説明

床スラブ

【課題】優れた床衝撃音遮断性能を確保しながらスラブの厚さを薄くできる床スラブを提供する。
【解決手段】梁2と梁2とに掛け渡されたプレキャストコンクリート製の床板31と、床板31の内部及び床板31の上に設けられた鉄筋4;6;7と、鉄筋を埋めるように床板31の上に打設されたコンクリート9と、を備えた床スラブにおいて、床板31の下面39よりも下方に突出するとともに梁2から離れて設けられた垂壁(PC垂壁51)を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた床衝撃音遮断性能を確保しながらスラブの厚さを薄くできる床スラブに関する。
【背景技術】
【0002】
梁と梁とに掛け渡されたプレキャストコンクリート製の床板の上に鉄筋を配筋し、床板上にコンクリートを打設することによって形成された床スラブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−3596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、床スラブの支配面積が大きくなると床スラブの床衝撃音遮断性能が低下するため、床スラブの支配面積が大きくなる場合は床スラブの厚さ寸法を大きくして床衝撃音遮断性能を向上させるようにしていたが、床スラブの厚さ寸法を大きくすると建物の階高が高くなって重量も重くなるだけではなく、建築コストが嵩む等の問題があった。例えば、空間設計の自由度を確保するため集合住宅における床スラブの支配面積は近年大きくなってきており、この場合、床スラブの中央側に配置される居室の床衝撃音遮断性能が低下するため、床スラブの厚さを厚くする必要があった。
本発明は、優れた床衝撃音遮断性能を確保しながらスラブの厚さを薄くできる床スラブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る床スラブは、梁と梁とに掛け渡されたプレキャストコンクリート製の床板と、床板の内部及び床板の上に設けられた鉄筋と、鉄筋を埋めるように床板の上に打設されたコンクリートと、を備えた床スラブにおいて、床板の下面よりも下方に突出するとともに梁から離れて設けられた垂壁を備えたので、垂壁を設けたことによって揺れにくい床スラブとなり、従来の垂壁を有しない床スラブと比べて、スラブの厚さを薄くできて、床衝撃音遮断性能に優れた構成の床スラブとなる。
垂壁は、互いに隣接する床板の端面と端面との間に形成されて床板を貫通する貫通孔に設置されて床板の下面よりも下方に突出するプレキャストコンクリート製の垂壁により形成されたので、プレキャストコンクリート製の床板と垂壁とを用いることで、工期短縮を実現できる。
プレキャストコンクリート製の垂壁の内部に埋め込まれるとともに垂壁の上面より突出させたあばら筋の突出長とプレキャストコンクリート製の床板の内部に埋め込まれるとともに床板の上面より突出させたトラス筋の突出長とを同じにしたので、あばら筋と打設コンクリートとの定着長さを確保できるとともに、コンクリート打設時の鉄筋の乱れを防止でき、所望のかぶり厚さを確保できる床スラブを構築できる。
垂壁は、床スラブの施工現場において設置された型枠内に鉄筋を設置した後にコンクリートを打設して形成されたので、床スラブの施工現場において垂壁を構築できる。
床板の上に、床スラブ中にコンクリートが充填されない領域を形成するためのブロックを備えたので、床スラブを形成するためのコンクリートの打設量を減らすことができ、建物の重量及びコンクリートを低減させ、建築コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】床スラブの断面図(図3のB−B断面相当図)(実施形態1)
【図2】床スラブの断面図(図3のA−A断面相当図)(実施形態1)
【図3】床スラブのコンクリート打設前の状態をPC床板及びPC垂壁の上方側から見た図(上端筋の図示は省略した)(実施形態1)。
【図4】床スラブのコンクリート打設前の状態を示す断面図(図3のA−A断面相当図)(実施形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1.
図1に示すように、床スラブ1は、互いに対向する梁2と梁2とに掛け渡されたプレキャストコンクリート製の床板31(以下、PC床板31という)を有した床板構成体3と、PC床板31の下面39よりも下方に突出するとともに梁2から離れた位置に設けられたプレキャストコンクリート製の垂壁51(以下、PC垂壁51という)を有した垂壁構成体5と、PC床板31及びPC垂壁51の内部に設けられた鉄筋4と、PC床板31及びPC垂壁51の内部に設けられるとともにPC床板31の上面32及びPC垂壁51の上面52より突出する鉄筋6と、PC床板31及びPC垂壁51の上に配筋された鉄筋7と、PC床板31の上面32に設置されたブロック8と、鉄筋7を埋めるようにPC床板31及びPC垂壁51の上に打設されて固化したコンクリート9と、を備えて構成される。
鉄筋4は、後述する、下端筋36、主筋56であり、鉄筋6は、後述するトラス筋34、あばら筋(スターラップ)55であり、鉄筋7は、主筋56、ジョイント筋61、上端筋62、スペーサ筋67である。10は柱、11は間柱である。
【0008】
図4に示すように、床板構成体3は、平面板状に形成されたPC床板31と、PC床板31の上面32より上方に突出する露出鉄筋部33とを備える。
PC床板31の内部には、トラス筋34の下端部35、及び、下端筋36が埋設されている。
【0009】
例えば図外の鋼製型枠内に、下端筋36を配筋し、トラス筋34の下端部35を配置してトラス筋34の下端部35と下端筋36とを図外の鉄線等の結束線で結束した後、鋼製型枠内に生コンクリートと呼ばれる流動性を有したコンクリートを流し込み、当該コンクリートが固化することにより、コンクリートが固化した平面板状のPC床板31と、PC床板31の上面32より上方に突出するトラス筋34による露出鉄筋部33とを備えた床板構成体3が形成される。
下端筋36は、下端筋36の下側列を形成する複数の下側下端筋37と、下端筋36の上側列を形成する複数の上側下端筋38とにより構成される。複数の下側下端筋37、及び、複数の上側下端筋38は、それぞれ、一直線状の鉄筋により形成される。複数の下側下端筋37は、金型の底面と平行な同一の平面上に設置されるものであって、一直線の延長方向が一方方向X(図3;図4参照)を向くように配置され、かつ、一方方向と直交する方向である他方方向Y(図1;図3参照)において互いに所定間隔隔てて配置される。複数の上側下端筋38は、複数の下側下端筋37の上面と同一の平面上に設置されるものであって、一直線の延長方向が他方方向を向くように配置され、かつ、一方方向において互いに所定間隔隔てて配置される。即ち、下端筋36は、金型の底面と平行な面上において、複数の下側下端筋37と複数の上側下端筋38とが格子網状に配筋されたものである。
【0010】
PC床板31の上面32には、複数のブロック8が設置される。複数のブロック8は、上記一方方向X及び他方方向Yにおいて互いに所定間隔隔てて並ぶように配置され、図外の固定手段によってPC床板31の上面32に固定されている。
トラス筋34は、一方方向Xに間隔を隔てて互いに隣り合うように設置されたブロック8とブロック8との間において他方方向Yに沿って連続するように設けられる。
【0011】
図3に示すように、互いに隣り合う2つのPC床板31;31のうちの一方のPC床板31の一端面21には切欠部22が形成され、一方のPC床板31の一端面21において切欠部22が設けられていない部分の面23と他方のPC床板31の一端面24とが突き合わされた場合に、一方のPC床板31の一端面21に形成された切欠部22と他方のPC床板31の一端面24とで囲まれた貫通孔25が形成される。
そして、垂壁構成体5が、上記貫通孔25を介してPC床板31を貫通するように設置される。
【0012】
図1;図4に示すように、垂壁構成体5は、直方体形状に形成されたPC垂壁51と、PC垂壁51の上面52より突出する露出鉄筋部53とを備える。
図3に示すように、PC垂壁51は、水平横断面形状が上記貫通孔25の孔の形状と対応する形状に形成され、図4に示すように、上下高さ寸法がPC床板31の厚さ寸法よりも長く形成された構成である。例えば、水平横断面形状が梁2と直交する方向である他方方向Yに長い長方形状で、かつ、上下高さが上下方向に長い長方形状の直方体形状に形成される。PC垂壁51は、例えば、他方方向Yの長さが5460mm、一方方向Xの長さが200mm、上下高さが375mmの直方体形状に形成される。
【0013】
例えば図外の鋼製型枠内に、複数のあばら筋55の下側部分が他方方向Yにおいて所定間隔隔てて配置され、複数の主筋56が複数のあばら筋55を接続するように複数の主筋56と複数のあばら筋55とが結束線で結束された状態で、鋼製型枠内に生コンクリートと呼ばれる流動性を有したコンクリートを流し込み、当該コンクリートが固化することにより、コンクリートが固化した直方体形状のPC垂壁51と、平面板状のPC床板31と、PC垂壁51の上面52より突出するあばら筋55とを備えた垂壁構成体5が形成される。
そして、PC垂壁51の上面52より突出する複数のあばら筋55の上側部分を接続するように複数の主筋56と複数のあばら筋55とが結束線で結束されることで、PC垂壁51の上面52より突出するあばら筋55と複数の主筋56とによる露出鉄筋部53が形成される。
【0014】
図4に示すように、PC垂壁51の上面52より突出するあばら筋55の突出長さは、PC垂壁51のPC垂壁51の上端部59が貫通孔25内に位置されて、PC垂壁51の上面52とPC床板31の上面32とが同一水平面上に位置されるようにPC垂壁51が設置された状態において、トラス筋34の突出長さとを同じ長さとなるように形成されたことにより、あばら筋55の上面55aと後述する下側上端筋63の下面63aとが接触した状態で、これらあばら筋55と下側上端筋63とが結束線で接続される。
【0015】
また、PC垂壁51の水平横断面形状の大きさは、PC垂壁51のPC垂壁51の上端部59が貫通孔25内に位置されて、PC垂壁51の上面52とPC床板31の上面32とが同一水平面上に位置されるようにPC垂壁51が設置された状態において、図1;図2に示すように、PC垂壁51の4つの側面60とこれら4つの側面60と対向する貫通孔25の孔壁との間にはそれぞれ隙間aが形成される。隙間aは例えば5mm程度に形成される。隙間aを設けたので、PC垂壁51を上から貫通孔25に設置する作業が容易となる。
【0016】
ブロック8は、床スラブ1の厚さ寸法の増大に伴う現場打ちコンクリートの使用量の低減、床スラブ1の重量低減及び集合住宅の建築コストの低減を図ること等を目的として使用される。これらの観点から、ブロック8は、コンクリート9の比重より小さい材料、例えば発泡プラスチック材料、ポリスチレンや硬質ポリウレタンのようなプラスチック材料、スタイロフォーム(商標)、木材等からなるものが使用される。また、ブロック8は、中空体又は図示の例における中実体のいずれであってもよい。
【0017】
図2に示すように、ブロック8の上面81は、床スラブ1の上面1tにおける衝撃音の発生に起因してブロック8の上面81を覆う該ブロック8上のコンクリート層82を伝搬する任意周波数帯域の曲げ波に対する反射面として、凹凸面のような非平坦面に形成される。このような非平坦面に形成されたブロック8の上面81は、当該上面81に入射する曲げ波を散乱させることができる。このため、ブロック8の上面81と、コンクリート層82の上面1tとの間での曲げ波の繰り返しの反射及びこれに伴うコンクリート層82における共鳴の発生が著しく減少し、これにより、床衝撃音遮断性能、特に、高い周波数帯域(250〜2000Hz帯域)の衝撃音に対する遮断性能を有する床スラブ1が得られる。
【0018】
曲げ波の波長は、次の計算式を用いて、算出することができる。
λ=(π・C・h/(31/2・f))1/2
ここで、λは曲げ波の波長(m)、Cは曲げ波の伝搬速度(m/s)、hはコンクリート層の厚さ(m)、fは曲げ波の周波数(Hz)である。
【0019】
次に、床スラブ1の施工方法を説明する。
工場等において予め製作された床板構成体3及び垂壁構成体5を床スラブ1の施工現場に搬入する。
一方の床板構成体3のPC床板31の一端面21において切欠部22が設けられていない部分の端面23と他方の床板構成体3のPC床板31の一端面24とが突き合わされて貫通孔25が形成されるように、2つのPC床板31;31の両端部を梁2;2上に設置し、下階の床スラブ1A上に設置された支持装置90によってPC床板31の下面39を支えることで2つの床板構成体3;3を下から支持する(図4参照)。
次に、垂壁構成体5のPC垂壁51を貫通孔25の上方から貫通孔25に通してPC垂壁51をPC床板31の下面39よりも下方に突出させ、PC垂壁51の上端部59が貫通孔25内に位置されて、PC垂壁51の上面52とPC床板31の上面32とが同一水平面上に位置された状態が維持されるように、下階の床スラブ1A上に設置された支持装置91によってPC垂壁51の下面58を支えることで垂壁構成体5を下から支持する(図4参照)。
以上により、床板構成体3;3と垂壁構成体5とが所定の状態に設置される。この状態で、PC床板31及びPC垂壁51の上にジョイント筋61と上端筋62とを配筋する。
図3;図4に示すように、ジョイント筋61は、PC床板31の上面32に配置されたスペーサ筋67と結束されて、貫通孔25を跨いで一方のPC床板31の上面32と他方のPC床板31の上面32とに掛け渡されるように複数設置される。
上端筋62は、上端筋62の下側列を形成する複数の下側上端筋63と、上端筋62の上側列を形成する複数の上側上端筋64とにより構成される。複数の下側上端筋63、及び、複数の上側上端筋64は、それぞれ、一直線状の鉄筋により形成される。複数の下側上端筋63は、複数のトラス筋34上の同一の平面上に設置されるものであって、一直線の延長方向が一方方向X(図2参照)を向いて複数のトラス筋34間に跨るように配置され、かつ、一方方向Xと直交する方向である他方方向Yにおいて互いに所定間隔隔てて配置される。複数の上側上端筋64は、複数の下側上端筋63の上面と同一の平面上に設置されるものであって、一直線の延長方向が他方方向Yを向くように配置され、かつ、一方方向Xにおいて互いに所定間隔隔てて配置される。即ち、上端筋62は、複数の下側上端筋63と複数の上側上端筋64とが格子網状に配筋されたものである。
複数の下側上端筋63と複数のトラス筋34とが交差する部分でこれら下側上端筋63とトラス筋34とが結束線で結束され、かつ、複数の下側上端筋63と複数の上側上端筋64とが交差する部分でこれら下側上端筋63と上側上端筋64とが結束線で結束される。
ジョイント筋61と上端筋62とを配筋した後に、PC垂壁51の上面、及び、PC床板31の上面に生コンクリートと呼ばれる流動性を有したコンクリート9を打設する。当該コンクリート9は、上側上端筋64を埋めて、上側上端筋64の上面から床スラブ1の上面1tまでのかぶり厚さが所望のかぶり厚さとなるまで打設される。
そして、コンクリート9が固化することで、PC床板31の下面39よりも下方に突出するとともに梁2から離れて設けられたPC垂壁51から成る垂壁を備えた床スラブ1が完成する。
【0020】
実施形態1によれば、PC垂壁51を用いてPC床板31の下面39より下方に突出する建物構造耐力上必要の無い垂壁を設けたことによって、揺れにくい床スラブ1としたので、従来の垂壁を有しない床スラブと比べて、スラブの厚さを薄くできてかつ床衝撃音遮断性能に優れた構成の床スラブ1を提供できる。
即ち、スラブの下面に建物構造耐力上必要の無い垂壁を設けた床スラブ1としたことにより、垂壁によってスラブの動きが拘束されて、床スラブ1のインピーダンスレベル(床スラブに衝撃力が加わったときの床スラブの振動のしにくさを表した値)が上昇し、揺れにくい床スラブ1となる。
例えば、垂壁を備えない床スラブにおいて所望の床衝撃音遮断性能を得るためにスラブの厚さが320mm必要であったとすると、本実施形態1の垂壁を備えた床スラブ1によれば、上記所望の床衝撃音遮断性能を得るためにスラブの厚さを300mm程度と薄くできるので、従来の垂壁を有しない床スラブと比べて、スラブの厚さを薄くできてかつ床衝撃音遮断性能に優れた構成の床スラブ1を提供できる。
また、床スラブ1の厚さを薄くできることによって、建物の階高を低くでき、床スラブ1を形成するためのコンクリートの打設量を少なくできるので、建物の重量も軽くなり、建築コストを抑えることができる。
【0021】
また、PC床板31とPC垂壁51とを用いたので、工期短縮を実現できる。
また、床スラブ1中にコンクリートが充填されない領域(ボイド)を形成するためのブロック8を備えたので、床スラブ1を形成するためのコンクリートの打設量を減らすことができ、建物の重量及びコンクリートを低減させ、建築コストを削減できる。
また、PC垂壁51の上面52とPC床板31の上面32とが同一面上に位置されるようにPC垂壁51が設置された状態において、PC垂壁51の内部に埋め込まれるとともにPC垂壁51の上面52より突出させたあばら筋55の突出長とPC床板31の内部に埋め込まれるとともにPC床板31の上面32より突出させたトラス筋34の突出長とを同じにしたので、あばら筋55と打設コンクリート9との定着長さを長くできて、コンクリート打設時の鉄筋の乱れを防止でき、所望のかぶり厚さを確保できるようになる。
【0022】
尚、従来、梁と梁との間に両端部が梁と連続するよう梁と直接に接続される小梁が形成されることがあるが、当該小梁は、梁と接続される建物構造耐力上必要な構成であって、配置される位置も限定される。一方、本願の垂壁は、梁と直接に接続されるものではなく建物構造耐力上必要が無いものであり、配置位置を比較的自由に決めることが可能である。
即ち、本願の垂壁は、構造的な制約を受けることがなく、建築設計上支障が無いところに自由に配置でき、かつ、優れた床衝撃音遮断性能を確保しながらスラブの厚さを薄くできる床スラブを実現するものである。
尚、本願では、垂壁はスラブに支持され、床スラブ1の設計は垂壁の荷重を見込んで行われる。一方、小梁の場合、床スラブの荷重を小梁が支持することになる。このように、本願の垂壁を備えた構造と従来の小梁を備えた構造とでは、設計の考え方が逆になる。
【0023】
垂壁は、どこに設けても良いが、特に、床衝撃音の発生を抑えたいリビングダイニングや主寝室の床スラブ1に設けることにより、リビングダイニングや主寝室の床スラブ1の揺れを抑えることができ、しかも、床スラブ1を形成するためのコンクリートの打設量を減らすことができ、建築コストを削減できる。
【0024】
実施形態2.
上端側にPC床板31の上面32上に載る図外の支持部を有したPC垂壁を備えた垂壁構成体を用いてもよい。この場合、図外の高さ調整具を用いて支持部の位置を上下に調整できるように構成してもよい。当該垂壁構成体を用いれば、支持装置91を用いずに、PC垂壁をPC床板31に支持させることができ、PC床板31の上面32側から貫通孔25にPC垂壁を落とし込むことで垂壁構成体を所望の状態に設置できるので、施工が容易となる。
【0025】
実施形態3.
PC床板31の下面39より下方に位置されるPC垂壁51の水平横断面形状の大きさが貫通孔25の大きさよりも大きい形状に形成されたものを用いてもよい。即ち、PC床板31の下面39における貫通孔25の周囲の面に接触する図外の鍔部を有したPC垂壁を備えた垂壁構成体を用いてもよい。この場合、水平横断面形状の大きい垂壁によって床スラブ1に対する拘束力が増すので、同じ床衝撃音遮断性能を、鍔部を有しない実施形態1のPC垂壁を用いた場合のPC床板31の下面39から下方に突出するPC垂壁51の突出長さよりも短い突出長さのPC垂壁を用いて実現できる。しかも、PC床板31の下面39から下方に突出する長さを短くできるので、垂壁部分における下階の天井懐高さを高くできる。
【0026】
実施形態4.
PC床板31の下面より下方に位置されるPC垂壁51が他方方向Y及び一方方向Xに延長する十字形状に形成されたものを用いてもよい。この場合も、水平横断面形状の大きい垂壁によって床スラブ1に対する拘束力が増すので、同じ床衝撃音遮断性能を、実施形態1のPC垂壁を用いた場合のPC床板31の下面からのPC垂壁51の突出長さよりも短い突出長さのPC垂壁を用いて実現でき、垂壁部分における下階の天井懐高さを高くできる。
【0027】
実施形態5.
PC垂壁51の上面52より上方に突出するあばら筋55の突出長さは、PC垂壁51の上面52とPC床板31の上面32とが同一面上に位置されるようにPC垂壁51が設置された状態において、打設されたコンクリート9との定着が取れる長さであればよい。
また、あばら筋55の突出長さは、床スラブ1の上面1tよりも突出する長さにしておいてもよい。
【0028】
実施形態6.
上記実施形態では、PC垂壁51を用いて垂壁を形成したが、床スラブの施工現場においてのコンクリートの打設によって貫通孔25の下側に垂壁を形成できるような垂壁打設用の図外の型枠を設置し、型枠内に鉄筋を配置して、現場でのコンクリート打設によって垂壁を形成するようにしてもよい。
【0029】
実施形態7.
上記実施形態では、PC床板31を用いて垂壁部分以外の床スラブ部分を形成したが、梁間に床スラブ打設用の図外の型枠を設置するとともに、垂壁打設用の図外の型枠を設置して、これら型枠の上側に鉄筋を配置し、これら型枠の上にコンクリートを打設することにより垂壁付きの床スラブを形成してもよい。
【0030】
尚、実施形態1では、PC垂壁51の上面52とPC床板31の上面32とが同一水平面上に位置されるようにPC垂壁51を設置した例を示したが、PC垂壁51の上面52をPC床板31の上面32と下面39との間に位置させるようにしてもよい。例えば、PC垂壁51の上面52が、PC床板31の上面32より下方で、かつ、PC床板31の下面39よりも10mm程度上方に位置するようにPC垂壁51を設置してもよい。このようにすれば、PC床板31の上面32とPC垂壁51の上面52との間に段差が生じてPC床板31の端面とPC垂壁51の上面52とで凹部が形成されるので、PC垂壁51の上面52側へのコンクリートの充填性が向上し、PC床板31とPC垂壁51との一体性が良くなる。
【0031】
また、下側上端筋63の直下にPC垂壁51の上側の主筋56を位置させて、上側の主筋56の上面とトラス筋34の上面とのレベルを揃えるようにしてもよい。このようにすれば、下側上端筋63を下側上端筋63と直交する主筋56で支持できるので、下側上端筋63を良好に支持でき、コンクリート打設時の鉄筋の乱れを防止できる。
【0032】
垂壁に、例えば設備配管用、電気配線用等の貫通孔を設けてもよい。このようにすれば、設備配管や電気配線を垂壁の貫通孔に通すことができ、設備配管や電気配線の収まりを良好とできる。
【符号の説明】
【0033】
1 床スラブ、2 梁、4;6;7 鉄筋、8 ブロック、9 コンクリート、
25 貫通孔、31 PC床板、32 PC床板の上面、34 トラス筋、
39 PC床板の下面、51 PC垂壁、55 あばら筋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と梁とに掛け渡されたプレキャストコンクリート製の床板と、床板の内部及び床板の上に設けられた鉄筋と、鉄筋を埋めるように床板の上に打設されたコンクリートと、を備えた床スラブにおいて、
床板の下面よりも下方に突出するとともに梁から離れて設けられた垂壁を備えたことを特徴とする床スラブ。
【請求項2】
垂壁は、互いに隣接する床板の端面と端面との間に形成されて床板を貫通する貫通孔に設置されて床板の下面よりも下方に突出するプレキャストコンクリート製の垂壁により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の床スラブ。
【請求項3】
プレキャストコンクリート製の垂壁の内部に埋め込まれるとともに垂壁の上面より突出させたあばら筋の突出長とプレキャストコンクリート製の床板の内部に埋め込まれるとともに床板の上面より突出させたトラス筋の突出長とを同じにしたことを特徴とする請求項2に記載の床スラブ。
【請求項4】
垂壁は、床スラブの施工現場において設置された型枠内に鉄筋を設置した後にコンクリートを打設して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の床スラブ。
【請求項5】
床板の上に、床スラブ中にコンクリートが充填されない領域を形成するためのブロックを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の床スラブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−44215(P2013−44215A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184755(P2011−184755)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】