説明

床下作業車

【目的】薬剤貯留タンクを搭載し、無線回路とテレビカメラ及びモニターにより自由走行する白アリ防除用などの床下作業車において、凹凸路面にあっても走行安定性に優れ且安価な作業車の提供を目的とする。
【構成】薬剤貯留タンクを搭載し、無線回路とテレビカメラ及びモニターにより自由走行する床下作業車において、独立懸架、全輪駆動する少なくとも片側3輪で構成する車輪を備える走行手段と、車体方向を示すレーザポインタ及び超音波発信手段とを具備する床下作業車。又、必要に応じ、乳化分散手段及び/又は打音診断手段を設ける。
【効果】自走式の薬剤散布車の問題を解消し、床下における薬剤散布を効率的に行なうことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として木造家屋などの建造物の床下に防蟻剤、防腐剤、塗料、消毒剤などの薬剤の散布(噴霧)を安全且つ効率的に行い得ると共に、建造物の害虫による食害状況或いは腐蝕による空洞などを検知することが出来る床下作業車に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、白アリ、キクイムシなどの害虫による家屋などの建造物の被害を防止する方法の1つとして化学的方法がある。これは、予め、防蟻剤・防腐剤などの薬剤で処理された建造部材を使用するか、建造物の床下及び/又は床立上がり1m程度の木材部に薬剤を散布又は塗布処理する方法である。
【0003】後者の方法は作業員が防護マスクを着けて床下に入り、薬剤を散布又は塗布することで行われている。しかしながら、この方法は薬剤の充満する中での長時間の作業故え、作業員の健康にとって好ましくない。又、既設の建造物の場合、建築基準法を無視した極端に床の低いものもあり、作業能率の点でも問題を有している。しかも、この施工法は建造物の食害或いは腐蝕状況の把握を目視にたよらざるを得ず客観的且つ適確な情報の入手が困難である。
【0004】
【発明の目的、発明が解決しようとする課題】上記従来技術を改良するものとして、特開平7−95841号公報はモニターによる遠隔操作が出来るテレビカメラ、照明灯、駆除剤を噴射するノズルなどを備えた床下害虫駆除車を提案している。しかしながら、当該床下害虫駆除車は電動によるステアリング装置を備えた前車輪と駆動装置に連結している後車輪によって走行する仕組み故え、凹凸路面を走行中過って跨ぎ損なった場合に走行不能になる欠点を有する。
【0005】特開平7−197554号公報は防蟻剤タンクを搭載し、送受信無線回路と自走手段を有する建造物の床下用白アリ防除薬剤使用装置として、本体側に送受信用制御コンピュータを挿入し、ホスト側に送受信用制御コンピュータと無線モデムを連結する自律走行型知能作業ロボットを提案している。しかしながら、当該作業ロボットは演算機能(CPUメモリー)など高機能化を追究する結果、高価で且つ大型化・重量増大をきたし、小回りの利かない床下内での作業性に問題を残すものである。又、当該作業ロボットは家庭内にあるテレビ、パーソナルコンンピュータ、携帯電話、電子レンジなどからの電磁波の影響を受け誤作動する危険を有する。又、当該作業ロボットは一対の水平旋回型キャタピラがDCギャードモータで駆動する機構故え、床下凹凸路面に遭遇した場合、乗り上げて不安定になり横転したり、或いは、捨てられている針金などの異物を巻き込み走行不能になる虞がある。
【0006】ところで、上記先行文献は白アリの存在部を探知する手段の一つとして、白アリ特有の生活音を音響センサでキャッチする方法を開示する。しかしながら、開示の方法は白アリの食害や腐蝕による空洞、隙間の存在を間接的に知る方法であり、しかも、生活音や外来雑音などによって正確な情報を入手し難い欠点を有している。
【0007】本発明は前記先行文献に記載されている様な自走式薬剤散布技術の種々の欠点を解決するもので、凹凸路面においても走行安定性に優れる小型で安価な、しかも、必要に応じ、建造物の食害状況や腐蝕による空洞などを検知することも出来る自走型床下作業車の提供を目的とする。
【0008】
【本発明の構成、課題を解決するための手段】前記課題は、本発明によれば下記の床下作業車によって解決出来る。即ち、本発明は薬剤貯留タンクを搭載し、無線回路とテレビカメラ及びモニターにより自由走行する床下作業車において、独立懸架、全輪駆動する少なくとも片側3輪で構成する車輪を備える走行手段と、車体進行方向を示すレーザポインタ及び超音波発信手段よりなる走行面確認手段とを具備する床下作業車に係る。
【0009】本発明の床下作業車は、必要に応じ、薬剤乳化液をさらに均質微粒化する目的で、薬剤貯留タンク内に乳化分散手段、例えば、超音波発信素子、および、超音波を集束する放物面鏡と当該放物面鏡で集束された超音波励起部に、薬剤を導入する導管よりなる乳化分散手段を設けることが出来る。
【0010】本発明の床下作業車は、必要に応じ、白アリなどによる建造物の被害状況、或いは、腐蝕による空洞などの存在を把握する目的で打音診断手段、特に、ブームの伸長・収納に形状記憶合金製コイルを利用する打音診断手段を付加することが出来る。
【0011】
【作用】床下で作業中の床下作業車は備え付けのテレビカメラの映像をもとにモニターする。しかしながら、車体に関係なく四方・上下に動くテレビカメラからの映像では車体の進行方向や前後の位置関係を見失う恐れがある。この為、本発明は車体の進行方向と平行な向きに取り付けた左右一対のレーザ光発信機からのレーザ光、即ち、レーザポインタをテレビカメラが捕らえる方法でその進行方向が確認できる。又、車体とモニターテレビとの向きの関係は、車体の前後に設ける周波数の異なる二種の超音波発信手段から発する音波の強弱をモニター受信することで確認できる。
【0012】本発明の床下作業車は独立懸架、全輪駆動する少なくとも片側3輪で構成する車輪を備える故え、複雑な凹凸路面においても安定確実な走行が保証される。車輪数が多いほど、車輪1個当たりにかかる荷重は少なくなり、凹凸面に対する傾斜角の分配が平均化され、車体の水平を保つのにより有利である。
【0013】乳化分散手段の付加は、薬剤が対象建造物へより均一に散布出来ること、乳化安定性に劣る薬剤でも安心して使用出来ること、乳化安定剤などの添加剤の使用が軽減出来るなどの利点を有する。
【0014】打音診断手段の付加は、薬剤散布作業と合わせて建造物の被害状況(食害・空洞など)を知ることができ、被害対策上極めて有効である。
【0015】
【実施例】本発明を具体的に説明する。図1は本発明の床下作業車1の斜視図である。図2は車輪駆動部の詳細な平面図である。図3は車輪駆動部の詳細な側面図である。車輪2(2a・2b・2c・2d)は、図2に示すように各々独立懸架機構23を具備する。車輪2は車体後方に設ける箱50に格納する左右の車輪を独立に駆動せしめる駆動モータ(図示せず)からの推力を伝導シャフト24、更に、ウォームギャ20、ウォームホイル25へ伝える仕組みで駆動する。車体の進路変更は特別なステアリング機構を要せず、前述左右の駆動モータの回転方向を変えるだけで行い得る。
【0016】図4は本発明の床下作業車の正面図である。車体本体の上部には、水平回転用モータ4及び上下駆動用モータ5によって水平・上下方向に自在に動く基盤3が設けられている。基盤3上にはテレビカメラ(CCDカメラ)6、薬剤散布ノズル9、打音診断手段8などが配設されている。なお、7はテレビカメラのレンズの汚れを取る為のワイパー、12は照明器である。テレビカメラ6は照明器12と同軸上で連動し、床下暗部の対象物を鮮明に撮すことが出来る。テレビカメラの情報は車体後部に設ける箱50に格納する送信機(図示せず)を介し、遠隔操作者の手元にあるモニター(テレビ)で受け取ることができる。水平回転用モータ4及び上下駆動用モータ5の遠隔操作によって床下内部の各所を映し出すことが出来、薬剤散布ノズルを介し薬剤を目的部へ確実に散布し得る。本発明で用いる薬剤は特に限定されないず、防蟻・防虫・防腐など目的によって適宜選択すれば良く、例えば、クロルビッホス、ホキシムなどの有機リン系又はヒバ油などの防蟻・防虫剤やタール系防腐剤を例示出来る。薬剤はそのまま又は有機溶剤もしくは水などで希釈するなどした乳液又は懸濁液などの形態で用いる。
【0017】車体の進行方向は左右一対のレーザポインタ10から発するレーザ光によって確認する。レーザポインタ10からのレーザ光の投射角は進行路面と進路にあたる建造物(土台・柱など)を投射出来るように若干の伏角をつける。11は超音波発信手段であり、周波数を異にする後部に設けるもう1方の超音波発信手段とでモニターが基盤3上のテレビカメラ6などとの向き関係を確認することができる。即ち、車体の前後に設けた周波数の異なる2種の超音波発信手段より発信する音波の強弱をモニター受信することで実施し得る。この走行面確認手段によってモニターの映像からでも床下内の状況を適確に把握することが出来、遠隔操作によって自由に目的とする場所に作業車を誘導することが出来る。
【0018】図5及び図6は、乳化分散手段の詳細な側面図及び斜視図である。ポンプ16によって薬剤貯留タンク13の薬剤は薬剤散布ノズル9へと導かれる。薬剤貯留タンク13内には車体後部に設ける箱50(図示せず)に格納する超音波発信素子14から放射する超音波を集束するカマボコ形の放物面鏡150と、当該放物面鏡により最大集束密度になる励起部に導管15を配設する。導管15を通過する薬剤は励起され、より一層微粒化した乳化液となる。
【0019】打音診断手段200は診断部とブームよりなる。図7は診断部の平面図(図8のX−X断面)である。17は外部の雑音を遮断する為のメガホン状或いは椀状の収納器である。当該収納器17の材質は、検体と密着出来れば特に限定されないが、例えば、軟質合成樹脂、天然もしくは合成のゴムなどを例示し得る。18は電磁ソレノイドよりなる打音機、19は診断音を集音するマイクロフォンである。マイクロフォン19で集音した音波は車体後方に設ける箱50に格納する送信機(図示せず)から操作者の手元の受信機に送信し、スペアナにより波形分析する。波形分析の結果から、白アリなどの食害、腐食の状況(空洞・隙間・亀裂など)が判断できる。
【0020】図8はブームの構造図である。打音診断手段200は薬剤散布中にあっては薬剤散布ノズル9を邪魔しないように薬剤散布ノズル9の下方に格納でき、他方、打音診断を行う場合は、薬剤散布ノズル9の前方診断目的部位により近ずくように伸長する機能を有するブーム8の先端部の球状の接合部材24に接合する。ブーム8は外部シャフトAと内部筒Bよりなる。内部筒Bにはコイルaとコイルbを配設する。ブーム8の伸長・収納を迅速に行う為、コイルa及びコイルbとして相異なる温度で作動する形状記憶合金製コイルを用いることが好ましい。ブーム8の伸長は、通電発熱又は光ケーブルによる熱源加熱などによりコイルbを形状記憶温度に昇温することで行なう。一方、ブーム8の収納は放置冷却によるコイルbの自然収縮を待っても良いが、コイルbの伸長の場合と同様の方法でコイルaを加熱伸長せしめ、この力によりコイルbの収縮時間を短縮出来る。本発明の打音診断手段はモータなどの動力機械を使用しない故え、コンパクト化・省スペース化に成功すると共に、故障発生の少ない利点を有する
【0021】
【効果】本発明によれば、床下作業車を自走させて薬剤散布を自動的に行なうようにしたので、従来の様に作業者が床下などに潜って薬剤散布する必要がなく作業者の健康を損なう事がない。又、本発明によれば、1)片側3輪以上の車輪を備え、各々独立懸架且つ全輪駆動としたので、凹凸路面上でも安定した走行を可能とし、2)レーザポインタと超音波発信手段よりなる走行面確認手段を具備することで、遠隔操作によっても自在に作業車を誘導でき、3)乳化分散手段の付加により、より有効に薬剤を散布でき、4)打音診断手段の付加により、被害に対する対策を講じ易くなるなど種々の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の床下作業車の斜視図である。
【図2】車輪駆動部の詳細な平面図である。
【図3】車輪駆動部の詳細な側面図である。
【図4】本発明の床下作業車の正面図である。
【図5】乳化分散手段の詳細な断面図である。
【図6】乳化分散手段の斜視図である。
【図7】打音診断手段の診断部である。
【図8】打音診断手段のブーム部の構造図である。
【符号の説明】
1 本発明の床下作業車
2 (2a、2b、2c、2d) 車輪
8 ブーム
10 レーザポインタ
11 超音波発信手段
13 薬剤懸留タンク
14 超音波発信素子
15 導管
150 放物面鏡
200 打音診断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】薬剤貯留タンクを搭載し、無線回路とテレビカメラ及びモニターにより自由走行する床下作業車において、独立懸架、全輪駆動する少なくとも片側3輪で構成する車輪を備える走行手段と、車体進行方向を示すレーザポインタ及び超音波発信手段よりなる走行面確認手段を具備することを特徴とする床下作業車。
【請求項2】前記請求項1の床下作業車の薬剤貯留タンクに、乳化分散手段を付加したことを特徴とする床下作業車。
【請求項3】乳化分散手段が超音波を集束する放物面鏡と該放物面鏡で集束された超音波励起部に、薬剤を導入する導管が配設してなることを特徴とする請求項2の床下作業車。
【請求項4】前記請求項1、2又は3の床下作業車に、害虫の食害状況或いは腐蝕による空洞などを検知する為の打音診断手段を付加したことを特徴とする床下作業車。
【請求項5】打音診断手段のブームの伸縮・収納を形状記憶合金製コイルで行うことを特徴とする請求項4に記載の床下作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−197441(P2000−197441A)
【公開日】平成12年7月18日(2000.7.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−33347
【出願日】平成11年1月4日(1999.1.4)
【出願人】(599017829)
【Fターム(参考)】