説明

広角レンズおよび接合レンズ

【課題】 超広角、高解像度、小型軽量、かつ、低コストのいずれにも対応可能な広角レンズ、およびこの広角レンズを構成するのに適した接合レンズを提供すること。
【解決手段】 広角レンズ10において、レンズ11はガラスレンズであるが、レンズ12、13、14はプラスチックレンズである。接合レンズ15は2枚のプラスチックレンズ15a、15bを貼り合わせた接合レンズであって、以下の条件式
|R|<φ/2、|1/(f1×ν1) + 1/(f2×ν2)|≦0.01
R:接合面の中心曲率半径、φ:接合面の光線有効径、f1:レンズ15aの焦点距離、f2:レンズ15bの焦点距離、ν1:レンズ15aのAbbe数、ν2:レンズ15bのAbbe数
の双方を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画角が130°以上の超広角の広角レンズ、およびこの広角レンズに用いられる接合レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の監視用途や車載用途で使用されるレンズは、超広角、解像度の高いものが要求されている。ここで、高解像にするには倍率色収差を補正する必要があるため、従来は、ガラスレンズ同士を接合した接合レンズや、硝材の異なる複数枚のガラスレンズを組み合わせて色収差補正をしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−113799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記の用途で使用されるレンズには、小型軽量かつ低コストなものが要求されており、上記特許文献に開示のレンズでは対応できない。このような問題点は、プラスチックレンズを使用することにより解消できるが、画角が130°以上の超広角のレンズとなると、プラスチックレンズの材料による組合せで色収差を補正しようにも、プラスチックレンズの材料がガラスに比べ少ないため、倍率色収差を補正しきれない。その結果、他の収差が補正できても解像度を高めることができず、その結果、色収差を取るために複数枚のガラスレンズを使用せざるを得ず、小型軽量化、低コスト化を図れないという問題点がある。
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、超広角、高解像度、小型軽量、かつ、低コストのいずれにも対応可能な広角レンズ、およびこの広角レンズを構成するのに適した接合レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の広角レンズでは、水平画角が130°以上であって、プラスチックレンズ同士を接合した接合レンズを含み、当該接合レンズにおける前記プラスチックレンズの接合面が双方、非球面であって、かつ、下式
|R|<φ/2 ・・式(1)
R:接合面の中心曲率半径
φ:接合面の光線有効径
を満たしていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る広角レンズおよび接合レンズでは、プラスチックレンズ同士を接合しているので、接合面にも非球面を使用できるので、少ない枚数での諸収差の補正が可能であり、色収差を補正できるので、プラスチックレンズを多用しても高解像に対応できる。従って、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【0007】
本発明の別の形態に係る広角レンズにおいては、水平画角が130°以上であって、プラスチックレンズ同士を接合した接合レンズを含み、当該接合レンズにおける前記プラスチックレンズの接合面が双方、非球面であって、かつ、下式
|1/(f1×ν1) + 1/(f2×ν2)|≦0.01・・式(2)
f1:接合レンズにおける物体側のレンズの焦点距離
f2:接合レンズにおける像側のレンズの焦点距離
ν1:接合レンズにおける物体側のレンズのAbbe数
ν2:接合レンズにおける像側のレンズのAbbe数
を満たしていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る広角レンズおよび接合レンズでは、プラスチックレンズ同士を接合しているので、接合面にも非球面を使用できるので、少ない枚数での諸収差の補正が可能であり、色収差を補正できるので、プラスチックレンズを多用しても高解像に対応できる。従って、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【0009】
また、本発明では、上式1、2の双方を満たしていることが好ましい。
【0010】
本発明においては、含まれるレンズの全てがプラスチックレンズであることが好ましい。本発明において、含まれるレンズのうち、第1群のみがガラスレンズであり、他のレンズが全てプラスチックレンズである構成を採用してもよい。
【0011】
本発明に係る接合レンズは、上記広角レンズ以外にも使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る広角レンズおよび接合レンズでは、接合面にも非球面を使用できるので、少ない枚数での諸収差の補正が可能であり、色収差を補正できるので、プラスチックレンズを多用しても高解像に対応できる。従って、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照して、本発明を適用した広角レンズおよび接合レンズを説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。なお、図1(a)には、レンズデータおよび非球面係数に対応する面ナンバーを括弧内に示してある。
【0015】
図1(a)に示すように、本形態の広角レンズ10は、物体側から順に負のパワーを持つメニスカス単レンズ11からなる第1群と、負のパワーを持つ単レンズ12からなる第2群と、正のパワーを持つ単レンズ13からなる第3群と、正のパワーを持つ単レンズ14からなる第4群と、接合レンズ15からなる第5群とから構成されている。
【0016】
メニスカス単レンズ11(第1群)はガラスレンズであるが、単レンズ12(第2群)、および単レンズ13(第3群)、および単レンズ14(第4群)はいずれも、プラスチックレンズである。
【0017】
接合レンズ15(第5群)は、負のパワーを持つプラスチックレンズ15aと正のパワーを持つプラスチックレンズ15bを貼り合わせた接合レンズであり、接合面が双方、非球面であって、かつ、以下の条件式
|R|<φ/2 ・・式(1)
R:接合面の中心曲率半径
φ:接合面の光線有効径
|1/(f1×ν1) + 1/(f2×ν2)|≦0.01・・式(2)
f1:接合レンズにおける物体側のレンズ15aの焦点距離
f2:接合レンズにおける像側のレンズ15bの焦点距離
ν1:接合レンズにおける物体側のレンズ15aのAbbe数
ν2:接合レンズにおける像側のレンズ15bのAbbe数
の双方を満たしている。
【0018】
本形態では、R=0.484であり、φ=1.78であり、f1=−30.529であり、f2=2.895であり、ν1=29.9であり、ν2=55.8である。従って、本形態は、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0019】
このように構成した広角レンズ10において、焦点距離1.2mm、Fナンバー2.8、水平画角180°の時のレンズデータおよび非球面係数は各々、表1および表2に示す通りであり、そのときの収差図は、図1(b)、(c)、(d)に示す通りである。なお、非球面係数は、下記の非球面関数
X=AY2/〔1+√{1−(B+1)A22}〕+CY4+DY6+EY8+FY10
A=1/R
における各係数に相当する。図1(c)において、歪曲収差はfθ特性で示してある。また、表1において、「BK7」はBK7ガラスを示し、「PC」はポリカーボネートを示し、「ZEONEX E48R」は、日本ゼオン株式会社製のシクロオレフィンポリマーの商標名である。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
図1(b)、(c)、(d)に示すように、本形態の広角レンズ10では、接合レンズ15の接合面に非球面を使用できるので、少ない枚数で、倍率色収差などの諸収差の補正が可能である。特に、色収差を補正できるので、プラスチックレンズを多用しても高解像に対応できる。それ故、本形態の広角レンズ10によれば、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【0023】
[実施の形態2]
図2(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。なお、図2(a)には、レンズデータおよび非球面係数に対応する面ナンバーを括弧内に示してある。
【0024】
図2(a)に示すように、本形態の広角レンズ20は、物体側から順に負のパワーを持つメニスカス単レンズ21からなる第1群と、負のパワーを持つ単レンズ22からなる第2群と、正のパワーを持つ単レンズ23からなる第3群と、接合レンズ24からなる第4群とから構成されている。
【0025】
メニスカス単レンズ21(第1群)、単レンズ22(第2群)、および単レンズ23(第3群)はいずれもプラスチックレンズである。
【0026】
接合レンズ24(第4群)は、負のパワーを持つプラスチックレンズ24aと正のパワーを持つプラスチックレンズ24bとを貼り合わせた接合レンズであり、接合面が双方、非球面であって、かつ、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0027】
本形態では、R=0.602であり、φ=2.04であり、f1=−140.038であり、f2=2.859であり、ν1=29.9であり、ν2=55.8である。従って、本形態は、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0028】
このように構成した広角レンズ20において、焦点距離1.4mm、Fナンバー2.8、水平画角130°の時のレンズデータおよび非球面係数は各々、表3および表4に示す通りであり、そのときの収差図は、図2(b)、(c)、(d)に示す通りである。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
図2(b)、(c)、(d)に示すように、本形態の広角レンズ20では、全てのレンズがプラスチックレンズであるが、接合レンズ24の接合面に非球面を使用できるので、少ない枚数で、倍率色収差などの諸収差の補正が可能である。特に、色収差を補正できるので、全てをプラスチックレンズとしても高解像に対応できる。それ故、本形態の広角レンズ20によれば、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【0032】
[実施の形態3]
図3(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態3に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。なお、図3(a)には、レンズデータおよび非球面係数に対応する面ナンバーを括弧内に示してある。
【0033】
図3(a)に示すように、本形態の広角レンズ30は、物体側から順に負のパワーを持つメニスカス単レンズ31からなる第1群と、負のパワーを持つ単レンズ32からなる第2群と、正のパワーを持つ単レンズ33からなる第3群と、接合レンズ34からなる第4群とから構成されている。
【0034】
メニスカス単レンズ31(第1群)、単レンズ32(第2群)、および単レンズ33(第3群)はいずれもプラスチックレンズである。
【0035】
接合レンズ34(第4群)は、負のパワーを持つプラスチックレンズ34aと正のパワーを持つプラスチックレンズ34bとを貼り合わせた接合レンズであり、接合面が双方、非球面であって、かつ、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0036】
本形態では、R=0.420であり、φ=2.32であり、f1=−85.635であり、f2=4.224であり、ν1=29.9であり、ν2=55.8である。従って、本形態は、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0037】
このように構成した広角レンズ30において、焦点距離1.3mm、Fナンバー2.8、水平画角180°の時のレンズデータおよび非球面係数は各々、表5および表6に示す通りであり、そのときの収差図は、図3(b)、(c)、(d)に示す通りである。
【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
図3(b)、(c)、(d)に示すように、本形態の広角レンズ30では、全てのレンズがプラスチックレンズであるが、接合レンズ34の接合面に非球面を使用できるので、少ない枚数で、倍率色収差などの諸収差の補正が可能である。特に、色収差を補正できるので、全てをプラスチックレンズとしても高解像に対応できる。それ故、本形態の広角レンズ30によれば、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【0041】
[実施の形態4]
図4(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態4に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。なお、図4(a)には、レンズデータおよび非球面係数に対応する面ナンバーを括弧内に示してある。
【0042】
図4(a)に示すように、本形態の広角レンズ40は、物体側から順に負のパワーを持つメニスカス単レンズ41からなる第1群と、負のパワーを持つ単レンズ42からなる第2群と、正のパワーを持つ単レンズ43からなる第3群と、接合レンズ44からなる第4群とから構成されている。
【0043】
メニスカス単レンズ41(第1群)は、ガラスレンズであるが、単レンズ42(第2群)、および単レンズ43(第3群)はいずれもプラスチックレンズである。
【0044】
接合レンズ44(第4群)は、正のパワーを持つプラスチックレンズ44aと正のパワーを持つプラスチックレンズ44bとを貼り合わせた接合レンズであり、接合面が双方、非球面であって、かつ、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0045】
本形態では、R=0.400であり、φ=2.23であり、f1=14.97であり、f2=3.425であり、ν1=29.9であり、ν2=55.8である。従って、本形態は、上記の条件式(1)(2)の双方を満たしている。
【0046】
このように構成した広角レンズ40において、焦点距離1.56mm、Fナンバー2.8、水平画角130°の時のレンズデータおよび非球面係数は各々、表7および表8に示す通りであり、そのときの収差図は、図4(b)、(c)、(d)に示す通りである。
【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
図4(b)、(c)、(d)に示すように、本形態の広角レンズ40では、接合レンズ44の接合面に非球面を使用できるので、少ない枚数で、倍率色収差などの諸収差の補正が可能である。特に、色収差を補正できるので、プラスチックレンズを多用しても高解像に対応できる。それ故、本形態の広角レンズ40によれば、プラスチックレンズを多用できる分、軽量小型化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。
【図3】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態3に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態4に係る広角レンズの説明図、この広角レンズの球面収差を示す収差図、この広角レンズの非点収差および歪曲収差を示す収差図、倍率色収差を示す収差図である。
【符号の説明】
【0051】
10、20、30、40 広角レンズ
15、24、34、44 接合レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平画角が130°以上であって、
プラスチックレンズ同士を接合した接合レンズを含み、
当該接合レンズにおける前記プラスチックレンズの接合面が双方、非球面であって、かつ、下式
|R|<φ/2
R:接合面の中心曲率半径
φ:接合面の光線有効径
を満たしていることを特徴とする広角レンズ。
【請求項2】
水平画角が130°以上であって、
プラスチックレンズ同士を接合した接合レンズを含み、
当該接合レンズにおける前記プラスチックレンズの接合面が双方、非球面であって、かつ、下式
|1/(f1×ν1) + 1/(f2×ν2)|≦0.01
f1:接合レンズにおける物体側のレンズの焦点距離
f2:接合レンズにおける像側のレンズの焦点距離
ν1:接合レンズにおける物体側のレンズのAbbe数
ν2:接合レンズにおける像側のレンズのAbbe数
を満たしていることを特徴とする広角レンズ。
【請求項3】
請求項2において、さらに、下式
|R|<φ/2
R:接合面の中心曲率半径
φ:接合面の光線有効径
を満たしていることを特徴とする広角レンズ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、含まれるレンズの全てがプラスチックレンズであることを特徴とする広角レンズ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、含まれるレンズのうち、第1群のみがガラスレンズであり、他のレンズが全てプラスチックレンズであることを特徴とする広角レンズ。
【請求項6】
プラスチックレンズ同士が接合され、
当該プラスチックレンズの接合面が双方、非球面であって、かつ、下式
|R|<φ/2
R:接合面の中心曲率半径
φ:接合面の光線有効径
を満たしていることを特徴とする接合レンズ。
【請求項7】
プラスチックレンズ同士が接合され、
当該プラスチックレンズの接合面が双方、非球面であって、かつ、下式
|1/(f1×ν1) + 1/(f2×ν2)|≦0.01
f1:物体側のレンズの焦点距離
f2:像側のレンズの焦点距離
ν1:物体側のレンズのAbbe数
ν2:像側のレンズのAbbe数
を満たしていることを特徴とする接合レンズ。
【請求項8】
請求項7において、さらに、下式
|R|<φ/2
R:接合面の中心曲率半径
φ:接合面の光線有効径
を満たしていることを特徴とする接合レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−284620(P2006−284620A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100420(P2005−100420)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】