1つまたは複数のLEL)/ETL/電子注入層(EIL)、HIL/HTL/電子阻止層または正孔阻止層/1つまたは複数のLEL)/ETL/EIL、HIL/HTL/(1つまたは複数のLEL)/正孔阻止層/ETL/EILなどがある。タンデム式OLEDディスプレイのそれぞれの広帯域発光ユニットは、他の発光ユニットと層構造が同じでも異なっていてもよいが、組み合わせた発光が改善された広帯域発光になっている必要がある。ETLに隣接するLELの厚さが20nmよりも厚い場合、ETLを単純にEILで置き換え、そのEILが電子注入と電子輸送の両方をサポートする機能を担う場合がある。
【0025】
タンデム式OLED100の特定の広帯域発光ユニットに含まれるLELの数は、一般に1〜3である。したがって一実施態様では、広帯域発光ユニットは、少なくとも1つのHTLと3つのLELを備えることができる。そのときそれぞれのLELは異なる色の光を出す。広帯域発光ユニットは、少なくとも1つのHTLと2つのLELを備えることもできる。その場合にそれぞれのLELは異なる色の光を出す。広帯域発光ユニットは、少なくとも1つのHTLと、1つの広帯域発光LELを備えることもできる。発光層は、それぞれの広帯域発光ユニットが、可視スペクトルの2つ以上の領域(例えば青色と緑色、青色と赤色、緑色と赤色、シアン色と黄色)に互いに離れた2つ以上のピーク・スペクトル成分を持つ光を出すように選択する。それぞれの広帯域発光ユニットのLELから出る光は同じ色でも異なる色でもよいが、少なくとも2つの広帯域発光ユニットは異なる色の光を発生させねばならず、少なくとも1つの広帯域発光ユニットは白色であってはならない。例えば2つのマゼンタ色ユニットが青色と赤色のピークを持ち、1つのオレンジ色ユニットが緑色と赤色のピークを持つ場合や、1つの白色ユニットが青色、緑色、赤色のピークを持ち、1つのシアン色ユニットが青色と緑色のピーク持ち、1つのオレンジ色ユニットが緑色と赤色のピークを持つ場合が挙げられる。いくつかの実施態様では、どの広帯域発光ユニットも、個別に白色光を発生させることはない。そのうちのいくつかの実施態様では、複数の広帯域発光ユニット(例えばシアン色ユニットとオレンジ色ユニット)を組み合わせた発光が白色光を形成する。これら実施態様のうちの他の実施態様では。組み合わせた発光が白色光を形成することはない(例えば1つのシアン色ユニットがより大きな青色ピークとより小さな緑色ピークを持ち、1つのシアン色ユニットがより大きな緑色ピークとより小さな青色ピークを持つ)。
【0026】
広帯域発光ユニットの有機層は、小分子OLED材料、またはポリマーLED材料、またはこれらの組み合わせから形成される。小分子OLED材料とポリマーLED材料のどちらも従来技術で知られている。タンデム式OLEDディスプレイの各発光ユニットの対応する有機層は、他の対応する有機層の材料と同じ材料または異なる材料を用いて形成する。いくつかの発光ユニットはポリマーであり、他の発光ユニットは小分子(非ポリマー)である。小分子には蛍光材料とリン光材料が含まれる。
【0027】
広帯域発光ユニットを構成するのに用いる材料は、従来の白色OLEDを構成するのに用いる材料と同じである。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号、第6,627,333号、第6,696,177号、第6,720,092号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0186214 A1、2002/0025419 A1、2004/0009367 A1、2006/0003184 A1に記載されている(その開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。好ましい実施態様では、広帯域光が複数のLELから発生する。
【0028】
それぞれの広帯域発光ユニットは、性能が向上するように、または望ましい属性(例えばOLEDの多層構造の光の透過、駆動電圧、輝度効率、製造しやすさ、デバイスの安定性)が実現するように選択する。タンデム式OLEDディスプレイに含まれる発光ユニットの数は、原則として2以上である。タンデム式OLEDディスプレイに含まれる発光ユニットの数は、輝度効率(単位はcd/A)が向上するか最大化する数であることが好ましい。
【0029】
タンデム式OLEDディスプレイの駆動電圧を低下させるため、エレクトロルミネッセンスの効率を損なうことなくそれぞれの発光ユニットをでるだけ薄くすることが望ましい。それぞれの発光ユニットは厚さが500nm未満であることが好ましく、2〜250nmであることがより好ましい。発光ユニット内の各層が200nm以下であることも好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましい。発光ユニットの各LELの厚さが5nm〜50nmであることも好ましい。
【0030】
色変更媒体アレイがタンデム式OLEDディスプレイ100に付随している。色変更媒体アレイは、広帯域発光ユニットからの光を受け取る。色変更媒体は、可視スペクトルの一部の光だけが通過するように制限するカラー・フィルタ、またはスペクトルの1つの領域の光を吸収して異なる領域の光を再発生させる色変更モジュール、またはカラー・フィルタと色変更モジュールの組み合わせである。色変更媒体アレイはさまざまな組み合わせにできるが、有用な1つの組み合わせとして、3原色の媒体の組み合わせがある。すなわち、赤色の光が通過するか発生するように帯域を選択した赤色変更媒体105aと、緑色の光が通過するか発生するように帯域を選択した緑色変更媒体105bと、青色の光が通過するか発生するように帯域を選択した青色変更媒体105cの組み合わせである。その結果、色変更媒体アレイは、白色光を含め、広い色域の光を発生させることができる。例えば電流がアノード110aとカソード170の間を流れると広帯域光が発生し、それが赤色変更媒体105aによって変えられて、見る人にとって赤色の光が発生する。従来技術においていくつかのタイプの色変更媒体が知られている。1つのタイプの色変更媒体が第2の透明な基板の上に形成された後、第1の基板150の画素と揃えられる。別のタイプの色変更媒体が、図1に示したように画素のさまざまな素子の上に直接形成されている。複数の画素を備えるディスプレイでは、個々の色変更媒体素子に挟まれたスペースをブラック・マトリックスで埋めて画素のクロストークを減らし、ディスプレイのコントラストを改善することもできる。
【0031】
異なる色の画素は、異なる色変更媒体を含むことができる。すなわち緑色変更媒体105bと青色変更媒体105cはカラー・フィルタであるのに対し、赤色変更媒体105aは、色変更モジュールであるか、色変更モジュールとカラー・フィルタの組み合わせである。タンデム式OLEDディスプレイ100は、色変更媒体のない1つ以上の画素(例えば広帯域光を発生させる広帯域発光画素115d)を備えることができる。その結果、このタイプのいろいろな実施態様が可能になる。例えば一実施態様では、タンデム式OLEDディスプレイ100の複数の広帯域発光ユニットからの発光の組み合わせが白色光を形成する。色変更媒体105a、105b、105cは、発光をそれぞれ赤、緑、青に制限するカラー・フィルタである。それぞれの画素がディスプレイの色域を決定する。広帯域発光画素115dは、組み合わせによる白色光を発生させるため、色域内画素である。その色域を図2aに示してある。これは、3つの色域決定画素と、1つの色域内画素とを備える発光デバイスの1931CIE(国際照明委員会)x,y色度図である。少なくとも3つの画素(例えば赤色発光体12、緑色発光体13、青色発光体14)が異なる色を発生させ、ディスプレイのCIE色空間10内の色域16を決定する。2つ以上の色域決定画素を異なる強度で光らせることにより、他の色を発生させる。その新しい色は色域内の色である。このようなディスプレイ装置は、色域内の色の光を発生させる少なくとも1つの追加の画素(例えば白色発光体18)も備えている。白色という用語は、本発明では、見る人がほぼ白色と認識するあらゆる発光を指す。しかし色域内画素の色は、色域決定画素の色域内の任意の色であり、RGBWという用語は、この明細書では、少なくとも3つの色域決定画素と少なくとも1つの色域内画素を備える任意のディスプレイを記述するのに用いる。このタイプのディスプレイは従来のOLEDディスプレイよりも効率的である。なぜなら色域内画素は、色域決定画素のうちの少なくとも1つよりも効率が大きい傾向があるからである。一般に、色域内画素は、どの色域決定画素よりも効率が大きい。
【0032】
この構成では、追加の発光体は、白色発光体18と、他の3つの発光体のうちの2つとを含む(図2aの点線で示した)一連のサブ色域を生成させる。サブ色域が合わさって色域16を形成する。したがって赤色発光体12、緑色発光体13、青色発光体14の適切な組み合わせから望む色15を発生させることができるとはいえ、赤色発光体12、青色発光体14、白色発光体18の適切な組み合わせによって望む色を発生させるほうがより効率的である。
【0033】
別の一実施態様では、タンデム式OLEDディスプレイ100の複数の広帯域発光ユニットからの発光を組み合わせてシアン色の光、すなわち青色光と赤色光を含む光を形成することができる。色変更媒体105bと105cは、発光をそれぞれ緑色と青色に制限するカラー・フィルタであるのに対し、色変更媒体105aは、シアン色の発光のすべてまたは一部を赤色光に変換する色変更モジュールである。広帯域画素115dは、組み合わせによるシアン色の光を発生させ、第4の色域画素を提供する。これらそれぞれの画素がディスプレイの色域を決定する。その色域を図2bに示してある。これは、いわゆるRGBCデバイスの中に追加の色域決定画素を備えるディスプレイの一例である。このようなデバイスは、赤色発光体12、緑色発光体13、青色発光体14以外に、その3つの画素によって規定される色域外の光を発生させるシアン色発光体17を備えている。このようなデバイスは、拡張された色域19を決定できるという利点を有する。
【0034】
この構成では、追加の発光体は、4つの発光体のうちの3つを含む(図2bに点線で示した)一連のサブ色域を生成させる。それぞれのサブ色域は互いに重なっている。したがって赤色発光体12、緑色発光体13、青色発光体14の適切な組み合わせから、または赤色発光体12、シアン色発光体17、青色発光体14の適切な組み合わせから、または4つの発光体すべての適切な組み合わせから、望む色15を作り出すことができる。
【0035】
色の異なる少なくとも3つの色域画素を備えているのであれば、この構成を持つ別の実施態様が可能である。色域画素は、すべて色が変更されている(例えば画素115a、115b、115c)か、色が変更された画素と色が変更されていない画素(例えば画素115b、115c、115d)を含むことができる。
【0036】
ここで図3a〜図3dを参照すると、本発明において有用な広帯域発光ユニットの発光スペクトルの例がいくつか示してある。図3aは、白色光を発生させる広帯域発光ユニットの発光スペクトルである。発光スペクトル300は、2つのピーク・スペクトル成分305と325を持ち、青色領域310、緑色領域315、赤色領域320で大きな発光がある。このような発光ユニットは、フィルタなしだと白色発光体であり、カラー・フィルタを用いると赤色画素、緑色画素、青色画素になる。図3bは、シアン色広帯域発光ユニットの発光スペクトル330であり、青色と緑色の光を発生させる。図3cは、マゼンタ色広帯域発光ユニットの発光スペクトル340であり、青色と赤色の光を発生させる。図3dは、黄色広帯域発光ユニットの発光スペクトル350であり、緑色と赤色の光を発生させる。
【0037】
タンデム式OLEDディスプレイ100の2つ以上の広帯域発光ユニットは、図3a〜図3dの発光スペクトルと似た発光スペクトルを持つことができる。例えば1つの広帯域発光ユニットが図3aと似た白色光を発生させることができ、第2の広帯域発光ユニットが図3bと似た緑色と青色の光を発生させることができる。別の一実施態様では、1つの広帯域発光ユニットが図3aと似た白色光を発生させることができ、第2の広帯域発光ユニットが図3cと似た赤色と青色の光を発生させることができる。別の一実施態様では、1つの広帯域発光ユニットが図3aと似た白色光を発生させることができ、第2の広帯域発光ユニットが図3dと似た赤色と緑色の光を発生させることができる。どの広帯域発光ユニットも個別には白色光を発生させない実施態様が可能である。例えば1つの広帯域発光ユニットが図3cと似た赤色と青色の光を発生させることができ、第2の広帯域発光ユニットが図3bと似た緑色と青色の光を発生させることができる。このような場合には、広帯域発光ユニットの発光の組み合わせで白色光を形成することになる。広帯域発光ユニットの発光の組み合わせが白色光にならないことも可能である。
【0038】
ここで図4を参照すると、本発明の一実施態様によるいくつかの広帯域発光ユニットの発光スペクトルを示してある。広帯域発光ユニットのうちの少なくとも1つが、第1の発光ピークと、その第1の発光ピークよりも強度が小さい第2の発光ピークを持つ発光スペクトルを生成させる。例えば発光スペクトル360は、可視スペクトルの青色領域に強度のより大きな第1の発光ピーク365を持ち、緑色領域に強度のより小さな第2の発光ピーク370を持つ。同様に、発光スペクトル380は、緑色領域に強度のより大きな第1の発光ピークを持ち、赤色領域に強度のより小さな第2の発光ピークを持つ。発光スペクトル390は、赤色領域に強度のより大きな第1の発光ピークを持ち、青色領域に強度のより小さな第2の発光ピークを持つ。広帯域発光ユニットの第1の発光ピークは、すでに示したように発光の組み合わせによって白色光(すなわち赤色領域、緑色領域、青色領域の光)が発生するように選択する。広帯域発光ユニットの発光の組み合わせによって白色光が形成されないようにすることもできる。例えば発光スペクトル360を持つ第1の広帯域発光ユニットと、発光スペクトル380を持つ第2の広帯域発光ユニットから、シアン色の光を発生させるタンデム式OLEDデバイスを形成することができる。
【0039】
多層OLED構造の内部における光の干渉効果の問題についてはすでに言及した。その概略を図5に示してある。この図は、発光強度の変化を、発光層からカソードまでの距離の関数として、光の3つの異なる波長(例えば赤(曲線510)、緑(曲線520)、青(曲線530))について示している。特定の発光層の好ましい位置は波長に依存する。第1の発光ピークと第2の発光ピークの強度が同程度である広帯域発光ユニットを用いた従来のタンデム式OLEDデバイスでは、すべての発光ピークに関してすべての広帯域発光ユニットを好ましい位置の近くに配置することは難しい。この特別なタンデム式OLED構造の実施態様では、赤色、緑色、青色それぞれの発光の大半は別々の発光ユニットによって提供されるため、それぞれの発光ユニットがこの積層OLEDを用いて最適位置またはその近くに配置されるという利点がある。
【0040】
ここで図6を参照すると、本発明によるタンデム式OLEDディスプレイの1つの発光画素400の断面が示してある。発光画素400はボトム・エミッション型として描いてあるが、トップ・エミッション型でもボトム・エミッション型でもよい。発光画素400は、基板150と、アノード110と、アノード110とは離れたカソード170と、第1の広帯域発光ユニット120.1と、中間接続層130.1と、120.1とは異なる第2の広帯域発光ユニット120.2と、色変更媒体105を備えている。それぞれの広帯域発光ユニットは、1つ以上の発光層(例えば発光層430、450、435、455)を備えており、正孔注入層(例えば410)と、正孔輸送層(例えば420と425)と、電子輸送層(例えば460と465)と、電子注入層(例えば475)も備えることができる。これらの層の材料を以下に説明する。
【0041】
広帯域ELユニット(例えば120.1)は、正孔-電子再結合に応答して光を発生させる。望ましい有機発光材料は、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、照射によるドナー材料からの熱転写)で堆積される。有用な有機発光材料はよく知られている。アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層は、ルミネッセンス材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。OLEDの発光層は発光材料で形成されるが、より一般的には、ホスト材料と発光ドーパントを含んでいる。いくつかの赤色発光化合物、黄色発光化合物、緑色発光化合物、青色発光化合物が本発明において特に有用である。白色光を発生させる従来のディスプレイは、広い範囲の波長で光を出す発光層を含んでいる。例えばヨーロッパ特許第1 187 235 A2号には、スペクトルの可視領域でほぼ連続的なスペクトルを持つ白色発光有機エレクトロルミネッセンス素子が教示されている。他の例は、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号、第6,627,333号、第6,696,177号、第6,720,092号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0186214 A1、2002/0025419 A1、2004/0009367 A1に記載されている。この明細書では、これらを広帯域白色発光体または広帯域発光体と呼ぶことにする。
【0042】
HTLは、少なくとも1種類の正孔輸送材料(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0043】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、VanSlykeらがアメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061569号に記載しているような少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、またはそのような化合物の混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0044】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミノ基を有する第三級芳香族アミン(オリゴマー材料を含む)が使用される。さらに、ポリマー正孔輸送材料も使用される。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0045】
LELは、発光性の蛍光材料またはリン光材料を含んでいて、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが発生する。この発光層は、単一の材料で構成されるが、より一般には、1種類または複数のゲスト発光材料がドープされたホスト材料を含んでいる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。このゲスト発光材料は、発光ドーパントと呼ばれることがしばしばある。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料である。発光材料は、通常は強い蛍光染料およびリン光化合物(例えば、WO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0046】
ホストと発光材料は、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))である。ポリマーの場合、小分子発光材料をポリマーからなるホストに分子として分散させたり、発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加したりする。
【0047】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。ホストから発光材料にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホストから発光材料にエネルギーが移動できるよう、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高いことも重要である。
【0048】
有用であることが知られているホストおよび発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、第6,661,023号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0127427 A1、2003/0198829 A1、2003/0203234 A1、2003/0224202 A1、2004/0001969 A1に開示されているものがある。
【0049】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)とその誘導体の金属錯体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト化合物の1つのクラスを構成する。有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0050】
有用なホスト材料の別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、第6,713,192号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0048687 A1、2003/0072966 A1、WO 04/018587 A1に記載されているようなアントラセン誘導体がある。いくつか例示すると、9,10-ジ-ナフチルアントラセンと9-ナフチル-10-フェニルアントラセンの誘導体がある。ホスト材料の有用な別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。
【0051】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。発光層は、デバイスの膜の形態、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、2種類以上のホスト材料を含むことができる。電子輸送材料と正孔輸送材料の混合物も有用なホストとして知られている。さらに、上記のホスト材料と正孔輸送材料または電子輸送材料との混合物も適切なホストになりうる。アントラセン誘導体とアリールアミン誘導体の混合物は特に有用なホストである。
【0052】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、カルボスチリル化合物などがある。ジスチリルベンゼン誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたものである(非公式にはジスチリルアミンとして知られる)。
【0053】
リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわち“三重項発光体”も含まれる)に適したホスト材料は、三重項エキシトンの輸送がホスト材料からリン光材料へと効率的になされるものを選択すべきである。この輸送が起こるためには、リン光材料の三重項エネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいことが非常に望ましい。しかしホストのバンドギャップは、OLEDを駆動する電圧の許容できない上昇を引き起こすほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662 A1に記載されている。適切なホストとしては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホストの例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-N,N'-ジカルバゾールビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)と、これらの誘導体である。
【0054】
本発明の発光層で用いられる有用なリン光材料が記載されているのは、WO 00/57676 A1、WO 00/70655 A1、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、WO 02/074015 A2、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,458,475号、第6,573,651号、第6,451,455号、第6,413,656号、第6,515,298号、第6,451,415号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、2002/0197511 A1、2003/0072964 A1、2003/0068528 A1、2003/0124381 A1、2003/0059646 A1、2003/0054198 A1、2002/0100906 A1、2003/0068526 A1、2003/0068535 A1、2003/0141809 A1、2003/0040627 A1、2002/0121638 A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、第1 238 981 A2号、第1 244 155 A2号、日本国特開2003/073387A、2003/073388A、2003/059667A、2003/073665Aなどである。有用なリン光ドーパントとしては、遷移金属の錯体(例えばイリジウムや白金の錯体)などがある。
【0055】
有用な赤色発光化合物の例として、以下の構造を持つジインデノペリレン化合物などがある。
【0056】
【化1】

ただし、
X1〜X16は、水素または置換基として独立に選択され、その置換基は、炭素原子が1〜24個のアルキル基;
炭素原子が5〜20個のアリール基または置換されたアリール基;1つ以上の縮合芳香族環または縮合芳香族環系を完成させる4〜24個の炭素原子を含む炭化水素基;ハロゲンのいずれかである。
【0057】
このクラスの有用な赤色ドーパントの代表例として以下のものがある。
【0058】
【化2】

【0059】
特に好ましいジインデノペリレン・ドーパントはTPDBP(上記のA4)である。本発明において有用な他の赤色ドーパントは、以下の一般式で表わされるDCMクラスの染料に属する。
【0060】
【化3】

ただし、
R1〜R5は、ヒドロ、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールの中から独立に選択された1つ以上の基を表わし;
R1〜R5は、独立に、非環式基を含むか、対をなして結合して1つ以上の縮合環を形成するが;R3とR5が合わさって縮合環を形成することはない。
【0061】
赤色の光を出す有用かつ便利な一実施態様では、R1〜R5は、独立に、ヒドロ、アルキル、アリールの中から選択される。DCMクラスの特に有用なドーパントの構造を以下に示す。
【0062】
【化4】

【0063】
好ましいDCMドーパントはDCJTBである。Hatwarらは、2004年1月5日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/751,352号において、広帯域発光にとって有用な他のDCMドーパントを開示している(その開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。赤色ドーパントは、個別に赤色ドーパントとなる化合物の混合物でもよい。
【0064】
ある種のオレンジ色発光材料または黄色発光材料が有用であり、例えば以下の構造の化合物がある。
【0065】
【化5】

ただし、
R1〜R6は各環上の1個以上の置換基を著わし、各置換基の選択は、個別に、以下のカテゴリー:
カテゴリー1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
カテゴリー2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール;
カテゴリー3:4〜24個の炭素原子を持ち、縮合芳香族環または縮合芳香族環系を完成させる炭化水素;
カテゴリー4:単結合を通じて結合されるか、縮合複素芳香族環系を完成させる 5〜24個の炭素原子を持つヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール(チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系);
カテゴリー5:炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
カテゴリー6:フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ
の中からなされる。
【0066】
このクラスの特に有用なドーパントの例を以下に示す。
【0067】
【化6】

【0068】
有用な緑色発光材料として、以下の構造を持つキナクリドン化合物などが挙げられる。
【0069】
【化7】

ただし、置換基R1とR2は、独立に、アルキル、アルコキシル、アリール、ヘテロアリールのいずれかであり;置換基R3〜R12は、独立に、水素、アルキル、アルコキシル、ハロゲン、アリール、ヘテロアリールのいずれかであり、隣り合った置換基R3〜R10は場合によっては結合して1つ以上の環系を形成することができ、その中には、発光領域が510nm〜540nmにあって半値全幅が40nm未満である縮合芳香族環と縮合複素芳香族環が含まれる。置換基であるアルキル、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、縮合芳香族環、縮合複素芳香族環は、さらに置換されている。通常は、R1とR2はアリールであり、R3〜R12は、水素、またはメチルよりも電子求引力が強い置換基である。有用なキナクリドンのいくつかの例がアメリカ合衆国特許第5,593,788号とアメリカ合衆国特許出願公開2004/0001969 A1に開示されている。
【0070】
有用なキナクリドン緑色ドーパントの例として以下のものがある。
【0071】
【化8】

【0072】
緑色発光材料として、以下の構造を持つクマリン化合物などが挙げられる。
【0073】
【化9】

ただし、
XはOまたはSであり、R1、R2、R3、R6は、個別に、水素、アルキル、アリールのいずれかが可能であり;
R4とR5は、個別に、アルキルまたはアリールが可能であり、あるいはR3とR4、またはR5とR6、またはその両方が合わさってシクロアルキル基を完成させる原子を表わす。
【0074】
有用なクマリン緑色ドーパントの例として以下のものがある。
【0075】
【化10】

【0076】
有用な青色発光材料として、構造式(F1)のビス(アジニル)アゼンホウ素錯体化合物が挙げられる。
【0077】
【化11】

ただし、
AとA'は、独立に、少なくとも1個の窒素を含む6員の芳香族環系に対応するアジン環系を表わし;
(Xa)nと(Xb)mは、独立に選択した1個以上の置換基を表わし、非環式置換基を含んでいるか、合わさってAまたはA’と縮合した環を形成し;
mとnは、独立に0〜4であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基であり;
1、2、3、4、1’、2’、3’、4’は、炭素原子または窒素原子として独立に選択される。
【0078】
上記のクラスのドーパントのいくつかの例として以下のものがある。
【0079】
【化12】

【0080】
青色ドーパントの別の特に有用なクラスとして、ジスチリルアリーレン(例えばジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニル)の青色発光誘導体がある。その中には、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載された化合物も含まれる。青色の光を出すジスチリルアリーレンの誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたもの(ジスチリルアミンとしても知られる)である。例として、以下に示す一般構造を持つビス[2-[4-[N,N-ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]-ベンゼン:
【化13】

と、以下に示す一般構造を持つビス[2-[4-[N,N-ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]ビフェニル:
【化14】

がある。
【0081】
一般式(G1)と(G2)においてR1〜R4は同じでも異なっていてもよく、独立に1つ以上の置換基(例えばアルキル、アリール、縮合したアリール、ハロ、シアノ)を表わす。好ましい一実施態様では、R1〜R4は独立にアルキル基であり、それぞれが1〜約10個の炭素原子を含んでいる。このクラスの特に有用な青色ドーパントは、1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB、以下の一般式(G3))である。
【0082】
【化15】

【0083】
青色ドーパントの別の特に有用なクラスとして、ペリレンまたはペリレン誘導体があり、例えば以下のものが挙げられる。
【0084】
【化16】

【0085】
本発明の1つ以上の発光層に含まれるホスト材料は、9位と10位に炭化水素または置換された炭化水素を持つアントラセン誘導体である。例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式(J1))は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを構成し、波長が400nmよりも長い発光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)に特に適している。
【0086】
【化17】

ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は各環上の1個以上の置換基を表わし、各置換基の選択は、個別に、以下のグループ:
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール;
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルいずれかの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合複素芳香族環系を完成させるのに必要な 5〜24個の炭素原子を持つヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素、塩素、臭素、シアノ
の中からなされる。
【0087】
一般式(J2)のモノアントラセン誘導体も、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料であり、波長が400nmよりも長い発光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)に特に適している。一般式(J2)のアントラセン誘導体は、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願公開2005/0089717 A1に記載されている(その開示内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0088】
【化18】

ただし、R1〜R10は以下のようになっている。
R1〜R8はHである。
R9は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないナフチル基である。ただしR9とR10は同じではなく、アミンとイオウ化合物を含んでいない。R9は、1つ以上の縮合環をさらに備えていて芳香族縮合環系(例えばフェナントリル、ピレニル、フルオランテン、ペリレン)を形成している置換されたナフチル基であるか、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたナフチル基であるか、縮合した2つの環からなる置換されていないナフチル基であることが好ましい。R9は、パラ位が置換された2-ナフチルまたは1-ナフチルか、パラ位が置換されていない2-ナフチルまたは1-ナフチルであることが好ましい。
R10は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないビフェニル基である。R10は、置換されていて芳香族縮合環(例えばナフチル、フェナントリル、ペリレン)を形成しているビフェニル基か、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたビフェニル基か、置換されていないビフェニル基であることが好ましい。R10は、置換されていない4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、縮合環を含まない他のフェニル環で置換されていて三フェニル環系を形成している4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、2-ビフェニルであることが好ましい。特に有用なのは、9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンである。
【0089】
アントラセン誘導体の別の有用な1つのクラスは、一般式;
A1-L-A2 (J3)
で表わされる。ただし、A1とA2は、それぞれ、置換された、または置換されていないモノフェニルアントリル基を表わすか、置換された、または置換されていないジフェニルアントリル基を表わし、互いに同じでも異なっていてもよく、Lは、単結合または2価の結合基を表わす。
【0090】
アントラセン誘導体の別の有用な1つのクラスは、一般式;
A3-An-A4 (J4)
で表わされる。ただし、Anは、置換された、または置換されていない2価のアントラセン残基を表わし、A3とA4は、それぞれ、置換された、または置換されていない1価の縮合芳香族環基を表わすか、置換された、または置換されていない炭素原子が6個以上の非縮合環アリール基を表わし、互いに同じでも異なっていてもよい。発光層で用いるのに役立つアントラセン材料の特別な例として以下のものがある。
【0091】
【化19】

【0092】
【化20】

【0093】
ETLは、1種類以上の金属キレート化オキシノイド化合物を含むことができる。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。オキシノイド化合物の例は、上に示したCO-1〜CO-9である。
【0094】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジン、フェナントロリン誘導体と、いくつかのシロール誘導体も、有用な電子輸送材料である。
【0095】
タンデム式OLEDが効率的に機能するためには、中間接続層が有機ELユニットの間に設けられていることが好ましい。中間接続層は、隣接するELユニットにキャリアを効率的に注入する。金属、金属化合物、他の無機化合物が、キャリアの注入に有効である。しかしこのような材料は抵抗率が小さいことがしばしばあるため、画素のクロストークが発生する可能性がある。また、ELユニットで発生した光がデバイスの外に出られるようにするため、中間接続層を構成する層の光透過率はできるだけ大きい必要がある。したがって中間接続層では主に有機材料を使用することがしばしば好まれる。中間接続層には有用な構成がいくつかある。中間接続層のいくつかの例が、アメリカ合衆国特許第6,717,358号、第6,872,472号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0227460 A1に記載されている。
【0096】
中間接続層は、n型をドープされた有機層、またはp型をドープされた有機層、またはその両方を含んでいることが好ましい。有用な1つの中間接続層は、n型をドープされた有機層と電子受容層という2つの層を有する。電子受容層は、n型をドープされた有機層よりもカソードの近くに配置される。これら2つの層は接触するか、インターフェイス層で両者を分離する。中間接続層は、電子受容層の上にp型をドープされた有機層を備えることができる。p型をドープされた有機層は、電子受容層よりもカソードの近くに配置される。この構成では、p型をドープされた有機層は電子受容層と接触していることが好ましい。中間接続層は、インターフェイス層とp型をドープされた有機層の両方を含むことができる。あるいは中間接続層は、p型をドープされた有機層に隣接するn型をドープされた有機層;n型をドープされた有機層とインターフェイス層;n型をドープされた有機層とインターフェイス層とp型をドープされた有機層を備えることができる。
【0097】
n型をドープされた有機層は、ホスト材料としての少なくとも1種類の電子輸送材料と、少なくとも1種類のn型ドーパントを含んでいる。“n型をドープされた有機層”という用語は、この層がドーピング後に半導特性を持ち、この層を流れる電流が実質的に電子によって担われることを意味する。ホスト材料は、電子の注入と電子の輸送をサポートすることができる。ETLで使用するすでに説明した電子輸送材料は、n型をドープされた有機層のためのホスト材料の有用なクラスを形成する。好ましい材料は金属キレート化オキシノイド化合物(例えばトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq))であり、その中にはオキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。他の材料としては、Tangらによってアメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤、トリアジン、ヒドロキシキノリン誘導体、ベンズアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などがある。シロール誘導体(例えば2,5-ビス(2',2"-ビピリジン-6-イル)-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシラシクロペンタジエンも有用な有機ホスト材料である。2種類以上のホストを組み合わせて適切な電荷注入特性や安定特性を得ると有用な場合がある。n型をドープされた有機層における有用なホスト材料の特別な例として、Alq、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen)、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)や、これらの組み合わせがある。
【0098】
n型をドープされた有機層のn型ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、またはこれらの組み合わせがある。“金属化合物”という用語には、有機金属錯体、金属-有機塩、無機塩、酸化物、ハロゲン化物が含まれる。金属含有n型ドーパントというクラスのうちで特に有用なのは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybのいずれかと、これらの化合物である。n型をドープされた有機層においてn型ドーパントとして使用される材料としては、強力な電子供与特性を有する有機還元剤も挙げられる。“強力な電子供与特性”とは、有機ドーパントが少なくともいくつかの電荷をホストに与えてホストと電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。有機分子の例としては、ビス(エチレンジチオ)-テトラチアフルバレン(BEDT-TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)、ならびにこれらの誘導体などがある。ホストがポリマーである場合には、ドーパントは上記の任意のものが可能であり、分子として分散させた材料、または微量成分としてホストとコポリマー化した材料でもよい。n型をドープされた有機層のn型ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybのいずれか、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。ドープするn型ドーパントの濃度は、0.01〜20体積%の範囲であることが好ましい。n型をドープされた有機層の厚さは、一般に200nm未満だが、100nm未満であることが好ましい。
【0099】
中間接続層の電子受容層(使用する場合)は、1種類以上の有機材料を含んでいてその中間接続層の50体積%を超える割合を占めており、それぞれの有機材料は、電子受容特性を持ち、還元電位が飽和カロメル電極(SCE)を基準にして-0.5Vよりも大きい。電子受容層は、還元電位がSCEを基準にして-0.1Vよりも大きい1種類以上の有機材料を含んでいることが好ましい。より好ましいのは、電子受容層が単一の有機材料を含んでいて、その有機材料が電子受容特性を持ち、還元電位がSCEを基準にして-0.1Vよりも大きいことである。“電子受容特性”とは、有機材料が、隣接している他のタイプの材料から少なくともいくつかの電荷を受け入れる能力または傾向を持つことを意味する。
【0100】
電子受容層は、還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きくて、その電子受容層の中で50体積%を超える割合を占める1種類以上の有機材料を含んでおり、タンデム式OLEDにおいて、効率的なキャリアの注入と、大きな光透過率という両方の性質を持つことができる。電子受容層で用いるのに適した有機材料としては、少なくとも炭素と水素を含んでいる単純な化合物だけでなく、還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きい金属錯体(例えば有機リガンドと有機金属化合物を含む遷移金属錯体)も挙げられる。電子受容層のための有機材料としては、小分子(蒸着によって堆積させることのできるもの)、ポリマー、デンドリマー、またはこれらの組み合わせが可能である。電子受容層は、その少なくとも一部が隣接する層と顕著に混合しないときに非常に有効である。それは、このような拡散を阻止する十分に大きな分子量を持つ材料を選択することによって実現される。電子受容材料の分子量は350よりも大きいことが好ましい。電子受容層の適切な電子受容特性を維持するためには、上記の1種類以上の有機材料がこの層の90体積%を超える割合を占めることが望ましい。簡単に製造できるようにするため、電子受容層では単一の化合物を用いる。
【0101】
還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きな有機材料のうちで電子注入層の形成に使用できるもののいくつかの例として、ヘキサアザトリフェニレンの誘導体や、テトラシアノキノジメタンの誘導体などがある。電子受容層の有効な厚さは、一般に3〜100nmである。
【0102】
“p型をドープされた有機層”という用語は、この有機層がドーピング後に半導特性を持ち、この層を流れる電流が実質的に正孔によって担われることを意味する。場合によっては存在するp型をドープされた有機層は、本発明で使用する場合には、正孔の輸送をサポートできる少なくとも1種類の有機ホスト材料と、1種類のp型ドーパントを含んでいる。従来型OLEDデバイスで使用される正孔輸送材料は、p型をドープされた有機層のためのホスト材料の有用な1つのクラスである。好ましい材料としては、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1個の3価窒素原子を含む芳香族第三級アミンなどがある。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されている少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。例示すると、N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、N,N,N',N'-テトラナフチルベンジジン(TNB)などがある。芳香族アミンの別の好ましいクラスは、Kevin P. Klubekらによって2003年3月18日に「カスケード式有機エレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/390,973号に記載されているジヒドロフェナジン化合物である(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。上記の材料の組み合わせも、p型をドープされた有機層を形成するのに役立つ。より好ましいのは、p型をドープされた有機層335に含まれる有機ホスト材料が、NPB、TPD、TNB、4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ)-トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)-トリフェニルアミン(TDATA)、ジヒドロフェナジン化合物、またはこれらの組み合わせのいずれかになっていることである。
【0103】
p型をドープされた有機層のp型ドーパントは、強い電子求引特性を有する酸化剤を含んでいる。“強い電子求引特性”とは、有機ドーパントがホストから何個かの電荷を受け取ってホスト材料と電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。いくつか例示すると、有機化合物としては例えば2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)や、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)の他の誘導体などがあり、無機酸化剤としては例えばヨウ素、FeCl3、FeF3、SbCl5、他のいくつかの金属塩化物、他のいくつかの金属フッ化物などがある。p型ドーパントの組み合わせも、p型をドープされた有機層を形成するのに役立つ。ドープするp型ドーパントの濃度は、0.01〜20体積%の範囲であることが好ましい。p型をドープされた有機層の厚さは、一般に150nm未満だが、約1〜100nmの範囲であることが好ましい。
【0104】
中間接続層で用いるホスト材料は、小分子材料、またはポリマー材料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ホスト材料が上記の正孔輸送特性と電子輸送特性の両方を示すのであれば、同じホスト材料をn型をドープされた有機層とp型をドープされた有機層の両方で使用できる場合がある。n型をドープされた有機層またはp型をドープされた有機層のホストとして使用できる材料の例として、アメリカ合衆国特許第5,972,247号に記載されているさまざまなアントラセン誘導体、ある種のカルバゾール誘導体(例えば4,4-ビス(9-ジカルバゾリル)-ビフェニル(CPB))、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体(例えば4,4'-ビス(2,2'-ジフェニルビニル)-1,1'-ビフェニル)などがある。
【0105】
p型をドープされた有機層は、電子受容層とHTLの界面に単にHTL材料を堆積させることによって形成できる。本発明では、電子受容層とHTLのための材料は、互いにほんの少量だけが混合するように選択する。すなわち、電子受容層の少なくとも一部はHTL材料と混合しないことが重要である。
【0106】
中間接続層に場合によっては含まれるインターフェイス層は、本発明で使用する場合には、主に、n型をドープされた有機層のための材料と電子受容層のための材料の間で起こる可能性のある相互拡散を阻止するのに使用される。このインターフェイス層は、金属化合物または金属にすることができる。この層は、用いる場合には、有効な状態を維持しつつできるだけ薄くし、光学的損失を減らすとともに、インターフェイス層が導電性または半導性である場合には、望ましくない画素間クロストークを阻止せねばならない。
【0107】
インターフェイス層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的酸化物または非化学量論的酸化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的硫化物または非化学量論的硫化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的セレン化物または非化学量論的セレン化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的テルル化物または非化学量論的テルル化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的窒化物または非化学量論的窒化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的炭化物または非化学量論的炭化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層で用いるのに特に有用な金属化合物は、MoO3、NiMoO4、CuMoO4、WO3、ZnTe、Al4C3、AlF3、B2S3、CuS、GaP、InP、SnTeの中から選択することができる。金属化合物は、MoO3、NiMoO4、CuMoO4、WO3の中から選択することが好ましい。
【0108】
金属化合物を用いる場合には、中間接続層に含まれるインターフェイス層の厚さは、0.5nm〜20nmの範囲である。
【0109】
あるいはインターフェイス層は、仕事関数が大きな金属層を含むことができる。この層を形成するのに使用される仕事関数が大きな金属は仕事関数が4.0eV以上であり、例として、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Sn、またはこれらの組み合わせが挙げられる。仕事関数が大きな金属層は、Ag、Al、Cu、Au、Zn、In、Sn、またはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましい。仕事関数が大きな金属層は、AgまたはAlを含んでいることがより好ましい。
【0110】
仕事関数が大きな金属層を用いる場合には、中間接続層に含まれるインターフェイス層の厚さは、0.1nm〜5nmの範囲である。
【0111】
中間接続層を合計した厚さは、一般に5nm〜200nmである。3つ以上の中間接続層がタンデム式OLEDに存在している場合には、中間接続層の厚さと材料の一方または両方が同じでも異なっていてもよい。
【0112】
ELユニットのそれぞれの層は、小分子OLED材料から、またはポリマーLED材料から、またはこれらの組み合わせから形成される。いくつかの発光ユニットはポリマーであり、他の発光ユニットは小分子(非ポリマー)である。小分子には蛍光材料とリン光材料が含まれる。タンデム式OLEDのそれぞれの発光ユニットの対応する層は、他の対応する層の材料と同じ材料または異なる材料を用いて形成し、層の厚さは同じでも異なっていてもよい。
【0113】
すでに述べたように、正孔注入層(HIL)をアノードとHTLの間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,127,004号、第6,208,075号、第6,208,077号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))、無機酸化物(例えばバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。中間接続層で用いられるすでに説明したp型をドープされた有機材料も正孔注入材料の有用な1つのクラスである。アメリカ合衆国特許第6,720,573号に記載されているヘキサアザトリフェニレン誘導体も有用なHIL材料である。特に有用な1つのHIL材料を以下に示す。
【0114】
【化21】

【0115】
カソードとETLの間に電子注入層(EIL)を設けると有用であることがしばしばある。中間接続層で用いられるすでに説明したn型をドープされた有機層は、電子注入材料の有用な1つのクラスである。
【0116】
本発明のOLEDデバイスは、支持用基板150の上に形成されて、カソードまたはアノードが基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノードであることが一般的であるが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、回路板材料などがある。もちろん、このような構成のデバイスでは、透過性のある上部電極を設ける必要がある。
【0117】
EL光をアノード110を通して見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光をカソードだけを通して見るような用途では、アノードの透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.0eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0118】
アノードだけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソードは、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20原子%の割合で含まれたMgAg合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、有機層(例えば有機EIL、有機ETL)に接する薄い無機EILとを備えていて、その上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、無機EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0119】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、第6,284,393号、ヨーロッパ特許第1 076 368号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、電子ビーム蒸着。イオン・スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0120】
上記の有機材料は、その有機材料の形態に適した任意の方法で堆積させることが好ましい。例えば昇華を通じてうまく堆積するが、流体から堆積させることもできる(例えば溶媒から。そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が有用だが、他の方法(例えばスパッタリングやドナー・シートからの熱転写)も利用される。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0121】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で密封される。不活性な環境中でOLEDデバイスを密封する際には、有機接着剤、金属ハンダ、低融点ガラスのいずれかを用いて保護カバーを付着させることができる。一般に、ゲッターまたは乾燥剤も密封された空間に収容される。有用なゲッターおよび乾燥剤としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩などがある。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封入法として知られている。
【0122】
本発明のOLEDデバイスでは、望むのであれば、さまざまな光学的改善スキームを利用して特性を向上させることができる。その中には、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、ディスプレイの発光領域と関係するカラー・フィルタ、中性フィルタ、カラー変換フィルタを設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、カバーの表面に、またはカバーの一部として設けることもできる。
【0123】
白色発光または広帯域発光をカラー・フィルタと組み合わせてフル・カラー・ディスプレイまたはマルチカラー・ディスプレイにする。カラー・フィルタとしては、赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタなどが可能である。アメリカ合衆国特許出願公開2004/0113875 A1に記載されているように、色の異なる4つの画素(例えば赤色発光画素、緑色発光画素、青色発光画素、白色発光画素(RGBW))を備えるディスプレイで本発明をうまく利用できる。白色発光画素は実質的にフィルタリングを受けないが、わずかなフィルタリングによって色が減ったり、白色発光画素の上に設けられた封止層などのために起こる可能性のある偶然のフィルタリングが生じたりする可能性がある。白の代わりにイエローまたはシアンが使用される。5色またはそれ以上のカラー・システムも有用である可能性がある。
【0124】
OLEDデバイスはマイクロキャビティ構造を持つことができる。有用な一実施態様では、金属電極の一方は実質的に不透明かつ反射性であり、他方の電極は反射性かつ半透明である。反射性電極は、Au、Ag、Mg、Ca、またはこれらの合金の中から選択することが好ましい。2つの反射性金属電極が存在しているため、デバイスはマイクロキャビティ構造を有する。この構造内での強い光学的干渉によって共鳴条件が生まれる。共鳴波長に近い発光は増幅され、共鳴波長から離れた発光は抑制される。有機層の厚さを選択することにより、または電極間に透明な光学的スペーサを配置することにより、光路長を調節する。例えば本発明のOLEDデバイスは、反射性アノードと有機EL媒体の間にITOスペーサ層を備え、半透明なカソードがその有機EL媒体の上に載った状態にすることができる。
【0125】
本発明は、たいていの用途のOLEDデバイスで利用される。その中には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。本発明は、OLEDを光源(例えばLCDディスプレイのバックライト)として用いるデバイスでも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】N個(N≧2)の広帯域ELユニットと、色変更媒体アレイとを備える本発明によるタンデム式広帯域OLEDの概略断面図である。
【図2a】3つの色域決定画素と、1つの色域内画素とを備える発光デバイスの1931CIE(国際照明委員会)x,y色度図である。
【図2b】4つの色域決定画素を備える発光デバイスの1931CIEx,y色度図である。
【図3a】白色広帯域発光ユニットの一実施態様の発光スペクトルである。
【図3b】シアン色広帯域発光ユニットの一実施態様の発光スペクトルである。
【図3c】マゼンタ色広帯域発光ユニットの一実施態様の発光スペクトルである。
【図3d】黄色広帯域発光ユニットの一実施態様の発光スペクトルである。
【図4】いくつかの広帯域発光ユニットの発光スペクトルである。
【図5】発光強度の変化を、発光層からカソードまでの距離の関数として、光の3つの異なる波長について示している。
【図6】本発明によるタンデム式OLEDディスプレイの1つの発光画素の断面図である。
【符号の説明】
【0127】
10 CIE色空間
12 赤色発光体
13 緑色発光体
14 青色発光体
15 望ましい色
16 色域
17 シアン色発光体
18 白色発光体
19 色域
100 タンデム式OLEDディスプレイ
105 色変更媒体
105a 赤色変更媒体
105b 緑色変更媒体
105c 青色変更媒体
110 アノード
110a アノード
110b アノード
110c アノード
110d アノード
115a 赤色発光画素
115b 緑色発光画素
115c 青色発光画素
115d 広帯域発光画素
120.x 広帯域発光ユニット
120.1 広帯域発光ユニット
120.2 広帯域発光ユニット
120.N 広帯域発光ユニット
120.(N-1) 広帯域発光ユニット
130.x 中間接続層
130.1 中間接続層
130.(N-1) 中間接続層
150 基板
170 カソード
300 発光スペクトル
305 ピーク・スペクトル成分
310 青色領域
315 緑色領域
320 赤色領域
325 ピーク・スペクトル成分
330 発光スペクトル
340 発光スペクトル
350 発光スペクトル
360 発光スペクトル
365 発光のピーク
370 発光のピーク
380 発光スペクトル
390 発光スペクトル
400 発光画素
410 正孔注入層
420 正孔輸送層
425 正孔輸送層
430 発光層
435 発光層
450 発光層
455 発光層
460 電子輸送層
465 電子輸送層
475 電子注入層
510 曲線
520 曲線
530 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離れた少なくとも2つの電極を備える、広帯域光を発生させるためのタンデム式OLEDディスプレイであって、
a)上記電極間に配置された2つ以上の広帯域発光ユニットと;
b)隣り合った発光ユニットの間に配置された中間接続層とを備えていて、
上記広帯域発光ユニットのうちの少なくとも2つが、発光スペクトルの異なる光を発生させ、そのような広帯域発光ユニットのうちの少なくとも1つが白色光を発生させない、タンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項2】
上記広帯域発光ユニットのうちの1つが白色光を発生させ、他の広帯域発光ユニットが緑色光と青色光を発生させる、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項3】
上記広帯域発光ユニットのうちの1つが白色光を発生させ、他の広帯域発光ユニットが赤色光と青色光を発生させる、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項4】
上記広帯域発光ユニットのうちの1つが白色光を発生させ、他の広帯域発光ユニットが赤色光と緑色光を発生させる、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項5】
上記広帯域発光ユニットのどれも、個別には白色光を発生させない、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項6】
上記広帯域発光ユニットの発光の組み合わせが白色光を形成する、請求項5に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項7】
上記広帯域発光ユニットのうちの少なくとも1つが、第1のピークと第2のピークを持つ発光スペクトルを発生させ、その第1のピークの強度がその第2のピークの強度よりも大きい、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項8】
上記広帯域発光ユニットのそれぞれが、第1のピークと第2のピークを持つ発光スペクトルを発生させ、その第1のピークの強度がその第2のピークの強度よりも大きく、広帯域発光ユニットのその第1のピークを、組み合わせた発光によって白色光が発生するように選択する、請求項7に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項9】
1つ以上の色変更モジュールをさらに備える、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項10】
色域の異なる少なくとも3つの色域画素をさらに備える、請求項9に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項11】
少なくとも1つの色域内画素をさらに備える、請求項10に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項12】
1つ以上のカラー・フィルタをさらに備える、請求項1に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項13】
色の異なる少なくとも3つの色域画素をさらに備える、請求項12に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。
【請求項14】
少なくとも1つの色域内画素をさらに備える、請求項13に記載のタンデム式OLEDディスプレイ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−500794(P2009−500794A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519419(P2008−519419)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/024386
【国際公開番号】WO2007/005325
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】