説明

床下地構造

【課題】生活騒音が階下に伝搬することを効果的に防止する。
【解決手段】木造戸建住宅の二階床下地などに好適に使用される床下地構造であって、壁4との隅において際根太11が厚物合板1などの基板上に載置され、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に複数の桟木12が延長し、これら桟木の下面には桟木の長手方向に一定間隔でゴム脚13が設けられる。際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材111,112と、これら一対の縦材間に架け渡される複数の横材113とを有して平面視略梯子状に形成される。また、少なくとも一の際根太においては一対の縦材のうち壁から離れて位置する縦材の内側面に実114が設けられ、この実に、桟木の長手方向一端に設けられる実(121)を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床下地構造に関する。本発明の床下地構造は、特に、木質系の戸建住宅の二階などの床下地、あるいは集合住宅の二階以上の床下地などに好適に適用され、床上で発生する生活騒音が階下に伝搬することを防止する。本発明の床下地構造は、大引きの上に敷設された厚物合板(たとえば厚さ24mm、28mmなどの合板)や、大引きとその上の根太の上に敷設された12mm合板などの基盤の上に設けられる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、床基盤上に設けられた際根太の上に床板が敷設され、際根太と壁材との間に際根太固定用粘着シートが設けられてなる床下地構造が示されている。壁際から離れた床板は板状の制振ゴムと支持棒によって支えられている。
【特許文献1】特開2002−309757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の床下地構造は、床上を歩行したり、床上に物が落下したりすることによって発生する生活騒音が際根太から壁を介して階下に伝搬することを比較的良好に防止するが、床板から床基盤を介して階下に伝わる生活騒音に関してはその伝搬防止効果が不十分であり、さらなる改善策が要望されていた。
【0004】
また、壁面に沿って重い家具類を床に載置した場合において、床板を支持する際根太の幅が小さいと、家具類の前側の重量が床板にかかり、床板の下に支持するものが存在しない箇所では床板がたわみ、家具類が前側(壁から遠ざかる方向)に傾いたり、家具自体や家具内の収納物が振動して不快音を発するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、木造戸建て住宅の二階や木造集合住宅の二階以上の床下地構造において、生活騒音が階下に伝搬することを効果的に防止するとともに、家具類を壁に沿って載置しても傾きや振動などを生じさせることなく安定した状態に支持することができるような強度の大きな床下地構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、請求項1に係る本発明は、基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備え、際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される複数の横材とを有して平面視略梯子状に形成され、且つ、少なくとも一の際根太において一対の縦材のうち壁から離れて位置する縦材の外側面には実が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化されることを特徴とする床下地構造である。
【0007】
また、請求項2に係る本発明は、基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備え、際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される板材とから形成され、且つ、少なくとも一の際根太において一対の縦材のうち壁から離れて位置する縦材の外側面には実が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化されることを特徴とする床下地構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床下地構造によれば、際根太で支持される床板を除く大部分の床板は桟木および弾性を有する脚で支持される。この床上で歩行したり、床上に物が落下したりすることによって発生する生活騒音は、床板から桟木に伝達されるが、その多くは桟木の下に設けられる弾性を有する脚によって遮断され、階下への伝搬を実質的に防止する。
【0009】
請求項1に係る本発明の床下地構造の際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される複数の横材とを有して平面視略梯子状に形成されるので、この上に重い家具類が載置されても、その重量を実質的に際根太で支えることができる。したがって、家具類が傾いたり、家具自体や家具内の収納物が振動して不快音を発するといった従来技術の不利欠点を露呈することがなく、且つ、床板の振動やたわみもほとんど生じない。
【0010】
請求項2に係る本発明の床下地構造の際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される板材とから形成されるので、この上に重い家具類が載置されても、その重量を際根太の板面でバランス良く支えることができる。したがって、家具類が傾いたり、家具自体や家具内の収納物が振動して不快音を発するといった従来技術の不利欠点を露呈することがなく、且つ、床板の振動やたわみもほとんど生じない。さらに、この床下地構造の上に施工される床板は際根太の板材上であれば固定位置が限定されないので、施工性が良い。
【0011】
さらに、際根太を構成する一対の縦材のうち壁から離れて位置する縦材の外側面には実が設けられ、これを桟木の長手方向の一端に設けられる実に嵌合するので、際根太に対して直交方向に設けられる複数の桟木を一体的に連結することができ、床下地構造としての強度が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の床下地構造は、基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備えて構成される。
【0013】
本発明の一実施形態において、際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される複数の横材とを有して平面視略梯子状に形成される。際根太を構成する一対の縦材および複数の横材は、いずれも木質系であり、たとえばLVL、合板、MDFなどである。一対の縦材において、一方の縦材の中心線と他方の縦材の中心線との間の間隔(所定の間隔)D(図5)は、たとえば250〜500mmの範囲内で使用目的に応じて適宜の間隔を設定するが、一例としてD=278mmである。横材のピッチP(図5)は床板の幅寸法に一致させることが好ましく、たとえばP=303mmである。際根太の厚さHはたとえば40〜60mmの範囲内において、本発明の床下地構造の下に設ける合板と根太ないし大引きの高さ寸法に応じて設定するが、一例としてH=50mmである。
【0014】
本発明の他の実施形態において、際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される板材とから形成される。際根太を構成する一対の縦材および板材は、いずれも木質系であり、たとえばLVL、合板、MDFなどである。この際根太の厚さHはたとえば40〜60mmの範囲内において、本発明の床下地構造の下に設ける合板と根太ないし大引きの高さ寸法に応じて設定するが、一例としてH=50mmである。また、際根太の幅は250〜500mm、板材の幅は200〜500mmの範囲内で使用目的に応じて適宜の間隔を設定するが、一例として際根太と板材を同幅328mmとして、板材の木口面が一対の縦材の外側面と垂直上で面一となるようにして板材を縦材間に架け渡しても良い。あるいは、床下地において内側となる縦材の片側端部に高さHとなるように段部を設けて、該段部上に突出するように板材を架け渡すことにより該段部と板材突出端との間に嵌合用の凹部を形成するようにしても良い。この場合の寸法の一例は、際根太の幅D=353mm、板材の幅D=328mm、内側縦材の段部の幅D=25mm、際根太の厚さH=50mm、段部の形成高さH=25mmである。
【0015】
際根太を構成する一対の縦材のうち、壁から離れて位置する縦材の少なくとも外側面には実が設けられるが、該縦材の両側面に実が設けられていても良い。実の形状は、あいじゃくり、やといざね、ほんざねなどである。この実は雌実または雄実として設けられ、後述する桟木の長手方向一端に対応する形状を有するものとして設けられる雄実または雌実と嵌合する。なお、ここで実とは互いに嵌合し得る凹凸形状を広く包含する概念であり、必ずしも一方の凸部が他方の凹部に実質的に隙間なく嵌め込まれる形状に限らない。また、縦材自体(縦材の厚さ範囲内)に実が形成される場合だけでなく、縦材の外側面に設けた段部とその上に配される板材との間に嵌合用の凹部が形成されるような形態も含むものである。
【0016】
際根太は基盤上に載置されるが、必ずしも際根太の下面が全面的に基盤に接触している必要はなく、たとえば際根太の下面に駒またはブロックを適宜ピッチで設けて該駒またはブロックで基盤上に支持されるものであっても良い(図11)。また、際根太を構成する縦材の下面または駒ないしブロックの下面に軟質シートを貼着または被着して防音性を高めることができる。
【0017】
桟木は際根太の厚さよりも小さい厚さを有するものとし、たとえば際根太の厚さHの二分の一程度の厚さを目安とする。桟木の材質は木質系であり、たとえばLVL、合板、無垢材などであるが、強度面からLVLが好ましい。桟木の上面には床板が敷設されるので、桟木の上面は実質的に平坦であることが好ましい。桟木の下面も実質的に平坦であることが好ましく、該平坦な下面から脚が突設されている。
【0018】
桟木の長手方向の一端には、際根太において壁から離れて位置する縦材の外側面に形成される実と嵌合する実が設けられる。たとえば、桟木の長手方向一端に設けられる実が雄実である場合は、上記縦材の外側面の実はこの雄実に嵌合可能な形状の雌実として形成される。桟木の長手方向の他端には、長手方向一端に設けられる実に嵌合可能な形状の実が形成されて、桟木同士を長手方向に連結可能とすることが好ましい。
【0019】
桟木の下面には上述のように脚が突設されるが、たとえば、桟木の下面に複数の穴を形成して、これらの穴に脚の上端突起部を挿入・固定することによって脚を突設することができる。脚の突設ピッチP(図6)は床板の幅に一致または略一致させることが好ましく、たとえばP=303mmである。脚は、たとえば合成ゴム、天然ゴム、合成樹脂などの弾性を有する材料から形成され、その硬さはデュロメータ硬さ(JIS K6253:2006)でA50〜A90、好ましくはA65〜A85である。硬さがA50未満のときは、この脚を介して荷重を受ける床のたわみが大きく床の平坦度を維持できないこととなり、床の平坦度を維持する観点からA65以上がより好ましい。一方、硬さがA90を超えると床の防音性が劣り、防音性を維持する観点からA85以上がより好ましい。
【0020】
脚の高さは、際根太の厚さから桟木の厚さを引いた寸法となり、たとえば際根太の厚さH=50mm、桟木の厚さH2=24mmの場合は、脚の高さH3=26mmとなる。脚の形状は任意であり、円形や四角形その他の断面形状の柱形状または切頭錐形状とすることができる。その側面に環状などの凹みが一または複数設けられたものであっても良い。
【0021】
本発明の一実施例による床下地構造について、図1ないし図6を参照して以下に詳述する。
【0022】
図1ないし図4に示すように、この床下地構造10は、住宅の床において大引き2の上に敷設された厚物合板1(24mm厚)の上に設けられ、その上には床板3が敷設される。符号5は幅木を示す。
【0023】
床下地構造10は、厚物合板1と部屋の壁4とがなす隅の四周に沿って設けられる際根太11と、床板3の長手方向と一致する方向に延長する際根太11に対して直交する方向に延長するように該際根太11に連結される複数の桟木12とを有する。桟木12の下面には軟質材で形成された脚(ゴム脚)13が長手方向に一定間隔をおいて設けられ、このゴム脚13を介して桟木12を床基盤である厚物合板1上に支持している。床板3はこれら際根太11および桟木12の上に釘や接着剤など(図示せず)で敷設される。
【0024】
際根太11は、図5に示すように、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材111,112と、これら一対の縦材111,112間に架け渡される複数の横材113とを有して平面視略梯子状に形成される。この実施例における際根太11の大きさは、長さL=1777mm、幅=353mm、芯々幅D=303mm、厚さH=50mmである。横材113の取付ピッチP=303mmである。縦材の一方111には側面に開口する雌実114が長手方向全長に亘って設けられている。縦材111,112の幅は50mm、横材113の幅は100mmであり、これらの厚さは同一(H)である。縦材111,112と横材113の材質はいずれもLVLである。
【0025】
桟木12は、図6に示すように、その長手方向一端に雄実121が設けられると共に他端に該雄実121を嵌合可能な形状の雌実122が設けられたLVLからなる角棒状の部材であり、この実施例では、長さL=910mm、幅D=50mm、厚さH=24mmである。桟木12の下面には所定ピッチP=303mmで3箇所に穴123が設けられている。これらの穴123にはゴム脚13の上端突起131(図3)が挿入される。このとき、穴123の内部にあらかじめ適量の接着剤を注入しておくと良い。この接着剤としては、シリコン系シーリング剤、アクリル樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤などが適している。桟木12の雄実121が形成された側の先端部の寸法Qは、該寸法Q+際根太11の縦材の幅寸法(50mm)=床板3の幅寸法(303mm)となるように定められる。したがって、この場合はQ=253mmとなる。
【0026】
この実施例におけるゴム脚13は、図3に示すように、直径40mm、上端突起131を除いた高さH=26mmの円柱形であり、その側面に環状の凹み132を有している。環状の凹み132は、高さ8.5mm、深さ5.5mmの矩形をゴム脚13の縦軸を中心に回転させて得られる形状である。ゴム脚13は合成ゴムで形成され、その硬さはデュロメータ硬さ(JIS K6253:2006)でA75に相当する。
【0027】
図3を参照して、図5に示す際根太11は、一方の縦材112の側面をクッション材14を介して壁面4aに当接させた状態で厚物合板1上に載置する。クッション材14は予め際根太11の縦材112の側面に貼着させておいても良い。クッション材14は連続して設けても間隔をおいて断続的に設けても良い。クッション材14を設けることで、際根太11と壁面4aとが直に接触することがなくなり、防音性能を向上させることができる。クッション材14の材質は任意であり、たとえばポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの発泡体、ネオプレンゴム、ブチルゴムなどの発泡体を使用することができる。
【0028】
また、このようにして際根太11を配置すると、他方の縦材111が壁4から離れて位置し、雌実114が室内側に開口する。この雌実114に桟木12の長手方向一端の雄実121を嵌合させることにより、桟木12が際根太11と連結される。桟木12は、その下面の穴123に上端突起131を挿入することによって取り付けられたゴム脚13を介して厚物合板1上に支持される。かかる取付状態におけるゴム脚13の高さHは、際根太の厚さH=50mmと桟木12の厚さH=24mmとの差に等しく、したがって上述のようにH=26mmである。
【0029】
桟木12の長手方向他端には、雄実121を嵌合可能な形状(したがって際根太11の縦材111の側面に設けられる雌実114と略同一形状)の雌実122が形成されているので、これら雄実121と雌実122との嵌合を介して長手方向に複数連結して延長させることができる(図2参照)。
【0030】
このようにして適宜延長された後、桟木12は、図3と反対側の壁面4a近くに設けられた際根太11に対しては、実結合ではなく、その木口を際根太11の縦材112の内側面に突き合わせ、あるいは若干の隙間16を残した状態で施工される(図4)。この場合、桟木12の突き合わせ側端部と厚物合板1との間にスペーサ15を配して桟木12を安定的に支持することが好ましい。なお、桟木12の該端部は寸法調整のために切断されているので、雌実122は存在していない。また、図4において、際根太11の縦材111の側面には雌実114が設けられているが、この雌実114は壁面4aにクッション材14を介して当接するので、桟木12の雄実121を嵌合するものとしては用いられない。
【0031】
次に、図7〜図10を参照して、この床下地構造の施工方法について説明する。この床下地構造は、下記説明から理解されるように、簡易施工ができる利点がある。
【0032】
まず、図7に示すように、この床下地構造を設ける部屋の下地を調整しておく。すなわち、大引き2などの上に敷設した24mm厚の厚物合板1(東京合板工業組合、東北合板工業組合の「ネダノン」(商標)など)に墨出し6を行う。
【0033】
その後、図8に示すように、際根太11を壁面4aとの間にそれぞれ3mmの隙間をあけ、長さ75mm以上のビス17で厚物合板1に固定する。
【0034】
そして、図9に示すように、桟木12の長手方向一端の雄実121を際根太11の縦材111の外側面に開口する雌実114に差し込み、ビス18で実部分を固定する。吸音材を用いる場合は、桟木12の間に吸音材19を敷き詰める。吸音材19はある程度の硬さを持った材質であることが好ましく、たとえばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォームなどであり、密度はたとえば20kg/m以上である。吸音材19の厚さについては、ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さよりも薄く吸音材19を敷き詰めて、吸音材19表面と床板3裏面との間に隙間が形成されるようにすることが好ましい。前述のようにある程度の硬さを有する吸音材19を用いる場合、吸音効果だけでなく、床上を歩行した際に生ずる床板3の沈み込みを支持して、それ以上の沈み込みを防止する効果も発揮するので、たとえば床板3の沈み込み量を最大2mmと仮定して、これよりも若干小さい隙間を吸音材19表面と床板3裏面との間に与えておくことにより、それ以上の沈み込みを防止することができる。
【0035】
次いで、図10に示すように、際根太11および桟木12の表面に接着剤(図示せず)を塗布し、この上に床板3を壁面4aから3mmの隙間をあけて載置し、フロアネイルまたはステープルなどの固着具20で固定する。次に、桟木12を雄実121と雌実122との嵌合を介して長手方向に連結し、該実嵌合部に長さ25mm程度のビス21を打ち込んで固定する。このようにして連結していき、雄実121を差し込んでビス18で固定した際根太11に対向する際根太11(図10左下の際根太)との間に3〜5mm程度の隙間16(図4)があくように端部をカットする。
【0036】
そして、図1に示すように床板3を床下地構造10の全体に施工した後、幅木5を取り付け、接着剤が乾くまで養生する。このようにして、床が完成する。
【0037】
図11は、本発明の床下地構造10に用いる際根太についての別の構成例を示す。この際根太22は、縦材221,222と横材223とが梯子状に形成された点では前述の際根太11と同様であるが、縦材221,222の下面に、横材223の取付位置に対応して横材取付ピッチと同一のピッチP=303mmで直方体状のブロック224が固定され、さらにブロック224の下面に厚さ1mm程度の軟質シート225が貼着されている。この実施例の際根太22の大きさは、長さL=1777mm、幅=353mm、芯々幅D=303mmであり、縦材221,222の厚さH=24mm、ブロックの厚さH=25mmである。一方の縦材221の側面に雌実226が形成されている点は前述の際根太11と同様である。縦材221,222の幅は50mm、横材223の幅は100mmであり、これらの厚さは同一(H)である。縦材221,222と横材223の材質はいずれもLVLである。
【0038】
図12は、本発明の床下地構造10に用いる際根太についてのさらに別の構成例を示す。この際根太23は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材231,232と、これら一対の縦材231,232間に架け渡される一枚の幅広の板材233とを有して形成されている。この実施例における際根太23の大きさは、長さL=1818mm、幅D=328mm、厚さH=50mmである。この際根太23の厚さHは、ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さと等しくされている。板材233の大きさは、際根太23と同じで、長さL=1818mm、幅D=328mmである。
【0039】
縦材231,232の高さはいずれも際根太23の厚さHから板材233の厚さを減じた寸法と一致し、長さは際根太23の長さLと一致するが、この実施例では、床下地構造10において外側に位置する縦材232は断面方形状の角棒であるのに対し、内側に位置する縦材231は該角棒の片側上端を高さH=25mmの高さ位置で切り欠いて段部を長手方向全長に亘って形成し、この段部と板材233の突出端との間に、桟木12の雄実121を受け入れるための嵌合用凹部234を形成している。縦材231,232の材質はLVLであり、板材233の材質は合板である。
【0040】
図13(a)〜(c)は、本発明の床下地構造10に用いる際根太についてのさらに別の構成例を示す。この際根太24は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材241,242と、これら一対の縦材241,242間に架け渡される一枚の幅広の板材243とを有して形成されている。この実施例における際根太24の大きさは、長さL=1818mm、幅D=353mm、厚さH=50mmである。この際根太24の厚さHは、ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さと等しくされている。板材243の大きさは、長さが際根太24と同じL=1818mmであるが、幅D=328mmで際根太24よりD=25mmだけ幅狭とされている。
【0041】
縦材241,242の高さはいずれも際根太24の厚さHから板材243の厚さを減じた寸法と一致し、長さは際根太24の長さLと一致するが、この実施例(図13(c))では、床下地構造10において外側に位置する縦材242は断面方形状の角棒であるのに対し、内側に位置する縦材241は該角棒の片側上端を高さH=25mmの高さ位置で切り欠いて段部を長手方向全長に亘って形成し、この段部と板材243の突出端との間に、桟木12の雄実121を受け入れるための嵌合用凹部244を形成している。縦材241,242と板材243の材質はいずれもLVLである。
【0042】
図13(d)〜(f)は縦材241,242および嵌合用凹部244の形成手法についての変形例を示す。縦材241,242はそれぞれ単一の棒状部材であっても良いが、図13(d)に示すように平板状部材と棒状部材とを組み合せて接合することにより形成しても良い。このようにすると縦材241の外側上端部を切り欠く加工上の手間を省いて嵌合用凹部244を形成することができる。また、縦材241,242の一方または両方の内側上端部に段部を切り欠きまたは平板状部材と棒状部材との組み合せにより形成して、該段部に架け渡すように板材243を配しても良い。このようにすると板材243が安定的に縦材241,242間に架け渡され、際根太243としての一体性および強度が増大する。また、縦材241の外側上端部に形成した段部と板材243の突出端との間に嵌合用凹部244を形成することに代えて、縦材241自体に嵌合用凹部ないし雌実244を形成しても良い。
【0043】
次に、図14〜図16を参照して、板状の際根太23,24(以下、板状際根太23で代表する)を用いた床下地構造の施工方法について説明する。この床下地構造は、下記説明から理解されるように、簡易施工ができる利点がある。
【0044】
図7を参照して既述したようにして、大引き2などの上に敷設した24mm厚の厚物合板1(東京合板工業組合、東北合板工業組合の「ネダノン」(商標)など)に墨出し6を行って、この床下地構造を設ける部屋の下地を調整した後、図14に示すように、際根太23を壁面との間にそれぞれ3mmの隙間をあけ、長さ75mm以上のビス17で厚物合板1に固定する。
【0045】
そして、図15に示すように、桟木12の長手方向一端の雄実121を際根太23の縦材231の外側面に開口する凹部234に差し込み、ビス18で実部分を固定する。吸音材を用いる場合は、桟木12の間に吸音材19を敷き詰める。吸音材19はある程度の硬さを持った材質であることが好ましく、たとえばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォームなどであり、密度はたとえば20kg/m以上である。吸音材19の厚さについては、ゴム脚13が嵌入された桟木12の高さよりも薄く吸音材19を敷き詰めて、吸音材19表面と床板3裏面との間に隙間が形成されるようにすることが好ましい。前述のようにある程度の硬さを有する吸音材19を用いる場合、吸音効果だけでなく、床上を歩行した際に生ずる床板3の沈み込みを支持して、それ以上の沈み込みを防止する効果も発揮するので、たとえば床板3の沈み込み量を最大2mmと仮定して、これよりも若干小さい隙間を吸音材19表面と床板3裏面との間に与えておくことにより、それ以上の沈み込みを防止することができる。
【0046】
次いで、図16に示すように、際根太23および桟木12の表面に接着剤(図示せず)を塗布し、この上に床板3を壁面から3mmの隙間をあけて載置し、フロアネイルまたはステープルなどの固着具20で固定する。次に、桟木12を雄実121と雌実122との嵌合を介して長手方向に連結し、該実嵌合部に長さ25mm程度のビス21を打ち込んで固定する。このようにして連結していき、雄実121を差し込んでビス18で固定した際根太23に対向する際根太23(図16左下の際根太)との間に3〜5mm程度の隙間16(図4)があくように端部をカットする。
【0047】
このようにして床板3を床下地構造10の全体に施工した後、幅木5を取り付け、接着剤が乾くまで養生して、床を完成させる。
【0048】
本発明の床下地構造を使用した床の防音性能を検証するため、図1〜図6の構成の床下地構造10(ただし吸音材19は使用せず)を用いた床(以下「本構造床」という。)と、厚物合板24mmの上に床板12mmを敷設した床(以下「比較対象床」という。)との防音性能比較試験を行った。
【0049】
軽量衝撃音の測定は、JIS A 1418−1に従い、500gハンマー(直径30mmの円筒形)を4cm高さから自由落下させて音の減衰量を測定した。このときの音は、生活騒音で言えば、スプーン落下、いすを引く音、スリッパのパタパタ音、掃除機で床をこする音などに相当するものである。
【0050】
この結果、500Hzの測定値は、本構造床ではLL−72、比較対象床ではLL−81であった。したがって、本構造床を採用したことにより8.0dBの改善が見られた。なお、本構造床においてさらに吸音材19を敷き詰めて同様に試験したところ、さらに3dB(500Hz)程度の改善が見られた。
【0051】
また、重量衝撃音の測定は、JIS A 1418−2に従い、軽自動車のタイヤ(重さ7.3kg、空気圧2.4kg/cm)を85cm高さから自由落下させて音の減衰量を測定した。このときの音は、生活騒音で言えば、子供が飛び跳ねたときの音(ドスン、ドスン)に相当するものである。
【0052】
この結果、63Hzの測定値は、本構造床ではLH−69、比較対象床ではLH−75であった。したがって、本構造床を採用したことにより5.6dBの改善が見られた。なお、本構造床においてさらに吸音材19を敷き詰めて同様に試験したが、重量床衝撃音については吸音材を用いても有意な改善は見られなかった。
【0053】
以上より、本構造床によれば比較対象床に比べて軽量衝撃音、重量衝撃音のいずれにおいても顕著な改善が見られ、生活騒音の階下への伝搬を効果的に防止することができるものであることが実証された。
【0054】
次に、本発明の床下地構造を使用した床について床たわみ性試験を行った。人間が片足で立ったときを想定して80kg荷重を床上に置いた載荷板(直径50mm)にかけた。載荷板の設置位置は桟木と桟木の間の中央とした。荷重をかける前の床板が荷重をかけることによってたわむ変形量(変位)を、床板3の裏面に設置した1/100mmダイヤルゲージで測定した。
【0055】
たわみ変形量は4.18mmであったが、部屋の床面全体から判断するとほとんど目立たないものであり、本構造床によれば、重量物を載置した場合でも床のたわみ変形を十分に抑制できることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例による床下地構造を床板と共に示す斜視図である。
【図2】この床下地構造を大部分の床板を取り除いた状態で示す斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図3とは反対側の壁面近くの断面図である。
【図5】この床下地構造に用いる際根太を示す平面図(a)、正面図(b)および左側面図(c)である。
【図6】この床下地構造に用いる桟木を示す断面図(a)および下面図(b)である。
【図7】この床下地構造の施工方法を示す図である。
【図8】同施工方法を示す図である。
【図9】同施工方法を示す図である。
【図10】同施工方法を示す図である。
【図11】この床下地構造における際根太の別の構成例を示す平面図(a)、正面図(b)および左側面図(c)である。
【図12】この床下地構造における際根太のさらに別の構成例を示す平面図(a)、正面図(b)および左側面図(c)である。
【図13】この床下地構造における際根太のさらに別の構成例を示す平面図(a)、正面図(b)および左側面図(c)である。同図(d)〜(f)は際根太における縦材と嵌合用凹部についての異なる形態例を示す同図(c)と同様の左側面図である。
【図14】図12の際根太を用いた床下地構造の施工方法を示す図である。
【図15】同施工方法を示す図である。
【図16】同施工方法を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 厚物合板(基盤)
2 大引き
3 床板
4 壁
5 幅木
10 床下地構造
11 際根太
111,112 縦材
113 横材
114 雌実(実)
12 桟木
121 雄実(実)
122 雌実
123 穴
13 ゴム脚(弾性を有する脚)
131 上端突起
132 環状の凹み
14 クッション材
15 スペーサ
16 隙間
17 ビス
18 ビス
19 吸音材
20 フロアネイル
21 ビス
22 際根太
221,222 縦材
223 横材
224 ブロック
225 軟質シート
226 雌実(実)
23 際根太
231,232 縦材
233 板材
234 嵌合用凹部(実)
24 際根太
241,242 縦材
243 板材
244 嵌合用凹部(実)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備え、際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される複数の横材とを有して平面視略梯子状に形成され、且つ、少なくとも一の際根太において一対の縦材のうち壁から離れて位置する縦材の外側面には実が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化されることを特徴とする床下地構造。
【請求項2】
基盤と壁との隅に載置される際根太と、この際根太の長手方向に平行または直交する方向に設けられる複数の桟木と、これら桟木の下面と基盤との間で桟木の長手方向に一定間隔で設けられる弾性を有する脚とを備え、際根太は、所定間隔をおいて平行に延長する一対の縦材と、これら一対の縦材間に架け渡される板材とから形成され、且つ、少なくとも一の際根太において一対の縦材のうち壁から離れて位置する縦材の外側面には実が設けられ、この実に、桟木の長手方向の一端に設けられる実を嵌合することにより桟木が際根太に連結一体化されることを特徴とする床下地構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−167786(P2009−167786A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169301(P2008−169301)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】